JP6340027B2 - クランクシャフトの支持構造 - Google Patents
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Description
クランクケースとベアリングキャップとをボルトだけで固定した場合、材質の違いから、クランクシャフトの回転による振動により応力集中が発生するおそれがあった
自動車用のエンジンには、上記の振動を抑制するためにベアリングキャップを圧入する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、クランクシャフトの回転により生じる荷重の応力集中を緩和するために、クランクケースに円弧状の凹部を形成する構造も開示されている(例えば、特許文献2,3参照)。
そこで、本発明は、クランクケース側壁部等への応力集中を抑制可能なクランクシャフトの支持構造を提供することを目的とする。
前記第1角部から離間した位置に繋がり前記第1角部から離間する側に一定の傾斜角度で延びる第1の直線部に形成されているので、離間距離を確保しつつ円弧部を小径化するとともに第1角部に近づけることができる。従って、切欠部の容積を省スペース化でき、クランクケースの剛性を確保し易くなる。
図1は、本発明のクランクシャフトの支持構造を有するパワーユニットを後方から見た図である。このパワーユニット10は、自動二輪車に搭載され、自動二輪車の後輪(駆動輪)を駆動するユニットであり、エンジンとも称する。なお、説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ自動二輪車に搭載されたときの各方向である。また、各図に示す符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
シリンダ部13L,13Rの上面には、各気筒に連通する吸気口マニホールドがそれぞれ設けられ、各吸気口マニホールドにエアクリーナが接続される。また、シリンダ部13L,13Rの下面には、各気筒に連通する排気口が設けられ、各排気口14に排気管が接続される。
なお、図1はクランクケース12後部に連結されるカバーを取り外した状態であり、内部に収容されるクランクシャフト15等を視認可能である。クランクケース12及びシリンダ部13L,13Rはアルミニウム合金で製作されている。
メインシャフト16は、クランクシャフト15の下方でクランクシャフト15と平行に配置される軸部材であり、クランクシャフト15の回転が伝達される。カウンタシャフト17は、メインシャフト16の右方でメインシャフト16と平行に配置される軸部材であり、メインシャフト16の回転が、現在の変速段に対応する変速比で伝達される。
ジェネレータシャフト19は、クランクシャフト15の左方でクランクシャフト15と平行に配置される軸部材である。このジェネレータシャフト19には、クランクシャフト15の回転が伝達され、不図示の発電機構を介して電力を発電させる。この電力は車体の各部に電力を供給するバッテリーの充電等に使用される。
クランクシャフト15は、左ケース半体12Lに形成されたジャーナル壁(クランクシャフトホルダとも称する)21と、ジャーナル壁21に固定されるベアリングキャップ31とによって回転自在に支持される。
図2は、クランクケース12の左ケース半体12Lの斜視図である。
図2に示すように、ジャーナル壁21は、前後方向に間隔を空けて左ケース半体12Lに一体に設けられ、本構成では4個のジャーナル壁21が前後に間隔を空けて設けられている。ベアリングキャップ31は、各ジャーナル壁21に、一対ずつの締結部品である締結用ボルト41でそれぞれ締結される。
ジャーナル壁21にベアリングキャップ31が締結されると、各々に形成された半円状の凹み部21A,31Bにより真円の貫通孔が形成され、この貫通孔にクランクシャフト15が挿入される。この貫通孔とクランクシャフト15との間にはメタルベアリング51(後述する図3)が介挿される。
図2中、符号126は、メインシャフト16を支持するジャーナル壁(メインシャフトホルダとも称する)であり、このジャーナル壁126も左ケース半体12Lに一体に形成されている。符号53は、ジェネレータシャフト19を回転自在に支持する軸受(例えば、転がり軸受)である。また、符号54は、クランクシャフト15近傍にて、左ケース半体12Lと右ケース半体12Rとを締結する締結部品である締結用ボルトである。
ベアリングキャップ31は鋼鉄材料で形成される。本実施形態では、クランクケース12よりも熱膨張率が小さく、クランクケース12よりも硬い鉄系の材料で形成されている。
ベアリングキャップ31は、鋼鉄製のベアリングキャップ本体32に、ジャーナル壁21に締結するための締結用ボルト41が通る一対の貫通孔部33と、ジャーナル壁21の接合面に接する一対の底面部34と、一対の底面部34の間で半円状に凹む凹み部31Aとを一体に設けることによって製作される。
ベアリングキャップ底面部34、及びクランクケース底面部24は、平坦面に形成され、ベアリングキャップ31をクランクケース12(ジャーナル壁21)に締結する際に面接触することで、高い締結力で締結可能である。
また、ジャーナル壁21には、左ケース半体12Lと右ケース半体12Rとを締結するための一対の締結用ボルト54が通る一対の貫通孔部40も有している。
また、ジャーナル壁21のノック孔25Nは、雌ねじ部35におけるクランクケース底面部24内の領域を拡径させることによって、雌ねじ部35と同軸に形成されている。
ノックピン57は、締結用ボルト41が挿入可能なC型断面を有する円筒部品(割りノックピンとも称する)である。本構成では、2本のノックピン57を用いて2カ所で位置決めするので、ベアリングキャップ31とジャーナル壁21との位置決め精度を高めることができる。
つまり、圧入部位を構成する一対の外側部分26の間隔は、ベアリングキャップ31の幅W1(図3)よりも狭く形成されており、この幅W1内にベアリングキャップ31が圧入される。圧入することによって、ベアリングキャップ31とジャーナル壁21との結合強度が高められ、クランクシャフト15の回転による振動を抑制し易くなる。
また、ベアリングキャップ31のベアリングキャップ底面部34とベアリングキャップ側壁部36とのそれぞれの延長部分が交わる領域AR1は、「ベアリングキャップの角領域AR1」と表記する。なお、この領域AR1は延長部分が交わる箇所に限定されず、その付近も含んでいる。
また、ジャーナル壁21のクランクケース底面部24とクランクケース側壁部26とのそれぞれの延長部分が交わる領域AR2は、「ジャーナル壁21の隅領域AR2」と表記する。この領域AR2についても、延長部分が交わる箇所に限定されず、その付近も含んでいる。
図5に示すように、ベアリングキャップ31の角領域AR1とジャーナル壁21の隅領域AR2との間には、隙間Sが形成され、この隙間Sによって、角領域AR1と隅領域AR2との接触によって生じる応力集中を抑制するようにしている。以下、隙間Sに関わる構成を説明する。
しかも、複数の角部を形成するので、角領域AR1の全体を一定の角度で斜めにカットする場合と比べて、角領域AR1のカット量を低減できる。従って、ベアリングキャップ31の剛性を確保し易くなる。
この切欠部61は、第1角部31X及び第2角部31Yとの間に隙間Sを確保する円弧状に切り欠いた円弧部61Aと、円弧部61Aとクランクケース側壁部26とを繋ぐ切り欠き形状を有する第1切欠部61Bと、円弧部61Aとクランクケース底面部24とを繋ぐ切り欠き形状を有する第2切欠部61Cとを一体に有している。
より具体的には、円弧部61Aは、第1角部31X及び第2角部31Yから離れる側に向かって湾曲する円弧に沿って形成される。この円弧は、第1角部31X及び第2角部31Yとの間の離間距離を確保する円弧である。離間距離は、クランクシャフト15の回転によって第1角部31X及び第2角部31Yが振動した場合、或いは、ジャーナル壁21とベアリングキャップ31との間の熱膨張量の差が生じた場合でも、ジャーナル壁21に当接しない距離である。
例えば、この円弧部61Aは、第1角部31X及び第2角部31Yが当接しない範囲で最も小さい一定の曲率(又は曲率半径)の切り欠きとされ、第1角部31X及び第2角部31Yから最小限の離間距離を確保する。なお、円弧部61Aの形状は一定の曲率(曲率半径)の切り欠きに限らず、離間距離を確保する範囲で曲率(曲率半径)が途中で変化する切り欠きでも良い。
この第1切欠部61Bは、一定の傾斜角度で切り欠いて形成されるので、加工が容易である。しかも、この切り欠きの角度を、30°或いはその前後範囲の角度にすることによって、広い範囲に隙間を確保しつつカット量を抑えることができる。
このため、第1切欠部61Bを有する方が、円弧部61A(波線部分を含む)だけの場合と比べて、第1角部31X及びその周囲との離間距離を広く確保できる。
このように、本構成では、円弧部61Aと、直線状の切り欠きである第1切欠部61Bを用いて第1角部31X及びその周辺からの離間距離を確保するので、円弧部61Aを小径化するとともに第1角部31Xに近づけることができる。従って、切欠部61を省スペース化でき、切欠部61を形成してもジャーナル壁21の剛性を確保し易くなる。
この第2切欠部61Cは、第1切欠部61Bと同様に、一定の傾斜角度で切り欠いて形成されるので、加工が容易であり、この切り欠きの角度を、30°或いはその前後範囲の角度にすることによって、広い範囲に隙間を確保しつつカット量を抑えることができる。
また、仮に円弧部61Aだけで第2切欠部61Cと同等の離間距離を確保しようとすれば、位置P2を通る円弧部61Aにする必要があり、円弧部61Aが大径化し、ジャーナル壁21の剛性の確保に不利である。
従って、円弧部61Aと、直線状の切り欠きである第2切欠部61Cを用いて第2角部31Y及びその周辺からの離間距離を確保することにより、広い範囲に渡って隙間を確保しつつカット量を抑え、ジャーナル壁21の剛性を確保し易くなる。
図4に示すように、ベアリングキャップ31とジャーナル壁21とを締結するための一対の締結用ボルト41を貫通させる貫通孔部33の同軸上に、ボルト孔33Bを有している。このボルト孔33Bは、締結用ボルト41の軸部よりも大径の雌ねじに形成され、締結用ボルト41の貫通孔部33への挿入を妨げない。また、ボルト孔33Bは、貫通孔部33におけるジャーナル壁21と反対側の端部に設けられている。このため、貫通孔部33を形成した後にボルト孔33Bを追加工することが容易である。
このボルト孔33Bは、ジャーナル壁21への圧入方向に沿った方向を軸方向とし、ベアリングキャップ31を引き抜く際に、ベアリングキャップ31を着脱するための着脱用治具81の一部が固定される。
着脱用治具81は、ジャーナル壁21におけるベアリングキャップ31両側に載置される門型形状の部材である第1治具82と、ベアリングキャップ31に固定される部材である第2治具83とを備えている。
また、第1治具82のつなぎ部82Bには、第2治具83に向けて締結用ボルト56を挿入させる貫通孔部87(以下、治具用孔部87)が形成されている。
プレート部83Aには、上記ボルト孔33Bに締結する締結部品である締結用ボルト41Aを挿通可能な一対の筒部83Bが一体に設けられる。これら筒部83Bは、第2治具83をベアリングキャップ31に載置させる足部を兼用している。なお、締結用ボルト41Aは、ベアリングキャップ31をジャーナル壁21に締結する締結用ボルト41と異なるボルトであり、締結用ボルト41よりも大径のボルトである。
これら筒部83Bに締結用ボルト41Aをそれぞれ挿通し、各締結用ボルト41Aをボルト孔33Bに締結することによって、図6に示すように、第2治具83がベアリングキャップ31に固定される。なお、この第2治具83の固定は、第1治具82をジャーナル壁21(クランクケース12)に取り付ける前に実施される。
従って、第1治具82及び第2治具83を、図5及び図6に示すように組んだ後、締結用ボルト56を締結側に回転させることによって、第2治具83がつなぎ部82Bに向けて引き上げられ、ベアリングキャップ31を引き抜くことが可能になる。なお、締結用ボルト56を締結側と反対側(緩める側)に回転させれば、第2治具83をジャーナル壁21側に移動させることができるので、ベアリングキャップ31を圧入することも可能である。
また、切欠部61は、クランクケース底面部24と円弧部61Aとを繋ぐ部分が、直線状に切り欠いた形状の他の直線部である第2切欠部61Cに形成される。これによっても、離間距離を確保しつつ切欠部61の容積を省スペース化し、クランクケース12の剛性を確保し易くなる。
また、このボルト孔33Bは、ベアリングキャップ31とクランクケース12とを締結するための締結用ボルト41(図4)を貫通させる貫通孔部33(図4)の同軸上にあり、締結用ボルト41よりも大きい径を有している。なお、図7中、符号LLは、ボルト孔33Bと、貫通孔部33と、ノックピン用孔部33Nとで共通の軸線(共通軸線)を示す。
これにより、貫通孔部33とボルト孔33Bとを兼用することができる。従って、貫通孔部33とボルト孔33Bとをそれぞれ独立して設ける場合と比べて、ベアリングキャップ31の剛性を保ち易くなる。
例えば、上述した実施形態では、クランクケース12がアルミニウム合金製でベアリングキャップ31が鋼鉄製の場合を説明したが、材質は適宜に変更しても良い。また、上述の実施形態では、本発明を自動二輪車のパワーユニット10に適用する場合を説明したが、これに限らず、四輪車等に使用される様々なパワーユニットに適用しても良い。
12 クランクケース
15 クランクシャフト
16 メインシャフト
17 カウンタシャフト
18 出力シャフト
19 ジェネレータシャフト
21 ジャーナル壁
31 ベアリングキャップ
31X 第1角部
31Y 第2角部
33,40,85 貫通孔部
33B ボルト孔
34 ベアリングキャップ底面部
36 ベアリングキャップ側壁部
41,41A,54,56 締結用ボルト(締結部材)
61 切欠部
61A 円弧部
61B 第1切欠部(直線部)
61C 第2切欠部(他の直線部)
81 着脱用治具
82 第1治具
83 第2治具
AR1 ベアリングキャップの角領域
AR2 ジャーナル壁の隅領域
Claims (6)
- クランクケース(12)に圧入及び締結されるベアリングキャップ(31)を備え、前記クランクケース(12)と前記ベアリングキャップ(31)との間にクランクシャフト(15)を回転自在に支持するクランクシャフトの支持構造であって、
前記ベアリングキャップ(31)は、前記クランクケース(12)に圧入されたときに、前記クランクケース(12)との間に圧入加重が作用するベアリングキャップ側壁部(36)と、前記クランクケース(12)と接するベアリングキャップ底面部(34)とを有し、
前記ベアリングキャップ側壁部(36)と前記ベアリングキャップ底面部(34)とのそれぞれの延長部分が交わる部分を含む領域(AR1)に、前記ベアリングキャップ側壁部(36)の一部を切り欠いた第1角部(31X)と、前記ベアリングキャップ底面部(34)の一部を切り欠いた第2角部(31Y)とが形成されており、
前記クランクケース(12)は、前記ベアリングキャップ側壁部(36)と接するクランクケース側壁部(26)と、前記ベアリングキャップ底面部(34)と接するクランクケース底面部(24)とを有し、
前記クランクケース側壁部(26)と前記クランクケース底面部(24)とのそれぞれの延長部分が交わる部分に、前記第1角部(31X)及び第2角部(31Y)との間に隙間(S)を確保する円弧状に切り欠いた円弧部(61A)を有する切欠部(61)が形成され、
前記切欠部(61)は、
前記クランクケース側壁部(26)と前記円弧部(61A)とを繋ぐ部分が、前記第1角部(31X)から離間した位置(P1)に繋がり前記第1角部(31X)から離間する側に一定の傾斜角度で延びる第1の直線部(61B)に形成され、
前記クランクケース底面部(24)と前記円弧部(61A)とを繋ぐ部分が、前記第2角部(31Y)から離間した位置(P2)に繋がり前記第2角部(31Y)から離間する側に一定の傾斜角度で延びる第2の直線部(61C)に形成されていること、
を特徴とするクランクシャフトの支持構造。 - 請求項1に記載のクランクシャフトの支持構造であって、
前記円弧部(61A)は、前記ベアリングキャップ(31)の前記第1角部(31X)及び前記第2角部(31Y)に対向する領域だけに形成されていること、
を特徴とするクランクシャフトの支持構造。 - 請求項1又は2に記載のクランクシャフトの支持構造であって、
前記第1の直線部(61B)は、前記円弧部(61A)を延長した円弧よりも前記第1角部(31X)から離間した位置で前記クランクケース側壁部(26)に繋がること、
を特徴とするクランクシャフトの支持構造。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載のクランクシャフトの支持構造であって、
前記第2の直線部(61C)は、前記円弧部(61A)を延長した円弧よりも前記第2角部(31Y)から離間した位置で前記クランクケース底面部(24)に繋がること、
を特徴とするクランクシャフトの支持構造。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載のクランクシャフトの支持構造であって、
前記ベアリングキャップ(31)は、前記クランクケース(12)への圧入方向に沿った方向を軸方向とするボルト孔(33B)を有すること、
を特徴とするクランクシャフトの支持構造。 - 請求項5に記載のクランクシャフトの支持構造であって、
前記ボルト孔(33B)は、前記ベアリングキャップ(31)と前記クランクケース(12)とを締結するための締結用ボルト(41)を貫通させる貫通孔部(33)の同軸上にあり、前記締結用ボルト(41)よりも大きい径を有すること、
を特徴とするクランクシャフトの支持構造。
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