JP2006242150A - エンジンのクランクシャフト軸受構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】
この発明は、軸受キャップの実質的な受圧面積をできるだけ小さくすることなく、複合面取部における応力集中を改善することができるエンジンのクランクシャフト軸受構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
軸受キャップ取付面2cと幅方向位置決め規制段部2dとで形成した隅部に、軸受キャップ取付面2cに連続する第1アール面取部2fと、幅方向位置決め規制段部2dの面に連続する第2アール面取部2gとからなる複合アール面取部2eを形成し、上記第1アール面取部2fの半径r1を上記第2アール面取部2gの半径r2より大きく設定する。
【選択図】 図2
この発明は、軸受キャップの実質的な受圧面積をできるだけ小さくすることなく、複合面取部における応力集中を改善することができるエンジンのクランクシャフト軸受構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
軸受キャップ取付面2cと幅方向位置決め規制段部2dとで形成した隅部に、軸受キャップ取付面2cに連続する第1アール面取部2fと、幅方向位置決め規制段部2dの面に連続する第2アール面取部2gとからなる複合アール面取部2eを形成し、上記第1アール面取部2fの半径r1を上記第2アール面取部2gの半径r2より大きく設定する。
【選択図】 図2
Description
この発明は、クランク軸を回転自在に支持する、エンジンのクランクシャフト軸受構造に関し、特に、シリンダブロックの半円弧状軸受面と、軸受キャップの半円弧状軸受面との両側でボルト締結して、クランクシャフト軸受部を形成する、エンジンのクランクシャフト軸受構造に関する。
車両等に用いられるエンジンにおいては、出力取出軸であるクランクシャフトのエンジン本体に対する支持形態として、例えば、シリンダブロックのバルクヘッド部に半円弧状の軸受面を形成する一方、それと対をなす半円弧状軸受面を有する軸受キャップをボルト締結する。
前記ボルト締結を行うにあたって、前記バルクヘッド部、軸受キャップ等の加工並びに、組み付けの位置精度の再現性を高めるためには、所謂位置決めが必要である。そこで、該位置決めの一手法として、バルクヘッド部の半円弧状の軸受面の左右に延びる軸受キャップ取付面のエンジン幅方向の両側に幅方向位置決め規制段部を形成する一方、軸受キャップの接合面の両側に、上記幅方向位置決め規制段部間の寸法より若干大きな寸法の幅方向位置決め突面部を形成し、シリンダブロックに対し軸受キャップを嵌合して、クランクシャフトのエンジン本体に対するエンジン幅方向の位置精度を高めることが行われている(特許文献1参照)。
また、上述したような、バルクヘッド部に幅方向位置決め規制段部、軸受キャップに幅方向位置決め突面部を形成して、エンジン幅方向の位置精度を高めるものにおいては、特に、軸受キャップ取付面と幅方向位置決め規制段部とで形成した隅部へ、クランク機構の動作中、シリンダブロックに作用する応力が集中的に付与されないように、図12、図13に示すように円弧状の面取り加工を施すことが行われている。
一般的に、シリンダブロック上方で、混合気の吸気、圧縮、点火、爆発、排気のサイクルが繰り返され、該サイクルによってシリンダボア部では、ピストンが上下方向に摺動し、この上下動をコンロッドを含むクランク機構を介してクランクシャフトに回転力を付与するようになっている。前記加工は、この回転力付与の際に稼動しているピストンや、コンロッド等を含むクランク機構の上下動等により上記シリンダブロック内で応力が発生するとの理由から施される対策であり、他に考えられる応力としては、特に、先行文献1に開示の構造の場合、軸受キャップのボルト締結による内部応力が考えられる。
図11は、従来のクランクシャフト軸受構造を示す図であり、シリンダブロック50のバルクヘッド52の中央部分には半円弧状の軸受面52aを形成し、該軸受面52aと対をなす半円弧状の軸受面53aを有する軸受キャップ53を複数本(図示では2本)のボルト54により締結する。このとき形成された軸受部55により図示しないクランクシャフトが回転自在に支持されるようになっている。上記ボルト54は、バルクヘッド52に形成した挿通孔52b、軸受キャップ53に形成した挿通孔53bに各々挿通可能である。尚、バルクヘッド52の上方はシリンダボア部51である。
ここで、シリンダブロック50のバルクヘッド52に対し軸受キャップ53を嵌合するにあたって、軸受キャップ53を所定位置に位置決めする役割を果たすのが、図11に示す、バルクヘッド52側の軸受キャップ取付面52c、軸受キャップ53側の接合面53c及び嵌合端部56である。
前記軸受キャップ取付面52cは、バルクヘッド52に形成された前記半円弧状の軸受面52aの左右にエンジン幅方向に延びる一方、接合面53cは、軸受キャップ53がボルト54で締結された状態において、軸受キャップ53に形成された前記半円弧状の軸受面53aの左右にエンジン幅方向に延びており、これら軸受キャップ取付面52cと接合面53cとが接合することにより、エンジンの高さ方向における軸受キャップ53の位置決めがなされる。
次に、嵌合端部56について図12を用いて説明する。尚、図11に示すように、嵌合端部56は、軸受キャップ取付面52cのエンジン幅方向両側に1箇所ずつ配置されているが、軸受部55を中心にして対称の関係にあるため、いずれか一方を挙げて説明する。図12は図11に示す嵌合端部56を拡大して示したものであり、嵌合端部56は、図11に示すバルクヘッド側52の軸受キャップ取付面52cのエンジン幅方向の両側に形成した幅方向位置決め規制段部52dと、複合面取部としての複合アール面取部52eと、軸受キャップ53側の、上記幅方向位置決め規制段部52dに嵌る幅方向位置決め突面部53dとからなる。上記複合アール面取部52eは、上記軸受キャップ取付面52cと幅方向位置決め規制段部52dとにより形成された隅部に配置されている。
ここで、前記複合アール面取部52eは、第1アール面取部52fと、第2アール面取部52gとからなり、各々円盤状のフライスカッタ(不図示)により、図12の二点鎖線で示す、半径r3(一般的には、約0.3mm〜0.6mm)の円軌跡C3の円周形状に合わせて円弧状の面取り加工を施して形成したものである。
さらに詳細に前記複合アール面取部52eを形成する過程を説明する。先ず、図12においてシリンダブロック50を倒立姿勢にした上で、垂直な主軸の下端に設けたフライスカッタを回転させつつ、気筒列方向に平行移動させて、軸受キャップ取付面52c(図11に示す軸受面52a)を加工する際、隅部に半径r3の円軌跡C3の円周形状に合った円弧の輪郭線を描くように第1アール面取部52fを形成する。次に、図12において上記と同様に別のフライスカッタを移動させて、幅方向位置決め規制段部52dを加工する際、第1アール面取部52fの際と同一の半径r3の円軌跡C3の円周形状に合った円弧の輪郭線を描くように第2アール面取部52gを隅部に形成する。以上の工程を経て、隅部は2つのアール部が連続した形状となる。この面取り加工により形成された複合アール面取部52eにより、隅部における円弧状の面取り部分の領域を広げ、隅部への応力集中をより効果的に抑制するようにしている。
しかしながら、近年では、市場における車両軽量化のニーズに伴い、エンジンの軽量化が進んでおり、その一方で、出力、熱負荷の大きいエンジンともなれば、ピストンや、コンロッド等を含むクランク機構等の上下動による応力、ボルト54による締結の際の内部応力と共に熱応力も加わってくる。このように、更なる応力負荷が作用することになると、前記複合アール面取部52eを形成しているとはいえども隅部へ悪影響を及ぼす可能性がある。
そこで、解決策として、複合アール面取部52eの各半径r3の値を共に大きくして応力を分散させることが考えられる。
ところが、図11に示す、エンジン全体としての幅方向の距離L1は、上述したような、エンジン軽量化のニーズがある現状では、必然的にエンジン幅方向の寸法に制限が生じることになり、それに対して前記半径r3の値を大きくすることは、図13に示す、複合アール面取部52eの幅方向に占める領域(距離L4)を大きく(長く)することになり、その分上記距離L1を大きく(長く)確保しなければならなくなり、結果として市場のニーズに逆行することになってしまう。
また、上述のように制限されたエンジン幅方向の寸法の範囲内で、図13に示す、軸受キャップ取付面52cの幅方向の領域(距離L5)を小さく(短く)することにより、前記距離L4を大きく確保することも考えられるが以下に述べる点で問題が生じる。
前記距離L5は、軸受キャップ取付面52cの面積と関係しており、軸受キャップ取付面52cへの単位面積あたりの荷重を軽減するために、軸受キャップ取付面52c自身の面積をできるだけ大きくする必要がある。従って、複合アール面取部52eを設定する際には、軸受キャップ取付面52cの負荷軽減をも考慮しなければならない。
即ち、距離L5の距離を短くすることは、軸受キャップ53の実質的な受圧面積を小さくすることとなり、クランクシャフトの回転に伴う変形等による軸受キャップ53の繰り返しの変位を考えると、軸受キャップ取付面52cの単位面積あたりの荷重が大きくなるという問題が生じる。
そこで、この発明は、軸受キャップの実質的な受圧面積をできるだけ小さくすることなく、複合面取部における応力集中を改善することができるエンジンのクランクシャフト軸受構造を提供することを目的とする。
この発明の請求項1記載の発明は、シリンダブロックの半円弧状軸受面の左右に延びる軸受キャップ取付面のエンジン幅方向の両側に幅方向位置決め規制段部を形成すると共に、半円弧状軸受面を有する、クランクシャフト用の軸受キャップに上記幅方向位置決め規制段部に嵌る幅方向位置決め突面部を形成し、上記シリンダブロックと上記軸受キャップとを、上記両半円弧状軸受面の両側でボルト締結して、クランクシャフト軸受部を形成するエンジンのクランクシャフト軸受構造において、上記軸受キャップ取付面と幅方向位置決め規制段部とで形成した隅部に、軸受キャップ取付面に連続する第1円弧状面取部と、幅方向位置決め規制段部の面に連続する第2円弧状面取部とからなる複合面取部を形成し、上記第1円弧状面取部の半径を上記第2円弧状面取部の半径より大きく設定したことを特徴とする。
この発明の請求項2記載の発明は、複数の気筒を列状に配置してエンジンを構成するものにおいて、各気筒毎に対応した軸受キャップを配置すると共に、隣り合う軸受キャップ同士を連結ビーム部で一体的に連結したことを特徴とする。
この発明の請求項3記載の発明は、前記軸受キャップの幅方向位置決め突面部に対向しつつ、前記第1円弧状面取部と第2円弧状面取部との境界となる位置に境界突部を形成し、該幅方向位置決め突面部に、上記境界突部と間隙を介して位置して互いの干渉を回避する干渉回避面を形成したことを特徴とする。
この発明の請求項4記載の発明は、前記軸受キャップの幅方向位置決め突面部のうち、エンジンの高さ方向に延びる側壁に、前記幅方向位置決め規制段部と対向しつつ、該幅方向位置決め規制段部から徐々に離間して、軸受キャップ幅方向の距離を軸受キャップ取付面に向かうにつれて徐々に狭くする嵌合案内面を形成し、該嵌合案内面に連なって、前記干渉回避面を形成したことを特徴とする。
この発明の請求項5記載の発明は、前記干渉回避面は、輪郭線を一直線とする傾斜面にて形成したことを特徴とする。
この発明の請求項1記載の発明によれば、軸受キャップの嵌合及びボルトの締結によりシリンダブロックに掛かる応力が、特に、ボルト締結箇所に近い側の円弧状面取部に集中して作用することを防止できる。さらに、複合面取部を構成する各円弧状面取部の半径を共に大きくする場合に比べ、軸受キャップの実質的な受圧面積を不用意に小さくすることなく、軸受の安定性を向上させることができる。
この発明の請求項2記載の発明によれば、列方向に複数並んだ気筒に対応して配置した複数の軸受キャップ同士を一体的に連結したものにおいて、該軸受キャップの各幅方向位置決め突面部に加工上のばらつきがあっても、円弧状面取部に応力が集中して作用することを防止できる。
この発明の請求項3記載の発明によれば、複合面取部の、軸受キャップ寄りに突出して位置する境界突部と、軸受キャップの幅方向位置決め突面部との干渉を干渉回避面により確実に回避することができる。
さらに、複合面取部を構成するいずれの円弧状面取部を共に大きくする場合に比べて干渉回避面を最小限にすることができ、面取りされる際の切削量の無駄を削減することができる。
この発明の請求項4記載の発明によれば、軸受キャップの幅方向位置決め突面部は、境界突部との干渉を回避するだけではなく、シリンダブロックに軸受キャップを嵌合させる際、軸受キャップを所定の嵌合位置へ案内する嵌合案内面としての役割をも果たすことができる。
することができる。
することができる。
この発明の請求項5記載の発明によれば、干渉回避面を、輪郭線を一直線とする傾斜面にて形成することにより、面取りされる際の切削量の無駄をさらに削減し、加工をより容易にすることができる。
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。なお、上述した従来のエンジンのクランクシャフト軸受構造を構成する部材と同じ部材については、同一の符号を使用した。
図面はエンジンのクランクシャフト軸受構造を示し、図1においてシリンダブロック1のバルクヘッド2の中央部分下方には半円弧状の軸受面2aを形成し、該軸受面2aと対をなす半円弧状の軸受面3aを有する軸受キャップ部3を複数本(図示では2本)のボルト54により締結する。ここで、各軸受面2a、3aの半円弧状の輪郭線を互いに合わせることにより図示のような円形の孔部が形成され、これが軸受部5となる。このとき形成された軸受部5により図示しないクランクシャフトが回転自在に支持されるようになっている。ボルト54は、バルクヘッド2に形成した挿通孔2b、軸受キャップ部3に形成した挿通孔3bに各々挿通される。尚、バルクヘッド2の上方にはシリンダボア部51が形成されている。
図1に示す2cは軸受キャップ取付面であり、該取付面2cは、バルクヘッド2に形成された前記軸受面2aの左右にエンジン幅方向に延びる一方、接合面3cは、軸受キャップ部3がボルト54で締結された状態において、軸受キャップ部3に形成された前記軸受面3aの左右にエンジン幅方向に延びており、これら軸受キャップ取付面2cと接合面3cとが接合している。
6は、嵌合端部であり、図2は図1に示す嵌合端部6を拡大して示したものである。嵌合端部6は、図1に示すバルクヘッド2の軸受キャップ取付面2cのエンジン幅方向の両側に形成した幅方向位置決め規制段部2dと、複合アール面取部2eと、軸受キャップ部3側の、上記幅方向位置決め規制段部2dに嵌る幅方向位置決め突面部3dとからなる。上記複合アール面取部2eは、上記軸受キャップ取付面2cと幅方向位置決め規制段部2dとにより形成された隅部に配置されている。
ここで、前記複合アール面取部2eは、第1アール面取部2fと第2アール面取部2gとから形成される。
先ず、第1アール面取部2fは、円盤状のフライスカッタ(不図示)により、図2の二点鎖線で示す半径r1(約1.6mm〜1.9mm)の円軌跡C1の円周形状に合わせて円弧状の面取り加工を施して形成したものである。
他方、第2アール面取部2gは、第1アール面取部2fの半径とは異なる、図2の二点鎖線で示す半径r2(約1.0mm〜1.3mm)の円軌跡C2の円周形状に合わせて円弧状の面取り加工を施して形成されたものであり、この第2アール面取部2gの輪郭線となる円弧の半径r2は、この第1アール面取部2fの輪郭線となる円弧の半径r1よりも値が小さくなるような関係にある。
ここで、詳細に前記複合アール面取部2eを形成する過程を説明する。先ず、図2においてシリンダブロック1を倒立姿勢にした上で、垂直な主軸の下端に設けたフライスカッタを回転させつつ、気筒列方向に平行移動させて、軸受キャップ取付面2c(図1に示す軸受面2a)を加工する際、隅部に半径r1の円軌跡C1の円周形状に合った円弧の輪郭線を描くように第1アール面取部2fを形成する。次に、図2において上記と同様に別のフライスカッタを移動させて、幅方向位置決め規制段部2dを加工する際、第1アール面取部2fの面取り加工の際とは異なる切削刃を用いて、半径r2の円軌跡C2の円周形状に合った円弧の輪郭線を描くように第2アール面取部2gを隅部に形成する。以上の工程を経て、隅部は2つのアール部が連続した複合アール面取部2eの形状となる。
また、前記複合アール面取部2eを成形加工した結果、第1アール面取部2fの円弧の輪郭線と第2アール面取部2gの円弧の輪郭線との境界となる位置には、先端が軸受キャップ3側に寄って位置する境界突部2hが形成され、該境界突部2hは、軸受キャップ部3をバルクヘッド2に嵌合した時、幅方向位置決め突面部3dに対向して位置することになる。
2iは、前記幅方向位置決め規制段部2dに連なって面取りされた傾斜面により形成された面取傾斜部である。
次に、軸受キャップ部3の構成について、図1乃至図5を用いて説明する。この発明の実施形態に係るエンジンは、複数の気筒を列状に配置した多気筒型のものに採用する場合が多く、図3乃至図5は、直列4気筒型のエンジンにこの発明を適用した場合を示すものである。但し、エンジンの形態はこれに限られたものではなく、例えば、V型多気筒エンジンにこの発明を適用してもよい。ここで、図3乃至図5のUは、軸受キャップユニットであり、該軸受キャップユニットUは、主に気筒列方向に複数が配列された軸受キャップ部3と、連結ビーム部7とからなり、これらを一体成形により構成することにより、隣り合う軸受キャップ部3同士を気筒列方向に延びる連結ビーム部7で一体的に連結している。挿通孔3bは、図5に示す軸受キャップユニットU底面から、図3に示す接合面3cまで延びて穿設されている。
この軸受キャップユニットUを図1等に示すバルクヘッド2に嵌合させ、ボルト54で締結した時、複数の軸受キャップ部3は各々、シリンダブロック1側の気筒間と気筒端部とに配置されるため、シリンダブロック1のシリンダボア部51は、図3、図5の二点鎖線で示すような、軸受キャップユニットUの気筒列方向における、各軸受キャップ3同士の間隙の上方の位置に配置されるようになっている。
次に、図2を用いて軸受キャップ部3についてさらに詳細に説明する。軸受キャップ部3の前記接合面3cの両側には、幅方向位置決め突面部3dが形成され、該幅方向位置決め突面部3dは、接合面3cに連なって各々異なる傾斜をなして形成された逃がし斜面3e、嵌合案内面3fを有している。
逃がし斜面3eは、前記境界突部2h先端と対向する位置に、所定の間隙Eを介して位置しており、その輪郭線は一直線の傾斜面になっている。
嵌合案内面3fは、軸受キャップ部3の、エンジンの高さ方向に延びる側壁に形成されており、その輪郭線は、前記幅方向位置決め規制段部2dと対向しつつ、該幅方向位置決め規制段部2dから徐々に離間して、軸受キャップ部3幅方向の距離L6(図10参照)を軸受キャップ取付面2c、接合面3cに向かうにつれて徐々に狭くするような一直線の傾斜面になっている。
図示実施形態は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
この発明の実施形態においては、前記面取り加工により形成された複合アール面取部2eにより、隅部における円弧状の面取り部分の領域を広げ、隅部への応力集中をより効果的に抑制するようにする点は従来の技術と相違はない。但し、上述したような、第2アール面取部2gの輪郭線となる円弧の半径r2を、この第1アール面取部2eの輪郭線となる円弧の半径r1よりも値を小さくした点が大きく異なる。
この発明の実施形態においては、前記面取り加工により形成された複合アール面取部2eにより、隅部における円弧状の面取り部分の領域を広げ、隅部への応力集中をより効果的に抑制するようにする点は従来の技術と相違はない。但し、上述したような、第2アール面取部2gの輪郭線となる円弧の半径r2を、この第1アール面取部2eの輪郭線となる円弧の半径r1よりも値を小さくした点が大きく異なる。
即ち、軸受キャップ取付面2cと幅方向位置決め規制段部2dとで形成した隅部の中でも、特に、図1に示すボルト54に近い側では、図示しないピストンの上下動、コンロッド等を含むクランク機構の稼動による応力のみならず、ボルト54の締結による内部応力の影響も考慮しなければならず、そこで、複合アール面取部2eのうちボルト54に近い側に位置する第1アール面取部2eの輪郭線となる円弧の半径r1を特に大きく確保することにより、ボルト54の締結を含めた応力が集中するのをボルト54に近い側で抑制し、他方の第2アール面取部2gと併せて、上記隅部全体の応力集中を防止しているのである。
さらに、第1アール面取部2fよりもボルト54から遠い側の第2アール面取部2gでは、ボルト54の締結による内部応力の影響が小さく、且つ、この発明の実施形態においては、以下に述べる理由から第2アール面取部2gの輪郭線となる円弧の半径r2の値をできるだけ小さく確保したのである。
図1に示す、エンジン全体としての幅方向の距離L1は、上述したように幅方向の寸法に制限がある。そこで、前記半径r2の値を小さくすることにより、図6に示す、複合アール面取部2eの幅方向に占める領域(距離L2)をできるだけ小さく(短く)できるため、半径r1を大きく確保したとしても、その分上記距離L1を大きく(長く)する必要がなくなった。さらには、上述のように制限されたエンジン幅方向の寸法の範囲内で、上記半径r2の値を小さくして領域(距離L2)小さくした分、図6に示す、軸受キャップ取付面2cの幅方向の領域(距離L3)を小さく(短く)することなく、軸受キャップ取付面2cへの単位面積あたりの荷重を軽減するのに必要な軸受キャップ取付面2cの面積をできるだけ大きく確保することができるようになったのである。
また、上述したような、複合アール面取部2eとすることにより以下に述べる点で効果を奏することができる。即ち、図3乃至図5に示すような、気筒列方向に配列された軸受キャップ部3同士を連結ビーム部7で一体的に連結している多気筒エンジン用の軸受キャップユニットUにおいて、加工精度上、複数の軸受キャップ部3の幅方向位置決め突面部3d(図2参照)間で加工位置、形状等の微小なばらつきが生じており、この軸受キャップユニットUをバルクヘッド2に嵌合する場合、特に好適である。
具体的には、ピストン、クランク機構を稼動させなくても、上述したような加工ばらつきを有する軸受キャップユニットUを、バルクヘッド2に嵌合しボルト54で締結した時点で既に、互いの嵌め合いのずれにより、図1、図2に示す、軸受キャップ取付面2c、接合面3c同士、幅方向位置決め規制段部2d、幅方向位置決め突面部3d同士が押圧し合って意図しない内部応力が発生する場合である。このような加工精度のばらつきに伴う応力が発生している場合であっても、複合アール面取部2eであれば確実に応力を分散させ、ボルト54に近い第1アール面取部2fに応力が集中するのを防止することができるのである。
次に、図2等に示す軸受キャップ部3の幅方向位置決め突面部3dの逃がし斜面3eであるが、軸受キャップ取付面2cと幅方向位置決め規制段部2dとにより形成された隅部に前記境界突部2hが位置することを考慮して設けられたものであり、これにより、軸受キャップ部3をバルクヘッド2に嵌合してボルト54で締結した後、ひいては、ピストン、クランク機構等が稼動した時であっても、間隙Eの存在により、境界突部2hと、幅方向位置決め突面部3dとの互いの干渉を確実に防止することができる。
ここで、この発明の実施形態に係る複合アール面取部2eに対して逃がし斜面3eを設けた場合の幅方向の領域(距離L7)(図7(b)参照)と、従来の軸受構造における複合アール面取部52eに対して逃がし斜面53eを設けた場合の幅方向の領域(距離L8)(図7(a)参照)とを比較してみる。図7(b)に示すように、この発明の実施形態に係る複合アール面取部3eとすることにより、第2アール面取部2gの輪郭線となる円弧の半径r2を小さくした分、逃がし斜面3eの幅方向の距離L8を距離L7まで短くすることができるため、その分逃がし斜面3eを最小限にすることができ、面取りされる際の切削量の無駄を削減することができるという効果を奏することができる。
さらに、逃がし斜面3eを図示のように、輪郭線を一直線とする傾斜面にて形成することにより、面取りされる際の切削量の無駄をさらに削減し、加工をより容易にすることができる。
但し、逃がし斜面3eの形態はこれに限定されるものではなく、例えば、図8にて示すように、対向する境界突部2hから所定距離離間するような壁面として角形状の干渉回避凹部13eを形成してもよいし、図9にて示すように、円弧等の曲面形状の干渉回避凹部23eを形成してもよい。
図10は、軸受キャップ部3をバルクヘッド2に嵌合する際の一状態を示す図であり、図示のように、幅方向位置決め突面部3dに形成された嵌合案内面3fを幅方向位置決め規制段部2dの面取傾斜部2iに沿わせることにより、図10の矢印Aにて示す方向へ軸受キャップ部3を指向することができ、軸受キャップ部3を所定の嵌合位置へ容易に且つ確実に案内することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の軸受キャップは、軸受キャップ部3に対応し、
以下同様に、
第1円弧状面取部は、第1アール面取部2fに対応し、
第2円弧状面取部は、第2アール面取部2gに対応し、
複合面取部は、複合アール面取部2eに対応し、
干渉回避面は、逃がし斜面3e、干渉回避凹部13e、23eに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
この発明の軸受キャップは、軸受キャップ部3に対応し、
以下同様に、
第1円弧状面取部は、第1アール面取部2fに対応し、
第2円弧状面取部は、第2アール面取部2gに対応し、
複合面取部は、複合アール面取部2eに対応し、
干渉回避面は、逃がし斜面3e、干渉回避凹部13e、23eに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
2c、52c…軸受キャップ取付面
2d、52d…幅方向位置決め規制段部
3…軸受キャップ部
3d、53d…幅方向位置決め突面部
5、55…軸受部
2f、52f…第1アール面取部
2g、52g…第2アール面取部
2e、52e…複合アール面取部
7…連結ビーム部
2h…境界突部
3e、53e…逃がし斜面
13e、23e…干渉回避凹部
3f…嵌合案内面
U…軸受キャップユニット
2d、52d…幅方向位置決め規制段部
3…軸受キャップ部
3d、53d…幅方向位置決め突面部
5、55…軸受部
2f、52f…第1アール面取部
2g、52g…第2アール面取部
2e、52e…複合アール面取部
7…連結ビーム部
2h…境界突部
3e、53e…逃がし斜面
13e、23e…干渉回避凹部
3f…嵌合案内面
U…軸受キャップユニット
Claims (5)
- シリンダブロックの半円弧状軸受面の左右に延びる軸受キャップ取付面のエンジン幅方向の両側に幅方向位置決め規制段部を形成すると共に、
半円弧状軸受面を有する、クランクシャフト用の軸受キャップに上記幅方向位置決め規制段部に嵌る幅方向位置決め突面部を形成し、
上記シリンダブロックと上記軸受キャップとを、上記両半円弧状軸受面の両側でボルト締結して、クランクシャフト軸受部を形成するエンジンのクランクシャフト軸受構造において、
上記軸受キャップ取付面と幅方向位置決め規制段部とで形成した隅部に、軸受キャップ取付面に連続する第1円弧状面取部と、幅方向位置決め規制段部の面に連続する第2円弧状面取部とからなる複合面取部を形成し、
上記第1円弧状面取部の半径を上記第2円弧状面取部の半径より大きく設定した
エンジンのクランクシャフト軸受構造。 - 複数の気筒を列状に配置してエンジンを構成するものにおいて、
各気筒毎に対応した軸受キャップを配置すると共に、
隣り合う軸受キャップ同士を連結ビーム部で一体的に連結した
請求項1記載の
エンジンのクランクシャフト軸受構造。 - 前記軸受キャップの幅方向位置決め突面部に対向しつつ、前記第1円弧状面取部と第2円弧状面取部との境界となる位置に境界突部を形成し、
該幅方向位置決め突面部に、上記境界突部と間隙を介して位置して互いの干渉を回避する干渉回避面を形成した
請求項1又は2記載の
エンジンのクランクシャフト軸受構造。 - 前記軸受キャップの幅方向位置決め突面部のうち、エンジンの高さ方向に延びる側壁に、前記幅方向位置決め規制段部と対向しつつ、該幅方向位置決め規制段部から徐々に離間して、軸受キャップ幅方向の距離を軸受キャップ取付面に向かうにつれて徐々に狭くする嵌合案内面を形成し、
該嵌合案内面に連なって、前記干渉回避面を形成した
請求項3記載の
エンジンのクランクシャフト軸受構造。 - 前記干渉回避面は、輪郭線を一直線とする傾斜面にて形成した
請求項3または4記載の
エンジンのクランクシャフト軸受構造。
Priority Applications (1)
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JP2005062196A JP2006242150A (ja) | 2005-03-07 | 2005-03-07 | エンジンのクランクシャフト軸受構造 |
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Family Applications (1)
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Country | Link |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012227997A (ja) * | 2011-04-15 | 2012-11-15 | Canon Precision Inc | 振動型駆動装置 |
DE102012204481A1 (de) * | 2012-03-21 | 2013-09-26 | Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft | Verfahren zur Festigkeitssteigerung eines in einem Zylinderkurbelgehäuse integrierten Lagerstuhls und Zylinderkurbelgehäuse hergestellt nach dem Verfahren |
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WO2017175670A1 (ja) * | 2016-04-07 | 2017-10-12 | 愛知機械工業株式会社 | シリンダブロックおよびこれを備える内燃機関 |
-
2005
- 2005-03-07 JP JP2005062196A patent/JP2006242150A/ja active Pending
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