以下、図面を参照しながら発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
(第1実施形態)
先ず、図1〜図3を用いて、本実施形態に係る注意喚起制御装置が注意を喚起することを要する状況について説明する。
図1に示す自車両5は、以下に説明する状況で道路10を走行している。すなわち、道路10の交差点10aには信号機11が設置されており、この信号機11が青色の時に、自車両5は図1の実線に示す位置を走行している。この時、自車両5の前方には先行車両5fが存在し、先行車両5fは自車両5に先行して交差点10aに向かって走行している。その後、先行車両5fが図1の点線位置に達した時点で、信号機11が青色から黄色に切り替わる。この時、先行車両5fの運転手は、交差点10aに進入するように運転するか、交差点10aの手前の停止線12で停止するかの判断に迷うジレンマ状態に陥る場合がある。なお、交差点10aに進入する場合には、交差点10aを直進する場合、左折する場合、および右折する場合が含まれる。
道路10の停止線12より手前側領域であって上述の如く判断に迷う領域を、ジレンマ領域10bと呼ぶ。このジレンマ領域10bは黄色に切り替わった時点における車速に応じて変化する。なお、ジレンマ領域10bよりも停止線12側の領域を通過判断領域10cと呼び、ジレンマ領域10bに対して通過判断領域10cの反対側の領域を、停車判断領域10dと呼ぶ。
黄色に切り替わった時点で通過判断領域10cを走行している場合、運転手は交差点10aに進入する判断を下して走行運転し、停止線12で停止する判断と迷う可能性が低い。黄色に切り替わった時点で停車判断領域10dを走行している場合、運転手は停止線12で停止する判断を下して減速運転し、交差点10aに進入する判断と迷う可能性が低い。黄色に切り替わった時点でジレンマ領域10bを走行している場合、運転手は交差点10aに進入するか停止線12で停止するかの判断に迷う可能性が高く、減速するか否かの判断に迷う。このように迷った後で停止判断した場合、減速を開始するタイミングが遅れてしまい、急ブレーキをかけることとなる。
したがって、図1に示す自車両5の運転状況は、数秒後に青信号から黄信号に切り替わることに伴い、先行車両5fがジレンマ状態に陥って急ブレーキをかけるおそれのある状況である。よって、自車両5の運転者は、先行車両5fとの車間距離を十分に確保して、先行車両5fが急ブレーキをかけても追突しないように特に注意して運転することが要求される状況であると言える。
次に、図2に示す自車両5の運転状況について説明すると、自車両5の後方には後続車両5rが存在し、後続車両5rは自車両5に後続して交差点10aに向かって走行している。後続車両5rおよび自車両5が図2の実線に示す位置を走行している時には、信号機11は青色である。その後、後続車両5rおよび自車両5が図2の点線位置に達した時点で、信号機11が青色から黄色に切り替わる。この時、後続車両5rはジレンマ領域10bに位置し、後続車両5rの運転者は、上述したジレンマ状態に陥る可能性が高い。この場合、後続車両5rの減速開始タイミングが遅れる可能性があり、この状況で自車両5の減速開始タイミングも遅れると、後続車両5rが自車両5に追突する可能性が高くなる。
したがって、図2に示す自車両5の運転状況は、数秒後に青信号から黄信号に切り替わることに伴い、後続車両5rがジレンマ状態に陥ってブレーキ開始タイミングが遅れるおそれのある状況である。そのため、自車両5が停止しようとしてブレーキをかけても、後続車両5rが速やかにブレーキをかけることができず、後続車両5rが自車両5に追突することが懸念される。よって、自車両5の運転者は、停止線12で停止すると判断した場合、その判断の後、例えば早めに減速を開始したり緩やかに減速したりして、後続車両5rから追突されないように特に注意して運転することが要求される状況であると言える。
次に、図3に示す自車両5の運転状況について説明すると、図1の先行車両5fおよび図2の後続車両5rの両方が存在する。すなわち、これらの車両V、Vf、Vrが図3の実線に示す位置を走行している時には青信号であり、その後、点線位置に達した時点で黄信号に切り替わる。この時、これら全ての車両V、Vf、Vrがジレンマ領域10bに位置している。
したがって、図3に示す自車両5の運転状況は、図1での注意点および図2での注意点の両方について、特に注意が必要となる状況であると言える。すなわち、数秒後に青信号から黄信号に切り替わることに伴い、先行車両5fおよび後続車両5rのいずれもがジレンマ状態に陥る蓋然性が高い。そのため、自車両5の運転者は、先行車両5fが急ブレーキをかけても追突しないように十分な車間距離をとるように注意すると同時に、後続車両5rから追突されないようにブレーキ操作に注意することが特に要求される状況であると言える。
図4に示す注意喚起制御装置は、自車両5に搭載された電子制御ユニットであるECU14により提供される。ECU14は、各種プログラムが記憶されたメモリと、それらのプログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)とを備える。CPUの処理内容に応じて、図4に示す各種ブロックの機能をECU14が発揮する。
自車両位置特定部20は、車両に搭載されたGPS受信装置21、ジャイロセンサ22、加速度センサ23、車輪速度センサ24、および地図情報記憶装置25からの情報に基づき、自車両5の走行位置を特定する。具体的には、地図情報記憶装置25に記憶された地図上における、GPS受信装置21により検出された自車両5の位置を特定する。また、ジャイロセンサ22、加速度センサ23および車輪速度センサ24の検出値に基づき、地図上における自車両5の進行方向を特定し、さらに、所定時間以内に信号機11を備える交差点10aが現れるか否かを推測する。
他車情報取得部30は、車両に搭載されたミリ波レーダ31およびカメラ32の検出結果に基づき、先行車両5fおよび後続車両5rといった他車両の有無を判定する。そして、他車両の走行速度、加速度および自車両5との車間距離を、他車情報として算出する。
信号情報取得部40は、通信部41が路側機13から受信した信号情報を取得する。路側機13は、道路10の路側帯または信号機11に設置されており、信号情報を無線送信する。信号情報には、信号機11が設置された交差点10aの停止線12の位置、青色、黄色、赤色に切り替わる時刻の情報といった、信号機11の作動情報が含まれている。通信部41は、路側機13から送信される信号情報を受信して、ECU14へ送信する。
注意要否判定部50および他車状態予測部51は、自車両位置特定部20が算出した自車両5の走行位置等の情報を含む自車情報と、他車情報取得部30が算出した他車情報と、信号情報取得部40が取得した信号情報とを取得する。他車状態予測部51は、所定時間以内に他車両がジレンマ状態に陥るか否かを予測する。例えば、自車情報、他車情報および信号情報に基づき、図1、図2または図3の実線に示す状況下で、点線に示す状況になるか否かを予測する。他車両がジレンマ状態に陥ると予測された場合、注意要否判定部50は、その旨を自車両5の運転者に注意喚起する必要が有るか否かを判定する。
注意喚起制御部60は、注意要否判定部50が注意喚起必要と判定した場合に、注意喚起する音声および表示の内容を指令する信号を、スピーカ62および表示装置61へ出力する。例えば、予め記憶しておいた複数種類の音声内容および表示内容の中から、状況に適した内容を選択して、設定した音声内容および表示内容の指令信号を出力する。
これにより、図1〜図3の実線に示す状況下で、ジレンマ状態に陥る他車両に対して注意して運転することを促すよう、表示装置61およびスピーカ62が音声と表示で注意喚起する。具体的には、例えば図1の状況では「先行車両に注意して下さい」といった音声を出力する。図2の状況では「後続車両に注意して下さい」といった音声を出力する。図3の状況では「前後の車両に注意して下さい」といった音声を出力する。表示装置61およびスピーカ62は、上述の注意喚起以外の表示や音も出力可能であるが、注意喚起している時の表示装置61およびスピーカ62は、注意喚起装置を提供する。
システム制御部70は、ナビゲート装置や障害物注意喚起装置等として機能する。例えば、ナビゲート装置として機能するシステム制御部70は、自車両位置特定部20により算出された自車情報に基づき、地図情報および自車両位置を表示装置61に表示させる。障害物注意喚起装置として機能するシステム制御部70は、他車情報取得部30により算出された他車情報に基づき、他車両との接触可能性が高い場合には警報音をスピーカ62に出力させる。
記録部80は、自車情報、他車情報および信号情報等の各種情報を記憶する。例えば、カメラ32で撮影された自車両5の周辺状況の映像データを記録部80が記憶して、ドライブレコーダとして機能する。
図5に示すフローチャートは、ECU14が備える上記CPUにより所定周期で繰返し実行される処理である。この処理により、自車両位置特定部20、注意要否判定部50、他車状態予測部51および注意喚起制御部60としてECU14が機能する。
先ず、図5のステップS10において、通信部41が路側機13と通信したか否かを判定する。通信したと判定されれば、続くステップS11にて信号情報を路側機13から取得する。続くステップS12では、自車両5から停止線12までの距離を表した停止線距離Lsを算出する。例えば、信号情報に含まれる停止線12の位置および、自車情報に含まれる自車両5の位置に基づき、停止線距離Lsを算出する。
続くステップS13では、自車両5と停止線12までの間に先行車両5fが存在するか否かを判定する。例えば、他車情報に含まれる先行車両5fとの車間距離、先述した停止線12の位置、および自車両5の位置に基づき、先行車両5fが存在するか否かを判定する。先行車両5fが存在すると判定された場合、次のステップS14において、先行車両5fに対して注意して運転するように注意喚起することが必要であるか否かを判定する処理を実施する。詳細には、後述する図6の処理手順にしたがって要否判定する。
続くステップS15では、自車両5の後方に後続車両5rが存在するか否かを判定する。例えば、他車情報に含まれる後続車両5rとの車間距離が所定距離未満であれば、後続車両5rが存在すると判定する。後続車両5rが存在すると判定された場合、次のステップS16において、後続車両5rに対して注意して運転するように注意喚起することが必要であるか否かを判定する処理を実施する。詳細には、後述する図7の処理手順にしたがって要否判定する。
続くステップS17では、注意喚起の内容を設定し、設定した内容にしたがって表示装置61およびスピーカ62の作動を制御する。詳細には、後述する図8の処理手順にしたがって制御する。続くステップS18では、注意喚起が必要な状態(要注意状態)から自車両5が回避したか否かを判定する。例えば、他車両がジレンマ状態から回避した場合や、自車両5の車速が所定未満の低速または停止の状態になった場合に、要注意状態から回避したと判定し、図5の処理を終了する。一方、要注意状態から回避していないと判定された場合には、ステップS17による注意喚起処理を継続する。
次に、図5のステップS14の詳細について、図6を用いて説明する。先ず、図6のステップS20において、自車両5の停止線距離Lsを更新する。すなわち、図5のステップS11にて信号情報を取得した時点から現時点までの走行距離分だけ、ステップS12で算出した停止線距離Lsが短くなっている筈である。この点を鑑みて、ステップS20の処理時点における停止線距離Lsを、車速Vfおよび経過時間に応じた上記走行距離の分だけ減算して更新する。
続くステップS21では、先行車両5fと自車両5との車間距離Lsfを計測する。具体的には、ミリ波レーダ31の検出値に基づき車間距離Lsf算出する。続くステップS22では、ステップS20で取得した停止線距離Lsから、ステップS21で取得した車間距離Lsfを減算して、先行車両5fから停止線12までの距離を表した停止線距離Lfを算出する。
続くステップS23では、先行車両5fの車速Vfを計測する。具体的には、車輪速度センサ24により計測された自車両5の車速と、ステップS21で計測された車間距離Lsfの単位時間あたりの変化量とに基づき、先行車両5fの車速Vfを算出する。
続くステップS24では、青信号から黄信号に切り替わる時点つまり黄信号開始時点tにおける、先行車両5fから停止線12までの距離である停止線距離Lftを予測する。この停止線距離Lftは、ステップS22で算出した停止線距離Lf、およびステップS23で取得した車速Vfに基づき予測する。例えば、現時点での先行車両5fの車速Vfおよび加減速度が黄信号開始時点tまで維持されるものと仮定して、上記予測を実施する。また、黄信号開始時点tには、通信部41が取得した信号情報に含まれる次回黄信号に切り替わる時刻を用いる。
続くステップS25では、黄信号開始時点tにおける、先行車両5fの車速Vftを算出して予測する。具体的には、現時点での先行車両5fの車速および加減速度が、黄信号開始時点tまで維持されるものと仮定して、上述の車速Vftを算出する。この算出を実施するにあたり、現時点における先行車両5fの車速VfにはステップS23で算出された値を用いる。黄信号開始時点tには、通信部41が取得した信号情報に含まれる次回黄信号に切り替わる時刻を用いる。
続くステップS26では、黄信号開始時点tにおいて、先行車両5fがジレンマ領域10bに位置し、先行車両5fの運転者がジレンマ状態になるか否かを予測判定する。この予測判定は、ステップS24で算出した停止線距離LftおよびステップS25で算出した車速Vftに基づき実施する。具体的には、停止線距離Lftおよび車速Vftの数値の組む合わせのうち、ジレンマ状態になる数値範囲(ジレンマ範囲)を予め試験して取得しておく。ジレンマ範囲は、マップ等の形式でECU14に予め記憶されている。そして、ステップS24、S25で算出した停止線距離Lftおよび車速Vftの数値の組み合わせが、ジレンマ範囲に該当する場合に、黄信号開始時点tに先行車両5fがジレンマ状態になると予測判定する。
ジレンマ状態になると判定された場合、続くステップS27において、現時点における車間距離Lsfが第1所定距離TH1未満であるか否かを判定する。第1所定距離TH1未満であると判定された場合、続くステップS28において、先行車両5fに対する注意喚起が必要であるとみなし、対先行車両用の注意喚起要フラグをオンに設定する。このフラグは、図5のステップS18にて要注意状態が回避されたと判定された時点でオフに設定される。一方、ステップS27にて第1所定距離TH1未満でないと判定された場合、ステップS28にて注意喚起要フラグをオンにすることなく、図6の処理を終了する。
次に、図5のステップS16の詳細について、図7を用いて説明する。先ず、図7のステップS30において、図6のステップS20と同様にして自車両5の停止線距離Lsを更新する。
続くステップS31では、後続車両5rと自車両5との車間距離Lsrを計測する。具体的には、ミリ波レーダ31の検出値に基づき車間距離Lsr算出する。続くステップS32では、ステップS30で取得した停止線距離Lrから、ステップS31で取得した車間距離Lsrを加算して、後続車両5rから停止線12までの距離を表した停止線距離Lrを算出する。
続くステップS33では、後続車両5rの車速Vrを計測する。具体的には、車輪速度センサ24により計測された自車両5の車速と、ステップS31で計測された車間距離Lsrの単位時間あたりの変化量とに基づき、後続車両5rの車速Vrを算出する。
続くステップS34では、青信号から黄信号に切り替わる時点つまり黄信号開始時点tにおける、後続車両5rから停止線12までの距離である停止線距離Lrtを予測する。この停止線距離Lrtは、ステップS32で算出した停止線距離Lr、およびステップS33で取得した車速Vrに基づき予測する。例えば、現時点での後続車両5rの車速Vrおよび加減速度が黄信号開始時点tまで維持されるものと仮定して、上記予測を実施する。また、黄信号開始時点tには、通信部41が取得した信号情報に含まれる次回黄信号に切り替わる時刻を用いる。
続くステップS35では、黄信号開始時点tにおける、後続車両5rの車速Vrtを算出して予測する。具体的には、現時点での後続車両5rの車速および加減速度が、黄信号開始時点tまで維持されるものと仮定して、上述の車速Vrtを算出する。この算出を実施するにあたり、現時点における後続車両5rの車速VrにはステップS33で算出された値を用いる。黄信号開始時点tには、通信部41が取得した信号情報に含まれる次回黄信号に切り替わる時刻を用いる。
続くステップS36では、黄信号開始時点tにおいて、後続車両5rがジレンマ領域10bに位置し、後続車両5rの運転者がジレンマ状態になるか否かを予測判定する。この予測判定は、ステップS34で算出した停止線距離LrtおよびステップS35で算出した車速Vrtに基づき実施する。具体的には、停止線距離Lrtおよび車速Vrtの数値の組む合わせのうち、ジレンマ状態になる数値範囲(ジレンマ範囲)を予め試験して取得しておく。ジレンマ範囲は、マップ等の形式でECU14に予め記憶されている。そして、ステップS34、S35で算出した停止線距離Lrtおよび車速Vrtの数値の組み合わせが、ジレンマ範囲に該当する場合に、黄信号開始時点tに後続車両5rがジレンマ状態になると予測判定する。
ジレンマ状態になると判定された場合、続くステップS37において、自車両5がジレンマ領域を通過する可能性があるか否かを判定する。通過可能性がないと判定された場合、続くステップS38において、後続車両5rに対する注意喚起が必要であるとみなし、対後続車両用の注意喚起要フラグをオンに設定する。このフラグは、図5のステップS18にて要注意状態が回避されたと判定された時点でオフに設定される。一方、ステップS37にて通過可能性があると判定された場合、ステップS38にて注意喚起要フラグをオンにすることなく、図7の処理を終了する。
次に、図5のステップS17の詳細について、図8を用いて説明する。先ず、図8のステップS40において、対先行車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されているか否かを判定する。該フラグがオンに設定されていると判定された場合には、次のステップS41において、先行車両5fとの車間距離を十分に取ることを促す内容の音声および表示をするように、表示装置61およびスピーカ62の作動を制御する。この注意喚起は、ジレンマ状態に起因して先行車両5fが急ブレーキをかけた場合であっても、その先行車両5fに追突することを避けるためのものである。
例えば、「先行車両に注意して下さい」といった注意喚起の音声を出力する。或いは「先行車両の急ブレーキに注意して下さい」といった、先行車両5fが急ブレーキするおそれを注意喚起する音声を出力する。或いは「先行車両との車間距離を十分にとって下さい」といった、ジレンマ状態の先行車両5fに対処する方法を案内する音声を出力する。
一方、ステップS40において、対先行車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されていないと否定判定された場合には、ステップS42において、対後続車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されているか否かを判定する。該フラグがオンに設定されていると判定された場合には、次のステップS43において以下の内容の音声および表示をするように、表示装置61およびスピーカ62の作動を制御する。すなわち、先の交差点10aで後続車両5rからの追突の可能性があるとして、急な減速を避けることを促す内容である。この注意喚起は、ジレンマ状態に起因して後続車両5rの運転者によるブレーキ操作の反応が遅い場合であっても、その後続車両5rから追突されることを避けるためのものである。
例えば、「後続車両に注意して下さい」といった注意喚起の音声を出力する。或いは「後続車両の追突に注意して下さい」といった、後続車両5rのブレーキ反応が遅いおそれを注意喚起する音声を出力する。或いは「緩やかにブレーキをかけて下さい」といったジレンマ状態の後続車両5rに対処する方法を案内する音声を出力する。
ステップS41またはステップS43による注意喚起が実行された場合、或いはステップS42にて対後続車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されていないと否定判定された場合には、図8の処理を終了する。すなわち、先行車両5fおよび後続車両5rの両方についてジレンマ状態に陥ると予測された場合、つまり、対先行車両用と対後続車両用の両方の注意喚起要フラグがオンに設定されている場合には、対先行車両用の注意喚起を優先させる。つまり、両フラグがオンの場合には、ステップS41にて対先行車両用の注意喚起を実行させる一方で、ステップS43による対後続車両用の注意喚起を禁止する。
以上により、本実施形態によれば、先行車両5fまたは後続車両5rの走行情報である他車情報、および信号情報を取得するので、他車両がジレンマ状態に陥るか否かを予測できる。そして、他車両がジレンマ状態に陥ると予測された場合には、自車両5の運転者へ注意喚起するので、ジレンマ状態に陥ると予測されている他車両に気を付けて運転することを、自車両5の運転者は促される。
例えば、先行車両5fがジレンマ状態に陥って急ブレーキをかけることが予測された場合、そのような先行車両5fに対して、ジレンマ状態に陥る前の時点から、車間距離を十分に空ける等、注意して運転することを促すことができる。また、後続車両5rがジレンマ状態に陥ってブレーキ操作が遅くなることが予測された場合、そのような後続車両5rに対して、ジレンマ状態に陥る前の時点から、緩やかにブレーキをかけたり車速を落としたりする等、注意して運転することを促すことができる。
さらに本実施形態によれば、先行車両5fがジレンマ状態に陥ると予測されたことに基づく対先行車両用の注意喚起は、先行車両5fとの車間距離を十分に取ることを促す内容の音声出力である。また、後続車両5rがジレンマ状態に陥ると予測されたことに基づく対後続車両用の注意喚起は、急な減速を避けることを促す内容の音声出力である。そのため、アラーム音を出力するだけの場合に比べて、運転者がどのように対処したら良いのかを速やかに把握しやすくなる。
さらに本実施形態では、注意喚起制御部60は、先行車両5fおよび後続車両5rの両方についてジレンマ状態に陥ると予測された場合には、対先行車両用の内容で注意喚起させる一方で、対後続車両用の注意喚起を禁止させる。
ここで、本実施形態に反して、両方の注意喚起を連続または同時に行う場合には、注意喚起の内容を十分に把握できず、どのように対処したら良いのか運転者を困惑させることが懸念される。この懸念に対して本実施形態では対後続車両用の注意喚起を禁止させるので、上記懸念を解消できる。
また、対先行車両用の注意喚起に対しては車間距離Lsfを十分にとる対処が実行できるのに対し、対後続車両用の注意喚起に対して車間距離Lsrを十分にとる対処については、先行車両5fへの対処に比べて実行が困難である。この点を鑑みた本実施形態では、対処が容易な対先行車両用の注意喚起を優先するので、上記懸念を解消しつつ、より有益な注意喚起を提供できる。
さらに本実施形態では、先行車両5fについてジレンマ状態に陥ると予測された場合に、先行車両5fと自車両5との車間距離Lsfが第1所定距離TH1未満であることを条件として、注意喚起を実行させる。そのため、先行車両5fがジレンマ状態になると予測された場合であっても、車間距離Lsfが十分に確保されていれば、注意喚起が実行されなくなる。よって、車間距離Lsfが十分に確保されている場合にまで注意喚起を実行することで運転者に煩わしく感じさせることを回避できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、先行車両5fおよび後続車両5rの両方についてジレンマ状態に陥ると予測された場合、対先行車両用の注意喚起を優先して実行させる一方で、対後続車両用の注意喚起を禁止させている。そして、両方についてジレンマ状態に陥ると予測された場合と、先行車両5fについてジレンマ状態に陥ると予測された場合とで、同じ音声内容で注意喚起する。
これに対し本実施形態では、両方についてジレンマ状態に陥ると予測された場合と、先行車両5fについてジレンマ状態に陥ると予測された場合とで、異なる音声内容で注意喚起する。例えば、ジレンマ状態に陥る後続車両5rが存在しないと予測され、かつ、先行車両5fがジレンマ状態に陥ると予測された場合には、「車間距離を十分に確保して下さい」といった内容の音声で注意喚起する。一方、両方についてジレンマ状態が予測される場合には「後方に注意しながら車間距離を十分に確保して下さい」といった内容の音声で注意喚起する。
具体的には、第1実施形態に係る図8の処理を、本実施形態では図9の処理に変更する。先ず、図9のステップS50において、対先行車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されているか否かを判定する。該フラグがオンに設定されていると判定された場合には、次のステップS51において、対後続車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されているか否かを判定する。該フラグがオンに設定されていると判定された場合、つまり、対先行車両用と対後続車両用の両方の注意喚起要フラグがオンに設定されている場合には、ステップS52に進む。該ステップS52では、現時点における後続車両5rとの車間距離Lsrが第2所定距離TH2未満であるか否かを判定する。第2所定距離TH2未満であると判定された場合、次のステップS53において、先行車両5fおよび後続車両5rの両方に対する注意喚起を実行させる。
より正確には、ジレンマ状態の後続車両5rが存在することを加味しつつ、ジレンマ状態の先行車両5fに注意して運転するように注意喚起させる。具体的には、後続車両5rから追突されないように緩やかにブレーキをかけるといったことに気をつけながら、先行車両5fとの車間距離を十分に取ることを促す内容の音声および表示をするように、表示装置61およびスピーカ62の作動を制御する。例えば、「前後の車両に注意して下さい」といった注意喚起の音声を出力する。或いは「後続車両に注意しつつ、先行車両の急ブレーキに注意して下さい」といった、後続車両5rのブレーキが遅れるおそれを注意喚起しつつ、先行車両5fが急ブレーキするおそれを注意喚起する音声を出力する。或いは「後続車両に注意しつつ、先行車両との車間距離を十分にとって下さい」といった、ジレンマ状態の先行車両5fに対処する方法を案内する音声を出力する。
一方、ステップS51において、対後続車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されていないと否定判定された場合、つまり両フラグのうち対先行車両用のフラグがオンに設定されている場合には、ステップS54に進む。また、ステップS52にて車間距離Lsrが第2所定距離TH2以上であると判定された場合にも、ステップS54に進む。このステップS54では、ジレンマ状態の先行車両5fに注意して運転するように注意喚起させる。具体的には、図8のステップS41と同様にして、先行車両5fとの車間距離を十分に取ることを促す内容の音声および表示をするように、表示装置61およびスピーカ62の作動を制御する。
ステップS50において、対後続車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されていないと否定判定された場合、次のステップS55において、対後続車両用の注意喚起要フラグがオンに設定されているか否かを判定する。該フラグがオンに設定されていると判定された場合、つまり両フラグのうち対後続車両用のフラグがオンに設定されている場合には、ステップS56に進む。
このステップS56では、ステップS52と同様にして、現時点における後続車両5rとの車間距離Lsrが第2所定距離TH2未満であるか否かを判定する。第2所定距離TH2未満であると判定された場合、次のステップS57において、ジレンマ状態の後続車両5rに注意して運転するように注意喚起させる。具体的には、図8のステップS43と同様にして、急な減速を避けることを促す内容の音声および表示をするように、表示装置61およびスピーカ62の作動を制御する。ステップS56にて車間距離Lsrが第2所定距離TH2以上であると判定された場合、後続車両に対する注意喚起を実施することなく、図9の処理を終了する。
ステップS53、S54、S57による注意喚起が実行された場合、或いはステップS50、S55にて対先行車両用および対後続車両用の注意喚起要フラグが共にオンに設定されていないと否定判定された場合には、図9の処理を終了する。
以上により、本実施形態では、先行車両5fについはジレンマ状態に陥るが後続車両5rについてはジレンマ状態に陥らないと予測された場合と、両方についてジレンマ状態に陥ると予測された場合とで、注意喚起の内容を異ならせる。そのため、両方についてジレンマ状態が予測された場合には、先行車両5fのみならず後続車両5rに対しても注意を促すことができる。また、後続車両5rについてはジレンマ状態が予測されずに先行車両5fについてジレンマ状態が予測された場合には、後続車両5rに対する不要な注意を促すこと無く、先行車両5fに集中して注意を促すようにできる。
さらに本実施形態では、後続車両5rについてジレンマ状態に陥ると予測された場合に、後続車両5rと自車両5との車間距離Lsrが第2所定距離TH2未満であることを条件として、注意喚起装置を実行させる。そのため、後続車両5rがジレンマ状態になると予測された場合であっても、車間距離Lsrが十分に確保されていれば、注意喚起が実行されなくなる。よって、車間距離Lsrが十分に確保されている場合にまで注意喚起を実行することで運転者に煩わしく感じさせることを回避できる。
(他の実施形態)
以上、発明の好ましい実施形態について説明したが、発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、以下に例示するように種々変形して実施することが可能である。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
スピーカ62を注意喚起装置として機能させるにあたり、注意喚起させる音声を出力することに換えて、ビープ音等の警告音を出力させてもよい。
注意喚起装置を作動させる場合には、自動で車速が低下するように、自車両5の走行動力や制動力を自動制御してもよい。例えば、内燃機関や走行モータの出力を自動で低下させたり、ブレーキ装置を自動で作動させたりすることが具体例として挙げられる。
ECU14(制御装置)が提供する手段および/または機能は、実体的な記憶媒体に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置がハードウェアである回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。