かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、片手でより容易に勾配座金とボルトとを供回りさせずに保持することの可能な勾配座金供回り防止具及びこれを用いたチャンネル材への勾配座金及びボルトの取付方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る勾配座金供回り防止具の特徴は、勾配座金とこの勾配座金を貫通するボルト又はナットとをヘッドで同時に保持し、勾配座金がボルトの締め付けに追従して回転することを防止する構成において、前記ヘッドを一対設け、各ヘッドは勾配座金の側面及びボルト頭部又はナットに嵌合する回転防止部を備え、一対のボルトがこれらのボルトの軸方向に隔てられ且つチャンネル材の各フランジ等の被固定部材を貫通した姿勢の対向し合う前記各ボルト頭部又は前記ナットに前記各ヘッドを対応させてこれら両ヘッドを連結部材で連結し、これらヘッドの少なくともいずれかに前記ボルトの軸に交差する方向に延び前記被固定部材に当接する当接部を設けたことにある。
同特徴によれば、一対のヘッドに設けられた回転防止部で、勾配座金がボルトと供回りしてフランジの傾斜に対して勾配座金の傾斜がずれるのを防止する。両方のボルトに嵌合して、ナットを締め上げても、当接部が当勾配座金供回り防止具の回転を阻止する。当勾配座金供回り防止具を片手で押さえるだけで、他のスパナで外側からナットを締め上げると締結できるので、作業が極めて行いやすい。
上記特徴において、前記当接部が前記両ヘッドのうち一方だけでもよいが、両方に設けられていてもよい。前記当接部を前記両ヘッドの双方に設けることで、ナットに発生するトルクにより有効に対処でき、当勾配座金供回り防止具のチャンネル材に対する姿勢もより安定する。
上記特徴において、前記各ヘッドが異なる呼び径のボルトに対応するとよい。
一方、上記勾配座金供回り防止具を用いたチャンネル材への勾配座金及びボルトの取付方法の特徴は、勾配座金とこの勾配座金を貫通するボルト又はナットとをヘッドで同時に保持し、勾配座金がボルトの締め付けに追従して回転することを防止する方法において、前記勾配座金供回り防止具は、前記ヘッドを一対有し、各ヘッドは勾配座金の側面及びボルト頭部又はナットに嵌合する回転防止部を備え、一対のボルトがこれらのボルトの軸方向に隔てられ且つチャンネル材の各フランジを貫通した姿勢の前記各ボルト頭部又は前記ナットに前記各ヘッドを対応させてこれら両ヘッドを連結部材で連結し、これらヘッドの少なくともいずれかに前記ボルトの軸に交差する方向に延び前記被固定部材に当接する当接部を設けたものであり、前記各フランジに貫通させ、前記ボルトの軸方向に隔てられ且つ対向し合う前記各ボルト頭部又は前記各ナット及び各勾配座金に前記各ヘッドを嵌合させ、前記当接部を前記フランジの端面に当接させた状態で勾配座金供回り防止具をチャンネル材のウエブ側に押圧し、前記各ボルトの先端に螺合されたナット又は前記各ボルト頭部を締め付けることにある。
上記本発明に係る勾配座金供回り防止具及びこれを用いたチャンネル材への勾配座金及びボルトの取付方法の特徴によれば、片手でより容易に勾配座金とボルトとを供回りさせずに保持することが可能となった。
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
次に、適宜図1〜9を参照しながら、本発明に係る勾配座金供回り防止具1をさらに詳しく説明する。
本発明に係る勾配座金供回り防止具1は、図1〜4に示すように、縦チャンネル材100aの一対のフランジ102に対し、横チャンネル材100bを2本それぞれボルト50、勾配座金60及びナット70を利用して固定しようとするものである。
被固定部材であるチャンネル材100は、一対のフランジ102が先端に向かうに従って薄くなるように形成され、その結果、フランジ102の内側にはテーパーが付与されている。このテーパーでボルト50又はナット70が傾いて接触するため、このテーパー分だけ勾配の付与された勾配座金60が用いられている。本実施例におけるボルト50、勾配座金60及びナット70は、両フランジ102に対し呼び径の異なるものが固定される。第一ボルト50a、第一勾配座金60a、第一ナット70aが呼び径の大きいもの、第二ボルト50b、第二勾配座金60b、第二ナット70bが呼び径の小さいものである。両フランジ102、102の貫通孔103,103はフランジにおける同じ位置に形成されている。なお、貫通孔103の中心からフランジ102端部までの最短距離と、後述の第一内回転防止部11の中心から当接部40のフランジ102端部と接する面までの最短距離が略同一となるように第一内回転防止部11が形成されている。なお、第二内回転防止部21の中心から当接部40のフランジ102端部と接する面までの最短距離も、同様である。
勾配座金供回り防止具1は、図1〜9に示すように、一対のヘッド10,20と、これらヘッド10,20を連結する連結部材30と、これらヘッド10,20に設けられ、ボルト50の軸L1,L2に交差する方向Mに延びチャンネル材100に当接する当接部40とを設けてある。第一ヘッド10は、呼び径の大きな第一ボルト50a又は第一ナット70aに嵌合する第一内回転防止部11と、第一勾配座金60aに嵌合する第一外回転防止部12とを備えている。一方、第二ヘッド20は、呼び径の小さな第二ボルト50b又は第二ナット70bに嵌合する第二内回転防止部21と、第二勾配座金60bに嵌合する第二外回転防止部22を備えている。
当接部40は、ボルト50の軸L1,L2と平行に長手方向を配置した連結部材30に直交して交差する方向Mに延ばして、チャンネル材100のフランジ102の端縁に当接するように設けてある。本実施形態において当接部40は、その裏面のほぼ全面がフランジ102の端縁に当接しており、安定的である。但し、この当接部40は、ボルト50に発生するトルクに耐えることが目的であるため、より回転モーメントの大きな先端部のみでフランジ102に当接するように構成してもよい。また、当接部40は、第一、第二ヘッド10,20のうち一方側だけに設けるようにしてもよい。
使用に際しては、図1〜5に示すように、縦チャンネル材100aにおけるフランジ102の貫通孔103及び横チャンネル材100bにおけるウエブ101の貫通孔104にそれぞれボルト50を貫通させる。各ボルト50はボルト頭部51をフランジ102内側とし、勾配座金60を通してから、各貫通孔103,104を通し、ナット70を手締めする。
勾配座金60とボルト頭部51の方向を合わせてから、各回転防止部11,12,21,22を、各勾配座金60a,60b、各ボルト50a,50bに嵌合させるように勾配座金供回り防止具1を縦チャンネル材100aのフランジ102内に近接させる。一方の手で各当接部40をフランジ102に当接させた状態で、他方の手でスパナ200を操作して、ナット70を締め付け、横チャンネル材100bの固定が完了する。
第一ボルト50a、第二ボルト50bを同時に仮止めして、上記固定操作を行っても良いが、第一ボルト50a、第二ボルト50bを個別に仮止めして、一本ずつ上記固定操作を行っても良い。
また、上記とは異なり、図9に示すように、各ボルト50のねじ部51とナット70とを縦チャンネル材100aのフランジ102内側に位置させて、上記固定操作を行っても良い。この場合、ナット70を第一、第二内回転防止部11,21に嵌合させ、スパナ200で各ボルト50のボルト頭部51を操作することとなる。
なお、縦チャンネル材100aに固定される部材は、横チャンネル材100bに限らず、アングル材や、計器などが保管されている鋼製の箱等でも良い。また、勾配座金60を必要とする部材であれば、縦チャンネル材100aの替わりに被固定部材として用いても良い。また、上記実施形態では、各ヘッド10,20は呼び径が異なるボルト50a,50bに対応したが、両ヘッド10,20が同じ呼び径のボルト50に対応しても良い。