以下、図面を参照し、本発明の車両制御システム、車両制御方法、および車両制御プログラムの実施形態について説明する。
<共通構成>
図1は、各実施形態の車両制御システム100が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の構成要素を示す図である。車両制御システム100が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動される。
図1に示すように、自車両Mには、ファインダ20−1から20−7、レーダ30−1から30−6、およびカメラ40等のセンサと、ナビゲーション装置50と、車両制御システム100とが搭載される。
ファインダ20−1から20−7は、例えば、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。例えば、ファインダ20−1は、フロントグリル等に取り付けられ、ファインダ20−2および20−3は、車体の側面やドアミラー、前照灯内部、側方灯付近等に取り付けられる。ファインダ20−4は、トランクリッド等に取り付けられ、ファインダ20−5および20−6は、車体の側面や尾灯内部等に取り付けられる。上述したファインダ20−1から20−6は、例えば、水平方向に関して150度程度の検出領域を有している。また、ファインダ20−7は、ルーフ等に取り付けられる。ファインダ20−7は、例えば、水平方向に関して360度の検出領域を有している。
レーダ30−1および30−4は、例えば、奥行き方向の検出領域が他のレーダよりも広い長距離ミリ波レーダである。また、レーダ30−2、30−3、30−5、30−6は、レーダ30−1および30−4よりも奥行き方向の検出領域が狭い中距離ミリ波レーダである。
以下、ファインダ20−1から20−7を特段区別しない場合は、単に「ファインダ20」と記載し、レーダ30−1から30−6を特段区別しない場合は、単に「レーダ30」と記載する。レーダ30は、例えば、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体を検出する。
カメラ40は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の個体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ40は、フロントウィンドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ40は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの前方を撮像する。カメラ40は、複数のカメラを含むステレオカメラであってもよい。
なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態に係る車両制御システム100を搭載した自車両Mの機能構成図である。自車両Mには、ファインダ20、レーダ30、およびカメラ40の他、ナビゲーション装置50と、車両センサ60と、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー(或いはパドルシフト)、ステアリングホイールなどの操作デバイス(操作子)70と、アクセル開度センサ、ブレーキ踏量センサ(ブレーキスイッチ)、シフト位置センサ、ステアリング操舵角センサ(またはステアリングトルクセンサ)などの操作検出センサ72と、通信装置75と、切替スイッチ80と、走行駆動力出力装置90、ステアリング装置92、ブレーキ装置94と、車両制御システム100とが搭載される。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。例示した操作デバイスはあくまで一例であり、ジョイスティック、ボタン、ダイヤルスイッチ、GUI(Graphical User Interface)スイッチなどが自車両Mに搭載されても構わない。なお、特許請求の範囲における車両制御システムは、車両制御システム100だけでなく、図2に示した構成のうち、車両制御システム100以外の構成(ファインダ20など)を含んでもよい。
ナビゲーション装置50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイク等を有する。ナビゲーション装置50は、GNSS受信機によって自車両Mの位置を特定し、その位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。ナビゲーション装置50により導出された経路は、車両制御システム100の走行車線決定部110に提供される。自車両Mの位置は、車両センサ60の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、車両制御システム100が手動運転モードを実行している際に、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。なお、自車両Mの位置を特定するための構成は、ナビゲーション装置50とは独立して設けられてもよい。また、ナビゲーション装置50は、例えば、ユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。この場合、端末装置と車両制御システム100との間で、無線または有線による通信によって情報の送受信が行われる。
車両センサ60は、車速を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
通信装置75は、セルラー通信網、Wi−Fi網、DSRCなどを利用した車車間通信網などを利用した無線通信を行う。通信装置75は、例えば、無線基地局を介してインターネットに接続することで、情報提供サーバから情報を取得する。
操作検出センサ72は、検出結果としてのアクセル開度、ブレーキ踏量、シフト位置、ステアリング操舵角、ステアリングトルクなどを車両制御システム100に出力する。なお、これに代えて、運転モードによっては操作検出センサ72の検出結果が、直接的に走行駆動力出力装置90、ステアリング装置92、またはブレーキ装置94に出力されてもよい。
切替スイッチ80は、車両乗員によって操作されるスイッチである。切替スイッチ80は、車両乗員の操作を受け付け、自車両Mの運転モードを指定する運転モード指定信号を生成し、制御切替部140に出力する。切替スイッチ80は、GUI(Graphical User Interface)スイッチ、機械式スイッチのいずれであってもよい。
走行駆動力出力装置90は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置90は、例えば、自車両Mが内燃機関を動力源とした自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンを制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)を備え、自車両Mが電動機を動力源とした電気自動車である場合、走行用モータおよび走行用モータを制御するモータECUを備え、自車両Mがハイブリッド自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンECUと走行用モータおよびモータECUとを備える。走行駆動力出力装置90がエンジンのみを含む場合、エンジンECUは、後述する走行制御部160から入力される情報に従って、エンジンのスロットル開度やシフト段等を調整する。走行駆動力出力装置90が走行用モータのみを含む場合、モータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整する。走行駆動力出力装置90がエンジンおよび走行用モータを含む場合、エンジンECUおよびモータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、互いに協調して走行駆動力を制御する。
ステアリング装置92は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、車両制御システム100から入力される情報、或いは入力されるステアリング操舵角またはステアリングトルクの情報に従って電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
ブレーキ装置94は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、制動制御部とを備える電動サーボブレーキ装置である。電動サーボブレーキ装置の制動制御部は、走行制御部160から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。電動サーボブレーキ装置は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置94は、上記説明した電動サーボブレーキ装置に限らず、電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。電子制御式油圧ブレーキ装置は、走行制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する。また、ブレーキ装置94は、走行駆動力出力装置90に含まれ得る走行用モータによる回生ブレーキを含んでもよい。
[車両制御システム]
以下、車両制御システム100について説明する。車両制御システム100は、例えば、一以上のプロセッサまたは同等の機能を有するハードウェアにより実現される。車両制御システム100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、記憶装置、および通信インターフェースが内部バスによって接続されたECU(Electronic Control Unit)、或いはMPU(Micro-Processing Unit)などが組み合わされた構成であってよい。
車両制御システム100は、例えば、走行車線決定部110と、自動運転制御部120と、記憶部180とを備える。自動運転制御部120は、例えば、自車位置認識部122と、外界認識部124と、行動計画生成部126と、軌道生成部130と、走行制御部160と、切替制御部170とを備える。走行車線決定部110、および自動運転制御部120の各部のうち一部または全部は、プロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
記憶部180には、例えば、高精度地図情報182、走行車線情報184、行動計画情報186などの情報が格納される。記憶部180は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部180に格納されていてもよいし、車載インターネット設備等を介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムは、そのプログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部180にインストールされてもよい。また、車両制御システム100は、複数のコンピュータ装置によって分散化されたものであってもよい。
目標車線決定部110は、例えば、MPUにより実現される。目標車線決定部110は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、高精度地図情報182を参照してブロックごとに目標車線を決定する。目標車線決定部110は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。目標車線決定部110は、例えば、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な走行経路を走行できるように、目標車線を決定する。目標車線決定部110により決定された目標車線は、目標車線情報184として記憶部180に記憶される。
高精度地図情報182は、ナビゲーション装置50が有するナビ地図よりも高精度な地図情報である。高精度地図情報182は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、高精度地図情報182には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。道路情報には、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐ポイントの位置、道路に設けられた標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事や交通事故、渋滞等によって車線が封鎖されているといった情報が含まれる。
自動運転制御部120の自車位置認識部122は、記憶部180に格納された高精度地図情報182と、ファインダ20、レーダ30、カメラ40、ナビゲーション装置50、または車両センサ60から入力される情報とに基づいて、自車両Mが走行している車線(目標車線)、および、目標車線に対する自車両Mの相対位置を認識する。
図3は、自車位置認識部122により目標車線L1に対する自車両Mの相対位置が認識される様子を示す図である。自車位置認識部122は、例えば、自車両Mの基準点(例えば重心または後輪軸中心)の目標車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の目標車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、目標車線L1に対する自車両Mの相対位置として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部122は、自車線L1のいずれかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置などを、目標車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。自車位置認識部122により認識される自車両Mの相対位置は、目標車線決定部110に提供される。
外界認識部124は、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等から入力される情報に基づいて、周辺車両の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。周辺車両とは、例えば、自車両Mの周辺を走行する車両であって、自車両Mと同じ方向に走行する車両である。周辺車両の位置は、他車両の重心やコーナー等の基準点で表されてもよいし、他車両の輪郭で表現された領域で表されてもよい。周辺車両の「状態」とは、上記各種機器の情報に基づいて把握される、周辺車両の加速度、車線変更をしているか否か(あるいは車線変更をしようとしているか否か)を含んでもよい。また、外界認識部124は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者その他の物体の位置を認識してもよい。
行動計画生成部126は、自動運転のスタート地点、および/または自動運転の目的地を設定する。自動運転のスタート地点は、自車両Mの現在位置であってもよいし、自動運転を指示する操作がなされた地点でもよい。行動計画生成部126は、そのスタート地点と自動運転の目的地との間の区間において、行動計画を生成する。なお、これに限らず、行動計画生成部126は、任意の区間について行動計画を生成してもよい。
行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。イベントには、例えば、自車両Mを減速させる減速イベントや、自車両Mを加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント、自車両Mに前走車両を追い越させる追い越しイベント、分岐ポイントにおいて所望の車線に変更させたり、現在の走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させたりする分岐イベント、本線に合流するための合流車線において自車両Mを加減速させ、走行車線を変更させる合流イベント等が含まれる。行動計画生成部126は、走行車線決定部110により決定された走行車線が切り替わる箇所において、車線変更イベント、分岐イベント、または合流イベントを設定する。行動計画生成部126によって生成された行動計画を示す情報は、行動計画情報186として記憶部180に格納される。
図4は、ある区間について生成された行動計画の一例を示す図である。図示するように、行動計画生成部126は、走行車線情報184が示す走行車線上を自車両Mが走行するために必要な行動計画を生成する。なお、行動計画生成部126は、自車両Mの状況変化に応じて、走行車線情報184に拘わらず、動的に行動計画を変更してもよい。例えば、行動計画生成部126は、車両走行中に外界認識部124によって認識された周辺車両の速度が閾値を超えたり、自車線に隣接する車線を走行する周辺車両の移動方向が自車線方向に向いたりした場合に、自車両Mが走行予定の運転区間に設定されたイベントを変更する。例えば、レーンキープイベントの後に車線変更イベントが実行されるようにイベントが設定されている場合において、外界認識部124の認識結果によって当該レーンキープイベント中に車線変更先の車線後方から車両が閾値以上の速度で進行してきたことが判明した場合、行動計画生成部126は、レーンキープイベントの次のイベントを、車線変更イベントから減速イベントやレーンキープイベント等に変更してよい。この結果、車両制御システム100は、外界の状態に変化が生じた場合においても、安全に自車両Mを自動走行させることができる。
図5は、軌道生成部130の構成の一例を示す図である。軌道生成部130は、例えば、走行態様決定部132と、軌道候補生成部134と、評価・選択部136と、車線変更制御部140と、合流制御部150とを備える。
走行態様決定部132は、レーンキープイベントを実施する際に、定速走行、追従走行、減速走行、カーブ走行、障害物回避走行などのうちいずれかの走行態様を決定する。例えば、走行態様決定部132は、自車両Mの前方に他車両が存在しない場合に、走行態様を定速走行に決定する。また、走行態様決定部132は、前走車両に対して追従走行するような場合に、走行態様を追従走行に決定する。また、走行態様決定部132は、外界認識部124により前走車両の減速が認識された場合や、停車や駐車などのイベントを実施する場合に、走行態様を減速走行に決定する。また、走行態様決定部132は、外界認識部124により自車両Mがカーブ路に差し掛かったことが認識された場合に、走行態様をカーブ走行に決定する。また、走行態様決定部132は、外界認識部124により自車両Mの前方に障害物が認識された場合に、走行態様を障害物回避走行に決定する。
軌道候補生成部134は、走行態様決定部132により決定された走行態様に基づいて、軌道の候補を生成する。本実施形態における軌道とは、将来の所定時間ごと(或いは所定走行距離ごと)に、自車両Mの基準位置(例えば重心や後輪軸中心)が到達すべき目標位置(軌道点)の集まりである。軌道候補生成部134は、少なくとも、外界認識部124により認識された自車両Mの前方に存在する対象OBの速度、および自車両Mと対象OBとの距離に基づいて自車両Mの目標速度を算出する。軌道候補生成部134は、算出した目標速度に基づいて一以上の軌道を生成する。対象OBとは、前走車両や、合流地点、分岐地点、目標地点などの地点、障害物などの物体等を含む。
図6は、軌道候補生成部134により生成される軌道の候補の一例を示す図である。なお、本図および後述する図9において、複数設定され得る軌道の候補のうち代表的な軌道または評価・選択部136により選択された軌道のみ表記して説明する。図中(A)に示すように、例えば、軌道候補生成部134は、自車両Mの現在位置を基準に、現時刻から所定時間Δt経過するごとに、K(1)、K(2)、K(3)、…といった軌道点を設定する。以下、これら軌道点を区別しない場合、単に「軌道点K」と表記する場合がある。
走行態様決定部132により走行態様が定速走行に決定された場合、軌道候補生成部134は、図中(A)に示すように、等間隔で複数の軌道点Kを設定する。このような単純な軌道が生成される場合、軌道候補生成部134は、軌道を一つのみ生成するものとしてよい。
走行態様決定部132により走行態様が減速走行に決定された場合(追従走行において前走車両が減速した場合も含む)、軌道候補生成部134は、図中(B)に示すように、到達する時刻がより早い軌道点Kほど間隔を広くし、到達する時刻がより遅い軌道点Kほど間隔を狭くして軌道を生成する。この場合において、前走車両が対象OBに設定されたり、前走車両以外の合流地点や、分岐地点、目標地点などの地点、障害物等が対象OBに設定されたりすることがある。これにより、自車両Mからの到達する時刻が遅い軌道点Kが自車両Mの現在位置と近づくため、後述する走行制御部160が自車両Mを減速させることになる。
走行態様決定部132により走行態様がカーブ走行に決定された場合、図中(C)に示すように、軌道候補生成部134は、道路の曲率に応じて、複数の軌道点Kを自車両Mの進行方向に対する横位置(車線幅方向の位置)を変更しながら配置する。また、図中(D)に示すように、自車両Mの前方の道路上に人間や停止車両等の障害物OBが存在する場合、軌道候補生成部134は、この障害物OBを回避して走行するように、複数の軌道点Kを配置する。
評価選択部136は、軌道候補生成部134により生成された軌道の候補に対して、例えば、計画性と安全性の二つの観点で評価を行い、走行制御部160に出力する軌道を選択する。計画性の観点からは、例えば、既に生成されたプラン(例えば行動計画)に対する追従性が高く、軌道の全長が短い場合に軌道が高く評価される。例えば、右方向に車線変更することが望まれる場合に、一旦左方向に車線変更して戻るといった軌道は、低い評価となる。安全性の観点からは、例えば、自車両Mと物体(周辺車両等)との距離が遠く、加減速度や操舵角の変化量などが小さいほど高く評価される。
車線変更制御部140は、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベントなどが実施される場合、すなわち広義の車線変更が行われる場合に動作する。図7は、車線変更イベントが実施される場合に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本図および図8を参照しながら処理について説明する。
まず、車線変更制御部140は、自車両Mが走行する車線(自車線)に対して隣接する隣接車線であって、車線変更先の隣接車線を走行する周辺車両から2台の周辺車両を選択し、これらの周辺車両の間に車線変更ターゲット位置TAsを設定する(ステップS100)。以下、隣接車線において車線変更ターゲット位置TAsの直前を走行する周辺車両を前方基準車両mBと称し、隣接車線において車線変更ターゲット位置TAsの直後を走行する周辺車両を後方基準車両mCと称して説明する。車線変更ターゲット位置TAsは、自車両Mと前方基準車両mBおよび後方基準車両mCとの位置関係に基づく相対的な位置である。
図8は、車線変更ターゲット位置TAsが設定される様子を示す図である。図中、mAは前走車両を表し、mBは前方基準車両を表し、mCは後方基準車両を表している。また、矢印dは自車両Mの進行(走行)方向を表し、L1は自車線を表し、L2は隣接車線を表している。図8の例の場合、車線変更制御部140は、隣接車線L2上において、前方基準車両mBと後方基準車両mCとの間に車線変更ターゲット位置TAsを設定する。
次に、車線変更制御部140は、車線変更ターゲット位置TAsに(すなわち前方基準車両mBと後方基準車両mCとの間に)車線変更が可能か否かを判定するための一次条件を満たすか否かを判定する(ステップS102)。
一次条件は、例えば、隣接車線に設けた禁止領域RAに周辺車両が一部でも存在せず、且つ、自車両Mと、前方基準車両mBおよび後方基準車両mCとのTTCがそれぞれ閾値よりも大きいことである。なお、この判定条件は、自車両Mの側方に車線変更ターゲット位置TAsを設定した場合の一例である。一次条件を満たさない場合、車線変更制御部140は、ステップS100に処理を戻し、車線変更ターゲット位置TAsを再設定する。この際に、一次条件を満たすような車線変更ターゲット位置TAsが設定できるタイミングまで待機したり、或いは車線変更ターゲット位置TAsを変更し、車線変更ターゲット位置TAsの側方に移動するための速度制御が行われてもよい。
図8に示すように、車線変更制御部140は、例えば、自車両Mを車線変更先の車線L2に射影し、前後に若干の余裕距離を持たせた禁止領域RAを設定する。禁止領域RAは、車線L2の横方向の一端から他端まで延在する領域として設定される。
禁止領域RA内に周辺車両が存在しない場合、車線変更制御部140は、例えば、自車両Mの前端および後端を車線変更先の車線L2側に仮想的に延出させた延出線FMおよび延出線RMを想定する。車線変更制御部140は、延出線FMと前方基準車両mBの衝突余裕時間TTC(B)、および延出線RMと後方基準車両mCの後方基準車両TTC(C)を算出する。衝突余裕時間TTC(B)は、延出線FMと前方基準車両mBとの距離を、自車両Mおよび前方基準車両mBの相対速度で除算することで導出される時間である。衝突余裕時間TTC(C)は、延出線RMと後方基準車両mCとの距離を、自車両Mおよび前方基準車両mCの相対速度で除算することで導出される時間である。軌道生成部118は、衝突余裕時間TTC(B)が閾値Th(B)よりも大きく、且つ衝突余裕時間TTC(C)が閾値Th(C)よりも大きい場合に、一次条件を満たすと判定する。閾値Th(B)とTh(C)は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
一次条件を満たす場合、車線変更制御部140は、車線変更のための軌道の候補を軌道候補生成部134に生成させる(ステップS104)。図9は、車線変更のための軌道が生成される様子を示す図である。例えば、軌道候補生成部134は、前走車両mA、前方基準車両mBおよび後方基準車両mCが所定の速度モデルで走行するものと仮定し、これら3台の車両の速度モデルと自車両Mの速度とに基づいて、自車両Mが前走車両mAと干渉せずに、将来のある時刻において前方基準車両mBと後方基準車両mCとの間に位置するように軌道の候補を生成する。例えば、軌道候補生成部134は、現在の自車両Mの位置から、将来のある時刻における前方基準車両mBの位置や、車線変更先の車線の中央、且つ車線変更の終了地点までをスプライン曲線等の多項式曲線を用いて滑らかに繋ぎ、この曲線上に等間隔あるいは不等間隔で軌道点Kを所定個数配置する。この際、軌道候補生成部134は、軌道点Kの少なくとも1つが車線変更ターゲット位置TAs内に配置されるように軌道を生成する。
次に、評価・選択部136は、設定条件を満たす軌道の候補を生成できたか否かを判定する(ステップS106)。設定条件とは、例えば、前述した計画性や安全性の観点から閾値以上の評価値が得られたことである。設定条件を満たす軌道の候補を生成できた場合、評価・選択部136は、例えば最も評価値の高い軌道の候補を選択し、軌道の情報を走行制御部160に出力し、車線変更を実施させる(ステップS108)。一方、設定条件を満たす軌道を生成できなかった場合、ステップS110に処理を戻す。この際に、ステップS102で否定的な判定を得た場合と同様に、待機状態になったり、車線変更ターゲット位置TAsを再設定したりする処理が行われてもよい。
図2に示す走行制御部160は、軌道生成部118によって生成された軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置90、ステアリング装置92、およびブレーキ装置94を制御する。
切替制御部170は、切替スイッチ80から入力される運転モード指定信号に基づいて運転モードを切り替える他、操作デバイス70に対する加速、減速または操舵を指示する操作に基づいて、運転モードを切り替える。例えば、切替制御部170は、操作検出センサ72から入力された操作量が閾値を超えた状態が、基準時間以上継続した場合に、自動運転モードから手動運転モードに切り替える。また、切替制御部170は、自動運転の目的地付近において、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り替える。
切替制御部170は、手動運転モードから自動運転モードに切り替える場合、切替スイッチ80から入力される運転モード指定信号に基づいて、これを行う。また、自動運転モードから手動運転モードに切り替わった後、所定時間の間、操作デバイス70に対する加速、減速または操舵を指示する操作が検出されなかった場合に、自動運転モードに復帰するといった制御が行われてもよい。
[合流制御]
以下、合流制御について説明する。図5に示すように、合流制御部150は、例えば、合流ターゲット位置候補設定部151と、到達時間導出部152と、走行距離導出部153と、合流ターゲット位置選択部154とを備える。合流制御部150は、例えば、自車両Mが本線に合流する支線(加速車線)を走行し始めた場合に、走行態様決定部132によって起動される。
合流ターゲット位置候補設定部151は、自車両Mが合流する合流ターゲット位置TAgの候補である合流ターゲット位置候補cTAgを設定する。合流ターゲット位置TAgとは、自車両Mが合流する先の本線を走行する周辺車両の間に設定される相対的な位置である。図10は、合流ターゲット位置候補設定部151により設定される合流ターゲット位置候補cTAgを例示した図である。図示するように、合流ターゲット位置候補設定部151は、本線のうち支線sLに隣接する車線L1を走行する周辺車両mをn台選択し、選択した周辺車両mの間に一以上の合流ターゲット位置候補cTAgを設定する。以下、これらを合流ターゲット位置候補cTAg(k)と表す(k=1〜n−1)。nは任意の自然数である。合流ターゲット位置候補設定部151は、例えば、自車両Mの進行方向に関して前方を走行する周辺車両mを5台、自車両Mの進行方向に関して後方を走行する周辺車両mを5台、計10台の周辺車両mを選択する、といったように、任意の規則に従ってn台の周辺車両mを選択してよい。
また、合流ターゲット位置候補設定部151は、合流ターゲット位置候補cTAgを、直前および直後を走行する周辺車両mの車間距離が基準距離よりも短いもの、或いは、相対速度を考慮すると基準時間後に車間距離が基準距離以下になるものを除外して設定してもよい。図11は、合流ターゲット位置候補設定部151により設定される合流ターゲット位置候補cTAgの他の例を示す図である。
以下、合流ターゲット位置候補cTAg(k)と自車両Mとの距離をx(k)で表し、車線L1を走行する周辺車両mの平均速度をVHで表す。平均速度VHは、例えば、通信装置75によって道路状況を提供するサーバから取得される。また、平均速度VHは、外界認識部124によって認識される周辺車両mの速度の平均を求めることで取得されてもよい。
到達時間導出部152は、平均速度VHと、自車両の運動モデルとに基づいて、合流ターゲット位置候補cTAg(k)ごとに、自車両Mが合流ターゲット位置候補cTAg(k)に到達するまでの時間を導出する。
到達時間導出部152は、例えば、以下の条件(1)〜(3)の下で、到達時間T{cTAg(k)}を導出する。
(1)自車両Mは、定加速度モデル、定ジャーク(躍度)モデルなどの、将来の状態が予測可能な運動モデルに基づいて走行し、上限速度が定められる。上限速度は、例えば法定速度である。
(2)自車両Mの車速v(k,t)は、合流ターゲット位置候補cTAg(k)に到達した時点で、平均速度VHと一致する。
(3)到達時間T{cTAg(k)}までの期間で、自車両Mの速度v(k,t)とVHとの差分を積分した値が、合流ターゲット位置候補cTAg(k)と自車両Mとの距離x(k)に一致する。
以下の説明では、自車両Mは、定加速度モデルで走行するものとし、この場合の加速度α1、および減速度α2は規定値であるものとする。また、合流ターゲット位置候補cTAg(k)と自車両Mとの距離x(k)は、合流ターゲット位置候補cTAg(k)の基準点(例えば進行方向に関する中点)と、自車両の基準点(例えば重心または後輪軸中心)との距離である。
図12は、到達時間導出部152による処理を説明するための図である。図12は、上記(1)〜(3)の条件を満たす自車両Mの速度v(k,t)の一例を示している。図中、v
0は、合流判断時点の自車両Mの速度であり、速度v(k,t)の初期値である。図12に示すように、式(1)および条件(2)が成立する条件で、自車両の速度v(k,t)および到達時間T{cTAg(k)}が求められる。
到達時間導出部152は、例えば、図12に示す加速期間、等速期間、減速期間を色々と変更しながら、条件に合致するパターンを探索することで、条件を満たす速度v(k,t)を導出する。また、到達時間導出部152は、x(k)、v0、VHなどのパラメータと速度v(k,t)のパターンとを対応付けたマップを記憶部180に保持しておき、パラメータをマップに適用することで速度v(k,t)を導出してもよい。また、到達時間導出部152は、精度の粗いマップを保持しておき、粗いマップから導出された速度v(k,t)を起点として探索を行ってもよい。これについて、後述する各実施形態も同様である。
走行距離導出部153は、到達時間導出部152により導出された自車両の速度v(k,t)および到達時間T{cTAg(k)}に基づいて、自車両Mが合流ターゲット位置候補cTAg(k)に到達するまでの走行距離RD(k)を導出する。走行距離RD(k)は、式(2)により求められる。図13は、走行距離導出部153による処理を説明するための図である。
合流ターゲット位置選択部154は、走行距離導出部153によって導出された走行距離RD(k)のうち、最も短いものを選択し、選択した走行距離RD(k)に対応する合流ターゲット位置候補cTAg(k)を、合流ターゲット位置TAgとして選択する。
係る処理によって、合流制御部150は、合流までの走行距離RD(k)が最も短い合流ターゲット位置TAgを選択することができ、迅速な合流を実現することができる。合流ターゲット位置TAgが選択されると、軌道候補生成部134と評価・選択部136が、車線変更の場合と同様に、自車両Mの軌道を生成する。
なお、合流ターゲット位置選択部154は「走行距離RD(k)が最も短いものを選択する」ことが原則であるが、何らかの要因で2番目、3番目、…に短いものが選択されることがあってもよい。例えば、選択した合流ターゲット位置TAgへの軌道の評価が低い場合には、次に走行距離RD(k)が短いものを順次選択してもよい。
図14は、自動運転制御部120により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。合流制御部150は、合流イベントが開始されるまで待機する(ステップS100)。合流イベントが開始されると、合流ターゲット位置候補設定部151が、本線を走行する周辺車両をn台選択し(ステップS102)、それらの間に合流ターゲット位置候補cTAg(k)を設定する(ステップS104)。k=1〜nである。
次に、ステップS106およびS108の処理が、合流ターゲット位置候補cTAg(k)ごとに実行される。合流ターゲット位置候補cTAg(k)ごとに、到達時間導出部152が、到達時間T{cTAg(k)}を導出し(ステップS106)、走行距離導出部153が、走行距離RD(k)を導出する。
次に、合流ターゲット位置選択部154が、最も走行距離RD(k)の短い合流ターゲット位置候補cTAg(k)を、合流ターゲット位置TAgとして選択する(ステップS110)。そして、軌道候補生成部134および評価・選択部136が軌道を決定して走行制御部160が制御対象を制御することで、合流が実施される(ステップS112)。
以上説明した第1の実施形態の車両制御システム100によれば、自車両Mが支線から合流しようとする本線を走行する周辺車両の走行状態を取得する外界認識部(取得部)124と、外界認識部124により取得された走行状態と、自車両Mの運動モデルとに基づいて、自車両Mが前記本線に合流する合流ターゲット位置TAgを、本線を走行する車両に対する相対的な位置として決定する合流制御部150と、合流制御部150により決定された合流ターゲット位置TAgに向けて自車両Mが走行するように、自車両Mの少なくとも加減速を自動的に制御する走行制御部160と、を備えることにより、本線へのスムーズな合流を実現することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態は、合流を行うターゲットを「位置」と考えた処理を行うものであるが、第2実施形態では、合流を行うターゲットを、進行方向に間隔を有する「領域」と考えて処理を行う。以下、これを合流ターゲット領域TAg#、その候補を合流ターゲット領域候補cTAg#(k)と表記して説明する。合流ターゲット領域TAg#は、前後車両との相対位置で定義される合流ターゲット位置TAgを、車両の進行方向に関する広がりを持った領域と捉えたものである。
第2の実施形態において、合流制御部150の到達時間導出部152は、下記の条件(1)、(4)、(5)の下で、到達時間T{cTAg#(k)}を導出する。
(1)自車両Mは、定加速度モデル、定ジャーク(躍度)モデルなどの、将来の状態が予測可能な運動モデルに基づいて走行し、上限速度が定められる。上限速度は、例えば法定速度である。
(4)到達時間T{cTAg#(k)}が経過した時点で、自車両Mの速度v(k,t)とVHとの差分が所定値Vth以内である。
(5)到達時間T{cTAg#(k)}が経過した時点で、自車両Mが合流ターゲット領域候補cTAg#(k)に収まる。
図15は、合流ターゲット領域候補cTAg#(k)を説明するための図である。合流ターゲット領域候補cTAg#(k)は、前方基準車両mB(k)の後端部から余裕距離β1後方にシフトした位置から、後方基準車両mC(k)の前端部から余裕距離β2前方にシフトした位置までの領域と定義される。余裕距離β1とβ2は同じ距離であってもよいし、異なる距離であってもよい。なお、前方基準車両mB(k)は、合流ターゲット領域候補cTAg#(k−1)にとっての後方基準車両mC(k−1)でもあり、後方基準車両mC(k)は、合流ターゲット領域候補cTAg#(k+1)にとっての前方基準車両mB(k+1)でもある。
条件(5)における「自車両Mが合流ターゲット領域cTAg#(k)に収まる」とは、例えば、自車両Mの前端および後端を車線変更先の車線L2側に仮想的に延出させた延出線FMおよび延出線RMが、双方とも合流ターゲット領域cTag#{k}に収まること、と定義される。
以下、第1の実施形態の処理と比較しながら説明する。図16は、第2の実施形態における到達時間導出部152による処理を説明するための図である。図16に示す自車両Mの速度v(k,t)は、第1実施形態と同様、(1)〜(3)の条件を満たすものである。そして、到達時間T{cTAg#(k)}は、式(3)、(4)の双方を満たす最短の時間である。
式(3)において、Δx(k)は、合流タイミングにおける、合流ターゲット領域cTAg#(k)の基準点と、自車両Mの基準点との進行方向の位置ズレに関する許容距離である。また、式(3)の右項は、図16の三角形の領域の面積に相当する。
図17は、自車両Mが後方から合流ターゲット領域候補cTAg#(k)に接近する場合の許容距離Δx(k)を説明するための図である。図示するように、自車両Mが後方から合流ターゲット領域cTAg#(k)に接近する場合、自車両Mの後端部が合流ターゲット領域cTAg#(k)の後端部に並んだ時点で合流が可能となる。このため、許容距離Δx(k)は、合流ターゲット領域cTAg#(k)の基準点RefTAgから後端部までの距離γrから、自車両Mの基準点RefMから後端部までの距離Lrを差し引いた距離となる(式(5))。
Δx(k)=γr−Lr …(5)
ここで、Lrは既知の値である。一方、γrに関しては、外界認識部124により認識された結果を参照してもよいし、車間距離がほぼ一定であるという仮定の下、一定値を用いてもよい。
図18は、自車両Mが前方から合流ターゲット領域候補cTAg#(k)に接近する場合の許容距離Δx(k)を説明するための図である。図示するように、自車両Mが前方から合流ターゲット領域cTAg#(k)に接近する場合、自車両Mの前端部が合流ターゲット領域cTAg#(k)の前端部に並んだ時点で合流が可能となる。このため、許容距離Δx(k)は、合流ターゲット領域cTAg#(k)の基準点RefTAgから前端部までの距離γfから、自車両Mの基準点RefMから前端部までの距離Lfを差し引いた距離となる(式(6))。
Δx(k)=γf−Lf …(6)
ここで、Lfは既知の値である。一方、γfに関しては、外界認識部124により認識された結果を参照してもよいし、車間距離がほぼ一定であるという仮定の下、一定値を用いてもよい。
上記の原理に基づいて到達時間T{cTAg#(k)}が求められると、走行距離導出部153は、到達時間導出部152により導出された自車両の速度v(k,t)および到達時間T{cTAg#(k)}に基づいて、自車両Mが合流ターゲット位置候補cTAg(k)に到達するまでの走行距離RD(k)を導出する。走行距離RD(k)は、式(2)におけるT{cTAg(k)}を、T{cTAg#(k)}に置き換えることで求められる。また、図19は、第2の実施形態における走行距離導出部153による処理を説明するための図である。
上記説明した以外の処理については、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、本線へのスムーズな合流を実現することができる。また、第1の実施形態に比して、より正確に、最適な合流ターゲット位置TAgを選択することができる。
<第2の実施形態の変形例>
第2の実施形態において、上記説明したように許容距離Δx(k)を用いて到達時間T{cTAg#(k)}および走行距離RD(k)を求めるのではなく、以下のようにこれらを求めてもよい。
自車両Mが後方から合流ターゲット領域候補cTAg#(k)に接近する場合(以下、第1の場合)は、自車両Mの後端部が合流ターゲット領域cTAg#(k)の後端部に到達する時点を、到達時間T{cTAg#(k)}として求める。
自車両Mが前方から合流ターゲット領域候補cTAg#(k)に接近する場合(以下、第2の場合)は、自車両Mの前端部が合流ターゲット領域cTAg#(k)の前端部に到達する時点を、到達時間T{cTAg#(k)}として求める。
変形例における条件は、以下のように定義される。
(1)自車両Mは、定加速度モデル、定ジャーク(躍度)モデルなどの、将来の状態が予測可能な運動モデルに基づいて走行し、上限速度が定められる。上限速度は、例えば法定速度である。
(6)到達時間T{cTAg#(k)}が経過した時点で、(a)第1の場合であれば、自車両Mの速度v(k,t)からVHを差し引いた値がゼロ以上かつ所定値Vth以下であり、(b)第2の場合であれば、VHから自車両Mの速度v(k,t)を差し引いた値がゼロ以上かつ所定値Vth以下である。
(7)到達時間T{cTAg#(k)}までの期間で、自車両Mの速度v(k,t)とVHとの差分を積分した値が、合流ターゲット位置候補cTAg#(k)と自車両Mとの距離x(k)に一致する。この条件は、式(7)で表される。
但し、距離x(k)は第1の場合と第2の場合で定義が異なる。図20は、変形例におけるx(k)の定義を示す図である。図示するように、自車両Mが後方から接近することになる合流ターゲット位置候補cTAg#(k−1)に関する距離x(k−1)は、自車両Mの後端部から合流ターゲット位置候補cTAg#(k−1)の後端部までの距離である。それよりも前の合流ターゲット位置候補cTAg#(k−2)、(k−3)、…についても同様である。
一方、自車両Mが前方から接近することになる合流ターゲット位置候補cTAg#(k+1)に関する距離x(k+1)は、自車両Mの前端部から合流ターゲット位置候補cTAg#(k+1)の前端部までの距離である。それよりも後ろの合流ターゲット位置候補cTAg#(k+2)、(k+3)、…についても同様である。
なお、合流判断時点で自車両Mが進行方向に関して収まっている合流ターゲット位置候補cTAg#(k)に関しては、その時点で条件(7)は満たしているものとする。
時間導出部152は、このような条件を満たす到達時間T{cTAg#(k)}を導出する。そして、到達時間T{cTAg#(k)}が求められると、走行距離導出部153は、到達時間導出部152により導出された自車両の速度v(k,t)および到達時間T{cTAg#(k)}に基づいて、自車両Mが合流ターゲット位置候補cTAg(k)に到達するまでの走行距離RD(k)を導出する。走行距離RD(k)は、式(2)におけるT{cTAg(k)}を、T{cTAg#(k)}に置き換えることで求められる。
上記説明した以外の処理については、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態の変形例によれば、第1の実施形態と同様、本線へのスムーズな合流を実現することができる。また、第1の実施形態に比して、より正確に、最適な合流ターゲット位置TAgを選択することができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の車両制御システム100Aは、運転車によって合流を指示する操作がなされたときに、或いはナビゲーション装置50が案内中の経路に基づいて、自車両Mが本線に合流することが判明した場合に、第1または第2実施形態と同様の処理を行って合流ターゲット位置TAgを決定し、自車両Mが合流ターゲット位置TAgに到達するための速度制御を行う。そして、自車両Mが合流ターゲット位置TAgに到達すると、その旨を示す情報を運転者に通知する。運転者は、上記操作を行うことで、合流ターゲット位置TAgの側方まで自車両Mを自動的に移動させ、通知を受けてステアリング操作を行うことで、自車両Mを本線に合流させる。
図21は、第3の実施形態に係る車両制御システム100Aを搭載した自車両Mの機能構成図である。本図において、第1または第2の実施形態と同じ機能を有するものには、第1または第2の実施形態と同じ符号を付している。
車両制御システム100Aは、通知部190を備える。また、車両制御システム100Aには、合流開始スイッチ85および通知デバイス96が接続される。合流開始スイッチ85は、自車両Mの運転者によって操作可能な任意の形態のスイッチである。通知デバイス96は、スピーカやブザー、表示装置、触覚デバイス(バイブレータやアクチュエータ)などである。
本実施形態において、自車位置認識部122および外界認識部124は、第1または第2の実施形態と同様の処理を行い、処理結果を合流制御部150に出力する。合流制御部150は、合流開始スイッチ85が操作されたときに起動し、第1または第2の実施形態と同様に合流ターゲット位置TAgを決定する。走行制御部160は、合流制御部150による処理の中で得られる速度v(k,t)を実現するように、走行駆動力出力装置90および/またはブレーキ装置94を制御する(第1または第2の実施形態のように操舵の自動制御は行わない)。このとき、通知部190は、自車両Mが合流ターゲット位置TAgに到達したか否かを判定し、到達した場合に所定の通知を行う。
以上説明した第3の実施形態によれば、本線への合流時に、どこに合流するか迷うような運転経験の浅い運転者であっても、安心して合流を行うことができる。
なお、第3の実施形態は、車間距離制御や定速走行制御を行う車両制御システムの一部として構成されてもよい。この場合、車間距離制御や定速走行制御を行っている際に、運転者の操作によって、或いは自動的に、合流制御が実行される。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の車両制御システム100Bは、運転車によって合流を指示する操作がなされたときに、或いはナビゲーション装置50が案内中の経路に基づいて、自車両Mが本線に合流することが判明した場合に、合流ターゲット位置TAgを決定して表示装置に表示させる。
図22は、第4の実施形態に係る車両制御システム100Bを搭載した自車両Mの機能構成図である。本図において、第1または第2の実施形態と同じ機能を有するものには、第1または第2の実施形態と同じ符号を付している。
車両制御システム100Bは、表示制御部195を備える。また、車両制御システム100Bには、表示装置98が接続される。表示装置98は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置、或いはHUD(Head Up Display)などである。
本実施形態において、自車位置認識部122および外界認識部124は、第1または第2の実施形態と同様の処理を行い、処理結果を合流制御部150に出力する。合流制御部150は、合流開始スイッチ85が操作されたときに起動し、第1または第2の実施形態と同様に合流ターゲット位置TAgを決定する。表示制御部195は、合流ターゲット位置TAgを運転者に教示するための画像を表示装置98に表示させる。この画像は、二次元平面上に自車両と本線上の周辺車両、並びに合流ターゲット位置TAgを表示したものであってもよいし、HUDを用いる場合、運転者から見た車外の風景に合流ターゲット位置TAgを重畳表示したものであってもよい。図23は、表示装置98に表示される画像の一例を示す図である。なお、図23に示すように合流ターゲット位置TAgを一つだけ示すのではなく、走行距離RD(k)の短い順に複数選択し、例えば順位と共に複数の合流ターゲット位置TAgを表示してもよい。
以上説明した第4の実施形態によれば、本線への合流時に、どこに合流するか迷うような運転経験の浅い運転者であっても、安心して合流を行うことができる。
<その他>
上記各実施形態において、自車両Mが合流時に定加速度モデルで走行するものとし、この場合の加速度α1、および減速度α2は規定値であるものとしたが、例えば、加速度α1や減速度α2に幅を持たせて候補を複数設定し、それぞれの加速度α1や減速度α2に基づいて導出される走行距離RD(k)のうち、最も短いものを、合流ターゲット位置候補cTAg(k)の走行距離RD(k)として求めてもよい。