JP6319632B2 - リチウムイオン二次電池用正極とその製造方法及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極とその製造方法及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に用いられる正極とその製造方法、及びその正極を用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。現在、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を挿入および脱離することができる活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そして、両極間に設けられた電解液内をリチウムイオンが移動することによって動作する。リチウムイオン二次電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。
しかしながら、現状のリチウムイオン二次電池の容量は満足なものとはいえず、更なる高容量化が求められている。これを達成するためのアプローチとして、正極電位の高電圧化が検討されているものの、高電圧での駆動時に、繰り返し充放電後の電池特性が極端に悪化するという大きな問題があった。この原因として、充電時に正極近傍で電解液の酸化分解が生じるためと考えられている。
すなわち、電解液の分解物が電極表面やセパレータの空隙に堆積し、リチウムイオン伝導に対する抵抗体となるために出力が低下すると考えられている。したがって、このような問題を解決するには、電解液の分解を抑制することが必要である。
そこで特開平11-097027号公報には、正極表面にイオン伝導性高分子などからなる被覆層を形成した非水電解質二次電池が提案されている。被覆層を形成することによって、電解液の分解などの劣化を抑制できるとされている。
ところが特開平11-097027号公報には、4.3V以上の高電圧で充電した場合の評価が記載されておらず、被覆層がそのような高電圧駆動に耐え得るのか不明であった。また被覆層の厚さも実質的にμmオーダーであり、リチウムイオン伝導の抵抗となっている。
特表2007-510267号公報には、活物質粒子間の空隙を保持しつつ電極上にポリマーをコートすることが開示されている。ポリマーが電解液によって溶解あるいは膨潤し、電極近傍にゲル電解質を形成することによって、電池の安全性向上を図っている。特表2007-510267号公報の実施例では、シアノ−エチルプルランやPMMA(ポリメチルメタクリレート)で正極表面を被覆することで、4.2V充電後に正極の発熱量が減少している。しかし、それ以上の高電圧での電池特性の検討は行っていない。
また、国際公開2013/161305号及び特開2013-243105号公報には、正極活物質の表面を、ポリエチレングリコールなどを有する有機コート層で被覆することが開示されている。これらの文献では、4.5V電圧での放電容量維持率やレート特性を測定している。しかし、高い電位での電池特性を更に向上させたいという要望がある。
特開平11-097027号公報 特表2007-510267号公報 国際公開2013/161305号 特開2013-243105号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高電圧駆動に耐え得るリチウムイオン二次電池用の正極を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と該集電体に結着された正極活物質層とを含み、
該正極活物質層は一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と、該正極活物質粒子どうしを結着するとともに該正極活物質粒子と該集電体とを結着する結着部と、少なくとも該正極活物質粒子上の少なくとも一部に形成された有機無機コート層と、からなり、
該有機無機コート層は、アミノ基、イミノ基、イミド基、及びマレイミド基の少なくとも一つをもつ選択ポリマーと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属と、を含むことを特徴とする。
そして本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、前記記載の二次電池用正極の製造方法であって、一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と結着剤を含むスラリーを集電体表面に塗布し乾燥して正極活物質層を形成する工程と、
アミノ基、イミノ基、イミド基、及びマレイミド基の少なくとも一つをもつ選択ポリマーと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属を有する化合物と、が溶媒に溶解した混合溶液を該正極活物質層に塗布し乾燥して有機無機コート層を形成する工程と、を行うことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と該集電体に結着された正極活物質層とを含み、
該正極活物質層は一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と、該正極活物質粒子どうしを結着するとともに該正極活物質粒子と該集電体とを結着する結着部と、少なくとも該正極活物質粒子上の少なくとも一部に形成された有機無機コート層と、からなり、
該有機無機コート層は、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、マレイミド基、カルボキシル基及びエーテル基の少なくとも一つをもつ選択ポリマーと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属と、を含み、
前記有機無機コート層は、カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物をさらに含むことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、集電体と該集電体に結着された正極活物質層とを含み、
該正極活物質層は一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と、該正極活物質粒子どうしを結着するとともに該正極活物質粒子と該集電体とを結着する結着部と、少なくとも該正極活物質粒子上の少なくとも一部に形成された有機無機コート層と、からなり、
該有機無機コート層は、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、マレイミド基、カルボキシル基及びエーテル基の少なくとも一つをもつ選択ポリマーと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属と、を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極を製造する方法であって、前記正極活物質粒子と結着剤を含むスラリーを集電体表面に塗布し乾燥して正極活物質層を形成する工程と、
前記選択ポリマーと、前記選択金属を有する塩と、が溶媒に溶解した混合溶液を該正極活物質層に塗布し乾燥して有機無機コート層を形成する工程と、を行うことを特徴とする。
本発明は上記構成を具備しているため、高電圧駆動に耐え得るリチウムイオン二次電池用の正極を提供することができる。
参考例1に係るリチウムイオン二次電池の正極に含まれる正極活物質のTEM像を示す。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と、集電体に結着された正極活物質層と、を含む。正極活物質層は、正極活物質粒子と、正極活物質粒子上の少なくとも一部に形成された有機無機コート層と、からなる。有機無機コート層は、選択ポリマーと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属と、を含む。かかる正極を備えたリチウムイオン二次電池は、高電圧駆動に耐えることができ、優れた電池特性を発揮できる。その理由は、以下のように考えられる。
選択ポリマーは、有機高分子からなり、電解液を吸収して膨潤する性質がある。選択ポリマーを有するコート層が膨潤すると、電解液が正極活物質に接触しやすくなり、電解液の正極活物質への接触抑制が不十分である。
本発明においては、正極活物質粒子上の少なくとも一部に、選択ポリマーと選択金属とを有する有機無機コート層を形成している。選択ポリマーは、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、マレイミド基、カルボキシル基及びエーテル基の少なくとも一つをもつポリマーであり、更に好ましい選択ポリマーとしては、アミノ基、イミノ基、イミド基、及びマレイミド基の少なくとも一つをもつポリマーを挙げることができる。これらの基は、非共有電子対を有するため、選択金属イオンが配位し易い。
選択ポリマーの基に選択金属イオンが配位すると、選択ポリマーが凝集する傾向があり、選択ポリマーの電解液吸収による膨潤を抑える。このため、有機無機コート層は均一且つ緻密な被膜となり、正極活物質と電解液との接触を抑制できる。しかも選択金属イオンによって被膜に導電性が付与されるため、被膜の抵抗上昇を大きく抑制することができる。こうして形成された有機無機コート層は正極活物質に対する接合強度が高いため、高電圧駆動時に正極活物質と電解液との直接接触を抑制することができる。従って、電池の高電圧駆動の際にも電解液の分解を抑制でき、優れた電池特性を発揮できる。
また、選択金属イオンと選択ポリマーとを含む混合溶液に、集電体に正極活物質粒子及び結着部とを形成してなる正極前駆体をディッピングすることで、あらかじめ選択ポリマーの基に選択金属イオンが配位した状態で、正極活物質粒子上に、選択ポリマーと選択金属とを有する有機無機コート層が形成される。かかるディッピング法を用いて簡素に有機無機コート層を形成できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と集電体に結着された正極活物質層とを含む。集電体としては、リチウムイオン二次電池用正極に一般に用いられるものを使用すれば良い。本発明のリチウムイオン二次電池用正極の集電体としては、例えば、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、パンチングアルミニウムシート、アルミニウムエキスパンドシート、ステンレススチール箔、ステンレススチールメッシュ、パンチングステンレススチールシート、ステンレススチールエキスパンドシート、発泡ニッケル、ニッケル不織布、銅箔、銅メッシュ、パンチング銅シート、銅エキスパンドシート、チタン箔、チタンメッシュ、カーボン不織布、カーボン織布等が例示される。
集電体がアルミニウムを含む場合には、集電体の表面に導電体よりなる導電層を形成し、その導電層の表面に正極活物質層を形成することが望ましい。このようにすることで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性がさらに向上する。これは、高温時に電解液中に集電体が溶出するのが防止されるためと考えられている。導電体としては、グラファイト、ハードカーボン、アセチレンブラック、ファーネスブラックなどのカーボン、ITO(Indium-Tin-Oxide)、錫(Sn)などが例示される。これらの導電体から、PVD法あるいはCVD法などによって導電層を形成することができる。
導電層の厚さは特に制限されないが、5nm以上とするのが好ましい。導電層がこれより薄くなると、サイクル特性が向上しにくくなるおそれがある。
正極活物質層は、正極活物質からなる複数の正極活物質粒子と、正極活物質粒子同士を結着するとともに正極活物質粒子と集電体とを結着する結着部と、正極活物質粒子上の少なくとも一部に形成された有機無機コート層とを含む。正極活物質は、一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物又は固溶体を含む。一般式の中のAを構成し得る遷移金属は、例えば、Fe、Cr、Cu、Zn、Zr、Ti、V、Mo、Nb、W、La、Ni、Coを挙げることができる。上記の一般式:Lix(AyMn2-y)O4で表されるLi化合物又は固溶体は、スピネル構造を有するとよい。
上記の一般式において、xの範囲は0<x≦2.2であり、好ましくは.0.5≦x≦1.5である。上記の一般式において、yの範囲は0≦y≦1であり、好ましくは0≦y≦0.7である。
上記のLi化合物の具体例としては、LiMnO、及びLiNi0.5Mn1.5が挙げられる。上記のLi化合物は、これらの一種であってもよいし、複数種が混合されていてもよい。複数種の場合には、固溶体を形成していてもよい。
また、これらの正極活物質はその結晶構造中に異種元素がドープされていてもよい。ドープされる元素と量は限定されないが、元素としてはSn、Ge、B、及びAsが好ましく、その量は正極活物質を100質量%としたときに0.01〜5質量%が好ましい。
結着部はバインダーが乾燥することで形成された部位であり、正極活物質粒子どうしを、或いは正極活物質粒子と集電体とを結着している。有機無機コート層はこの結着部の少なくとも一部にも形成されていることが望ましい。このようにすることで結着部が保護されて結着強度がより高まるため、高温高電圧という厳しいサイクル試験後にも正極活物質層のクラックや剥離を防止することができる。
正極活物質層は導電助剤が含まれているとよい。有機無機コート層は導電助剤上の少なくとも一部にも形成されていることが望ましい。このようにすることで導電助剤を保護することができる。
正極活物質粒子上の少なくとも一部には、有機無機コート層が形成されている。「正極活物質粒子上の少なくとも一部には、有機無機コート層が形成されている。」とは、有機無機コート層が正極活物質粒子の表面を直接被覆していても良いし、正極活物質粒子の表面に後述する介在層を形成し、介在層の表面を有機無機コート層で被覆していてもよいという意味である。有機無機コート層は、正極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆すればよいが、電解液との直接接触を防ぐためには、正極活物質粒子のほぼ全面を被覆することが好ましい。
有機無機コート層は、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、マレイミド基、カルボキシル基及びエーテル基の少なくとも一つをもつ選択ポリマーを含む。この選択ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアニリン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリアリルアミン、ポリリジン、ポリアクリルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン、リン酸エステルポリマーなどが例示される。有機無機コート層には、これらのポリマーが少なくとも一種含まれていればよく、複数種含まれていてもよい。
選択ポリマーは、アミノ基、イミノ基、イミド基、及びマレイミド基の少なくとも一つをもつことがよい。この選択ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアニリン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリアリルアミン、ポリアクリルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂などが例示される。有機無機コート層は、これらのポリマーの少なくとも一種を含んでいればよく、複数種含んでいてもよい。選択ポリマーは、ポリエチレンイミンであることが好ましい。
有機無機コート層は、選択ポリマーに加えてアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属を含む。アルカリ金属としてはLiが特に望ましく、アルカリ土類金属としてはMgが特に望ましく、希土類元素としてはLaが特に望ましい。有機無機コート層における選択金属の含有量は、有機無機コート層全体を100質量%としたとき0.1〜90質量%の範囲が好ましく、1〜50質量%の範囲が特に望ましい。選択金属の含有量が0.1質量%未満では含有させたことによる効果が発現しにくくなる場合があり、90質量%を超えると均一なコート層の形成が困難となる場合がある。
本発明の製造方法では、選択ポリマーと選択金属を有する化合物とが溶媒に溶解した混合溶液を正極活物質層に塗布し乾燥して有機無機コート層を形成するとよい。選択金属を有する化合物としては、溶媒に溶解するものであればよく、中でも、選択金属を有する塩であることがよい。かかる塩は、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩を用いることができ、中でも硝酸塩、酢酸塩がよい。
また混合溶液の溶媒としては、選択ポリマーと選択金属を有する化合物の両方を溶解できる有機溶剤又は水を用いることができる。有機溶剤には特に制限はなく、複数の溶剤の混合物でも構わない。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)あるいはグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)の混合溶媒などを用いることができる。混合溶液の溶媒は、有機無機コート層から容易に除去できる沸点が低いものが望ましい。
混合溶液の塗布にあたっては、スプレー、ローラー、刷毛などで塗布してもよいが、正極活物質の表面を均一に塗布するにはディッピング法にて塗布する事が望ましい。ディッピング法にて塗布すれば、正極活物質粒子どうしの間隙に混合溶液が含浸されるので、正極活物質粒子表面のほぼ全体に有機無機コート層を形成することができる。したがって、正極活物質と電解液との直接接触を確実に防止することができる。
ディッピング法で塗布する方法としてA、Bの二つの方法がある。先ず、Aの方法は、少なくとも正極活物質とバインダーとを含むスラリーを集電体に結着させて正極前駆体を形成し、その正極前駆体を混合溶液に浸漬し、引き上げて乾燥させる方法である。必要であればこれを繰り返して、所定の厚さの有機無機コート層を形成する。
このAの方法を用いる場合には、正極前駆体を混合溶液に2分間以上浸漬するのが好ましい。また減圧雰囲気下で浸漬することも好ましい。このようにすることで、正極活物質層内に混合溶液が十分に含浸され、正極活物質の表面に有機無機コート層をさらに確実に形成することができる。
Aの方法は、混合溶液中の有機物が正極活物質粒子の表面に吸着する吸着現象を利用したものである。上記基をもつ選択ポリマーを選択金属と混合することで、選択ポリマーの上記の所定の基に選択金属が配位し、正極活物質粒子上に薄い有機無機コート層を形成することができる。
このAの方法は、ロールトゥーロール式、バッチ式のいずれを採用して行ってもよいが、生産性の面でロールトゥーロール式がよい。ロールトゥーロール式は、正極前駆体を連続し長尺体に形成し、この長尺体を連続的に混合溶液にディッピングする方法である。バッチ式は、正極前駆体を所定の寸法に裁断し、裁断したそれぞれの正極前駆体を複数個まとめて混合溶液にディッピングする方法である。Aの方法によれば、正極活物質粒子上だけでなく、集電体上及び結着部上にも有機無機コート層を形成することができ、これらを保護することができる。
もう一つのBの方法は、正極活物質の粉末を先ず混合溶液に混合し、それをフリーズドライ法などによって乾燥させる方法である。必要であればこれを繰り返して、所定の厚さの有機無機コート層を形成する。その後、有機無機コート層が形成された正極活物質を用いて正極を形成する。
上記A,Bの方法のうち、Aの方法がよい。Bの方法の場合には、先に正極活物質粒子上に有機無機コート層を形成し、その後に、これを結着剤などとともに溶媒存在下で集電体上に塗布している。このため、塗布工程の際に有機無機コート層が損傷するおそれがある。これに対して、Aの方法では、正極活物質層を形成した後に、正極活物質粒子上に有機無機コート層を形成しているため、有機無機コート層は製造過程において損傷を受けるおそれはない。
A,Bの方法において、混合溶液中の選択ポリマーの濃度は、混合溶液100質量%に対して0.001質量%以上かつ5.0質量%未満とすることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%の範囲が望ましい。選択ポリマーはポリエチレンイミンであり、混合溶液中に0.1〜5質量%含まれていることが好ましい。この範囲内では、濃度が高くなるほどサイクル後の放電容量維持率が向上し、抵抗上昇が抑制される。また選択ポリマーの濃度が上記の範囲となるように塗布すれば、有機無機コート層の厚さは0.2nm〜4nmの範囲となる。この範囲を外れて濃度が低すぎると正極活物質との接触確率が低くコート層形成に長時間要するようになり、濃度が高すぎると正極上での電気化学反応を阻害する場合がある。
ディッピング後には、有機無機コート層を適切な溶媒で洗浄するのが好ましい。洗浄が不十分であると、塗布時に混合溶液に含まれていた成分が残渣として正極表面に生じて初期抵抗が上昇したり、残渣が電解液中に流出してサイクル時の容量が低下したりするおそれがある。また、ディッピング法により形成された有機無機コート層に対して、熱処理を行うことが望ましい。熱処理温度は80〜140℃、熱処理時間は10分〜3日とするとよい。また熱処理雰囲気は、真空雰囲気、非酸化性ガス雰囲気とするのが望ましい。
有機無機コート層の厚さは、0.1nm〜100nmの範囲であることが好ましく、0.1nm〜10nmの範囲であることがさらに好ましく0.1nm〜5nmの範囲であることが特に望ましい。有機無機コート層の厚さは10nm以下がよい。有機無機コート層の厚さが薄すぎると、正極活物質が電解液と直接接触する場合がある。また有機無機コート層の厚さがμmオーダー以上となると、二次電池とした場合に抵抗が大きくなってイオン伝導性が低下する。このように薄い有機無機コート層を形成するには、上記したディッピング溶液(混合溶液)中の選択ポリマーと選択金属の濃度を低くしておき、繰り返し塗布することが好ましい。この方法によれば、薄くかつ均一な有機無機コート層を形成することができる。
有機無機コート層は、カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物をさらに含むことが好ましい。カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物をさらに含むとは、カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物を内包することを指す。有機無機コート層がこのようなリチウム化合物をさらに含むことで正極の耐電圧性がさらに向上し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上する。ここで酸化反応電位とは酸化反応が始まる電位、すなわち分解開始電圧を意味する。このような酸化反応電位はリチウムイオン二次電池に用いられる電解液の有機溶媒の種類によって異なる値を有し、本明細書における酸化反応電位は、電解液の有機溶媒としてカーボネート系溶媒を用いて酸化反応電位を測定した時に表われる値を意味する。
カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物としては、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、LiBF、LiCFSOなどが例示される。有機無機コート層におけるリチウム化合物の含有量は、有機無機コート層を100質量%としたときに10〜80質量%の範囲が好ましく、40〜60質量%の範囲が特に望ましい。リチウム化合物の含有量が10質量%未満では含有させたことによる効果が発現しにくく、80質量%を超えるとリチウム化合物を内包させる有機無機コート層の形成が困難となる場合がある。
有機無機コート層に上記リチウム化合物を含ませるには、例えば上記リチウム化合物が溶媒に溶解した溶液に有機無機コート層が形成された正極を浸漬し、引き上げて乾燥することで容易に行うことができる。
有機無機コート層の表面に、有機上コート層を形成することも好ましい。有機上コート層によって高電圧駆動時に正極活物質粒子と電解液との直接接触をさらに抑制することができる。しかし有機無機コート層と有機上コート層との合計層厚が大きくなると、リチウムイオン伝導性の抵抗が増大してしまう。そこで有機上コート層に含まれるポリマーとして、下層の有機無機コート層を構成するポリマーのゼータ電位とは正負が逆のゼータ電位をもつものを用いることが好ましい。このようにすれば、下層の有機無機コート層と有機上コート層とがクーロン力によって強固に接合されるので、下層の有機無機コート層と有機上コート層とを共に薄膜に形成することができ、有機無機コート層と有機上コート層とからなるコート層の総厚をnmオーダーとすることができる。
なお有機上コート層を形成した場合には、有機無機コート層と有機上コート層とからなるコート層の総厚が0.1nm〜100nmの範囲であることが好ましく、0.1nm〜10nmの範囲であることがさらに好ましく0.1nm〜5nmの範囲であることが特に望ましい。また有機上コート層には、上述した選択金属及び/又はカーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物を含んでもよい。この場合、有機上コート層に含まれる選択金属及び/又はリチウム化合物は、有機無機コート層に含まれる選択金属及び/又はリチウム化合物と同じでもよいし異なっていてもよい。選択金属及び/又はリチウム化合物の添加量は、有機無機コート層の場合と同様である。
また有機無機コート層と有機上コート層とからなるコート層の総厚がnmオーダーであれば、コート層がリチウムイオン伝導性の抵抗となることも抑制できる。したがって高電圧駆動によっても電解液の分解を抑制することができ、高容量であるとともに繰り返し充放電後も高い電池特性を維持できるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の正極に用いられる正極活物質粒子(主にリチウム遷移金属酸化物を指す)は、電解質を入れていない状態の水もしくは有機溶媒に分散させた場合、ゼータ電位を測定すると負になることが判明している。この現象から、例えばポリエチレンイミンなどのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーを有機無機コート層に用いるのが好ましい。こうすることで、正極活物質とポリマーとがクーロン力によって強固に結合する。そしてポリアクリル酸などのゼータ電位が負のアニオン性ポリマーを用いて有機上コート層を形成するのが好ましい。
なお本発明にいうゼータ電位は、顕微鏡電気泳動法、回転回折格子法、レーザー・ドップラー電気泳動法、超音波振動電位(UVP)法、動電音響(ESA)法にて測定されるものである。特に好ましくはレーザー・ドップラー電気泳動法によって測定されたものである。具体的な測定条件を以下に説明する。先ず、DMF、アセトン、水を溶媒とし、固形分濃度0.1wt%の溶液(懸濁液)を調製した。ゼータ電位の測定値は温度25℃で3回の測定を行った、ゼータ電位測定値の平均を算出して求めた。また溶液のpHについては中性とした。
本発明において、正極活物質粒子と有機無機コート層との間には、介在層が介在していてもよい。正極活物質粒子と有機無機コート層との間に介在させ得る介在層は、コーティング物質及び表面処理物質、の群から選ばれる1種以上を含むと良い。コーティング物質や表面処理物質が、無機酸化物や金属を含む場合、有機無機コート層を形成する選択ポリマーは有機物からなり、有機物は無機酸化物や金属よりも界面(表面)エネルギーが小さいため、選択ポリマーは介在層表面を均一に被覆する。
コーティング物質は、無機酸化物を有すると良い。コーティング物質に含まれる無機酸化物としては、例えば、リン酸化合物が挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、AlPO4が挙げられる。表面処理物質としては、例えば、フッ化物、硫化物、遷移金属酸化物が挙げられる。フッ化物としては、例えば、金属フッ化物が挙げられる。硫化物としては、例えば、金属硫化物が挙げられる。遷移金属酸化物は、例えば、遷移金属元素を有するリン酸化合物、遷移金属元素を有するホウ酸化合物、遷移金属元素を有する硫酸化合物が挙げられる。
正極活物質層に含まれる結着部を構成するバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVdF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が例示される。正極用バインダーとしての特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリブロックイソシアナート、ポリオキサゾリン、ポリカルボジイミド等の硬化剤、エチレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルオリゴマー、フタル酸エステル、ダイマー酸変性物、ポリブタジエン系化合物等の各種添加剤を単独で又は二種以上組み合わせて配合してもよい。
有機無機コート層を構成する選択ポリマーとしては、結着部に対する被覆性が良好であるものが望ましい。したがってバインダーのゼータ電位とは正負が逆のゼータ電位をもつ選択ポリマーを用いることが好ましい。例えばバインダーにポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)のゼータ電位は負であるので、カチオン性の選択ポリマーを用いるのが好ましい。
またバインダーと選択ポリマーとのゼータ電位差は大きいほど好ましい。例えば、バインダーにポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合には、ゼータ電位差が+20mV以上となるように、有機無機コート層にカチオン化し易いポリエチレンイミン(PEI)を選択ポリマーとして用いることが好ましい。
また正極活物質層は、導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、気相法炭素繊維(VaporGrownCarbonFiber:VGCF)等が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質100質量部に対して、2〜100質量部程度とすることができる。導電助剤の量が2質量部未満では効率のよい導電パスを形成できないおそれがあり、100質量部を超えると電極の成形性が悪化するとともにエネルギー密度が低くなるおそれがある。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極を備えている。負極及び電解液は、公知のものを用いることができる。負極は、集電体と、集電体に結着された負極活物質層とからなる。負極活物質層は、負極活物質とバインダーとを少なくとも含み、導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、グラファイト、ハードカーボン、ケイ素、炭素繊維、スズ(Sn)、酸化ケイ素など公知のものを用いることができる。中でもグラファイト、ハードカーボンなどのカーボンからなる負極活物質を用いると、サイクル後の抵抗が大きく低下し、サイクル後に出力が向上するという特異な効果が発現される。
また負極活物質として、SiO(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物を用いることもできる。このケイ素酸化物粉末の各粒子は、不均化反応によって微細なSiと、Siを覆うSiOとに分解したSiOからなる。xが下限値未満であると、Si比率が高くなるため充放電時の体積変化が大きくなりすぎてサイクル特性が低下するおそれがある。またxが上限値を超えると、Si比率が低下してエネルギー密度が低下するおそれがある。0.5≦x≦1.5の範囲が好ましく、0.7≦x≦1.2の範囲がさらに望ましい。
一般に、酸素を断った状態であれば800℃以上で、ほぼすべてのSiOが不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性のSiO粉末を含む原料酸化ケイ素粉末に対して、真空中または不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことで、非結晶性のSiO相および結晶性のSi相の二相を含むケイ素酸化物粉末が得られる。
またケイ素酸化物として、SiOを50〜99質量%に対し炭素材料を1〜50質量%で複合化したものを用いることもできる。SiOを炭素材料と複合化することで、電池特性が向上する。炭素材料の複合量が1質量%未満では導電性向上の効果が得られず、50質量%を超えるとSiOの割合が相対的に減少して負極容量が低下してしまう。炭素材料の複合量は、SiOを50〜99質量%に対して5〜30質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がさらに望ましい。SiOに対して炭素材料を複合化するには、CVD法などを利用することができる。
ケイ素酸化物粉末は平均粒径が1μm〜10μmの範囲にあることが望ましい。平均粒径が10μmより大きいとリチウムイオン二次電池の充放電特性が低下するおそれがあり、平均粒径が1μmより小さいと凝集して粗大な粒子となるため同様にリチウムイオン二次電池の充放電特性が低下する場合がある。
負極における集電体、バインダー及び導電助剤は、正極で用いられるものと同様のものを用いることができる。
上記した正極及び負極を用いる本発明のリチウムイオン二次電池は、特に限定されない公知の電解液、セパレータを用いることができる。電解液は、有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものである。有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、たとえばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。電解液の有機溶媒は、少なくともフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含むことが望ましい。また、溶解させる電解質としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiI、LiClO、LiCFSO等の有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いることができる。
電解質としては、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO等のリチウム金属塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。中でもLiBFを用いることが望ましい。有機無機コート層をもつ正極を用いるとともにLiBFを電解液中に含むことで、電解液が分解しにくくなる効果が相乗的に得られる。このため、高電圧駆動における繰り返し充放電後もさらに高い電池特性を維持することができる。
セパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。また、これらの微多孔膜には無機物を主とする耐熱層が設けられていてもよく、用いられる無機物としては酸化アルミニウムや酸化チタンが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させて電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を電解液とともに電池ケースに密閉して電池となる。
なお本発明のリチウムイオン二次電池は、初期に使用電圧に充電した状態で高温保持するエージング処理を行うことが望ましい。こうすることで初期容量の低下と初期抵抗の増大を抑制することができる。使用電圧としては4.3V以上、特に4.5Vが望ましく、エージング処理条件としては、35℃〜90℃の温度で1時間〜240時間保持すればよい。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態を更に詳しく説明する。
[実施例1]
<正極の作製>
正極活物質としてのスピネル結晶構造をもつLiNi0.5Mn1.5が90質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)が3質量部と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)が7質量部と、を含む混合物にNMPを添加してスラリーを作製した。このスラリーをアルミニウム箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥させて約40μmの厚さの正極活物質層を形成した。これを正極前駆体とした。
エチルアルコールに硝酸ランタンを2.5mmol/Lとなるように溶解させ、さらにポリエチレンイミン(PEI)を濃度1質量%となるように溶解させて、混合溶液を調製した。この混合溶液に上記正極前駆体を25℃で10分間浸漬させた。正極前駆体を混合溶液から取り出した後に、120℃で12時間真空乾燥して正極を得た。この正極に含まれる正極活物質粒子表面には、有機無機コート層が形成されていた。
なお上記混合溶液を調製する際に、先ずエチルアルコールに硝酸ランタンを溶解させ、次いでポリエチレンイミン(PEI)を溶解したところ、溶液が一瞬白濁した後に透明となった。この混合溶液を粒度分布測定器(「NANO PARTICLEANALYZERSZ-100」、HORIBA社製)を用いて分析したところ、2nm±0.3nmの極めて狭い範囲に粒径をもつ微粒子が存在することがわかった。ランタンが存在しない場合にはポリエチレンイミンは凝集せず、また無機物の微粒子は凝集せず、このようにシャープな粒度分布は生じない。このため、この微粒子はランタンイオンがポリエチレンイミンに配位したものと推察される。
<負極の作製>
天然黒鉛粉末98質量部と、結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部及びスチレンーブタジエンゴム(SBR)1質量部を混合して混合物を絵得た後、この混合物に水を添加してスラリーを調製した。このスラリーを、厚さ18μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥して、銅箔上に約15μmの厚さで負極活物質層をもつ負極を作製した。
<リチウムイオン二次電池の作製>
非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とフッ素系溶媒(フッ素化鎖状カーボネート)を30:50:20(体積%)で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。
そして上記の正極および負極の間に、セパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン積層フィルムを挟装して電極体とした。この電極体をポリプロピレン製ラミネートフィルムで包み込み、周囲を熱融着させてフィルム外装電池を作製した。最後の一辺を熱融着封止する前に上記の非水電解液を注入し、電極体に含浸させて、本実施例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例1]
正極に有機無機コート層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
<試験例1>
実施例1、比較例1のリチウムイオン二次電池の初期抵抗を測定した。初期抵抗を測定するため、各電池に対して、測定温度25℃、0.5C、4.7VのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において4.7Vまで充電し、10時間保持した後、10CのCC放電(定電流放電)で放電させた。放電開始から1秒経過までの間における電池の抵抗値を初期抵抗としてそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池の初期抵抗は2.64Ωであり、比較例1の初期抵抗は5.93Ωであった。このことから、LiNi0.5Mn1.5を有する正極活物質粒子表面に有機無機コート層を形成することで、リチウムイオン二次電池の初期抵抗が低くなることがわかった。その理由は、以下のように推察される。正極活物質粒子表面に形成された有機無機コート層は、ポリエチレンイミン及び選択金属Laを有する。ポリエチレンイミンのもつイミノ基とランタンとの配位した状態はイオンコンプレックスとして高密度である事が推定できて、この高密度膜が電解液と正極活物質の接触を妨げる事により、高電位での分解反応を抑制したために、リチウムイオン二次電池の抵抗値が低下したものと考えられる。また、本発明の正極は、高電圧駆動に耐えうることが裏付けられた。
以下、参考のために、正極活物質として、層状化合物であるLiNi0.5Co0.2Mn0.3Oを用いた例を示す。
[参考例1]
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3Oが94質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)が3質量部と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)が3質量部と、を含む混合スラリーをアルミニウム箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥させて約40μmの厚さの正極活物質層を形成した。これを正極前駆体とした。
エチルアルコールに硝酸ランタンを2.5mmol/Lとなるように溶解させ、さらにポリエチレンイミン(PEI)を濃度1質量%となるように溶解させて、混合溶液を調製した。この混合溶液に上記正極前駆体を25℃で10分間浸漬後にエタノールで洗浄した。その後、上記正極前駆体をポリアクリル酸が0.2質量%溶解したエタノール溶液に浸漬した。この一連の操作を二回繰り返し、120℃で12時間真空乾燥して正極を得た。この正極には、有機無機コート層と有機上コート層とが形成されている。以下、有機無機コート層と有機上コート層の全体を単にコート層ということがある。
透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「H9000NAR」)を用い、加速電圧200kV、倍率205万倍にて測定した正極のTEM像を図1に示す。図1には、正極活物質粒子を覆う厚さ約0.8nmのコート層が観察される。なお前述の粒径2nm±0.3nmは溶媒で膨潤した高分子の粒径であり、約0.8nmという厚さは、溶媒を乾燥させた後のコート層の厚さである。図1に示されるように、層状化合物LiNi0.5Co0.2Mn0.3Oからなる正極活物質粒子表面にはコート層が形成されていた。スピネル構造の正極活物質LiNi0.5Mn1.5からなる正極活物質粒子表面にも、これと同様のコート層が形成されるものと推定される。
<負極の作製>
先ずSiOx粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiOx粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
このSiOx粉末32質量部と、天然黒鉛50質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)8質量部と、結着剤としてのポリアミドイミド10質量部を混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ18μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に約15μmの厚さで負極活物質層をもつ負極を作製した。
<リチウムイオン二次電池の作製>
非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)を4:26:30:40(体積%)で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/LとLPFO(組成式:LiPF(CO))を0.01mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。
そして上記の正極および負極の間に、セパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン積層フィルムを挟装して電極体とした。この電極体をポリプロピレン製ラミネートフィルムで包み込み、周囲を熱融着させてフィルム外装電池を作製した。最後の一辺を熱融着封止する前に上記の非水電解液を注入し、電極体に含浸させて、本参考例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
[参考比較例1]
コート層を形成しなかったこと以外は参考例1と同様の正極を用い、他は参考例1と同様にして、本参考比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
[参考比較例2]
硝酸ランタンを添加しなかったこと以外は参考例1と同様の混合溶液を用いて正極を作製した。この正極を用いたこと以外は参考例1と同様にして、本参考比較例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
<参考試験例1>
参考例1、参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池を用い、初期の放電IRドロップを測定した。放電IRドロップを測定するために、測定温度25℃、1CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において電池電圧4.5Vまで充電し、2.5時間保持した後、0.33CのCC放電(定電流放電)で放電させた。放電開始から10秒後における正極の抵抗値を初期の放電IRドロップとしてそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
次に、参考例1、参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池を用い、それぞれ温度25℃、1CのCC充電(定電流充電)の条件下において電池電圧4.5Vまで充電し、10分間休止した後、1CのCC放電(定電流放電)で3.0Vまで放電し、10分間休止するサイクルを100サイクル繰り返すサイクル試験を行った。サイクル試験後の各リチウムイオン二次電池を用い、初期の放電IRドロップと同様にしてサイクル後の放電IRドロップを測定した。結果を表2に示す。
参考例1のリチウムイオン二次電池は、参考比較例1,2に比べて100サイクル後も抵抗の上昇が僅かであり、これは有機無機コート層にランタンを含んだことによる効果であることが明らかである。
<参考試験例2>
参考例1、参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池を用い、それぞれ温度60℃、1CのCC充電の条件下において4.32Vまで充電し、10分間休止した後、1CのCC放電で3.26Vにて放電し、10分間休止するサイクルを200サイクル繰り返すサイクル試験を行った。100サイクル目及び200サイクル目における放電容量維持率をそれぞれ測定し、結果を表3に示す。放電容量維持率は、Nサイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((Nサイクル目の放電容量)/(初回の放電容量)×100)で求められる値である。
また初回、100サイクル目及び200サイクル目において50℃におけるSOC20%放電抵抗をそれぞれ測定し、抵抗上昇率を求めた結果を表4に示す。SOC20%放電抵抗は、温度50℃でSOC20%充電した後に、3Cで10秒間放電を行い、以下の式により算出した値である。
10秒抵抗=10秒間での電圧降下量/3Cの電流値
抵抗上昇率は、Nサイクル目の放電抵抗から初回の放電抵抗を差し引いた値を初回の放電抵抗で除した値の百分率((Nサイクル目の放電抵抗−初回の放電抵抗)/(初回の放電抵抗)×100)で求められる値である。
参考比較例2のリチウムイオン二次電池は、参考比較例1に比べて放電容量維持率が高く、抵抗上昇率が低い。これはポリエチレンイミンとポリアクリル酸とからなるコート層を形成したためである。しかし参考例1のリチウムイオン二次電池は、参考比較例2に比べても放電容量維持率が高く、抵抗上昇率が低い。これは有機無機コート層にランタンを含んだことによる効果であることが明らかである。
[参考例2]
<正極の作製>
参考例1と同様に、正極前駆体を作成した。エチルアルコールに硝酸マグネシウムを2.5mmol/Lとなるように溶解させ、さらにポリエチレンイミン(PEI)を濃度1質量%となるように溶解させて、混合溶液を調製した。この混合溶液に上記正極前駆体を25℃で10分間浸漬し、その後取り出して風乾させた後、120℃で12時間真空乾燥して有機無機コート層をもつ正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
この正極を用いたこと以外は参考例1と同様にして、本参考例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
<参考試験例3>
参考例2と参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池について、参考試験例1と同様のサイクル試験を行った。サイクル試験前(初期)と100サイクル後のインピーダンス特性を評価した。具体的には、温度25℃、電圧3.51Vにおいて0.1Hz−1,000,000Hzまで周波数を変化させ、0.1Hzにおける抵抗絶対値(/Z/)をインピーダンス値とした。結果を表5に示す。
<参考試験例4>
参考例2と参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池を用い、参考試験例2と同様の試験を行った。放電容量維持率の測定結果を表6に、抵抗上昇率の測定結果を表7に、それぞれ示す。
放電容量維持率に関しては、いずれも大差ないが、参考例2のリチウムイオン二次電池は各参考比較例に比べて抵抗上昇率が低い。これは有機無機コート層にマグネシウムを含んだことによる効果であることが明らかである。
[参考例3]
参考例1と同様に、正極前駆体を作成した。エチルアルコールに酢酸リチウムを0.23mol/Lとなるように溶解させ、さらにポリエチレンイミン(PEI)を濃度1質量%となるように溶解させて、混合溶液を調製した。この混合溶液に上記正極前駆体を25℃で10分間浸漬後にエタノールで洗浄した。その後、上記正極前駆体を、ポリアクリル酸が0.2質量%溶解したエタノール溶液に浸漬した。この一連の操作を二回繰り返した。120℃で12時間真空乾燥して正極を得た。この正極には、有機無機コート層と有機上コート層とが形成されている。
<リチウムイオン二次電池の作製>
この正極を用いたこと以外は参考例1と同様にして、本参考例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
<参考試験例5>
参考例3と参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池について、参考試験例1と同様のサイクル試験を行った。サイクル試験前(初期)と100サイクル後の放電容量を測定し、放電容量維持率を算出した。放電容量の測定のために、温度25℃において0.2CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において電池電圧4.5Vまで充電し、10分間休止した。その後、0.33CのCC放電(定電流放電)で3.0Vまで放電した。このときの放電容量を測定した。放電容量維持率は、100サイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((100サイクル目の放電容量)/(初回の放電容量)×100)で求められる値である。結果を表8に示す。
これは、正極活物質粒子表面に有機無機コート層と有機上コート層とからなるコート層を形成した効果である。しかし参考例3のリチウムイオン二次電池は、参考比較例2に比べても放電容量維持率が高かった。これは有機無機コート層にリチウムを含んだことによる効果であることが明らかである。このメカニズムは明らかではないが、ポリエチレンイミン及び/又はポリアクリル酸にリチウムイオンが配位することによって、これらのポリマーに元々配位していたプロトンによる悪影響が排除されたためと推察される。
<参考試験例6>
参考例3と参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池を用い、参考試験例2と同様の試験を行った。放電容量維持率の測定結果を表9に、抵抗上昇率の測定結果を表10に、それぞれ示す。
放電容量維持率に関しては、参考例3が参考比較例1,2より高いものの、その差は大きくない。しかし参考例3のリチウムイオン二次電池は、各参考比較例に比べて抵抗上昇率が極めて低い。これは有機無機コート層にリチウムを含んだことによる効果であることが明らかである。
[参考例4]
参考例1の正極と同様にして、ランタンを含む有機無機コート層とポリアクリル酸からなる有機上コート層とをもつ電極を作製した。リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)を0.04mol/L溶解したエタノール溶液を調製した。この電極を25℃で10分間浸漬した後に取り出し、エタノールで洗浄した後、120℃で12時間真空乾燥して正極を得た。正極におけるLiBETIの含有量は、ランタンに対して質量で4倍量である。
<リチウムイオン二次電池の作製>
この正極を用いたこと以外は参考例1と同様にして、本参考例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
<参考試験例7>
参考例4と参考比較例1及び参考例1のリチウムイオン二次電池について、温度25℃において1CのCCCV2.5h(CCCV込み)の条件下において電池電圧4.32Vまで充電し、60℃の炉内にて12日間保持した。その後、初期容量と同様にして保存後の放電容量(保存後容量)を測定した。そして初期容量に対する保存後容量の割合(保存後放電容量維持率)を算出し、結果を表11に示す。
参考例4のリチウムイオン二次電池は、参考例1に比べても保存後放電容量維持率が高い。これはコート層にランタンに加えてリチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)を含んだことによる効果であることが明らかである。このメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。高電圧(電池電圧が4.3V以上)での60℃保存試験時に、電解質であるLiPFが分解することが知られている。本参考例4では、耐電圧に優れたLiBETIがPEIに配位し、そのアニオンによってPF−イオンの近接が抑制され、LiPFの分解が抑制されたと考えられる。
<参考試験例8>
参考例4と参考比較例1,2のリチウムイオン二次電池を用い、参考試験例2と同様の試験を行った。放電容量維持率の測定結果を表12に、抵抗上昇率の測定結果を表13に、それぞれ示す。
参考比較例2のリチウムイオン二次電池は、参考比較例1に比べて放電容量維持率が高い。これはポリエチレンイミンからなるコート層を形成した効果である。しかし参考例4のリチウムイオン二次電池は、参考比較例2に比べても放電容量維持率が高く、抵抗上昇率が著しく低い。これは有機無機コート層にランタンとLiBETIを含んだことによる効果であることが明らかである。
[参考例5]
<正極の作製>
参考例1と同様に、正極を作成した。
<負極の作製>
グラファイト97質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)粉末1質量部と、スチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の混合物(質量比1:1)よりなるバインダ2質量部を混合して混合物を得た。混合物に水を添加してスラリーを調製した。このスラリーを、厚さ18μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥して、銅箔上に約15μmの厚さで負極活物質層を形成して負極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)を4:26:30:40(体積%)で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。
そして上記正極と上記負極を用い、参考例1と同様にして、本参考例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
[参考例6]
<正極の作製>
参考例5と同様にして正極前駆体を形成した。次にエチルアルコールに硝酸ランタンを2.5mmol/Lとなるように溶解させ、さらにポリエチレンイミン(PEI)を濃度0.005質量%となるように溶解させて、混合溶液を調製した。上記の正極前駆体をこの混合溶液に25℃で10分間浸漬後にエタノールで洗浄した。ポリアクリル酸が0.5質量%溶解したエタノール溶液に浸漬した。この一連の操作を二回繰り返し、120℃で12時間真空乾燥してコート層をもつ正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記正極と参考例5と同様の負極を用い、参考例1と同様にして、本参考例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
[参考例7]
ポリエチレンイミン(PEI)の濃度が0.05質量%の混合溶液を用いたこと以外は参考例6と同様にして正極を作製した。この正極と参考例5と同様の負極を用い、参考例1と同様にして、本参考例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
[参考例8]
ポリエチレンイミン(PEI)の濃度が0.1質量%の混合溶液を用いたこと以外は参考例6と同様にして正極を作製した。この正極と参考例5と同様の負極を用い、参考例1と同様にして、本参考例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
[参考例9]
ポリエチレンイミン(PEI)の濃度が1.0質量%の混合溶液を用いたこと以外は参考例6と同様にして正極を作製した。この正極と参考例5と同様の負極を用い、参考例1と同様にして、本参考例9のリチウムイオン二次電池を作製した。
[参考比較例3]
コート層を形成しなかったこと以外は参考例6と同様の正極を用い、他は参考例5と同様にして、本参考比較例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
<参考試験例9>
参考例5〜9と参考比較例3のリチウムイオン二次電池について、サイクル試験を行った。サイクル試験を行うために、各リチウムイオン二次電池に対して、それぞれ温度60℃、1CのCCCV充電の条件下において電池電圧4.32Vまで充電し、10分間休止した後、1CのCC放電で3.26Vにて放電し、10分間休止するサイクルを200サイクル繰り返した。サイクル試験前(初期)と200サイクル後の放電容量を測定し、放電容量維持率を算出した。放電容量は、温度25℃において0.2CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において電池電圧4.5Vまで充電し、10分間休止した後、0.33CのCC放電(定電流放電)で3.0Vまで放電したときの放電容量の測定値である。結果を表14に示す。
また各リチウムイオン二次電池について、初期と200サイクル後の10秒抵抗をそれぞれ測定し、抵抗上昇率を算出した。結果を表14に示す。なお10秒抵抗は、温度25℃においてSOC20%に充電した後、3Cの条件で10秒間の放電を行い、以下の式に基づいて算出した。
10秒抵抗=10秒間での電圧降下量/3Cの電流値
負極活物質にグラファイトを用いた場合においても、有機無機コート層を正極に有することでサイクル試験後の特性が向上することが明らかである。また混合溶液中のポリエチレンイミン(PEI)の濃度が高くなるにつれて、放電容量維持率が向上するとともに抵抗上昇率が低下していることもわかる。すなわち0.1質量%以上の濃度でポリエチレンイミン(PEI)を含む混合溶液を用いて有機無機コート層を形成することで、初期抵抗よりサイクル試験後の抵抗が大きく低下する。これは、サイクル試験を行うことによって電池出力が向上することを意味している。
<参考試験例10>
参考例9と参考比較例3のリチウムイオン二次電池について、それぞれ温度60℃、1CのCCCV充電の条件下において電池電圧4.32Vまで充電した後、60℃で12日間保存した。そして保存前と保存後のリチウムイオン二次電池について、参考試験例9と同様にして放電容量を測定し、放電容量維持率を算出した。また参考試験例9と同様にして抵抗上昇率を算出し、それぞれの結果を表15に示す。
負極活物質にグラファイトを用いた場合においても、有機無機コート層を正極に有することで60℃で12日間保存後の特性が向上することが明らかである。
[参考例10]
参考例9と同様にリチウムイオン二次電池を作製し、先ず25℃にて初期充放電を行うコンディショニング処理を行い、不可逆容量を安定化させた。次に温度60℃、1CのCCCV充電の条件下において電池電圧4.32Vまで充電した後、60℃で12時間保持するエージング処理を行った。これを参考例10とした。
[参考例11]
エージング処理を行わなかったこと以外は参考例10と同様にして、参考例11のリチウムイオン二次電池を得た。
[参考比較例4]
参考比較例3と同様のリチウムイオン二次電池を用い、参考例10と同様のエージング処理を行った。これを、参考比較例4とした。
<参考試験例11>
参考例10,11、参考比較例3,4のリチウムイオン二次電池について、放電容量を測定した。各リチウムイオン二次電池について、温度25℃において0.2CのCCCV充電(定電流定電圧充電)の条件下において電池電圧4.5Vまで充電し、10分間休止した後、0.33CのCC放電(定電流放電)で3.0Vまで放電した。このときの結果を初期容量として表16に示す。また参考試験例9と同様にして10秒抵抗を測定し、結果を初期抵抗として表16に示す。
一般には、エージング処理することで高温保存性や高温サイクル特性が向上するが、参考比較例4のように高電圧駆動に対応したエージング処理を行うと、初期容量が低下したり抵抗が上昇するという問題があった。しかし本発明の有機無機コート層を形成した正極をもつリチウムイオン二次電池をエージング処理すれば、この問題を回避できることがわかる。
以上のように、正極活物質粒子が層状化合物LiNi0.5Co0.2Mn0.3Oを有し、正極活物質粒子上に有機無機コート層を形成した場合の各種実験の結果を参考のために示した。本発明のようにスピネル結晶構造をもつリチウム複合金属酸化物Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物を正極活物質として用い、この表面に有機無機コート層を形成した場合にも、正極活物質粒子が層状化合物LiNi0.5Co0.2Mn0.3Oを有し、正極活物質粒子上に有機無機コート層を形成した場合と同様の実験結果が得られると推察される。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器などに利用されるリチウムイオン二次電池用正極として有用であり、そのリチウムイオン二次電池は特に、大容量、大出力が必要な電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用に最適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 集電体と該集電体に結着された正極活物質層とを含み、
    該正極活物質層は一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と、該正極活物質粒子どうしを結着するとともに該正極活物質粒子と該集電体とを結着する結着部と、少なくとも該正極活物質粒子上の少なくとも一部に形成された有機無機コート層と、からなり、
    該有機無機コート層は、アミノ基、イミノ基、イミド基、及びマレイミド基の少なくとも一つをもつ選択ポリマーと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属と、を含み、
    前記有機無機コート層は、カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
  2. 前記有機無機コート層の厚さは10nm以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  3. 前記正極活物質粒子は、LiMnO、及びLiNi0.5Mn1.5から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  4. 前記選択ポリマーはポリエチレンイミンである請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  5. 前記有機無機コート層の表面に有機上コート層を有する請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  6. 集電体と該集電体に結着された正極活物質層とを含み、
    該正極活物質層は一般式:Lix(AyMn2-y)O4(Aは、遷移金属、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、及びGeから選ばれる少なくとも1種、0<x≦2.2、0≦y≦1)で表されるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と、該正極活物質粒子どうしを結着するとともに該正極活物質粒子と該集電体とを結着する結着部と、少なくとも該正極活物質粒子上の少なくとも一部に形成された有機無機コート層と、からなり、
    該有機無機コート層は、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、マレイミド基、カルボキシル基及びエーテル基の少なくとも一つをもつ選択ポリマーと、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属と、を含み、
    前記有機無機コート層は、カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の前記正極を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  8. 充電時の電池電圧が4.3V以上である請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の前記正極と、負極と、電解液とを含み、該電解液にはLiBFを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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