JP6317899B2 - 転写具 - Google Patents

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Description

本発明は、カセットケース内に収納した粘着剤テープ(例えば、糊テープ)上の粘着剤(例えば、糊)をカセットケースの先端開口部近傍に軸支した転写ローラを介して被転写物上に転写する転写具に関する。
一般的に、先端が開口したカセットケース内に供給リールと巻取リールとを配設して、両リール間に粘着剤テープ(例えば、糊テープ)を巻回させ、且つ、供給リールから送り出された粘着剤テープをカセットケースの先端開口部から露出させた転写ローラに巻き付けて、この転写ローラを被転写物に押し付けて回転させながら粘着剤テープ上に付着させた粘着剤(例えば、糊)を被転写物上に転写し、且つ、転写済みにより粘着剤が取り除かれたテープを巻取リールで巻き取るように構成した転写具が文房具の一部として市販されている。
この際、粘着剤テープは、略透明で帯状に形成されたベースフィルムの一方の面側に、接着能力が比較的弱く何回も剥離できる弱粘着性を有する粘着剤(例えば、糊)が付着されて、この一方の面側が被転写物と対向する面であり、粘着剤が付着されていないベースフィルムの他方の面側が転写ローラに巻き付いている。
そして、上記のように構成した転写具の使用形態は、大別すると、ユーザの人手により手動で転写する第1の使用形態と、適宜な装置に着脱自在に装着して自動的に転写する第2の使用形態とがある。
上記した第1の使用形態による転写具の一例として、転写テープ(粘着剤テープ)の転写作業を軽い力で迅速且つ確実に行うことができる塗布具がある(例えば、特許文献1参照)。
ここで、特許文献1に開示された塗布具について、この公報を参照して図6(a)に模式的に示して説明すると、塗布具(転写具)100は転写ローラ105を備えている。
上記した塗布具100では、卵形状のカセットケース101内に配設した供給リール102と巻取リール103とに巻回させた転写テープ(粘着剤テープ)104をカセットケース101の先端開口部101aから露出させた転写ローラ105に巻き付けた後に、巻取リール103に向かわせている。
そして、ユーザの人手Hで塗布具100を把持して、供給リール102から送り出されて転写ローラ105に巻き付いた転写テープ104を人手Hによる押圧力で載置台106に搭載した被転写物107に押し当てながら転写ローラ105を回転させることで、転写テープ104上に塗布した塗布体(粘着剤)を被転写物107上に手動で転写し、且つ、転写ローラ105の回転に伴って転写済みにより塗布体が取り除かれたテープ(104)が巻取リール103に巻き取られている。
この手動転写時において、転写ローラ105が被転写物107に対向して接する角度(被転写物対向角度)αは、人手による塗布具100への把持状態により不安定で変わり、通常30°〜60°程度の範囲である。
これに伴って、図6(a),(b)に示す如く、転写テープ104上に塗布した塗布体を被転写物107上に手動で転写した後の状態は、転写ローラ105が被転写物107に接する角度α(≒30〜60°)の接線S1を境にして、テープ搬送方向上流側では塗布体が付着し、一方、テープ搬送方向下流側では塗布体が転写済みにより取り除かれて付着していない。
従って、転写テープ104の転写ローラ105への巻き付け量は、転写前で塗布体が付着している上流側の方が、転写済みで塗布体が付着していない下流側よりも大幅に少量となるが、転写テープ104は略透明であるので両者の境目(接線S1)は視認できない。
一方、上記した第2の使用形態による転写具を適用した適宜な装置の一例として、テープ印字装置がある(例えば、特許文献2参照)。
ここで、特許文献2に開示されたテープ印字装置中で補助カセット(転写具)について、この公報を参照して図7(a)に模式的に示して説明すると、補助カセット200は不図示のテープ印字装置内に着脱自在に装着されている。
上記した補助カセット(転写具)200では、箱形状のカセットケース201内に配設した供給リール202と巻取リール203とに巻回させた糊テープ(粘着剤テープ)204をカセットケース201の先端開口部201aから露出させた転写ローラ205に巻き付けた後に、巻取リール203に向かわせている。
そして、不図示のテープ印字装置内に補助カセット200を装着した際に、転写ローラ205とプラテンローラ206との間で印字テープ(被転写物)207を挟持搬送しながら、カム208を用いてカセットケース201の上方をプラテンローラ206側に押圧することで、糊テープ204上に付着した糊を印字テープ207上に自動的に転写している。
この自動転写時において、転写ローラ205が印字テープ207に対向して接する角度(被転写物対向角度)βは一定で略90°程度である。
これに伴って、図7(a),(b)に示す如く、糊テープ204上に付着した糊を印字テープ207上に自動的に転写した後の状態は、転写ローラ205が印字テープ207に接する角度β(≒90°)の接線S2を境にして、テープ搬送方向上流側では糊が付着し、一方、テープ搬送方向下流側では糊が転写済みにより取り除かれて付着していない。
従って、糊テープ204の転写ローラ205への巻き付け量は、転写前で糊が付着している上流側と、転写済みで糊が付着していない下流側とが略等しくなるが、糊テープ204は略透明であるので両者の境目(接線S2)は視認できない。
特開2000−37991号公報 特開2009−90497号公報
ところで、転写具に対する第1,第2の使用形態は、ユーザの人手による手動転写の場合と、適宜な装置内における自動転写の場合とを先に図6と、図7とを用いて別々に説明したが、同一の転写具を用いて第1,第2の使用形態を共用することが可能である。
そして、転写具に対して第1,第2の使用形態を共用可能に構成したときに、転写具を用いて手動転写を行った後に、この転写具を適宜な装置内に装着して自動転写を行う場合に、手動転写後では粘着剤テープの転写ローラへの巻き付け量は、転写前で粘着剤が付着している上流側の方が、転写済みで粘着剤が付着していない下流側よりも大幅に少量となるために、自動転写のときに粘着剤テープ中で転写済みで粘着剤が付着していないテープ面と被転写物との間で滑りが生じ、粘着剤テープをテープ搬送方向下流側に送ることができないので、粘着剤テープの粘着剤を被転写物上に転写できないという問題が発生する。
この理由について更に詳述すると、転写具は、この内部で供給リールから送り出された粘着剤テープを巻取リールで巻き取るときに、巻取リールにはモータなどの動力源は備えてなく、供給リールの回転をギアやベルトを介して巻取リールに伝達しているので、転写ローラの回転に伴って粘着剤テープと被転写物との摩擦力により粘着剤テープが巻取リール側に移動することで巻き取られている。
この際、粘着剤テープ上の糊転写面と粘着剤との摩擦力は大きいが、転写済みにより粘着剤が付着していないテープ面は摩擦力が小さいので、自動転写時に転写ローラを粘着剤が付着していないテープ面から回転を開始させると滑りが生じるので粘着剤テープをテープ搬送方向下流側に送ることができない。
そこで、粘着剤テープの一例として糊テープを用い、この糊テープを供給リール側から引き出すに必要な転写ローラの押圧力を実験により測定したところ、転写ローラに巻き付いた糊テープ上で転写済みにより糊が付着していないテープ面では押圧力が1.5Kgf以上、一方、糊テープ上で糊が付着している糊転写面では押圧力が0.5Kgf程度の結果が得られた。
上記実験結果から、手動転写と自動転写とに共用できる転写具を適宜な装置に装着したときに、転写ローラに巻き付いた糊テープ上で転写済みにより粘着剤が付着していないテープ面から転写ローラの回転を開始させた場合に、糊テープをテープ搬送方向下流側に向けて搬送するには転写ローラに大きな押圧力を印加しなければならいので問題である。
更に、転写具をユーザの人手により手動転写した後に、次に手動転写を行う場合に、転写ローラに巻き付いた粘着剤テープ上に粘着剤が付着しているか否かを視認できないので、粘着剤テープ上で転写済みにより粘着剤が付着していないテープ面から転写ローラの回転を開始させた場合に、ユーザは転写ローラに大きな押圧力を印加しなければならないので問題である。
そこで、転写ローラに巻き付いた粘着剤テープ上に粘着剤が付着しているか否かを視認できなくても、粘着剤の有無にかかわらず、粘着剤テープの転写作業を軽い押圧力で確実に行うことができる転写具を提供することを目的とする。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、一方の面側に粘着剤を付着させた帯状の粘着剤テープをカセットケース内に設けた供給リールと巻取リールとに巻回させ、且つ、前記供給リールから送り出された前記粘着剤テープの他方の面側を前記カセットケースの先端開口部から露出させた転写ローラに巻き付けて、押圧力を印加して前記転写ローラを回転させながら前記粘着剤テープに付着させた前記粘着剤を被転写物上に転写し、転写済みのテープを前記巻取リールで巻き取るように構成した転写具において、
前記転写ローラには、
前記粘着剤テープの他方の面側を巻き付けるテープ巻き付け用ローラ部と、
前記テープ巻き付け用ローラ部の長手方向の両側に、該テープ巻き付け用ローラ部の径よりも大径である一対の鍔部とが形成されており、
前記転写ローラに前記押圧力が印加された時に、前記一対の鍔部は前記テープ巻き付け用ローラ部に巻き付いた前記粘着剤テープの一方の面側が前記被転写物に接する位置まで押し潰されることを特徴とする転写具である。
また、請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の転写具において、
前記転写ローラには、
前記テープ巻き付け用ローラ部と前記一対の鍔部との間において、前記テープ巻き付け用ローラ部の径よりも小径に形成された一対の逃げ溝部が形成されていることを特徴とする転写具である。
請求項1に記載の転写具によると、一方の面側に粘着剤を付着させた帯状の粘着剤テープをカセットケース内に収納し、且つ、カセットケースの先端開口部から露出させた転写ローラに粘着剤テープの他方の面側を巻き付けて構成した転写具において、転写ローラには、粘着剤テープの他方の面側を巻き付けるテープ巻き付け用ローラ部と、テープ巻き付け用ローラ部の長手方向の両側に、該テープ巻き付け用ローラ部の径よりも大径である一対の鍔部とが形成されており、転写ローラに押圧力が印加された時に、一対の鍔部はテープ巻き付け用ローラ部に巻き付いた粘着剤テープの一方の面側が被転写物に接する位置まで押し潰される。
この結果、転写ローラのテープ巻き付け用ローラ部が粘着剤テープ上で転写済みにより粘着剤が取り除かれているテープ面から回転を開始しても、押圧力により押し潰された一対の鍔部の摩擦力により粘着剤テープを下流側に向かって搬送できるために、この後、粘着剤テープ上で粘着剤が付着している粘着剤転写面が現れてこの粘着剤転写面の頭出しができるので、転写ローラのテープ巻き付け用ローラ部に巻き付いた粘着剤テープ上に粘着剤が付着しているか否かを視認できなくても、粘着剤の有無にかかわらずに転写ローラに大きな押圧力を印加することなく、粘着剤テープの転写作業を軽い押圧力で確実に行うことができる。
また、請求項2に記載の転写具によると、転写ローラには、テープ巻き付け用ローラ部と一対の鍔部との間において、テープ巻き付け用ローラ部の径よりも小径に形成された一対の逃げ溝部が形成されているので、一対の鍔部の各内側が押圧力により一対の逃げ溝部内に押し出されるために、テープ巻き付け用ローラ部に巻き付いた粘着剤テープの一方の面側が被転写物に接する位置まで一対の鍔部を押し潰すことができる。
本発明の実施例に係る転写具の外観を示した斜視図である。 本発明の実施例に係る転写具の構成及びユーザの人手により粘着剤テープの粘着剤を被転写物上に手動で転写する第1の使用形態を説明するための断面図である。 本発明の実施例に係る転写具において、転写ローラの近傍を拡大して示した斜視図である。 図3に示した転写ローラを説明するために断面して示した縦断面図である。 本発明の実施例に係る転写具を適用したメモプリンタを示した構成図である。 特許文献1に開示された塗布具(転写具)を説明するための図である。 特許文献2に開示された補助カセット(転写具)を説明するための図である。
以下に本発明に係る転写具の一実施例について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
本発明に係る転写具は、一方の面側に粘着剤を付着させた帯状の粘着剤テープをカセットケース内に設けた供給リールと巻取リールとに巻回させ、且つ、供給リールから送り出された粘着剤テープの他方の面側をカセットケースの先端開口部から露出させた転写ローラに巻き付けて、押圧力を印加して転写ローラを回転させながら粘着剤テープに付着させた粘着剤を被転写物上に転写し、転写済みのテープを巻取リールで巻き取るように構成した転写具において、転写具は粘着剤テープの粘着剤を被転写物上にユーザの人手により手動で転写する第1の使用形態と、適宜な装置に着脱自在に装着して粘着剤テープの粘着剤を被転写物上に自動的に転写する第2の使用形態とを共用可能に構成されている。
この際、転写ローラに巻き付いた粘着剤テープ(例えば、糊テープ)上に粘着剤(例えば、糊)が付着しているか否かを視認できなくても、粘着剤の有無にかかわらずに転写ローラに大きな押圧力を印加することなく、粘着剤テープの転写作業を軽い押圧力で確実に行うことができるように、とくに、転写ローラに対して改良を図っている。
図1は本発明の実施例に係る転写具の外観を斜視的に示している。また、図2は本発明の実施例に係る転写具の構成及びユーザの人手により粘着剤テープの粘着剤を被転写物上に手動で転写する第1の使用形態を断面して示している。
図1に示す如く、本発明の実施例に係る転写具10は、ユーザの人手により使用する第1の使用形態と、適宜な装置に着脱自在に装着して使用する第2の使用形態とを選択的に取り得るように構成されている。
上記した実施例の転写具10では、カセットケース11がユーザの人手で把持し易いように外形が略卵形状に形成されていると共に、カセットケース11の底面11aの外側に適宜な装置の一例として後述するメモプリンタ20(図5)に着脱自在に係合する係合部11bがこのケース11の長手方向に沿いながら僅かな高さで下方に向かって突出形成されている。
また、カセットケース11の長手方向の先端側には先端開口部11cが開口されており、この先端開口部11c内からアーム12に軸13を介して軸支された転写ローラ14が外部に向かって露出しており、且つ、この転写ローラ14にカセットケース11内に収納した粘着剤テープ15が巻き付いている。
また、図2に示す如く、カセットケース11内に収納した粘着剤テープ15は、このカセットケース11内に回転自在に設けた供給リール16と巻取リール17とに巻回されている。そして、供給リール16から引き出された粘着剤テープ15は、カセットケース11の先端開口部11c内からアーム12に軸13を介して軸支された転写ローラ14に巻き付けられながら巻取リール17に向かっている。
この実施例では、粘着剤テープ15の一例として略透明な糊テープが用いられており、粘着剤テープ(以下、糊テープと記す)15のベースフィルムの一方の面側に、接着能力が比較的弱く何回も剥離できる弱粘着性を有する糊(図示せず)が付着されて、この一方の面側が載置台18上に搭載された被転写物19と対向する面であり、糊が付着されていないベースフィルムの他方の面側が転写ローラ14に巻き付いている。
この際、供給リール16と一体に回転する大径ギア16aと、巻取リール17と同軸上で不図示の摩擦板を介して回転する小径ギア17aとを噛合させている。
そして、ユーザの人手Hで転写具10を把持して、供給リール16から送り出されて転写ローラ14に巻き付いた糊テープ15を人手Hによる押圧力で用紙などの被転写物19に押し当てながら転写ローラ14を回転させることで、糊テープ15上に付着した糊を被転写物19上に手動で転写し、且つ、転写ローラ14の回転に伴って転写済みにより糊が取り除かれたテープ(15)が巻取リール17に巻き取られている。
この手動転写時において、転写ローラ14が被転写物19に対向して接する角度(被転写物対向角度)αは、人手による転写具10への把持状態により不安定で変わり、通常30°〜60°程度の範囲である。
更に、手動転写では、先に背景技術の欄で説明したように、転写ローラ14が被転写物19に接する角度α(≒30〜60°)の接線S1を境にして、糊テープ15の転写ローラ14への巻き付け量は、転写前で糊が付着している上流側の方が、転写済みで糊が付着していない下流側よりも大幅に少量となる。
これにより、次回、手動転写を行うときに、糊テープ15上で転写済みにより糊が付着していないテープ面から転写ローラ14が回転を開始する場合が起こり得ると共に、糊テープ15上に糊が付着しているか否かを視認できないので、転写ローラ14に対して下記するように改良を図っている。
ここで、この実施例の要部となる転写ローラ14について、図3及び図4を用いて説明する。
図3は本発明の実施例に係る転写具において、転写ローラの近傍を拡大して斜視的に示している。また、図4は図3に示した転写ローラに対して、(a)は押圧力印加なしの初期状態を示し、(b)は押圧力を印加した転写状態を示している。
図3に示す如く、アーム12に軸13を介して回転自在に軸支された転写ローラ14は、糊テープ15のうちで糊が付着していない他方の面側を巻き付けるテープ巻き付け用ローラ部14aと、このテープ巻き付け用ローラ部14aの長手方向の両側にテープ巻き付け用ローラ部14aよりも少し小径で溝状に窪ませた一対の逃げ溝部14b,14bと、これら一対の逃げ溝部14b,14bの各外側にテープ巻き付け用ローラ部14aよりも少し大径に突出させた一対の鍔部14c,14cとが、被転写物19(図2)に対して摩擦係数が大きく且つ弾性変位可能なゴム材などの材料を用いて一体的に形成されている。
より具体的には、図4(a)に示す如く、転写ローラ14に対して押圧力印加なしの初期状態において、転写ローラ14は、糊テープ15のうちで糊が付着していない他方の面側を巻き付けるテープ巻き付け用ローラ部14aが所定の径φD1に形成されており、且つ、テープ巻き付け用ローラ部14aの長手方向の長さ寸法L1は糊テープ15の幅寸法Wよりも少し長く形成されている。
また、テープ巻き付け用ローラ部14aの長手方向の両側には、この長手方向の中心線を挟んで左右対称に一対の逃げ溝部14b,14bがテープ巻き付け用ローラ部14aの径φD1よりも少し小径な径φD2に形成されており、且つ、一対の逃げ溝部14b,14bの溝幅寸法L2は小幅な値になっている。
更に、一対の逃げ溝部14b,14bの各外側には、一対の鍔部14c,14cがテープ巻き付け用ローラ部14aの径φD1よりも少し大径な径φD3に形成されており、且つ、一対の鍔部14c,14cの鍔幅寸法L3は一対の逃げ溝部14b,14bの溝幅L2の略4倍程度になっている。
この際、一対の鍔部14c,14cの径φD3は、テープ巻き付け用ローラ部14aの径φD1の径方向両側に糊テープ15の厚みTの2倍〜3倍の値を加算した寸法(φD3≒φD1+4T〜6T)程度に設定されている。
一方、図4(b)に示す如く、載置台18に搭載した被転写物19上に転写ローラ14に巻き付けた糊テープ15を当接させて、この転写ローラ14のテープ巻き付け用ローラ部14a及び一対の鍔部14c,14cに押圧力を印加した転写状態では、転写ローラ14が弾性変位可能なゴム材などの材料を用いて形成されているために、一対の鍔部14c,14cはテープ巻き付け用ローラ部14aに巻き付いた糊テープ15のうちで粘着剤が付着した一方の面側が被転写物19に接する位置まで押圧力により押し潰されて一対の押し潰し部14c’,14c’となる。
このときに、一対の押し潰し部14c’,14c’(一対の鍔部14c,14c)の各内側は、一対の逃げ溝部14b,14b内に押し出されるので、一対の押し潰し部14c’,14c’ (一対の鍔部14c,14c)をテープ巻き付け用ローラ部に巻き付いた糊テープ15の一方の面側が被転写物19に接する位置まで押し潰すことができる。
一方、一対の押し潰し部14c’,14c’の各外側はこの各外側に向かって押し出される。
そして、転写ローラ14のゴム材は被転写物19に対して大きな摩擦力を有しているので、転写ローラ14に対して糊テープ15上に糊が付着しているときと同じ程度の押圧力(0.5Kgf)を印加することで、一対の押し潰し部14c’,14c’ (一対の鍔部14c,14c)は滑ることなく被転写物19に接する。
これに伴って、転写ローラ14のテープ巻き付け用ローラ部14aが糊テープ15上で転写済みにより糊が取り除かれているテープ面から回転を開始しても、押圧力により押し潰された一対の押し潰し部14c’,14c’ (一対の鍔部14c,14c)の摩擦力により糊テープ15を下流側に向かって搬送できるために、この後、糊テープ15上で糊が付着している糊転写面が現れてこの糊転写面の頭出しができるので、被転写物19上に糊テープ15の糊を確実に手動で転写できる。
尚、この実施例において、転写ローラ14は、テープ巻き付け用ローラ部14aと、一対の逃げ溝部14b,14bと、一対の鍔部14c,14cとを有しているが、これに限ることなく、ここでの図示を省略するが、転写ローラ14のテープ巻き付け用ローラ部14aの長手方向の両側に一対の逃げ溝部14b,14bを形成せずに、このテープ巻き付け用ローラ部14aの長手方向の両側に一対の鍔部14c,14cをテープ巻き付け用ローラ部14aよりも少し大径に形成しても良いものである。
そして、転写ローラ14に対して一対の溝部を形成しない場合には、一対の鍔部14c,14cの径φD3を一対の逃げ溝部を形成しない分だけ少し減らすことで、押圧力を加えたときに一対の鍔部14c,14cはテープ巻き付け用ローラ部に巻き付いた糊テープ15の一方の面側が被転写物19に接する位置まで押し潰されて一対の押し潰し部14c’,14c’となるが、押し潰された一対の押し潰し部14c’,14c’ (一対の鍔部14c,14c)は各外側に逃げ込むので支障は生じない。
これにより、転写ローラ14のテープ巻き付け用ローラ部14aに巻き付いた糊テープ15上に糊が付着しているか否かを視認できなくても、糊の有無にかかわらずに転写ローラ14に大きな押圧力を印加することなく、糊テープ15の転写作業を軽い押圧力で確実に行うことができる。
次に、本発明の実施例に係る転写具10を適宜な装置の一例となるメモプリンタに適用した場合について、図5を用いて説明する。
図5は本発明の実施例に係る転写具を適用したメモプリンタを示しており、(a)ロール状の用紙に糊(粘着剤)を自動的に転写する場合を示し、(b)は転写ローラが糊テープに接する角度を示している。
図5(a)に示す如く、本発明の実施例に係る転写具10を適用したメモプリンタ20は、ロール状に巻回した用紙P上にメモなどの情報を印刷手段30により印刷した後に、本発明の実施例に係る転写具10を用いて印刷済みの用紙(被転写物)P上にこの転写具10のカセットケース11内に収納された糊テープ(粘着剤テープ)15の糊(粘着剤)を転写ローラ14により自動的に転写し、剥離可能な糊を転写した用紙Pを切断手段40により所望の長さに切断して、付箋紙などの印刷物を作成できるように構成されている。
上記したメモプリンタ20では、先に図1及び図2を用いて説明した本発明の実施例に係る転写具10が、このプリンタ20の基台となる筐体21の外面21a上に露出した状態で着脱自在に装着されている。
この際、転写具10は、略透明なカセットケース11の幅寸法が用紙Pの幅寸法に対して例えば1/5程度に幅狭く形成され、且つ、カセットケース11の長さが長く形成されており、用紙Pの幅方向の一方の端部側(例えば右端部側)に設置されている。
そして、カセットケース11内に回転自在に設けた供給リール16と巻取リール17とに糊テープ15が巻回されていると共に、一対のリール16,17間に用紙Pに対して摩擦係数が大きく且つ弾性変位自在なゴム材などの材料を用いて形成した転写ローラ14が糊テープ15を巻き付けながらこのカセットケース11の長手方向の先端に回転自在に設けられている。この際、転写ローラ14は、カセットケース11の先端から外部に僅かに露出して印刷手段30よりも用紙搬送方向下流側で印刷済みの用紙Pと対向してこの用紙Pに接触可能に設置されている。
また、メモプリンタ20の筐体21内には、ロール状に巻回した未印刷の用紙Pが回転自在に装填されており、この用紙Pは転写具10に用いられる被転写物となるものである。
また、ロール状の用紙Pの搬送方向下流には、用紙Pにメモなどの情報を印刷する印刷手段30と、印刷済みの用紙Pを所望の長さに切断する切断手段40とがこの順に設置されている。
上記した印刷手段30は、ロール状の用紙Pとして感熱紙を適用した場合に、用紙Pの搬送方向と直交する用紙幅方向に沿って長尺に形成されたサーマルヘッド31と、第1モータ32に連結された不図示の第1減速ギア列を介して時計方向に回転すると共に用紙Pの幅方向に沿って長尺に形成された印刷用プラテンローラ(以下、第1プラテンローラと記す)33とからなる。
そして、未印刷の感熱紙Pをサーマルヘッド31と第1プラテンローラ33との間で挟持しながらメモなどの情報を感熱印刷して用紙搬送方向下流側に向かって搬送している。
この際、サーマルヘッド31は第1プラテンローラ33に対して不図示の接離手段を介して接離自在になっており、このサーマルヘッド31を第1プラテンローラ33から離間させたときに使用済みの用紙Pの交換が可能になっている。
また、上記した切断手段40は、印刷手段30と転写具10との間に設置されており、第2モータ41に連結された不図示の第2減速ギア列を介して移動する可動カッター42と、この可動カッター42と対向して固定設置された固定カッター43とからなる。
そして、一対のカッター42,43により後述する糊転写済みの用紙Pを所望の長さに切断している。
また、切断手段40よりも用紙搬送方向下流側には、印刷済みの用紙Pに糊を転写するための転写ローラ14を有する転写具10と、後述する粘着剤転写用プラテンローラ(以下、第2プラテンローラと記す)64の転写ローラ14への接離動作に追従して移動し且つ用紙Pを介して第2プラテンローラ64を押圧しながらこの第2プラテンローラ64と協働して用紙Pを筐体20の外に排出するように搬送する用紙搬送手段となる用紙搬送ローラ50とが設置されている。
上記した用紙搬送ローラ50は、用紙Pの幅方向に沿って転写ローラ14よりも図示手前側に設置されており、且つ、この用紙搬送ローラ50は不図示のスライド部材及びバネを介して第2プラテンローラ64上の用紙Pの幅方向における転写ローラ14が接離する部位を除いた部位を常時圧接しているので、回転駆動される第2プラテンローラ64と用紙搬送ローラ50との間で用紙Pを挟持しながらこの用紙Pを下流側に向かって搬送可能になっている。
また、筐体20内には、第2プラテンローラ(粘着剤転写用プラテンローラ)64を転写ローラ14に接離させる手段として、粘着剤転写用プラテンローラ揺動押圧手段60と偏心部材駆動部70とが設置されている。
上記した粘着剤転写用プラテンローラ揺動押圧手段60では、長尺な揺動アーム61の一端側を軸支した支点軸62を揺動支点とし、且つ、一端側と反対の他端側に第3モータ63に連結された不図示の第3減速ギア列を介して第2プラテンローラ(粘着剤転写用プラテンローラ)64が回転自在に取り付けられている。
この際、上記した第2プラテンローラ64は、用紙Pの幅方向に沿って長尺に形成されており、且つ、用紙Pを挟んで転写ローラ14と用紙搬送ローラ50とに対向している。
また、揺動アーム61は、偏心部材駆動部70により揺動可能になっている。この偏心部材駆動部70では、第4モータ71に連結された不図示の第4減速ギア列を介して回転軸72と一体に回転する偏心カム73が揺動アーム61に当接している。そして、揺動アーム61は、大径部73aと小径部73bとを有する偏心カム73の回転と用紙搬送ローラ50の押圧とにより支点軸62を中心にして時計方向又は反時計方向に揺動自在に支持されている。
上記のように構成したメモプリンタ20の動作において、ロール状の用紙Pに糊(粘着剤)を自動的に転写する場合に、まず、ロール状の用紙Pを印刷手段30内のサーマルヘッド31と、時計方向に回転している第1プラテンローラ33とで挟持搬送しながらサーマルヘッド31によりメモなどの情報を用紙Pの表面に印刷する。
そして、印刷済みの用紙Pが転写具10の転写ローラ14に到達した後に、粘着剤転写用プラテンローラ揺動押圧手段60内で偏心部材駆動部70の偏心カム73を回転させて、この偏心カム73の大径部73aが揺動アーム61に当接したら回転を止めると、揺動アーム61が一端側の支点軸62を中心にして時計方向に揺動する。
これに伴って、揺動アーム61の他端側に取り付けた第2プラテンローラ64が反時計方向に回転しながら用紙P及び糊テープ15を挟んで転写ローラ14を押圧するので、用紙Pの裏面に糊テープ15の糊が自動的に転写され、且つ、用紙Pは切断手段40により所望の長さに切断されて、付箋紙などの印刷物が作成される。
この際、用紙搬送ローラ50は不図示のバネの付勢力により第2プラテンローラ64を常時圧接しているので、糊転写済みの用紙(付箋紙)Pは両ローラ50,64により筐体20の外に確実に排出されると共に、糊転写済みの用紙Pを所望の長さに切断した後もこの用紙Pを下流側に向かって搬送できる。
尚、偏心カム73の小径部73bが揺動アーム61に当接したときには、転写ローラ14は第2プラテンローラ64側から離間するので用紙Pへの糊の転写は行われずに、用紙搬送ローラ50と第2プラテンローラ64とで用紙Pのみが下流側に向かって搬送される。
この自動転写時において、図5(b)に拡大して示す如く、転写ローラ14が糊テープ15に対向して接する角度(被転写物対向角度)βは一定で略90°程度である。
更に、自動転写では、先に背景技術の欄で説明したように、転写ローラ14が用紙(被転写物)Pに接する角度β(≒90°)の接線S2を境にして、糊テープ15の転写ローラ14への巻き付け量は、転写前で糊が付着している上流側と、転写済みで糊が付着していない下流側とが略等しくなるが、糊テープ15は略透明であるので両者の境目(接線S2)は視認できない。
しかし、このまま引き続いて糊テープ15上に付着した糊を用紙P上に転写する場合には何等の支障も生じない。
一方、手動転写した後の転写具10をメモプリンタ20内に装着した場合には、先に背技術で説明したように、手動転写時における転写具10内に収納した糊テープ15の転写ローラ14への巻き付け量は、転写前で糊が付着している上流側の方が、転写済みで糊が付着していない下流側よりも大幅に少量となっているので、糊テープ15上で転写済みにより糊が付着していないテープ面から転写ローラ14が回転を開始する場合が起こり得る。
この場合に、先に図3及び図4を用いて説明したように、転写ローラ14は、巻き付け用ローラ部14aと、一対の逃げ溝部14b,14bと、一対の鍔部14c,14cとを有しているので、転写ローラ14のテープ巻き付け用ローラ部14aを糊テープ15上で転写済みにより糊が取り除かれているテープ面から回転を開始させても、押圧力により押し潰された一対の押し潰し部14c’,14c’の摩擦力により糊テープ15を下流側に向かって搬送できるために、この後、糊テープ15上で糊が付着している糊転写面が現れてこの糊転写面の頭出しができるので、用紙P上に糊テープ15の糊を確実に自動的に転写できる。
以上、詳述したように、本発明に係る転写具10によれば、この転写具10に設けた転写ローラ14は、被転写物19に対して摩擦係数が大きく且つ弾性変位自在なゴム材などの材料を用いて、粘着剤テープ15を巻き付けるためのテープ巻き付け用ローラ部14aの長手方向の両側に、少なくとも一対の鍔部14c,14cをテープ巻き付け用ローラ部14aの径より少し大径に形成することで、転写ローラ14のテープ巻き付け用ローラ部14aに巻き付いた粘着剤テープ15上に粘着剤が付着しているか否かを視認できなくても、粘着剤の有無にかかわらずに転写ローラ14に大きな押圧力を印加することなく、粘着剤テープ15の転写作業を軽い押圧力で確実に行うことができる。
10…転写具、
11…カセットケース、11a…底面、11b…係合部、11c…先端開口部、
12…アーム、13…軸、
14…転写ローラ、14a…テープ巻き付け用ローラ部、
14b,14b…一対の逃げ溝部、14c,14c…一対の鍔部、
14c’,14c’…一対の押し潰し部、
15…粘着剤テープ(糊テープ)、
16…供給リール、17…巻取リール、18…載置台、19…被転写物、
20…メモリプリンタ、
21…筐体、21a…外面、
30…印刷手段、31…サーマルヘッド、32…第1モータ、
33…印刷用プラテンローラ(第1プラテンローラ)、
40…切断手段、41…第2モータ、42…可動カッター、43…固定カッター、
50…用紙搬送手段(用紙搬送ローラ)、
60…粘着剤転写用プラテンローラ揺動押圧手段、
61…揺動アーム、62…支点軸、63…第3モータ、
64…粘着剤転写用プラテンローラ(第2プラテンローラ)、
70…偏心部材駆動部、71…第4モータ、72…回転軸、
73…偏心カム、73a…大径部、73b…小径部、
P…用紙(被転写物)。

Claims (2)

  1. 一方の面側に粘着剤を付着させた帯状の粘着剤テープをカセットケース内に設けた供給リールと巻取リールとに巻回させ、且つ、前記供給リールから送り出された前記粘着剤テープの他方の面側を前記カセットケースの先端開口部から露出させた転写ローラに巻き付けて、押圧力を印加して前記転写ローラを回転させながら前記粘着剤テープに付着させた前記粘着剤を被転写物上に転写し、転写済みのテープを前記巻取リールで巻き取るように構成した転写具において、
    前記転写ローラには、
    前記粘着剤テープの他方の面側を巻き付けるテープ巻き付け用ローラ部と、
    前記テープ巻き付け用ローラ部の長手方向の両側に、該テープ巻き付け用ローラ部の径よりも大径である一対の鍔部とが形成されており、
    前記転写ローラに前記押圧力が印加された時に、前記一対の鍔部は前記テープ巻き付け用ローラ部側に変形し摩擦力により前記テープ巻き付け用ローラ部に回転力を与えることを特徴とする転写具。
  2. 前記転写ローラには、
    前記テープ巻き付け用ローラ部と前記一対の鍔部との間において、前記テープ巻き付け用ローラ部の径よりも小径に形成された一対の逃げ溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の転写具。
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