以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施の形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
図1は、第1の実施の形態による密閉容器を示す概略側面視断面図である。図2は、図1の密閉容器において回転部材の操作ピン係合穴に操作ピンが係合された状態を示す概略側面視断面図である。図3は、図1の密閉容器において係止部材が係止穴から脱出された状態を示す概略側面視断面図である。図4は、図1の密閉容器において容器本体から蓋体が取り外された状態を示す概略側面視断面図である。
本実施の形態による密閉容器は、iPS細胞、ES細胞等の多能性幹細胞、骨髄間質細胞(MSC)等の軟骨細胞、樹状細胞等の様々な細胞を自動で培養するための施設において、細胞を培養するための細胞培養容器等を密閉状態で収容するために用いられる密閉容器である。本実施の形態では、以下、主として、iPS細胞を用いた態様により説明するが、これはあくまでも一例である。
図1乃至図4に示すように、本実施の形態による密閉容器50は、開口59を含む容器本体51と、容器本体51の開口59に挿脱可能に設けられた蓋体52と、容器本体51と蓋体52との間の隙間をシールするように設けられた第1シール部材と、を備えている。
このうち容器本体51は、筒形状の側壁と、この側壁の一端を閉塞する底部と、を有する有底筒形に成形された樹脂からなり、開口59が下向きに向けられている。容器本体51の開口59を規定する内周部は、蓋体52の挿脱を容易にするために、下端部側ほど開口面積が大きいテーパ形状を有するように形成されている。同様に、蓋体52の側面は、蓋体52の挿脱を容易にするために、上端部側ほど断面積が小さいテーパ形状を有するように形成されている。本実施の形態では、容器本体51の開口59を規定する内周部と蓋体52とは、それぞれ、平面視円形状の輪郭を有しているが、これに限定されず、平面視だ円形状または多角形状の輪郭を有していてもよい。
第1シール部材は、平面視環形状を有する弾性部材(Оリングシール)からなり、容器本体51の開口59を規定する内周部の縁に密着固定された第1シール要素53を有している。本実施の形態では、第1シール要素53は、略三角形状(好ましくは、鈍角三角形状)の断面を有している。より詳しくは、第1シール要素53は、第1面53a(内周面)と第1面53aに対して所定の鈍角だけ傾斜した第2面53b(底面)とを有しており、第1シール要素53の第1面53aは、容器本体51の開口59を規定する内周面より径方向内側に突き出すように位置しており、第1シール要素53の第2面53bは、容器本体51の蓋体52側の端部(下端部)より蓋体52側(下方)に突き出すように位置している。なお、本明細書において「略三角形状」とは、少なくとも、第1面(内周面)の母線をなす第1辺と、第2面(底面)の母線をなす第2辺と、を有する形状であることを意味する。「略三角形状」は、少なくとも第1辺と第2辺とを有する限りでは、図1乃至図4に示すように全体として矢印形状であってもよい、図示されていないが全体として三角形状、四角形状、扇形状などであってもよい。
図1乃至図3に示すように、蓋体52が容器本体51の開口59に挿入される時、蓋体52の側面は、容器本体51の内面に接触すること無く、第1シール要素53の第1面53a(内周面)に密着され、これにより、蓋体52と容器本体51との間の隙間が第1シール要素53によりシールされるようになっている。
図1乃至図4に示すように、容器本体51の開口59を規定する内周部には、係止穴51aが設けられており、蓋体52の外周部には、係止穴51aと対向可能な第1開口52aが設けられている。また、蓋体52の容器本体51側とは反対側の端部(下端部)には、第1開口52aと連通する第2開口52bが設けられている。
さらに、蓋体52は、第1開口52aから出没する方向に直線移動可能な一対の係止部材54と、第2開口52bに面して位置決めされた回転可能な回転部材55と、回転部材55の回転運動を係止部材54の直線運動に変換する変換機構56と、第2開口52bをシールするように設けられた第2シール部材57と、を有している。
図6に示すように、回転部材55は、平面視円形状を有している。図1乃至図4に示すように、回転部材55は、蓋体52の容器本体51側の端部に回転可能に軸支されており、回転部材55の容器本体51とは反対側の端部には、操作ピン嵌合穴55aが凹設されている。
図6(a)及び図6(b)は、一対の係止部材54と回転部材55の動作を説明するための概略平面図である。
図6(a)及び図6(b)に示すように、一対の係止部材54は、回転部材55の回転軸に対して互いに反対側に配置されている。各係止部材54には、第1開口52aから出没する方向と平行に直線状の2本の第1溝56aが設けられており、各第1溝56aに第1ガイド部材56bが挿入されている。また、各係止部材54の基端部には、円弧状の第2溝56cが設けられおり、回転部材55の回転軸と平行な第2ガイド部材56dが第2溝56cに挿入されている。図1乃至図4に示すように、第1ガイド部材56bは、蓋体52の容器本体51側とは反対側の端部に固定されており、第2ガイド部材56dは、回転部材55に固定されている。
図6(b)に示すように、回転部材55が反時計回りに回転されると、第2ガイド部材56dが第2溝56cを規定する壁面を径方向外向きに押圧しながら第2溝56cに沿って案内される。この時、第1ガイド部材56bは第1溝56aに沿って案内されることで、係止部材54の移動方向は、第1溝56aと平行な方向、すなわち第1開口52aから突出する方向に規制される。これにより、回転部材55の回転運動が係止部材54の直線運動に変換され、一対の係止部材54は互いに離れる向きに直線移動される。
一方、図6(a)に示すように、回転部材55が時計回りに回転されると、第2ガイド部材56dが第2溝56cを規定する壁面を径方向内向きに押圧しながら第2溝56cに沿って案内される。この時、第1ガイド部材56bは第1溝56aに沿って案内されることで、係止部材54の移動方向は、第1溝56aと平行な方向、すなわち第1開口52aから没入する方向に規制される。これにより、回転部材55の回転運動が係止部材54の直線運動に変換され、一対の係止部材54は互いに近づく向きに直線移動される。
このように、本実施の形態では、回転部材55の回転運動を係止部材54の直線運動に変換する変換機構56は、第1溝56aと第1ガイド部材56bと第2溝56cと第2ガイド部材56dとから構成されている。
図1乃至図4に示すように、第2シール部材57は、蓋体52の第2開口52bを規定する内周部と回転部材55との間の隙間に設けられており、回転部材55の容器本体51側とは反対側の端部の少なくとも一部は、外方に露出されている。前記した操作ピン嵌合穴55aは、回転部材55のこの外方に露出された部分に設けられている。
本実施の形態では、第2シール部材57として、磁性流体シールが用いられている。図示された例では、第2シール部材57は、第2開口52bを規定する内周部に固定されたリング状の磁石と、当該磁石と回転部材55との間の隙間に充填された磁性流体と、を有している。回転部材55のうち少なくとも磁石と向かい合う部分は、透磁率の高い材質(例えば、マルテンサイト系ステンレスSUS440C)からなる。磁石と回転部材55との間には磁気回路が形成されており、当該磁気回路により磁性流体は磁石と回転部材55との間の隙間に保持され続けるようになっている。これにより、回転部材55の回転が許容されながら、蓋体52の外方の気体が第2開口52bを通過して密閉容器50の内部に混入することが防止されている。蓋体52の容器本体51側とは反対側の端部には、第2シール部材57を外方から保護するようにリング状のシールカバー57dが設けられている。
図1乃至図4に示すように、係止部材54の上面には、断面三角形状の傾斜部材54aが設けられており、蓋体52の本体には、傾斜部材54aに対応するように凸部52cが設けられている。傾斜部材54aの斜面の法線は、径方向外向き成分を有している。
図2に示すように、係止部材54が第1開口52aから突出する向きに直線移動される際に、凸部52cの先端は傾斜部材54aの斜面を駆け上がるように相対移動する。この時、傾斜部材54aは凸部52cから下向きに押圧され、係止部材54の先端部は下向きに湾曲される。これにより、係止穴51aに挿入される係止部材54の先端部は、容器本体51の係止穴51aを規定する内面を下向きに押圧し、この押圧力により、蓋体52は容器本体51に向かって押しつけられて、しっかりと固定されるようになっている。
一方、図3に示すように、係止部材54が第1開口52aから没入する向きに直線移動される際に、凸部52cの先端が傾斜部材54aの斜面を駆け下りるように相対移動する。この時、傾斜部材54aから凸部52cへの下向きの押圧力が徐々に低減され、係止部材54の先端部の湾曲は解消されるようになっている。
図1乃至図4に示すように、密閉容器50の内部には、複数の細胞培養容器75を収容可能な棚71が設けられている。本実施の形態では、棚71は、蓋体52の容器本体52側の端部(上端部)上に鉛直に立設されており、複数の細胞培養容器75を鉛直方向に重ねて保持できるようになっている。
図5は、密閉容器50の内部に収容される細胞培養容器75の一例を示す概略平面図である。図5に示すように、細胞培養容器75は、閉鎖系の培養容器(培養プレート)であり、流入口75aと、流出口75cと、一端が流入口75aに連通され、他端が流出口75cに連通された通路75bと、を有している。図5において矢印で示されるように、流入口75aから流入される液体培地等の液体は、通路75bを通過した後で、流出口75cから流出されるようになっている。なお、細胞培養容器75は、閉鎖系に限らず、ディッシュやシャーレと言われる開放系の細胞培養容器でもよい。
図1乃至図4に示すように、容器本体51は、蓋体52の容器本体51側の端部(上端部)の縁と対向可能な段部51bを有しており、第1シール部材は、当該段部51bと蓋体52の容器本体51側の端部の縁との間の隙間に設けられた第2シール要素58を有している。
第2シール要素58は、具体的には、例えばOリングシールであり、段部51b上に密着固定されている。蓋体52が容器本体51の開口59に挿入される時、蓋体52の容器本体51側の端部の縁は、容器本体51の段部51bに接触すること無く、段部51b上の第2シール要素58にリング状に密着され、蓋体52の容器本体51側の端部の縁と段部51bとの間の隙間は第2シール要素58によりシールされるようになっている。
次に、本実施の形態の密閉容器50の作用について説明する。
まず、容器本体51の開口59に蓋体52が挿入されて固定されている状態を説明する。この状態では、図1に示すように、係止部材54の先端部は、容器本体51の係止穴51a内に挿入されており、これにより、蓋体52は容器本体51に対して固定され、重力により落下しないようになっている。また、傾斜部材54aが凸部52cから下向きに押圧されることで、係止部材54の先端部は下向きに湾曲して容器本体51の係止穴51aを規定する内面を下向きに押圧しており、この押圧力により、蓋体52は容器本体51に向かって押しつけられて、更にしっかりと固定されている。蓋体52上に立設された棚71には、複数の細胞培養容器75が保持されている。
また、図1に示すように、蓋体52の側面は、容器本体51の内面に接触すること無く、第1シール要素53の内周面に密着され、これにより、蓋体52と容器本体51との間の隙間が第1シール要素53によりシールされている。また、蓋体52の容器本体51側の端部の縁は、容器本体51の段部51bに接触すること無く、段部51b上の第2シール要素58にリング状に密着され、これにより、蓋体52の容器本体51側の端部の縁と段部51bとの間の隙間が第2シール要素58によりシールされている。このように、蓋体52と容器本体51との間の隙間が第1シール部材の第1シール要素53及び第2シール要素58により二重にシールされることで、蓋体52の外方の気体が蓋体52と容器本体51との間の隙間を通って密閉容器50の内部に混入することが確実に防止されている。また、蓋体52の第2開口52bを規定する内周部と回転部材55との間の隙間は、第2シール部材57によりシールされている。これにより、蓋体52の外方の気体が第2開口52bを通って密閉容器50の内部に混入することも防止されている。
次に、容器本体51から蓋体52を取り外す工程を説明する。
まず、図2に示すように、蓋体52の外方に配置された操作ピン15が、第2開口52bから蓋体52の内部に挿入され、操作ピン15の先端部が回転部材55の操作ピン嵌合穴55aに嵌合される。
次に、図3に示すように、操作ピン15がモータ16により回転駆動され、操作ピン15の先端部に嵌合された回転部材55は、操作ピン15から回転動力を受けて回転される。操作ピン15が回転部材55に接触しているため、回転動力は操作ピン15から回転部材55に容易かつ確実に伝達され得る。
回転部材55の回転運動は変換機構56により係止部材54の直線運動に変換され、係止部材54は第1開口52aから没入する向きに直線移動され、係止部材54の先端部は、容器本体51の係止穴51aから脱出される。これにより、蓋体52は容器本体51に対して取外し可能となる。
次に、図4に示すように、蓋体52が操作ピン15と一緒に下降されて容器本体51の開口59から取り外され、複数の細胞培養容器75が密閉容器50の外部に取り出される。
次に、容器本体51に蓋体52を固定する工程を説明する。
まず、図3に示すように、蓋体52が操作ピン15と一緒に上昇されて容器本体51の開口59に挿入され、複数の細胞培養容器75が密閉容器50の内部に収容される。蓋体52と容器本体51との間の隙間は第1シール要素53及び第2シール要素58により二重にシールされる。一方、蓋体52の第2開口52bを規定する内周部と回転部材55との間の隙間は、第2シール部材57によりシールされている。
次に、図2に示すように、操作ピン15がモータ16により回転駆動され、操作ピン15の先端部に嵌合された回転部材55は、操作ピン15から回転動力を受けて回転される。操作ピン15が回転部材55に接触しているため、回転動力は操作ピン15から回転部材55に容易かつ確実に伝達され得る。
回転部材55の回転運動は変換機構56により係止部材54の直線運動に変換され、係止部材54は第1開口52aから突出する向きに直線移動され、係止部材54の先端部は、容器本体51の係止穴51aに挿入される。これにより、蓋体52は容器本体51に対して固定される。この時、傾斜部材54aが凸部52cから下向きに押圧されることで、係止部材54の先端部は下向きに湾曲して容器本体51の係止穴51aを規定する内面を下向きに押圧し、この押圧力により、蓋体52は容器本体51に向かって押しつけられて、更にしっかりと固定され得る。
以上のような本実施の形態によれば、回転部材55が回転されることで、係止部材54が第1開口52aから突出するように移動され、係止部材54の先端部が容器本体51の係止穴51a内に挿入される。これにより、蓋体52を容器本体51に対して回転させること無く固定することができ、蓋体着脱時の動作の自動化が容易である。また、蓋体52には、第2開口52bをシールするように第2シール部材57が設けられているため、蓋体52の外方の気体が第2開口52bと第1開口52aとを順に通過して密閉容器50の内部に混入することが防止され、密閉容器50の内部を無菌的に管理することが可能である。
ここで、iPS細胞を培養する場合、iPS細胞は、振動等の刺激を受けると分化してしまうおそれがある。しかしながら、本実施の形態によれば、蓋体52の着脱時に蓋体52を容器本体51に対して回転させる動作が不要であるため、蓋体52の着脱時に密閉容器50に生じる振動が著しく小さい。よって、iPS細胞のような振動に敏感な細胞を安静に収容することが可能である。
また、本実施の形態では、第2シール部材57は、第2開口52bを規定する内周部と回転部材55との間の隙間に設けられており、回転部材55の容器本体51側とは反対側の端部の少なくとも一部は、外方に露出されているため、第2開口52bを規定する内周部と回転部材55との間の隙間を第2シール部材57によりシールしながら、蓋体52の外部の操作ピン15を回転部材55に当接させることができ、回転動力を操作ピン15から回転部材55に容易かつ確実に伝達することが可能である。
また、本実施の形態では、容器本体51の段部51bと蓋体52の容器本体51側の端部の縁との間の隙間に第2シール要素58が設けられているため、蓋体52と容器本体51との間の隙間が第1シール部材の第1シール要素53及び第2シール要素58により二重にシールされる。これにより、蓋体52の外方の気体が蓋体52と容器本体51との間の隙間を通って密閉容器50の内部に混入することを確実に防止できる。
また、本実施の形態によれば、容器本体51は下向きに開口されているため、横向きに開口された態様に比べて、複数積み重ねられた状態の細胞培養容器75を、より小さい開口面積で収容することができる。また、培養装置内に一度に複数の培養容器を供給できる。よって、密閉容器50内に汚染物を取り込む可能性を低くすることができる。
なお、本実施の形態では、図1乃至図4に示すように、容器本体51は下向きに開口されていたが、これに限定されず、例えば図7に示すように横向きに開口されていてもよいし、上向きに開口されていてもよい。また、図8に示すように容器本体51側に棚71が固定されており、容器本体51内から細胞培養容器75を取り出すような構成としてもよい。複数積み重ねられた状態の細胞培養容器75を収容する際の利便性に鑑みると、下向きまたは上向きに開口されていることが、より好ましい。
また、本実施の形態では、図1乃至図4に示すように、第2シール部材57として、磁性流体シールが用いられていたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、第2シール部材57として、オイルシールが用いられていてもよい。図示された例では、第2シール部材57は、第2開口52bを規定する内周部に固定されたリング状のリップ部材と、当該リップ部材と回転部材55との間の隙間に充填されたオイルと、を有している。
リップ部材は回転部材55に対して押しつけられており、リップ部材と回転部材55との間の隙間にオイルが保持され続けるようになっている。これにより、回転部材55の回転が許容されながら、蓋体52の外方の気体が第2開口52bを通過して密閉容器50の内部に混入することが防止され得る。あるいは、図示されていないが、第2シール部材57として、Oリングシール、または、ベローズシールが用いられてもよい。このような態様によっても、本実施の形態と同様の作用効果が得られる。
また、本実施の形態では、図1乃至図4に示すように、第2シール部材57は、蓋体52の第2開口52bを規定する内周部と回転部材55との隙間に設けられており、回転部材55の容器本体51側とは反対側の端部の少なくとも一部は、外方に露出されていたが、これに限定されず、図10に示すように、第2シール部材57’は、回転部材55’に対して容器本体51側とは反対側に、回転部材55’を覆って設けられていてもよい。この場合、第2シール部材57’としては、例えばマグネットカップリングシールが用いられる。
より詳しくは、図10に示すように、第2シール部材57’は、回転部材55’に対して容器本体51側とは反対側に、回転部材55’を覆って設けられた隔壁57aと、隔壁57aに対して互いに反対側に配置された駆動側磁石57cと従動側磁石57bと、を有している。従動側磁石57bは、回転部材55’の容器本体51側とは反対側の端部の縁に固定されており、駆動側磁石57cは、モータ16に接続された円板部材15’の縁に固定されている。円板部材15’が隔壁57aに近接されて位置決めされる時、駆動側磁石57cは隔壁57aを介して従動側磁石57bと対向するようになっており、駆動側磁石57cと従動側磁石57bとの間には磁気回路が形成される。そして、モータ16により円板部材15’が駆動用磁石57cと一緒に回転されると、駆動用磁石57cからの磁力により従動側磁石57bが回転力を受け、従動側磁石57bは回転部材55と一緒に回転される。このような態様によれば、蓋体52の外方の気体が第2開口52bを通って密閉容器50の内部に混入することを一層確実に防止できる。
また、本実施の形態では、回転部材55と変換機構56を用いて係止部材54に動力を伝達していたが、これにとらわれない。例えば、操作ピン15からの回転運動を直線運動に変換せずに、係止部材を回転させてもよい。また、例えば、操作ピン15を前後方向に差し込むことにより生じる前後運動を上下・左右方向の運動に変換することで、係止部材を動作させてもよい。この場合、第2シール部材は、操作ピン15と接触する部材(可動部材)と蓋体52との間の隙間をシールする。また、複数の操作ピン15を用いて開閉動作を行う場合は、回転部材55を複数個設けてもよい。
次に、図14及び図15を参照して、本発明の第2の実施の形態による密閉容器150について説明する。
図14に示すように、第2の実施の形態による密閉容器150では、図1乃至図4に示す第1の実施の形態における係止穴51aと係止部材54の代わりに、金属体51cと磁石155とヨーク部材154とを備えている。
図14に示すように、金属体51cは、容器本体51の段部51bに設けられている。
一方、磁石155は、蓋部52の内部において、段部51bの金属体51cに対応するように設けられており、ヨーク部材154は、蓋体52の内部において、磁石155と金属体51cとの間に挿脱する方向に直線移動可能に設けられている。変換機構56は、回転部材55の回転運動をヨーク部材154の直線運動に変換するように構成されている。
図15(a)は、ヨーク部材154が磁石155と金属体51cとの間に挿入された状態の磁気回路を説明するための概略図である。図15(b)は、ヨーク部材154が磁石155と金属体51cとの間から脱出された状態の磁気回路を説明するための概略図である。
本実施の形態では、図15(a)及び図15(b)に示すように、各磁石155は、それぞれ、互いに向かい合う面に同極性の磁極(図示された例ではN極)が形成された第1磁石要素551及び第2磁石要素552を有している。第1磁石要素551及び第2磁石要素552の互いに向かい合う面の間には、第1ヨーク要素553が配置されている。また、第1磁石要素551の第1ヨーク要素553とは逆側の面と向かい合うように、第2ヨーク要素554が配置されており、第2磁石要素552の第1ヨーク要素553とは逆側の面と向かい合うように、第3ヨーク要素555が配置されている。
図15(a)に示すように、磁石155と金属体51cとの間の空間からヨーク部材154が脱出される時、第1磁石要素551のN極から出た磁力線は、第1ヨーク要素553の内部と金属体51cの内部と第2ヨーク要素554の内部とを順に通過した後、当該第1磁石要素551のS極に入る。また、第2磁石要素552のN極から出た磁力線は、第1ヨーク要素553の内部と金属体51cの内部と第3ヨーク要素555の内部とを順に通過した後、当該第2磁石要素552のS極に入る。すなわち、金属体51cと磁石155との間に磁気回路が形成される。これにより、金属体51cが磁化され、金属体51cと磁石155との間に生じる磁力により、蓋体52は容器本体51に対して固定される。
一方、図15(b)に示すように、磁石155と金属体51cとの間の空間にヨーク部材154が挿入される時、第1磁石要素551のN極から出た磁力線は、第1ヨーク要素553の内部とヨーク部材154の内部とを順に通過した後、金属体51cの内部を通過せずに第2ヨーク要素554の内部を通過して、当該第1磁石要素551のS極に入る。
また、第2磁石要素552のN極から出た磁力線は、第1ヨーク要素553の内部とヨーク部材154の内部とを順に通過した後、金属体51cの内部を通過せずに第3ヨーク要素555の内部を通過して、当該第2磁石要素552のS極に入る。すなわち、金属体51cと磁石155との間の磁気回路がヨーク部材154により遮断される。これにより、金属体51cと磁石155との間の磁力が消失され、蓋体52は容器本体51に対して取外し可能となる。
図14及び図15において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
このような第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
次に、図16を参照して、本発明の第3の実施の形態による密閉容器250について説明する。
図16に示すように、第3の実施の形態による密閉容器250では、容器本体51の段部51bに永久磁石211が設けられており、蓋体252には、パルス状の磁界が印加されることにより磁力を変化させる永電磁石212が、段部51bの永久磁石211に対応するように設けられている。
永電磁石212は、Electro−permanent magnet、あるいは可変磁力磁石とも呼ばれる。永電磁石212としては、具体的には、例えば、サマリウム・コバルト磁石、または、鉄・コバルト・バナジウム軟磁性合金が用いられる。
本実施の形態では、蓋体252の外部に電磁石213が設けられており、当該電磁石213が永電磁石212の永久磁石211側とは反対側の端部に当接または近接して位置決めされた状態で、当該電磁石213から永電磁石212にパルス状の磁界が印加されることで、永電磁石211の磁力は印加される磁界の向きに応じて変化されるようになっている。
より詳しくは、電磁石213から永電磁石212の磁界と同極性のパルス状の磁界が永電磁石212に印加される場合、永電磁石212の磁力が増加されるようになっている。
一方、電磁石213から永電磁石212の磁界とは逆極性のパルス状の磁界が永電磁石212に印加される場合、永電磁石212の磁力が減少されるようになっている。そして、電磁石213から永電磁石212の磁界と逆極性のパルス状の磁界が永電磁石212に更に印加される場合、永電磁石212の磁力の向きが逆転されるようになっている。
蓋体252が容器本体51に対して固定されている初期状態では、永久磁石211と永電磁石212の互いに向かい合う面に逆極性の磁極が形成されており、永久磁石211と永電磁石212との間に生じる磁力(引力)により、蓋体252は容器本体51に対して引き寄せられている。
この初期状態において、電磁石213が永電磁石212の永久磁石211側とは反対側の端部に当接または近接して位置決めされ、電磁石213から永電磁石212の磁界とは逆極性のパルス状の磁界が永電磁石212に印加され、永電磁石212の磁力の向きが逆転されると、永久磁石211と永電磁石212の互いに向かい合う面に同極性の磁極が形成され、永久磁石211と永電磁石212との間に生じる磁力(反発力)により、蓋体252は容器本体51から取外し可能となる(第1状態)。
次に、この第1状態において、電磁石213から永電磁石212の磁界とはさらに逆極性のパルス状の磁界が永電磁石212に印加され、永電磁石212の磁力の向きがさらに逆転される(すなわち、初期状態の磁力の向きに戻される)と、永久磁石211と永電磁石212の互いに向かい合う面に逆極性の磁極が形成され、永久磁石211と永電磁石212との間に生じる磁力(引力)により、蓋体252は容器本体51に対して再び固定される(第2状態)。
このように、電磁石213から永電磁石212にパルス状の磁界を印加して、永電磁石212の磁力の向きの変化させることで、蓋体52を容器本体51に対して容易に着脱させることができる。
図16において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
このような第3の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる他、蓋体252に第1開口52aおよび第2開口52bを設けることが不要であるため、蓋体252の外方の気体が蓋体52の内部を通過して密閉容器50内に混入することを一層確実に防止できる。
なお、第3の実施の形態において、容器本体51の段部51bには永久磁石211の代わり鉄等の磁性体211が設けられていてもよい。この場合、蓋体252が容器本体51に対して固定されている初期状態では、永電磁石212の磁極から出る磁力線が磁性体211を通過することで磁性体211が磁化され、磁性体211と永電磁石212との間に生じる磁力(引力)により、蓋体252は容器本体51に対して引き寄せられている。
この初期状態において、電磁石213が永電磁石212の永久磁石211側とは反対側の端部に当接または近接して位置決めされ、電磁石213から永電磁石212の磁界とは逆極性のパルス状の磁界が永電磁石212に印加され、永電磁石212の磁力がゼロにされる(消磁される)と、永久磁石211と永電磁石212との間の磁力(引力)が消失され、蓋体252は容器本体51から取外し可能となる(第1状態)。
次に、この第1状態において、電磁石213から永電磁石212にパルス状の磁界が印加され、永電磁石212の磁力が回復されると、永電磁石212の磁極から出る磁力線が磁性体211を通過することで磁性体211が再び磁化され、磁性体211と永電磁石212との間に生じる磁力(引力)により、蓋体252が容器本体51に対して再び固定される(第2状態)。
このように、電磁石213から永電磁石212にパルス状の磁界を印加して、永電磁石212の磁力の大きさの変化させることで、蓋体252を容器本体51に対して容易に着脱させることができる。
次に、以上のような密閉容器50、150、250を用いる搬送システム(本発明の一実施の形態による搬送システム)について説明する。なお、第1の実施の形態の密閉容器50を用いる搬送システムと、第2の実施の形態の密閉容器150を用いる搬送システムと、第3の実施の形態の密閉容器250を用いる搬送システムと、は互いに同様であり、以下では、第1の実施の形態の密閉容器50を用いる搬送システムで代表して説明する。
図11は、本実施の形態の搬送システム1の構成を示す概略平面図である。
図11に示すように、本実施の形態の搬送システム1は、細胞培養容器等を密閉状態で収容する密閉容器50を搬送する搬送部60と、密閉容器50から細胞培養容器を取り出し、内部で培養する複数(図示された例では、4つ)の自動培養装置20と、を備えている。なお、密閉容器50は、培養すべき細胞が搭載された細胞培養容器、空の細胞培養容器、培養が完了した細胞が搭載された細胞培養容器、未使用の細胞培養に用いる資材、使用済みの細胞培養に用いる資材等を搭載可能である。本実施の形態では、前述したようにiPS細胞を用いた態様で説明することから、自動培養装置20は、iPS細胞を自動で培養するiPS細胞自動培養装置である。なお、自動培養装置20は、分化細胞自動培養装置であってもよい。
図12は、搬送部60及びiPS細胞自動培養装置20を拡大して示す概略側面図である。図12に示すように、本実施の形態の搬送部60は、密閉容器50を下方にぶら下げるようにして保持する保持部61を有しており、天井に設けられたレール65に沿って移動するようになっている。また、搬送部60は、保持部61に保持された密閉容器50を鉛直方向に昇降可能となっている。
一方、本実施の形態のiPS細胞自動培養装置20は、レール65の下方に設けられ、搬送部60から密閉容器50を受け取る受取部21と、受取部21に連結された筐体22と、を有している。筐体22内には、搬送アーム68が設けられている。
図12に示すように、受取部21は、開口を含む受取部本体11aと、受取部本体11aの開口に挿脱可能に設けられた扉体12と、受取部本体11aと扉体12との間の隙間をシールするように受取部本体11aに設けられた第3シール部材13と、を有している。
本実施の形態では、図12に示すように、受取部本体11aは上向きに開口されている。より詳しくは、受取部本体11aの開口を規定する内周部は、扉体12の挿脱を容易にするために、下方側ほど開口面積が大きいテーパ形状を有するように形成されている。同様に、扉体12の側面は、扉体12の挿脱を容易にするために、上方側ほど断面積が小さいテーパ形状を有するように形成されている。
図12に示すように、本実施の形態の第3シール部材13は平面視環形状を有する弾性部材(Oリングシール)からなり、扉体12の上端部の縁に密着固定されている。図12に示すように、第3シール部材13は、略三角形状(好ましくは、鈍角三角形状)の断面を有している。より詳しくは、第3シール部材13は、第1面(外周面)と第1面に対して所定の鈍角だけ傾斜した第2面(上面)とを有しており、第3シール部材13の第1面は、扉体12の側面より径方向外側に突き出すように位置しており、第3シール部材13の第2面は、扉体12の上端部より上方に突き出すように位置している。
そして、図12に示すように、扉体12が受取部本体11aの開口に挿入される時、受取部本体11aの開口を規定する内周面は、扉体12の側面に接触することなく、第3シール部材13の第1面(外周面)に密着され、これにより、扉体12と受取部本体11aとの間の隙間が第3シール部材13によりシールされるようになっている。
本実施の形態では、図12に示すように、扉体12の下端部には、昇降装置18が接続されており、扉体12は昇降装置18によって所望の高さ位置に支持されるようになっている。そして、受取部本体11aの開口に挿入された扉体12が昇降装置18によって下方に移動されることで、受取部本体11aの開口が開かれるようになっている。
また、本実施の形態では、密閉容器50と受取部21とが各々の開口が互いに向かい合うような向きで配置される時、第1シール部材の第1シール要素53は受取部本体11aに密着されて容器本体51と受取部本体11aとの間の隙間をシールすると共に、第3シール部材13は蓋体52に密着されて扉体12と蓋体52との間の隙間をシールするようになっている。
図12に示すように、前述した操作ピン15とモータ16とは扉体12に設けられており、扉体12と一緒に昇降装置18によって昇降移動されるようになっている。
次に、図12、及び、図1乃至図4を参照して、iPS細胞自動培養装置20の受取部21が搬送部60から密閉容器50を受け取る工程を詳しく説明する。
まず、図12に示すように、密閉容器50は搬送部60により搬送されて、密閉容器50の開口が受取部21の開口と向かい合うような位置に位置決めされる。ここで、図1に示すように、容器本体51の開口59には蓋体52が挿入されており、容器本体51と蓋体52との間の隙間は第1シール部材の第1シール要素53及び第2シール要素58によりシールされている。また、受取部本体11aの開口には扉体12が挿入されており、受取部本体11aと扉体12との間の隙間は第3シール部材13によりシールされている。
次に、図2に示すように、密閉容器50は搬送部60により鉛直下方に移動される。これにより、第1シール要素53の底面は受取部本体11aの上面に密着されて容器本体51と受取部本体11aとの間の隙間をシールすると共に、第3シール部材13の上面は蓋体52の底面に密着されて扉体12と蓋体52との間の隙間をシールする。この時、第1シール要素53の内周面と底面との間に形成される角部分は第3シール部材13の外周面と上面との間に形成される角部分に対して密着される。
また、図2に示すように、扉体12に設けられた操作ピン15が蓋体52の第2開口52bから挿入され、操作ピン15の先端部が回転部材55の操作ピン嵌合穴55aに嵌合される。
次に、図3に示すように、モータ16により操作ピン15が回転駆動され、回転部材55は操作ピン15から回転動力を受けて回転される。回転部材55の回転運動は変換機構56により係止部材54の直線運動に変換され、係止部材54の先端部は容器本体51の係止穴51aから脱出される。これにより、蓋体52が容器本体51に対して取外し可能な状態となる。
次に、図2に示すように、昇降装置18によって扉体12が蓋体52と一緒に下方に移動される。これにより、図12に示すように、受取部本体11aの開口と容器本体51の開口59とが互いに連通される。この時、容器本体51と受取部本体11aとの間の隙間が第1シール要素53によりシールされているため、容器本体51及び受取部本体11aの外部空間に存在する塵やウイルス等が内部空間に侵入することが防止される。また、扉体12と蓋体52との間の隙間が第3シール部材13によりシールされているため、扉体12の上端部または蓋体52の下端部に付着していた塵やウイルス等が容器本体51及び受取部本体11aの内部空間に侵入することが防止される。
図13は、iPS細胞自動培養装置20の制御態様を示す制御ブロック図である。
図13に示すように、iPS細胞自動培養装置20は、iPS細胞の培養に伴って変化する液体培地成分を分析する培地分析部24と、iPS細胞を検査すると共に状態の悪いiPS細胞の除去を行う細胞検査除去部25と、液体培地やタンパク質分解酵素を含む液体等を保管すると共に供給する液体保管供給部26と、細胞培養容器75を保持し、温度、湿度及びガス濃度のいずれか1つまたは2つ以上を自動で調整するインキュベータ部27と、iPS細胞自動培養装置20内で用いられた使用済み液体培地、使用済み洗浄液、使用済み試薬等を含む廃液を筐体22から下方に排出するための排出部28と、を有している。
次に、このようなiPS細胞自動培養装置20の動作について説明する。
まず、液体保管供給部26は、液体培地を細胞培養容器75の流入口75aから細胞培養容器75内に適宜供給することで、細胞培養容器75内の古い液体培地を新しい液体培地に自動で入れ替える。細胞検査除去部25は、取得されたiPS細胞の情報に基づいて、細胞培養容器75の底面に設けられたECM(Extracellular matrix)から不良iPS細胞を選択的に剥離させる。その後、液体保管供給部26は、液体培地を細胞培養容器75の流入口75aから細胞培養容器75内に供給することで、浮遊した不良iPS細胞を細胞培養容器75から押し出させる。また、液体保管供給部26は、タンパク質分解酵素を細胞培養容器75の流入口75aから細胞培養容器75内に適宜供給することで細胞培養容器75の底面に設けられたECMからiPS細胞を剥離させる。その後、液体保管供給部26は、液体培地を細胞培養容器75の流入口75aから細胞培養容器75内に供給することで、浮遊したiPS細胞を細胞培養容器75から押し出させる。押し出されたiPS細胞は、薄められて懸濁液とされた後で、複数の別の細胞培養容器75内に収容される(播種される)。このようにして、iPS細胞自動培養装置20は、iPS細胞の継代を自動で行う。なお、細胞培養容器75内のiPS細胞を選択的に剥離させる手法としては、iPS細胞に超音波や光を照射する方法、細胞培養容器75の外部から物理的な力を与える手法等を採用することができる。また、このような手法を用いる際には、タンパク質分解酵素を併用してもよい。
iPS細胞自動培養装置20内の温度は、インキュベータ部27によって、例えば温度が約37℃となるように調整される。また、iPS細胞自動培養装置20内のガス濃度は、インキュベータ部27によって、空気にCO2を適宜加えることで調整される。また、必要に応じて、インキュベータ部27によって湿度が約100%となるように調整されてもよい。
図13に示すように、iPS細胞自動培養装置20は、培地分析部24、細胞検査除去部25、液体保管供給部26、インキュベータ部27、排出部28の各々に通信接続され、これらを制御する制御部29を有している。制御部29は、具体的には、例えばパソコン等の外部装置90に設置されている。
図11に戻って、本実施の形態の搬送システム1は、密閉容器50内を殺菌する殺菌装置10を更に備えている。殺菌装置10は、入荷エリア81内に設けられ、作業員から密閉容器70を受け取る受取部11と、受取部11で受け取られた密閉容器50内に過酸化水素ガスや高温ガス等の殺菌ガスを供給して殺菌する殺菌ガス供給部17と、を有している。なお、殺菌装置10の別の例としては、殺菌ガス供給部17の代わりに、受取部11で受け取られた密閉容器50内にγ線や紫外線を照射して殺菌する照射装置を有する態様を挙げることができる。液体培地等がγ線や紫外線で破損してしまうタンパク質等を含有している場合には、過酸化水素ガスや高温ガス等の殺菌ガスで殺菌することが望ましい。
殺菌装置10における受取部11の構成は、それが入荷エリア81内に設けられていて作業員から密閉容器70を受け取る点以外は前述のiPS細胞自動培養装置20における受取部21の構成と略同様であり、詳細な説明は省略する。
なお、本実施の形態において、殺菌装置10の受取部11は、図11に示すように入荷エリア81内に設けられているが、これに限定されず、iPS細胞自動培養装置20の受取部21と同様に、搬送エリア81内においてレール65の下方に設けられていてもよい。この場合、受取部11は、搬送部60から密閉容器50を受け取るようになっている。
本実施の形態の搬送システム1は、自動培養装置20で培養された細胞を所定のタイミングで受け取り、検査する分析装置30と、自動培養装置20で培養されたiPS細胞を冷凍保存する冷凍保存装置40と、を更に備えている。
図11に示すように、分析装置30及び冷凍保存装置40は、それぞれ、レール65の下方に設けられて搬送部60から密閉容器50を受け取る受取部31、41を有している。分析装置30における受取部31及び冷凍保存装置40における受取部41の構成は、それぞれ、前述の自動培養装置20における受取部21の構成と略同様であり、詳細な説明は省略する。
次に、本実施の形態の搬送システム1の作用について説明する。
まず、図11に示すように、入荷エリア81において、iPS細胞を収容した1つまたは2つ以上の細胞培養容器75が、例えば作業員の手動処理により、密閉容器50内に収容される。
次に、細胞培養容器75を収容した密閉容器50が、例えば作業員の手動処理により、殺菌装置10の受取部11へと搬送される。
殺菌装置10の受取部11では、搬送部60による搬送処理が作業員による手動処理に置き換えられた図1乃至図4に示す工程が、この順序で行われることにより、容器本体51及び受取部本体11aの内部空間への塵やウイルス等の侵入が防止されながら、受取部本体11aの開口と容器本体51の開口とが互いに連通される。続いて、殺菌ガス供給部17から受取部11内に殺菌ガスが供給され、受取部本体11a及び容器本体51の内部が殺菌される。
その後、搬送部60による搬送処理が作業員による手動処理に置き換えられた図1乃至図4に示す工程が、逆の順序で行われることにより、容器本体51及び受取部本体11aの内部空間への塵やウイルス等の侵入が防止されながら、容器本体51の開口が蓋体52及び第1シール要素53によって密閉されると共に、受取部本体11aの開口が扉体12及び第3シール部材13によって密閉される。
次に、図11に示すように、密閉状態の密閉容器50が、例えば作業員の手動処理により、搬送エリア83に通じる投入部84に載置される。投入部84は、例えば二重扉になっており、投入部84に密閉容器70が載置されると、入荷エリア81側に位置する一方の扉が開き(このとき搬送エリア83側に位置する扉は閉じられている。)、密閉容器70を他方の扉と一方の扉との間に導き入れ、一方の扉が閉じられる。ここで、必要に応じて、密閉容器50の外側表面が殺菌される。その後で、他方の扉を開き、搬送エリア83内の搬送部60によって密閉容器50が受け取られる。
続いて、図11に示すように、搬送部60により密閉容器50がiPS細胞自動培養装置20の受取部21へと搬送される。
iPS細胞自動培養装置20の受取部21では、前述した図1乃至図4に示す工程がこの順序で行われることにより、容器本体51及び受取部本体11aの内部空間への塵やウイルス等の侵入が防止されながら、受取部本体11aの開口と容器本体51の開口とが互いに連通される。続いて、密閉容器50からiPS細胞培養装置20へと細胞培養容器75が取り出される。
このようにiPS細胞培養装置20へと取り出されたiPS細胞は、当該iPS細胞培養装置20内で培養される。培養される際には、液体培地の入れ替えが適宜自動で行われ、iPS細胞の継代が適宜自動で行われる。また、インキュベータ部27の温度、湿度及びガス濃度のいずれか1つまたは2つ以上が調整されてもよい。ちなみに、本実施の形態のiPS細胞自動培養装置20は、細胞の提供者毎に分けられており、あるiPS細胞自動培養装置20でAさんのiPS細胞が培養されている場合には、当該iPS細胞自動培養装置20でAさん以外の人、動物等のiPS細胞が培養されることはない。
なお、iPS細胞自動培養装置20で培養されているiPS細胞の一部は、適宜、iPS細胞自動培養装置20から密閉容器50へと取り出された後、搬送部60によって、iPS細胞分析装置30の受取部31へと搬送される。そして、iPS細胞分析装置30内において、培養の状態(例えば、DNAの状態)が分析される。なお、iPS細胞分析装置30における検査は、通常はiPS細胞自動培養装置20内での検査とは異なる破壊検査であり、分析に利用されたiPS細胞はiPS細胞自動培養装置20に戻されることなく廃棄されることとなる。
iPS細胞自動培養装置20でiPS細胞が培養されると、iPS細胞を収容した1つまたは2つ以上の細胞培養容器75が、密閉容器50の蓋体52上に支持された複数の棚71に収容される。続いて、図1乃至図4に示す工程が、逆の順序で行われることにより、容器本体51及び受取部本体11aの内部空間への塵やウイルス等の侵入が防止されながら、容器本体51の開口が蓋体52及び第1シール要素53によって密閉されると共に、受取部本体11aの開口が扉体12及び第3シール部材13によって密閉される。密閉状態の密閉容器50は、搬送部60に受け取られて吊り下げられる。
次に、培養したiPS細胞を冷凍保存する場合には、培養したiPS細胞を収容した密閉容器50が、搬送部60によって冷凍保存装置40の受取部41へと搬送される。そして、当該冷凍保存装置40において、密閉容器50内から細胞培養容器75が取り出され、当該冷凍保存装置40内で細胞培養容器75に収容された状態でiPS細胞が保存されることとなる。
冷凍保存装置40で保存されたiPS細胞を出荷する時には、iPS細胞を収容した細胞培養容器75が密閉容器50に収容され、当該密閉容器50が、搬送部60によって出荷エリア82へと搬送される。そして、出荷エリア82に密閉容器50が搬送されると、密閉容器50のまま、または、密閉容器50から取り出された細胞培養容器75の形態で、iPS細胞が出荷される。
ちなみに、iPS細胞の出荷先(例えば病院や工場等)が前述の搬送システム1に隣接して設置されていたり近隣にあったりするような場合等では、iPS細胞を冷凍保存する必要がない。そのため、このような場合には、iPS細胞自動培養装置20から取り出されたiPS細胞を収容した細胞培養容器75が、密閉容器50に収容された後、冷凍保存されることなく、搬送部60によって出荷エリア82へと搬送される。その後、出荷エリア82から隣接するまたは近接する出荷先に、密閉容器50のまま、または、密閉容器50から取り出された細胞培養容器75の形態で、iPS細胞が出荷される。
本実施の形態の搬送システム1では、密閉容器50内およびiPS細胞自動培養装置20内は、比較的清浄度が高く管理されている。このようにすると、細胞培養に影響の高い空間のみ清浄度を高く管理することができるため、管理コストを低く抑えることができる。また、それぞれの空間が比較的小さな空間に区画されていることから、殺菌作業が必要な空間のみを隔離して殺菌作業を行うことも可能となり、メンテナンス性よく搬送システム1を運用することができる。
また、作業員が出入りする入荷エリア81や出荷エリア82は、搬送エリア83に比べて相対的に清浄度が低いものの、本実施の形態の密閉容器50を用いることで、清浄度を保ったまま、細胞を取り扱うことが可能となる。
なお、iPS細胞の培養に続き、同様の装置を用いて任意の細胞に分化させた細胞を培養してもよい。
なお、本明細書中の「無菌」という用語は、微生物が完全に殺菌された状態のみを指すのではなく、細胞の培養に悪影響を及ぼす可能性のある微生物が、適正な数以下にコントロールされた状態を指す。
なお、以上の実施の形態では、密閉容器50、150、250は、細胞を培養するための細胞培養容器等を密閉状態で収容するために用いられたが、これに限定されず、半導体ウェハを密閉状態で収容するために用いられてもよい。