JP6310174B2 - デンプン質食品の伸展性向上用の品質改良剤およびそれを含むデンプン質食品 - Google Patents

デンプン質食品の伸展性向上用の品質改良剤およびそれを含むデンプン質食品 Download PDF

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Description

本発明は、デンプン質食品の伸展性向上用の品質改良剤(以下「デンプン質食品の品質改良剤」ともいう)およびそれを含むデンプン質食品に関する。さらに詳しくは、本発明は、天然由来の水不溶性食物繊維を含むことにより、デンプン質食品の品質、特に食感を低下させることなしに、伸展性を改良し得る、デンプン質食品の品質改良剤およびそれを含むデンプン質食品に関する。
麺、餃子やシューマイ、春巻きの皮などの皮物、パン、中華饅頭、ピザ生地、パイ生地、シュークリーム皮などのデンプン質食品には、それらの食感や諸特性、製造における加工性などを改良するための様々な添加剤が配合されている。そして、その改良目的により様々な添加剤が提案されている。
例えば、特開2005−218409号公報(特許文献1)には、穀物類、水および水溶性セルロースエーテルを含むドウ組成物が記載されている。この技術では、水溶性セルロースエーテルを添加することにより、ドウ組成物の保水性を改善して、成型加工時の作業性を改善すると共に、食感を改良することを目的としている(例えば、明細書、段落0008参照)。
また、特開2007−215415号公報(特許文献2)には、小麦粉100重量部、大豆粉60〜500重量部、大豆粉100重量部当たりそれぞれ活性グルテン3〜15重量部および特定の水溶性食物繊維2〜12重量部を含む混合原料粉を製麺してなる麺が記載されている。この技術では、低炭水化物、高タンパク質で、さらに柔らかくかつ柔軟性に富んだ麺を提供することを目的とし、活性グルテンを添加することにより麺生地の形成力および伸展性を向上させている(例えば、明細書、段落0017参照)。
さらに、特開2010−81888号公報(特許文献3)には、食物繊維を10〜40重量%、タンパク質を15〜50重量%含有する混合原料粉を製麺して得られる麺が記載されている。この技術では、食物繊維およびタンパク質が共に高含有でありながら、製麺性および食感に優れた麺類を提供することを目的としている(例えば、明細書、段落0012および0013参照)。
また、特許第3642147号公報(特許文献4)には、グルコース単位当たりのカルボキシメチルエーテル基置換度0.01〜0.4の水不溶性あるいは水膨張性のカルボキシメチルセルロースを構成成分として含む、澱粉含有穀物粉末、水を必須成分とするドウ組成物が記載されている。この技術では、前記の構成により、製品へのサクイ性(適度な歯ごたえ)、クリスピー感(カリカリと香ばしい食感)、滑らかな舌触りなどの食感の改良、外観の均一性、生地目の改良効果を得ている。さらに、カルボキシメチルセルロースの好ましい平均粒径が1.0〜40μmであることが記載されている(例えば、明細書、段落0006および0011参照)。
特開2005−218409号公報 特開2007−215415号公報 特開2010−81888号公報 特許第3642147号公報
特許文献1および2には、水溶性食物繊維を含むドウ組成物や麺が記載されているが、水不溶性食物繊維による伸展性効果については記載されていない。特許文献2には、活性グルテンの添加による生地の伸展性効果について記載されているが、これは水不溶性食物繊維による効果ではない。
また、特許文献3には、食物繊維とタンパク質との組合せが開示されているが、両者を高含有に含む特別な麺類を得ることを目的としており、本発明の添加量および添加目的とは異なる。
特許文献4には、水不溶性あるいは水膨潤性のカルボキシメチルセルロースをドウ組成物に添加することが記載されているが、用いられるカルボキシメチルセルロースは、天然または合成のセルロース原料、またはこれを酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理などにより解重合した微細セルロースまたは機械的に処理した微細セルロースを、公知のカルボキシメチルエーテル法により特定量のカルボキシメチル基をエーテル結合させた、すなわち改質処理したセルロースであり、本発明の天然由来の水不溶性食物繊維とは異なる。
また、特許文献4には、カルボキシメチルセルロースの平均粒径が40μmより大きいとドウの伸展性が悪くなり、十分に膨らまず、製品の食感にボソつき、ザラつきを与えるので好ましくないことが記載されている(例えば、明細書、段落0014参照)。
他方、餃子やシューマイ、春巻きの皮などの皮物の成型(型抜き)加工時に副生されるロス生地は、通常、生地原料として再利用されている。しかし、再利用の生地原料は、一旦皮状に成型加工されているために伸展性や含水率が低下し、成型不良や製品の食感低下を起こすという課題があった。そこで、再利用の生地原料に加水してその含水率の低下を補っても、伸展率は復元されず、生地が柔らかくなり過ぎ、成型不良や製品の食感低下を起こすことになる。
本発明は、デンプン質食品の品質、特に食感を低下させることなしに、伸展性を改良し得る、デンプン質食品の品質改良剤およびそれを含むデンプン質食品を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、デンプン質食品の主原料である穀物粉に含まれているデンプン、タンパク質の存在下に、天然由来の水不溶性食物繊維を添加することにより、従来知られていなかったデンプン質食品の伸展性の向上効果を見出し、本発明を完成するに到った。また、水不溶性食物繊維を食用のタンパク質と併用することにより、上記のデンプン質食品の伸展性の向上効果がさらに改善されることも見出し、本発明を完成するに到った。
食物繊維は、ヒトの消化酵素により加水分解されない難消化性の多糖やリグニンのことであり、水に対する溶解性により水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維(不溶性食物繊維)に大別される。
本発明において用いられる天然由来の水不溶性食物繊維は、後者であり、水や有機溶剤に対して溶解することなく、繊維状に糖類が結合した構造を有し、水分を含むとその体積が数倍から数十倍に膨張する物質である。
ここで「天然由来」とは、本発明ではカルボキシメチルセルロースのように人為的に官能基を付加した、すなわち改質処理した水不溶性食物繊維は含まず、植物の穀類、野菜、果実、海藻、きのこ類、いも類、動物などに含まれる繊維を意味する。
水不溶性食物繊維の具体例については、後述する。
本発明において、デンプン質食品の品質改良剤は、食用のタンパク質をさらに含むのが好ましい。
食用のタンパク質には、植物性タンパク質と動物性タンパク質があるが、食品衛生法に規定された食品素材もしくは食品添加物であれば特に限定されない。
食用のタンパク質の具体例については、後述する。
かくして、本発明によれば、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンから選択される少なくとも1種を構成成分としかつ30〜2200μmの平均繊維長および10〜50μmの繊維径を有する、天然由来の水不溶性食物繊維を含有し、かつエンドウタンパク、大豆タンパクおよびグルテンから選択される少なくとも1種の植物性タンパク質である食用のタンパク質をさらに含むことを特徴とするデンプン質食品の伸展性向上用の品質改良剤を提供することができる。
また、本発明によれば、穀物粉および上記の天然由来の水不溶性食物繊維を含有するデンプン質食品の伸展性向上用の品質改良剤を含有し、前記水不溶性食物繊維が前記穀物粉と前記水不溶性食物繊維との合計重量に対して0.01〜5重量%の割合で含有することを特徴とするデンプン質食品を提供することができる。
本発明によれば、デンプン質食品の品質、特に食感を低下させることなしに、伸展性を改良し得る、デンプン質食品の品質改良剤およびそれを含むデンプン質食品を提供することができる。
具体的には、デンプン質食品の伸展性が改良されるために、麺では、製麺などの作業性が向上し、切れ難い麺を得ることができ、餃子やシューマイ、春巻きの皮などの皮物では、成型(型抜き)加工時に副生されるロス生地の再利用が複数回にわたり可能になり、パン、中華饅頭、ピザ生地、パイ生地、シュークリーム皮などでは、生地の取り扱い性が向上し、また蒸しや焼成などの加熱調理時に生地が伸展し易くなることから、従来品よりもボリュームアップ効果が得られる。
また、本発明のデンプン質食品の品質改良剤は、水不溶性食物繊維が30〜2200μmの平均繊維長を有することにより、上記の優れた効果をさらに発揮する。
さらに、本発明のデンプン質食品の品質改良剤は、デンプン質食品の品質改良剤が食用のタンパク質をさらに含むことにより、食用のタンパク質がエンドウタンパク、大豆タンパクおよびグルテンから選択される少なくとも1種の植物性タンパク質であることにより、食用のタンパク質が水不溶性食物繊維に対して0.01〜100倍の重量割合で含まれることにより、上記の優れた効果をさらに発揮する。
また、本発明のデンプン質食品は、穀物粉が小麦粉、米粉およびそば粉から選択される少なくとも1種であることにより、デンプン質食品が麺、皮物、パン、中華饅頭、ピザ生地、パイ生地およびシュークリーム皮から選択される場合に、上記の優れた効果をさらに発揮する。
(デンプン質食品の品質改良剤)
本発明のデンプン質食品の品質改良剤は、天然由来の水不溶性食物繊維を含有することを特徴とする。
本発明において品質改良の対象となるデンプン質食品は、その形態として、例えば、麺、餃子やシューマイ、春巻きの皮などの皮物、パン、中華饅頭、ピザ生地、パイ生地およびシュークリーム皮などが挙げられる。
麺としては、中華麺、うどん、きしめん、素麺、冷や麦、そば、スパゲッティのように細長く成形した麺類、マカロニのように任意の形状に成形したものなどが挙げられる。そして、その形態は、生麺、茹で麺、蒸し麺、ロングライフ麺(LL麺)、即席麺、冷凍麺、乾麺などのいずれであってもよい。
また、本発明において品質改良の対象となるデンプン質食品は、デンプン質を含むものであれば特に限定されず、例えば、小麦、米粉およびそば粉などの穀物粉(穀粉)を主材料とする食品が挙げられる。
本発明のデンプン質食品の品質改良剤は、それに含まれる水不溶性食物繊維が、デンプン質食品の主材料である穀物粉に含まれているデンプン、タンパク質と作用することにより、伸展性などの本発明の効果を発現するものと考えられる。
すなわち、水不溶性食物繊維が穀物粉との混捏中にタンパク質に取り込まれて分散し、水不溶性食物繊維の有する多数のヒドロキシル基がタンパク質の板状間の架橋結合を水素結合により強めた結果、タンパク質のネットワーク構造が強固となり圧延時の伸展ストレスに対してタンパク質のネットワーク構造全体が壊されず、可塑的変形に耐えるものと考えられる。
単に穀物粉にタンパク質を添加しただけでは、タンパク質のネットワーク構造の濃度が高くなるだけで、破断応力は強くなるが伸展性には寄与しないものと考えられる。
一方、穀物粉に多量の水不溶性食物繊維を添加した場合には、逆に物理的にタンパク質のネットワーク構造の形成阻害に働くものと考えられる。
また。デンプン粒自体はタンパク質のネットワーク構造に絡み合い、直接的には可塑変形に関与していないが、デンプン表面に存在する膜タンパク質と水素結合を形成することにより間接的にネットワーク構造の強化に寄与しているものと考えられる。
上記の水不溶性食物繊維とデンプン、タンパク質との相互作用を得るためには、後述するように、デンプン質食品の品質改良剤に食用のタンパク質を外添してもよい。
(水不溶性食物繊維)
水不溶性食物繊維は、食品衛生法に規定された食品素材もしくは食品添加物であれば特に限定されず、前記のように、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンから選択される少なくとも1種を構成成分とするのが好ましい。
水不溶性食物繊維としては、例えば、イネ科植物、マメ科植物、ナス科植物、セリ科植物、柑橘類、その他果実および樹木から選択される少なくとも1種の植物由来の繊維が挙げられる。具体的には、水不溶性食物繊維は、小麦、大麦、オート麦、ライ麦、米、竹、サトウキビ、コーン、大豆、ポテト、トマト、人参、シトラス、オレンジ、レモン、グレープ、アップル、パイナップルおよび木から選択される少なくとも1種の植物由来の繊維が挙げられ、これらが特に好ましい。
より具体的には、実施例において用いている市販の水不溶性食物繊維が挙げられる。
水不溶性食物繊維は、30〜2200μmの平均繊維長を有するのが好ましい。
水不溶性食物繊維の平均繊維長が30μm未満では、伸展性効果が得られないことがある。一方、水不溶性食物繊維の平均繊維長が2200μmを超えると、デンプン質食品の食感が悪くなることがある。
水不溶性食物繊維の平均繊維長は、好ましくは30〜300μmであり、より好ましくは30〜250μmである。
また、水不溶性食物繊維の繊維径は、植物の由来にも因るが、10〜50μm程度である。
(食用のタンパク質)
本発明のデンプン質食品の品質改良剤は、食用のタンパク質をさらに含むのが好ましい。水不溶性食物繊維と食用のタンパク質と併用することにより、デンプン質食品の伸展性の向上効果がさらに改善される。
食用のタンパク質には、植物性タンパク質と動物性タンパク質があるが、食品衛生法に規定された食品素材もしくは食品添加物であれば特に限定されない。
植物性タンパク質としては、大豆、エンドウ、小豆、インゲンマメ、ラッカセイ、ソラマメ、リョクトウ、ササゲ、ヒヨコマメ、キマメなどの豆類;米、とうもろこし、大麦、小麦、ライ麦、エンバク、ハトムギ、キビ、ヒエ、アワ、マコモなどの穀類;カリン、ナシ、リンゴ、アンズ、サクランボ、フメ、モモ、アーモンド、クリ、クルミ、イチジク、カキ、カシス、キチゴ、キウイフルーツ、クランベリー、ブルベリー、ナツメ、ハスカップ、オリーブ、ビワ、イチゴ、メロン、パイナップル、パパイヤ、マンゴー、ミカン、レモンなどの果実類;大根、人参、牛蒡などの根菜類;キャベツ、ホウレンソウ、ハクサイなどの葉菜類;ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリーなど花菜類;タマネギ、アスパラガスなどの茎菜類;トマト、ナス、カボチャ、ピーマンなどの果菜類;コンブ、モズク、ヒジキ、ワカメ、アサクサノリ、テングサ、アオサ、アオノリ、カサノリ、サボテングサ、ミルなどの海藻;およびシイタケ、エノキタケ、シメジ類、マイタケ、ナメコ、ツクリタケ、エリンギ、マツタケ、トリュフ、キヌガサタケ、コウジタケ、カワリハラタケなどのきのこ類などの植物由来のタンパク質が挙げられる。
動物性タンパク質としては、にわとり、うずら、ウコッケイなどの卵;牛、豚、鶏、ヤギ、羊などの肉類;マグロ、サパ、サンマ、イカ、タコ、エビ、ハマグリ、アサリ、シジミ、カキなどの魚介類;および牛乳や乳製品などの動物由来のタンパク質が挙げられる。
これらのタンパク質は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、実施例において用いている市販の食用のタンパク質が挙げられる。
これらのタンパク質の中でも、本発明の効果の観点から、植物性タンパク質が好ましく、エンドウタンパク、大豆タンパクおよびグルテンから選択される少なくとも1種の植物性タンパク質であるのが特に好ましい。
食用のタンパク質の含有割合は、水不溶性食物繊維に対して0.01〜100倍の重量割合であるのが好ましい。
食用のタンパク質の含有割合が0.01倍未満では、十分な伸展性効果が得られないことがある。一方、食用のタンパク質の含有割合が100倍を超えると、デンプン質食品の生地が固くなり過ぎたり、べとつくなど生地物性が悪くなり作業性が落ちることがある。
食用のタンパク質の含有割合は、水不溶性食物繊維に対して好ましくは0.5〜50倍の重量割合であり、より好ましくは2〜25倍の重量割合である。
(デンプン質食品)
本発明のデンプン質食品は、穀物粉および本発明の天然由来の水不溶性食物繊維を含有するデンプン質食品の品質改良剤を含有し、水不溶性食物繊維が穀物粉と水不溶性食物繊維との合計重量に対して0.01〜5重量%の割合で含有することを特徴とする。
穀物粉は、デンプン質を含有する穀物粉(穀粉)であれば特に限定されず、小麦粉、米粉およびそば粉から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
より具体的には、実施例において用いている市販の穀物粉が挙げられる。
デンプン質食品の品質改良剤は、水不溶性食物繊維が穀物粉と水不溶性食物繊維との合計重量に対して0.01〜5重量%の割合で含有する。
水不溶性食物繊維の含有割合が0.01重量%未満では、十分な伸展性効果が得られないことがある。一方、水不溶性食物繊維の含有割合が5重量%を超えると、食感にぼそつきが生じ悪影響を与えることがある。
水不溶性食物繊維の含有割合は、水不溶性食物繊維が穀物粉と水不溶性食物繊維との合計重量に対して、好ましくは0.01〜4重量%であり、より好ましくは0.01〜2重量%である。
本発明のデンプン質食品は、穀物粉および本発明のデンプン質食品の品質改良剤以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その食品に応じて必要な調味料や添加剤を含んでいてもよい。
例えば、餃子やシューマイ、春巻きの皮などの皮物では、塩など、パン、中華饅頭、ピザ生地、パイ生地およびシュークリーム皮では、砂糖、塩、イースト、ベーキングパウダー、ショートニングなどが挙げられる。
デンプン質食品としては、上記のように麺、皮物、パン、中華饅頭、ピザ生地、パイ生地およびシュークリーム皮などが挙げられ、本発明のデンプン質食品の品質改良剤を原料に添加(配合)すること以外は、公知の装置などを用いて公知の方法により製造することができる。
本発明を試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの試験例により限定されるものではない。
試験例1〜では、それぞれ餃子皮、麺類(中華麺、そば、うどん)、中華饅頭および食パンについて試験した。
なお、試験例1の実施例1〜9、試験例2の実施例1〜8および試験例3の実施例1は参考例である。
試験例においては、次の水不溶性食物繊維および食用のタンパク質を使用した。
水不溶性食物繊維(すべてレッテンマイヤー社製)
繊維1(小麦由来、平均繊維長:30μm)
繊維2(小麦由来、平均繊維長:250μm)
繊維3(木由来、平均繊維長:900μm)
繊維4(木由来、平均繊維長:2200μm)
繊維5(サトウキビ由来、平均繊維長:80μm)
繊維6(オート麦由来、平均繊維長:250μm)
食用のタンパク質(すべて植物性)
グルテン(長田産業株式会社製、製品名:フメリットA2)
エンドウタンパク(オルガノフードテック株式会社製、製品名:PP−CS)
大豆タンパク(不二製油株式会社製、粉末状、製品名:サンラバー10)
試験例1(餃子皮における水不溶性食物繊維の伸展性効果の検証)
次の基本処方に水不溶性食物繊維を配合して餃子皮生地を作製し、伸展性寄与効果を検証した。
準強力粉(日清製粉株式会社製、製品名:特NO.1) 100重量部
塩(財団法人塩事業センター製、製品名:食塩) 1重量部
水(大阪市水道水) 37重量部
表1および2に示す配合処方により配合材料(合計重量1000g)を混合し、縦型プラネタリーミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK−25−10)を用いて低速で1分間混練し、その後高速で7分間混練して、そぼろ状の皮生地を得た。得られた皮生地をロール式製麺機(株式会社大和製作所製、型式:リッチメンLM5062−i)を用いて公知の方法により粗麺帯に加工し、次いで複合・圧延して皮厚0.4mmの圧延生地を得た。得られた圧延生地を円型(直径6mm)で切り出して餃子皮(各配合処方につき20枚)を得た。
水不溶性食物繊維が有する高い保水性による皮生地の水分不足を補うために、水不溶性食物繊維を添加した実施例1〜10では、水不溶性食物繊維の添加重量に対して2倍量の水を追加した。
また、食品の品質改良剤の増量成分として一般に用いられる澱粉(長田産業株式会社製、製品名:小麦澱粉浮粉)および食用のタンパク質として前記グルテンを配合した餃子皮についても検証した。
さらに、水不溶性食物繊維と食用のタンパク質として前記とエンドウタンパクまたは大豆タンパクとを併用した餃子皮についても検証した。
得られた餃子皮をそれぞれ次の条件で保存した。
実施例1〜2および比較例1〜2:温度10℃で7時間の後、温度18℃で1時間
実施例3〜8および比較例3:温度18℃で4時間
実施例9〜10および比較例4〜6:温度10℃で7時間の後、温度18℃で1時間
実施例11〜13および比較例7〜10:温度22℃で3時間
保存後、直ちにテクスチャー解析装置(クリープメータ、株式会社山電製、型式:レオナーRE2−3305)を用いて、貫通試験用アダプターに餃子皮を装着し、球形型プランジャー(球直径:7mm)で、ロードセル20N、速度1mm/秒、800%の条件で餃子皮が破れるまで荷重を掛けて膜貫通試験を行い、破断距離により伸展性を評価した。
また、実施例3〜8および11〜13ならびに比較例3および7〜10の餃子皮については、ノギスを用いて皮厚(mm)を測定し、重量基準方法により含水率(%)を測定した。
得られた結果を表1および2に示す。
実施例1〜2および比較例1〜2の結果から、水不溶性食物繊維による皮生地への伸展性寄与効果を検証する。
水不溶性食物繊維は、試験に使用した穀物粉の準強力粉よりも約450〜800倍程度の高い保水性を有するため、皮生地作成に必要となる加水量が高くなる。そこで、水分の生地への影響も相殺するために、比較例2では実施例1〜2と同等量の加水を行った。
表1の結果から、実施例1〜2の餃子皮は、比較例1〜2の餃子皮と比較して破断距離が長く、高い伸展性効果が認められ、この効果が加水量のみの影響でないことがわかる。
実施例3〜8および比較例3の結果から、水不溶性食物繊維の繊維長の皮生地への伸展性寄与効果を検証する。
表1の結果から、水不溶性食物繊維の平均繊維長が大きくなる程、同一圧力下で圧延加工した餃子皮の皮厚がより薄くなり、破断距離を高める傾向にあることがわかる。
実施例5および6の餃子皮の破断距離は他の実施例より短く、これは添加した水不溶性食物繊維の平均繊維長が長いために、皮生地作成において十分な加水ができず、柔軟性が低下したためと考えられる。
また、他の種類の水不溶性食物繊維を添加した実施例7および8の餃子皮でも、比較例3の餃子皮と比較して破断距離が長く、高い伸展性効果が認められ、餃子皮の皮厚は薄くなった。このことから、水不溶性食物繊維は、その種類に関わらず餃子皮の伸展性を向上できることがわかる。
実施例9〜10および比較例4〜6の結果から、水不溶性食物繊維と食用のタンパク質、澱粉の併用における皮生地への伸展性寄与効果を検証する。
表1の結果から、水不溶性食物繊維を添加した実施例9の餃子皮は、伸展性を付与すると報告のあるグルテンを添加した比較例4の餃子皮と同等もしくはそれ以上の伸展性向上効果を示すことがわかる。また、グルテンと澱粉とを併用した比較例5の餃子皮は、伸展性が低下したが、水不溶性食物繊維、グルテンおよび澱粉を併用した実施例10の餃子皮は、伸展性がより向上した。
実施例11〜13および比較例7〜10の結果から、水不溶性食物繊維と食用のタンパク質の相乗効果を検証する。
表2の結果から、水不溶性食物繊維と各種食用のタンパク質とを併用した実施例11〜13の餃子皮は、各種食用のタンパク質のみを添加した比較例7〜10の餃子皮と比較して破断距離が長く、高い伸展性効果が認められる。この効果は、食用のタンパク質の併用による相乗効果と考えられる。
試験例2(麺類における水不溶性食物繊維の伸展性効果および湯のびの検証)
水不溶性食物繊維を配合した麺類として中華麺、そばおよびうどんをそれぞれ作製し、伸展性寄与効果および湯のびを検証した。
(実施例1)
小麦粉としての準強力粉(日清製粉株式会社製、製品名:特NO.1)999.9gおよび水不溶性食物繊維としての繊維2の0.1gを混合した。
得られた混合物に、予め食塩(財団法人塩事業センター製、製品名:食塩)10gおよびかん粉(炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製、製品名:食品添加物炭酸ナトリウム)と炭酸カリウム(キシダ化学株式会社製、製品名:食品添加物炭酸カリウム)との等重量混合物)10gを水360gに溶解させておいた溶液を加え、縦型プラネタリーミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK−25−10)を用いて低速で1分間、高速10分間混練して麺生地を得た。
得られた麺生地をロール式製麺機(株式会社大和製作所製、型式:リッチメンLM5062−i)を用いて公知の方法により粗麺帯に加工し、次いで複合・圧延および切り出し工程を経て、厚さ1mm、幅1.5mmの中華麺を得た。
(実施例2)
準強力粉の999.9gを995gに、繊維2の0.1gを5gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして中華麺を得た。
(実施例3)
準強力粉の999.9gを950gに、繊維2の0.1gを50gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして中華麺を得た。
(実施例4)
繊維2の0.1gの代わりに繊維6の0.1gを用いたこと以外は、実施例1と同様に中華麺を得た。
(実施例5)
準強力粉の999.9gを950gに変え、繊維2の0.1gの代わりに繊維4の50gを用いたこと以外は、実施例1と同様に中華麺を得た。
(実施例6)
繊維2の0.1gの代わりに繊維5の0.1gを用いたこと以外は、実施例1と同様に中華麺を得た。
(比較例1)
準強力粉の999.9gを1000gに変え、繊維2を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に中華麺を得た。
(比較例2)
準強力粉の999.9gを999.95gに、繊維2の0.1gを0.05gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして中華麺を得た。
(比較例3)
準強力粉の999.9gを940gに、繊維2の0.1gを60gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして中華麺を得た。
(実施例7)
小麦粉としての準強力粉(日清製粉株式会社製、製品名:特NO.1)699.9g、そば粉(株式会社益田屋製、製品名:石臼挽き標準A−2)300gおよび水不溶性食物繊維としての繊維2の0.1gを混合した。
得られた混合物に、予め食塩(財団法人塩事業センター製、製品名:食塩)10gを水320gに溶解させておいた溶液を加え、縦型プラネタリーミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK−25−10)を用いて低速で1分間、高速10分間混練して麺生地を得た。
得られた麺生地をロール式製麺機(株式会社大和製作所製、型式:リッチメンLM5062−i)を用いて公知の方法により粗麺帯に加工し、次いで複合・圧延および切り出し工程を経て、厚さ1mm、幅1.5mmのそばを得た。
(比較例4)
準強力粉の699.9gを699.95gに、繊維2の0.1gを0.05gに変えたこと以外は、実施例7と同様にしてそばを得た。
(実施例8)
小麦粉としての準強力粉(日清製粉株式会社製、製品名:特NO.1)950gおよび水不溶性食物繊維としての繊維2の50gを混合した。
得られた混合物に、予め食塩(財団法人塩事業センター製、製品名:食塩)20gを水350gに溶解させておいた溶液を加え、縦型プラネタリーミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK−25−10)を用いて低速で1分間、高速9分間混練して麺生地を得た。
得られた麺生地をロール式製麺機(株式会社大和製作所製、型式:リッチメンLM5062−i)を用いて公知の方法により粗麺帯に加工し、次いで複合・圧延および切り出し工程を経て、厚さ1mm、幅1.5mmおよび厚さ3mm、幅3mmのうどんを得た。
(比較例5)
準強力粉の950gを940gに、繊維2の50gを60gに変えたこと以外は、実施例8と同様にしてうどんを得た。
(伸展性試験)
実施例1〜6および比較例1〜3で得られた中華麺ならびに実施例7および比較例4で得られたそばの各50gを熱湯10リットル中で2分間茹でた。
実施例8および比較例5で得られた、厚さ1mm、幅1.5mmのうどんの各50gを熱湯10リットル中で7分間茹でた。
茹でた麺をそれぞれ速やかに温度5℃の冷水に1分間浸漬し、その後速やかにそれぞれの麺線長が5cmとなるように切断し、テクスチャー解析装置(クリープメータ、株式会社山電製、型式:レオナーRE2−3305)を用いて、引張試験用アダプターに麺線を装着し、引っ張り速度1mm/secの条件で麺線が破断(切断)するまで引張試験を行い、切断直前際の麺線長を測定し、次式から伸展性を評価した。
伸展性(伸長率:%)=切断直前の麺線長(cm)/5(cm)×100
得られた結果を表3に示す。
(中華麺およびそばの湯のび官能試験)
実施例1〜6および比較例1〜3で得られた中華麺ならびに実施例7および比較例4で得られたそばの各200gを熱湯10リットル中で2分間茹でた。
茹でた麺をそれぞれ12人分に分けてプラスチック製のお椀に入れ、次いで各お椀に、中華麺には85℃の中華スープ100mlおよびそばには85℃のそばつゆ100mlを入れ、スープ投入直後およびスープ投入7分後における麺の弾力(コシ)を、熟練した12名のパネラーで官能評価した。
各パネラーが各麺の弾力(コシ)を、10点(非常に良い)〜(良い)〜(可もなく不可もなく)〜(悪い)〜1点(非常に悪い)の10段階で評価し、それらの評価点の平均値(少数点第1位を四捨五入)を評点とした。
得られた結果を表3に示す。
(うどんの湯のび官能試験)
実施例8ならびに比較例5で得られた、厚さ3mm、幅3mmのうどんの各200gを熱湯10リットル中で7分間茹でた。
茹でた麺をそれぞれ12人分に分けてプラスチック製のお椀に入れ、次いで各お椀に、85℃のうどんスープ100mlを入れ、スープ投入直後およびスープ投入7分後における麺の弾力(コシ)を、熟練した12名のパネラーで官能評価した。
各パネラーが各麺の弾力(コシ)を上記のように1〜10点の10段階で評価し、それらの評価点の平均値(少数点第1位を四捨五入)を評点とした。
得られた結果を表3に示す。
表3の結果から、水不溶性食物繊維を0.01〜5重量%配合した実施例1〜6の中華麺の伸展性(伸長率)は、無添加の比較例1、水不溶性食物繊維をそれぞれ0.005%および6%配合した比較例2および3の中華麺と比較して顕著に優れていることがわかる。
また同様に、水不溶性食物繊維を0.01%配合した実施例7のそばの伸展性は、水不溶性食物繊維を0.005%配合した比較例4のそばと比較して顕著に優れていることがわかる。
さらに同様に、水不溶性食物繊維を5%配合した実施例8のうどんの伸展性は、水不溶性食物繊維を6%配合した比較例5のうどんと比較して顕著に優れていることがわかる。
また、表3の結果から、水不溶性食物繊維を0.01〜5%配合した実施例1〜17の中華麺、実施例7のそばおよび実施例8のうどんの湯のび後(7分後)の弾力感は、無添加の比較例1、水不溶性食物繊維をそれぞれ0.005%および6%配合した比較例2および3の中華麺、水不溶性食物繊維を0.005%配合した比較例4のそば、ならびに水不溶性食物繊維を6%配合した比較例5のうどんと比較して顕著に優れていることがわかる。
なお、比較例3の中華麺および比較例5のうどんは、湯のび後にある一定の弾力感が得られたものの、食感として顕著なザラツキ、ゴワゴワ感が観察され、異なる観点からマイナスな点が観察された。
試験例3(中華饅頭における水不溶性食物繊維のボリュームアップ(伸展性)効果の検証)
水不溶性食物繊維を配合した中華饅頭を作製し、ボリュームアップ(伸展性)効果を検証した。
(実施例1)
次の配合材料:
小麦粉(強力粉、日本製粉株式会社製、製品名:イーグル) 50重量部
小麦粉(薄力粉、日本製粉株式会社製、製品名:ハート) 50重量部
デンプン質食品の品質改良剤(試験例1、実施例10に相当) 1重量部
繊維2とグルテンと澱粉を重量割合(繊維2/グルテン/澱粉)=0.08/0.64/1.28で含有
砂糖(三井製糖株式会社製、製品名:上白糖) 12重量部
イースト(キリン協和フーズ株式会社製、製品名:ダイヤイースト) 2重量部
塩(財団法人塩事業センター製、製品名:食塩) 1重量部
ベーキングパウダー(株式会社アイコク製、製品名:AIKOKU赤印)1重量部
水(大阪市水道水) 49重量部
を、縦型プラネタリーミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK−25−10)を用い、温度26℃で低速で3分間混練した(約500g)。
次いで、得られた混合物にショートニング(ダーボン・オーガニック・ジャパン製、製品名:オーガニックトランスファクトリーショートニング)1重量部を添加し、温度26℃でさらに低速で2分間、中速で4分間、高速で5分間混練して、中華饅頭の生地(約500g)を得た。
次いで、手順および条件で中華饅頭を調理し、急速冷凍して冷凍保管した。
フロアタイム:15分/温度28℃、湿度75%
分割・丸め:各50g
ベンチタイム:15分/温度26℃、湿度55%
成型モルダ:株式会社オシキリ製、型式:ミニモルダMQ
成型:ロール間3.5mm、回転速度26rpm(逆回転)
成型:手成型
包具:40g(株式会社田中食品興業所製、調理パン用材料)
ホイロ(焙炉):40分/温度45℃、湿度50%
蒸し:温度70℃のスチーム/15分
急速冷凍:30分/−30℃
冷凍保管:12時間/−20℃
冷凍保管した中華饅頭を、庫内設定温度3℃の冷蔵庫で2時間解凍した後、温度70℃のスチームで1時間再蒸した。
得られた中華饅頭を、熟練した10名のパネラーが次の項目(括弧内は、非常に良い場合の指標を示す)について官能評価した。
生地物性(適度な硬さでまとめ易い)
機械耐性(機器への付着がなく伸展性が高い)
ボリューム(かさ高が大きい)
ソフト性(ふんわりしている)
内相(非常に木目細かい(空気孔が小さい))
食味(総合的に食感、味が優れている)
各パネラーが各項目について、10点(非常に良い)〜(良い)〜(可もなく不可もなく)〜(悪い)〜1点(非常に悪い)の10段階で評価し、それらの評価点の平均値(少数点第1位を四捨五入)を評点とした。
得られた結果を表4に示す。
(比較例1)
デンプン質食品の品質改良剤を添加せず、代わりにグルテンの1重量部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして冷凍保管の中華饅頭を得、官能評価した
得られた結果を表4に示す。
(比較例2)
デンプン質食品の品質改良剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして冷凍保管の中華饅頭を得、官能評価した
得られた結果を表4に示す。
表4の結果から、水不溶性食物繊維を配合した実施例1の中華饅頭は、水不溶性食物繊維の代わりにグルテンを配合した比較例1の中華饅頭および水不溶性食物繊維を配合しなかった比較例2の中華饅頭と比較して、生地物性および食味に優れ、ボリュームアップ効果が認められた。これらの結果は、水不溶性食物繊維の添加により、生地の伸展性が大きく向上したことによるものと考えられる。

Claims (2)

  1. セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンから選択される少なくとも1種を構成成分としかつ30〜2200μmの平均繊維長および10〜50μmの繊維径を有する、天然由来の水不溶性食物繊維を含有し、かつエンドウタンパク、大豆タンパクおよびグルテンから選択される少なくとも1種の植物性タンパク質である食用のタンパク質をさらに含むことを特徴とするデンプン質食品の伸展性向上用の品質改良剤。
  2. 前記食用のタンパク質が、前記水不溶性食物繊維に対して0.01〜100倍の重量割合で含まれる請求項1に記載のデンプン質食品の伸展性向上用の品質改良剤。
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