JP6304204B2 - 車両の前部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両前部にバンパーフェイシアとシュラウドとが備えられた車両の前部構造に関する。
自動車等の車両は、一般に車両前部にバンパーフェイシアを備える。バンパーフェイシアの上端部分(後方部分)は、ボンネットの前縁部分とパーティングラインを形成する。ここで、バンパーフェイシアの上端部分が自重乃至は外部荷重により垂下して、パーティングラインの隙間が拡がり、外観品質を低下させるという問題が生じることがある。この問題に鑑み、特許文献1には、バンパーフェイシアの上端部分を剛性の高い部材で支持させるようにした車両の前部構造が開示されている。
また、車両先端が歩行者へ衝突した場合において当該歩行者の頭部がボンネットに打ち付けられることを想定して、頭部保護のために略上下方向の衝撃を吸収することが可能な機構を車両前部に組み込むことが知られている。この吸収機構は、車両前部の車高が一般的な高さの自動車では、バンパーフェイシアよりも相当後方に組み込まれている。
特開2003−261067号公報
しかし、車両前部の車高が高い車両の場合、頭部の衝突衝撃の吸収を要する領域が、一般的な車高の車両よりも前方に位置することになる。この場合、バンパーフェイシアの上端部分が前記吸収を要する領域に含まれる。しかし、特許文献1の前部構造の如く、バンパーフェイシアの垂下問題の解消のため、その上端部分を剛性の高い部材で支持させていると、吸収効果を期待することはできない。
本発明の目的は、バンパーフェイシアの垂下を抑止しつつ、歩行者の頭部保護のための吸収機構を備えた、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の一局面に係る車両の前部構造は、車両の前部に配置され、ボンネットの前縁と対峙する上端部分を有するバンパーフェイシアと、前記バンパーフェイシアよりも後方に配置され、所定の機器へ冷却風を導くシュラウドと、前記シュラウドと前記バンパーフェイシアの前記上端部分とを連結させるための連結部材と、前記バンパーフェイシアの上端部分と前記連結部材との間に介在される衝撃吸収部材と、を備え、前記連結部材は、車幅方向に延びる平面部と、前記シュラウドに連結される連結部と、を有する後方部分と、前記バンパーフェイシアの上端部分の下方に位置し、前記平面部よりも下方に凹没し、車幅方向に延びる凹部を有する前方部分と、を含み、前記衝撃吸収部材は、前記凹部上に配置され、前記バンパーフェイシアの上端部分を支持する支持部と、前記連結部材に対する固定部とを含む。
この前部構造によれば、連結部材と衝撃吸収部材との複合体を介して、バンパーフェイシアの上端部分がシュラウドによって支持される。従って、バンパーフェイシアの垂下を抑止することができる。また、前記衝撃吸収部材によって前記バンパーフェイシアの上端部分が支持されている。このため、当該上端部分に上下方向の衝撃が加わったとしても、前記衝撃吸収部材によって前記衝撃を緩衝することができる。さらに、連結部材の前方部分に凹部が形成されているので、当該連結部材の車幅方向における剛性を高めることができる。また、前記凹部の凹没の分だけ連結部材とバンパーフェイシアの上端部分との間の上下方向の間隔が大きくなる。その凹部に衝撃吸収部材を配置する構成が採用されるので、前記衝撃吸収部材の上下方向の長さを長くすることができ、バンパーフェイシアに荷重が加わった際に弾性変形を行わせるストロークを十分に取ることが可能となる。
上記の前部構造において、前記衝撃吸収部材の前記連結部材に対する固定部は、前記平面部よりも上方に配置されていることが望ましい。
この前部構造によれば、前記固定部を前記平面部よりも上方に配置することで、前記連結部材に対して下方に加わる荷重に対して、高い剛性で支持できるモーメントを形成することができる。
上記の前部構造において、前記連結部材の前記前方部分は、上方に延びるフランジ板を備え、前記衝撃吸収部材は、前記フランジ板と対向する前板を備え、前記前板は、前記フランジ板と前後方向に重なるように配置され、前記固定部を形成する下部と、前記フランジ板と前後方向に重ならない上部と、を含むことが望ましい。
この前部構造によれば、衝撃吸収部材の上部、つまりは相当の上下幅を有する部分を、荷重吸収のための弾性変形を行わせるストローク部分として活用することができる。従って、衝撃吸収部材に衝撃吸収を良好に行わせることができる。また、前板とフランジ板とが前後方向に重なるように配置されるため、両者の固定を行う固定ネジ等の挿通方向も前後に向かうことになる。このため、頭部がバンパーフェイシアの上端部分に向かう上下方向に、ネジ先が指向しない構造体とすることができる。
上記の前部構造において、前記バンパーフェイシアは、前記連結部材のフランジ板と対向する対向板を有し、前記フランジ板は、前記対向板に対する取り付け部を有し、前記取り付け部は、前記衝撃吸収部材の前記固定部と略同じ高さ位置に配置されていることが望ましい。
この前部構造によれば、連結部材が、バンパーフェイシアに対する直接的な取り付け部を有するので、前記バンパーフェイシアの支持状態が安定する。また、前記取り付け部と前記固定部とが略同じ高さ位置に配置されているので、上記ストロークを小さくすることはない。
上記の前部構造において、前記衝撃吸収部材が、車両の前後方向に沿った断面において、上板、前板及び下板を含み、後方に向けて開放したコ字型形状を有し、前記支持部は、前記上板に配置され、前記固定部は、前記前板又は前記下板に配置されていることが望ましい。
この前部構造によれば、衝撃吸収部材が、後方に立壁を具備しない構造体からなり、上板でバンパーフェイシアの上端部分を支持し、前板又は下板において連結部材の凹部と固定される。従って、前記衝撃吸収部材が易変形性となり、また、前記衝撃吸収部材を、上から下に向けて加えられる衝撃を吸収し易い構造体とすることができる。
上記の前部構造において、前記凹部は、前記衝撃吸収部材が載置される第1凹部と、前記第1凹部の後方に連設され、前記第1凹部よりも下方に凹没した第2凹部と、を含むことが望ましい。
この前部構造によれば、衝撃吸収部材が載置される第1凹部よりも深く凹没された第2凹部が具備されるので、当該連結部材の車幅方向における剛性を一層高めることができる。
この場合、前記第2凹部が、前記バンパーフェイシアの上端部分と前記ボンネットの前縁との隙間から進入する水の排水路の機能を有することが望ましい。
この前部構造によれば、連結部材の凹部に雨水等が進入した場合、より深い第2凹部に水が流れ込むことになる。しかし、この第2凹部が水の排水路の機能を有するので、水が凹部に滞留しないようにすることができる。
本発明によれば、バンパーフェイシアの垂下を抑止する機能と、歩行者の頭部保護のための衝撃の吸収機能とを両立させた、車両の前部構造を提供することができる。
本発明が適用される車両の前部の一例を示す斜視図である。 前記車両の前部の正面図である。 本発明の実施形態に係る車両の前部構造を示す斜視図である。 図2のIV−IV線の概略的な断面図である。 図4の要部拡大断面図である。 図4から車幅方向に所定距離だけシフトした位置の概略的な断面図である。 図2のVII−VII線の概略的な断面図である。 前記車両の前部構造の上面図である。 図8の状態からフロントグリルを取り除いた上面図である。 図9の状態からグリルブラケットを取り除いた上面図である。 グリルブラケット、衝撃吸収部材及びカバー部材の組立体の斜視図である。 前記組立体の分解斜視図である。 グリルブラケット単体の斜視図である。 斜め前方から見た衝撃吸収部材単体の斜視図である。 図14Aの要部拡大斜視図である。 斜め後方から見た衝撃吸収部材単体の斜視図である。 図15Aの要部拡大斜視図である。 グリルブラケットと衝撃吸収部材との固定構造の比較例(変形実施形態)を示す断面図である。 本実施形態のグリルブラケットと衝撃吸収部材との固定構造を示す断面図である。 変形実施形態に係るグリルブラケットと衝撃吸収部材との固定構造を示す断面図である。 比較例に係るグリルブラケットと衝撃吸収部材との固定構造を示す断面図である。
[車両前部の概略説明]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明が適用される車両1の前部10を示す斜視図である。図中には、車両1の前後方向における「前」及び「後」の矢印、車幅方向における「左」及び「右」の矢印、並びに、車高方向における「上」及び「下」の矢印を付記している。以下の図に付している「前」「後」「上」「下」「左」「右」の矢印は、図1の方向表示に従っている。図2は、車両の前部10の正面図、図3は、本発明の実施形態に係る車両の前部10の構造を示す斜視図である。
車両1の前部10には、車両1の外装構造体として、ボンネット11と、バンパーフェイシア12とが配置されている。バンパーフェイシア12は、車両1の前端部分を覆うフェイシア本体12Aと、このフェイシア本体12Aの左右方向の中央上部に配置されたフロントグリル13と、フロントグリル13の下方に配置されたバンパーグリル14とを含む。フロントグリル13の左右側端には、ヘッドライト開口15が設けられている。また、フロントグリル13の上面には、ボンネット11の前縁11Fと対峙する部分となるフェイシア上端板16(バンパーフェイシアの上端部分)が取り付けられている。
図3を参照して、フェイシア上端板16は、左右方向に長い板状部材であり、ボンネット11の傾斜に沿って、前下がりに傾斜している。フェイシア上端板16の後端には、ボンネット11の前縁11Fに向かい合う上端縁161と、上端縁161から後方へ延びる上部ブラケット162とを含む。上端縁161と前縁11Fとは隙間を介して対峙しており、図1に示すように、両者間には左右方向に延びるパーティングラインPが形成されている。上部ブラケット162は、上端縁161よりも低い高さ位置にあり、略水平な方向に延びている。上部ブラケット162の左右方向中央には、左右方向に長い矩形の切り欠き部163が設けられている。切り欠き部163は、ユーザーがボンネット11を開く際に手指を差し入れるアクセス空間ASを形成するための開口である。
バンパーフェイシア12の後方には、シュラウド2が配置されている。シュラウド2は、図略のラジエータ(所定の機器)を保持すると共に、前記ラジエータへフロントグリル13を通して導入された冷却風を導くための、高剛性のフレーム構造体である。シュラウド2は、矩形の枠フレームを形成しているシュラウドパネル21と、シュラウドパネル21の上面に取り付けられたシュラウドアッパメンバ22とを含む。
本実施形態では、シュラウド2を利用してバンパーフェイシア12を支持するよう、両者間にグリルブラケット3(連結部材)が架け渡される。具体的には、グリルブラケット3によって、シュラウドアッパメンバ22とフェイシア上端板16とが連結される。これは、バンパーフェイシア12の自重による垂下を防止するため、換言するとフェイシア上端板16が下降してパーティングラインPの隙間が拡がり外観品質が悪化することを防止するためである。
グリルブラケット3は、ガラスファイバー入りの樹脂部材や板金等の高い剛性を持つ部材からなる。このようなグリルブラケット3でフェイシア上端板16を支持する高剛性の支持構造とすると、当該部分において衝撃吸収機能を具備させることが出来ない。この場合、本実施形態の車両1のように前部10の車高が高いと、歩行者の頭部保護の観点からは好ましくない状態となる。本実施形態では、この点に鑑み、バンパーフェイシア12の垂下を抑止する機能と、歩行者の頭部保護のための衝撃の吸収機能とを両立させた、車両1の前部構造を提供する。
[車両前部の断面構造]
図4は、図2のIV−IV線の概略的な断面図、図5は、図4の要部拡大断面図である。図6は、図4から左右方向に所定距離だけシフトした位置の概略的な断面図である。図7は、図2のVII−VII線の概略的な断面図である。図4〜図6は、左右方向の中央部から右方に外れた部分の断面、つまりアクセス空間ASが存在する部分の側方に位置する部分の断面を示している。一方、図7は、アクセス空間ASが存在する中央部分の断面を示している。車両1の前部10の、ボンネット11及びバンパーフェイシア12で覆われた内部には、上述のグリルブラケット3、衝撃吸収部材4及びカバー部材5が配置されている。
<アクセス空間の側方部分の断面構造>
先ずは、図4及び図5に基づき、アクセス空間ASの側方部分の断面構造について説明する。グリルブラケット3は、シュラウド2に連結される部分を含む後方部分3Aと、後方部分3Aよりも前方の部分であってフェイシア上端板16の下方に位置する部分を含む前方部分3Bとを備える。図13には、グリルブラケット3の単体の斜視図を示している。
後方部分3Aには、車幅方向である左右方向に延びる平面部31と、シュラウド2に連結される部分となる後端部311と、前方部分3Bとの境界部分となる折り曲げ部312とを含む。後端部311は、シュラウドアッパメンバ22の上面に積重されている。後端部311の後縁31Eと、シュラウドアッパメンバ22の後縁とは略同じ前後方向位置にある。後端部311には、ネジ孔313(図13)が穿孔されており、シュラウドアッパメンバ22にもネジ孔313に対応したネジ孔が穿孔されている。ネジ孔313にはスクリューネジからなる第1固定ネジ61が螺合され、これにより後端部311はシュラウドアッパメンバ22に固定的に連結される。折り曲げ部312は、平面部31の前端を下方に折り曲げた部分である。
前方部分3Bには、平面部31よりも下方に凹没し左右方向に延びる凹部32と、上方に延びるフランジ板35とが備えられている。凹部32の後端壁は、折り曲げ部312に連なる立壁であり、凹部32の前端壁はフランジ板35である。このような凹部32が前方部分3Bに形成されることで、グリルブラケット3の左右方向における剛性を高めることができる。凹部32は、前方に位置する第1凹部33と、第1凹部33に連設され、第1凹部33よりも下方に凹没した第2凹部34とからなる。つまり、第2凹部34の底板は、第1凹部33の底板よりも高い位置に存在する。このように、凹部32に凹没高さの異なる2つの凹部33、34を設けることで、グリルブラケット3の左右方向の剛性をより高めることができる。
第1凹部33は、フェイシア上端板16の上部ブラケット162の下方に位置し、衝撃吸収部材4が載置される部分である。第2凹部34は、上述の剛性を高める機能の他、フェイシア上端板16とボンネット11の前縁11Fとの隙間(パーティングラインP)から進入する水の排水路の機能も果たす。このため、第2凹部34の底板には、水抜き孔341(図13参照)が穿孔されている。前記底板は、図4、図5に示す通り前下がりに傾斜しており、水抜き孔341は当該底板の最も低い部分に配置されている。パーティングラインPを通して雨水等が凹部32に進入した場合、より深い第2凹部34に水が流れ込むことになる。この水は、水抜き孔341を通して外部に排出されるので、水が凹部32に滞留しないようにすることができる。
フランジ板35は、前方部分3Bの前端縁から鉛直上方向に立ち上がった部分である。フランジ板35の立ち上がり高さは、後述の衝撃吸収部材4の上下方向の高さの半分程度である。フランジ板35の上縁351に近い位置には、グリルブラケット3と衝撃吸収部材4を連結する第2固定ネジ62が挿通される第1締結孔352が穿孔されている。なお、フランジ板35は必ずしも前方部分3Bの前端縁から立ち上がる態様でなくとも良く、当該前端縁から後退した位置からフランジ板35を立ち上がらせる態様でも良い。
衝撃吸収部材4は、フェイシア上端板16とグリルブラケット3との間に介在される部材である。より詳しくは、衝撃吸収部材4は、フェイシア上端板16の上部ブラケット162と、凹部32の第1凹部33との間に介在されている。衝撃吸収部材4の主な機能は、バンパーフェイシア12の自重による垂下が発生しないよう当該バンパーフェイシア12を支持する機能、及び、フェイシア上端板16に対して上下方向の衝撃(例えば歩行者の頭部が衝突する衝撃)が加わった時に、当該衝撃を緩衝(吸収)する機能である。
衝撃吸収部材4は、前記支持する機能を達成できるよう所定の剛性を有する一方で、前記衝撃を緩衝する機能を為し得るよう所定の弾性を有する部材によって形成される。例えば、ポリプロピレン等の樹脂部材は、衝撃吸収部材4として好適である。衝撃吸収部材4は、上板41、前板42及び下板43を有し、図4、図5に示す通り、車両1の前後方向に沿った断面において、後方に向けて開放した開放部4Hを有するコ字型の断面形状を有している。上板41及び下板43の前後幅と、前板42の上下幅とは、概ね同一長さである。なお、図14A及び図15Aに、衝撃吸収部材4単体の斜視図を示している。
上板41は、前後方向に水平に延び、上部ブラケット162の下面と対向しており、フェイシア上端板16を支持する支持部411を有している。支持部411は、上板41の後方部分であり、上部ブラケット162の一段下がった平板部分を支持している。支持部411には、図14A及び図15Aに示す通り、上下方向に貫通する固定孔413が穿孔されている。上部ブラケット162と上板41とが、後述のカバー部材5を間に挟んだ状態で、固定孔413を通した図略のネジ固定によって、一体的に連結される。
前板42は、上板41及び下板43の前縁同士を繋ぐように上下に延びている。前板42の配置位置は、パーティングラインPの近傍且つ後方の位置である。前板42は、概ね上半分を占める上部42Aと、下半分を占める下部42Bとを備える。この下部42Bがフランジ板35と前後方向に重なって接するよう、衝撃吸収部材4は第1凹部33に組み付けられる。一方、上部42Aはフランジ板35と前後方向に重ならず、フランジ板35によって拘束されない状態とされる。
前板42の下部42Bには、前板42を前後方向に貫通する締結孔421(固定部)が穿孔されている。この締結孔421の位置において、衝撃吸収部材4は第1凹部33(フランジ板35)に固定される。つまり、衝撃吸収部材4のグリルブラケット3に対する固定部は、フェイシア上端板16を支持する支持部411よりも下方に配置されている。この固定部は、図5に示しているように、グリルブラケット3の平面部31よりも距離d1だけ上方に配置されている。
締結孔421と、フランジ板35の第1締結孔352とが位置合わせされた状態で、これらの孔に第2固定ネジ62が前後方向に挿通されている。第2固定ネジ62は、ネジ頭621がフランジ板35の前面に当接し、先端622が衝撃吸収部材4のコ字型の空間内に入り込んだ状態で、フランジ板35と前板42の下部42Bとを締結している。
下板43は、前板42の下端から後方に延びている。下板43は、第1凹部33の底板と平行に後方に延び、該底板とほぼ同じ前後方向長さを有している。第2固定ネジ62によってフランジ板35に衝撃吸収部材4が固定された状態で、下板43と第1凹部33の底板との間には僅かな隙間が存在している。
カバー部材5は、断面コ字型の衝撃吸収部材4の、後方に開放した開放部4Hを覆う部材である。図12には、カバー部材5単体の斜視図が示されている。カバー部材5は、ゴム又は樹脂で形成される部材であり、上下方向に延びる縦板51と、縦板51の上端から前方へ水平方向に延びる横板52とを含む、断面L字型の部材である。縦板51は、開放部4Hの上下幅よりもやや短い上下長さを有している。このため、縦板51の下端縁と第1凹部33の底板との間には短いギャップが形成されている。横板52は、衝撃吸収部材4の上板41(支持部411)とフェイシア上端板16の上部ブラケット162との間に挟み込まれることによって、固定されている。縦板51が開放部4Hを覆い隠すことにより、第2固定ネジ62の先端622が露呈せず、見映えを良くすることができる。
<グリルブラケットとバンパーフェイシアの直接連結部分の断面構造>
上記では、グリルブラケット3がバンパーフェイシア12のフェイシア上端板16と、衝撃吸収部材4を介して連結されている部分の断面構造を説明した。グリルブラケット3は、バンパーフェイシア12に直接的に連結される部分も有している。当該直接的連結部分は、フェイシア上端板16と衝撃吸収部材4との連結位置よりも下方である。この断面構造を、図6に基づいて説明する。図6は、図4及び図5の断面位置よりも車幅方向に所定距離だけシフトした位置の概略的な断面図である。
フロントグリル13は、その上端から後方へ水平方向に延びるグリル上端板131を有している。フェイシア上端板16の前端下部に形成された下部ブラケット164は、グリル上端板131の前端に設けられた凹部で固定支持されている。すなわち、フロントグリル13とフェイシア上端板16とは一体的な部材である。グリル上端板131の後端には、鉛直上方に立ち上がったグリルフランジ132(対向板)が備えられている。グリルフランジ132は、グリルブラケット30のフランジ板35と対向している。
フランジ板35は、前後方向にフランジ板35を貫通する第2締結孔353を有している。第2締結孔353は、グリルフランジ132に対する取り付け部となるネジ孔である。この第2締結孔353に対応する位置に、グリルフランジ132はネジ孔133を有している。これらの孔353、133に、第3固定ネジ63が前後方向に挿通されている。第3固定ネジ63は、ネジ頭631がグリルフランジ132の前面に当接し、先端632が衝撃吸収部材4のコ字型の空間内に入り込んだ状態で、グリルフランジ132とフランジ板35とを締結している。なお、衝撃吸収部材4には、第3固定ネジ63の先端632側を逃がす受け孔422が設けられている。
フランジ板35がグリルフランジ132に取り付けられる取り付け部は、図6に示すように、グリルブラケット3の平面部31よりも距離d2だけ上方に配置されている。また、平面部31の一部である後端部311において、グリルブラケット3はシュラウドアッパメンバ22に連結されているので、この連結部よりも前記取り付け部は距離d2だけ上方に位置することになる。さらに、距離d2と、図5に示した距離d1とは略同じ長さである。すなわち、前記取り付け部(第2締結孔353)と、衝撃吸収部材4がフランジ板35に固定される固定部(締結孔421)とが、略同じ高さ位置に配置されている。
<アクセス空間の断面構造>
図7は、図2のVII−VII線の概略的な断面図であり、アクセス空間ASが存在する左右方向の中央部の断面図である。図13も参照して、グリルブラケット3は、左右方向の中央部に切り欠き部36を有している。この切り欠き部36によって、平面部31は左右に分断されている。切り欠き部36の前方には、平坦な中央部37が形成されている。中央部37は、平面部31よりもやや高い水平面であり、凹部32は中央部37によって左右に分断されている。中央部37の下面は、支持片7によって支持されている。
図14A〜図15Bも参照して、衝撃吸収部材4の左右方向の中央部44には、立壁部45及び収容部46が備えられている。立壁部45は、フェイシア上端板16の上部ブラケット162と、グリルブラケットの中央部37との間に延びる傾斜壁である。立壁部45は、斜板451と、斜板451の上端から前方に延びる上水平板452と、斜板451の下端から前後に延びる下水平板453とを含む。斜板451は、上端部分が前方に、下端部分が後方に各々位置する、後ろ下がりの傾斜を有している。上水平板452は上部ブラケット162を支持し、下水平板453が中央部37に当接している。
収容部46は、立壁部45の前面側の下方(上水平板452の下方)に、立壁部45に一体的に膨設された部分である。収容部46は、中央部44において衝撃吸収部材4とフランジ板35とを固定する第2固定ネジ62を収容する収容空間を形成するものであり、下面に開口を有する箱形の形状を有している。つまり、下水平板453は、収容部46の下面には存在しない。収容部46の前壁には、第2固定ネジ62が螺合される挿通孔461が設けられている。このような収容部46を設けることで、ボンネット11を開放しようとするユーザーがアクセス空間ASに手指を差し入れたときに、第2固定ネジ62との接触が生じないようにすることができる。
斜板451の上端付近には、左右方向に長いスリット47が形成されている。スリット47は、立壁部45の剛性が高くなりすぎないように調整するために設けられている。スリット47の形成によって立壁部45の機械的強度が脆弱化され、適正な衝撃の吸収機能を、当該立壁部45に施与することができる。スリット47には、衝撃吸収部材4よりも低弾性の部材からなるスリットカバー53が嵌め込まれている。
[車両前部の外部的構造]
続いて、車両1の前部10の外部的構造を説明する。図8は、前部10の上面視の平面図、図9は、図8の状態からフロントグリル13を取り除いた上面図、図10は、図9の状態からグリルブラケット3、衝撃吸収部材4及びカバー部材5の組立体を取り除いた上面図である。
グリルブラケット3は、車両1の車幅に概ね相当する左右幅を有し、その後方部分3Aは、シュラウドアッパメンバ22の上に重なり、前方部分3Bはフロントグリル13に隣接している。既述の通り、グリルブラケット3の左右方向中央部には、平面部31の一部を切り欠いてなる切り欠き部36が設けられている。切り欠き部36は、ボンネット11の前縁11Fに対する係合支持構造を形成するラッチユニット19を収容する空間を形成するために設けられている。なお、切り欠き部36に対応する位置に、シュラウドアッパメンバ22にも開口が設けられている。
図10に示すように、支持片7は、左右方向に所定幅を有する高剛性の板状部材からなり、左右方向の中央に配置されている。支持片7の下端は、フロントサイドフレーム17で左右端部が保持されたバンパーレイン18によって支持され、上端はグリルブラケット3の中央部37の下面に当接し、固定されている。グリルブラケット3において、切り欠き部36が設けられる部分は機械的に脆弱な部分となる。しかし、切り欠き部36の前方に位置する中央部37が支持片7で支持される構造とすることで、バンパーフェイシア12の支持剛性を確保することができる。
図8、図9に示すように、グリルブラケット30のフランジ板35及び凹部32は、前部10の湾曲形状に沿って、左右方向に緩く湾曲している。中央部37は、凹部32を左右方向の中央で分断している。凹部32のうち、第2凹部34だけが上方に露呈している。第1凹部33は、凹部32の湾曲形状に応じて湾曲している衝撃吸収部材4及びカバー部材5が載置されることによって、完全に覆われている。
図11は、グリルブラケット3、衝撃吸収部材4及びカバー部材5の組立体の斜視図、図12は、前記組立体の分解斜視図である。図13は、図12とは斜視方向を反転させた、グリルブラケット3単体の斜視図である。図14Aは、斜め前方から見た衝撃吸収部材4単体の斜視図、図14Bは、図14Aの要部拡大斜視図である。図15Aは、斜め後方から見た衝撃吸収部材4単体の斜視図、図15Bは、図15Aの要部拡大斜視図である。
<グリルブラケット>
図11では、フランジ板35に対して6個の第2固定ネジ62が、左右方向に間隔を置いて螺合されている例を示している。これら第2固定ネジ62によって、フランジ板35と衝撃吸収部材4の前板42とが固定されている。また、フランジ板35のグリルフランジ132への取り付け部となる第2締結孔353が、左右方向に略均等間隔で6個配置されている例を示している。フランジ板35の前面からは、ピン354が前方に突出するように突設されている。ピン354は、グリルフランジ132に設けられた受け孔に嵌合し、第3固定ネジ63を締結する前にフランジ板35とグリルフランジ132の位置決めを図るためのものである。
シュラウドアッパメンバ22への連結部となるネジ孔313は、切り欠き部36を挟むように、後端部311に2個設けられている例を示している。なお、平面部31の側端部38付近には、シュラウド2の保持フレームとグリルブラケット3との固定を図るためのネジ孔314が設けられている。
凹部32の左右幅は、グリルブラケット30の左右幅よりもやや短い。このため、前方部分3Bの左右両端には、凹部32の窪みが存在しない側端部38が備えられている。これに伴い、衝撃吸収部材4及びカバー部材5は、凹部32の第1凹部33に載置される部材であるので、これらの左右幅も、グリルブラケット30の左右幅よりも短いサイズに設定されている。
図13を参照して、第1凹部33は、前後方向の幅が概ね均一であり、また、その底板の高さは中央部37よりもやや窪んだ程度である。一方、第2凹部34は、前後方向の幅が、左右端部付近において広幅とされている。また、第2凹部34の底板の高さは、中央部37に対して相当の段差を形成する程度に窪んでいる。水抜き孔341は、左右の広幅部分の近くに配置されている。
<衝撃吸収部材>
衝撃吸収部材4は、上板41、前板42及び下板43で構成される断面コ字型形状部分が左右一対で存在し、これらコ字型形状部分の中間に中央部44が存在する形態である。上板41には、フェイシア上端板16に衝撃吸収部材4を固定するための固定孔413が、複数設けられている。前板42には、グリルブラケット3に衝撃吸収部材4を固定するための締結孔421、及びグリルフランジ132とフランジ板35とを締結する第3固定ネジ63を逃がす受け孔422が、複数設けられている。
下板43は、中央部44が存在する箇所において、受け凹部441を備えている。受け凹部441は、下板43の他の部分よりも上方に突出した部分であり、グリルブラケット30の中央部37が嵌合される部分である。すなわち、中央部37は、第1凹部33の底板よりもやや上方に突出した部分であり(図13)、その突出部分に嵌り込むように上方へ凹没した受け凹部441が、下板43に設けられている。従って、この受け凹部441の部分が、中央部37を介して支持片7で支持される部分となる。受け凹部441、中央部37及び支持片7の左右方向の幅は、概ね同じである。
受け凹部441の上側において、立壁部45の左右両端には、一対の仕切板412が配置されている。仕切板412は前板42と直交し且つ上下方向に延びる板材であり、その上端は上板41及び上水平板452に、下端は下板43及び下水平板453に、前端は前板42に各々繋がっている。つまり一対の仕切板412は、立壁部45を左右方向において挟み込み、また、中央部37と前記コ字型形状部分とを区画している。支持片7との関係では、一対の仕切板412の配置位置は、支持片7の左右方向の幅員内であって、左右方向端部の上方に対応する位置の近傍である。
仕切板412は、中央部44において衝撃吸収部材4の機械的強度を補強する役目を果たす。既述の通り、グリルブラケット3においては切り欠き部36の形成によって中央部37が機械的に脆弱となることから、支持片7で中央部37が支持される。この中央部37の上に、一対の仕切板412が立設された受け凹部441を存在させることで、衝撃吸収部材4自身におけるバンパーフェイシア12の支持剛性が高められる。また、立壁部45にはスリット47が設けられ、積極的に脆弱化されているが、これによる中央部44の支持剛性の低下を、一対の仕切板412が補強している。
図15A及び図15Bに示す通り、衝撃吸収部材4は、前記コ字型形状部分の内側に、複数枚の補強リブ48を備えている。補強リブ48は、前板42と上板41とを繋ぐ三角形の板材であり、前板42と直交する方向に配置されている。一方、補強リブ48の下端481は、下板43に対して所定距離だけ離間した位置に配置されている。
補強リブ48によって、前記コ字型形状部分の強度が補強され、衝撃吸収部材4によるバンパーフェイシアの支持剛性を高めることができる。一方で、仕切板412のように上板41と下板43とを繋ぐようなリブを前記コ字型形状部分の内側に複数配置すると、強度が高められ過ぎて衝撃吸収部材4による上下方向の衝撃吸収能力を減失させる。従って、補強リブ48の下端481を下板43に対して離間させることで、衝撃吸収能力が大きく低下しないようにしているものである。
<カバー部材>
カバー部材5は、衝撃吸収部材4の中央部44の左側及び右側の前記コ字型形状部分の開放部4Hを各々覆うよう、左右一対で準備される。スリットカバー53は、立壁部45のスリット47に応じて左右方向に長い形状を有し、スリット47を区画する壁面と係合するフックを備えている。カバー部材5の縦板51が開放部4Hを覆うことで、既述の通り見映えを良くすることができると共に、開放部4Hをから水や塵埃が前記コ字型形状部分の空間へ進入することを防止できる。これにより、前記衝撃吸収部材の耐久性を高めることができる。
なお、グリルブラケット3、衝撃吸収部材4及びカバー部材5間の剛性の高低関係では、グリルブラケット3より衝撃吸収部材4が低剛性の特性を持ち、カバー部材5が衝撃吸収部材4より低剛性の特性を持つ。カバー部材5が最も低剛性とされるのは、衝撃吸収部材4の変形動作を阻害しないようにするためである。
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係る車両の前部構造によれば、次のような作用効果を奏する。まず、高剛性のグリルブラケット3単体ではなく、グリルブラケット3と衝撃吸収部材4との複合体によって、バンパーフェイシア12のフェイシア上端板16とシュラウドアッパメンバ22とが連結される。つまり、フェイシア上端板16が、グリルブラケット3と衝撃吸収部材4との複合体を介して、シュラウド2によって支持される。従って、バンパーフェイシア12の自重による垂下を抑止することができる。また、フェイシア上端板16とグリルブラケット3との間に衝撃吸収部材4が介在され、当該衝撃吸収部材4によってフェイシア上端板16が支持されている。このため、フェイシア上端板16に、歩行者の頭部衝撃などの上下方向の衝撃が加わったとしても、衝撃吸収部材4によって前記衝撃を緩衝することができる。従って、歩行者の頭部保護に寄与する。
さらに、グリルブラケット3の前方部分3Bには凹部32が形成されている。このため、左右(車幅)方向に長いグリルブラケット3の、左右方向における剛性を高めることができる。また、凹部32が下方に凹没している分だけ、グリルブラケット3とフェイシア上端板16との間の上下方向の間隔を大きく取ることができる。
例えば、図5において、仮に平面部31が前方部分3Bまで延びているとすると、第1凹部33の凹没が存在しない分だけグリルブラケット3とフェイシア上端板16との間隔が短くなる。この場合、衝撃吸収部材4を配置することができるスペースも小さくなり、衝撃吸収部材4の上下幅も短くなる。従って、フェイシア上端板16に衝撃荷重が加わった際に、衝撃吸収部材4に弾性変形を行わせるストロークを十分に取ることができないことが想定される。これに対し、本実施形態では、凹部32(第1凹部33)に衝撃吸収部材4が載置されているので、衝撃吸収部材4の上下方向の長さを長く取ることができ、前記ストロークを十分に取ることが可能となる。
図5に示しているように、衝撃吸収部材4のグリルブラケット3に対する固定部となる締結孔421(第2固定ネジ62)は、グリルブラケット3の平面部31よりも距離d1だけ上方に配置されている。そして、平面部31と同じ高さ水準にある後端部311において、グリルブラケット3はシュラウドアッパメンバ22に固定されている。このように、前記固定部を平面部31よりも上方に配置することで、グリルブラケット3の前方部分3Bに対して下方に加わる荷重に対して、高い剛性で支持できるモーメントを形成することができる。
衝撃吸収部材4は、上板41、前板42及び下板43を含み、後方に向けて開放したコ字型形状を有する。上板41でフェイシア上端板16の上部ブラケット162を支持し、前板42においてグリルブラケット3の前方部分3B(フランジ板35)と固定されている。このように、後方に立壁を具備しない構造体とすることで、上板41が下方に変形し易くなり、衝撃吸収部材4は易変形性となる。また、上板41でフェイシア上端板16からの荷重を受け、且つ、前板42をグリルブラケット3に固定しているので、衝撃吸収部材4を、上から下に向けて加えられる衝撃を吸収し易い。
衝撃吸収部材4の前板42が、フェイシア上端板16とボンネット11の前縁11Fとにより形成されるパーティングラインPの近傍且つ後方に位置している。ボンネット11の自重荷重は、パーティングラインPの付近において上部ブラケット162に伝達される。ボンネット11に衝撃荷重が加わった場合も同様である。このようなパーティングラインPの近傍且つ後方に、上下方向に延びる立壁からなる前板42が配置されることで、バンパーフェイシア12の荷重だけでなくボンネット11の荷重も、衝撃吸収部材4において良好に受け止めることができる。従って、バンパーフェイシア12の自重垂下だけでなく、ボンネット11の自重垂下も良好に抑止することができる。
また、衝撃吸収部材4の前板42は、グリルブラケット3のフランジ板35と前後方向に重なり、当該フランジ板35と第2固定ネジ62で固定される下部42Bと、フランジ板35と前後方向に重ならない上部42Aとを含む。このため、前板42のおよそ上半分に相当する上下幅を有する上部42Aを、バンパーフェイシア12に荷重が加わった際の弾性変形を行わせる部分として活用することができる。
図5を参照して、フェイシア上端板16或いはボンネット11の前縁11Fに衝撃荷重が加わると、その荷重は上部ブラケット162から衝撃吸収部材4の上板41に伝わる。この際、後方の開放部4Hには立壁が存在しないことから、衝撃吸収部材4は上板41の後端が下方に沈むように変形する。この変形を主に担うのが、前板42と上板41との角部、及び前板42の上部42Aである。本実施形態では、上部42Aの存在により、上板41の変形ストロークを大きくすることができる。この点を、図16A、図16Bに基づいて説明する。
図16Aは、グリルブラケット3と衝撃吸収部材4との固定構造の比較例を示す断面図である。この比較例も本発明の実施形態の一つであるが、グリルブラケット3のフランジ板35Aの上下幅が、衝撃吸収部材4の前板42とほぼ等しく、このようなフランジ板35Aに前板42が前後方向に重なるように配置され、固定されている態様を示している。この場合、前板42はフランジ板35Aに拘束されて変形できず、専ら前板42と上板41との角部しか変形できない。このため、上板41の変形ストロークは小さい。
図16Bは、本実施形態のグリルブラケット3と衝撃吸収部材4との固定構造を示す断面図である。既述の通り、前板42は、フランジ板35と重ならない上部42Aを備え、当該上部42Aは弾性変形可能である。つまり、前板42と上板41との角部からフランジ板35の上縁351至る領域C1が、前板42において変形可能であるので、上板41の後端が矢印C2方向に下降する変形ストロークを大きくすることができる。従って、衝撃吸収部材4に良好な衝撃吸収を行わせることができる。
また、図5に示す通り、前板42とフランジ板35とが前後方向に重なるように配置されるため、両者の固定を行う第2固定ネジ62の挿通方向も前後に向かうことになる。このため、歩行者の頭部がフェイシア上端板16に対し上から下へ向かうと想定するとして、上方向に、第2固定ネジ62の先端622が指向しない構造体とすることができる。
図6に示した通り、バンパーフェイシア12はグリルフランジ132を有し、フランジ板35の第2締結孔353を用いて、グリルフランジ132が第3固定ネジ63で取り付けられている。このように、グリルブラケット3が、衝撃吸収部材4を介さずにバンパーフェイシア12へ直接的に取り付けられる部分をさらに具備させることで、バンパーフェイシア12の支持状態を安定させることができる。
また、グリルフランジ132への取り付け部となるフランジ板35の第2締結孔353は、衝撃吸収部材4のフランジ板35への固定部となる締結孔421と略同じ高さ位置に配置されている。このため、第2締結孔353において第3固定ネジ63によって、衝撃吸収部材4を含めてグリルフランジ132とフランジ板35とを締結する構成を採用した場合でも(上掲の実施形態では、受け孔422で第3固定ネジ63の先端632側を逃がしている)、前板42の変形ストロークを小さくすることはない。
また、第2締結孔353を用いた取り付け部は、グリルブラケット3の後端部311がシュラウドアッパメンバ22に第1固定ネジ61で連結される位置よりも距離d2だけ高い位置に配置されている。このため、グリルブラケット3の前方部分3B(フランジ板35及び第1凹部33)に対して下方に加わる荷重に対して、高い剛性で支持できるモーメントを形成することができる。
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、次のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記実施形態では、グリルブラケット3の凹部32が、凹没深さの異なる第1凹部33及び第2凹部34の2段で構成されている例を示した。凹部32は、シンプルな一段の凹部であっても良い。図17Aは、変形実施形態に係るグリルブラケット30と衝撃吸収部材4との固定構造を示す断面図である。グリルブラケット30は、一段の窪みからなる凹部320を備えている。この凹部320の前壁は、フランジ板350である。図中の符号Tは、フェイシア上端板16の取り付け面を示す。この変形実施形態では、取り付け面Tと凹部320の底板との間の間隔C3を、衝撃吸収部材4の配置スペースとすることができる。
これに対し、図17Bは、比較例に係るグリルブラケット30Aと衝撃吸収部材40との固定構造を示す断面図である。グリルブラケット30Aは、凹部を備えない平板状の部材からなり、前端にフランジ板35Aを備えている。この比較例では、取り付け面Tとグリルブラケット30Aとの間の間隔C4が、衝撃吸収部材40の配置スペースとなる。凹部320の分だけ、間隔C4は間隔C3よりも短くなるため、衝撃吸収部材40の上下幅も小さくなる。従って、衝撃吸収部材40は変形ストロークが小さくなってしまう。グリルブラケットの高さ位置は、シュラウド2などの他の部材によって決められる場合が多く、取り付け面Tに対するグリルブラケットの上下間隔を十分に取れない場合に、本実施形態は有用である。
(2)上記実施形態では、グリルブラケット3の後端部311がシュラウドアッパメンバ22に固定される例を示した。これに代えて、後端部311をシュラウドパネル21に取り付けるようにしても良い。
(3)上記実施形態では、衝撃吸収部材4のグリルブラケット3(フランジ板35)に対する固定部となる締結孔421が、前板42に配置される例を示した。これに代えて、締結孔421に相当するネジ孔を下板43に配置しても良い。つまり、下板43をグリルブラケット3の第1凹部33に固定する構造としても良い。
(4)上記実施形態では、衝撃吸収部材4が、上板41、前板42及び下板43で構成される断面コ字型形状を有する態様を示した。これは一例であり、衝撃吸収部材4は、グリルブラケット3より剛性が低く、バンパーフェイシア12の上端部分を支持する支持部と、該支持部の下方に位置しグリルブラケット3の一部に固定される固定部とを有する限りにおいて、その形状は問わない。例えば、断面が四角形又は円形のチューブ状の衝撃吸収部材4であっても良い。また、スポンジ状の衝撃吸収部材4としても良い。
1 車両
10 前部
11 ボンネット
11F 前縁
12 バンパーフェイシア
13 フロントグリル
132 グリルフランジ(対向板)
16 フェイシア上端板(バンパーフェイシアの上端部分)
2 シュラウド
3 グリルブラケット(連結部材)
3A 後方部分3A
3B 前方部分3B
31 平面部
32 凹部
33 第1凹部
34 第2凹部
35 フランジ板
353 第2締結孔(取り付け部)
341 水抜き孔
4 衝撃吸収部材
4H 開放部
41、42、43 上板、前板、下板
411 支持部
42A、42B 上部、下部
421 締結孔(固定部)
5 カバー部材

Claims (7)

  1. 車両の前部に配置され、ボンネットの前縁と対峙する上端部分を有するバンパーフェイシアと、
    前記バンパーフェイシアよりも後方に配置され、所定の機器へ冷却風を導くシュラウドと、
    前記シュラウドと前記バンパーフェイシアの前記上端部分とを連結させるための連結部材と、
    前記バンパーフェイシアの上端部分と前記連結部材との間に介在される衝撃吸収部材と、を備え、
    前記連結部材は、
    車幅方向に延びる平面部と、前記シュラウドに連結される連結部と、を有する後方部分と、
    前記バンパーフェイシアの上端部分の下方に位置し、前記平面部よりも下方に凹没し、車幅方向に延びる凹部を有する前方部分と、を含み、
    前記衝撃吸収部材は、前記凹部上に配置され、前記バンパーフェイシアの上端部分を支持する支持部と、前記連結部材に対する固定部とを含む、車両の前部構造。
  2. 請求項1に記載の車両の前部構造において、
    前記衝撃吸収部材の前記連結部材に対する固定部は、前記平面部よりも上方に配置されている、車両の前部構造。
  3. 請求項2に記載の車両の前部構造において、
    前記連結部材の前記前方部分は、上方に延びるフランジ板を備え、
    前記衝撃吸収部材は、前記フランジ板と対向する前板を備え、
    前記前板は、
    前記フランジ板と前後方向に重なるように配置され、前記固定部を形成する下部と、
    前記フランジ板と前後方向に重ならない上部と、を含む、車両の前部構造。
  4. 請求項3に記載の車両の前部構造において、
    前記バンパーフェイシアは、前記連結部材のフランジ板と対向する対向板を有し、
    前記フランジ板は、前記対向板に対する取り付け部を有し、
    前記取り付け部は、前記衝撃吸収部材の前記固定部と略同じ高さ位置に配置されている、車両の前部構造。
  5. 請求項1又は2に記載の車両の前部構造において、
    前記衝撃吸収部材が、車両の前後方向に沿った断面において、上板、前板及び下板を含み、後方に向けて開放したコ字型形状を有し、
    前記支持部は、前記上板に配置され、
    前記固定部は、前記前板又は前記下板に配置されている、車両の前部構造。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の前部構造において、
    前記凹部は、
    前記衝撃吸収部材が載置される第1凹部と、
    前記第1凹部の後方に連設され、前記第1凹部よりも下方に凹没した第2凹部と、を含む、車両の前部構造。
  7. 請求項6に記載の車両の前部構造において、
    前記第2凹部が、前記バンパーフェイシアの上端部分と前記ボンネットの前縁との隙間から進入する水の排水路の機能を有する、車両の前部構造。
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