以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
本発明のステータ製造方法およびステータ製造装置の説明に入る前に、まず、当該製造方法および製造装置を用いて製造される回転電機のステータについて説明する。
図1〜図3は、回転電機のステータSを概略図で示しており、図1は斜視図で、図2、図3は断面図で各々ステータSを示している。
同図に示すステータSは、ハイブリット車両に搭載される三相交流モータ(回転電機の一例)に用いられるステータである。具体的には、当該ステータSと、その内側に配置されるロータと、これらステータS及びロータを収容するケーシング等で三相交流モータが構成される。
上記ステータSは、円環状をなすステータコア10と、そのスロット12に巻回される複数の巻線群をそれぞれ含む、第1コイル部材14Aおよび第2コイル部材14Bとを備えている。なお、以下の説明では、ステータコア10の中心軸回りの方向を周方向と称し、ステータコア10の半径方向を単に径方向と称す。
前記ステータコア10は、図3に示すように、周方向に等間隔で並ぶ複数の位置でそれぞれ内向きに開いて放射状に延びる複数のスロット12を備えている。
前記ステータコア10は、当例では、48個のスロット12を備えている。そして、後に詳述する通り、これら48個のスロット12のうち、特定の複数のスロット12を通過するようにU相、V相、W相の各巻線群が当該ステータ10に巻回されている。換言すれば、ステータコア10には、U相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12と、V相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12と、W相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12とを1セットとして、ステータコア10の周方向に8セットのスロット群が備えられている。つまり、このステータSが適用される回転電機は、48スロットを備えた8極の回転電機である。
なお、図3には、U相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号U1・U2、U3・U4……U15・U16で示し、V相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号V1・V2、V3・V4……V15・V16で示し、W相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号W1・W2、W3・W4……W15・W16で示している。以下の説明では、必要に応じて、U相の巻線群が挿入されるスロットの符号として符号12の代わりに図3中に示す符号U1・U2、U3・U4……U15・U16を用い、同様に、V相の巻線群が各々挿入されるスロットの符号として同図中の符号V1・V2、V3・V4……V15・V16を用い、W相の巻線群が各々挿入されるスロットの符号としてW1・W2、W3・W4……W15・W16を用いるものとする。
ステータコア10は、例えば図3に示すような形状を有する磁性体(鋼板)製の複数枚のプレートが積層一体化されることにより構成されている。
第1コイル部材14A及び第2コイル部材14Bは、それぞれ、ステータコア10に巻回される複数の巻線群を含んでいる。第1コイル部材14Aと第2コイル部材14Bは、第2コイル部材14Bが第1コイル部材14Aの内側に設けられている以外、これらの基本的な構成は共通している。よって、以下の説明では、第1コイル部材14Aについて詳述した上で、必要に応じて第2コイル部材14Bの構成に言及することにする。
第1コイル部材14Aは、スロットU1・U2、U3・U4……U15・U16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のU相巻線群20Ua、20Ub(第1U相巻線群20Ua、第2U相巻線群20Ubと称す/図4(b)参照)と、スロットV1・V2、V3・V4……V15・V16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のV相巻線群20Va、20Vb(第1V相巻線群20Va、第2V相巻線群20Vbと称す)と、スロットW1・W2、W3・W4……W15・W16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のW相巻線群20Wa、20Wb(第1W相巻線群20Wa、第2W相巻線群20Wbと称す)とを含む。なお、図1では、同じ経路に沿って巻回される巻線群をまとめて極めて概略的に第1コイル部材14A及び第2コイル部材14Bを示している。
U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbは、通過するスロット12が互いに異なる以外、基本的な構成は共通している。よって、以下の説明では、U相巻線群20Ua、20Ubの構成について詳述した上で、必要に応じてV相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbの構成に言及することにする。なお、以下の説明において上(上側)、下(下側)というときには、図1に示すステータSの状態を基準とし、内(内側)、外(外側)というときには、ステータコア10の径方向を基準とする。
第1U相巻線群20Uaは、断面五角形の素線1により形成された複数の巻線で構成されている。詳しくは、図4(a)に示すように、素線1は、底辺2aと、その両側から互いに平行に伸びる一対の側辺2b、2bと、これら側辺2b、2bの端部同士を繋ぐ一対の斜辺2c、2cとを備えた断面ホームベース型である。なお、素線1の断面において一対の斜辺2cが繋がる部分を尖形部と称する。素線1には、絶縁被膜が施されており、前記尖形部は、折り曲げ時の応力集中に起因する被膜破壊や巻線(素線1)の破損(亀裂)等を抑制するために若干丸味が持たせてある。
第1U相巻線群20Uaは、図4(b)に示すように、上記のような断面ホームベース型の素線1により形成された合計6つの巻線で構成されている。詳細には、同図に示すように、第1U相巻線群20Uaは、3つの巻線r1〜r3からなる正巻線群22aと、3つの巻線r1′〜r3′からなる逆巻線群22bとを含む。正巻線群22aと逆巻線群22bとは、コイルエンド部においては、電流の流れる方向が周方向において互いに逆向きとなり、スロット12内においては、電流の流れる方向が同一となるように電流供給が行われるものであり、後に詳述する通り、スロット12に対する巻線の挿入方向および導出方向が互いに逆の関係になっている。
第2U相巻線群20Ubも同様に、図4(b)に示すように、上記ホームベース型をなす断面五角形の素線1により形成された合計6つの巻線で構成されており、詳しくは、3つの巻線r4〜r6からなる正巻線群24aと、3つの巻線r4′〜r6′からなる逆巻線群24bとを含む。
各U相巻線群20Ua、20Ubは、図5〜図7に示すようにして、ステータコア10に波巻(分布巻きの一種)で巻回されることにより形成されている。すなわち、各U相巻線群20Ua、20Ubの巻線構造は波巻である。
スロットU1、U2の位置を基準に具体的に説明すると、まず、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aは、図5(a)及び図6(a)に示すように、ステータコア10の下側からスロットU1に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU4に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU5に挿入されて上側に導出されるという具合にして、スロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bは、図5(a)及び図6(b)に示すように、ステータコア10の上側からスロットU1に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU4に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU5に挿入されて下側に導出されるという具合にして、ステータコア10に巻回されている。すなわち、逆巻線群22bは、スロット12に対する巻線の挿入方向及び導出方向が正巻線群22aとは逆になるように、正巻線群22aと同じスロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
正巻線群22aの巻線r1〜r3と逆巻線群22bの巻線r1′〜r3′とは、図4(b)に示すように、ステータコア10の径方向(図4(b)では左右方向)に一列に並べられた状態、具体的には、前記径方向の片側に正巻線群22aの巻線r1〜r3が連続して一列に並び、この正巻線群22aに隣接するように逆巻線群22bの巻線r1′〜r3′が連続して一列に並んだ状態で各スロットU1、U4〜U16に挿入されている。より詳しくは、互いに隣接する巻線の尖形部が周方向の互いに反対側を向き、かつ、当該隣接する巻線の斜辺2c同士が互いに当接するとともに、尖形部の向きが共通する巻線のうち隣接するものの側辺2b同士が互い当接する状態、具体的には正巻線群22aの巻線r1、r3および逆巻線群22bの巻線r2′のうち互いに隣接するものの側辺2b同士が互いに当接し、正巻線群22aの巻線r2および逆巻線群22bの巻線r1′、r3′のうち隣接するものの側辺2b同士が互いに当接する状態で前記巻線r1〜r3、r1′〜r3′が各スロットU1、U4〜U16に挿入されている。
なお、図6(a)、(b)に示すように、正巻線群22a及び逆巻線群22bは、各スロットU1、U4〜U16について、ステータコア10の径方向における内外の位置関係が交互に入れ替わるように当該ステータコア10に巻回されている。
一方、第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aは、図5(b)及び図7(a)に示すように、ステータコア10の下側からスロットU2に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU3に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU6に挿入されて上側に導出されるという具合にして、スロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bは、図5(b)及び図7(b)に示すように、ステータコア10の上側からスロットU2に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU3に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU6に挿入されて下側に導出されるという具合にして、ステータコア10に巻回されている。すなわち、逆巻線群24bは、スロット12に対する巻線の挿入方向及び導出方向が正巻線群24aとは逆になるように、正巻線群24aと同じスロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
正巻線群24aの巻線r4〜r6と逆巻線群24bの巻線r4′〜r6′は、上述した第1U相巻線群20Uaの各巻線群22a、22bと同様にして、図4(b)に示すように、ステータコア10の径方向に一列に並べられた状態で各スロットU2、U3〜U15に挿入されている。そして、第2U相巻線群20Ubについても、図7(a)、(b)に示すように、正巻線群24a及び逆巻線群24bは、各スロットU2、U3〜U15について、ステータコア10の径方向における内外の位置関係が交互に入れ替わるように当該ステータコア10に巻回されている。
なお、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、図3及び図4(b)に示すように、ステータコア10の径方向最外側に位置する巻線r1、r4の尖形部の向きが同じになるように、当例では巻線r1、r4の尖形部が互いに周方向の同じ側(図4(b)では下側)を向くように、各スロットU1・U2……U15・U16に挿入されている。
第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aとは、ステータコア10の軸方向端面上(上下両側の端面上)において、軸方向端面と各巻線r1〜r3、r4〜r6の底辺2aが平行となり、かつ前記斜辺2c同士又は前記底辺2a同士が当接する状態で、ステータコア10の軸方向に沿って並べられている。
詳しくは、図8(a)に模式的に示すように、スロットU1からステータコア10の上側に導出される第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aのうち、内側の2つの巻線r2、r3は、そのまま略水平(ステータコア10の軸方向端面と略平行)になるように直角に折り曲げられ、残りの巻線r1は、直角に折り曲げられつつ、さらに内側に180°捩られ(図8(b)参照)、巻線r3の下側に互いの底辺2a同士が当接するように重ねられている。他方、スロットU2からステータコア10の上側に導出される第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aのうち、内側の2つの巻線r5は、そのまま略直角に折り曲げられ、残りの巻線r4は、略直角に折り曲げられつつ、巻線r5の上側に互いの底辺2a同士が当接するように重ねられるとともに、巻線r1の下側に互いの斜辺2c同士が当接するように重ねられている。これにより、図9(b)に示すように、前記斜辺2c同士が当接する状態、又は前記底辺2a同士が当接する状態で、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻線r1〜r3の下側に第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの巻線r4〜r6が重ねられている。なお、図9(a)は、図6(a)のIXa−IXa線に沿った巻線群の断面模式図であり、図9(b)は、図6(a)のIXb−IXb線に沿った同断面模式図である。
このように重ねられた第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aは、図6(a)及び図7(a)に示すように、次のスロットU3、U4に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側に変位するようにステータコア10の上端面に沿って配されている。そして、図10(a)に模式的に示すように、まず、下側に位置する第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aがステータコア10の上側からスロットU3に挿入される。この場合、下側の巻線r5、r6は、そのまま略直角に折り曲げられ、残りの巻線r4は、略直角に折り曲げられて他の巻線r5、r6の外側に並べられる。これにより、ステータコア10の径方向に巻線r4〜r6が一列に並んだ状態で、正巻線群24aがスロットU3に挿入される。
他方、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aのうち、上側の2つの巻線r2、r3は、そのまま直角に折り曲げられ、残りの巻線r1は直角に折り曲げられつつ外側に180°捩られた状態(図10(b)参照)で他の巻線r2、r3の外側に並べられる。これにより、ステータコア10の径方向に巻線r1〜r3が一列に並んだ状態で、正巻線群22aがスロットU4に挿入される。なお、巻線r1が外側に180°捩られるのは、上記の通り、当該巻線r1は、スロットU1から導出された後、他の巻線r3に重ねるために内側に180°捩られており(図8(a)(b))、この捩れを解消するためである。
なお、ここでは、ステータコア10の上側における正巻線群22a、24aの配列について具体的に説明したが、ステータコア10の下側では、正巻線群22a、24aの上下関係が逆、すなわち図9(b)の配列と上下対称な配列となる。これ以外の正巻線群22a、24aの配列は、基本的にはステータコア10の上下両側で共通している。
また、ここでは、正巻線群22a、24aについて説明したが、ステータコア10の上下両側における逆巻線群22b、24bの配列も、基本的には正巻線群22a、24aと同様である。すなわち、図9(a)、(b)の巻線r1〜r3、巻線r4〜r6を巻線r1′〜r3′、巻線r4′〜r6′に置き換えた配列と同等である。
このようにして、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubがステータコア10に巻回されている。なお、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、互いに隣接する一対のスロットU1・U2、U3・U4……U15・U16に順次挿入されるが、上記の通り(図5〜図7に示す通り)、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、各一対のスロットU1・U2、U3・U4……U15・U16について、交互に周方向の異なる側のスロット12へ挿入されている。すなわち、奇数番のスロット12から導出された巻線群は、次の偶数番のスロット12に挿入され、他方、偶数番のスロット12から導出された巻線群は、次の奇数番のスロット12に挿入される。その結果、上述の通り、第1U相巻線群20Uaは、スロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16に挿入され、第2U相巻線群20Ubは、スロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15に挿入されている。このようにして第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubがステータコア10に巻回されることで、正巻線群22aと正巻線群24aとが互いに交差することなく、また、逆巻線群22bと逆巻線群24bとが互いに交差することなく、ステータコア10に第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubが波巻きで巻回されている。
以上、U相巻線群20Ua、20Ubの構成について詳述したが、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbについても、通過するスロット12の位置が異なる以外、基本的にはU相巻線群20Ua、20Ubと同等の構成である。
なお、ステータコア10の上下端面上において、U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbは、ステータコア10の径方向に互いに隣接する状態で並んでおり、それぞれスロット12から導出されてその導出位置から次のスロット12に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側、又は外側に変位して導出位置とは前記径方向の異なる位置で次のスロット12に挿入されている。
この点について図9(b)、図11(a)〜(d)を用いて具体的に説明する。図9(b)は上記の通り、図6(a)のIXb−IXb線に沿った巻線群の断面模式図、つまり、スロットU2とスロットV1との間の位置の巻線群の断面模式図であり、図11(a)〜(d)は、図6(a)のXIa−XIa線、XIb−XIb線、XIc−XIc線及びXId−XId線にそれぞれ沿った巻線群の断面模式図、つまり、スロットV1〜U3の各スロット間の巻線群の断面模式図である。
これらの図に示すように、スロットU2とスロットV1の間の位置では、図9(b)に示すように、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aとが上下に重ねられている。そして、これらU相巻線群20Ua、20Ubの内側に、第1W相巻線群20Waの逆巻線群22bと第2W相巻線群20Wbの逆巻線群24bとが同様に上下に重ねられ、さらにその内側に、第1V相巻線群20Vaの逆巻線群22bと第2U相巻線群20Vbの逆巻線群24bとが同様に上下に重ねられている。
そして、スロットV1の位置で、最も内側に位置する第2V相巻線群20Vaの逆巻線群22bがスロットV1に挿入される一方で、スロットV1から第2V相巻線群20Vaの正巻線群22aが導出されることにより、スロットV1とスロットV2の間の位置では、図11(a)に示すように、第1V相巻線群20Vaの正巻線群22aがU相巻線群20Ua、20Ubの外側に重ねられる。
そして次に、スロットV2の位置で、最も内側に位置する第2V相巻線群20Vbの逆巻線群24bがスロットV2に挿入される一方で、スロットV2から第2V相巻線群20Vbの正巻線群24aが導出されることにより、スロットV2とスロットW1の間の位置では、図11(b)に示すように、第2V相巻線群20Vbの正巻線群24aがU相巻線群20Ua、20Ubの外側において、第2V相巻線群20Vaの正巻線群22aの下側に重ねられる。
そして次に、スロットW1の位置で、最も内側に位置する第2W相巻線群20Waの逆巻線群22bがスロットW1に挿入される一方で、スロットW1から第2W相巻線群20Waの正巻線群22aが導出されることにより、スロットW1とスロットW2の間の位置では、図11(c)に示すように、第2W相巻線群20Waの正巻線群22aがV相巻線群20Va、20Vbの外側に重ねられる。
そして次に、スロットW2の位置で、最も内側に位置する第2W相巻線群20Wbの逆巻線群24bがスロットW2に挿入される一方で、スロットW2から第2W相巻線群20Wbの正巻線群24aが導出されることにより、スロットW2とスロットU3の間の位置では、図11(d)に示すように、第2W相巻線群20Wbの正巻線群24aがV相巻線群20Va、20Vbの外側において、第2W相巻線群20Waの正巻線群22aの下側に重ねられる。
このように、U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbが、ステータコア10の径方向に互いに隣接する状態で並び、それぞれスロット12から導出されてその導出位置から次のスロット12に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側に変位しながらスロット12に挿入されることで、これら巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbが相互に交差することなくコンパクトに配列された状態のままで次のスロット12に導かれるようになっている。
以上、第1コイル部材14Aの構成について説明したが、第2コイル部材14Bの構成も第1コイル部材14Aと同等である。なお、図3及び図4(b)に示すように、第2コイル部材14Bの第2U相巻線群20Uaは、第1コイル部材14Aの第1U相巻線群20Uaに対してステータコア10の径方向に一列に並ぶように当該第1U相巻線群20Uaと同じスロット12内に挿入され、第2コイル部材14Bの第2U相巻線群20Ubは、第1コイル部材14Aの第2U相巻線群20Ubに対して前記径方向に一列に並ぶように当該第2U相巻線群20Ubと同じスロット12に配列されている。第2コイル部材14BのV相巻線群20Va、20Vb及びW相巻線群20Wa、20Wbも同様である。
以上のようなステータSによれば、各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの巻線r1〜r3、r1′〜r3′r4〜r6、r4′〜r6′が断面五角形のホームベース型の素線1により形成され、巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)が、斜辺2c同士を当接させた状態でスロット12に挿入されている。このような構成によれば、図4(b)に示すように、隣接する巻線同士がステータコア10の径方向において互いにオーバーラップした状態でスロット12内に挿入されるため、より断面積の大きい巻線(太い巻線)をスロット12内に整列した状態で密接して配列することが可能となる。従って、ステータSの線占積率(スロットの断面積に占める巻線の断面積の割合)を効果的に高めることが可能となる。
なお、上述したステータSは、例えば図12に示すような方法に従って製造することができる。すなわち、ステータコア10に巻回された状態のコイル部材14A(巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wb)と同一形状の巻線組立体30を単独で形成し(巻線組立体形成工程)、この巻線組立体30全体を径方向に圧縮変形させた状態で、同図(a)及び(b)に示すようにステータコア10の内側に挿入する(巻線組立体挿入工程)。その後、ステータコア10の内側に挿入された巻線組立体30を拡径し、当該ステータコア10の内側から所定のスロット12に対して各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbを挿入することにより、巻線組立体30をステータコア10に装着する(巻線組立体装着工程)。そして、上記工程を繰り返すことにより、図2に示すような、2つのコイル部材14A、14Bを備えるステータSを製造する。
このような方法によれば、ステータコア10に対して素線1を巻回しながら巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbを形成する場合に比べて、上記ステータSを効率良く製造することが可能となる。なお、この場合、上記巻線挿入工程では、図13(a)、(b)に示すように、巻線組立体30のうち、その軸方向一端側のみを径方向に縮径させることにより、当該巻線組立体30全体を略円錐台状に圧縮変形させておき、縮径された側からステータコア10の内側に巻線組立体30を挿入するようにしてもよい。このような方法によれば、巻線装着工程における巻線群の拡径作業が容易になるため、より効率良くステータを製造することが可能となる。
図12及び図13では、上記工程を繰り返すことにより、2つのコイル部材14A、14Bを備えたステータSを製造しているが、例えば巻線形成工程において、予め2つのコイル部材14A、14Bを含むような巻線組立体30を形成し、これをステータコア10に挿入するようにしてもよい。
なお、上記巻線組立体30(コイル部材14A)は、まずU相、V相、W相の各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbを各々構成する正、逆の各巻線群22a、22b、24a、24bが個別に形成され、これら巻線群22a、22b、24a、24bが所定の順番で接合されることにより製造される。
以下、巻線組立体30を構成するこれら巻線群22a、22a、24a、24bの製造方法(巻線製造方法)と、その製造方法に用いられる巻線製造装置40について説明する。なお、以下の説明では、第1U相巻線群20Uaを構成する正巻線群22a(巻線r1〜r3からなる巻線群)を製造する場合について説明する。
正巻線群22aを製造する巻線製造装置40は、概略的には、図14に示すプレス加工機41と、図21に示すフォーミング加工機42とを含む。
プレス加工機41は、前記素線1をプレス加工することにより、図19および図20に示すように、素線1の長手方向に延びる主線部P1と、当該主線部P1の上方にオフセットされた位置で前記長手方向に延びる第1副線部P2aと、前記主線部P1の下方にオフセットされた位置で前記長手方向に延びる第2副線部P2bとを含み、かつ第1副線部P2aと第2副線部P2bとが主線部P1を挟んで周方向に交互に並んだ渦巻き状の初期線状体rを成形するものである。なお、図19、図20では、初期線状体rは展開した状態で示されている。
ここで、前記主線部P1とは、正巻線群22aの各巻線r1〜r3のうち、ステータコア10のスロット12内を通過するスロット内通過部17(図5(a)参照)に対応する部分であり、第1副線部P2aとは、ステータコア10の上端面上を通過する渡り部18a(第1渡り部18aという/図5(a)参照)に対応する部分であり、第2副線部P2bとは、ステータコア10の下端面上を通過する渡り部18b(第2渡り部18bという/図5(a)参照)に対応する部分である。なお、第1渡り部18aと第2渡り部18bを総称して渡り部18とする。
プレス加工機41は、図14〜図18に示すように、渦巻き状の成形溝50を有する下型44(本発明の第1型に相当する)と、成形溝50に沿って配置される上型45(本発明の第2型に相当する)とからなる金型43と、この金型43を開閉する駆動装置と、この金型43により成形された素線1(初期線状体r)を取り出すためのリフト装置57と、駆動装置およびリフト装置57を制御するプレス制御装置とを備えている。
下型44には、成形溝50の渦巻きの外側、つまり外周側の端部から当該成形溝50内に素線1を挿入するための挿入部44aが設けられるとともに、成形溝50に挿入された素線1の端部を保持するためのクランプ機構48が備えられている。クランプ機構48は、挿入部44aに隣接する位置に設けられている。
図17に示すように、下型44の成形溝50には、素線1の長手方向に水平に延びる上記主線部P1を形成するための水平部51と、やや上方に膨らみながら前記長手方向に延びる上記第1副線部P2aを形成するための凸部52aと、やや下方に膨らみながら前記長手方向に延びる上記第2副線部P2bを形成するための凹部52bとが所定の配列で、すなわち、凸部52aと凹部52bとが水平部51を挟んで周方向に交互に並ぶように繰り返し設けられている。
上型45は、下型44の成形溝50に沿って並ぶ複数の分割型から構成されている。詳しくは、下型44の前記凹部52bに対応する位置にそれぞれ設けられ、かつ当該凹部52bに対応する形状を有する複数の凸部型54と、下型44の前記凸部52aに対応する位置にそれぞれ設けられ、かつ当該凸部52aに対応する形状を有する複数の凹部型55とから構成されている。各凸部型54は、成形溝50の長手方向に並ぶ一対の単位型54a、54bにより構成されており、各凹部型55も同様に、前記長手方向に並ぶ一対の単位型55a、55bにより構成されている。
上型45は可動型である。当該上型45を構成する前記各型54、55は、上記単位型毎にロッド56を介して図外の上記駆動装置に連結されている。駆動装置は、油圧シリンダ等のアクチュエータを駆動源として上型45を上下動させることにより、金型43を開閉するように構成されている。
上記リフト装置57は、図15に示すように、成形溝50の内底部に出没自在に配置される複数のリフトピン58(図17では図示省略)と、これらリフトピン58を昇降させる油圧シリンダ等の図外のアクチュエータとを備えている。各リフトピン58は、成形溝50に沿って所定間隔で配列されており、前記アクチュエータは、これらリフトピン58を一体的に昇降させる。
プレス加工機41による素線1(初期線状体r)の加工は次のようにして行われる。まず、金型43が開放された状態で、下型44の挿入部44aから前記成形溝50に素線1が挿入される。この挿入は、オペレータによる手動、又は送り装置による自動送りによって行われる。
なお、図8及び図10に示したように、正巻線群22aを構成する巻線r1は、スロット12の出入り部分で180°捩られているため、当該巻線r1に対応する部分については、予め第1、第2の副線部P2a、P2bが180°捩られた状態で素線1が成形溝50に挿入される。このような素線1の捩り作業は、事前に図外のフォーミング加工装置などによって行われる。
素線1が成形溝50に挿入されると、当該素線1の外周側の端部がクランプ機構48によりクランプされ、これにより下型44への素線1のセットが完了する。この状態では、素線1は、成形溝50に沿って渦巻き状に配置され、中心側の端部(先端部)と成形溝50の末端部との間には所定の隙間が形成されている。
下型44に素線1がセットされると、上記駆動装置による上型45の駆動によって金型43が型閉じされ、これにより素線1がプレス加工される。この際、上型45を構成する凸部型54および凹部型55のうち、成形溝50の外周側の端部に近いもの、つまり、挿入部44aに近いものから順次タイミングをずらして凸部型54および凹部型55が駆動される。これにより、素線1は、その一端側(挿入部44aの側)から順にプレス加工されることとなる。
このように素線1がプレス加工されることにより、第1副線部P2aと第2副線部P2bとが主線部P1を挟んで周方向に交互に並んだ渦巻き状の初期線状体r(図19、図20参照)が成形される。なお、当該初期線状体rの成形に際しては、上記の通り、主線部P1に対して第1、第2の副線部P2a、P2bが上下にオフセットされていることで、主線部P1の両端には、図20に示すように、上下方向に延びる垂直部a(本発明の把持部に相当する)がそれぞれ形成される。
プレス加工機41により初期線状体rが成形されると、駆動装置による上型45の駆動によって金型43が型開きされ、さらに、リフト装置57が作動して各リフトピン58が上昇することにより、初期線状体rが成形溝50から持ち上げられる。これにより、プレス加工機41から初期線状体rが取り外される。プレス加工機41からの初期線状体rの取り外しは、オペレータによる手動であってもよいし、取り出し装置により自動的に行われてもよい。
なお、渦巻き状に形成された初期線状体rは、後述する通り、外周側の端部から一旦引き出され、フォーミング加工が施されながら巻き取られることにより正巻線群22aが形成する。そのため、上記金型43については、成形溝50の渦巻きに沿ってその外周側の端部から順に巻線r3,巻線r2,巻線r1に対応する金型が配置されている。つまり、正巻線群22aを構成する巻線r1〜r3のうち、ステータコア10の内周側に位置する巻線ほど、成形溝50の外周側の端部に近い位置に配置されている。
次に、フォーミング加工機42について説明する。
フォーミング加工機42は、渦巻き状の前記初期線状体rをその外周端から引き出しながら、前記主線部P1を第1、第2の副線部P2a、p2bに対して折り曲げることにより、当該初期線状体rを矩形波状に変形させ、さらにこれを円筒状に巻き取ることにより正巻線群22aを形成するものである。なお、図25は、このようにして形成された正巻線群22aを展開した状態を模式的に示しており、同図では、便宜上、各渡り部18(18a、18b)を等しい長さで図示している。図中のU1〜U16は、スロット内通過部17が挿入されるスロット12の位置を示している。
フォーミング加工機42は、図21に示すように、基台60と、その上面に支持される繰り出しテーブル62および巻取りテーブル64と、これらテーブル62,64を駆動するテーブル駆動装置と、これらテーブル62,64の間に配置される加工機本体66と、この加工機本体66の両側にそれぞれ配置される送りローラ対68と、テーブル駆動装置および加工機本体66を制御するフォーミング制御装置とを備えている。
繰り出しテーブル62は、初期線状体rを保持するものである。この繰り出しテーブル62は、円板状のテーブル本体62aの上面にそれよりも小径の円筒柱状の保持部62bが一体に備られたターンテーブルであり、初期線状体rを、保持部62bの外周面上に配置した状態でテーブル本体62aにより支持するように構成されている。
巻取りテーブル64は、加工機本体66による加工後の初期線状体rを巻取るものである。巻取りテーブル64も、円板状のテーブル本体64aの上面にそれよりも小径の円筒状の巻取部64bを一体に備えたターンテーブルであり、加工機本体66による加工後の初期線状体rを巻取部64bの外周面上に巻取るように構成されている。
加工機本体66は、図22(a)に示すように、初期線状体rが通過する空間を形成するベース部70および天井部74と、ベース部70上に配備される一対の下部アーム72と、天井部74に配備される一対の上部アーム76とを備えている。
各下部アーム72は、ベース部70上に立設された状態で配備されている。各下部アーム72は、互いに接近した接近位置(例えば図22(b)に示す位置)と、この位置から互いに離間した離間位置(例えば図22(a)に示す位置)とに亘って左右方向(図22で左右方向/初期線状体rの送り方向と平行な方向)に連動して移動可能に設けられるとともに、初期線状体rに近接する作動位置と、この位置から後方に退避した退避位置とに亘って前後方向(図22では紙面に直交する方向/初期線状体rの送り方向と直交する方向)に一体的に移動可能に構成されている。
各下部アーム72は、例えばサーボモータを駆動源とするねじ送り機構等によってそれぞれの方向へ駆動され、接近時の各下部アーム72の間隔、および離間時の各下部アーム72の間隔は、前記サーボモータの駆動によって調整可能となっている。また、各下部アーム72には、その先端部(上端部)に、初期線状体rを掴むためのエア(エアシリンダ)駆動式のチャック73が設けられている。
上記各上部アーム76は、天井部74に垂下する状態で設けられている。各上部アーム76は、ベース部70に接近した下降位置(図22(a)に示す位置)と、この位置から天井部74に近接した上昇位置(図22(b)に示す位置)とに亘って一体的に昇降可能に設けられるとともに、初期線状体rに近接する作動位置と、この位置から後方に退避した退避位置とに亘って前後方向に一体的に移動可能に構成されている。さらに、各上部アーム76は、それらの間隔(左右方向の間隔)が変更可能に設けられている。各上部アーム76は、例えばサーボモータを駆動源とするねじ送り機構等によってそれぞれの方向に駆動され、各上部アーム76の間隔は、前記サーボモータの駆動によって調整可能となっている。また、各上部アーム76には、その先端部(下端部)に、初期線状体rを掴むためのエア(エアシリンダ)駆動式のチャック77が設けられている。
上記各送りローラ対68は、初期線状体rに搬送力を与える駆動ロータの状態と、初期線状体rを単にガイドする従動ローラの状態とに切り替え可能に構成されており、例えば電磁クラッチ等により上記の作動状態が切り替えられるように構成されている。
フォーミング加工機42による初期線状体r(正巻線群22a)のフォーミング加工は次のようにして行われる。
まず、プレス加工機41から取り外された初期線状体rが繰り出しテーブル62にセットされる。具体的には、初期線状体rが保持部62bの外周面上に配置された状態でテーブル本体62a上に載置される。そしてこの状態で、初期線状体rの先端、すなわち、外周側の端部が引き出され、送りローラ対68を介して加工機本体66に挿入される。この際、初期線状体rのうち、先端の主線部P1は、例えば第2副線部P2bに対して垂直に折り曲げられた状態で加工機本体66に挿入される(図22(a)参照)。なお、フォーミング加工機42への初期線状体rのセット時には、各アーム72,76は初期位置にセットされている。具体的には、各下部アーム72は、離間位置であってかつ退避位置に、各上部アーム76は、下降位置であってかつ退避位置にそれぞれ配置されている。
フォーミング加工機42への初期線状体rのセットが完了すると、初期線状体rのフォーミング加工が開始される。まず、送りローラ対68の駆動により初期線状体rが送り出され、図22(a)に示すように、両上部アーム76に対応する位置に第1副線部P2aが配置される。この際、各上部アーム76は第1副線部P2aの両端に対応するように、換言すれば、第1副線部P2aの両側に位置する主線部P1の垂直部a(第1副線部P2aに近い側の垂直部a)に対応するように、予め間隔調整されている。一方、各下部アーム72は、前記主線部P1のうち、第2副線部P2aに近い側の垂直部aに対応するように、予め間隔調整されている。
両上部アーム76に対応する位置に第1副線部P2aが配置されると、各アーム72、76が退避位置から作動位置に移動し、各チャック73、77により初期線状体rが把持される。詳しくは、各チャック73、77により垂直部aが把持される(図22a参照)。
その後、各上部アーム76が下降位置から上昇位置に移動するとともに、これに同期して各下部アーム72が離間位置から接近位置に移動する。このように、各アーム72、76が移動すると、図22(b)に示すように、第1副線部P2aを中心としてその両側の第2副線部P2bが内側に引き寄せされ、これにより、第1副線部P2aの両側に位置する主線部P1が、上下方向に真っ直ぐに延びるように各々両端の位置で折り曲げられる。この際、送りローラ対68が従動ローラの状態に切り替えられることにより、各アーム72、76の移動に伴う初期線状体rの変位が許容される。
このようにして第1副線部P2aの両側の主線部P1が折り曲げられると、図23(a)、(b)に示すように、各チャック73、77が開放されて、各アーム72、76が初期位置にそれぞれリセットされるとともに、送りローラ対68が従動ローラ状態から駆動ローラ状態に切換えられて、当該送りローラ対68の駆動により、初期線状体rが一定量だけ送り出される。つまり、次の第1副線部P2aが両上部アーム76に対応する位置に配置されるように、初期線状体rが送り出される。
そして、上記同様に各アーム73、76が作動することにより(図22参照)、第1副線部P2aの両側の主線部P1が上下方向に真っ直ぐに延びるように折り曲げられることとなる。こうして、以降、初期線状体rが一定量だけ送り出されながら、第1副線部P2aとこれを中心としてその両側に位置する主線部P1を一組(図19中に符号Eで示す領域)として、当該各主線部P1が折り曲げられる。
他方、上記フォーミング加工に伴う初期線状体rの送り出し動作に同期して、巻取りテーブル64が当該送り出し量に対応した回転角度だけ回転駆動される。つまり、初期線状体rは、加工機本体66によって図25に示すような矩形波状に変形されながら、順次巻取りテーブル64に巻き取られる。そして、最終的に、初期線状体rが三重に巻き取られることで、主線部P1、第1副線部P2aおよび第2副線部P2bによりそれぞれ、スロット内通過部17、第1渡り部18aおよび第2渡り部18bが形成された正巻線群22aが形成されることとなる。
以上、巻線製造装置40の構成について説明したが、この巻線製造装置40を用いた上記正巻線群22aの製造方法(巻線製造方法)をまとめると以下の通りである。
すなわち、当該巻線製造方法は、素線1を渦巻き状に配置して当該素線1を金型43でプレス加工することにより、素線1の長手方向に延びる主線部P1と、当該主線部P1に対して互いに上下反対方向にオフセットされた位置でそれぞれ前記長手方向に延びる第1副線部P2aおよび第2副線部P2bとを含み、かつ第1副線部P2aと第2副線部P2bとが主線部P1を挟んで周方向に交互に並んだ渦巻き状の初期線状体rを成形する工程(成型工程)と、この初期線状体rをその外周端から引き出しながら、主線部P1を第1、第2の副線部P2a、p2bに対して折り曲げることにより、当該初期線状体rを矩形波状に変形させる工程(フォーミング加工工程)と、矩形波状に変形された初期線状体rを円筒状に巻き取ることにより、主線部P1、第1副線部P2aおよび第2副線部P2bによりそれぞれ、スロット内通過部17、第1渡り部18aおよび第2渡り部18bが形成された正巻線群22aを形成する工程(巻取り工程)とを含む。
なお、ここでは、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aを製造する方法について説明したが、逆巻線群22bや第2U相巻線群20Ubの各巻線群24a、24bについても同様の製造方法で製造することができる。また、V相巻線群20Va、20VbおよびW相巻線群20Wa、20Wbの各巻線群22a、22b、24a、24bについても同様である。その場合、同一相に属する4つの巻線群22a、22b、24a、24bは、各々展開した状態の形状(副線部P2a、P2bの寸法)が互いに異なるため、各巻線群22a、22b、24a、24bの製造に際しては、互いに異なる金型43を用いて素線1のプレス加工を行う必要がある。
但し、フォーミング加工については、加工機本体66の各下部アーム72の間隔および各上部アーム76の間隔を調整することにより、共通のフォーミング加工機42を用いて初期線状体rを加工することが可能となる。
また、U相巻線群20Ua、20Ubの各巻線群22a、22b、24a、24bと、これらに各々対応するV相巻線群20Va、20Vbの各巻線群22a、22b、24a、24bとは同一形状であり、同様に、U相巻線群20Ua、20Ubの各巻線群22a、22b、24a、24bと、これらに各々対応するW相巻線群20Wa、20Wbの各巻線群22a、22b、24a、24bとは同一形状である。そのため、V相巻線群20Va、20VbおよびW相巻線群20Wa、20Wbの各巻線群22a、22b、24a、24bは、U相巻線群20Va、20Vbの各巻線群22a、22b、24a、24bを製造するための上記の巻線製造装置40を用いて製造することができる。
以上のような巻線群22a(22b、24a、24b)の製造方法によれば、溶接等の接合作業を伴うことなく3つの巻線r1〜r3からなる正巻線群22aを製造することが可能である。そのため、一巻毎に素線同士を接合する必要がある従来のこの種の巻線群の製造方法(特許文献1に記載された製造方法)と比べると、巻線群22aの製造に要する時間と手間を削減することができ、これにより、巻線群22aを効率的に製造することができる。しかも、この製造方法によれば、素線1を渦巻き状に配置し、プレス加工により渦巻き状の初期線状体rを形成した後、この初期線状体rを、その外周端から引き出し、矩形波状に加工しながら巻取ることで巻線群22aを製造するので、比較的少ないスペースで巻線群22aを製造することができる。
従って、上記の製造方法によれば、溶接等による素線同士の接合作業を伴うことなく、比較的少ないスペースで巻線群22aを製造することができるという利点がある。
また、上記製造方法によれば、プレス加工機41による素線1の加工の際には、上記の通り、金型43を成形溝50の外周側の端部から順次型閉じすることにより、渦巻き状に配置された素線1をその外周側の端部から内周側の端部に向かって一定の範囲毎に順次プレス加工するので、プレス加工時における素線1の弛みや引張りを軽減することができる。そのため、当該弛みや引張りに起因する初期線状体rの変形や、素線1の絶縁被膜の損傷等を有効に防止することができるという利点もある。
また、上記製造方法によれば、フォーミング加工機42(加工機本体66)による初期線状体rの加工の際には、第1副線部P2aの両側に位置する主線部P1を一組として当該一組の主線部P1を同時に折り曲げるので、初期線状体rを効率良く矩形波状に変形させることができる。特に、上記製造方法では、各主線部P1のうち、第1副線部P2a側の端部を上部アーム76で把持するとともに、各主線部P1のうち、第2副線部P2bの端部を下部アーム72で把持し、この状態で、各上部アーム76をそれらの間隔を保った状態で上昇させながら、各下部アーム72を互いに接近させることにより主線部P1を折り曲げている。このように、1副線部P2aを中心とする左右対称なアーム動作で各主線部P1を折り曲げる方法によれば、複雑なアーム動作を伴うことなく効率良く主線部P1を折り曲げることができるという利点もある。
しかも、素線1のプレス加工時に、主線部P1の両端にそれぞれ、上下方向に延びる垂直部aを形成しておき、当該垂直部aを各下部アーム72、76で把持するようにしているので、上記製造方法によれば、フォーミング加工機42による加工後の主線部P1を上下方向により真っ直ぐに形成することができるという利点もある。
ところで、以上説明した巻線群22a(22b、24a、24b)の製造方法や巻線製造装置40は、本発明にかかる巻線群の製造方法および巻線群の製造装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な方法や構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の通り、同一相に属する4つの巻線群22a、22b、24a、24bは、各々展開した状態の形状(副線部P2a、P2bの寸法)が互いに異なるため、各巻線群22a、22b、24a、24bの製造に際しては、互いに異なる金型43を用いて素線1のプレス加工を行う必要があるが、その場合、次のような構成を適用してもよい。すなわち、下型44を、ベース型と、当該ベース型に着脱可能な交換型(凸部52a、凹部52bの交換型)であって各巻線群22a、22b、24a、24bに各々対応する複数種類の交換型とから構成し、当該複数種類の交換型から選択される所定の交換型をベース型に固定できるように構成する。また、上型45については、各凸部型54の各単位型54a、54bの間隔を相手側、すなわち交換型に応じて調整可能に構成する。凹部型55についても同様に構成する。このような構成によれば、各巻線群22a、22b、24a、24bの製造に際して、上型45を共通化できる。そのため、プレス加工機41の製造コスト、ひいては巻線製造装置40の製造コストを抑えることが可能になる。
なお、上記実施形態中では言及していないが、上記ステータSを構成する同一のコイル部材14A(又はコイル部材14B)の同一相に属する4つの巻線群22a、22b、24a、24bは、各々展開した状態の形状(副線部P2a、P2bの寸法)が互いに異なるが、円筒状にした場合には、同一相に属する第1巻線群の正巻線群22aと第2巻線群の逆巻線群24bとはほぼ同一形状となり、同一相に属する第1巻線群の逆巻線群22bと第2巻線群の正巻線群24aとはほぼ同一形状となる。よって、同一のコイル部材14A(又はコイル部材14B)の同一相に属する4つの巻線群22a、22b、24a、24bのうち、第1巻線群の正巻線群22aと第2巻線群の逆巻線群24bとを共通の巻線群で構成し、同じく第1巻線群の逆巻線群22bと第2巻線群の正巻線群24aとを共通の巻線群で構成するようにしてもよい。