JP5370491B2 - ステータ及びステータ製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、モータの小型化及び高出力化を図るため、ステータの占積率を向上させる技術に関するものである。
近年、ハイブリッドカーや電気自動車などのニーズが高まっており、自動車の駆動力にモータを用いることが検討されている。しかし、モータを車載する為には、高出力化、小型化が要求される。特に、ハイブリッドカーはエンジンルームにモータを配置する関係上、小型化の要求が厳しい。
そのため、従来からモータの小型化、高出力化についてさまざまな検討がなされてきている。
特許文献1には、多相型発電装置のステータ枠用導体部に関する技術が開示されている。
ステータコアにアウタースロットを備え、平角導体がスロット内に挿入されるスロット内導線部に平面を規定し、該平面に対して上部から見てほぼU字に、前記平面を含む前方から見た場合波状体に、平角導体を成型して、ステータコアに配設することで、ステータのコイルエンドを短縮し、占積率の向上を図ることが可能となる。
特許文献2には、クランク形状の連続巻きコイル、分布巻き固定子及びそれらの成形方法に関する技術が開示されている。
平角導体を六角形に巻回した後、コイルエンドとなる部分にクランク形状を金型を用いて形成し、該平角導体を固定子コアに配設することで、コイルエンドでのコイル同士の干渉を解決し、ステータの占積率の向上、及び小型化に貢献することが可能となる。
特許文献3には、回転電機とその製造方法についての技術が開示されている。
内周側から外周側に向けて巻回したコイルアセンブリを、ステータコアのスロットに挿入する際に、一方のスロットにはコイルの外周側からスロットの外層側に配置されるよう挿入し、他方のスロットにはコイルの内周側からスロットの内周側に配置されるよう挿入することで、分布巻きされたコイルを備えた回転電機において、製造作業を簡略化し、かつスロット内の占積率の向上を図ることが可能となる。
特許文献4には、回転電機の固定子及び回転電機についての技術が開示されている。
平角導体を波巻きに配置して複数相を有する巻線コイルが形成され、外周方向から分割したティースを挿入し、該ティースをステータコアの外環部に形成された溝に挿入して固定することで、精度の高いステータコアを形成することが可能となる。
特許第3756516号公報 特許第4234749号公報 特開2008−125212号公報 特開2009−131093号公報
しかしながら、特許文献1乃至特許文献4には以下に説明する課題があると考えられる。
一般的に、集中巻コイルを用いるステータに比べて分布巻きコイルを用いるステータの方が高出力化し易く、コギングトルクの問題を解決しやすい。ただし、特許文献1又は特許文献2に示されるような分布巻きのコイルを用いたステータを高出力化するために、ステータコアにそなえられるスロットの深さを深くし、かつコイルの巻回数を増やすと、コイル同士の干渉の問題が出てくる。
特許文献1や特許文献2に示される技術では、隣り合うコイル間の隙間が殆ど無い為、コイルのターン数をこれ以上増やすことが難しいと考えられる。また、平角導体を成形するにあたり、平角導体の曲げ半径に制約がある為、これ以上平角導体の断面積を増やすことも難しいと考えられる。
したがって、更なる高出力化を求めるには特許文献1及び特許文献2の方法は適さないと考えられる。
特許文献3は、具体的なコイルの成形方法が、丸線を内周から外周に向けて平らになるように巻いてコイルを形成した後、コイルのスロットに挿入される部分を把持し、ツイストして成形する方法しか示されておらず、この方法は平角導体を用いるには不向きであると考えられる。
また、平角導体を外周側に積み上げて巻いていくスタイルを用いている為、コイルエンドが大きくなってしまうという問題もあり、ステータの小型化を図るには不向きであると考えられる。
特許文献4は、分布巻きに波巻きコイルを用いている。波巻きコイルは平角導体を編み込んでいく必要がある為、複雑な成形を要求されると共に、平角導体全てを平面状で重ねた上で、円環状に巻き取っていく必要がある為に、大きな組み立て装置を必要とする。この為、組み立てが難しく、コストダウンが困難であるという問題がある。
したがって、特許文献1乃至特許文献4に示される技術より、更にステータの小型化と高出力化を図る為には、更なる工夫が必要であると考えられる。
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、小型化及び高出力化が可能なステータ、及びステータ製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるステータは以下のような特徴を有する。
(1)ティースと、該ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、平角導線を用いて形成され前記スロット内に配置されるコイルと、を有するステータにおいて、前記スロットは、U相第1スロット、U相第2スロット、V相第1スロット、V相第2スロット、W相第1スロット、W相第2スロットを第1組とする3相スロットブロックが、順次形成されており、前記第1組の隣に第2組の前記3相スロットブロックが形成され、前記第1組のU相第1スロット内の前記平角導線が、前記第2組のU相第2スロット内の前記平角導線と第1ループを形成していること、前記第1組のU相第2スロット内の前記平角導線が、前記第2組のU相第1スロット内の前記平角導線と第2ループを形成していること、前記第2ループが、前記第1ループの内周に配置されていること、前記U相第1スロットから出た前記平角導線が、2スロット分の領域を用いて、レーンチェンジされていること、を特徴とする。
(3)(1)に記載するステータにおいて、前記第1ループのコイルエンド部に第1凸部が形成され、前記第2ループのコイルエンド部に、前記第1凸部の内周に配置される第2凸部が形成されていること、を特徴とする。
(4)(1)または(3)に記載するステータにおいて、前記第1ループの一端が、前記第2ループの一端と接続していること、を特徴とする。
また、前記目的を達成するために、本発明の一態様によるステータ製造方法は以下のような特徴を有する。
(5)ティースと、ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、ステータ内に配置される平角導線とを有するステータのステータ製造方法において、前記平角導線を、複数重ね合わされて周回させて八角形状コイルとする第1工程と、前記八角形状コイルのコイルエンド部に一対の凸部を形成する第2工程と、前記凸部が形成されたコイルを円弧状に成形する第3工程と、前記一対の凸部にレーンチェンジ部を形成する第4工程と、を有することを特徴とする。
(6)(5)に記載のステータ製造方法において、前記第2工程は、固定された前記八角形状コイルの周囲4方向より、押圧機構によって前記八角形状コイルの外面を押圧し、前記一対の凸部を形成するものであることを特徴とする。
(7)(5)又は(6)に記載のステータ製造方法において、前記第3工程は、前記凸部が形成されたコイルを固定し、前記凸部が形成されたコイルの軸方向より曲面を有する金型を押し付けることで、前記凸部が形成されたコイルを円弧状に形成するものであることを特徴とする。
(8)(5)乃至(7)のいずれか1つに記載のステータ製造方法において、前記第4工程は、前記円弧状に形成されたコイルの前記一対の凸部を、右側保持金型と左側保持金型で保持し、前記右側保持金型に対して前記左側保持金型をずらすことで、前記レーンチェンジ部を前記一対の凸部に形成するものであることを特徴とする。
また、前記目的を達成するために、本発明の一態様によるステータ製造装置は以下のような特徴を有する。
(9)ティースと、ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、ステータ内に配置される平角導線とを有するステータを製造するステータ製造装置において、前記平角導線が複数重ね合わされて周回され形成された八角形状コイルを固定するコイル固定部と、固定された前記八角形状コイルの周囲4方向より、前記八角形状コイルの外面を押圧する押圧機構と、を備え、前記八角形状コイルに一対の凸部を形成することを特徴とする。
(10)(9)に記載のステータ製造装置において、前記凸部が形成されたコイルの両端を固定する固定機構と、前記凸部が形成されたコイルの軸方向より押し付ける曲面を有する金型と、を有し、前記凸部が形成されたコイルを円弧状に形成することを特徴とする。
(11)(10)に記載のステータ製造装置において、前記円弧状に形成されたコイルの前記一対の凸部を保持する右側保持金型と左側保持金型と、前記右側保持金型に対して前記左側保持金型をずらす駆動機構と、を備え、前記円弧状に形成されたコイルに前記レーンチェンジ部を前記一対の凸部に形成することを特徴とする。
このような特徴を有する本発明の一態様によるステータにより、以下のような作用、効果が得られる。
上記(1)に記載される態様は、ティースと、該ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、平角導線を用いて形成されスロット内に配置されるコイルと、を有するステータにおいて、スロットは、U相第1スロット、U相第2スロット、V相第1スロット、V相第2スロット、W相第1スロット、W相第2スロットを第1組とする3相スロットブロックが、順次形成されており、第1組の隣に第2組の3相スロットブロックが形成され、第1組のU相第1スロット内の平角導線が、第2組のU相第2スロット内の平角導線と第1ループを形成していること、第1組のU相第2スロット内の平角導線が、第2組のU相第1スロット内の平角導線と第2ループを形成していること、第2ループが、第1ループの内周に配置されるというものである。
平角導線を第1ループと第2ループを有する2重コイルとすることで、レーンチェンジ部分の余裕を多くとることが可能となる。
平角導体でループを形成したコイルをステータコアに挿入する場合、特許文献1及び特許文献2に示されているように、平角導体をステータコアの端面に平面的に並べることになる。この場合、ステータコアの端面は面積が限られる為、コイルのターン数を多くする為に平角導体の数を増やすことは難しい。そして、コイルを分布巻きとして構成する場合、同心巻きのコイル同士が干渉する為、コイルエンド部にレーンチェンジ部分を必要とする。このレーンチェンジ部で、コイルの幅は問題となりやすい。
そこで、本発明の構成のように第1ループの内周側に第2ループを形成する2重コイルの構造とすることで、ステータコアの端面を立体的に利用することができる。この結果、コイルのターン数を増やすことが可能で、ターン数が増えた場合にもレーンチェンジ部において隣り合うコイル同士の干渉を防ぐことが可能となる。
コイルの第1ループと第2ループを重ねて2重のコイルを形成しているため、コイルエンドの厚みをそれ程増やすことなく、スロットの深いステータコアを採用することが可能となる。その結果、ステータの占積率の向上と小型化の要求を満足することが可能となる。
また、上記(2)に記載される発明の構成は、(1)に記載するステータにおいて、U相第1スロットから出た平角導線が、2スロット分の領域を用いて、レーンチェンジされるというものである。
レーンチェンジは、コイルに同心巻きを採用し、分布巻きステータを構成する以上、必須となる。これは、前述通り同心巻きコイルを複数のスロットを跨いで挿入する為、隣り合うコイル同士で干渉する部分ができ、それを回避する必要がある為である。
具体的に言えば、スロット内に挿入される平角導体をスロット内導線部と定義すると、一方のスロット内導線部が第1組のU相第1スロットに挿入されるU相のコイルの第1ループは、他方のスロット内導線部が第2組のU相第2スロットに挿入される。そして、その隣に来るのは、一方のスロット内導線部が第1組のV相第1スロットに挿入され、他方のスロット内導線部が第2組のV相第2スロットに挿入されたV相のコイルの第1ループである。
前述したV相のコイルの第1ループは、第1組のU相第1スロットに挿入される部分において、前述したU相のコイルの第1ループの下側に、第2組のU相第2スロットに挿入される部分において、前述したU相コイルの第1ループの上側に来る必要がある。更に細かく言えば、第1ループと第2ループは2重構造となっているので、一方は、上から順に、U相第1ループ、U相第2ループ、V相第1ループ、V相第2ループとなり、他方は上から順にV相第1ループ、V相第2ループ、U相第1ループ、U相第2ループとなる。
このように必要となるレーンチェンジ部分は、ステータコアの端面に平面的に平角導体が配置されると1スロット分しか使用できない。しかし、本発明では2重コイルとしていることで、このレーンチェンジ部分が2倍の2スロット分使用することが可能であり、曲げ半径の関係で極力広い幅を用意することが好ましい。
ここでいう「2スロット分の領域」とは、スロットとティースを1スロット分としてスロット2つとティース2つ分の幅のことを指している。
これは、占積率を上げる為には平角導体の断面積を大きくすることが有効であるためで、断面積が大きくなれば相対的に曲げ半径も大きくなるからである。このため、本発明によって占積率の高いステータを構成することが可能となる。
また、上記(3)に記載される発明の構成は、(1)又は(2)に記載するステータにおいて、第1ループのコイルエンド部に第1凸部が形成され、第2ループのコイルエンド部に、第1凸部の内周に配置される第2凸部が形成されるというものである。
このような第1凸部及び第2凸部をコイルに設けることで、設計自由度が高くなるというメリットが得られる。これは、コイルに用いられる平角導体の扁平率が高い方がより有利になる。
まず、第1凸部及び第2凸部を設けたことで、隣り合うコイル同士のレーンチェンジがし易くなる。
例えばコイルを六角形に巻回して構成する場合、コイルエンドには2辺が二等辺三角形を作る形で突出する。この場合、二等辺三角形部分をコイル同士ですれ違うように配置すると、平角導体の厚みの関係でコイル間の距離を必要として、レーンチェンジに幅を必要とする結果となる。しかし、コイルに第1凸部及び第2凸部を設けることで、隣り合うコイル同士の干渉をかわし易くなる。
また、ステータの構成上、第1ループや第2ループを形成する場合にはエッジワイズ曲げ加工する必要があるが、第1凸部及び第2凸部を設ける場合には、エッジワイズ曲げ方向ではなく厚みの薄い方向に曲げることになるので、曲げ半径が小さく、比較的容易に曲げることができる。
この結果、ステータの設計自由度が高くなり、コイルエンドをそれ程伸ばさずにコイルの端子部分を第1ループ及び第2ループの下をくぐらせて外側に持ってくる等、バスバとの接合のし易さを確保することに貢献することができる。
設計自由度を高くできることは、ステータを製作する工程を簡素化する助けとなり、メリットが高い。
また、上記(4)に記載される発明の構成は、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載するステータにおいて、第1ループの一端が、第2ループの一端と接続しているというものである。
コイルの第1ループと第2ループを接続することで、ステータコアにコイルを配設した後にバスバを接続する必要がなくなる。つまり、第1ループと第2ループの単体同士を、事前に接続することが可能となり、バスバの数の削減及びバスバ接続時の作業スペースの向上を図ることが可能となる。
コイルエンドでのバスバ接続は、コイルを電気的に接続する上で必要となる。しかしながら、コイル同士が近接していると接合作業に支障が出る可能性があり、場合によっては片方のコイルの端子部を除けてバスバと接続する必要が出ることも考えられ、好ましくない。
しかし、事前に第1ループと第2ループを接続したコイルを、ステータコアに配設する方法を用いることで、コイルエンドでのバスバとの接続箇所を減らすことができ、作業効率の向上に繋がる。
また、このような特徴を有する本発明の一態様によるステータ製造方法により、以下のような作用、効果が得られる。
上記(5)に記載の発明の態様は、ティースと、ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、ステータ内に配置される平角導線とを有するステータのステータ製造方法において、平角導線を、複数重ね合わされて周回させて八角形状コイルとする第1工程と、八角形状コイルのコイルエンド部に一対の凸部を形成する第2工程と、凸部が形成されたコイルを円弧状に成形する第3工程と、一対の凸部にレーンチェンジ部を形成する第4工程と、を有するものである。
このような構成を採ることで、凸部を有する2重コイルを形成することが可能となり、この2重コイルをステータコアに配設することで占積率が高く、コイルエンドの短いステータを形成可能となる。
つまり、ステータの高出力化、小型化に貢献することが可能となる。
また、上記(6)に記載される発明の態様は、(5)に記載のステータ製造方法において、第2工程は、固定された八角形状コイルの周囲4方向より、押圧機構によって八角形状コイルの外面を押圧し、一対の凸部を形成するものである。
八角形状コイルは、銅やアルミニウムなど熱伝導性の良い金属で形成されるケースが多く、これらの金属は加工が容易である。したがって、八角形状コイルを形成した後、ベースに固定し、押圧機構で凸部となる部分の両脇を押圧することで、一対の凸部を形成することが可能となる。
また、上記(7)に記載される発明の態様は、(5)又は(6)に記載のステータ製造方法において、第3工程は、凸部が形成されたコイルを固定し、凸部が形成されたコイルの軸方向より曲面を有する金型を押し付けることで、凸部が形成されたコイルを円弧状に形成するものである。
曲面を有する金型を押し付け、凸部が形成されたコイルを変形させることで、同じ形状の円弧状に形成されたコイルを得ることが可能である。コイルは同一形状のものを重ねてコイル籠を形成していく関係上、重なる部分は精度良く同じ形状であることが望ましい。金型を用いることで、このようなコイルを実現することが可能となる。
また、上記(8)に記載される発明の態様は、(5)乃至(7)のいずれか1つに記載のステータ製造方法において、第4工程は、円弧状に形成されたコイルの一対の凸部を、右側保持金型と左側保持金型で保持し、右側保持金型に対して左側保持金型をずらすことで、レーンチェンジ部を一対の凸部に形成するものである。
レーンチェンジ部の形成に関しても、右側保持金型と左側保持金型をずらすように力を加えることで、一対の凸部にレーンチェンジ部を形成することが可能となる。コイルは重ねてコイル籠を形成する関係上、レーンチェンジ部の精度よりもより重なる部分の精度が高い方がメリットは高い。右側保持金型と左側保持金型とでコイルを保持することでコイル籠を形成する際に重なる部分の精度を高くすることができる。
また、このような特徴を有する本発明の一態様によるステータ製造装置により、以下のような作用、効果が得られる。
上記(9)に記載される発明の態様は、ティースと、ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、ステータ内に配置される平角導線とを有するステータを製造するステータ製造装置において、平角導線が複数重ね合わされて周回され形成された八角形状コイルを固定するコイル固定部と、固定された八角形状コイルの周囲4方向より、八角形状コイルの外面を押圧する押圧機構と、を備え、八角形状コイルに一対の凸部を形成するものである。
コイル固定部と八角形状コイルの外面を押圧する押圧機構を備えているので、前述(5)及び(6)に記載のステータ製造方法における第2工程を実現し、八角形状コイルの外形を変形することが可能となる。
前述(3)に記載のステータを形成する為には、第1ループのコイルエンド部に第1凸部、第2ループのコイルエンド部に第2凸部が形成されている必要がある。上記構成を備えていることで、このような第1凸部または第2凸部を容易に形成することが可能となる。
また、上記(10)に記載の発明の態様は、(9)に記載のステータ製造装置において、凸部が形成されたコイルの両端を固定する固定機構と、凸部が形成されたコイルの軸方向より押し付ける曲面を有する金型と、を有し、凸部が形成されたコイルを円弧状に形成するものである。
曲面を有する金型を用いることで、凸部が形成されたコイルを円弧状に形成することができ、前述の(7)に記載の第3工程を実現することができる。
また、上記(11)に記載の発明の態様は、(10)に記載のステータ製造装置において、円弧状に形成されたコイルの一対の凸部を保持する右側保持金型と左側保持金型と、右側保持金型に対して左側保持金型をずらす駆動機構と、を備え、円弧状に形成されたコイルにレーンチェンジ部を一対の凸部に形成するものである。
円弧状に形成されたコイルを重ねる為には、隣り合うコイルとの干渉を避ける必要がある。レーンチェンジ部をコイルに形成することで、(5)に記載の発明と同様にコイルエンドの短いステータを形成することが可能となる。また、駆動機構と右側保持金型と左側保持金型を用いて、力を加えることで、円弧状に形成されたコイルのコイルエンド側上下にそれぞれ1カ所ずつ同じ位置にレーンチェンジ部を形成することが可能となる。この構成によって(8)に記載の第4工程の実現を可能としている。
第1実施形態の、ステータの斜視図である。 第1実施形態の、2重コイルの斜視図である。 第1実施形態の、2重コイルの上面視図である。 第1実施形態の、コイル凸部成形治具の上面視図である。 第1実施形態の、コイル凸部成形治具を用いて成形した状態の上面視図である。 第1実施形態の、円弧変形治具の側面図である。 第1実施形態の、円弧変形治具を用いてコイルを成形した状態の側面図である。 第1実施形態の、レーンチェンジ部形成治具に関する側面図である。 第1実施形態の、レーンチェンジ部形成治具によってコイルにレーンチェンジ部を形成した状態の側面図である。 第1実施形態の、2重コイルを重ね合わせた模式斜視図である。 第1実施形態の、コイル籠にピースを挿入している様子を示す斜視図である。 第1実施形態の、コイル籠にピースを挿入した模式図である。 第1実施形態の、ステータコアに形成されたU相コイルの第1ループを示した平面図である。 第1実施形態の、ステータコアに形成されたU相コイルの第2ループを示した平面図である。 第2実施形態の、2重コイルのコイルエンド部分の部分斜視図である。 第2実施形態の、ステータの部分斜視図である。 第3実施形態の、2重コイルのコイルエンド部分を内周側から見た部分斜視図である。 第3実施形態の、2重コイルのコイルエンド部分を外周側から見た部分斜視図である。
まず、本発明の第1の実施形態について説明をする。
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態のステータの斜視図を示す。
図2に、2重コイルの斜視図を示す。
図3に、2重コイルの上面視図を示す。図2の上面からの2重コイルを示している。
ステータ100は、2重コイル30と、分割式ステータコアSCと、アウターリング50及び端子台55を有している。なお、図1の2重コイル30はバスバBBが接続され、コイルエンド部分が倒された状態である。
2重コイル30は、図2に示すように第1ループコイル10と、第2ループコイル20とからなる。第1ループコイル10及び第2ループコイル20は、平角導体Dを巻回して形成されている。
平角導体Dは、矩形断面を有する金属線の周囲に絶縁性の樹脂を塗工したものである。金属線には銅などの導電性の高い金属が用いられており、絶縁性の樹脂にはエナメルやPPSなど絶縁性の高い樹脂が用いられている。
第1ループコイル10には、第1端子部TR11a及び第2端子部TR11bが備えられている。また、リード側凸部PR11及び反リード側凸部PF11が形成されている。リード側凸部PR11の両側にはリード側右凹部DRR11及びリード側左凹部DLR11が形成され、反リード側凸部PF11の両側には反リード側右凹部DRF11及び反リード側左凹部DLF11が形成されている。また、リード側凸部PR11には、リード側レーンチェンジ部LCR11が、反リード側凸部PF11には反リード側レーンチェンジ部LCF11が形成されている。
また、分割式ステータコアSCが備えるスロットSCSに挿入される部分となる、第1スロット内導線部SS11a及び第2スロット内導線部SS11bも備えている。
第2ループコイル20も第1ループコイル10と同様にして、第1端子部TR12a、第2端子部TR12bが備えられており。また、リード側凸部PR12及び反リード側凸部PF12が形成されている。リード側凸部PR12の両側にはリード側右凹部DRR12及びリード側左凹部DLR12が形成され、反リード側凸部PF12の両側には反リード側右凹部DRF12及び反リード側左凹部DLF12が形成されている。また、リード側凸部PR12にはリード側レーンチェンジ部LCR12が、反リード側凸部PF12には反リード側レーンチェンジ部LCF12が形成されている。
また、第1スロット内導線部SS12a、第2スロット内導線部SS12bも形成されている。
このような第1ループコイル10の内周側に第2ループコイル20が配置されるように重ねられることで、2重コイル30を構成している。
分割式ステータコアSCは、電磁鋼板を積層して形成されており、24個のピース41を円筒状に配置した状態で、アウターリング50を嵌め込むことで2重コイル30を保持することができる。
分割式ステータコアSCは、内周にスロットSCS及びティース43を交互に備えており、ピース41はティース43を2つ分有するように、スロットSCSの底部で分割された形状となっている。
アウターリング50は円筒状の金属体で、内周と分割式ステータコアSCの外周とが嵌合するような寸法で形成されている。アウターリング50を分割式ステータコアSCの外周に配設する際には、焼きバメを用いるので、アウターリング50の内周は分割式ステータコアSCの外周よりも若干径が小さく設定されている。
端子台55は、ステータ100に備えられる2重コイル30が電気的に結合された後に、最終的に二次電池などの電源から電力を供給する等の目的で接続される、図示しない外部コネクタとの接続口である。第1実施形態では3相のステータとしているので、接続口は3カ所備えられている。
次に、第1実施形態のコイルの形成方法について説明する。
図4に、コイル凸部成形治具の上面視図を示す。
図5に、コイル凸部成形治具を用いて成形した状態の上面視図を示す。
まず、平角導体Dをエッジワイズ曲げ加工して巻回することで、八角形の素体コイルC1を形成する。
そして、素体コイルC1をコイル凸部成形治具J1の中心保持具J11に挿入する。コイル凸部成形治具J1はコイル固定部に該当する。中心保持具J11と凸部ガイドJ12は組み合わせて配置されており、図4に示すように、素体コイルC1は中心保持具J11及び凸部ガイドJ12の周囲を取り囲むように配置される。
コイル凸部成形治具J1には、素体コイルC1に第1ループコイル10のリード側右凹部DRR11乃至反リード側左凹部DLF11、又は第2ループコイル20のリード側右凹部DRR12乃至反リード側右凹部DLF12を形成させる為の、押圧機構に該当する押圧治具J13が備えられている。
この押圧治具J13を、素体コイルC1が中心保持具J11及び凸部ガイドJ12に配置されている状況で、ロッドJ14を前進させることで、図5に示すように、凹部を形成する。この結果、素体コイルC1に第1ループコイル10のリード側凸部PR11及び反リード側凸部PF11、又は第2ループコイル20のリード側凸部PR12及び反リード側凸部PF12が形成された凸部保有コイルC2が出来上がる。
なお、実際には第1ループコイル10に用いる素体コイルC1と第2ループコイル20に用いる素体コイルC1は周長が異なるが、ここでは便宜上、同じものとして扱っている。
実際には、コイル凸部成形治具J1の中心保持具J11及び凸部ガイドJ12の形状が、第1ループコイル10に用いる素体コイルC1と第2ループコイル20に用いる素体コイルC1では異なるので、それぞれ別の素体コイルC1に合わせた治具を用意するか、可変ガイド機構が必要となる。
次に、素体コイルC1に凸部を成形した凸部保有コイルC2を、円弧状に変形させる工程が必要となる。
図6に、円弧変形治具の側面図を示す。
図7に、円弧変形治具を用いてコイルを成形した状態を示す。
円弧変形治具J2は、固定側金型J21と可動側金型J22とシャフトJ23とからなる。
固定側金型J21は、ステータ100に配置される際に必要な曲率を第1ループコイル10及び第2ループコイル20に形成するのに必要な曲面を有している。
可動側金型J22も同様の曲面を有しており、シャフトJ23に沿って固定側金型J21方向に可動可能に構成されている。
可動側金型J22は4つの部品を備えており、凸部保有コイルC2を押さえる固定機構に該当する中央把持部材J22cと、凸部保有コイルC2を変形させる第1曲面形成金型J22aと第2曲面形成金型J22bと、金型ベースJ22dよりなる。
第1曲面形成金型J22a及び第2曲面形成金型J22bは、固定側金型J21の曲面とほぼ同じ曲率(厳密には、固定側金型J21+曲面保有コイルC3の厚さ分が第2曲面形成金型J22bの曲率となる)を有しており、凸部保有コイルC2の曲げ加工を行うことが可能である。
凸部保有コイルC2を円弧変形治具J2に挿入した状態で、中央把持部材J22cによって凸部保有コイルC2を把持し、金型ベースJ22dに固定された、第1曲面形成金型J22aと第2曲面形成金型J22bが、金型ベースJ22dごと固定側金型J21に向かって推力を与えられることで、凸部保有コイルC2の加工を行う。
その結果、図7に示すように凸部保有コイルC2を変形して曲面保有コイルC3に加工することが可能となる。
次に、曲面保有コイルC3に、第1ループコイル10のリード側レーンチェンジ部LCR11及び反リード側レーンチェンジ部LCF11、第2ループコイル20のリード側レーンチェンジ部LCR12及び反リード側レーンチェンジ部LCF12を形成する工程について説明する。
図8に、レーンチェンジ部形成治具に関する側面図を示す。
図9に、レーンチェンジ部形成治具によってコイルにレーンチェンジ部を形成した様子を示した側面図を示す。
レーンチェンジ部形成治具J3は、固定側ベースJ31、固定側チャックJ32、可動側チャックJ33及び可動側ベースJ34を備えている。
固定側ベースJ31は、ベースJ35の上に配置され、固定側ベースJ31に近接する方向に移動可能な固定側チャックJ32と、固定側ベースJ31とで曲面保有コイルC3の一端を保持する。
可動側チャックJ33及び可動側ベースJ34は、スライドベースJ38にシャフトJ36に貫通されて保持されており、スライドガイドJ37に固定されるスライドベースJ38は、固定側ベースJ31に対して図8の左右方向に移動可能な駆動機構を有する構成となっている。また、可動側チャックJ33及び可動側ベースJ34はスライドベースJ38に対して図8の上下方向に移動可能に駆動機構が備えられている。
また、可動側チャックJ33と可動側ベースJ34は、曲面保有コイルC3の他端を保持可能な構成となっている。
曲面保有コイルC3は、図8に示されるような状態でレーンチェンジ部形成治具J3に保持され、スライドベースJ38を前進させると同時に、可動側チャックJ33と曲面保有コイルC3の他端を把持した可動側ベースJ34とを下降させることで、図9に示されるような形状に成形してレーンチェンジ部保有コイルC4となる。
レーンチェンジ部保有コイルC4は、図2に示される第1ループコイル10又は第2ループコイル20であり、分割式ステータコアSCに組み込みが可能な状態である。
このように形成された第1ループコイル10及び第2ループコイル20は、重ねられて2重コイル30を形成する。
2重コイル30は、図3に示すように3つの部分に分類することができる。内周配置部31、外周配置部32、及び突出レーンチェンジ部33である。突出レーンチェンジ部33は第1ループコイル10ではリード側凸部PR11のリード側レーンチェンジ部LCR11、又は反リード側凸部PF11の反リード側レーンチェンジ部LCF11にあたり、第2ループコイル20ではリード側凸部PR12のリード側レーンチェンジ部LCR12又は反リード側凸部PF12の反リード側レーンチェンジ部LCF12にあたる部分の総称であるものとする。
この2重コイル30を籠状に重ねてコイル籠CBを形成した後、分割式ステータコアSCを挿入していく。
図10に、2重コイルを重ね合わせた模式斜視図を示す。なお、第1端子部TR11a及び第2端子部TR11b、第1端子部TR12a及び第2端子部TR12bは、説明の都合上省略している。
2重コイル30Aと2重コイル30Bは、同じ形状の2重コイル30であり、図10では突出レーンチェンジ部33が隣り合うように配置される。したがって、2重コイル30Aの突出レーンチェンジ部33の下に、2重コイル30Bの内周配置部31が配置される。
一方、2重コイル30Aの内周配置部31は、2重コイル30Bの突出レーンチェンジ部33の下側に配置される。
なお、2重コイル30A及び2重コイル30Bの奥に描かれているのは、位置決め治具J5である。位置決め治具J5によって、2重コイル30の位置決めを行う。
図11に、コイル籠にピースを挿入している様子を示す斜視図を示す。図10と同じく、第1端子部TR11a及び第2端子部TR11b、第1端子部TR12a及び第2端子部TR12bは説明の都合上省略している。
図12に、コイル籠にピースを挿入した模式図を示す。図12に示すピースは説明の為に一番上の面だけを示している。
コイル籠CBは、2重コイル30を図10に示すように次々と積層されて形成されたものである。コイル籠CBには24組の2重コイル30が重ねられており、その外部からピース41が差し込まれて、円筒状の分割式ステータコアSCが形成される。
そして、最終的には、図1に示すように、アウターリング50を分割式ステータコアSCの外周部分に焼きバメすることで、ステータ100を形成することが可能となる。
コイル籠CBは、図12に示すように、第1端子部TR11a、第2端子部TR11b、第1端子部TR12a、及び第2端子部TR12bが突出して形成されており、アウターリング50を焼きバメした後、第1端子部TR11a、第2端子部TR11b、第1端子部TR12a及び第2端子部TR12bを外側に曲げ、バスバBBで結合することで、図1に示すような状態となる。
図13に、ステータコアに形成されたU相コイルの第1ループを表した平面図を示す。
図14に、ステータコアに形成されたU相コイルの第2ループを表した平面図を示す。
ステータ100はU相、V相、W相を一組のブロックとすると、8組のブロックからなる。第1ブロックB1は、U相第1スロットU1B1、U相第1スロットU2B1、V相第1スロットV1B1、V相第2スロットV2B1、W相第1スロットW1B1、W相第2スロットW2B1の6つのスロットを有している。
又、第2ブロックB2は、U相第1スロットU1B2、U相第1スロットU2B2、V相第1スロットV1B2、V相第2スロットV2B2、W相第1スロットW1B2、W相第2スロットW2B2の6つのスロットを有している。
そして、2重コイル30の第1ループコイル10は、図13に示す通り、U相第1スロットU1B1に第2スロット内導線部SS11bが挿入され、U相第1スロットU2B2に第1スロット内導線部SS11aが挿入される。
一方、2重コイル30の第2ループコイル20は、図14に示す通り、U相第1スロットU2B1に第2スロット内導線部SS12bが挿入され、U相第1スロットU2B2に第1スロット内導線部SS12aが挿入される。
第1実施形態のステータ100は上記構成であるので、以下に説明するような作用及び効果を示す。
まず、ステータ100の高出力化と小型化とを図ることが可能となる。
第1実施形態のステータ100は、ティース43と、ティース43の間に形成されたスロットSCSとを備える分割式ステータコアSCと、平角導体Dを用いて形成されスロットSCS内に配置される2重コイル30と、を有するステータ100において、スロットSCSは、U相第1スロットU1B1、U相第2スロットU2B1、V相第1スロットV1B1、V相第2スロットV2B1、W相第1スロットW1B1、W相第2スロットW2B1を第1ブロックB1とする3相スロットブロックが、順次形成されており、第1ブロックB1の隣に第2ブロックB2の3相スロットブロックが形成され、第1ブロックB1のU相第1スロットU1B1内の平角導体Dが、第2ブロックB2のU相第2スロットU2B2内の平角導体Dと第1ループコイル10を形成していること、第1ブロックB1のU相第2スロットU2B1内の平角導体Dが、第2ブロックB2のU相第1スロットU1B2内の平角導体Dと第2ループコイル20を形成していること、第2ループコイル20が、第1ループコイル10の内周に配置されるというものである。
したがって、2重コイル30を用いた同心巻きコイルを用いて分布巻きのステータ100を形成するにあたって、突出レーンチェンジ部33に用いることができる幅を確保することが可能となる。
2重コイル30の巻数が多くなる、或いは2重コイル30に用いる平角導体Dの幅が太くなるにつれて、2重コイル30の突出レーンチェンジ部33は形成しにくくなる傾向にある。ステータ100の占積率を高め、出力の向上を図りたい場合には、この点がネックとなるが、2重コイル30を第1ループコイル10と第2ループコイル20を重ねた構成とすることで、突出レーンチェンジ部33に用いる幅を増やすことが可能となる。
その結果、ステータ100の占積率の向上を図ることができ、高出力化に貢献する。
具体的には、突出レーンチェンジ部33を形成する幅は、図13、及び図14等に示すように2スロット分用いている。したがって、2重コイル30の第1ループコイル10及び第2ループコイル20の巻回数を増やすか、平角導体Dの太さを太くすることが可能となる。
平角導体Dの最小曲げ半径や、平角導体Dの周囲に設けた絶縁層の損傷等の問題により、突出レーンチェンジ部33の曲げ部分を鋭角に曲げることは好ましくない。そして、突出レーンチェンジ部33にどの程度の幅を使えるかによって、第1ループコイル10及び第2ループコイル20のターン数、又は平角導体Dの太さが決定されてしまう。
しかし、高出力化を狙うには、平角導体Dの太さやターン数の増加は必須であり、突出レーンチェンジ部33に2スロット分用いることができることはメリットが大きい。
第1実施形態のステータ100は、1重コイルをステータに用いた場合には、最大でも1スロット分しかレーンチェンジ部に用いることができないところを、2重コイル30を用いたことで2スロット分まで突出レーンチェンジ部33の形成に幅を持たせることが可能としている。このことは、ステータ100の高出力化を図ることにも貢献するし、設計自由度を高めることにも貢献する。
また、第1ループコイル10と第2ループコイル20を重ねて2重コイル30とすることで、上述の通り突出レーンチェンジ部33のスペースを確保できる結果、ステータ100の軸方向にコイルエンドを延長する必要がなくなる。すなわち、図1に示すコイルエンドCEの短縮に貢献する。
第1端子部TR11a、第2端子部TR11b、第1端子部TR12a、第2端子部TR12b及びこれらと接続するバスバBBについては、図1に示す通り、溶接などの方法により接合した後に、外周方向に倒してしまうので、コイルエンドCEの延長を最小限に抑えることができる。
このように、ステータ100のコイルエンドCEを必要以上に大きくすることがない為、小型化の要求を満足することが可能となる。
また、第1ループコイル10にリード側凸部PR11、反リード側凸部PF11を設け、第2ループコイル20にリード側凸部PR12、反リード側凸部PF12を設けることで、隣り合うコイルの干渉をかわし易く、コイルエンドCEの長さを抑えることができる。
第1ループコイル10及び第2ループコイル20を六角形とし、コイルエンド部に三角形の部分を持ってくるような構成は、特許文献2等にも用いられているが、コイルエンドを大きくする傾向にある。
これは、隣り合うコイルをかわす為にコイルエンド部に平角導体Dを斜めに立ち上げる必要があるが、この三角形の底辺の接する角が鈍角に形成されないと、隣り合うコイル同士の距離が遠くなってしまう為である。
一方、第1実施形態の第1ループコイル10及び第2ループコイル20の様に、凸部を設けることで、平角導体Dを立体的にかわすことが可能となる。
具体的には、突出レーンチェンジ部33の下に内周配置部31又は外周配置部32が重ねられ、突出レーンチェンジ部33がコイルエンドCEに並ぶように構成される。
その結果、コイルエンドCEを短縮することに貢献することができる。
また、第1実施形態に用いる2重コイル30は、全て同じ形のものを重ねてコイル籠CBを形成しているので、部品の製作コストを下げることが可能であり、組立工程の煩雑化を招かないという点でも優れている。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
(第2実施形態)
第2実施形態のステータ100は、第1実施形態のステータ100とその構成においてほぼ同じである。但し、2重コイル30の形成方法が若干異なるので以下に説明する。
図15は、第2実施形態の2重コイルのコイルエンド部分の部分斜視図である。
図16は、ステータの部分斜視図を示している。
第2実施形態に用いられる2重コイル30は、第1ループコイル10と第2ループコイル20が、図15に示される接続部CRによってバスバBBを用いずに接続されている。
つまり、図2に示す第1実施形態の第1ループコイル10の第1端子部TR11aと第2ループコイル20の第2端子部TR12bとが接合され、図15に示すように接続部CRを形成している。
接続部CRは、リード側凸部PR11の下側をくぐって、リード側凸部PR12の側面を抜け、内周側から外周側に接続されている。図15に示すように、第2ループコイル20の端子部を延長して接続部CRを形成し、ステータ100の外周側で第1ループコイル10と接合する形となる。
したがって、コイルエンドCE側に突出しているのは、2重コイル30一つにつき、第1ループコイル10の第2端子部TR11bと、第2ループコイル20の第1端子部TR12aの2本ということになる。
なお、2重コイル30でコイル籠CBを形成する為には、第1端子部TR11aと第2端子部TR12bとが接合されて接続部CRを形成したものを、48個用意すれば良い。しかし、後述する理由により第2端子部TR11b及び第1端子部TR12aの形状が異なる必要があるので、実際には第2端子部TR11bが長く形成された2重コイル30を24個と第1端子部TR12aが長く形成された2重コイル30を24個用意される。
そして、図16に示されるように第2ブロックB2のU相第1スロットU1B2の外周側から出ている第1端子部TR12aは、第3ブロックB3のU相第1スロットU1B3の外周側から出ている第1端子部TR12aと接続される。これが第1外周接続部CRO1である。すなわち、隣り合う同じ相の2重コイル30と接続されることになる。図16では、U相第1コイル30U1とU相第2コイル30U2とが接続される。
なお、内周側に配置される第2端子部TR11bは図示されないが、同様にして隣に配置される同じ相のコイルの第2端子部TR11bと接続される。図16の場合は、図示されていないU相第8コイル30U8と接続され、第1内周接続部CRI1を形成する。
同様にして、ステータ100の内周側に配置されるV相第1コイル30V1とV相第2コイル30V2の第2端子部TR11bが接合されて第2内周側接続部CRI2を形成し、ステータ100の外周側に配置されるV相第2コイル30V2とV相第3コイル30V3の第1端子部TR12aが接合されて第2外周側接続部CRO2を形成する。このように、ステータ100の内側に配置される第2端子部TR11b同士を接合して内周側接続部CRIを形成し、ステータ100の外側に配置される第1端子部TR12a同士を接合して外周側接続部CROを形成して、ステータ100に備えられた2重コイル30を電気的に接合することで、ステータ100の電気回路を形成する。
このように、2重コイル30の配置される場所によって、第2端子部TR11b及び第1端子部TR12aは単純に立ち上げただけの形状のものと、隣り合う相の第2端子部TR11b及び第1端子部TR12aまで伸ばした形状のものとが必要とされる。このため、2重コイル30は2パターン用意されることになる。
もっとも、この隣り合う相の第2端子部TR11b同士の接続、及び第1端子部TR12a同士の接続については、バスバBBを用いて接合されるように設計されることを妨げない。
上述した構成の第2実施形態のステータ100では、第1ループコイル10と第2ループコイル20との接合については、ステータ100として2重コイル30を分割式ステータコアSCに組み込んだ後に行う必要がない為、製造し易くなるというメリットが産まれる。
また、コイルエンドCEでの接合作業を減らすことも、作業空間を確保する等のメリットが生じ、歩留まり向上に寄与することができる。
もっとも、第1実施形態と異なり2パターンの2重コイル30を交互に組み合わせていく必要があるため、組立工程は多少煩雑化するが、第2実施形態のステータ100のコイルエンドが第1実施形態のステータ100に比べて短くできるメリットがある。また、図15及び図16の構成であればバスバBBを用いる必要もないため、部品点数の削減を図ることも可能となる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
(第3実施形態)
第3実施形態のステータ100は、第2実施形態のステータ100とその構成においてほぼ同じである。但し、2重コイル30の形状と2重コイル30の接合方法が若干異なるので以下に説明する。
図17は、第3実施形態の2重コイルのコイルエンド部分を内周側から見た部分斜視図を示している。
図18は、2重コイルのコイルエンド部分を外周側から見た部分斜視図を示している。
第3実施形態の2重コイル30は、コイル籠CBが形成され、分割式ステータコアSCのピース41が挿入された状態である。
2重コイル30の基本形状は、第2実施形態の2重コイル30とほぼ同じであり、第1ループコイル10と第2ループコイル20とは結合されている。
ただし、図18に示されるように、U相第1コイル30U1、V相第1コイル30V1、W相第1コイル30W1と、U相第2コイル30U2、V相第2コイル30V2の形状は異なる。
2重コイル30は、図17に示すようにステータ100の内径側に配置される第2端子部TR11bを第2ループコイル20のリード側凸部PR12の下をくぐらせて外周側に引き出している。
そして、2重コイル30をコイル籠CBとして配置し、ステータ100の外周側で、第1外周接続部CRO1乃至第4外周接続部CRO4を形成する。
このように、第3実施形態のステータ100の外周側に外周側接続部CROを形成することで、コイル籠CBを電気的に結合することが可能となる為、コイルエンドの短縮が可能となる。
また、第2実施形態のステータ100とは異なり、内周側接続部CRIを形成する必要がない。このため、ステータ100の内周側に出っ張りが出来ず、図示しないローターへの干渉が無い。
外周側接続部CROは、分割式ステータコアSCの外周部分の所まで張り出しても干渉するものが無い為、平角導体Dの取り回しが若干複雑にはなるものの、設計自由度の向上が図れる。
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
例えば、第1実施形態のコイルエンドCEにおいて、第1端子部TR11a、第2端子部TR11b、第1端子部TR12a、及び第2端子部TR12bをバスバBBに寄らず、第2実施形態や第3実施形態のように接合することを妨げない。
また、第1ループコイル10及び2重コイル30の巻回数及び平角導体Dの太さは、設計の要求により決定される事項であるので、例えば、巻回数の増減や平角導体Dの断面積の増減をすることを妨げない。
また、コイルエンドCEにおける第1端子部TR11a、第2端子部TR11b、第1端子部TR12a、及び第2端子部TR12bの接合パターンは、第1実施形態乃至第3実施形態に説明する以外にも考えられる。2重コイル30を効率的に活用できる方法であれば、他の接合パターンを採用することを妨げない。
10 第1ループコイル
20 第2ループコイル
30 2重コイル
30A 2重コイル
30B 2重コイル
31 内周配置部
32 外周配置部
33 レーンチェンジ部
41 ピース
43 ティース
50 アウターリング
55 端子台
100 ステータ
B1 第1ブロック
B2 第2ブロック
BB バスバ
C1 素体コイル
C2 凸部保有コイル
C3 曲面保有コイル
C4 レーンチェンジ部保有コイル
CB コイル籠
CE コイルエンド
CR 接続部
D 平角導体
LCF11 反リード側レーンチェンジ部
LCF12 反リード側レーンチェンジ部
LCR11 リード側レーンチェンジ部
LCR12 リード側レーンチェンジ部
PF11 反リード側凸部
PF12 反リード側凸部
PR11 リード側凸部
PR12 リード側凸部

Claims (10)

  1. ティースと、該ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、平角導線を用いて形成され前記スロット内に配置されるコイルと、を有するステータにおいて、
    前記スロットは、U相第1スロット、U相第2スロット、V相第1スロット、V相第2スロット、W相第1スロット、W相第2スロットを第1組とする3相スロットブロックが、順次形成されており、前記第1組の隣に第2組の前記3相スロットブロックが形成され、
    前記第1組のU相第1スロット内の前記平角導線が、前記第2組のU相第2スロット内の前記平角導線と第1ループを形成していること、
    前記第1組のU相第2スロット内の前記平角導線が、前記第2組のU相第1スロット内の前記平角導線と第2ループを形成していること、
    前記第2ループが、前記第1ループの内周に配置されていること、
    前記U相第1スロットから出た前記平角導線が、2スロット分の領域を用いて、レーンチェンジされていること、
    を特徴とするステータ。
  2. 請求項1に記載するステータにおいて、
    前記第1ループのコイルエンド部に第1凸部が形成され、
    前記第2ループのコイルエンド部に、前記第1凸部の内周に配置される第2凸部が形成されていること、
    を特徴とするステータ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載するステータにおいて、
    前記第1ループの一端が、前記第2ループの一端と接続していること、
    を特徴とするステータ。
  4. ティースと、ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、ステータ内に配置される平角導線とを有するステータのステータ製造方法において、
    前記平角導線を、複数重ね合わされて周回させて八角形状コイルとする第1工程と、
    前記八角形状コイルのコイルエンド部に一対の凸部を形成する第2工程と、
    前記凸部が形成されたコイルを円弧状に成形する第3工程と、
    前記一対の凸部にレーンチェンジ部を形成する第4工程と、
    を有することを特徴とするステータ製造方法。
  5. 請求項4に記載のステータ製造方法において、
    前記第2工程は、固定された前記八角形状コイルの周囲4方向より、押圧機構によって前記八角形状コイルの外面を押圧し、前記一対の凸部を形成するものであることを特徴とするステータ製造方法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載のステータ製造方法において、
    前記第3工程は、前記凸部が形成されたコイルを固定し、前記凸部が形成されたコイルの軸方向より曲面を有する金型を押し付けることで、前記凸部が形成されたコイルを円弧状に形成するものであることを特徴とするステータ製造方法。
  7. 請求項4乃至請求項6のいずれか1つに記載のステータ製造方法において、
    前記第4工程は、前記円弧状に形成されたコイルの前記一対の凸部を、右側保持金型と左側保持金型で保持し、前記右側保持金型に対して前記左側保持金型をずらすことで、前記レーンチェンジ部を前記一対の凸部に形成するものであることを特徴とするステータ製造方法。
  8. ティースと、ティースの間に形成されたスロットとを備えるステータコアと、ステータ内に配置される平角導線とを有するステータを製造するステータ製造装置において、
    前記平角導線が複数重ね合わされて周回され形成された八角形状コイルを固定するコイル固定部と、
    固定された前記八角形状コイルの周囲4方向より、前記八角形状コイルの外面を押圧する押圧機構と、を備え、前記八角形状コイルに一対の凸部を形成することを特徴とするステータ製造装置。
  9. 請求項8に記載のステータ製造装置において、
    前記凸部が形成されたコイルの両端を固定する固定機構と、
    前記凸部が形成されたコイルの軸方向より押し付ける曲面を有する金型と、を有し、
    前記凸部が形成されたコイルを円弧状に形成することを特徴とするステータ製造装置。
  10. 請求項9に記載のステータ製造装置において、
    前記円弧状に形成されたコイルの前記一対の凸部を保持する右側保持金型と左側保持金型と、
    前記右側保持金型に対して前記左側保持金型をずらす駆動機構と、を備え、
    前記円弧状に形成されたコイルに前記レーンチェンジ部を前記一対の凸部に形成することを特徴とするステータ製造装置。
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