まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1に、本実施形態の固定子100の斜視図を示す。図2に、コイル籠120の斜視図を示す。図3に、コイル籠120に分割コア111を挿入する様子の斜視図を示す。図4に、外筒130を分割コア111の外周に嵌める様子の斜視図を示す。図5に、外部端子140を設けた固定子の斜視図を示す。固定子100は分割コア111とコイル籠120と外筒130よりなり、車載用のモータなどに用いられる。分割コア111は、凸部を有した略扇形状であり、プレス加工によって打ち抜き成形された複数の電磁鋼板を重ねて形成されている。分割コア111には、図3に示すように固定子100の内周側に突出するティース111aを2つ、ティース111aの間にスロット111bを1つ備えている。分割コア111は24個用意されて円筒状に配置されて固定子コア110を形成し、固定子100に用いられる。
コイル籠120は同芯巻きコイルを、48個円筒状に重ねて形成したものであり、外周面に向けて開口する放射状に配置されたティース挿入孔121を48カ所有している。同芯巻きコイルは矩形断面を有する平角導体をエッジワイズ曲げして形成されたものである。図2に示すように、スロット内導線部122は軸芯から放射線上に整列される平角導体Dのことを示し、隣り合うスロット内導線部122の間にはティース挿入孔121が設けられている。スロット内導線部122は固定子100の状態で分割コア111のスロット111bの内部に配置され、スロット111bには10本のスロット内導線部122が配置されるように構成されている。
また、コイル籠120には、図3に示すように、このティース挿入孔121にティース111aを挿入することで、分割コア111を円筒状に配置する。ティース111aをティース挿入孔121に挿入する際には後述するインシュレータ125をティース挿入孔121に挿入して保持している。インシュレータ125はスロット内導線部122と分割コア111との絶縁を確保する為に用意される樹脂又は紙製の絶縁体である。そして、図4に示すように外筒130を分割コア111の外周に嵌め込むことで、固定子100を形成する。
外筒130は、円環状の金属部品であり、周囲にリブを設けた構造になっている。このリブにはボルトを通すための孔が設けられており、トランクアクスルケースに係合したりモータにカバーを設けたりするため等の目的に用いられる。外筒130の内径は分割コア111の外径と締まりバメする寸法に設定されており、外筒130を加熱して焼きバメすることで、分割コア111の外周に配置され分割コア111を保持する事が可能となる。
コイル籠120のコイルエンドのうちリード側は、TIG溶接などを用いて接合される。U相、V相、W相はそれぞれコイルエンドで中性点と外部端子140とに溶接され、最終的には図5に示すような、リード側のコイルエンドに外部端子140が接続された固定子100が形成される。コイルエンドの絶縁処理は、必要に応じて樹脂成形か或いはワニス塗布、或いは電着塗装などによって絶縁被覆がなされ、溶接部分の保護及び絶縁がなされる。
図6に、組立装置10の側面断面図を示す。図7に、組立装置10の部分拡大図を示す。図8に、コイル籠移載用ユニット50の斜視図を示す。図9に、下部クランプユニットに関する平面図を示す。図10に、組立装置10の斜視図を示す。なお、図9のAA断面が図6に示される側面断面に対応する。また、図6乃至図10に示す組立装置10は説明のため構造の分かり易いテスト治具を示しているが、自動化ラインでも同様の原理の装置を用いて組立が可能である。
組立装置10は、図10に示すように分割コア挿入機構20と上部クランプユニット30とを備え、コイル籠120に対し分割コア111を挿入する装置である。図7に示すように分割コア挿入機構20には、円盤状に形成される分割コア搬送ベース21と分割コア111を直接上に載せるコア搬送台に相当するスライダ22、スライダ22に対して所定の圧力を付勢する為の圧縮バネ23とバネガイド24とが備えられ、バネガイド24は分割コア搬送ベース21に固定されている。
また、スライダ22はガイドレール26a、ガイドブロック26bを備えるLMガイド26を用いてコイル籠120に対して径方向にスライドするよう備えられている。したがって、圧縮バネ23の付勢力により、スライダ22がコイル籠120の径方向に向かって移動され、スライダ22を延長する形で備えられるインシュレータ保持部22aの先端がコイル籠120に備えられたインシュレータ125に適切な力で押圧することができる。また、プッシュブロック25はスライダ22に係合するように配置され、分割コア111をコイル籠120の径方向に移動させる機能を有している。このような分割コア挿入機構20は分割コア搬送ベース21に対して3セット配置される。ただし、自動化ラインでは24セット、すなわち、コイル籠120に挿入される分割コア111の数と同数用意される。
そして、スライダ22の有するインシュレータ保持部22aは図9に示すように、先端が2つ割れの形状となっており、それぞれがコイル籠120の有するティース挿入孔121に挿入される様に配置されている。インシュレータ保持部22aの先端には、突起22bが2カ所と、両脇に肩部22cが2カ所、そして中央に中央部22dが設けられている。突起22bがティース挿入孔121に挿入され、肩部22c及び中央部22dでインシュレータ125を押さえる役割を果たす。
上部クランプユニット30は、コイル籠120の上に配置されるユニットであり、図7に示すように保持爪に相当するクランプ爪31と、クランプ爪31を回転可能に支持するクランプポスト36と、クランプ爪31と系合してクランプ爪31を持ち上げる機能を有するクランプロッド35と、クランプロッド35に備えられて下方向に付勢する上部圧縮バネ33と、クランプロッド35が貫通しクランプ爪31と系合するクランプブラケット32と、クランプブラケット32が取り付けられる円盤状のガイドプレート34とを備えている。上部クランプユニット30は、6セット用意され、円形ベース41の上に固定されている。円形ベース41はセンターポスト40に取り付けられている。なお、自動化ラインでは上部クランプユニット30はスロット111bと同じ数である48セット用意されている。
このような組立装置10を用いてコイル籠120に分割コア111が挿入される。コイル籠120は、図9に示すようなコイル籠移載用ユニット50に配置される。コイル籠移載用ユニット50は、移載用プレート51とコイル籠ガイド52とを有しており、図7に示すように、コイル籠ガイド52の外周にコイル籠120が嵌められた上で、外輪53をコイル籠120の外周の上下に嵌めることで、コイル籠120を保持する。外輪53は、外輪53の径が拡縮することでコイル籠120の外周側からコイル籠120が変形しないように保持する機能を有している。
次に、コイル籠120に対して分割コア111を挿入する際の手順や組立装置10の動きについて簡単に説明を行う。
図11に、固定子を形成する際の簡易フローを示す。図12に、インシュレータ挿入工程に関するフローを示す。図13に、分割コア挿入工程に関するフローを示す。固定子100を形成するにあたっては、図11のフローで説明するようにコイル籠形成工程とインシュレータ挿入工程と、分割コア挿入工程と、外筒嵌合工程を経ていく必要がある。このうち、本発明の大きく関係するインシュレータ挿入工程と、分割コア挿入工程とについて、以下に簡単に説明を行う。なお、自動化工程では、それぞれの工程は別のステーションで行われる為に移載が必要となるが、ここではその説明については補足的に言及するに留める。
図14に、上部クランプユニット30によりインシュレータ125を把持する様子を側面断面図として示す。図15に、上部クランプユニット30によりインシュレータ125を把持し直す様子を側面断面図として示す。図16に、分割コア挿入機構20に分割コア111を配置した様子を側面断面図として示す。図17に、分割コア挿入機構20で分割コア111を挿入する様子を側面断面図として示す。なお、図14乃至図17では説明に不要な部分は省略し簡略化して示している。また、図14乃至図17では、図7で示す組立装置10を具体的な動きが分かるように動き毎に示したものである。
S1では、コイル籠形成工程にてコイル籠120を形成する。具体的には、同芯状に巻回されたコイルを組み付ける工程であり、円筒形状のコイル籠120が図8に示すコイル籠移載用ユニット50の上に組み付けられる。コイル組み付け方の詳細については別の出願で詳細に説明しているため省略する。そして、S2に移行する。
S2ではコイル籠120の外周を外輪53で保持する。コイル籠120は単純にコイルを円環状に組み付けただけの状態であるので、コイルを円環状に組み付けてコイル籠120の形状にした後に、図7に示すような外輪53をコイル籠120の外周に配置して、コイル籠120を形成するコイルがバラバラにならないように保持する。そして、S3に移行する。なお、自動化ラインではこの時点で、コイル籠形成ステーションよりインシュレータ挿入ステーションに移載する必要がある。移載するにはコイル籠移載用ユニット50にコイル籠120が保持された状態で、次のステーションに移載される。
S3では、インシュレータ挿入工程にてコイル籠120のティース挿入孔121にインシュレータ125をコイル籠120の外周側から挿入する。そしてS4に移行する。
S4では、インシュレータ125を上部クランプユニット30のクランプ爪31によってクランプすることで、コイル籠120にインシュレータ125を保持する。図14に示すように、インシュレータ125が挿入された後、ガイドプレート34を降下させてクランプロッド35と連動するクランプ爪31を下げ、インシュレータ125をクランプする。クランプ爪31はコイル籠120の有するスロット内導線部122を押さえることが出来る位置に配置されている。クランプロッド35に備えられた上部圧縮バネ33によってクランプ爪31が付勢され、インシュレータ125が適切な力で保持されることになる。そしてS5移行する。なお、自動化ラインではこの時点で、インシュレータ挿入ステーションよりコア組付工程に移載する必要がある。移載するにはコイル籠移載用ユニット50に上部クランプユニット30を固定して、コイル籠移載用ユニット50に保持されるコイル籠120に、インシュレータ125が上部クランプユニット30によって保持された状態で、次のステーションに移載される。
S5では、インシュレータ保持具となる分割コア挿入機構20でインシュレータ125を保持する。これによって、図16に示すようにスライダ22をコイル籠120側に前進させることで、インシュレータ125の下部を押さえる。そしてS6に移行する。
S6では、コイル籠120のティース挿入孔121に分割コア111を挿入する。分割コア111はスライダ22の上に配置されて、コイル籠120に対して前進するように移動され、その後、プッシュブロック25がコイル籠120に前進することで、分割コア111をティース挿入孔121に挿入する。そしてS7に移行する。なお、自動化ラインではこの時点で、コア組付工程より外筒嵌合工程に移載する必要がある。移載するにはコイル籠移載用ユニット50にコイル籠120及び分割コア111が保持された状態で、次のステーションに移載される。
S6では、分割コア111の外周に外筒130を嵌合する。分割コア111の外周に、加熱した外筒130を配置して、冷却することで締まりバメとなり、分割コア111を外筒130で保持する。そして、次工程に移行する。
次に、図10に示すインシュレータ挿入工程について説明する。インシュレータ挿入工程では、インシュレータ挿入ステーションにてコイル籠120に対してインシュレータ125を挿入する作業を行う。
S10では、インシュレータ挿入工程のステーションにコイル籠移載用ユニット50に備えられたコイル籠120を保持させる。コイル籠移載用ユニット50には前工程であるコイル籠形成工程で形成されたコイル籠120が配置されており、外輪53が嵌められてコイル籠120はその形状を保っている。そしてS11に移行する。
S11では、インシュレータ保持具となる上部クランプユニット30をコイル籠120の上部に配置する。上部クランプユニット30はコイル籠移載用ユニット50の上部に取り付けられており、図14に二点鎖線で示すように上部クランプユニット30の有するクランプ爪31は開いた状態にある。そしてS12に移行する。
S12では、インシュレータ125をコイル籠120のティース挿入孔121に挿入する。インシュレータ125の挿入工程に関しては詳細を省略するが、略コの字型のインシュレータ125がコイル籠120の有するスロット内導線部122を覆うように配置される。そしてS13に移行する。
S13では、インシュレータ125の挿入されたコイル籠120を図15に実線で示すようにクランプ爪31で保持する。クランプ爪31はインシュレータ125の中央辺りを押さえ、クランプ爪31はクランプロッド35を介して上部圧縮バネ33によって付勢されている。したがって、クランプ爪31は上部圧縮バネ33によりインシュレータ125を保持する力を発揮する。そして次工程に移動する。自動化工程では、コイル籠移載用ユニット50に上部クランプユニット30を備えてコイル籠120に挿入したインシュレータ125を押さえながら次工程にコイル籠120を移載する。
次に、図11に示す分割コア挿入工程について説明する。分割コア挿入工程では、分割コア挿入ステーションにてコイル籠120に分割コア111を挿入する作業を行う。
S20では、インシュレータ保持治具である上部クランプユニット30で掴み換えを行う。上部クランプユニット30のクランプ爪31は、図14に示すように分割コア挿入工程開始時点でインシュレータ125の中央辺りを押さえている。しかし、このままでは分割コア111の挿入の邪魔になるため、図15に示すようにクランプ爪31でインシュレータ125の上端を押さえる状態となるように、掴み換えを行う。なお、図15では分かり易いようにクランプ爪31を大きく開放しているが、インシュレータ125のズレを考慮してクランプ爪31の開放量を小さくして掴み換えることが望ましい。そして、S21に移行する。
なお、自動化工程ではS20の前に、コイル籠120を保持するステップを必要とする。インシュレータ挿入工程のステーションよりコイル籠移載用ユニット50及び上部クランプユニット30によってコイル籠120にインシュレータ125が保持され搬送されてきたユニットをコア挿入ステーションにセットする。コイル籠移載用ユニット50に上部クランプユニット30を保持させておくことで、コイル籠120に対してインシュレータ125を抑えておくことができ、ステーション間の移動でインシュレータ125がずれることを防止することが可能である。
S21では、分割コア111をスライダ22の上に配置する。分割コア111を分割コア挿入機構20のスライダ22の上部に配置し、分割コア111の挿入準備を行う。分割コア111はコイル籠120の周囲にそれぞれスライダ22上に1個ずつ計3個配置される。そして、S22に移行する。なお、自動化工程では24の分割コア挿入機構20にそれぞれ1個ずつ計24個配置されることになる。
S22では、コア搬送台となるスライダ22を前進させる。スライダ22を前進させることで、コイル籠120の外周面にスライダ22の有するインシュレータ保持部22aを近接させることになる。また、スライダ22には分割コア111が載せられているため、分割コア111もスライダ22の前進と共にコイル籠120に近接することになる。そしてS23に移行する。
S23では、インシュレータ保持部22aをコイル籠120のティース挿入孔121に挿入し、インシュレータ125を押さえる。図9に示すようにインシュレータ保持部22aには突起22bが2カ所設けられており、それぞれティース挿入孔121に挿入される。そして、インシュレータ保持部22aの有する肩部22c及び中央部22dによってインシュレータ125の下端を押さえることになる。上部クランプユニット30のクランプ爪31でインシュレータ125の上端部が押さえられているので、インシュレータ125は両端から押さえられていることになる。そして、S24に移行する。
S24では、押圧機構となるプッシュブロック25を前進させ分割コア111を挿入する。プッシュブロック25の先端で分割コア111の外周面を押すことで、図17に示すように分割コア111をティース挿入孔121の内部に前進させる。そして、S25に移行する。
S25では、インシュレータ125の端部を押さえるクランプ爪31を開放する。分割コア111がティース挿入孔121に挿入されたことで、分割コア111によってインシュレータ125が押さえられているため、クランプ爪31を開放する。そして、S26に移行する。
S26では、コア搬送台であるスライダ22を後退させる。スライダ22の後退によってコイル籠120がフリーとなり、次の工程に移載が可能となる。なお、次の工程では外筒130を嵌めるために、上部クランプユニット30や外輪53も外す必要がある。自動化工程では、コイル籠移載用ユニット50から上部クランプユニット30を外し、次のステーションに移載することとなる。
なお、S20でクランプ爪31の位置を変え、S22でコア搬送台であるスライダ22を前進させているが、この手順は逆であっても良い。クランプ爪31はスロット内導線部122を保持する形状であり、一方のスライダ22は、クランプ爪31と直接干渉しない。クランプ爪31と干渉する可能性のあるのはスライダ22の上に載せられる分割コア111であるが、分割コア111にはスロット111bが設けられており、この隙間にクランプ爪31が入るように設計されていることで、干渉を回避することが出来る。したがって、S21の手順であるスライダ22に分割コア111を配置するステップを経て、S22の手順であるスライダ22を前進させてインシュレータ125の下部をインシュレータ保持部22aで押さえ、その後S20の手順であるクランプ爪31の掴み換えを行うと、インシュレータ125のズレはより発生しにくくなる。もっとも分割コア111の配置にあたってクランプ爪31の存在があるため配置し難いという問題は解決する必要がある。
このような段階を経て、コイル籠120に分割コア111を挿入し、外筒130を嵌めた上で、溶接部JVを形成し、図5に示すように外部端子140を溶接することで固定子100が形成される。自動化工程に関しては途中で簡単に説明したが、同様の原理及び手順によって固定子100を形成する。
本実施形態の固定子100の製造方法は上記構成であるために、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
まず、固定子100の製造方法が自動化工程に対応できることで、より効率的に生産が可能となる。本実施形態の固定子100の製造方法は、平角導体Dを巻回して形成したコイルを用いて円筒状のコイル籠120を形成し、コイル籠120に分割コア111を挿入することで、固定子100を製造する固定子製造方法において、コイル籠120の周囲に配置される先端にインシュレータ保持部22aを有するスライダ22が、コイル籠120の外周面に向けて前進し、インシュレータ保持部22aがコイル籠120の有するティース挿入孔121に挿入されたインシュレータ125を押さえ、スライダ22の上に載せられた分割コア111が、コイル籠120の周囲に配置されたプッシュブロック25に押されてティース挿入孔121に挿入し、固定子100が形成される。
また、インシュレータ125はコイル籠120の外周側に設置される分割コア挿入機構20により、ティース挿入孔121に挿入し、インシュレータ125を加圧して保持するクランプ爪31でインシュレータ125の一端を押さえ、スライダ22の有するインシュレータ保持部22aでインシュレータ125の他端を押さえ、分割コア111を、プッシュブロック25によってティース挿入孔121に挿入し、固定子100が形成される。
コイル籠120の有するティース挿入孔121の周方向の幅は、分割コア111のティース111aの周方向の幅に対してインシュレータ125の厚みを考慮して殆ど余裕が出来ないように設計されている。これは、固定子100の占積率を向上させる為に必要であり、分割コア111とコイル籠120との組み付け性を考慮して周方向のティース挿入孔121の幅を広く設定すると、占積率の低下を招く為、極力隙間ができないよう設定される必要がある。
このため、コイル籠120のスロット内導線部122を覆うようにインシュレータ125を配置した後、分割コア111のティース111aを挿入するとズレが発生し易い。しかしながら、インシュレータ保持部22aとクランプ爪31とでインシュレータ125の両端を押さえた状態で、ティース111aを挿入し、クランプ爪31には上部圧縮バネ33によって、インシュレータ保持部22aには圧縮バネ23によって付勢され、この状態で分割コア111をコイル籠120の径方向に前進させるので、分割コア111によってインシュレータ125が引き摺られてズレが発生してしまう、あるいはインシュレータ125を損傷してしまう、といった問題を防ぐことが可能となる。
そして、分割コア挿入機構20は、コイル籠120の外周に24セット、上部クランプユニット30はコイル籠120の外周に48セット配置可能な構成となっている。このため、分割コア挿入機構20及び上部クランプユニット30と同等の構成を自動化工程で用いることが可能である。分割コア挿入機構20及び上部クランプユニット30を用いることでインシュレータ125の破損やズレを防ぐことができ、固定子100の歩留まりを向上させることが可能となる。
また、分割コア挿入機構20を、スライダ22の先端にインシュレータ保持部22aを設ける構成とすることで、スライダ22の上部に配置した分割コア111を移動する際に、分割コア111の重心がインシュレータ保持部22aの先端から外れることが無く、分割コア111の挿入位置の精度を上げることが出来る。
これは、スライダ22がLMガイド26上にコイル籠120の径方向に移動可能に設けられ、スライダ22の先端のインシュレータ保持部22aに突起22bと肩部22c及び中央部22dを有している為である。突起22bは、分割コア111がコイル籠120のティース挿入孔121に挿入される際には、ティース挿入孔121の内部に挿入されている。そして分割コア111が固定子100として所定の位置に配置される際に、分割コア111の先端が重力の影響を受けて下側に垂れないように、分割コア111の重心がスライダ22上に残るように突起22bの長さは決定されている。
また、スライダ22にはスライダ22が圧縮バネ23で付勢されており、図17に示すようにスライダ22が前進することでインシュレータ保持部22aがコイル籠120の外周に当接し、一部がティース挿入孔121の内部に挿入される。そして、スライダ22は圧縮バネ23によって付勢される。インシュレータ保持部22aの先端に関しては、図9に示すように、インシュレータ保持部22aの先端に突起22bと肩部22c及び中央部22dを有しており、スロット内導線部122には肩部22c及び中央部22dが当接する。
したがって、突起22bはティース挿入孔121に挿入され、肩部22c及び中央部22dは、圧縮バネ23に付勢されてコイル籠120の最外周に配置されているスロット内導線部122を押圧する。この結果、インシュレータ保持部22aは、コイル籠120に対して突起22bがティース挿入孔121に突っ込み、肩部22c及び中央部22dがスロット内導線部122に突っ張っている状態となる。この状態で、分割コア111を移動させるので、分割コア111がプッシュブロック25によって押される。このことで、分割コア111はコイル籠120に挿入された際にも、分割コア111の重心がスライダ22上に残っているために、分割コア111の先端が垂れてしまうことが無く、結果的に、分割コア111のティース挿入孔121への挿入精度を向上させることが出来る。
このことは分割コア111のティース111aの挿入位置のブレを少なくすることができ、分割コア111の挿入がスムーズに行える事を意味する。ティース111aの先端は、固定子100をモータに用いる場合にコギングトルクを低減する目的があるために、R面取りやC面取りを施すことは難しい。このため、分割コア111の挿入位置精度を高めることは固定子100の組み立てにおいては必須であり、スライダ22のインシュレータ保持部22aをコイル籠120に当接して付勢しながら分割コア111のティース111aを挿入することで、挿入位置精度を高めることができる。この結果、固定子100の製造における歩留まり向上に貢献することができる。
また、上部クランプユニット30に、掴み換え可能な機構を設けることで、より適切な位置でインシュレータ125を保持する事が可能となる。
コイル籠120を形成するにあたり、コイル籠120の組み付け工程とインシュレータ125の挿入工程、分割コア111の挿入工程はそれぞれステーションを分けた方が、生産効率に優れる場合が想定される。実際に、図10の組立装置10の斜視図には、分割コア挿入機構20が2つ描かれ、分割コア搬送ベース21上に3つ配置されると説明している。しかしながら、分割コア111はコイル籠120の全周から同時に全数挿入されることが望ましい。また、分割コア挿入機構20は図10の分割コア挿入機構20の向かいに配置されることとなるインシュレータ125を挿入する機構や図示しないコイルをコイル籠120として組み付ける機構と干渉する。
このため、出願人の想定する自動化ラインでは、コイル籠形成工程と、インシュレータ挿入工程と、コア組付工程と、外筒嵌合工程はそれぞれ別のステーションを設けて行っている。したがって、ステーションを移動するにあたり、組み付けられたコイル籠120はコイル籠移載用ユニット50の上に固定され、コイル籠移載用ユニット50に固定される上部クランプユニット30によってインシュレータ125が押さえられることで、コイル籠120の移載時にコイル籠120とインシュレータ125とでズレが発生しないようにステーション間を移動することができる。
また、インシュレータ125の中腹辺りを上部クランプユニット30の有するクランプ爪31で押さえた状態でコイル籠移載用ユニット50にコイル籠120を載せてステーション間を移動した後、インシュレータ125の上端部分をクランプ爪31で掴み直すことができる。このため、コア組付工程で分割コア111とクランプ爪31との干渉を避けてインシュレータ125を押さえ続ける事が可能となる。
また、上部クランプユニット30は、ユニット化されてコイル籠移載用ユニット50に固定することが可能な構成となっているので、工程ごとにステーション間を移載するにあたって、インシュレータ125のズレを抑制することが可能である。そして、このような分割コア挿入機構20及び上部クランプユニット30をもちいることで、コンパクトな固定子100の製造ラインが実現できる。このためコストダウンに貢献することができる。
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
例えば、本実施形態で説明するコイル籠120は、同芯コイルを重ねて形成すると説明しているが、コイルをコイル籠120状に配置する形態の固定子100であれば、例えば波巻きコイルなどにも本発明を応用可能である。したがって、そうしたコイル籠120を有する固定子100に本発明を用いることを妨げない。また、本実施形態で示したコイル籠120の接続方法やコイルエンドの形状を変更することを妨げない。また、組立装置10の装置構成は、設計事項の範囲内で変更することを妨げない。