JP6303500B2 - 熱収縮性ポリエステル系フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルム、及び包装体に関するものであり、詳しくは、ラベル用途に好適で、ポリエステルを構成するモノマー成分として非晶性の成分を多量には含まない熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。そのような熱収縮性フィルムの内、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
また、通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、幅方向に大きく収縮させるものが広く利用されている。そのように幅方向が主収縮方向である熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅方向への収縮特性を発現させるために幅方向に高倍率の延伸が施されているが、主収縮方向と直交する長手方向に関しては、低倍率の延伸が施されているだけであることが多く、延伸されていないものもある。そのように、長手方向に低倍率の延伸を施したのみのフィルムや、幅方向のみしか延伸されていないフィルムは、長手方向の機械的強度が劣るという欠点がある。
また、ボトルのラベルは、環状にしてボトルに装着した後に周方向に熱収縮させなければならないため、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムをラベルとして装着する際には、フィルムの幅方向が周方向となるように環状体を形成した上で、その環状体を所定の長さ毎に切断してボトルに装着しなければならない。したがって、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムからなるラベルを高速でボトルに装着するのは困難である。それゆえ、最近では、フィルムロールから直接ボトルの周囲に巻き付けて装着すること(所謂、ラップ・ラウンド)が可能な長手方向に熱収縮するフィルムが求められている。さらに、近年では、お弁当等の合成樹脂製の片開き容器の周囲を帯状のフィルムで覆うことによって容器を閉じた状態で保持するラッピング方法が開発されており、長手方向に収縮するフィルムは、そのような包装用途にも適している。したがって、長手方向に収縮するフィルムは、今後、需要が増大するものと見込まれている。
また、環境面からペットボトルのリサイクル原料を使用するフィルムへの要望が高い。しかし、通常の熱収縮性ポリエステルフィルムは、熱収縮特性を付与するため、非晶質成分を多く含む原料を用いるので、リサイクル原料を混合する比率には限界があり、リサイクル原料を多く含む熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することができていなかった。
例えば、特許文献1は、縦方向が主収縮方向となり、縦・横方向に機械的強度が高い理想的な熱収縮性ポリエステルフィルムである。しかし全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分を10モル%以上含有するものであり、リサイクル原料の添加率には自ずと上限ができてしまう。
また、特許文献2の実施例1には 結晶性のPETの未延伸フィルムをチューブ延伸機で縦方向に2倍、横方向に0.95倍延伸して得られた熱収縮性フィルムが開示されている。この熱収縮性フィルムは、縦方向を主収縮方向とするフィルムであるが、横方向には延伸されておらず、横方向の機械的強度が低い。また特許文献2の比較例2に記されているが、横方向に1.3倍延伸すると横方向の収縮率が高くなり、ボトルのラベル用途に使用される縦方向を主収縮方向とする熱収縮性フィルムとしては望ましくない。即ち、特許文献2に記載された発明から、縦方向を主収縮方向とし、横方向には小さな熱収縮率しか示さず、かつ横方向の機械的強度を高い熱収縮性フィルムを得ることは困難である。
特開2008−179122号公報(請求項1など) 特開平1−127317号公報(実施例1など)
本発明の目的は、上記特許文献1、特許文献2の熱収縮性ポリエステルフィルムが有する問題点を解消し、非晶質成分となりうるモノマー成分を多く含まずとも、長手方向である主収縮方向に十分な熱収縮特性を有し、前記主収縮方向と直交する幅方向においては熱収縮率が低く、機械的強度が高い上、ペットボトルリサイクル原料を多く含ませても製造が可能であり、主収縮方向である長手方向の厚み斑が小さい熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することにある。
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうるモノマー成分が0モル%以上5モル%以下含有しているとともに、主収縮方向が長手方向である熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の温湯熱収縮率が15%以上50%以下であること
(2)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向と直交する幅方向の温湯熱収縮率が0%以上12%以下であること
(3)屈折率が長手方向及び幅方向のいずれも1.570以上であり、かつ主収縮方向と直交する方向である幅方向の屈折率が、主収縮方向である長手方向の屈折率よりも高いこと
2. 主収縮方向と直交する方向である幅方向の引張破壊強さが80MPa以上200MPa以下であることを特徴とする上記第1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
3. 主収縮方向である長手方向の厚み斑が11%以下であることを特徴とする上記第1または第2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
本発明によれば、非晶質成分となりうるモノマー成分を多く含まずとも、長手方向である主収縮方向に十分な熱収縮特性を有し、主収縮方向と直交する幅方向においては熱収縮率が低く、機械的強度も高い上、主収縮方向である長手方向のフィルム厚み斑が小さい熱収縮性ポリエステル系フィルムの提供を可能とした。また、原料に非晶質成分となりうるモノマー成分を多く含ませる必要がないので、ペットボトルリサイクルポリエステルを多量に含ませた環境対応性の高い熱収縮性ポリエステル系フィルムの提供を可能とした。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトル等の容器のラベルとして好適に用いることができ、ボトル等の容器に短時間の内に非常に効率良く装着することが可能となる上、装着後に熱収縮させた場合に、熱収縮によるシワ、飛び上がりや収縮不足のきわめて少ない良好な仕上がりを得ることを可能とした。
直角引裂強度の測定における試験片の形状を示す説明図である(なお、図中における試験片の各部分の長さの単位はmmであり、Rは半径を表す)。
上記第1〜第3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを連続的に製造するための好ましい製造方法としては、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうるモノマー成分が0モル%以上5モル%以下含有されたポリエステル系未延伸フィルムを、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態でTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で幅方向に3.5倍以上6.0倍以下の倍率で延伸した後、速度差がある加熱されたロールを用いてTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で長手方向に1.5倍以上2.5倍以下の倍率で延伸し、しかる後、フィルム両端をクリップで把持した状態で、Tg以上Tg+30℃以下の温度で熱処理をしながら、幅方向に0%以上15%以下の弛緩をすることである。
本発明のフィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものである。ここで主たる構成成分とは、フィルムを構成する全ポリマー構成成分のうち95モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを意味している。エチレンテレフタレートを主たる構成成分として用いることにより、優れた機械的強度と透明性を奏することができる。
エチレンテレフタレートがフィルムを構成するポリマーの全構成成分であってもよく、このようなポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETということがある)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.45から0.70の範囲が好ましい。固有粘度が0.45よりも低いと、耐引き裂き性向上効果が低下し、0.70より大きいと濾圧上昇が大きくなり高精度濾過が困難となり、あまり好ましくない。
また本発明は PETの中でもペットボトルリサイクル原料を用いることができる。(以下、単にリサイクル原料と記すことがある)。リサイクル原料は ペットボトルにする際の成形性を良くするために概ねPETを構成成分とするが、イソフタル酸がモノマー成分として少し含まれていることが一般的である。本発明においては、非晶質成分となりうるモノマー成分を多く含有するポリマー原料を多量に使用するものではないが、リサイクル原料にイソフタル酸が含まれていることがあるため、非晶性モノマーの含有量が0mol%以上5mol%以下の範囲で含まれていると表現している。
非晶質成分となり得るモノマーとしては、代表例はイソフタル酸であるが、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ジエチル1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることもでき、前記含有量の範囲で含まれていても特に差し支えない。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの長手方向の熱収縮率(すなわち、90℃の温湯熱収縮率)が、15%以上50%以下であることが好ましい。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)・・式1
90℃における長手方向の温湯熱収縮率が15%未満であると、ラベルとして使用する場合に、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルにシワやタルミが生じてしまうので好ましくない。一方、90℃における長手方向の温湯熱収縮率は50%を上回っても特に問題は無いが、本発明においては通常50%程度が熱収縮率の上限である。なお、90℃における長手方向の温湯熱収縮率の下限値は20%であると好ましく、25%であるとより好ましく、30%であると特に好ましい。
また、本発明のフィルムを、予め主収縮方向を円周方向とする筒状のラベルを接着、形成した後にボトルに嵌め込む(ボトル等の周囲に熱収縮装着する)場合には、90℃における長手方向の温湯熱収縮率が40%以上であると好ましい。上記の如く予め主収縮方向を円周方向とする筒状のラベルを形成した後にボトルに嵌め込む場合において、90℃における長手方向の温湯熱収縮率が40%未満であると、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルにシワやタルミが生じてしまうことがあり、あまり好ましくない。なお、予め主収縮方向を円周方向とする筒状のラベルを接着、形成した後にボトルに嵌め込む場合には、90℃における長手方向の温湯熱収縮率の下限値は、42%以上であると好ましく、44%以上であるとより好ましく、46%以上であると特に好ましい。もちろん上限は50%である。
また、本発明のフィルムをラップ・ラウンド方式により、フィルムロールから直接ボトルの周囲に巻き付けて装着する場合には、90℃における長手方向の温湯熱収縮率が15%以上40%未満であると好ましい。90℃における長手方向の温湯熱収縮率が15%未満であると、収縮量が小さいために、ラベルとして胴巻き方式で巻き付けた後の熱収縮時にシワやタルミが生じてしまうので好ましくない。以下、上記のような用途をラップ・ラウンド用途と称することがある。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式1により算出したフィルムの幅方向の温湯熱収縮率が、0%以上12%以下であることが好ましい。
90℃における幅方向の温湯熱収縮率が12%を上回ると、ラベルとして用いた場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、90℃における幅方向の温湯熱収縮率の上限値は、11%以下であると好ましく、10%以下であるとより好ましく、9%以下であるとさらに好ましく、8%以下であると特に好ましく、最も好ましくは7%以下である。なお、原料であるポリエステル系樹脂の本質的な特性を考慮すると、90℃における幅方向の温湯熱収縮率の下限値は0%程度であると考えている。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、主収縮方向である長手方向の屈折率は1.57以上であることが好ましい。また、主収縮方向である長手方向の屈折率は1.61以下であることが好ましい。また主収縮方向と直交する幅方向の屈折率は1.57以上であることが好ましく、更に好ましくは1.62以上1.65以下であり、かつ、幅方向の屈折率が長手方向の屈折率より高いことが好ましい。
従来、非晶性の原料を用いた熱収縮フィルムは主収縮方向の分子鎖の配向性が高いと収縮率も高くなるというのが一般的であった。従って非晶性の原料を用いた場合、主収縮方向の延伸倍率を高くして収縮率を高くし、主収縮方向と直交する方向には延伸しない、又は、延伸しても熱処理により収縮率を低下させることが行われてきた。しかし本発明の結晶性PETで製膜された熱収縮フィルムについては、未延伸フィルムを2.5倍程度以下といった比較的低い延伸倍率で延伸して分子鎖を配向させる(低分子配向)と収縮率が高くなるが、より大きな延伸倍率で延伸して分子鎖の配向性をより高くすると熱収縮率が低下するという、非晶性PETと異なる挙動を示すことがわかった。つまり結晶性PETでは、未延伸フィルムをまず幅方向に高倍率延伸することにより分子配向結晶化が進み、熱処理をしなくても幅方向の収縮率を低下させることができることがわかった。
また、従来結晶性PET原料の未延伸フィルムを低分子配向になるような低倍率(2倍程度)で延伸すると厚み斑が非常に悪くなるので、PET原料の未延伸フィルムを2倍前後の倍率で延伸することはほとんど行われてこなかった。しかし 一度幅方向に高倍率で延伸されたフィルムを長手方向に2倍前後の倍率で延伸すると長手方向の厚み斑が良好になることがわかった。これは未延伸フィルムを低倍率で一軸延伸するのと違って、一度幅方向に高倍率で延伸することで、長手方向に2倍前後で延伸する際の延伸応力や、応力―歪曲線が変化したためと考えられる。
従って本発明においては、これまでの非晶性原料を用いた熱収縮フィルムとは異なり、主収縮方向の分子鎖の配向性は低いことが望ましく、主収縮方向と直交する幅方向の分子鎖の配向性は高い方が望ましい。
主収縮方向である長手方向の屈折率が1.57以上であることが好ましい。また、上限は1.61であることが望ましい。屈折率が1.57未満であると長手方向の収縮率が不足しやすく、また長手方向の機械的強度が低くなりやすいのであまり好ましくない。また長手方向の屈折率が1.61より高いと、長手方向の機械的強度は高いが、熱収縮率が低くなりやすいのであまり好ましくない。長手方向の屈折率は 1.575以上1.605以下が好ましく 更に好ましくは、1.58以上1.60以下である。
主収縮方向と直交する幅方向の屈折率は1.57以上であることが好ましく、1.62以上であることがより好ましい。一方、上限は1.65であることが望ましい。屈折率が1.57未満であると収縮率は高くなりやすく、また幅方向の機械的強度が低くなりやすいのであまり好ましくない。また幅方向の屈折率が1.65より高いと 幅方向の機械的強度は高くなり、熱収縮率も低くなり好ましいが、1.65より高くなる延伸倍率は操業性の点で採用しづらく、上限は1.65で構わない。
加えて、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、長手方向の厚み斑が11%以下であることが好ましい。長手方向の厚み斑が11%を超える値であると、ラベル作成の際の印刷時に印刷斑が発生し易くなったり、熱収縮後の収縮斑が発生し易くなったりするのであまり好ましくない。なお、長手方向の厚み斑は10%以下であるとより好ましく、8%以下であると更に好ましく、6%以下であれば特に好ましい。長手方向の厚み斑は0%に近づくほど良いが、下限は2%であって実用上構わない。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、ラベル用熱収縮性フィルムとして5〜100μmが好ましく、10〜95μmがより好ましい。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅方向の引張破壊強さが80MPa以上200MPa以下であることが好ましい。なお、引張破壊強さの測定方法は実施例で説明する。上記引張破壊強さが80MPaを下回ると、ラベルとしてボトル等に装着する際の“腰”(スティフネス)が弱くなるので好ましくなく、反対に、引張破壊強さが200MPaを上回ると、ラベルを引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)が不良となるので好ましくない。なお、引張破壊強さは、100MPa以上がより好ましく、110MPa以上がさらに好ましく、120MPa以上が特に好ましく、190MPa以下がより好ましく、180MPa以下がさらに好ましく、170MPa以下が特に好ましい。
また本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムは 90℃の温湯で10%収縮させた後に、以下の方法で単位厚み当りの幅方向の直角引裂強度を求めたときに、その幅方向の直角引裂き強度が100N/mm以上300N/mm以下であると好ましい。
[直角引裂強度の測定方法]
90℃に調整された温湯中でフィルムを長手方向に10%収縮させた後に、JIS−K−7128に準じて所定の大きさの試験片としてサンプリングする。しかる後に、万能引張試験機で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、フィルムが長手方向に完全に引き裂かれたときの最大荷重を測定した。この最大荷重をフィルムの厚みで除して、単位厚み当たりの直角引裂強度を算出した。
90℃の温水中で長手方向に10%収縮させた後の直角引裂強度が100N/mm未満であると、ラベルとして使用した場合に運搬中の落下等の衝撃によって簡単に破れてしまう事態を生ずる恐れがあるので好ましくなく、反対に、直角引裂強度が300N/mmを上回ると、ラベルを引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)がよくないためあまり好ましくない。なお、直角引裂強度の下限値は、125N/mmであると好ましく、150N/mm以上であるとより好ましく、175N/mmであると特に好ましい。また、直角引裂強度の上限値は、275N/mmであると好ましく、250N/mmであるとより好ましく、225N/mmであると特に好ましい。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、その製造方法について何ら制限されるものではないが、例えば、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す方法により、二軸延伸することによって得ることができる。
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で幅方向に延伸した後に、所定の条件で長手方向に延伸し、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい二軸延伸について、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの延伸方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
[熱収縮性ポリエステル系フィルムの好ましい延伸方法]
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮させたい方向に未延伸フィルムを延伸することによって製造される。従来から長手方向に収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムについての要求は高かったものの、未延伸フィルムを単純に長手方向に延伸するだけでは、幅の広いフィルムが製造できないため生産性の点で好ましくない。
また、上述したように、特許文献2には、長手方向には収縮するフィルムとなっているが、幅方向に未延伸状態なので幅方向の機械的強度が低く、かつ幅方向の直角引裂き強度が高く、現在のラベルとしての要求品質を満たさないと見られる。また長手方向の厚み斑も大きかった。
また特許文献1には、長手方向と幅方向に機械的特性を向上させるために未延伸フィルムを所定の条件下で横延伸−熱処理―縦延伸の順に延伸する方法が示されている。しかし、この方法では非晶性モノマーがのPET原料のジオール又はジカルボン酸として10mol%以上含まれており、リサイクル原料の添加に制限がある。また、特許文献1で示されているような長手方向への高い延伸倍率を施すと、本発明における非晶質成分を多く含まないPET原料を使用するフィルムでは長手方向の収縮率が減少し、幅方向の収縮率が増加するので好ましくない。
[幅方向への延伸倍率]
本発明者らは、研究の結果 意図的に非晶PET原料を使用しないフィルムは 延伸倍率2倍前後が延伸方向の収縮率が高くなることがわかった。また延伸倍率を3倍より高くすると 延伸方向の収縮率は低下し、非延伸方向の収縮率が高くなることがわかった。この研究結果より、二軸に延伸して長手方向に収縮させるには 最初の横延伸倍率をTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で、3.5倍以上6倍以下で延伸することが好ましい。3.5倍より低いと 幅方向の収縮率を低下させるには十分で無い。また横延伸倍率の上限は 特に規定は無いが6倍より高いと、長手方向に延伸し難くなる(所謂 破断が生じやすくなる)ので好ましくない。より好ましくは3.7倍以上5.8倍以下であり、更に好ましくは 3.9倍以上5.6倍以下である。
このように多量には非晶質成分を含有しないPET原料を使用するフィルムの延伸倍率と収縮率の関係は上記のようになるので 特許文献1で示されている幅方向延伸後長手方向延伸前の熱処理は実施してもしなくても、どちらでも構わない。
[長手方向への延伸倍率]
長手方向へTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で、延伸倍率は1.5倍以上2.5倍以下が好ましい。1.5倍以下では収縮率が不足し、2.5倍以上では 幅方向の収縮率が高くなってくるので 長手方向への一軸収縮フィルムとして好ましくない。より好ましくは1.6倍以上2.4倍以下であり、更に好ましくは 1.8倍以上2.3倍以下である。
また長手方向の延伸温度がTg+5℃未満であると、延伸時に破断が生じやすくなり、好ましくない。またTg+40℃より高いと、フィルムの熱結晶化が進んで収縮率が低下するので好ましくない。より好ましくはTg+8℃以上Tg+37℃以下であり、更に好ましくはTg+11℃以上Tg+34℃以下である。
[熱処理と幅方向への弛緩]
フィルム両端をクリップで把持した状態で、Tg以上Tg+30℃以下の温度で熱処理をしながら、幅方向に0%以上15%以下の弛緩をすることが好ましい。熱処理温度がTg未満であると、熱処理の意味が無くなり、製品後に保管時の経時収縮(所謂自然収縮率)が高くなり好ましく無い。またTg+30℃より高いと、分子鎖の熱結晶化が進んで、幅方向のみならず長手方向の収縮率も低下するのであまり好ましくない。より好ましくはTg+3℃以上Tg+27℃以下であり、更に好ましくはTg+6℃以上Tg+24℃以下である。
また幅方向の弛緩率は0%より低いと、実質的に幅方向に延伸となり弛緩として好ましくない。また弛緩率は15%より高くても構わないが、弛緩率が高いと最終的に製品となるフィルム幅が狭くなるので好ましくない。より好ましくは1%以上14%以下であり、更に好ましくは2%以上13%以下である。
上記のように、本発明における好ましい延伸方法としては、長手方向の延伸倍率の方が幅方向の延伸倍率より小さくすることが例示される。そして、延伸後のフィルムの分子鎖の配向性については、長手方向の方が幅方向より低いと考えられる。それを延伸後のフィルムの屈折率で表現すると、幅方向の屈折率の方が長手方向の屈折率より高い値になるものである。
従来の非晶質成分を多く含む熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、長手方向、幅方向で、高い延伸倍率を採用して屈折率が高くなっている方向が主収縮方向になる場合が多かったが、本発明は前記とは逆の挙動を示していることになる。これは、本発明においては非晶質成分となり得るモノマー成分を多くは含まない結晶性のPETの性質が関係しているものと考えられる。即ち、結晶性のPETについては、例えば幅方向に3.5倍以上といった高い延伸倍率で延伸されると、分子鎖が配向すると共に分子鎖の結晶化が進み、これが幅方向の熱収縮率を低くする要因として働いているものと推察される。この点、長手方向の2.5倍程度以下の延伸倍率は、長手方向にある程度分子鎖が配向しても、結晶化があまり進まない領域であるので、相対的に高い熱収縮率が得られるものと推定している。本発明においては、分子鎖の配向性と結晶化度の関係を簡単に表すことが困難であるので、それを長手方向及び幅方向の熱収縮率、屈折率とその大小関係により分子鎖の構造の代用メジャーとして表現しているものである。もちろん、幅方向への弛緩熱処理も幅方向の熱収縮率を低下させる上で一定の寄与をしていると考えている。
また未延伸フィルムを2.5倍以下で延伸すると延伸方向の厚み斑が非常に悪くなるので、これまでPET原料による未延伸フィルムを2倍前後の延伸倍率で延伸することはほとんど行われてこなかった。しかし、一度幅方向に3.5倍以上といった高倍率で延伸されたフィルムを長手方向に2倍前後の倍率で延伸すると、長手方向の厚み斑が良好なことがわかった。これは長手方向に延伸する際、無延伸フィルムを延伸するのと違って、一度幅方向に高倍率で延伸することで、長手方向に2倍前後で延伸する際の延伸応力や、応力―歪曲線が変化したためと考えられる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例、比較例で使用した原料の性状、組成、実施例、比較例におけるフィルムの製造条件(延伸・熱処理条件等)を、それぞれ表1、表2に示す。
Figure 0006303500
Figure 0006303500
また、フィルムの評価方法は下記の通りである。
[Tg(ガラス転移点)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgを、−40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、得られた吸熱曲線より求めた。吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をTg(ガラス転移点)とした。
[固有粘度 (IV)]
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、上式1にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。当該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
[長手方向、幅方向の屈折率]
アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用いて、各試料フィルムを23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後に測定した。
[引張破壊強さ]
測定方向(フィルム幅方向)が140mm、測定方向と直交する方向(フィルム長手方向)が20mmの短冊状の試験片を作製した。万能引張試験機「DSS−100」(島津製作所製)を用いて、試験片の両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離100mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強さとした。
[直角引裂強度]
90℃に調整された温湯中にてフィルムを主収縮方向に10%収縮させた後に、JIS−K−7128に準じて、図1に示す形状にサンプリングすることによって試験片を作製した(なお、サンプリングにおいては、試験片の長手方向をフィルムの主収縮方向とした)。しかる後に、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ)で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、フィルムが長手方向に完全に引き裂かれたときの最大荷重を測定した。この最大荷重をフィルムの厚みで除して、単位厚み当たりの直角引裂強度を算出した。
[長手方向の厚み斑]
フィルム長手方向を長さ30m×幅40mmの長尺なロール状にサンプリングし、ミクロン測定器株式会社製の連続接触式厚み計を用いて、5(m/分)の速度で測定した。なお、上記したロール状のフィルム試料のサンプリングにおいては、フィルム試料の長さ方向をフィルムの主収縮方向とした。測定時の最大厚みをTmax.、最小厚みをTmin.、平均厚みをTave.とし、下式2からフィルムの長手方向の厚み斑を算出した。
厚み斑={(Tmax.−Tmin.)/Tave.}×100 (%) ・・式2
[収縮仕上り性(筒状体嵌め込み)]
熱収縮性フィルムに、予め東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷を施した。そして、印刷したフィルムの両端部を溶断シールで接着することにより、円筒状のラベル(熱収縮性フィルムの主収縮方向を周方向としており、外周長が装着するボトルの外周長の1.05倍である円筒状のラベル)を作成した。しかる後、その円筒状のラベルを、500mlのPETボトル(胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)に被せて、Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式;SH−1500−L)を用い、通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃で熱収縮させることにより、ラベルを装着した。なお、装着の際には、ネック部においては、直径55mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。収縮後の仕上がり性の評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
◎:シワ,飛び上り、収縮不足の何れも未発生で、かつ色の斑も見られない
○:シワ,飛び上り、または収縮不足が確認できないが、若干、色の斑が見られる
△:飛び上り、収縮不足の何れも未発生だが、ネック部の斑が見られる
×:シワ、飛び上り、収縮不足が発生
[収縮仕上り性(ラップ・ラウンド)]
熱収縮性フィルムに東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷を施し、当該印刷後の熱収縮性フィルムを、長手方向が縦になるように、縦230mm×横100mmのサイズで切り出した。そして、265mlアルミニウムボトル缶(図2参照、胴直径68mm、ネック部の最小直径25mmで、胴の中央の直径が60mmとなるように“くびれ”が設けてあるもの)を立てた状態で、切り出したフィルムの長辺の一方が感の底部に沿うようにフィルムを巻き付けながら、フィルムの短辺のボトル缶当接面側の端縁際の上下および中央の3箇所に、下記の方法により製造された活性エネルギー線(UV)硬化型接着剤を散点状に塗布して、フィルムをボトル缶に固定した。次いで、巻き付けたフィルムの他端縁際にも、同様な活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布し、その他端縁を、先にボトル缶に固定した端縁際に5mmの幅で重ね合わせて、当該他端縁に塗布された接着剤層を挟み込んだ。しかる後、直ちに、その接着部分(フィルムの端縁際同士が重なり合った部分)に3kW(120W/cm)×1灯空冷式水銀灯で紫外線を100mJ/cmとなるように照射して、フィルムの両端を硬化接着させて、熱収縮性ラベル付きボトル缶を製造した。続いて、熱収縮性ラベル付きボトル缶を、ラベル装着後、直ちに、長さ3mで92℃に保温された水蒸気炉シュリンクトンネルに送入し、10秒かけて通過させることにより、ラベルを収縮させてボトル缶の外周に密着させた。なお、かかるフィルムの装着の際には、ネック部においては、直径50mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。しかる後に、収縮後の仕上がり性を目視により下記の四段階で評価した。
◎:シワ,飛び上り、収縮不足の何れも未発生で、かつ色の斑も見られない
○:シワ,飛び上り、または収縮不足が確認できないが、若干、色の斑が見られる
△:飛び上り、収縮不足の何れも未発生だが、ネック部の斑が見られる
×:シワ、飛び上り、収縮不足が発生
<活性エネルギー線(UV)硬化型接着剤の製造方法>
温度計、攪拌機、蒸留塔、コンデンサー、減圧装置を具備した反応容器の中に、ジメチルテレフタレート440部、ジメチルイソフタレート440部、エチレングリコール412部、ヘキサンジオール393部、及びテトラブトキシチタネート0.5部を仕込み、150〜230℃で120分間加熱してエステル交換反応をさせた。ついで反応系を10mmHgに減圧し、30分間で250℃まで昇温して反応を行い、共重合ポリエステルポリオールを得た。ポリエステルポリオールの分子量は1600であった。次に、温度計、攪拌機、還流冷却器を具備した反応容器中に共重合ポリエステルポリオール100部、フェノキシエチルアクリレート120部を仕込み、溶解後、イソホロンジイソシアネート15部およびジブチル錫ジラウレート0.05部を仕込み、70〜80℃で2時間反応させた後、さらに2−ヒドロキシエチルアクリレート5部を加えて70〜80℃で反応を行うことにより、ウレタンアクリレート樹脂のフェノキシエチルアクリレート溶液を得た。なお、この溶液100部、使用直前に、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュアー(登録商標)1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3質量部添加し、活性エネルギー線(UV)硬化型接着剤を得た。ウレタンアクリレートの分子量は2000であった。接着剤の組成を表3にまとめた。なお、上記中の分子量は数平均分子量であり、テトラヒドロフランを溶離役としてGPC150c(ウォーターズ社製)を用い測定した結果(ポリスチレン換算)である。測定の際にカラム温度は35℃、流量1ml/分とした。
[ミシン目開封性]
予めフィルムの主収縮方向とは直向する幅方向にミシン目を入れておいたラベルを、上記した収縮仕上り性の測定条件(筒状体嵌め込み)と同一の条件でPETボトルに装着した。ただし、ミシン目は、長さ1mmの孔を1mm間隔で入れることによって形成し、ラベルの縦方向(高さ方向)に幅22mm、長さ120mmに亘って2本設けた。その後、このボトルに水を500ml充填し、5℃に冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のボトルのラベルのミシン目を指先で引裂き、縦方向にミシン目に沿って綺麗に裂け、ラベルをボトルから外すことができた本数を数え、全サンプル50本に対する割合(%)を算出した。不良率20%以下を合格とした。
また、実施例および比較例に用いたポリエステルは以下の通りである。
・ポリエステル1:ポリエチレンテレフタレート(IV 0.75dl/g)
・ポリエステル2:上記ポリエステル2の製造の際に、滑剤としてSiO(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して8,000ppmの割合で添加したポリエチレンテレフタレート(IV 0.75dl/g)、
・ポリエステル3:リサイクル原料 {よのペットボトルリサイクル(株)製 「クリ
アペレット」(IV 0.63dl/g、なお、このポリエステル3は、表1に記載のとおり、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対してイソフタル酸を2mol%含んでいる)。
・ポリエステル4:エチレンテレフタレート単位を主たる構成単位として、全グリコール成分中に30モル%のネオペンチルグリコールをランダム共重合された非晶性の共重合ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(IV 0.75dl/g)。
[実施例1]
上記したポリエステル1とポリエステル2とを重量比93:7で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが171μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは75℃であった。しかる後、その未延伸フィルムを、横延伸機(以下テンターと記す)に導いた。
そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が100℃(Tg+25℃)になるまで予備加熱した後、横方向に90℃(Tg+15℃)で4.5倍に延伸し、70℃で熱処理した(前記70℃の熱処理はしてもしなくても、最終製品の物性に極小さな影響しか及ぼさないしない)。
さらに、そのように横延伸、熱処理されたフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が90℃(Tg+15℃)になるまで予備加熱した後に、ロールの速度差を用いて2倍に延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。
そして、冷却後のフィルムをテンター(第2テンター)へ導き、当該第2テンター内で90℃(Tg+15℃)の雰囲気下で8.0秒間に亘って熱処理しながら、幅方向へ5%弛緩を施した。第2テンター後に両縁部を裁断除去することによって、約20μmの二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
幅方向の屈折率が長手方向より高く、収縮仕上り性、ミシン目開封性等が良好なフィルムであった。
[実施例2]
ポリエステル3とポリエステル2を重量比93:7で混合して押出機に投入した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
実施例1と同等のフィルムであり、収縮仕上り性、ミシン目開封性等が良好なフィルムであった。
[実施例3]
ポリエステル3とポリエステル2を重量比93:7で混合して厚み135μmの未延伸フィルムを得た。縦延伸倍率を1.5倍、第2テンターの条件で温度80℃、弛緩率0%に変更した以外は 実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
長手方向の収縮率は少し減少したが、実施例1と同等のフィルムであり、収縮仕上り性、ミシン目開封性等が良好なフィルムであった。
[実施例4]
ポリエステル3とポリエステル2を重量比93:7で混合して厚み208μmの未延伸フィルムを得た。縦延伸倍率を2.5倍、第2テンターの条件で弛緩率8%に変更した以外は 実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
長手方向の収縮率は少し減少したが、実施例1と同等のフィルムであり、収縮仕上り性、ミシン目開封性等が良好なフィルムであった。
[実施例5]
ポリエステル3とポリエステル2を重量比93:7で混合して厚み171μmの未延伸フィルムを得た。第2テンターの条件で温度を100℃に変更した以外は 実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
長手方向の収縮率は少し減少したが、実施例1と同等のフィルムであり、収縮仕上り性、ミシン目開封性等が良好なフィルムであった。
[実施例6]
横方向の延伸倍率を4.5倍から3.6倍、縦方向の延伸倍率を2倍から2.5倍へ変更した以外は実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。評価結果を表3に示す。実施例1と比較して長手方向の収縮率は少し減少し、幅方向の収縮率は上昇し、幅方向の直角引裂強度も増加してミシン目開封不良率も増加したが、使用上は問題無い良好なフィルムであった。
[実施例7]
ポリエステル1とポリエステル2とポリエステル4の重量比77:7:16で混合して押出機に投入した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
実施例1と同等のフィルムであり、収縮仕上り性、ミシン目開封性等が良好なフィルムであった。
[比較例1]
ポリエステル1とポリエステル2を重量比93:7で混合して厚み80μmの未延伸フィルムを得た。横延伸しないで長手方向に実施例1と同様の方法で2倍延伸した。その後フィルムの両端をクリップで掴み、第2テンターに導き温度90℃・弛緩率0%の条件で8秒熱処理することによって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
長手方向のみ熱収縮するフィルムであったが、幅方向の屈折率が低く、幅方向の破断強度が低く、ミシン目開封性が実施例1よる劣るフィルムであった。また長手方向の厚み斑も悪かった。
[比較例2]
ポリエステル1とポリエステル2を重量比93:7で混合して厚み300μmの未延伸フィルムを得た。縦延伸倍率を3.5倍に変更した以外は 実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
幅方向の収縮率が高く、屈折率は長手方向の方が高いフィルムとなった。また収縮仕上り性で劣るフィルムとなった。
[比較例3]
ポリエステル1とポリエステル2とポリエステル4の重量比43:7:50で混合して押出機に投入した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
幅方向の収縮率が高く、収縮仕上り性で劣るフィルムであった。
[比較例4]
実施例1と同じ原料で厚さが76μmの未延伸フィルムを得た。その未延伸フィルムをテンターでの幅方向延伸倍率を4.5倍から2倍に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
幅方向の収縮率が高くて、かつ長手方向の厚み斑も悪く、収縮仕上り性で劣るフィルムであった。
Figure 0006303500
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記の如く優れた特性を有しているので、ボトル等のラベル用途に好適に用いることができ、同フィルムがラベルとして用いられて得られたボトル等の包装体は美麗な外観を有するものである。ポリエステル中に非晶質成分をとなりうるモノマー成分がないか、若しくは極めて少ない含有量においても長手方向に十分な熱収縮率を有するフィルムであるので、リサイクル原料比率を高くすることができ、環境にも適したフィルムである。
F:フィルム

Claims (3)

  1. エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうるモノマー成分が0モル%以上5モル%以下含有しているとともに、主収縮方向が長手方向である熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
    (1)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の温湯熱収縮率が15%以上50%以下であること
    (2)90℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向と直交する幅方向の温湯熱収縮率が0%以上12%以下であること
    (3)屈折率が長手方向及び幅方向のいずれも1.570以上であり、かつ主収縮方向と直交する方向である幅方向の屈折率が、主収縮方向である長手方向の屈折率よりも高いこと
  2. 主収縮方向と直交する方向である幅方向の引張破壊強さが80MPa以上200MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  3. 主収縮方向である長手方向の厚み斑が11%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
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