以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明の電子機器として、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、プリンター)を例に挙げる。
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2(着弾対象の一種)の表面に対してインク(液体の一種)を噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送する搬送機構6等を備えている。ここで、上記のインクは、液体供給源としてのインクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジがプリンターの本体側に配置され、当該インクカートリッジからインク供給チューブを通じて記録ヘッドに供給される構成を採用することもできる。
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモーター等のパルスモーター9により駆動される。従ってパルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。キャリッジ4の主走査方向の位置は、位置情報検出手段の一種であるリニアエンコーダー(図示せず)によって検出される。リニアエンコーダーは、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)をプリンター1の制御部に送信する。
また、キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側の端部領域には、キャリッジ4の走査の基点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、端部側から順に、記録ヘッド3のノズル面(ノズルプレート21)に形成されたノズル22を封止するキャップ11、及び、ノズル面を払拭するためのワイピングユニット12が配置されている。
次に記録ヘッド3について説明する。図2は記録ヘッド3の概略断面図であり、図3は図2における領域Aの拡大図である。また、図4は、領域Aにおける圧力発生ユニット14の平面図であり、配線層46(接続配線47)が形成された配線領域を上面からみた模式図である。なお、図2では、一のノズル列に対応する主要部分の構成を表わしている。本実施形態における記録ヘッド3は、図2に示すように、圧力発生ユニット14および流路ユニット15を備え、これらの部材が積層された状態でケース18に取り付けて構成されている。
ケース18は、合成樹脂製の箱体状部材であり、その内部にはインク導入路19が形成されている。またケース18の中心部分にはノズル列方向に沿って長尺な貫通空部20が、ケース18の高さ方向を貫通する状態で形成されている。この貫通空部20には、図示しないフレキシブルケーブルの一端部が収容される。流路ユニット15は、複数のノズル22を直線状(列状)に開設したノズルプレート21及び液体供給流路25が設けられた連通基板24を有している。列設された複数のノズル22(ノズル列)は、一端側のノズル22から他端側のノズル22までドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で、主走査方向に直交する副走査方向に沿って等間隔に設けられている。本実施形態では、ノズル列が2条形成されている。
圧力発生ユニット14(本発明における電子回路基板に相当)は、圧力室30が形成された圧力室形成基板29、振動板31、圧電素子32、保護基板33及び駆動IC34が積層されてユニット化されている。圧力室形成基板29は、例えばシリコン単結晶基板からなり、複数の圧力室30がノズルプレート21の各ノズル22に対応して複数形成されている。この圧力室30は、ノズル列方向に直交する方向に長尺な空部である。本実施形態におけるノズルプレート21にはノズル列が2条形成されているので、圧力室形成基板29には、圧力室30の列が各ノズル列に対応して2条形成されている。
圧力室形成基板29の上面(連通基板24との接合面とは反対側の面)には、圧力室30の上部開口を封止する状態で振動板31が形成されている。この振動板31は、例えば、圧力室形成基板29の上面に形成された二酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜と、この弾性膜上に形成された酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜と、から成る。そして、この絶縁膜上、すなわち振動板31上における各圧力室30に対応する位置に圧電素子32がそれぞれ形成されている。
本実施形態の圧電素子32は、所謂撓みモードの圧電素子である。この圧電素子32は、図3に示すように、振動板31上に、下電極層39、圧電体層40及び上電極層41が順次積層されてなる。本実施形態では、下電極層39が個々の圧力室30毎に独立して設けられる一方、上電極層41が複数の圧力室30に亘って連続して設けられている。したがって、下電極層39は、圧力室30毎の個別電極となり、上電極層41は、各圧力室30に共通な共通電極となる。なお、圧電素子32の端部には、下電極層39と導通されてリード電極45の一部となる上電極層41bが、共通電極となる上電極層41aと分離されて、なお且つ各下電極層39に対応して個別に形成されている。そして、下電極層39と上電極層41aとの間に圧電体層40が挟まれた領域が、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる能動部となる。なお、下電極層を複数の圧力室に亘って連続して形成することで共通電極とし、上電極層を個々の圧力室毎に独立して設けることで個別電極とすることもできる。
上電極層41上には、図示しない密着層を介して金属層42が形成されている。この金属層42は、錘部42aとリード電極部42bとから構成される。錘部42aは、共通電極となる上電極層41a上であって、圧電素子32の能動部の端部領域に形成されている。これにより、応力が集中し易い能動部の端部領域の剛性を高めることができ、圧電素子32にクラック等の損傷が生じることを抑制できる。リード電極部42bは、個別電極である下電極層39毎に対応してパターニングされており、圧電体層40より外側で下電極層39にそれぞれ導通されている。なお、圧電体層40の端部における上面は、下電極層39に向けて下り傾斜しており、この斜面に沿ってリード電極部42b及び上電極層41bが圧電体層40の外側の下電極層39上まで延在している。また、リード電極部42bは、後述する収容空部36内において上電極層41bを超えて下電極層39と接続されている。そして、リード電極部42bは、振動板31上において下電極層39と共に保護基板33の外側まで延在してリード電極45を構成する。
なお、上電極層41および下電極層39としては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の各種金属や、これらの合金等が用いられる。合金電極の一例として、LaNiO3等が挙げられる。また、圧電体層40としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その他、チタン酸バリウムなどの非鉛材料も用いることが可能である。さらに、金属層42としては、金(Au)等が用いられ、密着層としては、チタン、ニッケル、クロム、及び、これらの合金等が用いられる。
上記した振動板31及び各層39、40、41、42が積層された圧力室形成基板29には、圧電素子32を収容可能な収容空部36を有する保護基板33が接着剤等により接合されている。具体的には、図3に示すように、金属層42上に保護基板33が接合されている。この保護基板33は、絶縁性を有する部材(例えば、合成樹脂、セラミック等)や表面に絶縁膜を製膜した部材等からなる。収容空部36は、保護基板33の下面側(圧力室形成基板29側)から上面側(ケース18側)に向けて保護基板33の高さ方向途中まで形成された窪みである。
本実施形態の保護基板33の上面には、駆動IC34が取り付けられている。駆動IC34は、個別電極に電気的に接続される図示しない個別端子及び共通端子等を複数備えている。これらの端子は、保護基板33の上面に積層される金(Au)等からなる配線層46を介して、対応する圧力室形成基板29上の金属層42に電気的に接続されている。本実施形態の保護基板33の上面は、図3に示すように、リード電極45側の端部において、駆動IC34が実装される面から振動板31の上面に向けて下り傾斜している。そして、保護基板33の上面であって駆動IC34の一側(傾斜面側)の端子が接続される端子領域、保護基板33の傾斜面、並びに、振動板31及び各層39、40、41、42が積層された圧力室形成基板29上のリード電極45が形成された領域に亘って配線層46が形成されている。この配線層46が、駆動IC34の端子と対応するリード電極45とを電気的に接続する接続配線47(本発明における配線に相当)となる。なお、この接続配線47に関し、詳しくは後述する。
また、保護基板33の上面であって、駆動IC34の他側(貫通空部20側)の端子が接続される部分にも個々の端子に対応して配線層(図示せず)が形成されている。この配線層は、ケース18の貫通空部20に対応する位置まで延在し、対応するフレキシブルケーブルの端子と接続される。
そして、記録ヘッド3は、インクカートリッジ7からのインクをインク導入路19及び液体供給流路25を介して圧力室30に導入し、制御部からの駆動信号(噴射パルス)を、駆動IC34を介して圧電素子32に供給することで、圧電素子32を駆動させて圧力室30に圧力変動を生じさせる。この圧力変動を利用することで連通基板24のノズル連通路35を介してノズル22からインク滴を噴射させている。
なお、上記した下電極層39、圧電体層40、上電極層41、密着層、金属層42及び配線層46(接続配線47)は、フォトリソグラフィ技術により形成される。具体的には、例えば、成膜工程において上記した層の基となる基層を一面に形成する。そして、レジスト層の塗布工程、露光工程、現像工程を経て、形成する層の形状に応じたレジストマスクを基層上に形成する。次に、エッチング工程において基層の不要な部分を除去することで、形成する層の形状をパターニングする。最後に、レジスト除去工程においてレジストマスクを除去することで、各層に応じたパターンを形成することができる。
ここで、保護基板33と振動板31及び各層39、40、41、42が積層された圧力室形成基板29との段差部において配線層46(接続配線47)を形成する場合、配線層46を安定して形成することは難しい。具体的には、保護基板33の上面及びこれに対して傾斜した傾斜面に亘って、複数の配線層46(接続配線47)を並設する場合、保護基板33の上面と傾斜面との境界における露光が不安定になるため、当該部分に予定通りの形状を作成することが困難であった。また、同様に、振動板31及び各層39、40、41、42が積層された圧力室形成基板29の上面と保護基板33の傾斜面との境界においても露光が不安定になるため、当該部分に予定通りの形状を作成することが困難であった。その結果、従来のように一定幅の配線層(接続配線)を等間隔に並設すると、上記した境界において配線層の断線や配線層間のショートが発生し易くなっていた。このような不具合を抑制するために、本発明の配線層46(接続配線47)では、上記した境界を含む境界領域における配線層46(接続配線47)の配線幅または並設ピッチを境界領域以外の領域と異ならせている。なお、保護基板33の上面が本発明における第1の面に相当し、保護基板33の傾斜面が本発明における第2の面に相当する。或いは、振動板31及び各層39、40、41、42が積層された圧力室形成基板29の上面が本発明における第1の面に相当し、保護基板33の傾斜面が本発明における第2の面に相当する。
具体的には、図4に示す、第1実施形態の配線層46からなる接続配線47では、保護基板33の上面と保護基板33の傾斜面との境界B1を含む第1境界領域Ats、並びに、振動板31及び各層39、40、41、42が積層された圧力室形成基板29の上面と保護基板33の傾斜面との境界B2を含む第2境界領域Asbにおける接続配線47の幅を、第1境界領域Atsから外れた領域であって当該第1境界領域Atsに隣接する保護基板33の上面の第1水平領域At、第1境界領域Ats及び第2境界領域Asbから外れた領域であって当該第1境界領域Ats及び第2境界領域Asbに隣接する保護基板33の傾斜面上の傾斜領域As、並びに、第2境界領域Asbから外れた領域であって当該第2境界領域Asbに隣接する圧力室形成基板29の上面の第2水平領域Abの接続配線47の幅よりも太くしている。換言すると、境界領域Ats、Asbにおける配線幅を、この領域を挟んで接続配線47の延在方向の前後に位置する領域At、As、Abにおける配線幅よりも太くしている。
すなわち、接続配線47の幅に関し、第1水平領域Atにおける接続配線47の幅をWt、第1境界領域Atsにおける接続配線47の幅をWts、傾斜領域Asにおける接続配線47の幅をWs、第2境界領域Asbにおける接続配線47の幅をWsb、第2水平領域Abにおける接続配線47の幅をWbとしたときに、以下の(1)〜(4)式を満たすように設定されている。
Wt<Wts・・・(1)
Ws<Wts・・・(2)
Ws<Wsb・・・(3)
Wb<Wsb・・・(4)
本実施形態では、第1水平領域Atにおける接続配線47の幅Wt、傾斜領域Asにおける接続配線47の幅Ws、及び、第2水平領域Abにおける接続配線47の幅Wbが同じ幅に揃えられている。また、第1境界領域Atsにおける接続配線47の幅Wts及び第2境界領域Asbにおける接続配線47の幅Wsbが同じ幅に揃えられている。なお、第1水平領域Atにおける接続配線47の幅Wt、傾斜領域Asにおける接続配線47の幅Ws、及び、第2水平領域Abにおける接続配線47の幅Wbをそれぞれ異なる幅にすることもできる。また、第1境界領域Atsにおける接続配線47の幅Wts及び第2境界領域Asbにおける接続配線47の幅Wsbをそれぞれ異なる幅にすることもできる。要するに上記した(1)〜(4)式を満たせば、各領域における接続配線47の幅はどのような幅であってもよい。
また、接続配線47の幅方向の中心を通る中心線(図4における一点鎖線)は、直線状に形成されている。このため、各領域At、Ats、As、Asb、Abにおける一の接続配線47の中心線とこれに隣り合う他の接続配線47の中心線との間隔、すなわち、接続配線47の並設ピッチは、一定のピッチに揃えられている。さらに、各接続配線47は、境界B1及び境界B2に対して直交する方向に延在している。
このように、境界B1及び境界B2を跨ぐ接続配線47の幅を太くしているため、当該境界B1、B2における接続配線47の断線を抑制することができる。
ところで、上記した第1実施形態では、並設された2本の接続配線47を例示したが、これには限られず、接続配線が1本だけの場合や接続配線が複数本並設された場合にも、上記した(1)〜(4)式の関係を適用できる。また、第1境界領域Ats及び第2境界領域Asbの両方の領域において、接続配線47の幅を太くしたが、これには限られず、何れか一方の領域において、接続配線47の幅が太くなっていればよい。すなわち、少なくとも(1)式及び(2)式、或いは、(3)式及び(4)式の何れか一方を満たせばよい。
また、図5に示す、第2実施形態では、並設された2本の接続配線47(配線層46)において、第1境界領域Atsにおける一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔(すなわち、並設ピッチ)Ptsを、第1水平領域Atにおける一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔Pt、及び、傾斜領域Asにおける一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔Psよりも広くしている。また、第2境界領域Asbにおける一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔Psbを、第2水平領域Abにおける一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔Pb、及び、傾斜領域Asにおける一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔Psよりも広くしている。換言すると、境界領域Ats、Asbにおける一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔、すなわち並設ピッチを、この領域を挟んで接続配線47の延在方向の前後に位置する領域At、As、Abにおける並設ピッチよりも広くしている。なお、本実施形態では、両接続配線47の各領域における配線幅Wは、同じ幅に揃えられている。
すなわち、並設された2本の接続配線47の並設ピッチ(配線幅方向の中心間距離)に関し、第1水平領域Atにおける接続配線47の並設ピッチをPt、第1境界領域Atsにおける接続配線47の並設ピッチをPts、傾斜領域Asにおける接続配線47の並設ピッチをPs、第2境界領域Asbにおける接続配線47の並設ピッチをPsb、第2水平領域Abにおける接続配線47の並設ピッチをPbとしたときに、以下の(5)〜(8)式を満たすように設定されている。
Pt<Pts・・・(5)
Ps<Pts・・・(6)
Ps<Psb・・・(7)
Pb<Psb・・・(8)
本実施形態では、第1水平領域Atにおける接続配線47の並設ピッチPt、傾斜領域Asにおける接続配線47の並設ピッチPs、及び、第2水平領域Abにおける接続配線47の並設ピッチPbが同じピッチに揃えられている。また、第1境界領域Atsにおける接続配線47の並設ピッチPts及び第2境界領域Asbにおける接続配線47の並設ピッチPsbが同じピッチに揃えられている。そして、各接続配線47は、第1境界領域Ats及び第2境界領域Asbにおいて、境界B1及び境界B2に対して直交する方向に延在している。
具体的には、一の接続配線47aは、第1水平領域Atにおいて、駆動IC34の端子領域から境界B1に対して直交する方向に延在した後、他の接続配線47bから離れる方向に境界B1に対して斜めに延在し、第1境界領域Atsに亘って境界B1に対して直交する方向に延在している。そして、傾斜領域Asにおいて、他の接続配線47bに近づく方向に境界B1に対して斜めに延在した後、境界B1に対して直交する方向に延在し、さらに他の接続配線47bから離れる方向に境界B2に対して斜めに延在している。その後、第2境界領域Asbに亘って境界B2に対して直交する方向に延在し、第2水平領域Abにおいて、他の接続配線47bに近づく方向に境界B2に対して斜めに延在した後、境界B2に対して直交する方向に延在している。
他の接続配線47bは、一の接続配線47aとは対称的に形成されている。すなわち、他の接続配線47bは、第1水平領域Atにおいて、駆動IC34の端子領域から境界B1に対して直交する方向に延在した後、一の接続配線47aから離れる方向に境界B1に対して斜めに延在し、第1境界領域Atsに亘って境界B1に対して直交する方向に延在している。そして、傾斜領域Asにおいて、一の接続配線47aに近づく方向に境界B1に対して斜めに延在した後、境界B1に対して直交する方向に延在し、さらに一の接続配線47aから離れる方向に境界B2に対して斜めに延在している。その後、第2境界領域Asbに亘って境界B2に対して直交する方向に延在し、第2水平領域Abにおいて、一の接続配線47aに近づく方向に境界B2に対して斜めに延在した後、境界B2に対して直交する方向に延在している。
このように形成することで、並設された2本の接続配線47a、47bが(5)〜(8)式を満たす。なお、一の接続配線47aと他の接続配線47bとは、対称的に形成されなくてもよい。また、第1水平領域Atにおける接続配線47の並設ピッチPt、傾斜領域Asにおける接続配線47の並設ピッチPs、及び、第2水平領域Abにおける接続配線47の並設ピッチPbをそれぞれ異なるピッチにすることもできる。さらに、第1境界領域Atsにおける接続配線47の並設ピッチPts及び第2境界領域Asbにおける接続配線47の並設ピッチPsbをそれぞれ異なるピッチにすることもできる。要するに上記した(5)〜(8)式を満たせば、各領域における接続配線47の並設ピッチはどのようなピッチであってもよい。
このように、境界領域における一の接続配線47aの幅方向の中心とこれに隣り合う他の接続配線47bの幅方向の中心との間隔(並設ピッチ)を、この領域を挟んで接続配線47の延在方向の前後に隣接する領域における接続配線47の並設ピッチよりも広くしたので、境界B1、B2における一の接続配線47aと他の接続配線47bとの間隔を広げることができ、接続配線47a、47b間のショートの発生を抑制できる。また、境界領域Ats、Asbにおける各接続配線47a、47bは、平面視において、境界B1、B2に対して直交する方向に延在しているため、各接続配線47a、47bをフォトリソグラフィ技術により形成する際に、当該境界B1、B2におけるレジストマスクの膜厚や線幅等の形状を安定させることができる。これにより、境界B1、B2において接続配線47a、47b間のショートや接続配線47の断線を抑制することができ、接続配線47を安定して形成することができる。
ところで、上記した第2実施形態では、並設された2本の接続配線47a、47bを例示したが、これには限られず、複数本並設された接続配線47にも適用できる。また、駆動IC34の個別端子と圧電素子32の個別電極から引き回されたリード電極45とを接続する接続配線47の他、駆動IC34の共通端子と圧電素子32の共通電極から引き回されたリード電極45とを接続する接続配線やその他の端子同士を接続する接続配線にも適用できる。要するに、少なくとも2本以上の接続配線47が並設された場合において、各領域における複数の接続配線47の並設ピッチが上記した(5)〜(8)式を満たせばよい。さらに、駆動IC34の個別端子の並設ピッチと、これに対応する圧電素子32の個別電極から引き回されたリード電極45の並設ピッチとが異なる場合において、これらを接続する接続配線47にも適用することができる。例えば、駆動IC34の個別端子の並設ピッチよりリード電極45の並設ピッチが広い場合、第1水平領域Atにおける接続配線47の並設ピッチPtは、第2水平領域Abにおける接続配線47の並設ピッチPbよりも狭くなる。また、傾斜領域Asにおける接続配線47の並設ピッチPsは、第1水平領域Atにおける接続配線47の並設ピッチPtよりも広く、第2水平領域Abにおける接続配線47の並設ピッチPbよりも狭くなる。そして、このような場合でも、上記した(5)〜(8)式を満たすことが望ましい。
また、上記した第2実施形態では、第1境界領域Ats及び第2境界領域Asbの両方の領域において、接続配線47の並設ピッチを広くしたが、これには限られず、何れか一方の領域において、接続配線47の並設ピッチが広くなっていればよい。すなわち、少なくとも(5)式及び(6)式、或いは、(7)式及び(8)式の何れか一方を満たせばよい。
さらに、上記した第2実施形態では、接続配線47の幅Wを一定にしたが、これには限られず、領域毎及び接続配線毎にそれぞれ異なる配線幅にすることもできる。例えば、第1境界領域Atsにおける接続配線47の並設ピッチPts及び第2境界領域Asbにおける接続配線47の並設ピッチPsbを他の領域At、As、Abにおける接続配線47の並設ピッチより広くしたので、これらの領域Ats、Asbにおける接続配線47の幅を、他の領域At、As、Abの接続配線47の幅よりも太くすることができる。すなわち、上記した(5)〜(8)式に加え、上記した(1)〜(4)式を満たすようにすることができる。このようにすれば、境界B1、B2における接続配線47間のショートや接続配線47の断線をより確実に抑制することができる。
また、上記した実施形態では、電子回路基板として圧力発生ユニット14を例示し、配線として圧力発生ユニット14に形成される接続配線47(配線層46)を例示したが、これには限られず、フォトリソグラフィ技術により接続配線等の配線がパターニングされた電子回路基板であれば、どのようなものでもよい。そして、上記した実施形態の保護基板33の上面と傾斜面との境界B1のように、同一の部材に形成された、第1の面とこれに対して傾斜した第2の面との境界に配線が形成される場合に本発明を適用することができる。また、上記した実施形態の振動板31及び各層39、40、41、42が積層された圧力室形成基板29の上面と保護基板33の傾斜面との境界B2のように、異なる2つの部材が接合されて成る部材の接合部分に形成された境界に配線が形成される場合にも本発明を適用することができる。換言すると、一の部材と他の部材が接合される場合であって、一の部材に形成された第1の面と、これに対して傾斜した、他の部材に形成された第2の面との境界に配線が形成される場合にも本発明を適用することができる。
さらに、上記した実施形態では、電子機器の一種である液体噴射装置として、インクジェットプリンターに搭載されるインクジェット式記録ヘッドを例示したが、インク以外の液体を噴射するものにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を備えた液体噴射装置にも本発明を適用することができる。その他、液体噴射装置以外でも、上記構成の配線を備えた電子回路基板を有するものであれば、どのような電子機器にも適用できる。