JP6289191B2 - 射出ブロー成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、特定のプロピレン系重合体を含む樹脂組成物からなる射出ブロー成形体に関する。
ポリオレフィンは、その優れた成形加工性より射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、プレス成形など様々な成形方法を用いることができるため、その成形品は様々な用途に使用されている。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンは低コストで大量の成形品を短時間で生産できる利点があり、液体容器・ボトル、燃料タンクなどは射出成形やブロー成形で成形されるのが一般的である。特に、ポリオレフィンを射出ブロー成形を行うことにより、透明性、光沢性、剛性および衝撃強度に優れた成形体とすることができることから、射出成形機とブロー成形機が一体化した1ステージであるホットパリソン法による射出ブローや二軸延伸ブローが好んで用いられている。また、射出ブロー成形法として、射出成形したプリフォーム(コールドパリソンとも言う)を完全に冷却した後、さらに延伸ブローを行なう方法、すなわち2ステージであるコールドパリソン法による二軸延伸ブローが最近用いられるようになってきた。
ポリプロピレンは、成形温度幅が狭いため成型時のハンドリングが困難であることが多いことに加えて、ホモポリプロピレンを使用した場合、プリフォーム後のブロー工程で成形品に不良が発生する上、透明性が発現し難く、また、得られる成形体に偏肉が発生し易いという弱点がある。
ポリプロピレンからなる射出ブロー成形体の成形性、衝撃強度、透明性を改良する方法としては、例えば、プロピレン系重合体に溶融流動性や溶融張力を制御したプロピレン系重合体を加える方法(特許文献1)が提案されている。
また、ポリオレフィン系樹脂を用いた射出ブロー成形品の例としては、透明性やガスバリア性、水蒸気バリア性を有するそれぞれのポリオレフィン系樹脂を多層に積層した多層射出ブロー容器が提案されている(特許文献2)。
特開2009−298139号公報 特開2011−235569号公報
本発明の課題は、上記問題点を解決するものであり、ポリプロピレンの射出ブロー成形加工性に優れ、透明性に優れ、且つ、偏肉が小さい射出ブロー成形品を提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達するため、鋭意検討の結果、特定の物性を有するプロピレン系重合体組成物を用いると、射出ブロー成形品として上記課題を改善させることを見出した。すなわち、本発明の概要は以下の通りである。
〔1〕下記要件(i)〜(iv)を満たすプロピレン系重合体(I)を1〜50質量%、
プロピレン系重合体(II)(ただし、プロピレン系重合体(I)を除く。)を50〜99質量%含むプロピレン系重合体組成物(A)〔(I)と(II)の合計で100質量%とする。〕を射出ブロー成形して得られる成形体。
(i)MFRが0.01〜200g/10分の範囲にある、
(ii)密度勾配管法で測定した密度が860〜920kg/m3の範囲にある、
(iii)溶融張力が170℃〜230℃のいずれかの温度において10〜80mNの範囲にある、
(iv)プロピレンから導かれる構成単位を60質量%以上含有し、実質的にシンジオタクティック構造を有する。
〔2〕前記プロピレン系重合体(II)が、アイソタクティックプロピレン単独重合体である〔1〕または〔2〕に記載の成形体。
〔3〕少なくとも1層が〔1〕記載のプロピレン系重合体組成物(A)からなる層を有する、射出ブロー成形して得られる多層成形体。
〔4〕〔1〕または〔2〕に記載の成形体あるいは〔3〕に記載の多層成形体が、容器、ボトル、あるいはカップのいずれかである成形体。
本発明に係る特定の物性を有するプロピレン系重合体(I)を含むプロピレン系重合体組成物は、射出ブロー成形時にプリフォームが均一に延伸されるので、得られる成形体は、偏肉が少なく、また、透明性に優れる。
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
〈プロピレン系重合体(I)〉
本発明の射出ブロー成形体を構成するプロピレン系重合体組成物(A)に含まれる成分の一つであるプロピレン系重合体(I)は、下記要件(i)〜(iv)を満たす重合体である。
(i)MFR(JIS K6721、230℃、2.16kg荷重)が、0.01〜200g/10分、好ましくは0.05〜150g/10分、さらに好ましくは0.05〜100g/10分の範囲である。MFRが上記範囲にあることにより、プロピレン系重合体(I)を含むプロピレン系重合体組成物(A)を用いて、射出ブロー成形する際の溶融性、延伸性、金型離型性などの成形性に優れており、得られる成形体は透明で偏肉が少ない成形体となる。
(ii)密度勾配管法で測定した密度が、860〜950kg/m3、好ましくは860〜920kg/m3、さらに好ましくは860〜890kg/m3の範囲である。上記範囲にあることにより、良好な流動性を示すので、後述のプロピレン系重合体(II)と均一に配合され、且つ、プロピレン系重合体(I)を含むプロピレン系重合体組成物(A)は、射出ブロー成形時における金型離型性に優れる。
(iii)キャピラリーレオメーターで測定した溶融張力が、170〜230℃の温度範囲において、10〜80mNの範囲である。溶融張力が、上記範囲にあることにより、プロピレン系重合体(I)を含むプロピレン系重合体組成物(A)を用いて、射出ブロー成形する際に良好な流動性を示し、且つ、後述のプロピレン系重合体(II)と均一に配合され易く、得られる成形体は機械的強度に優れる。
(iv)プロピレンから導かれる構成単位を60質量%以上、好ましくは60〜95質量%の範囲、より好ましくは60〜90質量%の範囲で有し、実質的にシンジオタクティック構造を有する。
本発明に係るプロピレン系重合体(I)は、プロピレンから導かれる構成単位が、実質
的にシンジオタクティック構造を有しているので、プロピレン系重合体(I)を含むプロ
ピレン系重合体組成物(A)は、汎用ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレン、ブロックポリプロピレン、アイソタクティックポリプロピレンよりも射出ブロー成形性の点において特に優れる。
本発明に係るプロピレン系重合体(I)が、実質的にシンジオタクティック構造を有することによる上記効果の理由については、同一分子量において絡み合い点間分子量(Me)が小さく、分子の絡み合いが多くなるため、溶融張力が大きくなり、その結果液だれを起こさないと推察される。
本発明に係るプロピレン系重合体(I)が、実質的にシンジオタクティック構造を有す
るとは、13C−NMRスペクトルにおける19.5〜20.3ppmに相当するピーク面積が、相対的に0.5以上であることをいう。シンジオタクティシティーが上記範囲にあると、成形できる程度に結晶化速度が遅く、加工性に優れる。
本発明に係るプロピレン系重合体(I)において、プロピレンと共重合される単量体はα−オレフィンであり、通常、炭素原子数が2〜20、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどであり、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。
本発明に係るプロピレン系重合体(I)は、種々公知の製造方法で製造し得る。
また、本発明に係るプロピレン系重合体(I)は、具体的には、例えば、三井化学(株)社から、ノティオTM−SN−0285(商品名)として、製造・販売されている。
〈プロピレン系重合体(II)〉
本発明の射出ブロー成形体を構成するプロピレン系重合体組成物(A)に含まれる成分の一つであるプロピレン系重合体(II)は、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンとエチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られる重合体であり、通常、結晶性の重合体である。
本発明に係るプロピレン系重合体(II)としては、結晶性を有している限り、公知のプロピレン系重合体であれば制限なく使用できるが、具体的には例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体等のアイソタクティック構造を有するプロピレン系重合体等を挙げることができる。これらプロピレン系重合体(II)の中でも、耐熱性の観点からアイソタクティックプロピレン単独重合体、及びアイソタクティックプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体などのアイソタクティックプロピレン系重合体が好ましく、アイソタクティックプロピレン単独重合体が特に好ましく利用され得る。これら重合体は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体は、13C-NMR法により測定されるアイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であるプロピレン系重合体である(以下「アイソタクティックポリプロピレン」と言うことがある)。
アイソタクティックプロピレン系重合体は、NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率が0.9以上、好ましくは0.95以上のプロピレン系重合体である。アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)は、13C-NMR法を使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクティック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占めるmmmmピークの分率として算出される値である。アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)は、特開2003-147135号公報に記載されている方法で測定、計算される。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体としては、プロピレンから導かれる構成単位とプロピレン以外の単量体から導かれる構成単位との合計を100モル%とした場合に、プロピレンから導かれる構成単位は90モル%を超える量でかつ100モル%以下、好ましくは91モル%以上100モル%以下の量含み、プロピレン以外の単量体から導かれる構成単位を0モル%以上10モル%未満、好ましくは0モル%以上9モル%以下の量含む例を挙げることができる。プロピレン以外の単量体は、全量が炭素数2〜20のα−オレフィン(但しプロピレンを除く)であることが好ましい。
具体的にはプロピレン単独重合体またはプロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここでアイソタクティックプロピレン系重合体中の、プロピレンから導かれる構成単位とプロピレン以外の単量体から導かれる構成単位との合計を100モル%とした場合に、プロピレンから導かれる構成単位は90モル%を超える量でかつ100モル%以下、好ましくは91モル%以上100モル%以下の量存在している。
ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に10モル%未満、好ましくは9モル%以下の割合で含んでいてもよい。
本発明に係るプロピレン系重合体(II)は種々公知の製造方法で製造し得る。
また、本発明に係るプロピレン系重合体(II)は、例えば、プライムポリプロ((株)プライムポリマー製)、ノバテック(日本ポリプロ(株)製)、ウィンテック(日本ポリプロ(株)製)、住友ノーブレン(住友化学(株)製)などの商品名で製造・販売されており、市場で入手できる。
〈プロピレン系重合体組成物(A)〉
本発明の射出ブロー成形体を構成するプロピレン系重合体組成物(A)は、前記プロピレン系重合体(I)を1〜50質量%、前記プロピレン系重合体(II)(ただし、プロピレン系重合体(I)を除く。)を50〜99質量%〔(I)と(II)の合計で100質量%とする。〕を必須の構成成分として含むプロピレン系重合体組成物(A)である。
プロピレン系重合体(I)の含有量が上記範囲のプロピレン系重合体組成物(A)を用いることにより、プロピレン系重合体(II)のみ、特にプロピレン単独重合体のみでは、射出ブロー成形が困難であった、射出ブロー成形を可能にする。具体的には、プロピレン系重合体(II)にプロピレン系重合体(I)を配合してなるプロピレン系重合体組成物(A)を用いて射出ブロー成形すると、得られるプリフォームが均一に延伸され、偏肉が小さく、透明性が改善された成形体となる。その理由としては、溶融張力の大きいプロピレン系重合体(I)を配合することでブロー成形に必要な溶融張力を付与でき、かつ結晶化速度が遅くなるため、ブロー成形中も結晶化することなく成形できるためと推察される。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)は、好ましくはプロピレン系重合体(I)が2〜40質量%、プロピレン系重合体(II)が60〜98質量%、より好ましくはプロピレン系重合体(I)が5〜30質量%、プロピレン系重合体(II)が70〜95質量%、特に好ましくはプロピレン系重合体(I)が5〜20質量%、プロピレン系重合体(II)が80〜95質量%〔(I)と(II)の合計で100質量%とする。〕である。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、例えば、オレフィン系重合体または共重合体、オレフィン系エラストマーを添加しても良い。このような樹脂の市販品としては、例えば、ミラソン((株)プライムポリマー製)、サンテック(旭化成ケミカルズ(株)製)、エボリュー((株)プライムポリマー製)、ハイゼックス((株)プライムポリマー製)、ミラストマー(三井化学(株)製)、タフマー(三井化学(株)製)、ビスタマックスTM(ExxonMobil Chemical Company製)、バーシファイTM(The Dow Chemical Company製)、サントプレンTM(ExxonMobil Chemical Company製)、ウェルネックス(日本ポリプロ(株)製)、インフューズTM(The Dow Chemical Company製)などの商品名で製造・販売されている種々のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
また、本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)には、水添スチレン系ブロック共重合体、水添スチレン系ランダム共重合体などのゴム成分を添加してもよい。このような水添スチレン系ブロック共重合体の市販品としては、例えば、クレイトンG(シェル化学(株)製)、ハイブラー((株)クラレ製)、タフテック(旭化成工業(株)製)、セプトンR((株)クラレ製)などが挙げられる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)には、必要に応じて、更に無機充填剤、造核剤、酸化防止剤、難燃材剤、帯電防止剤、顔料、染料、発錆防止剤などの添加物を添加することができる。
例えば、滑剤の例としては、ステアリル酸ホスフェイト系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アミド、シリコーンオイル、シリカ等が挙げられる。また、結晶核剤の例としては、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー、タルクなどが挙げられる。これらの市販品としては、アデカスタブNAシリーズ((株)ADEKA製)、ゲルオールシリーズ(新日本理化(株)製)、リカファストシリーズ(新日本理化(株)製)、イルガクリア(BASF社製)、ミラッドシリーズ(ミリケンジャパン社製)、ハイパフォームシリーズ(ミリケンジャパン社製)等が挙げられる。
本発明に係る成形体には、プロピレン系重合体(I)を必須成分として、プロピレン系重合体(II)、更に上記の樹脂およびまたはゴム成分を含むことができるが、成形体全体に含まれるプロピレン系重合体(I)とプロピレン系重合体(II)との含量は、80質量%以上が好ましい。成形体のプロピレン重合体などの含量が上記範囲にあると、偏肉がなく、成形加工性に優れた射出ブロー成形体を得ることができる。
〈成形体〉
本発明の成形体は、上記プロピレン系重合体組成物(A)を射出ブロー成形して得られる成形体である。
本発明の成形体の製造方法は、種々公知の射出ブロー成形方法を採用し得る。具体的には、例えば、一旦、射出成形でプリフォームを成形し、そのプリフォームをブロー成形する射出ブロー成形法等がある。
さらに、射出ブロー成形法には射出成形機とブロー成形機が一体化した1ステージであるホットパリソン法、射出成形したプリフォームを完全に冷却した後、さらに再加熱してブロー成形を行なうコールドパリソン法がある。
具体的には本発明に係るプロピレン系重合体組成物を溶融して、金型内にプロピレン系重合体組成物(A)を射出成形することによりプリフォームを成形する。続いて、このプリフォームを溶融状態あるいは軟化状態で、または冷却固化した状態で赤外線ヒーター等を用いて所定の温度まで再加熱して、加熱後に特定の金型内で気体を圧入して2軸延伸して所望の形態に成形する。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)の溶融、射出温度、延伸倍率等は、公知の成形条件を用いることができる。
また、本発明の成形体は、本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)および変性体を適宜組み合せても製造できる。更に、成形体の構成は単層でもよいし、複数層でもよいが、本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)からなる層が、成形体の最も厚い層であると、得られる成形体に偏肉が起こりにくい。
成形体が複数層である場合、本発明に係るプロピレン系重合体組成物(A)からなる層以外の層は、通常ブロー成形に用いられる公知の樹脂を用いることができるが、このような樹脂としてはポリエステル樹脂やランダムポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
得られる成形体は以下の用途で好適に用いられるが、下記に限定されるわけではない。
中空容器;食品容器、調味料容器、レトルト容器、冷凍保存容器、電子レンジ耐熱容器、医療用容器、トナー容器、粉末容器、ガソリンタンク用容器、灯油用容器、フラスコなど実験器具。
ボトル;化粧品ボトル、整髪剤、飲料水用ボトル、炭酸飲料ボトル、アルコール類用、ボトル、洗剤用ボトル、柔軟剤用ボトル、漂白剤用ボトル、シャンプー用ボトル、リンス用ボトル、薬剤ボトル、接着剤用ボトル、農薬用ボトル、医療用ボトル、輸液ボトル、哺乳瓶、医療バック、輸液バック、血液保存バック。
カップ;食品用カップ、包装用カップ、等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
(1)MFR(g/10分)
MFRは、JIS K6721に準拠して、230℃で2.16kgfの荷重にて測定した。
(2)密度(kg/m3
密度は、ASTM−D1505に準拠して、密度勾配管法にて測定した。
(3)溶融張力(mN)
プロピレン系重合体(I)の溶融張力は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1C((バレル径9.55mmΦ)、バレル温度200℃、キャピラリー長(L)=8mm、キャピラリー直径(D)=2.095mm、L/D=3.82)を用い、ピストン速度=15mm/min、巻き取り速度=15mm/min、の条件にて測定を行い、得られた値の平均値を求めた。
(4)シンジオタクティック構造の含有量
プロピレン系重合体(I)に含まれるシンジオタクティック構造は、13C−NMRスペクトルにおける19.5〜20.3ppmに相当する相対ピーク面積により求めた。
(5)グロス(%)
JIS K7105に準拠し、射出ブロー成形で得られた成形体を試験片として用いて、グロスメーターを用いて室温にてグロス角度60°で測定した。
(6)内部ヘイズ(%)
射出ブロー成形で得られた成形体を試験片として用いて、ベンジルアルコール中で日本電色工業(株)製のデジタル濁度計(NDH−20D)にて測定した。
(7)射出ブロー成形性
プロピレン系重合体(I)およびプロピレン系重合体(II)を表2のとおり配合し、日精エー・エス・ビー機械株式会社製ワンステップストレッチブロー成形機ASB−12N/10を用い、射出樹脂温度;210〜240℃の範囲、金型冷却温度20〜40℃の条件で外径30mm、高さ45mm、重量約30gの試験管形状のプリフォームを射出成形し、得られたプリフォームを加熱ポットに入れて所定の温度に加熱した後に約240ccの中空容器になるようにブロー1次圧力1MPa、2次圧力1.8MPaでブロー成形した。
射出ブロー成形性は以下の観点で評価した。
射出ブロー成形品に破れなく成形できた場合:○
射出ブロー成形品がブロー時に延伸できずに破れた場合:×
なお、本発明の成形体に用いたプロピレン系重合体(I)の物性は表1に示す。
Figure 0006289191
[実施例1]
プロピレン系重合体(I)として、ノティオTM−SN−0285(三井化学(株)製、商品名)を、プロピレン系重合体(II)としてプロピレン単独重合体〔アイソタクティックポリプロピレン:プライムポリプロTMJ2000GP((株)プライムポリマー製、商品名)〕を表2に記載の比率にて配合し、射出ブロー成形して、成形体(ボトル)を作製した。得られたボトルの評価結果を表2に示す。偏肉のない透明性に優れたボトルを得た。
[実施例2]
ボトルの配合比を表2に記載の比率にしたこと以外は、実施例1と同様に射出ブロー成形して、ボトルを作製した。得られたボトルの評価結果を表2に示す。偏肉のない透明性に優れたボトルを得た。
[実施例3]
ボトルの配合比を表2に記載の比率にしたこと以外は、実施例1と同様に射出ブロー成形して、ボトルを作製した。得られたボトルの評価結果を表2に示す。偏肉のない透明性に優れたボトルを得た。
[比較例1]
プロピレン系重合体(I)を配合せず、プロピレン系重合体(II)としてプロピレン単独重合体〔アイソタクティックポリプロピレン:プライムポリプロTMJ2000GP((株)プライムポリマー製、商品名)〕を単独で用いたこと以外は、実施例1と同様に行い射出ブロー成形を行ったが、ブロー時に均一に延伸できず、ボトルの一部が破裂した。また、透明性にも劣っていた。結果を表2に示す。
Figure 0006289191
本発明によれば、プロピレン系重合体(I)の含有量が上記範囲のプロピレン系重合体組成物(A)を用いることにより、プロピレン系重合体(II)のみ、特にプロピレン単独重合体のみでは、これまで実用化が難しかった射出ブロー成形を可能にし、安価で透明性に優れた射出ブロー成形体を提供できる。

Claims (4)

  1. 下記要件(i)〜(iv)を満たすプロピレン系重合体(I)を1〜50質量%、プロピレンから導かれる構成単位が90モル%を超え100モル%以下であり、かつプロピレン以外の単量体から導かれる構成単位がエチレンまたは炭素原子数4〜10のα―オレフィンであり、その量が0モル%以上10モル%未満であって、 13 C-NMR法により測定されるアイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)が85%以上であるアイソタクティックプロピレン系重合体(II)(ただし、プロピレン系重合体(I)を除く。)を50〜99質量%含むプロピレン系重合体組成物(A)〔(I)と(II)の合計で100質量%とする。〕を射出ブロー成形して得られる成形体。
    (i)MFRが0.01〜200g/10分の範囲にある、
    (ii)密度勾配管法で測定した密度が860〜920kg/m3の範囲にある、
    (iii)溶融張力が170℃〜230℃のいずれかの温度において10〜80mNの範囲にある、
    (iv)プロピレンとそれに共重合される単量体であるエチレンまたは炭素原子数が4〜10のα-オレフィンからなり、プロピレンから導かれる構成単位を60〜90質量%(ただし、90質量%の場合を除く。)の範囲で有しており、シンジオタクティシティーが 13 C−NMRスペクトルにおける19.5〜20.3ppmに相当するピーク面積が、相対的に0.5以上であるシンジオタクティック構造を有する。
  2. アイソタクティックプロピレン系重合体(II)が、 13 C-NMR法により測定されるアイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)が90%以上であるアイソタクティックプロピレン単独重合体である請求項1に記載の成形体。
  3. 求項1記載のプロピレン系重合体組成物(A)からなる層、およびそれ以外の層であってポリエステル樹脂またはランダムポリプロピレン系樹脂からなる層を有する多層成形体であって、請求項1記載のプロピレン系重合体組成物(A)からなる層が当該多層成形体の最も厚い層であることを特徴とする多層成形体。
  4. 請求項1または2に記載の成形体あるいは請求項3に記載の多層成形体が、容器、ボトル、あるいはカップのいずれかである成形体。
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