JP6287655B2 - 炭酸ジフェニルの製造方法およびポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
炭酸ジエステルの製造方法としては、ホスゲンと芳香族ヒドロキシ化合物をアルカリ存在下で反応させる方法が知られている。しかしながら、ホスゲン自体が毒性の強い化合物である上に多量のアルカリが必要であるため、シュウ酸ジエステルを有機リン化合物などの脱カルボニル化触媒の存在下で脱カルボニル化反応させることによる炭酸ジエステルの製造方法も提案されている(特許文献1参照)。また、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化反応で得られる炭酸ジフェニルは、フラン系化合物などの軽質不純物を含むため、蒸留または熱分解する(150〜300℃の温度で約0.05〜10時間熱処理することに熱分解、縮合及び/又は熱変性させる)ことにより除去する方法が提案されている (特許文献2参照)。
本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の炭酸ジフェニルの製造方法であって、以下の第1〜3工程をこの順に有することを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法に存する。第1工程:脱カルボニル化反応により炭酸ジフェニルを生成させる工程。
第2工程:第1工程で生成された炭酸ジフェニルを含む成分を触媒液から分離する工程。
第3工程:第2工程で分離された炭酸ジフェニルを含む成分を塩基性化合物と接触させる工程。
また、本発明の第4の要旨は、第1乃至第3の何れか1つの要旨に記載の炭酸ジフェニルの製造方法であって、前記塩基性化合物との接触により、前記粗炭酸ジフェニルに含まれるフラン系化合物を分解させることを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法に存する。本発明の第5の要旨は、前記フラン系化合物がベンゾフラン−2,3−ジオンであることを特徴とする第1乃至4の何れか1つの要旨に記載の炭酸ジフェニルの製造方法に存する。
シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化反応は、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
[シュウ酸ジフェニル]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において、シュウ酸ジフェニル(以下、「本発明に係るシュウ酸ジフェニル」又は単に「シュウ酸ジフェニル」と言う場合がある)は、炭酸ジフェニル(以下、「本発明に係る炭酸ジフェニル」又は単に「炭酸ジフェニル」と言う場合がある)の原料である。また、本発明に係るシュウ酸ジフェニルを原料として得られる、本発明に係るシュウ酸ジフェニルは、熱的に安定でポリカーボネートの原料として好適である。
ルとのエステル交換反応で製造したものなどを用いることができる。ここで、原料となるシュウ酸ジアルキルは、下記反応式(3)で示すように、一酸化炭素、酸素及び脂肪族アルコールを原料とする酸化カルボニル化反応で製造したものなどを用いることができる。
[触媒]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、触媒存在下で行われる。脱カルボニル化反応に用いる触媒としては、有機リン化合物、特にリン原子の原子価が5価であって、少なくとも1個の炭素―リン結合を有する有機リン化合物が好適に用いられる。このような有機リン化合物としては、一般式(4)で表されるテトラアリールホスホニウム塩が好ましい。
Ar1〜Ar4の芳香環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基及びチエニル基、フリル基、ピリジル基等のイオウ原子、酸素原子又は窒素原子を含有する炭素数4〜16の芳香族複素環基などが挙げられる。これらのうち安価に触媒を製造できることから芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基が更に好ましい。
チオアリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜16)、アシル基(好ましくは炭素数1〜12)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜16)、カルボキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基(好ましくは炭素数2〜16)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)等が挙げられる。また、これらの置換基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、芳香環基やハロゲン原子などが挙げられる。これらのうち、熱的に安定であることからアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数3〜8の分岐したアルキル基が更に好ましい。
一般式(4)のハロゲン原子Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子である。これらのうち、脱カルボニル化反応において、高活性な触媒として作用しやすいことから塩素原子が好ましい。即ち、本発明の炭酸ジフェニルの製造において用いる触媒は、テトラフェニルホスホニウムクロライドが好ましい。
ホスホニウムクロライド、テトラ(o、p−ジ-t-ブチルフェニル)ホスホニウムクロラ
イド、テトラナフチルホスホニウムクロライド、テトラ(p−フェニルフェニル)ホスホニウムクロライドなどが挙げられる。また、Ar1〜Ar4が何れも無置換の芳香族炭化水素基としては、p−ビフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、1−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。Ar1〜Ar4が無置換の芳香族炭化水素基又は置換基を有する芳香族炭化水素基である有機ホスホニウムクロライドとしては、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、m−トリフルオロメチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のベンジルプロトンを有さずアルキル基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のハロゲン原子を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアルコキシ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−アミノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアミノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のシアノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物及びp−ニトロフェニル−トリ−p−トリルホスホニウムクロライド等のニトロ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物など
が挙げられる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル化反応を高選択率で維持しやすいことから、触媒と共にハロゲン化合物(以下「本発明に係るハロゲン化合物」と言う場合がある)を用いることが好ましい。
本発明に係るハロゲン化合物としては、下記の無機ハロゲン化合物及び/又は有機ハロゲン化合物などが挙げられる。これらのハロゲン化合物の中では、塩素化合物が好ましい。ハロゲン化合物は、触媒に対してモル比(ハロゲン化合物/触媒)が通常0.01〜300、好ましくは0.1〜100であるように用いられるのが良い。なお、ハロゲン化合物は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
alは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。これらの構造は、例えば、一般式(a)、(b)、(c)、(d)としてそれぞれ表される。
有機ハロゲン化合物としては、例えば、以下のような化合物が具体的に挙げられる。
一般式(a)で表されるような、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル、塩化ドデシル等のハロゲン化アルキルや、塩化ベンジル、ベンゾトリクロリド、塩化トリフェニルメチル、α−ブロモ−o−キシレン等のハロゲン化アラルキルや、β−クロロプロピオニトリル、γ−クロロブチロニトリル等のハロゲン置換脂肪族ニトリルや、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロプロピオン酸等のハロゲン置換脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
一般式(d)で表されるような、イオウ原子にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ナフタレンスルホン酸クロライド等のハロゲン化スルホニルなどが挙げられる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法における脱カルボニル化反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル化反応」又は単に「脱カルボニル化反応」と言う場合がある)は、液相反応で行うことが好ましい。脱カルボニル化反応の反応温度は、反応速度の点では高温であることが好ましいが、炭酸ジフェニルの純度の点では低温であることが好ましい。そこで、常圧の場合、反応温度は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。反応時の圧力は、プロセス上の要件から決めればよい。
脱カルボニル化反応は、反応に用いる物質の融点以上の温度で反応を行う場合は、溶媒を用いる必要はないが、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性極性溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等を適宜使用することもできる。
ルを生成させることができれば特に制限はないが、副反応でフェノールなどの芳香族モノヒドロキシ化合物が生成する場合があるので、耐酸性材質の金属製容器やグラスライニング製容器が好ましい。このような反応器としては、例えば1槽または多槽式の完全混合型反応器(攪拌槽)、塔型反応器などを用いることができる。
脱カルボニル化反応により得られる粗炭酸ジフェニルには、通常、炭酸ジフェニル、触媒及び未反応シュウ酸ジフェニルなどが含まれている。また、シュウ酸ジフェニル、炭酸ジフェニル、触媒等の転位、分解、反応等により生じた副生物なども含まれている可能性がある。副生物としては、例えば、シュウ酸ジフェニルのフリース転位や以下の反応式(5)の脱カルボニル化反応により生成するベンゾフラン−2,3−ジオンなどのフラン系化合物などが挙げられる。また、フェノールなどの芳香族モノヒドロキシ化合物、フェニル4−クロロ安息香酸なども挙げられる。前述のハロゲン化合物を用いた場合は、該ハロゲン化合物又はその副生物が含まれている可能性もある。
特に、ベンゾフラン−2,3−ジオンは、橙色を呈した化合物で、炭酸ジフェニルの着色原因物質となることから除去する必要がある。そこで、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化反応により得られる粗炭酸ジフェニルを塩基性化合物と接触させることにより、該粗炭酸ジフェニルに含まれるフラン系化合物を分解するという簡便な方法により、高純度な炭酸ジフェニルを効率良く、安定的且つ連続的に製造することができる。
フラン系化合物の除去に用いる塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどの炭酸水素アルカリ金属塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウムなどのアルカリ金属の酢酸塩;ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウムなどのステアリン酸のアルカリ金属塩;水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素セシウムなどの水素化ホウ素のアルカリ金属塩;安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウムなどのアルカリ金属の安息香酸塩;リン酸二水素リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素セシウムなどのアルカリ金属のリン酸二水素塩;フェニルリン酸二リチウム、フェニルリン酸二ナトリウム、フェニルリン酸二カリウム、フェニルリン酸二セシウムなどのアルカリ金属のフェニルリン塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムのアルコラート;リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムのフェノキシド;ビスフェノールAの二リチウム塩、二ナトリウム塩、二カリウム塩、二セシウム塩などが挙げられる。
シウム、水酸化ストロンチウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウムなどの炭酸水素アルカリ土類金属塩;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属の酢酸塩;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのステアリン酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
有機アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
塩基性化合物は、粗炭酸ジフェニルに含まれるフラン系化合物などの不純物と接触させることができれば、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においてどのように供給しても良い。塩基性化合物は、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化反応により得られる粗炭酸ジフェニルを貯蔵するタンクやその精製塔などに供給することが簡便で好ましい。粗炭酸ジフェニルを貯蔵するタンクとしては、具体的には、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化反応により得られる反応液から触媒液を除去した成分を貯槽するタンクが挙げられる。また、粗炭酸ジフェニルの精製塔としては、特開2002−322130号公開公報に記載されたように、蒸留する蒸留塔などが挙げられる。
粗炭酸ジフェニルに供給する塩基性化合物の量は、フラン系化合物の分解が起こり易い点では多いことが好ましいが、炭酸ジフェニルの分解が起こり難い点では少ないことが好ましい。そこで、炭酸ジフェニル100重量部に対して、通常0.0000001重量部以上、好ましくは0.000001重量部以上、更に好ましくは0.00001重量部以上であり、また、一方で、通常1重量部以下、好ましくは0.1重量部以下、更に好ましくは0.01重量部以下である。
フラン系化合物の除去は、通常、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化反応により得られる粗炭酸ジフェニルから触媒液を除去した炭酸ジフェニルを含む成分に対して行う。すなわち、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、以下の第1〜3工程をこの順に有することが好ましい。
第2工程:第1工程で生成された炭酸ジフェニルを含む成分を触媒液から分離する工程。
第3工程:第2工程で分離された炭酸ジフェニルを含む成分を塩基性化合物と接触させる工程。
更に好ましくは0.1重量%以上であり、また、一方で、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。これら以外の成分としては、フェノールなどの芳香族モノヒドロキシ化合物などが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下である。この留分にはフェノールなどの芳香族モノヒドロキシ化合物などが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下である。
そして、本発明の炭酸ジフェニルの好ましい製造方法は、この第2工程で分離された炭酸ジフェニルを含む成分を塩基性化合物と接触させる。
また、脱カルボニル化反応で副生する一酸化炭素は、反応液から自然に気液分離され、排出させることが好ましい。また、一酸化炭素は、亜硝酸エステルと一酸化炭素からシュウ酸ジフェニルを製造する場合の原料として再利用することも可能である。(例えば、特
開平10−152457号公報などに記載の方法を参照)。ここで、一酸化炭素にフェノ
ール、二酸化炭素、ハロゲン化水素などの不純物が含まれる場合は、吸収塔やスクラバーなどの精製装置を通した後に、シュウ酸ジフェニルの原料などに利用することが好ましい。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、連続反応により行うことが好ましい。また、連続反応を行う場合は、第2工程で分離された触媒液の少なくとも一部を第1工程にリサイクルする工程を有することが更に好ましい。
[触媒の回収]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、このリサイクルする工程により、触媒を再利用することができる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化
反応により得られる粗炭酸ジフェニルを塩基性化合物と接触させることにより、該粗炭酸ジフェニルに含まれるフラン系化合物を除去するという簡便な方法により、高純度な炭酸ジフェニルを効率良く、安定的且つ連続的に製造することができる。そこで、上述の本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により得られる炭酸ジフェニルの純度は、通常99.0重
量%以上、好ましくは99.3重量%以上、更に好ましくは99.5重量%以上である。不純物が含まれる場合は、イオン性の塩素などが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.1重量ppm以下、更に好ましくは0.01重量ppm以下である。
本発明で製造される炭酸ジフェニルの用途のひとつであるポリカーボネートは、上述の方法により製造された炭酸ジフェニルと、ビスフェノールAに代表されるジヒドロキシ化合物とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させることで製造できる。炭酸ジフェニルとエステル交換させるジヒドロキシ化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物でも脂肪族ジヒドロキシ化合物でも良いが、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に炭酸ジフェニルとビスフェノールAを原料とした一例を説明する。
炭酸ジフェニルとビスフェノールAとのエステル交換反応でポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネートの製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネートを得やすい。
上記方法によりポリカーボネートを製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
れた両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
[ポリカーボネート]
上述のように本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルは非常に高純度であることから、本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
[原料]
炭酸ジフェニル及びフェノールは、三菱化学株式会社の製品を使用した。
シュウ酸ジフェニルは、東京化成株式会社の製品を単蒸留により精製した後にトルエンを用いて再結晶したものを使用した。ここで得られたシュウ酸ジフェニルに含まれるベンゾフラン−2,3−ジオンの量を高速液体クロマトグラフィーにより測定したが、検出限界である10重量ppb以下であった。
塩化水素ガスは、住友精化株式会社の製品をテドラバッグに捕集し、ガスタイトシリンジを用いて所定量を反応液に供給した。
9.2重量%の水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウムと脱塩水とから調製した。
塩素イオン分析で使用したトルエンは、和光純薬工業株式会社の製品を超純水で塩素濃度1重量ppb未満になるまで洗浄及び抽出して使用した。
[合成例1]
Bull.Chem.Soc.Jpn.82(2009)475に記載された方法により、ベンゾフラン−2,3−ジオンを合成した。
ベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で測定した。
装置:島津製作所社製LC−2010A、Scherzo SM−C 18、3μm、250mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度40℃。溶離液組成:A液
酢酸:アセトニトリル:水=0.1体積%:10体積%:90体積%、B液 0.2重
量%酢酸アンモニウム水溶液:アセトニトリル=90体積%:10体積%。分析時間0〜20分はA液:B液=60:40で固定(体積比、以下同様。)。分析時間20〜25分は溶離液組成をA液:B液=85:5へ徐々に変化させ、分析時間25〜35分はA液:B液=60:40に維持、流速0.85ミリリットル/分)にて分析した。
装置:DIONEX社製ION CROMATOGRAPH、IonPac AS12A。溶離液は、超純水に炭酸ナトリウムを2.7ミリモル・dm−3となるように、炭酸水素ナトリウムを0.3ミリモル・dm−3に添加した液を使用した。
撹拌子と温度計を備えた500cm3の三口フラスコに、炭酸ジフェニル200.0gとシュウ酸ジフェニル0.2gを入れた後に210℃に加熱した。この三口フラスコに、合成例1で合成したベンゾフラン−2,3−ジオンを微量添加して、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ、8000重量ppbであった。この三口フラスコに、更にナトリウムフェノキシドを0.2g添加して、30分間210℃を維持した後、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ、100重量ppbであった。
撹拌子と温度計を備えた500cm3の三口フラスコに、炭酸ジフェニル200.1gとシュウ酸ジフェニル0.2gを入れた後に210℃に加熱した。この三口フラスコに、合成例1で合成したベンゾフラン−2,3−ジオンを微量添加して、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ、578重量ppbであった。この三口フラスコを120分間210℃に維持した後、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ、174重量ppbであった。
撹拌子と温度計を備えた500cm3の三口フラスコに、炭酸ジフェニル201.2gとシュウ酸ジフェニル0.2gを入れた後に210℃に加熱した。この三口フラスコに、塩化水素ガスを40cm3添加して、高速液体クロマトグラフィーにより、その塩素濃度を測定したところ、227重量ppmであった。この三口フラスコに、更にベンゾフラン−2,3−ジオンを微量添加して、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ、458重量ppbであった。この三口フラスコを120分間210℃を維持した後、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ、547重量ppbであった。
実施例1及び比較例1、2の結果を表1に纏める。
撹拌子と温度計を備えた試験管に、炭酸ジフェニル20.0gを入れた後に、オイルバスを用いて内温が200℃になるように加熱した。この試験管に、合成例1で合成したベンゾフラン−2,3−ジオン4.1mgと9.2重量%の水酸化ナトリウム水溶液53.7mg(水酸化ナトリウムとして0.1ミリモル)を添加した。この試験管を30分間200℃に維持した後、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ90重量ppmであった。分解率は55.9%であった。
撹拌子と温度計を備えた試験管に、炭酸ジフェニル20.0gを入れた後に、オイルバスを用いて内温が200℃になるように加熱した。この試験管に、合成例1で合成したベンゾフラン−2,3−ジオン5.1mgとナトリウムフェノキシド14.3mg(0.1ミリモル)を添加した。この試験管を30分間200℃に維持した後、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ76重量ppmであった。分解率は70.0%であった。
撹拌子と温度計を備えた試験管に、炭酸ジフェニル20.0gを入れた後に、オイルバスを用いて内温が200℃になるように加熱した。この試験管に、合成例1で合成したベンゾフラン−2,3−ジオン5.5mgと0.9重量%の水酸化ナトリウム−フェノール溶液0.6g(水酸化ナトリウムとして0.1ミリモル)を添加した。この試験管を30分間200℃に維持した後、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ86重量ppmであった。分解率は68.7%であった。
撹拌子と温度計を備えた試験管に、炭酸ジフェニル20.0gを入れた後に、オイルバスを用いて内温が200℃になるように加熱した。この試験管に、合成例1で合成したベ
ンゾフラン−2,3−ジオン2.8mgを添加した。この試験管を30分間200℃に維持した後、高速液体クロマトグラフィーにより、そのベンゾフラン−2,3−ジオンの濃度を測定したところ101重量ppmであった。分解率は27.9%であった。
実施例2〜4及び比較例3の結果を表2に纏める。
Claims (6)
- シュウ酸ジフェニルを触媒存在下で脱カルボニル化反応させることを含む炭酸ジフェニルの製造方法であって、該脱カルボニル化反応により粗炭酸ジフェニルを得た後、該粗炭酸ジフェニルを塩基性化合物と接触させることを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法。
- 請求項1に記載の炭酸ジフェニルの製造方法であって、以下の第1〜第3工程をこの順に有することを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法。
第1工程:脱カルボニル化反応により炭酸ジフェニルを生成させる工程、
第2工程:第1工程で生成された炭酸ジフェニルを含む成分を触媒液から分離する工程、第3工程:第2工程で分離された炭酸ジフェニルを含む成分を塩基性化合物と接触させる工程 - 請求項2に記載の炭酸ジフェニルの製造方法であって、第2工程で分離された触媒液の少なくとも一部を第1工程にリサイクルする工程を有する炭酸ジフェニルの製造方法。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載の炭酸ジフェニルの製造方法であって、前記塩基性化合物との接触により、前記粗炭酸ジフェニルに含まれるフラン系化合物を分解させることを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法。
- 前記フラン系化合物がベンゾフラン−2,3−ジオンであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の炭酸ジフェニルの製造方法。
- 炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることによるポリカーボネートの製造方法であって、前記炭酸ジフェニルを請求項1乃至5の何れか1項に記載の炭酸ジフェニルの製造方法により製造した後に、前記ジヒドロキシ化合物と重縮合させることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
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