JP6344196B2 - 炭酸ジエステルの製造方法及び該製造方法により得られる炭酸ジエステル並びに該炭酸ジエステルから製造されるポリカーボネート - Google Patents

炭酸ジエステルの製造方法及び該製造方法により得られる炭酸ジエステル並びに該炭酸ジエステルから製造されるポリカーボネート Download PDF

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本発明は、炭酸ジエステルの製造方法及び該製造方法により得られる炭酸ジエステルに関する発明であり、詳しくは、簡便で効率良く、高純度な炭酸ジエステルを安定的に製造できる方法に関する発明である。また、本発明は、この方法により製造した炭酸ジエステルを原料として得られる着色が少なく、高純度なポリカーボネートに関する発明である。
炭酸ジエステルは、種々の化学反応における原料化合物として知られており、特に、炭酸ジアリールは二価ヒドロキシ芳香族化合物との重縮合反応によりポリカーボネートを製造できることがよく知られている。
炭酸ジエステルは、シュウ酸ジエステルの脱カルボニル反応などにより得ることができるが、ジフェニルオキサレートからジフェニルカーボネートをテトラフェニルホスホニウムクロライドの存在下で生成する場合、触媒の析出を抑えるために転化率95%以下で脱カルボニル反応させる必要があるとされている。(特許文献1参照)。
また、シュウ酸ジアリールの脱カルボニル反応により得られる炭酸ジアリールの純度については、脱カルボニル反応液を蒸発装置で蒸発操作することによって、その脱カルボニル反応液を脱カルボニル触媒や高沸点物質などを含有する未蒸発成分と目的物の炭酸ジアリール及び原料のシュウ酸ジアリールを主として含有する蒸発成分とに分離し、更に該蒸発成分を蒸留操作などで精製することによって得られる製品留分を用いた場合であっても、シュウ酸ジアリールのフリース転位反応などにより生成するベンゾフラン−2,3−ジオンなどのフラン系化合物の混入により、その炭酸ジアリールを用いて製造したポリカーボネート製品が着色してしまうため、脱カルボニル反応液を蒸発操作することによって炭酸ジアリールを含む蒸発成分を分離・回収し、次いでその蒸発成分を蒸留操作することによって低沸点物質及び高沸点物質を順次除去して得た炭酸ジアリールの粗留分からフラン系不純物を除去する必要のあることが報告されている(特許文献2参照)。
特開平11−246489号公報 特開2002−47251号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載の方法についても、精製に多数の蒸留工程が必要であり、操作が非常に煩雑であるなどの問題があった。
本発明は、これらの問題点を解決し、シュウ酸ジエステルの脱カルボニル反応による炭酸ジエステルの製造方法について、簡便で効率良く、これを原料として製造したポリカーボネートに着色が起こり難いほど高純度な炭酸ジエステルを、触媒析出による閉塞などのトラブルを生じることなく安定的に製造できる方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。この結果、シュウ酸ジエステルを触媒存在下で脱カルボニル反応させることによる炭酸ジエステルの製造方法において、炭酸ジエステルに可溶な触媒を用いることにより、触媒の析出を起こすことなく転化率96%以上で行った後、反応液に含まれる炭酸ジエステルの50重量%以上を蒸発させるこ
とにより、残存シュウ酸ジエステル量を低減し、炭酸ジエステル蒸発時のフラン系化合物の副生を抑制することが可能となり、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の第1の要旨は、シュウ酸ジエステルを触媒存在下で脱カルボニル反応させることによる炭酸ジエステルの製造方法であって、該触媒が炭酸ジエステルに可溶であり、該脱カルボニル反応を転化率96%以上で行った後、反応液に含まれる炭酸ジエステルの50重量%以上を蒸発させることにより取り出した後に、残存した反応液を該脱カルボニル反応に供給することを特徴とする炭酸ジエステルの製造方法に存する。また、本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記触媒が150℃において炭酸ジエステル100gに対し、10g以上溶解することを特徴とする炭酸ジアリールの製造方法に存する。本発明の第3の要旨は、第1又は第2の要旨に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記取り出した炭酸ジエステルに含まれるフラン系化合物が1ppm以下であることを特徴とする炭酸ジエステルの製造方法に存する。本発明の第4の要旨は、第1乃至第3の何れかの要旨に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記脱カルボニル反応後の反応液に含まれる軽質留分及び高沸点物質を蒸留により除去することを特徴とする炭酸ジエステルの製造方法に存する。
そして、本発明の第5の要旨は、第1乃至第4の何れかの要旨に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記触媒が非対称テトラアリールホスホニウムハライドであることを特徴とする炭酸ジエステルの製造方法に存する。本発明の第6の要旨は、第5の要旨に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記触媒がp−t−ブチルトリフェニルホスホニウムクロライドであることを特徴とする炭酸ジエステルの製造方法に存する。本発明の第7の要旨は、第1乃至第6の何れかの要旨に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記シュウ酸ジエステルがシュウ酸ジフェニルであり、前記炭酸ジエステルが炭酸ジフェニルであることを特徴とする炭酸ジエステルの製造方法に存する。
また、本発明の第8の要旨は、第1乃至第7の何れかの要旨に記載の炭酸ジエステルの製造方法により得られる炭酸ジエステルに存する。本発明の第9の要旨は、芳香族ジヒドロキシ化合物と第8の要旨に記載の炭酸ジエステルとをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより得られるポリカーボネートに存する。
本発明によれば、シュウ酸ジエステルの脱カルボニル反応による炭酸ジエステルの製造方法について、簡便で効率良く、触媒析出による閉塞などのトラブルを生じることなく安定的に高純度の炭酸ジエステルを製造することができる。また、この炭酸ジエステルを原料として用いることにより、着色が起こり難い高純度なポリカーボネートを得ることができる。
以下、本発明の炭酸ジエステルの製造方法の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の炭酸ジエステルの製造方法は、シュウ酸ジエステルを触媒存在下で脱カルボニル反応させる。本発明の炭酸ジエステルの製造方法は、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
Figure 0006344196
(式中、2つのRは、各々独立に置換基を有していてもよい炭化水素基である。)
[シュウ酸ジエステル]
反応式(1)におけるシュウ酸ジエステル(以下、「本発明に係るシュウ酸ジエステル」又は単に「シュウ酸ジエステル」と言う場合がある)は、本発明の炭酸ジエステルの製造方法における原料である。
本発明に係るシュウ酸ジエステルは、通常、目的とする炭酸ジエステルと同じ種類の炭化水素基(R)を有するシュウ酸ジエステルを用いる。本発明に係るシュウ酸ジエステルにおける炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でも良い。すなわち、シュウ酸ジエステルが有する炭化水素基は、2つともアルキル基であっても、アルキル基と芳香環基が1つずつでも、2つとも芳香環基であっても良い。但し、本発明の炭酸ジエステルをポリカーボネートなどの原料として用いる際に脱離し易く、脱離基の回収が容易であることから2つとも芳香環基であることが好ましい。
本発明に係るシュウ酸ジエステルが有する炭化水素基がアルキル基である場合、直鎖、分岐および環式のいずれであってもよい。
本発明に係るシュウ酸ジエステルが有する炭化水素基が芳香環基である場合、該芳香環基は、芳香族炭化水素環基でも良いし、芳香族複素環基でも良い。但し、本発明の炭酸ジエステルをポリカーボネートを製造する原料として用いる際に脱離しやすいことから、芳香族炭化水素環基が好ましい。また、脱離基の回収が容易で、脱離基が安定であることから単環が好ましい。
該芳香族炭化水素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5または6員環の単環または2〜5縮合環などが挙げられる。該芳香族炭化水素環基の具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。これらの内、本発明の炭酸ジエステルをポリカーボネートなどを製造する原料として用いる際に脱離基が安定であることから1個の遊離原子価を有するベンゼン環(フェニル基)が特に好ましい。すなわち、本発明に係るシュウ酸ジエステルは、上記反応式(1)で生成される炭酸ジエステルにおけるRが2つとも芳香環基である化合物が好ましく、Rが2つとも芳香族炭化水素環基である化合物が更に好ましく、Rが2つともフェニル基であるシュウ酸ジフェニルが特に好ましい。なお、本発明において、遊離原子価とは、有機化学・生化学命名法(上)(改定第2版、南江堂、1992年発行)に記載のとおり、他の遊離原子価と結合を形成できるものを言う。
該芳香族複素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5または6員環の単環または2〜4縮合環などが挙げられる。該芳香族複素環基の具体例としては、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
炭化水素基が有する置換基としては、本発明の優れた効果を大幅に妨げなければ特に限定されない。但し、メチル基、エチル基等の炭素数1〜12のアルキル基;メトキシ基、
エトキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子及び芳香環基などが好ましい。なお、置換基としてのアルキル基は、芳香環基にアルキル基が置換基として結合した場合を言い、置換基としての芳香環基は、例えば、芳香族炭化水素環基に芳香族複素環基が置換基として結合した場合などを言う。
置換基を有する芳香環基は、置換基の位置により各種の異性体が存在するが、いずれであっても良い。例えば、置換フェニル基の異性体として、2−,3−または4−メチルフェニル基、2−,3−または4−エチルフェニル基等の炭素数1〜12のアルキル基を有する2−,3−または4−アルキルフェニル基;2−,3−または4−メトキシフェニル基、2−,3−または4−エトキシフェニル基等の炭素数1〜12のアルコキシ基を有する2−,3−または4−アルコキシフェニル基;2−,3−または4−ニトロフェニル基;2−,3−または4−フルオロフェニル基、2−,3−または4−クロロフェニル基等のハロゲン原子を有する2−,3−または4−ハロフェニル基などが挙げられるが、これらのいずれであっても良い。
炭化水素基が有する炭素数は、本発明の炭酸ジエステルをポリカーボネートなどを製造する原料として用いる際の脱離基の安定性の点では多いことが好ましいが、脱離基の回収が容易である点では少ないことが好ましい。具体的には、置換基を有する場合は、置換基も含め、1以上であることが好ましく、2以上であることが更に好ましく、また一方で、12以下であることが好ましく、10以下であることが更に好ましい。
シュウ酸ジアルキルは、下記反応式(2)で示すように、一酸化炭素、酸素及び脂肪族アルコールを原料とする酸化カルボニル化反応で製造したものなどを用いることができる。シュウ酸アルキルアリール(炭化水素基としてアルキル基と芳香環基を1つずつ有するシュウ酸ジエステル)は、下記反応式(3)で示すようにシュウ酸ジアルキルとフェノールなどの反応により得られるものなどを用いることができる。また、シュウ酸ジアリール(炭化水素基として芳香環基を2つ有するシュウ酸ジエステル)は、下記反応式(3)で示すようにシュウ酸ジアルキルと芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル交換反応で製造したものなどを用いることができる。
Figure 0006344196
(式中、Rはアルキル基を示す。)
Figure 0006344196
(式中、Rはアルキル基を示し、Arは芳香環基を示す)
[脱カルボニル触媒]
本発明の炭酸ジエステルの製造方法において用いる触媒(以下、「本発明に係る脱カルボニル触媒」、「脱カルボニル触媒」又は「触媒」と言う場合がある)は、リン原子の原子価が3価又は5価の有機リン化合物などが挙げられる。リン原子の原子価が3価又は5価である有機リン化合物は、少なくとも1個の炭素−リン(C−P)結合を有する有機リン化合物であることが好ましく、3個以上の炭素−リン(C−P)結合を有する有機リン化合物が特に好ましい。このような有機リン化合物としては、例えば、ホスホニウム塩系有機リン化合物(以下、ホスホニウム塩ともいう)、ホスフィン系有機リン化合物、ホスフィンジハライド系有機リン化合物及びホスフィンオキサイド系有機リン化合物などが挙げられる。これらのうち、脱カルボニル触媒としては、ホスホニウム塩系有機リン化合物が好ましい。
ホスホニウム塩系有機リン化合物は、以下の一般式(A)で表されるホスホニウム塩が好適である。
Figure 0006344196
(式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立に置換基を有していても良い芳香環基、アラルキル基又はアルキル基を表し、Xは、ホスホニウム塩の対イオンを形成しうる原子又は原子団を表す。)
前記芳香環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基及びチエニル基、フリル基、ピリジル基等のイオウ原子、酸素原子又は窒素原子を含有する炭素数4〜16の芳香族複素環基などが挙げられる。前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、シンナミル基、ナフチルメチル基等の不飽和結合を有していてもよい炭素数7〜15のアラルキル基などが挙げられる。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、1,3−ブタジエニル基等の環構造あるいは不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜16のアルキル基などが挙げられる。
〜Rは、各種異性体を含み、置換基を1つ以上有していてもよい。
前記置換基としては、例えば、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12)、チオアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12)、アラルキルオキシ基(好ましくは炭素数7〜13)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜16)、チオアリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜16)、アシル基(好ましくは炭素数1〜12)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜16)、カルボキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基(好ましくは炭素数2〜16)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)等が挙げられる。また、これらの置換基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としてはハロゲン原子などが挙げられる。
なお、R〜Rが置換基を有するフェニル基である場合には、各種異性体が存在する。これらの異性体としては、例えば、2−(又は3−、4−)メチルフェニル基、2−(
又は3−、4−)エチルフェニル基、2,3−(又は3,4−)ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチルフェニル基等の炭素数1〜12のアルキル基又はハロゲン化アルキル基がフェニル基に結合しているアルキルフェニル基;3−メトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基等の炭素数1〜12のアルコキシ基がフェニル基に結合しているアルコキシフェニル基;3−(又は4−)クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基等のハロゲン原子がフェニル基に結合しているハロフェニル基などが挙げられる。
〜Rが芳香環基である場合、これらは、前記置換基以外に、環構造(複素環を含む)あるいは不飽和結合を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜12)をその環上に置換基として1つ以上有していてもよい。また、R〜Rが芳香族複素環基の場合、これらは、前記置換基以外に、芳香族炭化水素環基(好ましくは炭素数6〜16)をその複素環上に置換基として1つ以上有していてもよい。
〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良い。但し、溶解性の点から、R〜Rの何れか1つの基は、他の3つの基の全てと異なる基であることが好ましい。なお、ここで、異なる基とは、置換基の有無、種類、置換位置が異なるものも含めて、何れかが異なる基同士のことを言う。なお、本発明においては、このようにR〜Rの少なくとも何れか1つの基が、他の3つの基の少なくとも何れかの基と異なることを「非対称」であると言う。
前記一般式(A)の対イオンX-としては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンな
どのハロゲンイオンや、ハイドロジエンジクロライドイオン、ハイドロジエンジブロマイドイオン、ハイドロジエンジヨーダイドイオン、ハイドロジエンブロマイドクロライドイオンなどのハイドロジエンハライドイオンなどが挙げられる。これらのうち、活性の点からハロゲンイオンが好ましく、塩素イオンが更に好ましい。
特に好ましいホスホニウム塩系有機リン化合物としては、具体的には、例えば、次のような化合物が挙げられる。即ち、R〜Rが何れも無置換の芳香族炭化水素基である有機ホスホニウムクロライドとしては、テトラフェニルホスホニウムクロライド、p−ビフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、1−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。R〜Rが無置換の芳香族炭化水素基又は置換基を有する芳香族炭化水素基である有機ホスホニウムクロライドとしては、o−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、m−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−メチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−イソプロピルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、m−トリフルオロメチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、2,4,6−トリメチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアルキル基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のハロゲン原子を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアルコキシ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−アミノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアミノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のシアノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物及びp−ニトロフェニル−トリ−p−トリルホスホニウムクロライド等のニトロ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物などが挙げられる。
〜Rが何れもアラルキル基である有機ホスホニウムクロライドとしては、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド及びフェネチルトリフェニルホスホニウムクロライド等が挙げられる。R〜Rが何れもアルキル基である有機ホスホニウムクロライドとしては、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。
〜Rが芳香族炭化水素基又はアルキル基である有機ホスホニウムクロライドとしては、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ヘキシルトリフェニルホスホニウムクロライド、ヘプチルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラデシルトリフェニルホスホニウムクロライド、ジメチルジフェニルホスホニウムクロライド、アリルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアルキルトリフェニルホスホニウムクロライド;シクロプロピルトリフェニルホスホニウムクロライド等の環構造を有するアルキル基を有するアルキルトリアリールホスホニウムクロライド;1,3−ブタジエニルトリフェニルホスホニウムクロライド等の不飽和結合を有するアルキル基を有する化合物などが挙げられる。また、R〜Rが芳香族炭化水素基又は置換基を有するアルキル基である有機ホスホニウムクロライドとしては、(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−(1,3−ジオキソラン−2−イル)エチルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−(1,3−ジオキサン−2−イル)エチルトリフェニルホスホニウムクロライド等の複素環基を有するアルキル基を有する化合物;ブロモメチルトリフェニルホスホニウムクロライド等のハロゲン原子を有するアルキル基を有する化合物;4−カルボキシブチルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−カルボキシアリルトリフェニルホスホニウムクロライド等のカルボキシル基を有するアルキル基を有する化合物;4−エトキシカルボニルブチルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアルコキシカルボニル基を有するアルキル基をを有する化合物;2−ジメチルアミノメチルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアルキル置換アミノ基を有するアルキル基を有する化合物及びフェナシルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアシル基を有するアルキル基を有する化合物などが挙げられる。
〜Rが芳香族炭化水素基又はアラルキル基である有機ホスホニウムクロライドとしては、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、シンナミルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。
本発明に係る脱カルボニル触媒としては、これらのホスホニウム塩系有機リン化合物うち、特にR〜Rが何れも芳香環基であることが好ましく、R〜Rが何れも芳香族炭化水素基であることが更に好ましい。そして、非対称テトラアリールホスホニウムハライドが特に好ましく、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドが最も好ましい。
本発明に係る脱カルボニル触媒は、炭酸ジエステルに可溶である。本発明の炭酸ジエステルの製造方法は、炭酸ジエステルに可溶な触媒を用いることにより、触媒の析出を起こすことなく安定的に高転化率で脱カルボニル反応を行い、残存シュウ酸ジエステル量を減らすことが可能となり、炭酸ジエステルを蒸発させる時に副生するフラン系化合物の生成を抑制することが可能となる。本発明において、炭酸ジエステルに可溶であるとは、150℃において炭酸ジエステル100gに対し、触媒が通常10g以上溶解することを言い、好ましくは50g以上溶解することを言う。なお、溶解度は高いほど好ましいが、通常同上限は1000gである。炭酸ジエステルに可溶な触媒は、上述した脱カルボニル触媒について、その炭酸ジエステルに対する溶解度を測定することにより簡単に選ぶことができる。また、通常、アルキル基を1つ以上有するテトラアリールホスホニウム塩は炭酸ジエステルに対する溶解度が高いため好ましい。アルキル基を1つ以上有するテトラアリー
ルホスホニウム塩が有するアルキル基の数は、1以上3以下が好ましい。ここで、アルキル基を2つ以上有するテトラアリールホスホニウム塩は、2つ以上のアルキル基を置換基として有する芳香環基を1つ有しても、1つ以上のアルキル基を置換基として有する芳香環基を2つ有しても良いが、合成が容易であることから後者が好ましい。
本発明の炭酸ジエステルの製造方法において用いる脱カルボニル触媒の量は、生産効率の点では多いことが好ましいが、製造コストの点では少ないことが好ましい。そこで、具体的には、シュウ酸ジエステル1モルに対し、0.001モル以上用いることが好ましく、0.01モル以上用いることが更に好ましく、また、一方、1モル以下用いることが好ましく、0.5モル以下用いることが更に好ましい。なお、脱カルボニル触媒は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
[ハロゲン化合物]
本発明の炭酸ジエステルの製造方法においては、系中のハロゲンイオンにより脱カルボニル反応が高選択的に進行するため、脱カルボニル触媒と共にハロゲン化合物(以下「本発明に係るハロゲン化合物」と言う場合がある)を用いることが好ましい。特に、有機リン化合物として、ホスフィン又はホスフィンオキサイドが使用される場合や、ハライド及びハイドロジェンジハライド以外のホスホニウム塩が使用される場合や、低濃度のホスホニウムハライド又はホスホニウムハイドロジェンジハライドが使用される場合には、ハロゲン化合物を存在させることが好ましい。
本発明に係るハロゲン化合物としては、下記の無機ハロゲン化合物及び/又は有機ハロゲン化合物などが挙げられる。これらのハロゲン化合物の中では、塩素化合物又は臭素化合物が好ましく、中でも塩素化合物が特に好ましい。ハロゲン化合物は、脱カルボニル触媒に対してモル比(ハロゲン化合物/脱カルボニル触媒)が通常0.01〜300、好ましくは0.1〜100であるように用いられるのが良い。なお、ハロゲン化合物は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
無機ハロゲン化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のアルミニウムのハロゲン化物;塩化白金、塩化白金酸、塩化ルテニウム、塩化パラジウム等の白金族金属のハロゲン化物;三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、三臭化リン、五臭化リン、オキシ臭化リン等のリンのハロゲン化物;塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素;塩化チオニル、塩化スルフリル、二塩化イオウ、二塩化二イオウ等のイオウのハロゲン化物;塩素、臭素等のハロゲン単体などが挙げられる。
有機ハロゲン化合物としては、炭素原子と、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子と、水素原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される化合物などが挙げられる。このような有機ハロゲン化合物としては、例えば、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造(C−Hal)、カルボニル炭素にハロゲン原子が結合している構造(−CO−Hal)、ケイ素原子にハロゲン原子が結合している構造(−C−Si−Hal)、又はイオウ原子にハロゲン原子が結合している構造(CSO2−Hal)を有する有機ハロゲン化合物が好適に用いられる。但し、H
alは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。これらの構造は、例えば、一般式(a)、(b)、(c)、(d)としてそれぞれ表される。
Figure 0006344196
(式中、Halは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表し、n1は1〜4の整数、n2は1〜3の整数を表す。)
有機ハロゲン化合物としては、例えば、以下のような化合物が具体的に挙げられる。
一般式(a)で表されるような、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル、塩化ドデシル等のハロゲン化アルキルや、塩化ベンジル、ベンゾトリクロリド、塩化トリフェニルメチル、α−ブロモ−o−キシレン等のハロゲン化アラルキルや、β−クロロプロピオニトリル、γ−クロロブチロニトリル等のハロゲン置換脂肪族ニトリルや、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロプロピオン酸等のハロゲン置換脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
一般式(b)で表されるような、カルボニル炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、塩化アセチル、塩化オキサリル、塩化プロピオニル、塩化ステアロイル、塩化ベンゾイル、2−ナフタレンカルボン酸クロライド、2−チオンフェンカルボン酸クロライド等の酸ハロゲン化物や、クロログリオキシル酸フェニル等のハロゲノグリオキシル酸アリールや、クロロギ酸フェニル等のハロゲノギ酸アリールなどが挙げられる。
一般式(c)で表されるような、ケイ素原子にハロゲン原子が結合している構造を少なくとも1個有する有機ハロゲン化合物としては、ジフェニルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等のハロゲン化シランなどが挙げられる。
一般式(d)で表されるような、イオウ原子にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ナフタレンスルホン酸クロライド等のハロゲン化スルホニルなどが挙げられる。
有機ハロゲン化合物としては、これらの他に、窒素原子又はリン原子を含有するオニウム塩のハロゲン化水素付加物などが挙げられる。具体的には、アンモニウム塩ハロゲン化水素付加物、ホスホニウム塩ハロゲン化水素付加物などが挙げられる。
これらのうち、入手し易いことから、塩化水素及び有機ハロゲン化合物が好ましく、一般式(a)で表される飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物が更に好ましく、ハロゲン化アルキルが特に好ましく、クロロホルムが最も好ましい。
[脱カルボニル反応]
本発明の炭酸ジエステルの製造方法における脱カルボニル反応(以下、「本発明に係るカルボニル反応」又は単に「脱カルボニル反応」と言う場合がある)は、液相反応で行うことが好ましい。脱カルボニル反応の反応温度は、反応速度の点では高温であることが好ましいが、炭酸ジエステルの純度の点では低温であることが好ましい。そこで、常圧の場合、反応温度は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。反応時の圧力は
、プロセス上の要件から決めればよい。
脱カルボニル反応は、反応に用いる物質の融点以上の温度で反応を行う場合は、溶媒を用いる必要はないが、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性極性溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等を適宜使用することもできる。
反応器の材質には特に制限はないが、副反応でフェノールが生成する場合があるので、耐酸性材質の金属製容器やグラスライニング製容器が好ましい。反応器の形式は、本発明に係る脱カルボニル反応により炭酸ジエステルを生成させることができるものであれば、どのような形式の反応器でも使用することが可能である。このような反応器としては、例えば1槽または多槽式の完全混合型反応器(攪拌槽)、塔型反応器などを用いることができる。
本発明に係る脱カルボニル反応においては、シュウ酸ジエステルの転化率を96重量%以上とする。シュウ酸ジエステルの転化率は、シュウ酸ジエステルの副反応による不純物の生成が起こり難く、反応効率に優れる点では高いことが好ましい。具体的には、97重量%以上が好ましく、98重量%以上が更に好ましく、99重量%以上が特に好ましい。なお、シュウ酸ジエステルの転化率の上限は、触媒等の炭酸ジエステルに対する溶解度に応じて、触媒等の析出による閉塞が起こらない範囲で適宜選択すれば良いが100重量%が最も好ましい。
[炭酸ジエステル]
上記カルボニル化反応により、原料シュウ酸ジエステルに対応する炭酸ジエステルを生成させることができる。本発明の炭酸ジエステルは、上記反応式(1)で生成される炭酸ジエステルにおけるRが2つとも芳香環基である化合物が好ましく、Rが2つとも芳香族炭化水素環基である化合物が更に好ましく、Rが2つともフェニル基である炭酸ジフェニルが特に好ましい。
[炭酸ジエステルの精製]
脱カルボニル反応後の反応液には、炭酸ジエステル及び脱カルボニル触媒が含まれている。また、脱カルボニル反応におけるシュウ酸ジエステルの転化率が100%未満だった場合は、シュウ酸ジエステルも含まれている。この他に、シュウ酸ジエステル、炭酸ジエステル、脱カルボニル触媒等の転位、分解、反応等により生じた副生物なども含まれている可能性がある。また、前述のハロゲン化合物を用いた場合は、該ハロゲン化合物又はその副生物が含まれている可能性もある。なお、脱カルボニル反応で副生する一酸化炭素は、反応液から自然に気液分離され、排出させることが好ましい。
[炭酸ジエステルの蒸発]
本発明の炭酸ジエステルの製造方法においては、反応後の反応液に含まれる炭酸ジエステルを蒸発(以下、「本発明に係る蒸発」又は単に「蒸発」と言う場合がある。)させることにより取り出す。すなわち、反応後の反応液から炭酸ジエステルを蒸発させて取り出すことにより、脱カルボニル触媒及び反応後の反応液に高沸点物質が含まれている場合はそれも合わせて反応液に残留するため、両者を分離させることができる。炭酸ジエステルの蒸発率は、炭酸ジエステルの回収率を上げ、高濃度の触媒液を得る点では高いことが好ましい。ここで、本発明に係る触媒は炭酸ジエステルに可溶であることから、多量の炭酸ジエステルを蒸発させても析出し難い。そこで、反応液に含まれる炭酸ジエステルの50重量%以上を蒸発させることにより取り出す。
蒸発装置(蒸発方法)については、上記の目的を達成することができれば特に限定されることはない。蒸発装置としては、例えば、流下膜式蒸発器、薄膜式蒸発器などを用いて
行うことが好ましい。蒸発は、脱カルボニル反応における反応温度と同程度の温度で行うことが好ましい。具体的には、常圧の場合は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。圧力は、通常、減圧下で蒸発させる。具体的には、下限は0.1kPaAが好ましく、0.2kPaAが更に好ましく、一方、上限は50kPaAが好ましく、20kPaAが更に好ましい。
[蒸発させた炭酸ジエステルの組成]
反応液に多量のシュウ酸ジエステルが残っていると、蒸発させる時の加熱によりフラン系化合物が生成する可能性がある。例えば、シュウ酸ジフェニル類は、以下の反応式(4)のフリース転位により、ベンゾフラン−2,3−ジオン類とフェノール類が生成する可能性がある。しかしながら、本発明の炭酸ジエステルの製造方法においては、転化率96%以上で脱カルボニル反応を行っているため、残存シュウ酸ジエステルが少なく、蒸発させる時の加熱によるフラン系化合物の副生を抑制することが可能となる。具体的には、蒸発させた炭酸ジエステルに含まれるフラン系化合物の量は、脱カルボニル反応におけるシュウ酸ジエステルの転化率の影響も受けるが、通常1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下とすることが可能である。
Figure 0006344196
(式中、Rは、反応式(1)中のRと同じである。)
[蒸発させた炭酸ジエステルの精製]
蒸発させた炭酸エステルは、そのままポリカーボネートの製造等に用いても良いが、用途や必要な純度などに応じて、更に精製を施しても良い。また、上記炭酸ジエステルの蒸発を蒸留により行い、炭酸ジエステルより高沸点である成分を塔底側から、炭酸ジエステルを中段から、炭酸ジエステルより低沸点である成分を塔頂側から各々抜き出すことにより高純度な炭酸ジエステルを得ても良い。
蒸発させた炭酸ジエステルを更に精製する場合は、蒸留や吸着などにより行うことができる。但し、本発明の炭酸ジエステルの製造方法では、フラン系化合物の副生が抑制されているため、蒸発させた炭酸ジエステルからフラン系化合物を除去する操作は、求められる純度によっては設けなくても構わない。すなわち、フラン系化合物を除去する後工程が必須であった従来法に比べ、簡便で効率良く、高純度な炭酸ジエステルを得ることが可能となる。
炭酸ジエステルより高沸点である成分としては、シュウ酸ジエステル、シュウ酸メチルフェニルフェニルなどの脱カルボニル反応の原料及びその原料中に混入してくる高沸点物質、脱カルボニル反応やその反応液の蒸発において副生するp−クロロ安息香酸フェニル、サルチル酸フェニル、その重合物、脱カルボニル反応の際に生成した有機ハロゲン化物(パラクロロ安息香酸フェニル等)などが挙げられる。
[脱カルボニル触媒の回収]
本発明の炭酸ジエステルの製造方法においては、炭酸ジエステルに可溶な触媒を用いて、転化率96%以上で脱カルボニル反応を行っているため、炭酸ジエステルを蒸発させた後の反応液に残存する触媒は、反応液に残存する炭酸ジエステルに溶解している。そこで、この触媒を残存液から取り出して、脱カルボニル反応に供給して再利用する。残存液中の脱カルボニル触媒を脱カルボニル反応に供給する場合、上記ハロゲン化合物を残存液と共に脱カルボニル反応に供給することが好ましい。供給するハロゲン化合物の量は、反応器中に存在する脱カルボニル触媒(特にホスホニウム塩触媒)の全量に対して、反応器中に存在するハロゲン化合物が0.01〜100モル%(等モル)となることが好ましい。
[炭酸ジエステル]
このようにして得られる炭酸ジエステルの組成は、炭酸ジエステルが通常97重量%以上、好ましくは98重量%以上、更に好ましくは99重量%以上であり、100重量%が最も好ましい。炭酸ジエステル以外の成分としてシュウ酸ジエステルを含む場合は、通常3重量%以下、好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、0重量%が最も好ましい。これら以外の成分が含まれる場合の含有量は、炭酸ジエステルとシュウ酸ジエステルの合計量100重量部に対し、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。
[ポリカーボネートの製造方法]
本発明で製造される炭酸ジエステルの用途のひとつであるポリカーボネートは、上述の方法により製造された炭酸ジエステル、特に炭酸ジアリールと、ビスフェノールAに代表される芳香族もしくは脂肪族ジヒドロキシ化合物とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させることで製造できる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に炭酸ジフェニルとビスフェノールAを原料とした一例を説明する。
上記のポリカーボネートの製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノールAに対して過剰量用いることが好ましい。ビスフェノールAに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネートに末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネートを製造し易い点では少ないことが好ましい。具体的には、例えば、ビスフェノールA1モルに対して、通常1.001モル以上、好ましくは1.02モル以上、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下用いることが好ましい。
原料の供給方法としては、ビスフェノールAおよび炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方または両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールAとのエステル交換反応でポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネートの製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒は、ビスフェノールAまたは炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上、また一方で、通常5μモル以下、好ましくは4μモル以下、さらに好ましくは2μモル以下の範囲で用いられる。
触媒の使用量が上記範囲より多いと、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性を得やすく、上記範囲より少ないと、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れる。
アルカリ金属化合物としては、セシウム化合物が好ましい。好ましいセシウム化合物は、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムである。
上記方法によりポリカーボネートを製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネートの製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
[ポリカーボネート]
上述のように本発明の製造方法により得られる炭酸ジエステルは非常に高純度であることから、本発明の製造方法により得られる炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。特に、本発明の製造方法は、フラン系化合物の副生を抑制できることから、着色が少なく高品質なポリカーボネートを得ることができる。
[組成分析]
本発明において、組成分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により行うことができる。具体的には、島津製作所製のカラムODS3VIDを用いて行う。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドは、特開平11−217393号公報に記載された方法により合成した。なお、このp−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド66.67gは、150℃において、炭酸ジフェニル100gに溶解した。
[実施例1]炭酸ジフェニルの製造
温度計、攪拌機、留出管及び受器を備えたフルジャケット式500ミリリットルのセパラブルフラスコに、シュウ酸ジフェニル250g(1モル)、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド13g(30ミリモル)を入れ、セパラブルフラスコ内を150℃に加熱することにより均一溶液(目視)とした。次に、このセパラブルフラスコに塩化水素ガス12ミリモルを吹き込み昇温した。セパラブルフラスコ内が230℃に達したら、セパラブルフラスコ内で発生した一酸化炭素を窒素ガスにより常圧下で押し出しながら230℃に保った状態で6時間反応させた。
この6時間反応後の反応液を徐々に減圧させて10Torrとし、セパラブルフラスコのボトム温度を180℃に下げた状態で維持することにより、粗炭酸ジフェニル217gを留分として得た。なお、この時、セパラブルフラスコのボトムの液は、目視で均一状態であった。
先の6時間反応後の反応液及び粗炭酸ジフェニルの組成を、HPLCを用いて分析した。この結果、6時間反応後の反応液は、炭酸ジフェニルが94重量%、シュウ酸ジフェニルが400重量ppmであった(シュウ酸ジフェニルの転化率は99.97%であった)。また、粗炭酸ジフェニルには、フェノールが7000重量ppm、シュウ酸ジフェニルが100重量ppm含まれていた。どちらの液も、ベンゾフラン−2,3−ジオンは検出限界以下であった。

Claims (4)

  1. シュウ酸ジエステルを触媒存在下で脱カルボニル反応させることによる炭酸ジエステル
    の製造方法であって、該触媒がp−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロラ
    イドであり、該脱カルボニル反応を転化率96%以上で行った後、反応液に含まれる炭酸
    ジエステルの50重量%以上を蒸発させることにより取り出した後に、残存した反応液を
    該脱カルボニル反応に供給することを特徴とする炭酸ジエステルの製造方法。
  2. 請求項に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記取り出した炭酸ジエステル
    に含まれるフラン系化合物が1ppm以下であることを特徴とする炭酸ジエステルの製造
    方法。
  3. 請求項1又は2に記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記脱カルボニル反応後
    の反応液に含まれる軽質留分及び高沸点物質を蒸留により除去することを特徴とする炭酸
    ジエステルの製造方法。
  4. 請求項1乃至の何れかに記載の炭酸ジエステルの製造方法であって、前記シュウ酸ジ
    エステルがシュウ酸ジフェニルであり、前記炭酸ジエステルが炭酸ジフェニルであること
    を特徴とする炭酸ジエステルの製造方法。
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