発明の背景
本発明は、触媒としての少なくとも1つの置換されていてもよいピリジンまたはそれらの塩酸塩の存在下でモノフェノールおよびホスゲンまたはクロロギ酸アリール類(aryl chloroformates)からのジアリールカーボネートの調製方法、並びに当該方法へのその回収および再循環に言及する。方法は、追加の溶媒を用いることなく、少なくとも部分的に液相において実施され、蒸留によって触媒は分離され、回収される。
モノフェノールおよびホスゲンからの純粋ジアリールカーボネートの調製方法は公知である。ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート、「DPC」)の調製は通常、連続法によって、ホスゲンの調製および界面におけるアルカリ性および窒素触媒の存在下で不活性溶媒中でのモノフェノールとホスゲンの後続反応によって実施される。
例えば、相界面法によるジアリールカーボネートの調製は、おおむね文献に記載されている(例えば、Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, Vol. 9, John Wiley and Sons, Inc. (1964), pp. 50/51を参照のこと)。
相界面法において、溶媒および水中に溶解している出発原料は、互いに反応する。これら方法の不利な点は、蒸留およびそこから再出発した後処理による溶媒からのジアリールカーボネートの分離であり、また不要製品としての塩化ナトリウム含水相も、限られた潜在的用途しかなく、非常に複雑な後処理工程を必要とし得るため同様である。
このため、塩化ナトリウムの代わりに、ジアリールカーボネートおよび塩化水素を形成するために、出発原料のホスゲンおよびモノフェノールを、好ましくは追加溶媒の使用なく、水酸化アルカリ金属溶液の存在下で相界面法において反応させるのではなく、触媒の存在下で溶融中において反応させる、モノフェノールの直接ホスゲン化法が開発されてきた。
従って、例えば米国特許第2,362,865(A)号では、アルミニウムフェノキシドまたはチタニウムフェノキシドを使用した、170°C〜250°Cの温度下でのモノフェノールの直接ホスゲン化によるジアリールカーボネートの調製方法が記載されているが、触媒の再循環および分離方法は記載されていない。
欧州特許第2371806A号および欧州特許第2371807A号の両方では、同様に金属ハロゲン化物または金属フェノール塩を使用した、20°C〜240°Cの温度下でのモノフェノールの直接ホスゲン化によるジアリールカーボネートの調製方法が記載されている。方法中の触媒の再循環は、同様に記載されていない。
欧州特許第1234845A号では、同様に120°C〜190°Cの温度での溶解物中でのモノフェノールと、特に純粋なホスゲンとの反応が記載されている。窒素含有化合物(例えば、ピリジン)が、使用されたモノフェノールの量に対して0.1〜10mol%の量で触媒として用いられている。この文献も同様に方法中の触媒の再循環について示唆していない。ピリジンは、比較的不揮発性の塩(沸点:222〜224°C)と塩化水素を形成し、これはすぐに留去することができない。欧州特許第1234845A号の教示によると、反応混合物は、従って第一に水酸化ナトリウムと中性化され、それによって水、遊離ピリジンおよび過剰なフェノールの混合物を留去することができる。
国際公開第2011007001号では、ピリジン塩酸塩の反応混合物からの脱昇華が記載されている。このため、ジクロロシランピリジン付加物は、オイルが満タンの真空ポンプ内で200℃に加熱され、ピリジン塩酸塩は揮発され、固形物として沈殿する。
加えて、均一可溶性窒素含有触媒の存在下における、ジアリールカーボネートを形成するための溶解物中でのホスゲンとモノフェノールの反応が記載された、国際公開第2008/114750A1号、日本国特開第2008-231073A号、日本国特開第2009-114195A号、日本国特開第09-278714A号、日本国特開第09-100256A号日本国特開第10−245366A号、日本国特開第11−012230A号等の多数のさらなる特許が存在する。
日本国特開第10−077250A号、日本国特開第09−24278A号および欧州特許第1234845A号では、触媒の潜在的な再循環について言及しているが、触媒の再循環の観点による、製品からの特定の触媒の分離および触媒の後処理法についての言及はしていない。加えて、中性化および反応混合物の洗浄の過程における、水溶液、特に水および/または水酸化ナトリウム水溶液の導入について言及されている。
米国特許第5239106号は、フェノールと付加物とが1:1の結晶化による触媒含有反応液からのジフェニルカーボネートの分離について教示している。しかしながら、当該明細書では触媒の単離および再循環について記載されていない。
これらの文献のいずれも、方法中の触媒(例えば、ピリジン)の再循環法について満足な示唆を提供していない。具体的には、触媒は、アルカリ性水溶液を使用して中性工程後に水相を経由して分離される。
具体的には、先行技術では、製品含有ストリームから触媒を除去する方法についての明確な実施例が記載されておらず、上記の不利な点に妨げられた水含有付加物の手段による、塩酸塩の中性化が上記引用文献の通りに実施されていない。
これらの文献のいずれも、完全に水を含まず、かつ排水を含まないジアリールカーボネートの調製方法が記載されていない。
従って、先行技術から知られた方法は、触媒の再循環に関して厳しい経済的要件および環境保護的要件を充足することができず、さらに、言い換えるとさらなる化学的処理のための出発原料である製品の高い純度を確保することができない。
しかしながら、工業的方法において経済的側面は考慮されなければならない。触媒の再循環は、高度なまたは完全な触媒の放出が経済的短所を意味し、所望しない環境汚染につながるため、現時点で評価されている重要な側面のうちの1つである。生じた排水は、精製に非常に高い支出を伴い、水処理作業の代表的な大きな課題である。先行技術の方法において、触媒の再循環を可能とするために高度な技術的支出が必要であるか、若しくは触媒の部分的または完全な放出が提供される。両方の場合において、追加の排水ストリームが提供される。
直接ホスゲン化法において、触媒の効果的な再循環の提供が最重要である。さらに、水溶液の使用は、反応中だけでなく後処理においても、可能な限り避けるべきである。これは有機物質を含む排水は、第一に複雑な様式で精製され、次いで処理されなければならないからである。
従って、水酸化ナトリウムおよび水等の追加の出発原料を排除した、モノフェノールの溶解物中における直接ホスゲン化方法によるジアリールカーボネートの調製方法であって、その方法がストリームの放出(浄化)を低減することによって経済的に操作され、最終製品の一定な優良品質を提供する方法を開発することは技術的な目標である。
今回、驚くべきことに、置換されていてもよいピリジンまたはその塩が触媒として用いられた場合、形成された塩酸塩、塩化水素およびジフェニルカーボネートは、蒸留によって互いから分離することができ、高純度のジアリールカーボネートを得ることができると見出された。驚くべきことに、蒸留操作中にピリジン塩酸塩の脱昇華は起こらず、それは塩が、室温でさえも、分離された低いボイラー相内に溶解したまま残り、フェノールとの液体混合物を形成するからである。
反応溶液または原液の中性化および/または水の添加は好ましくは一緒に配合する。これは、特に経済的および環境保護的方法につながる。
従って、本発明によれば、下記を含んでなる、触媒として遊離形態および/またはピリジンの塩酸塩の形態の、少なくとも1つの置換されていてもよいピリジンの存在下で、少なくとも1つのモノフェノールをホスゲンおよび/または少なくとも1つのクロロギ酸アリールと反応させることによる、ジアリールカーボネート、好ましくはジフェニルカーボネートの調製方法が提供される:
a)反応が、1〜50bar(絶対値)の圧力下で反応器内で実施され、
b)反応混合物が、反応器から単一段階または多数段階蒸留装置に移動され、
c)触媒含有蒸留物が、少なくとも1つの蒸留カラムの上部から分離され、
d)触媒含有蒸留物が、工程a)の反応器内へ少なくとも部分的に再循環され、
e)ジアリールカーボネートが、カラムからサイドストリーム(副流)(side stream)を介して分離され、かつ場合によりさらに精製される。
水溶液は、好ましくは工程a)〜e)のいずれにおいても用いられない。
工程a)の反応は、好ましくは、結果として得られる固体のジアリールカーボネートの沈殿を回避するために、80℃より高い温度で実施される。出発原料の反応は、大気圧または僅かに低減した圧力、またはさもなければ50bar(絶対値)までの上昇した圧力のいずれかにおいて実施することができる。ここでは、方法の条件によってホスゲンは縮合相に存在していても液相で溶解されてもよい。この方法によって調製されたジアリールカーボネートは、その高い純度のため、溶解物エステル交換反応法によりジアリールカーボネートおよびビスフェノールから高い純度のポリカーボネートを調製するために特に好適である。
反応から得た塩化水素は、多数のさらなる潜在的な用途、特に塩素を形成するための電気化学的酸化または熱酸化に好適となるように1つ以上の精製工程に供することができる。この様式で得たこの塩素は、ホスゲンを生産するために一酸化炭素と反応させることができ、得られたホスゲンは、本発明の方法において用いることができる。
反応条件下で液体である最終製品は、工程b)、c)およびe)を含んでなる複数の分離工程において副生物および触媒またはそれらのHCl付加物から分離される。それは、次いで好ましくは95%を超える、好ましくは99.0%を超える、特に好ましくは99.5%を超える含有量のジアリールカーボネートおよび場合によりフェノールを有する。最終製品は、好ましくは主にジアリールカーボネートを含んでなる。反応で用いられた触媒は、反応へ少なくとも部分的に再循環されるような様式で後処理される(工程d))。
本発明の方法は、3つの方法区分からなる:
I.工程a)の方法を含んでなる反応、
II.塩化水素の後処理(任意)、
III.区分Iへ少なくとも部分的に再循環された回収触媒と、工程b)、c)およびe)の方法を含んでなる、蒸留による製品の精製および触媒の単離(工程d))。
区分I)(即ち、反応)の方法において、出発原料は、モルテンモノフェノール中でホスゲンのほぼ均一な溶液が存在するように前述の工程の方法において互いに混合され、これは場合により前記の溶融温度で上昇した圧力の使用により達成される。
本発明の内容において調製されるジアリールカーボネート類は、好ましくは一般式(I)のジアリールカーボネートである:
[式中、
R、R’およびR’’は、それぞれ、互いに独立して、水素、ハロゲン、または分岐もしくは非分岐のC1−C9アルキル基または、分岐もしくは非分岐のC1−C9アルコキシカルボニル基であってよく、
R、R’およびR’’は、好ましくは、式(I)の両側で同一である]。
特に好ましいのはジフェニルカーボネートである。
本発明の目的に好ましいモノフェノール類は、好ましくは一般式(II)のモノフェノールである:
[式中、R、R’およびR’’は、それぞれ、互いに独立して、一般式(I)で示された意味を有していてもよい]。
本発明の目的において「C1−C4アルキル」は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル;さらに「C1−C6アルキル」は、例えば、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルであり、さらに「C1−C9アルキル」は、例えば、n−ヘプチルまたはn−オクチルまたはn−ノニルである。相当するアルキルカルボニル基中のアルキル基にも同様に適用される。
好適なモノフェノールの例として、フェノール;クレゾール類、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−n−オクチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−n−ノニルフェノールおよびp−イソノニルフェノール等のアルキルフェノール類;p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−ブロモフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、アニソールおよびメチル等のハロフェノール類またはフェニルサリチル酸塩が挙げられる。
特に好ましくは、フェノールである。
用いられるモノフェノールは、少なくとも99.90重量%の純度を有すべきである。
水の存在によって装置の材料の浸食が促進されるため、出発原料は、好ましくは300容積ppm未満の水を含んでなる。
ここで、用いられるモノフェノールは、外部から全体の方法に導入されたフェノール(即ち、貯留槽からのフレッシュなフェノール)だけでなく、工程II)およびIII)での縮合ストリームからか、または工程II)での洗浄液ストリームからの再循環されたモノフェノールを含むことができる。この様式で再循環されたモノフェノールは、方法からの副生物(例えば、反応を損なわないジアリールカーボネート、塩化水素またはクロロ炭酸のアリールエステル類の残余量)を含むことができる。モノフェノールは、好ましくは、用いられる出発原料の混合物中のホスゲンに対して化学量論的に必要とされる量を超えて存在する。モノフェノールのホスゲンに対するモル比は、1.5:1〜4:1の範囲で変動し得、2:1〜3:1のモル比が好ましく、2.5:1〜3:1のモル比が特に好ましい。
以下において、用語「クロロギ酸アリール」は、モノフェノールおよびホスゲンからのジアリールカーボネートの調製において中間体として形成された化合物を言及するために用いられる。
本発明の目的に好適なクロロギ酸アリール類は、一般式(III)のクロロギ酸アリールである:
[式中、R、R’およびR’’は、それぞれ、互いに独立して、一般式(I)で示された意味を有してよい]。
一般式(III)のクロロギ酸アリールを、一般式(II)のモノフェノールと反応させると、R、R’およびR’’は、それぞれ好ましくは式(I)および(II)における同一の意味を有する。
特に好ましくは、クロロギ酸フェニルである。
製造方法の最終製品における所望しない副生物を回避するためには、用いられるホスゲンが、少なくとも99.80重量%、好ましくは99.96重量%の純度を有すべきであり、四塩化炭素の含有量は、50容積ppm未満、好ましくは15容積ppm未満であるべきである。
本発明において、置換または未置換のピリジンが触媒として用いられる。これは、遊離塩基の形態あるいは完全にまたは部分的にその塩酸塩の形態で存在することができる。「遊離塩基の形態で」または「遊離形態で」とは、本発明に目的において、プロトン化した形態中で窒素またはピリジンの環が存在していないことを意味する。
置換されていてもよいピリジン類は、遊離形態で、好ましくは10mol%以下、特に好ましくは1mol%以下で存在する。残余物は、塩酸塩の形態で存在する。
本発明における触媒としての役割を果たすピリジン類は、好ましくは一般式(IV)のピリジンである:
[式中、R1およびR2は、それぞれ、互いに独立して、H、分岐または非分岐のC1−C9アルキル、C5−またはC6−シクロアルキル、OH、OR3、NHR3またはNR3R4であってよく、R3およびR4は、それぞれ互いに独立してC1−C4アルキルである]。
特に好ましくは、R1およびR2はHである。
好適なピリジン類の例として、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−イソプロピルピリジン、3−イソプロピルピリジン、4−イソプロピルピリジン、2−ブチルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、3,4−ジエチルピリジン、3,5−ジエチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、2−(3−ペンチル)ピリジン、4−(3−ペンチル)ピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−メトキシピリジン、2,6−ジメトキシピリジン、4−シクロヘキシルピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、4−フェニルプロピルピリジンおよび2−ヒドロキシピリジンが挙げられる。
特に好ましくは、ピリジンである。
特に好ましい態様において、触媒はピリジン塩酸塩である。
本発明において用いられる触媒は、存在するモノフェノールに対して0.001mol%〜10mol%の量で、好ましくは0.01mol%〜5mol%の量で用いることができる。
触媒は、モノフェノール溶解物中で溶液として用いられる。このような溶液は、本発明において、独立した触媒で後処理を行うか、または行わずに、区分III)の方法から区分I)の方法における反応へ再循環された、少なくともいくらかの量の触媒を含む。従って、触媒の後処理は、触媒の区分I)の方法への再循環にとって絶対的に必要ではないが、相当に可能性がある。
触媒の添加は、混合最中における出発原料の早期反応およびそれによる不適切な方法区分での塩化水素の早期進化を回避するために、出発原料を完全に混合した後に早期に、好ましくは反応器中で実施される。
区分III)の方法からの触媒の量の再循環は、所望により頻繁に実施することができ、連続方法において、触媒の汚染を防ぐか、または潜在的に触媒の不活性化を考慮するために一部の量を場合により方法回路から放出させながら、一部の量の触媒を好ましくは、連続的に再循環することができる。フレッシュな触媒は、必要時に触媒の再循環された量に添加することができる。好ましい態様において、少なくとも25重量%、特に好ましくは、少なくとも50重量%、非常に好ましくは、少なくとも75重量%、特に少なくとも85重量%の触媒が再循環される。しかしながら、好ましい態様において、99重量%以下、好ましくは95重量%以下の触媒が再循環される。
モノフェノールおよびホスゲン出発原料は、一般的な圧力によってモノフェノールは常に溶解物として、かつホスゲンは気体または液体として存在して、上記のモル比または上記の好ましいモル比で互いに混合される。大気圧および60℃を超える温度では、2相の気体/液体混合物が多く存在し、それはホスゲンの溶解性がモノフェノール中の、同様に、ジアリールカーボネート中の、上昇する温度とともに低下するためである。
このため、モルテンモノフェノール類およびホスゲンの混合物は、相界面の満足のいく補充という手段による出発原料の十分な反応を確保するために非常に集中して混合され反応相へ再分散されなければならない。代替手段として、フェノールとのホスゲンの反応を、縮合均一相において有意に増大することができる(気体ホスゲンおよび液体フェノールの2相混合物と比較した、フェノール中のホスゲンの増大した濃度のため)。温度を上昇させることも、反応率に促進的効果を有するため、100°C〜250°C、好ましくは110°C〜220°Cの範囲の上昇した温度も有利となり得る。しかしながら、上記の温度は、フェノール中のホスゲンの溶解性を低下させるため、超大気圧下で、上昇した温度で反応を実施することは特に有利である。このため、出発原料は互いに混合され、上昇した温度で、大気圧下、好ましくは50bar(絶対値)までの上昇した圧力下、特に好ましくは30bar(絶対値)までの上昇した圧力下および非常に好ましくは4〜25bar(絶対値)までの圧力下で反応させられる。混合域の温度は、少なくともモノフェノールの融点であるべきだが、100°C〜250°Cの範囲の反応温度が有利である。
出発原料をほとんど完全に混合した後、上記の触媒の1つが、好ましくはモノフェノール中の溶液として好ましい量で好ましくは混合物へ添加される。中間体としてのクロロ炭酸のアリールエステルを形成するための、ホスゲンとのモノフェノールの触媒反応は、上記の気温および圧力で、気体性塩化水素の除去とともに非常に早く進行するため、反応は、好ましくは複数の工程において実施することができる。反応のエンタルピーが僅かであるため、反応は、断熱条件下で実施することができる。第一段階において、即ち、特に上昇した圧力および好ましくは120°C〜230°C温度で、特に好ましくは130°C〜210°Cの温度で、ジフェニルカーボネートの調製には、非常に好ましくは170°C〜200°Cの温度で、15〜120分、好ましくは45〜90分の反応器中の液体滞留時間で、主反応体、クロロ炭酸の主要なアリールエステル、加えてさらに反応したジアリールカーボネートが形成される。第二段階において、ジアリールカーボネートを形成するためにモノフェノールが存在したまま、クロロ炭酸のアリールエステルは、15〜120分の、好ましくは45〜90分の反応器滞留時間で、好ましくは170°C〜250°Cの、特に好ましくは190°C〜230°Cの、非常に特に好ましくは200°C〜210°Cの多少高い温度で、後反応器中で反応する。ここで、後反応器中の第二段階での圧力は、2〜20barへ低下させることもできる。このような圧力の低下は、主反応器中で形成された塩化水素ガスが、低下する圧力の結果として特に反応溶解物からすぐに分離され得る、フラッシュ段階で有利に実施することができる。塩化水素の残余量を分離するためのフラッシュ段階は、場合により後反応器中における第二反応段階の下流でも存在し得る。それは、場合により後続の、区分III)の方法、製品精製および蒸留による触媒除去の第一蒸留カラムに組み込むこともでき、それにより気体相および液体層の分離が促進される。
指示された反応条件下での出発原料の反応のための反応器として、好ましくは連続反応器が十分に好適であるが、バッチ反応器として撹拌容器の使用も可能である。特に十分に好適な連続反応器の例として、撹拌容器のカスケード、バブルカラム、トレイカラム、充填カラムまたは反応溶媒を混合するための固定内部を有するカラムまたは反応蒸留カラムが挙げられる。
このようなカラムは、互いに組み合わせることもでき、(例えば、バブルカラムと上に置いた整流カラム)この場合上記の出発原料の混合から逸脱するが、出発原料を組合せカラムの異なる位置で別々に導入することができる。従って、例えばホスゲンは、上記の組合せカラムの場合、低い方のバブルカラムに導入し、触媒と一緒にモノフェノールを上部の、理論上約10個のプレートを有する整流カラムに導入することができる。形成されたジアリールカーボネートはバブルカラムから取り除かれる。
このような出発材料の別々の導入は、ホスゲンをカラムの真ん中で導入し、かつ触媒と一緒にモノフェノールをカラムの上部に導入することによって、反応蒸留カラムにおいても達成することができる。反応混合物は、カラムの下部から取り除かれる。このようなカラムは、少なくとも5個、好ましくは約20個のプレートを有し得る。
反応器のさらに任意の態様において、出発原料を、十分に高く場合により長い滞留時間(ただし、反応器の下部では、好ましくは120°C〜190°C、特に好ましくは160°C〜180°Cの低い気温)で、1〜25bar(絶対値)の圧力で主反応器中で完全に反応させることができる。反応器の上部で250℃まで、好ましくは230℃までの多少の高い温度を得るために、そこで追加的な加熱が必要となる。反応混合物の実質的な脱気および低いボイラーの除去は、フラッシュ蒸発または別の脱気技術の手段によって続けて実施することができる。
上記の出発原料混合物が上向きに底から経由して通るバブルカラムが、特に好ましい。ここで、気体性塩化水素がバブルカラムの上部から取り除かれ、反応混合物がカラムの軸(shaft)の上端から取り除かれる。これは、カラムの底を経由して、後反応器として機能する次のバブルカラムへ供給される。完全に反応した反応混合物は、滞留反応器の末端で最後のバブルカラムから取り除かれ、後続の、区分III)の方法、製品精製および蒸留による触媒の除去へ供給される。バブルカラムの上部で各場合において取り除かれた塩化水素ガスは、後続の、区分II)の方法(即ち、塩化水素後処理)で精製される。フラッシュ容器中での減圧および後続の圧力増加による、それぞれの段階の間での塩化水素の追加的除去も可能である。
装置の材料は、高温での塩化水素およびホスゲンに対する耐性に関して、厳しい要件を充足しなければならず、好ましくは黒色鋼、ステンレススチール、合金鋼、ニッケル系合金(例えば、Hastelloy C)、セラミック、黒鉛、エナメル被覆材、PTFE被覆金属材の材料群から選択される。
区分II)(即ち、塩化水素後処理)の任意の方法の目的は、塩化水素副生物の単離および精製である。このため、反応A)で形成された気体相は回収され、ジアリールカーボネートを形成するためのさらなる反応のために場合により再循環され得る塩化水素ガスは、他の成分から分離される。塩化水素副生物は、純度を高めるために蒸留し得る。さらに、区分III)の方法からの気体性サブストリーム(substream)を追加することができる。
区分II)の方法において、区分I)の方法からのHCl含有ストリームを組み合わせて一緒に精製する。塩化水素は、好ましくは中性化されない。低沸点の成分の内の主要な製品は、94重量%以上の割合を有する塩化水素ガスであり、副生物は、3重量%超えの割合で過剰に用いられたモノフェノールおよびクロロ炭酸、ジアリールカーボネートおよびホスゲンの微量のアリールエステルであり、かつホスゲンからの副生物としては、微量の、一酸化炭素および四塩化炭素である。副生物は、主要品塩化水素からの多様な工程の手段によって、ほとんど分離することができ、その結果99.0容積%超えの、好ましくは99.8容積%超えの純度、および1000容積ppm未満の、好ましくは500容積ppm未満のホスゲンおよび/またはクロロ炭酸エステルの残余量を有する塩化水素ガスが得られる。塩化水素中の有機化合物の含有量は、同様に1000容積ppm未満の、好ましくは500容積ppm未満であるべきであり、塩素含有炭化水素の含有量は、50容積ppm未満であるべきである。
この目的は、下記に記載された1つ以上の工程によって達成される。この目的は、好ましくは多段階的方法によって達成される。塩化水素は好ましくは蒸留によって分離される。
第一縮合段階において、塩化水素の沸点より高い沸点を有する副生物は、好適な温度で部分的に縮合される。ここで、比較的高濃度で存在している、比較的高沸点の成分(例えば、モノフェノールおよびジアリールカーボネート)は、特に塩化水素ガスからほとんど除去され、反応へ再循環される。この分離は、比較的低い温度に加えて、上昇した圧力も場合により採用すると特に成功する。第一縮合段階における好ましい温度は、少なくとも80℃であり、ジフェニルカーボネートの調製のためには特に好ましくは90℃である。圧力は、8〜25bar(絶対値)の範囲に好ましくは設定され、ジフェニルカーボネートの調製のために特に好ましい圧力は、12bar(絶対値)である。塩化水素ガスストリームからの副生物の縮合は、場合により様々な温度および/圧力で、複数の段階で実施し得る。
もし十分に低い温度または十分に高い圧力を達成することが技術的に不可能または困難ならば、モルテンジアリールカーボネートを使用した好適な装置での後続のスクラビング段階におけるHCl塩化水素ストリームから副生物をスクラブアウトするために、この第一縮合段階を回避することもできる。もし、このHClスクラビング段階が、第一縮合段階を回避した、塩化水素に対する第一の精製段階であるならば、このHClスクラビング段階は、複数の段階を含んでなり得、かつスクラブの効率性を増大させるために、多様で低下した温度レベルで操作することができる。ここで、特にモノフェノールは、ジアリールカーボネート中で非常にすぐに溶解できる。スクラブに使用されたジアリールカーボネートが例えば、後続の区分C)(即ち、ジアリールカーボネート後処理)の方法において好適な場所で取り出された際に、この方法工程において、微量のクロロ炭酸エステルおよびホスゲンも、ジアリールカーボネートを形成するために反応させることができる。原則的に、この方法区分から蒸留されたジアリールカーボネートへの任意のジアリールカーボネートストリームは、HClスクラビング段階に好適であり、かつそれは、HClスクラビング段階のために触媒およびフェノール含有ジアリールカーボネートストリームを区分III)の方法から取り除くための有機塩化化合物の反応に有利となり得、それにより、塩酸塩ガス中に存在したままの有機塩化化合物の短時間での反応が可能となる。
このような好適なジアリールカーボネートの1つが、粗製ジアリールカーボネートであり、区分I)(反応)の方法を残し、区分III)(ジアリールカーボネート後処理)の方法の第一段階でのさらなる後処理に供給される。触媒およびモノフェノールの十分な量が、このジアリールカーボネート中に存在している。代わりとして、DPC中でこすり出される副生物の物理的溶解性が十分に高いため、HClスクラビング段階で、蒸留されたジアリールカーボネートをあらゆる様式で使用することができる。しかしながら、HClスクラビング段階では、好ましくは純粋に蒸留されたジアリールカーボネートが使用される。有機塩素化合物をHClスクラビング段階で反応させるために、スクラビング溶媒としてジアリールカーボネートの代わりにモノフェノールを使用することが可能であり、それはモノフェノール中のこすり出される副生物の物理的溶解性も十分に高いからである。このモノフェノールは、例えば、モノフェノール供給ストリームのサブストリームであり得る。もしジアリールカーボネートを形成するためにクロロエステルまたはホスゲンの反応が所望されるならば、スクラブで使用されるモノフェノールは任意の様式で触媒を含み得る。ジアリールカーボネートを使用した、またはモノフェノールを使用したHClスクラブは、好ましくはジアリールカーボネートの融点を超えた温度で実施され、ジフェニルカーボネートの調製においては80〜95°Cの溶解温度が特に好ましい。HClスクラブは、大気圧で、または8〜25bar(絶対値)の上昇した圧力で実施され得、ジフェニルカーボネートの調製においては12bar(絶対値)が特に好ましい。
このようなスクラブにおいて、99.8重量%を超える純度を有する塩化水素ガスを得ることができる。ホスゲンの割合は、好ましくは500容積ppm未満、クロロギ酸エステル(chloroformic ester)の割合は、好ましくは検出限度を下回って低減され、フェノール含有量は、好ましくは10容積ppm未満に低減される。
このHClスクラビング段階は、絶対的に必要ではなく、別の他の方法工程と他の方法工程との任意の組合せの場合に回避することもできる。
塩化水素蒸留は、高純度の塩化水素ガスを達成するために特に十分に好適である。このような蒸留をエネルギー効率がよい様式で実施するためには、前述の第二縮合段階において比較的低い温度に精製される塩化水素の事前冷却が有用であるが、絶対的に必要ではない。この段階が省略された場合、後続の塩化水素蒸留において、低い温度での、相当するより大きなエネルギー量が必要となる。場合により多くの異なる温度および/または圧力レベルで操作することもできる、この第二縮合段階において、依然塩化水素ガス中に存在している微量の比較的高い沸点の副生物は、特に8〜25bar(絶対値)の範囲、ジフェニルカーボネートの場合は好ましくは12bar(絶対値)、の比較的高い圧力が採用された際に分離される。温度は、技術的状況の関数として、25°C〜−50°Cの非常に広い範囲で変動し得る。この第二縮合段階は、特に、HClスクラビング段階のスクラブがモノフェノールを使用して実施された際に非常に望ましく、それはHClガスストリームに存在するモノフェノールの濃度をこの様式で有意に減少させることができ、従ってHCl蒸留における負荷が減少するからである。もしこの第二縮合段階が省略された場合、HCl蒸留におけるエネルギー要求は相当して非常にはるかに高い。縮合物は、同様に第一縮合段階におけるように反応へ供給することができる。
工程II)の方法における塩化水素後処理の第四段階および最終段階のように、塩化水素の蒸留は、特に好ましい態様において、高純度の塩化水素の調製に特に十分に好適である。それは、好ましくは上昇した圧力で実施され、さもなければ、代わりに必要となるであろう、十分に低い温度を設定するためのエネルギー消費量が、不均一に高くなるだろう。前記の精製段階(複数)が、大気圧下で実施されたならば、この精製段階の最後において8〜25bar(絶対値)の比較的高い圧力への塩化水素ストリームの圧縮が非常に望ましく、ジフェニルカーボネートの調製のためには12bar(絶対値)が特に好ましい。これら条件下で99.95重量%の純度を有する塩化水素ガスを得ることが可能である。
区分II)の方法における塩化水素精製の全ての前記四つの段階は、高純度塩化水素ガスの調製のために、本発明により記載された順に、特に十分に好適である。特定の順番を遵守することや全方法段階を実施することは絶対的に必要ではないが、代わりに反応から分離された塩化水素の混入度合いおよび最終製品としての塩化水素ガスの所望する純度に依存する。従って、HCl蒸留の実施例について下記で例証されているように、別々の精製段階または単一精製段階を用いて所望する結果を達成することは相当に可能であり得る。
区分I)(反応)の方法からの供給ストリームが、事前精製なく塩化水素蒸留へ直接的に供給されたならば、同一温度および圧力条件下で、99.95%重量部の純度を有する塩化水素ガスを同様に得ることが可能である。
精製段階の組合せは、特定の純度を達成するために、上記の列挙から独立して特定の順に相当な可能性で実施することができる。
第一および第二縮合段階を実施するための装置として、方法条件に十分に高い熱伝導表面域を有する古典的冷却トラップおよび反応へ縮合物を供給する装置が好適である。このような冷却トラップは、複数の段階で設定することもでき、かつ場合により異なる温度で維持することができる。HClスクラビング段階に好適な装置は、特に、スクラビング液が逆流して上部から上昇する塩化水素ガスへ運ばれ得る、バブルカラム、バブルキャップトレイカラム、ランダム充填物(random packing)を含有するカラム、規則性充填物(ordered packing)を含有するカラム、固定内部を有するカラム等の連続操作装置である。連続操作撹拌装置(例えば、ミキサー・セトラー)またはさもなければ原則的に、不連続操作撹拌装置も好適である。
塩化水素蒸留は、好適なカラム内部を有する、従来の蒸留カラムまたは整流カラムで実施することができる。
上記装置の材料は、塩化水素への耐性に関して厳しい要件を満たす必要があり、好ましくは黒色鋼、ステンレススチール、合金鋼、ニッケル系合金(例えば、Hastelloy C)、セラミック、黒鉛、エナメル被覆材、PTFE被覆金属材(PTFE-clad material)の群から選択される。
区分III)(即ち、製品精製および触媒除去)の方法において、反応I)において形成された比較的高い沸点の成分は回収され、分離され、かつ触媒は遊離塩基の形態または塩酸塩の形態で反応へ再循環される。従って、主要製品は99.0重量%超え、好ましくは99.8重量%超え、特に好ましくは99.95重量%超えの純度を有するジアリールカーボネートが得られるような程度に精製される。
驚くべきことに、発生する触媒の昇華なく蒸留の手段によって反応混合物からの触媒の単離および再循環が可能であることが見出された。
当該区分の方法の図的概説は、図1に示される。
液体反応混合物に対する第一分離工程において、溶解した塩化水素は、脱気工程においてほとんど分離される。これは、フラッシュ容器(図1のA)、蒸留カラム、これら装置の組合せ、またはさらなる従来の脱気技術(例えば、ストリッピング)の手段によって実施される。
溶解した塩化水素が圧力を低下させることによって脱気される、フラッシュ段階(A)を用いることが好ましい。ここでは20mbar〜1bar(絶対値)の圧力および140°〜205°Cの温度、好ましくは0.1bar〜1bar(絶対値)の圧力および165〜205°Cの温度、特に好ましくは0.3〜0.7bar(絶対値)の圧力および180〜200°Cの温度が選択される。
代わりに、200mbar〜2bar(絶対値)、好ましくは0.5〜1bar(絶対値)、特に好ましくは0.8〜1bar(絶対値)の圧力で操作される蒸留カラムを用いて塩化水素の除去を実施することができる。
塩化水素、モノフェノールおよび遊離の、置換されていてもよいピリジンの混合物は、フラッシュ容器の蒸気相内または代替の蒸留カラムの上部で得られる。この混合物は、区分B)の方法における気体後処理のため、好ましくは主要気体ストリームに添加される。
フラッシュ容器または代替カラムの底部は、ほとんど塩化水素を含まず、かつ好ましい変化形態においてモノフェノールが少ない。従って、底部は遊離形態および塩酸塩の形態でのジアリールカーボネート、モノフェノール、置換されていてもよいピリジン、および副生物から構成される。
さらなる変化形態において、塩化水素を分離するために、フラッシュ段階および蒸留カラムを組み合わせることができ、またはさらなる脱気技術(例えば、ストリッピング)を用いることができる。代わりに、第一分離段階を省略することもできる。しかしながら、第二分離段階のためにより大きな方法ストリームがこの様式で得られ、かつさらなる分離段階に持ち越される塩化水素が浸食の問題を引き起こし得るため、これは好ましくない。
第二分離段階において、ジアリールカーボネートは、モノフェノール、ピリジン塩酸塩および二次的成分を分離することにより、第一分離工程(図1のストリーム3)予備精製ストリームから単離される。実験において、ジアリールカーボネートおよびピリジン塩酸塩を含む2成分混合物の蒸気−液体の均衡が、ヘテロ共沸作用を示すことが見出された(図2を参照のこと)。最低限の共沸混合物は、ピリジンHClの85重量%の質量対割合で見出される。液体は、ピリジン塩酸塩含有相およびジアリールカーボネート含有相内へ分離する。例えば蒸留等の、原理が蒸気−液体の均衡に基づく分離技術による、ジアリールカーボネートからのピリジン塩酸塩の分離は、従って困難であるかのように思われる。さらに、ピリジン塩酸塩の140〜146℃の高い融点は、凝縮装置内での再昇華が操作上の問題につながり得るため、蒸留において障害となり得る。
驚くべきことに、蒸留による、フェノール、ピリジン塩酸塩および二次的成分からのジアリールカーボネートの分離は、実験において確認された。
好ましい変化形態において、ジアリールカーボネートは、第二分離段階において精製され、よって蒸留カラムのサイドストリーム(11)として得られる(図1を参照のこと)。モノフェノール、遊離ピリジン、ピリジン塩酸塩および低沸点の二次的成分は、蒸留物から取り除かれる。ジアリールカーボネートとピリジン塩酸塩の共沸混合物によって、蒸留物もジアリールカーボネートの約5〜15重量%の割合を有する。
高沸点の二次的成分および熱分解製品は、底から取り除かれる。カラムの底部において製品を損傷する温度である220℃を超えないため、かつ底部が汲み上げ可能のままであるために、10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%の割合のジアリールカーボネートが好ましくは底部に残される。
5〜100mbar(絶対値)、特に好ましくは10〜40mbar(絶対値)の圧力が、好ましくは蒸留カラムの上部で設定される。上部の温度は、上部の圧力、モノフェノールの余剰および触媒濃度の機能として、60℃〜140℃で変動する。底部では、180〜250℃、好ましくは200〜220℃の温度が有効である。底部でのこれら高温の結果として、二次的成分サロールの割合が熱分解によって低減される。99重量%を超える純度を有するジアリールカーボネートは、従ってサイドストリームにおいて得ることができる。サイドストリームは、好ましくは蒸気相から取り除かれるが、液体相からも取り除かれる。
サイドストリームにおけるジアリールカーボネートの純度は、サイドカラムを用いることにより、さらに増大させることができる。しかしながら、蒸留カラムは、好ましくはサイドストリームがさらなる精製なく後続の方法段階(例えば、メルトポリカーボネート方法)へ導入できるような様式で操作される。
蒸留物は、反応へ再循環される。蒸留物の一部は、低沸点二次的成分を排出するために好ましくは浄化物として排出される。底部の製品は、処分されるかまたは好ましい変化形態において、高沸点浄化ストリームの除去後に反応へ再循環される。特に好ましい変化形態において、底部に存在しているジアリールカーボネートの一部は、さらなる分離操作(例えば、薄膜蒸発器)において(図1のC)、穏やかな条件下で分離され、かつ高沸点浄化におけるジアリールカーボネートの割合を低減するために蒸留カラムへ戻される。
蒸留カラムのサイドストリームにおけるジアリールカーボネートおよびピリジン塩酸塩を含む混合物の取り出しのために、蒸気の好ましい蒸留に対して代替の変化形態が(図3を参照のこと)提供される。追加的蒸留カラムにおいて、次いで純粋ジアリールカーボネートが底部のこの混合物から得られる。
代替変化形態(図3のB)の第一蒸留カラムの上部で、5〜100mbar(絶対値)、好ましくは10〜40mbar(絶対値)の上部での圧力で、かつ60〜115℃の上部での温度で、フェノールおよび低沸点の二次的成分が取り除かれる。蒸留物および底部の製品は、蒸気の好ましい変化形態におけるように、反応へ再循環される。
代替の変化形態におけるサイドストリームを精製するための付加的蒸留カラム(図3のD)は、好ましくはヘテロ共沸蒸留(heteroazeotropic distillation)として構成される。上部のデカンター(図3のE)が蒸留物を分離し、高ジアリールカーボネート相および高ピリジン塩酸塩相へ入れる。高ピリジン塩酸相は、間接製品(overhead product)として取り除かれ、反応へ再循環される。高ジアリールカーボネート相は、カラムへランバックとして戻される。ランバックを増大させるために、デカンターからの両相の混合物もカラムへ再循環され得る。99重量%を超える純度を有するジアリールカーボネートは、カラムの底部で得られ、さらなる精製なく後続の方法工程(例えば、メルトポリカーボネート方法)に引き渡され得る。
図1は、区分III)の方法(即ち、製品精製および蒸留による触媒除去)の好ましい態様を示す。
図2は、様々な温度(160℃、170℃および180℃)での圧力の機能として、実験的に決定したジフェニルカーボネート/ピリジン塩酸塩混合物の蒸気−気体−気体均衡を示す。これは、85重量%のピリジン塩酸塩の質量による割合での最低限の共沸混合物を提示する。
図3は、区分III)の方法(即ち、製品精製および蒸留による触媒除去)のさらなる好ましい態様を記載する。
図1および3の説明
A:フラッシュ段階
B:蒸留カラム
C:追加的分離操作(例えば、薄膜蒸発器)
D:サイドストリーム蒸留カラム
E:デカンター
1:反応混合物
2:フラッシュ段階からの蒸気
3:フラッシュ段階からの底部
4:蒸留カラムからの蒸気
5:蒸留へのランバック
6:蒸留物の反応への再循環
7:蒸留カラムからの底部
8:蒸留カラムへの噴霧器の蒸気
9:追加的分離操作(例えば、薄膜蒸発器)から蒸留カラムへの蒸気
10:底部の反応への再循環
11:製品ストリーム(DPC)
12:低沸点の二次的成分を取り除くための浄化
13:高沸点の二次的成分を取り除くための浄化
以下の実施例は、何らの限定を構成するものではなく、蒸留によるピリジン塩酸塩の除去を実施可能とするために方法を説明することを意図するものである。
ジフェニルカーボネート(DPC)、フェノール、ピリジン塩酸塩(塩化ピリジニウム、以下「ピリジン−HCl」または「Py−HCl」とも称される)およびサロール(salol)(フェニルサリチル酸塩、フェノールの直接ホスゲン化の副生物)の様々な混合物を、(絶縁のためにアルミホイルで包装された)30cmの長さのVigreuxカラム蒸留、Liebig凝縮器(温水を用いて80℃で操作される)、冷却トラップ(−80℃で)および真空ポンプを備えた蒸留フラスコ(11)からなる実験室の蒸留装置に導入した。カラムの上部および底部の温度を測定した。各場合において、モルテン混合物を約20mbar(絶対値)で部分的に蒸留した。2個または3個のフラクションを別々に回収し、底部および冷却トラップの含有物と同様にガスクロマトグラフィーによって分析した。
例1:
以下の合成反応混合物を記載の装置内で蒸留する。
驚くべきことに、フラクション2は室温で液体であり、永久的にこのように残存する。
個別フラクションの分析によって、以下の組成物が与えられる(100%からの合計組成物の偏差は、不正確な測定による)。
個別フラクションにおけるピリジン対HClの分子比が、それぞれの場合において約1:1であることが明白である。蒸留底部は一方でピリジン塩酸塩を含まない。冷却トラップにおいて、少量のHClが回収されたが、塩としてのピリジン塩酸塩の堆積の兆しはない。これは、ピリジン塩酸塩が、驚くべきことに粗製ジフェニルカーボネート(DPC)反応混合物から塩として低沸点で留去されることを示す。
例2:
以下の合成反応混合物を記載の装置内で蒸留した。
以下のフラクションが蒸留カラムにおいて形成された。
例1とは対照的に、フェノールの割合が顕著に低いため、主にフェノールからなる第一フラクションは発生しない。他の観察、特に室温で液体のフラクション2は、例2の場合においても適用する。
個別フラクションの分析によって、以下の組成物が与えられる(100%からの合計組成物の偏差は、不正確な測定による)。
再度、特に使用されたピリジン塩酸塩の主要部分が回収されたフラクション2において、ピリジン対HClの分子比が事実上理想的に1:1であることが明白である。蒸留底部は、再びピリジン塩酸塩を含まない。繰り返すが、少量のHClは、冷却トラップにおいて回収されたが、この実験においても塩としてピリジン塩酸塩の堆積の兆しがない。従って、ピリジン塩酸塩が、驚くべきことに粗製ジフェニルカーボネート(DPC)反応混合物から塩として低沸点で留去されることを示す。
比較例1:
比較例として、ピリジン塩酸塩(微量の水を含む)の以下の混合物を蒸留した。
個別フラクションの分析によって、以下の組成物が与えられる(100%からの合計組成物の偏差は、不正確な測定による)。
純粋ピリジン塩酸塩の加熱においても、選択された温度で塩の分離は事実上発生しなかった。フラクション1においてのみ、温度、室温下での物質の状態および同様に組成物が純粋ピリジンの排除を示した。
フラクション2において、少量のピリジン−HClが約1:1組成物中に見出された。
ピリジン塩酸塩の主要部分は、予想通り、カラムの底部に残ったままであった。少量のHClはまた、冷却トラップ中に回収されたが、この実験においても塩としてピリジン塩酸塩の堆積の兆しがない。
比較例2:
40重量%のピリジン塩酸塩および60重量%のフェノールの合成混合物(例1および2からのフラクション2に対する類似体)を製造した。混合物は室温で液体である。フェノール中に溶解したピリジン塩酸塩の凝固点の低下によって、同様に液体である蒸留における混合物の発生がもたらされ、真空系において脱昇華等が発生せず、よって工業的蒸留装置においても期待されている。