JP6406094B2 - 触媒の回収方法、該回収触媒を用いる炭酸ジフェニルの製造方法および該炭酸ジフェニルを用いるポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
炭酸ジエステルの製造方法としては、ホスゲンと芳香族ヒドロキシ化合物をアルカリ存在下で反応させる方法が知られている。しかしながら、ホスゲン自体が毒性の強い化合物である上に多量のアルカリが必要であるため、シュウ酸ジエステルを有機リン化合物などの脱カルボニル触媒の存在下で脱カルボニル反応させることによる炭酸ジエステルの製造方法も提案されている(特許文献1参照)。また、脱カルボニル反応に用いたホスホニウム塩触媒を、「反応混合物に、有機極性溶媒を添加して希釈すると共に、ハロゲン化水素を添加することにより、該反応混合物中に残存しているホスホニウム塩もしくはホスホニウム塩成分をハロゲン化水素付加体として析出させて分離すること」により回収する方法も提案されている(特許文献2参照)。
本発明の第4の要旨は、第1乃至3の何れか1つの要旨に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水素の接触を、前記残液を極性有機溶媒と接触させた後に、塩化水素と接触させることを特徴とする触媒の回収方法に存する。本発明の第5の要旨は、第1乃至3の何れか1つの要旨に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水素の接触を、前記極性有機溶媒と前記塩化水素を接触させた後、これに前記残液を接触させることを特徴とする触媒の回収方法に存する。
再利用することにより、効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に製造することができる。また、この高純度な炭酸ジフェニルを原料として用いることにより、高純度なポリカーボネートを得ることができる。
本発明の触媒の回収方法では、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル反応」又は単に「脱カルボニル反応」と言う場合がある。)による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒及び触媒回収に用いた溶媒を回収する。また、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法では、この回収された触媒を用いて、シュウ酸ジフェニルを脱カルボニル反応させることにより炭酸ジフェニルを得る。
本発明に係る脱カルボニル反応は、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において、シュウ酸ジフェニル(以下、「本発明に係るシュウ酸ジフェニル」又は単に「シュウ酸ジフェニル」と言う場合がある)は、炭酸ジフェニル(以下、「本発明に係る炭酸ジフェニル」又は単に「炭酸ジフェニル」と言う場合がある)の原料である。また、本発明に係るシュウ酸ジフェニルを原料として得られる、本発明に係る炭酸ジフェニルは、熱的に安定でポリカーボネートの原料として好適である。
[触媒]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において用いる触媒は、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体として反応器に供給される。なお、該テトラアリールホスホニウムハライドを「本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライド」又は単に「テトラアリールホスホニウムハライド」と、該ハロゲン化水素を「本発明に係るハロゲン化水素」又は単に「ハロゲン化水素」と、該アダクト体を「本発明に係るアダクト体」又は単に「アダクト体」と各々言う場合がある。
Ar1〜Ar4の芳香環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基及びチエニル基、フリル基、ピリジル基等のイオウ原子、酸素原子又は窒素原子を含有する炭素数4〜16の芳香族複素環基などが挙げられる。これらのうち安価に触媒を製造できることから芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基が更に好ましい。
本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドにおいては、Ar1〜Ar4の少なくとも何れか1つの基は、他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることが好ましい。ここで、異なる基とは、置換基の有無、種類、置換位置が異なるものも含めて、何れかが異なる基同士のことを言う。そして、本発明においては、このようにAr1〜Ar4の何れか1つの基が他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることを「非対称」であると言う。本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドが非対称である場合、Ar1〜Ar4の少なくとも何れか1つの基が他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることにより、溶解性に優れる。
また、一般式(4)で表されるテトラアリールホスホニウム塩におけるアリール基は、置換基を有していても良いフェニル基であることが好ましい。そして、ベンジルプロトンを有さないテトラアリールホスホニウムクロライドが更に好ましく、ベンジルプロトンを有さないテトラアリールホスホニウムクロライドが特に好ましい。
アルコキシ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−アミノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアミノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のシアノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物及びp−ニトロフェニル−トリ−p−トリルホスホニウムクロライド等のニトロ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物などが挙げられる。これらのうち、本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドは、置換基を有していてもよいテトラフェニルホスホニウムクロライドが好ましく、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドが特に好ましい。
ニウムハライドの合計量を0.1モル以上とすることが好ましく、1モル以上とすることが更に好ましく、また、一方、50モル以下とすることが好ましく、20モル以下とすることが更に好ましい。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル反応を高選択率で維持しやすいことから、触媒と共にハロゲン化合物(以下「本発明に係るハロゲン化合物」と言う場合がある)を用いることが好ましい。
本発明に係るハロゲン化合物としては、下記の無機ハロゲン化合物及び/又は有機ハロゲン化合物などが挙げられる。これらのハロゲン化合物の中では、塩素化合物が好ましい。ハロゲン化合物は、テトラアリールホスホニウムハライドの合計量に対してモル比(ハロゲン化合物/テトラアリールホスホニウムハライドの合計量)が通常0.0001〜3.00、好ましくは0.001〜1.00であるように用いられるのが良い。なお、ハロゲン化合物は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
alは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。これらの構造は、例えば、一般式(a)、(b)、(c)、(d)としてそれぞれ表される。
有機ハロゲン化合物としては、例えば、以下のような化合物が具体的に挙げられる。
一般式(a)で表されるような、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル、塩化ドデシル等のハロゲン化アルキルや、塩化ベンジル、ベンゾトリクロリド、塩化トリフェニルメチル、α−ブロモ−o−キシレン等のハロゲン化アラルキルや、β−クロロプロピオニトリル、γ−クロロブチロニトリル等のハロゲン置換脂肪族ニトリルや
、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロプロピオン酸等のハロゲン置換脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
一般式(d)で表されるような、イオウ原子にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ナフタレンスルホン酸クロライド等のハロゲン化スルホニルなどが挙げられる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法における脱カルボニル反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル反応」又は単に「脱カルボニル反応」と言う場合がある)は、液相反応で行うことが好ましい。脱カルボニル反応の反応温度は、反応速度の点では高温であることが好ましいが、炭酸ジフェニルの純度の点では低温であることが好ましい。そこで、反応温度は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。反応時の圧力は、プロセス上の要件から決めればよい。
脱カルボニル反応は、反応に用いる物質の融点以上の温度で反応を行う場合は、溶媒を用いる必要はないが、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性極性溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等を適宜使用することもできる。
上記脱カルボニル反応により、原料シュウ酸ジフェニルに対応する炭酸ジフェニルを生成させることができる。脱カルボニル反応後の反応液には、炭酸ジフェニル及び脱カルボニル触媒、及び未反応シュウ酸ジフェニルが含まれている。また、この他に、シュウ酸ジフェニル、炭酸ジフェニル、脱カルボニル触媒等の転位、分解、反応等により生じた副生物なども含まれている可能性がある。副生物としては、例えば、フェノール、フェニルp−クロロ安息香酸などが挙げられる。また、前述のハロゲン化合物を用いた場合は、該ハロゲン化合物又はその副生物が含まれている可能性もある。そこで、上記カルボニル反応により得られた炭酸ジフェニルは、用途に応じた純度や形態とするために適宜精製される。
平10−152457号公報などに記載の方法を参照)。ここで、一酸化炭素にフェノー
ル、二酸化炭素、ハロゲン化水素などの不純物が含まれる場合は、吸収塔やスクラバーなどの精製装置を通した後に、シュウ酸ジフェニルの原料などに利用することが好ましい。
本発明の触媒の回収方法は、上記脱カルボニル反応に用いた触媒を、脱カルボニル反応後の反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液から回収する(触媒回収工程)。ここで、本発明の触媒の回収方法は、残液を極性有機溶媒と塩化水素に接触させる工程を有する。また、触媒回収に用いた極性有機溶媒を回収し、触媒回収工程に再利用する。そして、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、この回収された析出物を触媒として用いて、上記脱カルボニル反応を行う。
第1工程:シュウ酸ジフェニルをテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の存在下で脱カルボニル反応させることにより炭酸ジフェニルを生成させる工程、
第2工程:第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する工程、
第3工程:第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液に含まれる触媒を析出させる工程(ここで、第3工程は、前記残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を接触させる工程を有する)、
第4工程:第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を第1工程に脱カルボニル反応の
触媒として供給する工程。
第2工程では、第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する。第2工程における分離は、蒸留、抽出、晶析などの公知の方法で行うことができる。本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライド及び本発明に係るアダクト体は、通常高沸点である。そこで、第2工程における分離は、炭酸ジフェニルを蒸留により分離する方法が簡便で好ましい。すなわち、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル反応後の反応液に含まれる炭酸ジフェニルを蒸発させて取り出すことにより、本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライド及び/又は本発明に係るアダクト体を含む残液を得ることが好ましい。なお、脱カルボニル反応後の反応液にシュウ酸ジフェニルや炭酸ジフェニルのフリース転位化合物などの高沸点物質が含まれている場合は、通常これらも触媒液に含まれた状態となる。
第3工程では、第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液に含まれる触媒を析出させる。ここで、第3工程は、該残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を接触させる工程を有する。触媒は、以下のような現象により析出すると推定される。
また、本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドが極性有機溶媒に対する溶解度が低い場合、該残液を極性有機溶媒と接触させると、通常、残液中に残っている炭酸ジフェニルや不純物などは極性有機溶媒に溶解するが、テトラアリールホスホニウムハライドが析出するために該残液はスラリー状になる。ここで、該残液に含まれているテトラアリールホスホニウムハライドを塩化水素と接触させると、塩化水素とのアダクト体となり、極性有機溶媒に対する溶解度が高くなるため溶解する。しかしながら、これに水を接触させることにより、テトラアリールホスホニウムハライドのアダクト体を析出させること
ができる。
チル、シュウ酸ジエチルなどの低級アルキルシュウ酸ジエステルなどが挙げられる。エチレングリコール酢酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。エチレングリコールの脂肪酸エステルとしては、エチレングリコール酢酸エステルなどが挙げられる。
第3工程で接触させる水を接触させる場合の量は、テトラアリールホスホニウムハライドの塩化水素アダクト体が析出し、回収率が高くなりやすい点では多いことが好ましく、また、一方で、炭酸ジフェニルや副生高沸点物質が析出し難く、高純度な触媒を回収しやすい点では少ないことが好ましい。そこで、具体的には、極性有機溶媒の量に対する水の量(重量比)は、0.001倍以上であることが好ましく、0.01倍以上であることが更に好ましく、0.02倍以上であることが特に好ましく、また、一方で、0.5倍以下であることが好ましく、0.2倍以下であることが更に好ましく、0.1倍以下であることが特に好ましい。接触させる水の温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが更に好ましく、30℃以下であることが特に好ましい。水との接触は、回収される触媒が高純度になりやすい点では、ゆっくりと時間をかけて行うことが好ましい。
すなわち水の全量を一度に接触させるより、水を分けて或いは少量ずつを接触させることが好ましい。
ルボニル反応の触媒として供給する。第3工程で得られるスラリーは、これを固液分離することにより得られる固体を乾燥させて脱カルボニル反応の反応器に供給することにより触媒として再利用することができる。但し、高沸点物質の蓄積を防ぐ観点より、第3工程で得られるスラリーは、炭酸ジフェニルより高沸点である成分を除去した後に第1工程に供給することが好ましい。ここで除去される成分としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸フェニルやフェニル(o−フェノキシカルボニルフェニル)カーボネート(PCPC)などの副生高沸点物質が挙げられる。固液分離は、加圧濾過などにより行うことができる。また、乾燥は、得られた固体を約80〜220℃で、0.1〜50kPaで、約1〜10時間乾燥させることにより、極性有機溶媒と水を除くことができる。
また、上記第1〜第4工程をこの順に連続して行うことにより、高純度な炭酸ジフェニルを効率良く、安定的に連続製造することができる。但し、上記第3工程において、第2工程で得られた残液の全量から触媒回収処理を行ったとしても、上記の副生高沸点物質の除去などの処理に伴い、触媒の一部も除去されてしまうことがある。そこで、連続反応を行う場合、反応器内にテトラアリールホスホニウムハライドの合計量が上述の好ましい範囲となるように、回収触媒と共に、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体を供給することにより行うことができる。
本発明の触媒の回収方法は、上述の触媒回収に用いた極性有機溶媒を回収し、触媒回収工程に再利用する工程を有する。ここで、触媒回収に用いた極性有機溶媒には、触媒回収に用いた塩化水素が含まれているため、以下の(A)工程及び(B)工程をこの順に行うことにより精製した後に再利用することが好ましい。
(A)工程:前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を蒸発させ、水が入れられている液液分離器に留出させ、前記液液分離器の極性有機溶媒の相を前記残液側に戻すことにより、前記残液に含まれる塩化水素の少なくとも一部を除去する工程、
(B)工程:(A)工程で得られた液を蒸留する工程。
0時間以下が好ましく、15時間以下が更に好ましく、10時間以下が特に好ましい。蒸発は、不純物の副生が起こり難い点から低温で低圧力で行うことが好ましく、圧力は、常圧下あるいは減圧下で蒸発させることが好ましく、温度は塩化水素が留出する温度が好ましい。具体的には、圧力は、1kPaA以上が好ましく、2kPaA以上が更に好ましい。また、一方で、100kPaA以下が好ましく、80kPaA以下が更に好ましい。そして、温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、また、一方で、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃以下である。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、上記のようにして回収された高純度な触媒を再利用するため、再利用された触媒を用いて脱カルボニル反応させているにも関わらず、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に連続製造することができる。そこで、上述の本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により得られる炭酸ジフェニルの純度は、通常99.0
重量%以上、好ましくは99.3重量%以上、更に好ましくは99.5重量%以上である。不純物が含まれる場合は、イオン性の塩素などが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.1重量ppm以下、更に好ましくは0.01重量ppm以下である。
本発明で製造される炭酸ジフェニルの用途のひとつであるポリカーボネートは、上述の方法により製造された炭酸ジフェニルと、ビスフェノールAに代表されるジヒドロキシ化合物とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステ
ル交換反応させることで製造できる。炭酸ジフェニルとエステル交換させるジヒドロキシ化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物でも脂肪族ジヒドロキシ化合物でも良いが、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に炭酸ジフェニルとビスフェノールAを原料とした一例を説明する。
炭酸ジフェニルとビスフェノールAとのエステル交換反応でポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネートの製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネートを得やすい。
上記方法によりポリカーボネートを製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネートの製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
上述のように本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルは高純度であることから、本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
特に、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により、高純度な炭酸ジフェニルを効率良く得ることができることから、これを用いて高品質なポリカーボネートを得ることができる。
の要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
シュウ酸ジフェニルは、東京化成工業株式会社の1級試薬を単蒸留により精製したものを使用した。
メチルイソブチルケトンは、和光純薬工業株式会社の製品を使用した。塩化水素ガスは、住友精化株式会社の製品を使用した。なお、メチルイソブチルケトン中の水濃度を水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)より分析したところ、500重量ppmであった。
メチルイソブチルケトンの定量は、ガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。装置は、島津製作所社製「GC−2014」を使用した。カラムは、アジレントテクノロジー社製「DB―17」(内径0.53mm、カラム長60m、膜厚1μm)を使用した。キャリアーガスはヘリウムとし、その流量を毎分7.34cm3、線速を毎秒50.7cmとした。注入口温度を220℃、検出器温度を260℃とした。カラムの昇温パターンは、先ず75℃で3分間保持させた後に毎分10℃で220℃まで昇温させ、220℃で10分間保持させ、次に、毎分40℃で250℃まで昇温させ、10分間保持させて分析した。
水の定量は、水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)を用いて行った。
4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの定量及び回収触媒の組成は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt Cadenza 3mm CD−C18 250mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度30℃。溶離液組成:A液 アセ
トニトリル:水=7.2:1.0重量%/重量%、B液0.5重量%リン酸二水素ナトリウム水溶液。分析時間0分〜12分。A液:B液=65:35(体積比、以下同様。)。分析時間12〜35分は溶離液組成をA液:B液=92:8へ徐々に変化させ、分析時間35〜40分はA液:B液=92:8に維持、流速1ミリリットル/分)にて分析した。
以下の方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩を合成した。
先ず、特開2013−82695号公報に記載された方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイドを合成した。このブロマイド体を特開平11−217393号公報に記載された方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(クロライド体)に変換した。
その後、セパラブルフラスコを室温に冷却することによりスラリーを得た。このスラリーをガラスフィルターにより濾過して得られた固体をナス型フラスコに移した。ナス型フラスコを、オイルバスを備えたロータリーエバポレータに付け、オイルバスを100℃に加熱し、圧力10Torrで2時間乾燥させることにより固体を得た。この固体を京都電子工業社製の電位差滴定装置「AT−610」で分析した結果、14.2重量%であったことから、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩であることが確認された。また、水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)を用いて測定した含水率は0.4重量%であった。
撹拌子を備えた2000cm3のナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル271g(1.1モル)、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩(分子量467)160gを入れ、240℃のオイルバスに浸漬させた。オイルバスの温度を240℃まで昇温し、2時間反応させた。
また、得られた固体の減圧濾過における濾過性は良好であった。また、この固体の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(分子量431)の濃度は、73重量%であった。そこで、固体として回収された4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの回収率は、(167g×0.73÷431)÷(160g÷467)×100=83%と算出された。
が鈍くなってくるまで全留出させて初留57gを得た。ここで、初留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、98.0重量%であった。
実施例1において、セパラブルフラスコに濾液300gに加え、更に実施例1で得られた初留57gを入れ、液液分離槽に実施例1で蒸発液を溜めたままにした以外は、セパラブルフラスコのボトム温度を昇温させ、67.3℃となるまで留出させ続けて主留を得る操作まで実施例1と同様に蒸留を行った。
実施例1において、棚段塔からのラインを初留タンクに繋いでおいて以外は、実施例1
と同様にして回分式蒸留塔を設置した。
セパラブルフラスコに上述の濾液300gを仕込んだ。還流比を2として、棚段塔内圧力を常圧から133kPaまで減圧し、セパラブルフラスコのボトム温度を常温から60.4℃まで昇温することにより蒸留を行った。メチルイソブチルケトンと共に水が蒸発されるのに伴い棚段塔の塔頂温度が上昇し、蒸発成分に含まれる水濃度が低くなるのに伴い温度上昇が58.2℃付近で鈍くなってくるまで全留出させて初留131gを得た。ここで、初留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、92.0重量%であった。
実施例1、2及び比較例1における主留の組成、主留におけるメチルイソブチルケトン(MIBK)の回収率及び全留出分におけるメチルイソブチルケトン(MIBK)の回収率を表1に纏める。表1の結果より、本発明の触媒の回収方法により、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒の回収に用いた極性有機溶媒を簡便に効率良く回収できることが裏付けられた。
実施例2で得られた主留を用いて触媒回収を行った。
具体的には、撹拌子を備えたナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル27g(0.11モル)、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩(分子量467)16gを入れ、240℃のオイルバスに浸漬させた。オイルバスの温度を240℃まで昇温し、2時間反応させた。
3(反応液に含まれる4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド1モルに対して、塩化水素0.04モル)をバブリングさせて吸収させたところ、目視上で均一な液が得られた。この液に、水4gを30分間かけて添加したところ、再び白色のスラリー状になった。このスラリーを減圧濾過して得られた固体に、メチルイソブチルケトン10gで懸洗した後、減圧濾過することにより、18gの固体が得られた。
実施例3において、実施例2で得られた主留80gの代わりに、比較例1で得られた全留出液80gを用いた以外は、実施例3と同様に触媒回収を行った。しかしながら、全留出液を加えた白色スラリーを室温(約20℃)まで冷却し、塩化水素ガス1リットルをバブリングさせて吸収させたが、目視上で均一な液にならなかった。
和光純薬株式会社製のメチルイソブチルケトンに水を加え、水濃度が0.3重量%となるように調製した。実施例3において、実施例2で得られた主留分の代わりに、この水分濃度0.3重量%のメチルイソブチルケトンを用いた以外は、実施例3と同様に触媒回収を行った。しかしながら、全留出液を加えた白色スラリーを室温(約20℃)まで冷却し、塩化水素ガス1リットルをバブリングさせて吸収させたが、目視上で固体の溶け残りが見られる白色スラリーにしかならなかった。この液に、水4gを30分間かけて添加した後、減圧濾過して得られた固体に、メチルイソブチルケトン10gで懸洗した後、減圧濾過することにより、18gの固体が得られた。
実施例3で得られた回収触媒を用いて、脱カルボニル反応を行った。
先ず、実施例3で得られた固体10gを100cm3ナス型フラスコに入れ、オイルバスを備えたロータリーエバポレータに取付、オイルバス温度140℃、ダイヤフラムポンプでフル真空下で1時間乾燥させた。
反応後の液組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、炭酸ジフェニル66.0重量%、シュウ酸ジフェニル28.6重量%、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド5.0重量%、フェノール0.4重量%が含まれていた。
実施例4において、実施例3で得られた固体を乾燥させたものの代わりに、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩5gを用いて、実施例4と同様に脱カルボニル反応を行った。反応後の液組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、炭酸ジフェニル65.4重量%、シュウ酸ジフェニル29.2重量%、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド5.0重量%、フェノール0.4重量%であった。
以上のように、本発明の触媒の回収方法により、回収触媒を再利用すると共に、触媒回収に用いた溶媒も再利用することにより、効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に製造できることが裏付けられた。
Claims (5)
- シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒の回
収方法であって、前記触媒がテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリ
ールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体であり、前記脱カルボニル反
応後の反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液を極性有機溶媒と塩化水素に
接触させた後、前記残液に含まれる触媒を回収する(触媒回収工程)と共に、前記極性有
機溶媒を回収し、前記触媒回収工程に再利用し、前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を以
下の(A)工程及び(B)工程をこの順に行うことにより精製した後に再利用することを
特徴とする、触媒の回収方法。
(A)工程:前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を蒸発させ、水が入れられている液液分
離器に留出させ、前記液液分離器の極性有機溶媒の相を前記残液側に戻すことにより、前
記残液に含まれる塩化水素の少なくとも一部を除去する工程、
(B)工程:(A)工程で得られた液を蒸留する工程。 - 請求項1に記載の触媒の回収方法であって、前記触媒が非対称テトラアリールホスホニ
ウムハライド及び/又は非対称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素と
のアダクト体である、触媒の回収方法。 - 請求項1又は2に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水
素の接触を、前記残液を極性有機溶媒と接触させた後に、塩化水素と接触させることを特
徴とする触媒の回収方法。 - 請求項1又は2に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水
素の接触を、前記極性有機溶媒と前記塩化水素を接触させた後、これに前記残液を接触さ
せることを特徴とする触媒の回収方法。 - シュウ酸ジフェニルを脱カルボニル反応させる工程を有する炭酸ジフェニルの連続製造
方法であって、以下の第1〜第4工程をこの順に有することを特徴とする炭酸ジフェニル
の連続製造方法。
第1工程:シュウ酸ジフェニルをテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラ
アリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の存在下で脱カルボニル
反応させることにより炭酸ジフェニルを生成させる工程、
第2工程:第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する工程、
第3工程:第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液に含まれる触媒を析出さ
せる工程(ここで、第3工程は、前記残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を
接触させる工程を有する)、
第4工程:第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を第1工程に脱カルボニル反応の
触媒として供給する工程
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