JP6406094B2 - 触媒の回収方法、該回収触媒を用いる炭酸ジフェニルの製造方法および該炭酸ジフェニルを用いるポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

触媒の回収方法、該回収触媒を用いる炭酸ジフェニルの製造方法および該炭酸ジフェニルを用いるポリカーボネートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭酸ジフェニルの製造方法に関する発明である。詳しくは、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に触媒として、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体を用いた場合において、反応液から回収した触媒を再利用すると共に、触媒回収に用いた溶媒も再利用することにより、簡便な方法により、効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に製造する方法についての発明である。
炭酸ジエステルは、種々の化学反応における原料化合物として知られており、特に、炭酸ジフェニルは二価ヒドロキシ芳香族化合物との重縮合反応によりポリカーボネートを製造できることが知られている。
炭酸ジエステルの製造方法としては、ホスゲンと芳香族ヒドロキシ化合物をアルカリ存在下で反応させる方法が知られている。しかしながら、ホスゲン自体が毒性の強い化合物である上に多量のアルカリが必要であるため、シュウ酸ジエステルを有機リン化合物などの脱カルボニル触媒の存在下で脱カルボニル反応させることによる炭酸ジエステルの製造方法も提案されている(特許文献1参照)。また、脱カルボニル反応に用いたホスホニウム塩触媒を、「反応混合物に、有機極性溶媒を添加して希釈すると共に、ハロゲン化水素を添加することにより、該反応混合物中に残存しているホスホニウム塩もしくはホスホニウム塩成分をハロゲン化水素付加体として析出させて分離すること」により回収する方法も提案されている(特許文献2参照)。
特開平8−333307号公報 特開2002−45704号公報
しかしながら、上記の触媒回収方法により、必ずしも効率良く高純度な触媒を回収できるとは言えず、更なる改良が求められていた。また、回収に用いた有機極性溶媒には、ハロゲン化水素と水が含有されているが、これを回収し、再利用することについて、何ら検討されていなかった。そこで、本発明の課題は、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体をシュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に触媒として用いた場合において、簡便な方法により、効率良く、高純度な触媒を回収し再利用すると共に、触媒回収に用いた溶媒も再利用することにより、効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に製造する方法を提供することとする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の回収方法について鋭意検討を行った。この結果、反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液に極性有機溶媒と塩化水素ガス及び/又は塩酸を接触させることにより、高純度な触媒を効率良く回収することができ、更に、前記触媒回収後の残液を前記極性有機溶媒として再利用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の第1の要旨は、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒の回収方法であって、前記触媒がテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体であり、前記脱カルボニル反応後の反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液を極性有機溶媒と塩化水素に接触させた後、前記残液に含まれる触媒を回収する(触媒回収工程)と共に、前記極性有機溶媒を回収し、前記触媒回収工程に再利用することを特徴とする、触媒の回収方法に存する。本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の触媒の回収方法であって、前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を以下の(A)工程及び(B)工程をこの順に行うことにより精製した後に再利用することを特徴とする、触媒の回収方法に存する。(A)工程:前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を蒸発させ、水が入れられている液液分離器に留出させ、前記液液分離器の極性有機溶媒の相を前記残液側に戻すことにより、前記残液に含まれる塩化水素の少なくとも一部を除去する工程、(B)工程:(A)工程で得られた液を蒸留する工程。
本発明の第3の要旨は、第1又は第2の要旨に記載の触媒の回収方法であって、前記触媒が非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び/又は非対称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体である、触媒の回収方法に存する。
本発明の第4の要旨は、第1乃至3の何れか1つの要旨に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水素の接触を、前記残液を極性有機溶媒と接触させた後に、塩化水素と接触させることを特徴とする触媒の回収方法に存する。本発明の第5の要旨は、第1乃至3の何れか1つの要旨に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水素の接触を、前記極性有機溶媒と前記塩化水素を接触させた後、これに前記残液を接触させることを特徴とする触媒の回収方法に存する。
また、本発明の第6の要旨は、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造方法であって、触媒として、第1乃至5の何れか1つの要旨に記載の回収方法により回収された析出物を用いることを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法に存する。本発明の第7の要旨は、シュウ酸ジフェニルを脱カルボニル反応させる工程を有する炭酸ジフェニルの連続製造方法であって、以下の第1〜第4工程をこの順に有することを特徴とする炭酸ジフェニルの連続製造方法に存する。第1工程:シュウ酸ジフェニルをテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の存在下で脱カルボニル反応させることにより炭酸ジフェニルを生成させる工程、第2工程:第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する工程、第3工程:第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液に含まれる触媒を析出させる工程(ここで、第3工程は、前記残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を接触させる工程を有する)、第4工程:第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を第1工程に脱カルボニル反応の触媒として供給する工程。
そして、本発明の第8の要旨は、炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることによるポリカーボネートの製造方法であって、前記炭酸ジフェニルを第6の要旨に記載の炭酸ジフェニルの製造方法又は第7の要旨に記載の炭酸ジフェニルの連続製造方法により製造した後に、前記ジヒドロキシ化合物と重縮合させることを特徴とするポリカーボネートの製造方法に存する。
本発明によれば、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体をシュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に触媒として用いた場合において、反応液から簡便な方法により、効率良く、高純度な触媒を回収し再利用すると共に、触媒回収に用いた溶媒も
再利用することにより、効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に製造することができる。また、この高純度な炭酸ジフェニルを原料として用いることにより、高純度なポリカーボネートを得ることができる。
以下、本発明の触媒の回収方法、該回収触媒を用いる炭酸ジフェニルの製造方法および該炭酸ジフェニルを用いるポリカーボネートの製造方法の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の触媒の回収方法では、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル反応」又は単に「脱カルボニル反応」と言う場合がある。)による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒及び触媒回収に用いた溶媒を回収する。また、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法では、この回収された触媒を用いて、シュウ酸ジフェニルを脱カルボニル反応させることにより炭酸ジフェニルを得る。
本発明に係る脱カルボニル反応は、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
Figure 0006406094
(式中、Phはフェニル基を示す。)
[シュウ酸ジフェニル]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において、シュウ酸ジフェニル(以下、「本発明に係るシュウ酸ジフェニル」又は単に「シュウ酸ジフェニル」と言う場合がある)は、炭酸ジフェニル(以下、「本発明に係る炭酸ジフェニル」又は単に「炭酸ジフェニル」と言う場合がある)の原料である。また、本発明に係るシュウ酸ジフェニルを原料として得られる、本発明に係る炭酸ジフェニルは、熱的に安定でポリカーボネートの原料として好適である。
シュウ酸ジフェニルは、下記反応式(2)で示すようにシュウ酸ジアルキルとフェノールとのエステル交換反応で製造したものなどを用いることができる。ここで、原料となるシュウ酸ジアルキルは、下記反応式(3)で示すように、一酸化炭素、酸素及び脂肪族アルコールを原料とする酸化カルボニル化反応で製造したものなどを用いることができる。
Figure 0006406094
(式中、Rはアルキル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
Figure 0006406094
(式中、Rはアルキル基を示す。)
[触媒]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において用いる触媒は、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体として反応器に供給される。なお、該テトラアリールホスホニウムハライドを「本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライド」又は単に「テトラアリールホスホニウムハライド」と、該ハロゲン化水素を「本発明に係るハロゲン化水素」又は単に「ハロゲン化水素」と、該アダクト体を「本発明に係るアダクト体」又は単に「アダクト体」と各々言う場合がある。
本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドは、以下の一般式(4)で表される化合物である。
Figure 0006406094
(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、各々独立に置換基を有していても良い芳香環基、を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。)
Ar〜Arの芳香環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基及びチエニル基、フリル基、ピリジル基等のイオウ原子、酸素原子又は窒素原子を含有する炭素数4〜16の芳香族複素環基などが挙げられる。これらのうち安価に触媒を製造できることから芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基が更に好ましい。
Ar〜Arは、各種異性体を含み、各芳香環基は置換基を1つ以上有していてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12)、チオアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12)、アラルキルオキシ基(好ましくは炭素数7〜13)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜16)、チオアリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜16)、アシル基(好ましくは炭素数1〜12)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜16)、カルボキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基(好ましくは炭素数2〜16)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)等が挙げられる。また、これらの置換基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、芳香環基やハロゲン原子などが挙げられる。これらのうち、熱的に安定であることからアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数3〜8の分岐したアルキル基が更に好ましい。また、該置換基は、本発明に係るアダクト体が熱的に安定となり、本発明の脱カルボニル反応用触媒として用いた場合に分解し難いことから、ベンジルプロトンを有さないことが好ましい。すなわち、該置換基は、炭素数3〜8のベンジルプロトンを有さないアルキル基が特に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
なお、Ar〜Arが置換基を有する芳香環基である場合には、各種異性体が存在するが、Ar〜Arはその何れであっても良い。これらの異性体としては、例えば、Ar〜Arが置換基を有するフェニル基である場合、2−(又は3−、4−)メチルフェニル基、2−(又は3−、4−)エチルフェニル基、2,3−(又は3,4−)ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチルフェニル基等の炭素数1〜12のアルキル基又はハロゲン化アルキル基がフェニル基に結合しているアルキルフェニル基;3−メトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基等の炭素数1〜12のアルコキシ基がフェニル基に結合しているアルコキシフェニル基;2−(又は3−、4−)ニトロフェニル基;3−(又は4−)クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基等のハロゲン原子がフェニル基に結合しているハロフェニル基などが挙げられる。
Ar〜Arは、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良い。
本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドにおいては、Ar〜Arの少なくとも何れか1つの基は、他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることが好ましい。ここで、異なる基とは、置換基の有無、種類、置換位置が異なるものも含めて、何れかが異なる基同士のことを言う。そして、本発明においては、このようにAr〜Arの何れか1つの基が他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることを「非対称」であると言う。本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドが非対称である場合、Ar〜Arの少なくとも何れか1つの基が他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることにより、溶解性に優れる。
本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドが非対称である場合、Ar〜Arの残りの3つの基は互いに同一であっても異なっていてもよい。本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドとしては、熱的に安定となりやすいことからAr〜Arの少なくとも何れか1つが置換基を有する芳香環基で残りの基が無置換の芳香環基であることが好ましく、Ar〜Arの少なくとも何れか1つが置換基を有するアリール基で残りの基が無置換のアリール基であることが特に好ましい。
一般式(4)のハロゲン原子Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子である。これらのうち、本発明に係る脱カルボニル反応において、高活性な触媒として作用しやすいことから塩素原子が好ましい。
また、一般式(4)で表されるテトラアリールホスホニウム塩におけるアリール基は、置換基を有していても良いフェニル基であることが好ましい。そして、ベンジルプロトンを有さないテトラアリールホスホニウムクロライドが更に好ましく、ベンジルプロトンを有さないテトラアリールホスホニウムクロライドが特に好ましい。
本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドの好ましい具体例としては、次のような化合物が挙げられる。即ち、Ar〜Arが何れも無置換の芳香族炭化水素基としては、テトラフェニルホスホニウムクロライド、p−ビフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、1−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。Ar〜Arが無置換の芳香族炭化水素基又は置換基を有する芳香族炭化水素基である有機ホスホニウムクロライドとしては、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、m−トリフルオロメチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のベンジルプロトンを有さずアルキル基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のハロゲン原子を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等の
アルコキシ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−アミノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアミノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のシアノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物及びp−ニトロフェニル−トリ−p−トリルホスホニウムクロライド等のニトロ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物などが挙げられる。これらのうち、本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドは、置換基を有していてもよいテトラフェニルホスホニウムクロライドが好ましく、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドが特に好ましい。
本発明に係るハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられる。本発明に係るハロゲン化水素のハロゲンは、脱カルボニル反応用触媒に用いた場合などにハロゲンの種類が増えると副生物の種類が増えて反応系が煩雑になりやすいことから、上記の本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドのハロゲンと同じハロゲンが好ましい。すなわち、本発明に係るハロゲン化水素は、塩化水素が好ましく、本発明に係るアダクト体は、テトラアリールホスホニウムクロライドと塩化水素とのアダクト体が好ましく、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドと塩化水素とのアダクト体が特に好ましい。
なお、アダクト体とは、付加物結晶を意味する用語として使用されている。本発明に係るアダクト体は、通常、テトラアリールホスホニウムハライドにハロゲン化水素が付加している固体やこれが融解したものや溶解されたものなども本発明に係るアダクト体に含まれる。本発明に係るアダクト体は、通常、テトラアリールホスホニウムハライド1モルに対し、ハロゲン化水素が0.01〜1.0モル付加している。
本発明に係るアダクト体は、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において脱カルボニル反応の反応液に溶解すると共に、ハロゲン化水素が遊離して、テトラアリールホスホニウムハライドが触媒として機能していると推定される。従って、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、触媒をテトラアリールホスホニウムクロライドとして供給しても、その塩化水素とのアダクト体として供給しても良い。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において、反応器内におけるテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はアダクト体の合計量(以下単に「テトラアリールホスホニウムハライドの合計量」と言う場合がある。)は、反応速度が速くなりやすい点では多いことが好ましいが、炭酸ジフェニルの精製過程で触媒が析出し難い点では少ないことが好ましい。そこで、具体的には、合計で1.0重量%以上であることが好ましく、2.0重量%以上であることが更に好ましく、3.0重量%以上であることが特に好ましく、また、一方で、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることが更に好ましく、8重量%以下であることが更に好ましい。また、反応器内におけるシュウ酸ジフェニルと炭酸ジフェニルの合計モル量100モルに対し、テトラアリールホスホニウムハライドの合計量は0.001モル以上であることが好ましく、0.1モル以上であることが更に好ましく、また、一方で、50モル以下であることが好ましく、20モル以下であることが更に好ましい。なお、テトラアリールホスホニウムハライド及びそのアダクト体は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
また、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において、反応器に供給されるシュウ酸ジフェニルとテトラアリールホスホニウムハライドの合計量との相対量は、反応器中におけるシュウ酸ジフェニルとテトラアリールホスホニウムハライドの合計量が上記の好ましい範囲となりやすいことから、シュウ酸ジフェニル100モルに対し、テトラアリールホスホ
ニウムハライドの合計量を0.1モル以上とすることが好ましく、1モル以上とすることが更に好ましく、また、一方、50モル以下とすることが好ましく、20モル以下とすることが更に好ましい。
[ハロゲン化合物]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル反応を高選択率で維持しやすいことから、触媒と共にハロゲン化合物(以下「本発明に係るハロゲン化合物」と言う場合がある)を用いることが好ましい。
本発明に係るハロゲン化合物としては、下記の無機ハロゲン化合物及び/又は有機ハロゲン化合物などが挙げられる。これらのハロゲン化合物の中では、塩素化合物が好ましい。ハロゲン化合物は、テトラアリールホスホニウムハライドの合計量に対してモル比(ハロゲン化合物/テトラアリールホスホニウムハライドの合計量)が通常0.0001〜3.00、好ましくは0.001〜1.00であるように用いられるのが良い。なお、ハロゲン化合物は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
無機ハロゲン化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のアルミニウムのハロゲン化物;塩化白金、塩化白金酸、塩化ルテニウム、塩化パラジウム等の白金族金属のハロゲン化物;三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、三臭化リン、五臭化リン、オキシ臭化リン等のリンのハロゲン化物;塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素;塩化チオニル、塩化スルフリル、二塩化イオウ、二塩化二イオウ等のイオウのハロゲン化物;塩素、臭素等のハロゲン単体などが挙げられる。
有機ハロゲン化合物としては、炭素原子と、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子と、水素原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される化合物などが挙げられる。このような有機ハロゲン化合物としては、例えば、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造(C−Hal)、カルボニル炭素にハロゲン原子が結合している構造(−CO−Hal)、ケイ素原子にハロゲン原子が結合している構造(−C−Si−Hal)、又はイオウ原子にハロゲン原子が結合している構造(CSO2−Hal)を有する有機ハロゲン化合物が好適に用いられる。但し、H
alは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。これらの構造は、例えば、一般式(a)、(b)、(c)、(d)としてそれぞれ表される。
Figure 0006406094
(式中、Halは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表し、n1は1〜4の整数、n2は1〜3の整数を表す。)
有機ハロゲン化合物としては、例えば、以下のような化合物が具体的に挙げられる。
一般式(a)で表されるような、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル、塩化ドデシル等のハロゲン化アルキルや、塩化ベンジル、ベンゾトリクロリド、塩化トリフェニルメチル、α−ブロモ−o−キシレン等のハロゲン化アラルキルや、β−クロロプロピオニトリル、γ−クロロブチロニトリル等のハロゲン置換脂肪族ニトリルや
、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロプロピオン酸等のハロゲン置換脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
一般式(b)で表されるような、カルボニル炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、塩化アセチル、塩化オキサリル、塩化プロピオニル、塩化ステアロイル、塩化ベンゾイル、2−ナフタレンカルボン酸クロライド、2−チオンフェンカルボン酸クロライド等の酸ハロゲン化物や、クロログリオキシル酸フェニル等のハロゲノグリオキシル酸アリールや、クロロギ酸フェニル等のハロゲノギ酸アリールなどが挙げられる。
一般式(c)で表されるような、ケイ素原子にハロゲン原子が結合している構造を少なくとも1個有する有機ハロゲン化合物としては、ジフェニルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等のハロゲン化シランなどが挙げられる。
一般式(d)で表されるような、イオウ原子にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ナフタレンスルホン酸クロライド等のハロゲン化スルホニルなどが挙げられる。
これらのうち、ハロゲン化合物由来の副生成物の生成を抑制しやすいことから、無機ハロゲン化合物が好ましく、ハロゲン化水素が更に好ましく、塩化水素が特に好ましい。また、反応系内に存在するハロゲン原子の種類が増えると、副生物の種類が増えて反応系が煩雑になりやすいことから、本発明に係るハロゲン化合物のハロゲンは、触媒として用いるテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はアダクト体に含まれるハロゲンと同じハロゲンであることが好ましい。すなわち、本発明の炭酸ジフェニルの製造は、テトラアリールホスホニウムクロライド及び/又はその塩化水素アダクト体を触媒として用い、更に本発明に係るハロゲン化合物として塩化水素を用いることが特に好ましい。
[脱カルボニル反応]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法における脱カルボニル反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル反応」又は単に「脱カルボニル反応」と言う場合がある)は、液相反応で行うことが好ましい。脱カルボニル反応の反応温度は、反応速度の点では高温であることが好ましいが、炭酸ジフェニルの純度の点では低温であることが好ましい。そこで、反応温度は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。反応時の圧力は、プロセス上の要件から決めればよい。
脱カルボニル反応は、バッチ反応でも連続反応でもよいが、工業的には、連続反応が好ましい。連続反応の一般的な方法については、特開平10−109962号公報、特開平10−109963号公報及び特開2006−89416号公報等などに記載の方法などを用いることができる。
脱カルボニル反応は、反応に用いる物質の融点以上の温度で反応を行う場合は、溶媒を用いる必要はないが、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性極性溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等を適宜使用することもできる。
反応器の材質と形式は、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応により炭酸ジフェニルを生成させることができれば特に制限はないが、副反応でフェノールなどの芳香族モノヒドロキシ化合物が生成する場合があるので、耐酸性材質の金属製容器やグラスライニング製容器が好ましい。このような反応器としては、例えば1槽または多槽式の完全混合型反応器(攪拌槽)、塔型反応器などを用いることができる。
[炭酸ジフェニルの精製]
上記脱カルボニル反応により、原料シュウ酸ジフェニルに対応する炭酸ジフェニルを生成させることができる。脱カルボニル反応後の反応液には、炭酸ジフェニル及び脱カルボニル触媒、及び未反応シュウ酸ジフェニルが含まれている。また、この他に、シュウ酸ジフェニル、炭酸ジフェニル、脱カルボニル触媒等の転位、分解、反応等により生じた副生物なども含まれている可能性がある。副生物としては、例えば、フェノール、フェニルp−クロロ安息香酸などが挙げられる。また、前述のハロゲン化合物を用いた場合は、該ハロゲン化合物又はその副生物が含まれている可能性もある。そこで、上記カルボニル反応により得られた炭酸ジフェニルは、用途に応じた純度や形態とするために適宜精製される。
なお、脱カルボニル反応で副生する一酸化炭素は、反応液から自然に気液分離され、排出させることが好ましい。また、一酸化炭素は、亜硝酸エステルと一酸化炭素からシュウ酸ジフェニルを製造する場合の原料として再利用することも可能である。(例えば、特開
平10−152457号公報などに記載の方法を参照)。ここで、一酸化炭素にフェノー
ル、二酸化炭素、ハロゲン化水素などの不純物が含まれる場合は、吸収塔やスクラバーなどの精製装置を通した後に、シュウ酸ジフェニルの原料などに利用することが好ましい。
[触媒の回収方法]
本発明の触媒の回収方法は、上記脱カルボニル反応に用いた触媒を、脱カルボニル反応後の反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液から回収する(触媒回収工程)。ここで、本発明の触媒の回収方法は、残液を極性有機溶媒と塩化水素に接触させる工程を有する。また、触媒回収に用いた極性有機溶媒を回収し、触媒回収工程に再利用する。そして、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、この回収された析出物を触媒として用いて、上記脱カルボニル反応を行う。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、特に、以下の第1〜4工程をこの順に有する方法が好ましく、以下の第1〜4工程をこの順に有することが更に好ましい。
第1工程:シュウ酸ジフェニルをテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の存在下で脱カルボニル反応させることにより炭酸ジフェニルを生成させる工程、
第2工程:第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する工程、
第3工程:第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液に含まれる触媒を析出させる工程(ここで、第3工程は、前記残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を接触させる工程を有する)、
第4工程:第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を第1工程に脱カルボニル反応の
触媒として供給する工程。
第1工程は、前述した本発明に係る脱カルボニル反応の様に行うことが好ましい。
第2工程では、第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する。第2工程における分離は、蒸留、抽出、晶析などの公知の方法で行うことができる。本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライド及び本発明に係るアダクト体は、通常高沸点である。そこで、第2工程における分離は、炭酸ジフェニルを蒸留により分離する方法が簡便で好ましい。すなわち、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル反応後の反応液に含まれる炭酸ジフェニルを蒸発させて取り出すことにより、本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライド及び/又は本発明に係るアダクト体を含む残液を得ることが好ましい。なお、脱カルボニル反応後の反応液にシュウ酸ジフェニルや炭酸ジフェニルのフリース転位化合物などの高沸点物質が含まれている場合は、通常これらも触媒液に含まれた状態となる。
炭酸ジフェニルの蒸留分離は、脱カルボニル反応を行った反応器内で行っても良いし、反応液を蒸発装置に移して行っても良い。蒸発装置(蒸発方法)については、上記の目的を達成することができれば特に限定されることはない。蒸発装置としては、例えば、流下膜式蒸発器、薄膜式蒸発器などを用いて行うことが短時間に分離しやすいことから好ましい。また、反応器内で蒸発させる場合は、突沸が起こり難いように攪拌しながら、徐々に減圧しながら蒸発させることが好ましい。分離に要する時間は、伝熱効率や分離容器の形状にも影響されるが、不純物の副生が起こり難い点から短時間で行うことが好ましく、20時間以下が好ましく、15時間以下が更に好ましく、10時間以下が特に好ましい。蒸発は、不純物の副生が起こり難い点から低温で低圧力で行うことが好ましく、圧力は、減圧下で蒸発させることが好ましく、温度は、脱カルボニル反応における反応温度以下で行うことが好ましい。具体的には、圧力は、0.1kPaA以上が好ましく、0.2kPaA以上が更に好ましく、一方、50kPaA以下が好ましく、20kPaA以下が更に好ましい。そして、温度は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。
上記の好ましい条件で蒸留を行った場合、蒸発させた留分には、炭酸ジフェニルが通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含まれている。また、同上限は、通常100重量%である。この留分にシュウ酸ジフェニルを含む場合は、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上であり、また、一方で、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。これら以外の成分としては、フェノールなどが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下である。
蒸発させた炭酸ジフェニルは、そのままポリカーボネート製造等の用途に用いても良いが、必要な純度などに応じて、更に精製を行っても良い。更に精製する場合は、蒸留や吸着などにより行うことができる。具体的には、5〜50段の理論段を有する棚段塔あるいは充填塔などの蒸発装置を用いて蒸留精製することが好ましい。
第3工程では、第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液に含まれる触媒を析出させる。ここで、第3工程は、該残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を接触させる工程を有する。触媒は、以下のような現象により析出すると推定される。
第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液には、脱カルボニル反応にテトラアリールホスホニウムハライドを触媒として用いた場合は、該テトラアリールホスホニウムハライドが含まれている。また、脱カルボニル反応にテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体を触媒として用いた場合についても、該アダクト体からハロゲン化水素が遊離したテトラアリールホスホニウムハライドが含まれていると考えられる。
ここで、本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドが極性有機溶媒に対する溶解度が高い場合、該残液を極性有機溶媒と接触させても極性有機溶媒により希釈されるだけであるが、テトラアリールホスホニウムハライドが塩化水素と接触すると、塩化水素とのアダクト体となり析出する。
また、本発明に係るテトラアリールホスホニウムハライドが極性有機溶媒に対する溶解度が低い場合、該残液を極性有機溶媒と接触させると、通常、残液中に残っている炭酸ジフェニルや不純物などは極性有機溶媒に溶解するが、テトラアリールホスホニウムハライドが析出するために該残液はスラリー状になる。ここで、該残液に含まれているテトラアリールホスホニウムハライドを塩化水素と接触させると、塩化水素とのアダクト体となり、極性有機溶媒に対する溶解度が高くなるため溶解する。しかしながら、これに水を接触させることにより、テトラアリールホスホニウムハライドのアダクト体を析出させること
ができる。
該残液への極性有機溶媒と塩化水素接触は、同時に行っても、どちらか一方を先に接触させた後に他方を接触させても良いが、高純度な触媒を効率良く回収しやすい点では、塩化水素を吸収させた極性有機溶媒を用いることなどにより、同時に接触させる、又は極性有機溶媒と接触させた後に塩化水素と接触させることが好ましく、極性有機溶媒と接触させた後に塩化水素と接触させることが更に好ましい。なぜなら、該残液に先に塩化水素が接触すると、該残液に含まれる炭酸ジフェニルの分解によりフェノールが生成し、テトラアリールホスホニウムハライドがテトラアリールホスホニウムフェノラートになる反応が起こる可能性があるが、極性有機溶媒と同時又は極性有機溶媒が先に接触していることにより、この反応が起こり難くなると考えられるからである。
残液と接触させる極性有機溶媒は、残液に含まれる少量のジフェニルカーボネートや副生高沸点物質及び水に対する相溶性が高く、テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体を溶解させやすく、テトラアリールホスホニウムハライドを析出させやすい溶媒が好ましい。極性有機溶媒の好ましい例としては、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭素類、そしてエステル類などが挙げられる。
ケトン類としては、例えば、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルn−ブチルケトン、エチルイソブチルケトン等の炭素数1〜15の低級アルキルケトン類およびシクロヘキサノン、シクロペンタノン等の炭素数3〜10の環状ケトン類などが挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルn−プロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルn−ブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルn−ペンチルエーテル、メチルイソペンチルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルn−ブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等の炭素数2〜10の低級アルキルエーテル類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類及びジフェニルエーテル等のジアリールエーテル類などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、モノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1−クロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、1,1−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン等の炭素数1〜6のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
エステル類としては、例えば、アルキル脂肪族カルボン酸エステル、アルキル炭酸ジエステル、アルキルシュウ酸ジエステル及びエチレングリコールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。アルキル脂肪族カルボン酸エステルとしては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチルなどの低級アルキルギ酸エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルなどの低級アルキル酢酸エステル及びプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチルなどの低級アルキルプロピオン酸エステルなどの低級アルキル脂肪族カルボン酸エステルなどが挙げられる。アルキル炭酸ジエステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ブチル、炭酸メチルエチルなどの低級アルキル炭酸ジエステルなどが挙げられる。アルキルシュウ酸ジエステルとしては、シュウ酸ジメ
チル、シュウ酸ジエチルなどの低級アルキルシュウ酸ジエステルなどが挙げられる。エチレングリコール酢酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。エチレングリコールの脂肪酸エステルとしては、エチレングリコール酢酸エステルなどが挙げられる。
これらの内、極性有機溶媒が有する炭素数が3〜15である極性有機溶媒が好ましく、3〜10である極性有機溶媒が更に好ましい。また、メチルイソプロピルケトン及びメチルイソブチルケトンのように構造が非対称である極性有機溶媒が好ましい。そして、ケトン類が好ましく、アルキルケトン類が更に好ましい。そこで、特に、アルキルケトン類が好ましく、合計炭素数が3〜10であるアルキルケトン類がより好ましく、メチルイソプロピルケトン及びメチルイソブチルケトンのように構造が非対称であるアルキルケトン類が最も好ましい。
残液と接触させる極性有機溶媒の量(重量)は、炭酸ジフェニルや副生高沸点物質の析出や残液の固化が起こり難い点では多いことが好ましいが、また、一方で、触媒の回収率及び極性有機溶媒の分離回収に要するエネルギーが少ない点では少ないことが好ましい。そこで、具体的には、残液に対して0.5倍以上であることが好ましく、1倍以上であることが更に好ましく、また、一方で、10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることが更に好ましく、3倍以下であることが特に好ましい。極性有機溶媒中の水の量は、多過ぎると残液に含まれる炭酸ジフェニルと反応して副生したフェノールがテトラアリールホスホニウムハライドと反応して、テトラアリールホスホニウムフェノキシドとなることから、極性有機溶媒の重量に対して、2.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。
残液と接触させる塩化水素は、塩化水素を含有していれば良く、塩化水素ガスとして供給しても、塩酸として供給しても良い。塩化水素は、残液に含まれるテトラアリールホスホニウムハライドをテトラアリールホスホニウムハライドの塩化水素アダクト体とするために用いることから、残液との接触させる塩化水素の量は、残液に含まれるテトラアリールホスホニウムハライド1モルに対して、1モル以上であることが好ましく、1.1モル以上であることが更に好ましく、また、一方で、5モル以下であることが好ましく、2モル以下であることが更に好ましい。
残液を極性有機溶媒と接触させた後に塩化水素と接触させる場合は、残液が固化し難いことから、炭酸ジフェニルの融点以上、極性有機溶媒の沸点以下で塩化水素と接触させることが好ましい。また、触媒の回収効率が高くなりやすい点では、接触させる塩化水素の温度及び塩化水素を含む極性有機溶媒と接触させる場合における塩化水素を含む極性有機溶媒の温度は、低いことが好ましく、具体的には、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが更に好ましく、30℃以下であることが特に好ましい。なぜなら、炭酸ジフェニルや副生高沸点物質は塩化水素と接触すると、極性有機溶媒に含まれている水などにより加水分解され、フェノールを生成してしまう可能性があるからである。
第3工程で接触させる水を接触させる場合の量は、テトラアリールホスホニウムハライドの塩化水素アダクト体が析出し、回収率が高くなりやすい点では多いことが好ましく、また、一方で、炭酸ジフェニルや副生高沸点物質が析出し難く、高純度な触媒を回収しやすい点では少ないことが好ましい。そこで、具体的には、極性有機溶媒の量に対する水の量(重量比)は、0.001倍以上であることが好ましく、0.01倍以上であることが更に好ましく、0.02倍以上であることが特に好ましく、また、一方で、0.5倍以下であることが好ましく、0.2倍以下であることが更に好ましく、0.1倍以下であることが特に好ましい。接触させる水の温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが更に好ましく、30℃以下であることが特に好ましい。水との接触は、回収される触媒が高純度になりやすい点では、ゆっくりと時間をかけて行うことが好ましい。
すなわち水の全量を一度に接触させるより、水を分けて或いは少量ずつを接触させることが好ましい。
第4工程では、上記第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を上記第1工程に脱カ
ルボニル反応の触媒として供給する。第3工程で得られるスラリーは、これを固液分離することにより得られる固体を乾燥させて脱カルボニル反応の反応器に供給することにより触媒として再利用することができる。但し、高沸点物質の蓄積を防ぐ観点より、第3工程で得られるスラリーは、炭酸ジフェニルより高沸点である成分を除去した後に第1工程に供給することが好ましい。ここで除去される成分としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸フェニルやフェニル(o−フェノキシカルボニルフェニル)カーボネート(PCPC)などの副生高沸点物質が挙げられる。固液分離は、加圧濾過などにより行うことができる。また、乾燥は、得られた固体を約80〜220℃で、0.1〜50kPaで、約1〜10時間乾燥させることにより、極性有機溶媒と水を除くことができる。
本発明の触媒の回収方法は、このようにして、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体をシュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に触媒として用いた場合において、反応液から簡便な方法により効率良く高純度な触媒を回収することができる。
また、上記第1〜第4工程をこの順に連続して行うことにより、高純度な炭酸ジフェニルを効率良く、安定的に連続製造することができる。但し、上記第3工程において、第2工程で得られた残液の全量から触媒回収処理を行ったとしても、上記の副生高沸点物質の除去などの処理に伴い、触媒の一部も除去されてしまうことがある。そこで、連続反応を行う場合、反応器内にテトラアリールホスホニウムハライドの合計量が上述の好ましい範囲となるように、回収触媒と共に、テトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体を供給することにより行うことができる。
[極性有機溶媒の回収]
本発明の触媒の回収方法は、上述の触媒回収に用いた極性有機溶媒を回収し、触媒回収工程に再利用する工程を有する。ここで、触媒回収に用いた極性有機溶媒には、触媒回収に用いた塩化水素が含まれているため、以下の(A)工程及び(B)工程をこの順に行うことにより精製した後に再利用することが好ましい。
(A)工程:前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を蒸発させ、水が入れられている液液分離器に留出させ、前記液液分離器の極性有機溶媒の相を前記残液側に戻すことにより、前記残液に含まれる塩化水素の少なくとも一部を除去する工程、
(B)工程:(A)工程で得られた液を蒸留する工程。
(A)工程では、上記のようにして析出物として触媒を回収した残液を蒸発させ、液液分離器に留出させる。ここで、液液分離器に水が入れられているため、液液分離器内で、極性有機溶媒の相(上相)と水の相(下相)に分かれるが、極性有機溶媒に含まれている塩化水素は、極性有機溶媒の相より水の相側に溶解しやすい。そこで、極性有機溶媒の相を残液側に戻すことにより、極性有機溶媒に含まれていた塩化水素を除去することができる。
(A)工程で用いる蒸留装置(蒸発方法)は、上記の目的を達成することができれば特に限定されることはない。蒸発装置としては、例えば、流下膜式蒸発器、薄膜式蒸発器などが短時間で分離しやすいことから好ましい。また、反応器内で蒸発させる場合は、突沸が起こり難いように攪拌しながら、徐々に減圧しながら蒸発させることが好ましい。極性有機溶媒に含まれていた塩化水素を除去するのに要する時間は、伝熱効率や分離容器の形状にも影響されるが、不純物の副生が起こり難い点から短時間で行うことが好ましく、2
0時間以下が好ましく、15時間以下が更に好ましく、10時間以下が特に好ましい。蒸発は、不純物の副生が起こり難い点から低温で低圧力で行うことが好ましく、圧力は、常圧下あるいは減圧下で蒸発させることが好ましく、温度は塩化水素が留出する温度が好ましい。具体的には、圧力は、1kPaA以上が好ましく、2kPaA以上が更に好ましい。また、一方で、100kPaA以下が好ましく、80kPaA以下が更に好ましい。そして、温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、また、一方で、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃以下である。
液液分離器に入れる水の量と温度は、留出した極性有機溶媒と塩化水素が液液分離されれば特に限定されない。水の量は、触媒を析出物として回収した残液の1重量%以上とすることが好ましく、2重量%以上とすることが更に好ましいが、一方で、50重量%以下とすることが好ましく、30重量%以下とすることが更に好ましい。液液分離器の温度は、液液分離し易いことから、60℃以下とすることが好ましく、50℃以下とすることが更に好ましいが、また、一方で、水相が固化し難いことから、0℃以上とすることが好ましく、5℃以上とすることが更に好ましい。
このような好ましい条件で(A)工程を行った場合、残液側に戻される極性有機溶媒の相には、極性有機溶媒が通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含まれている。なお、同上限は、通常100重量%である。また、残液側に戻される極性有機溶媒の相に含まれる塩化水素は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下である。
(B)工程では、(A)工程で得られた液を蒸留する。蒸留により、極性有機溶媒から水を除くことができる。(A)工程で用いる蒸留装置(蒸発方法)は(A)工程と同様に実施できる。また、蒸留条件は、極性有機溶媒と水が分離できれば特に限定されない。但し、蒸留温度については、極性有機溶媒と水を分離し易い点では、高温であることが好ましいが、極性有機溶媒に脱カルボニル反応で副生したフェノールなどの高沸点化合物が混入し難い点では、低温であることが好ましい。
本発明の触媒の回収方法は、このようにして、簡便な方法により、効率良く、高純度な触媒を回収し再利用すると共に、触媒回収に用いた極性有機溶媒を効率良く回収し、高純度な極性有機溶媒を再利用することができる。そして、本発明の触媒の回収方法により回収された触媒を再利用することによって、効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に製造することができる。
[炭酸ジフェニル]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、上記のようにして回収された高純度な触媒を再利用するため、再利用された触媒を用いて脱カルボニル反応させているにも関わらず、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に連続製造することができる。そこで、上述の本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により得られる炭酸ジフェニルの純度は、通常99.0
重量%以上、好ましくは99.3重量%以上、更に好ましくは99.5重量%以上である。不純物が含まれる場合は、イオン性の塩素などが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.1重量ppm以下、更に好ましくは0.01重量ppm以下である。
[ポリカーボネートの製造方法]
本発明で製造される炭酸ジフェニルの用途のひとつであるポリカーボネートは、上述の方法により製造された炭酸ジフェニルと、ビスフェノールAに代表されるジヒドロキシ化合物とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステ
ル交換反応させることで製造できる。炭酸ジフェニルとエステル交換させるジヒドロキシ化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物でも脂肪族ジヒドロキシ化合物でも良いが、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に炭酸ジフェニルとビスフェノールAを原料とした一例を説明する。
上記のポリカーボネートの製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノールAに対して過剰量用いることが好ましい。ビスフェノールAに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネートに末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネートを製造し易い点では少ないことが好ましい。具体的には、例えば、ビスフェノールA1モルに対して、通常1.001モル以上、好ましくは1.02モル以上、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下用いることが好ましい。
原料の供給方法としては、ビスフェノールAおよび炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方または両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールAとのエステル交換反応でポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネートの製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒は、ビスフェノールAまたは炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上、また一方で、通常5μモル以下、好ましくは4μモル以下、さらに好ましくは2μモル以下の範囲で用いられる。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネートを得やすい。
アルカリ金属化合物としては、セシウム化合物が好ましい。好ましいセシウム化合物は、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムである。
上記方法によりポリカーボネートを製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネートの製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
[ポリカーボネート]
上述のように本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルは高純度であることから、本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
特に、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により、高純度な炭酸ジフェニルを効率良く得ることができることから、これを用いて高品質なポリカーボネートを得ることができる。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそ
の要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料]
シュウ酸ジフェニルは、東京化成工業株式会社の1級試薬を単蒸留により精製したものを使用した。
メチルイソブチルケトンは、和光純薬工業株式会社の製品を使用した。塩化水素ガスは、住友精化株式会社の製品を使用した。なお、メチルイソブチルケトン中の水濃度を水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)より分析したところ、500重量ppmであった。
[分析]
メチルイソブチルケトンの定量は、ガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。装置は、島津製作所社製「GC−2014」を使用した。カラムは、アジレントテクノロジー社製「DB―17」(内径0.53mm、カラム長60m、膜厚1μm)を使用した。キャリアーガスはヘリウムとし、その流量を毎分7.34cm、線速を毎秒50.7cmとした。注入口温度を220℃、検出器温度を260℃とした。カラムの昇温パターンは、先ず75℃で3分間保持させた後に毎分10℃で220℃まで昇温させ、220℃で10分間保持させ、次に、毎分40℃で250℃まで昇温させ、10分間保持させて分析した。
塩化水素の定量は、硝酸銀を用いた電位差滴定装置(京都電子工業社製「AT−610」)を用いて測定した。
水の定量は、水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)を用いて行った。
4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの定量及び回収触媒の組成は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt Cadenza 3mm CD−C18 250mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度30℃。溶離液組成:A液 アセ
トニトリル:水=7.2:1.0重量%/重量%、B液0.5重量%リン酸二水素ナトリウム水溶液。分析時間0分〜12分。A液:B液=65:35(体積比、以下同様。)。分析時間12〜35分は溶離液組成をA液:B液=92:8へ徐々に変化させ、分析時間35〜40分はA液:B液=92:8に維持、流速1ミリリットル/分)にて分析した。
[合成例1]
以下の方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩を合成した。
先ず、特開2013−82695号公報に記載された方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイドを合成した。このブロマイド体を特開平11−217393号公報に記載された方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(クロライド体)に変換した。
セパラブルフラスコにこの4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブタノール及び塩酸を入れ、窒素雰囲気下で90℃に加熱して均一溶液にした。
その後、セパラブルフラスコを室温に冷却することによりスラリーを得た。このスラリーをガラスフィルターにより濾過して得られた固体をナス型フラスコに移した。ナス型フラスコを、オイルバスを備えたロータリーエバポレータに付け、オイルバスを100℃に加熱し、圧力10Torrで2時間乾燥させることにより固体を得た。この固体を京都電子工業社製の電位差滴定装置「AT−610」で分析した結果、14.2重量%であったことから、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩であることが確認された。また、水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)を用いて測定した含水率は0.4重量%であった。
[実施例1]
撹拌子を備えた2000cmのナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル271g(1.1モル)、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩(分子量467)160gを入れ、240℃のオイルバスに浸漬させた。オイルバスの温度を240℃まで昇温し、2時間反応させた。
反応後、このナス型フラスコに留出管を取り付け、ダイヤフラムポンプでフル真空下で炭酸ジフェニルとフェノールの混合物20gを留出させた。得られた釜残を100℃まで冷却した後、メチルイソブチルケトン800gを加えたところ、白色のスラリー状になった。このスラリーを室温(約20℃)まで冷却し、塩化水素ガス(分子量36)0.01m(反応液に含まれる4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド1モルに対して塩化水素1.2モル)、をバブリングさせて吸収させたところ、目視上で均一な液が得られた。この液に、水40gを30分間かけて添加したところ、再び白色のスラリー状になった。このスラリーを減圧濾過して得られた固体に、メチルイソブチルケトン100gで懸洗した後、減圧濾過することにより、濾液1100gと固体167gが得られた。
ここで、得られた濾液に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより定量した結果、74.0重量%であった。また、この濾液に含まれる水の濃度を水分計により測定した結果、3.5重量%であった。この濾液に含まれる塩化水素の濃度を電位差滴定装置により定量した結果、0.3重量%であった。
また、得られた固体の減圧濾過における濾過性は良好であった。また、この固体の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(分子量431)の濃度は、73重量%であった。そこで、固体として回収された4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの回収率は、(167g×0.73÷431)÷(160g÷467)×100=83%と算出された。
フルジャケット式セパラブルフラスコ、温度計と攪拌機を備えた塔径32mmの柴田科学株式会社製「オールダーショウ」(棚段塔)および液液分離槽からなる回分式蒸留塔を、セパラブルフラスコ内の濾液を蒸発させた時に蒸発液が棚段塔を通って液液分離槽の下部に供給されると共に、液液分離槽の上部よりオーバーフローして棚段塔に戻るように設置した。また、棚段塔と液液分離槽を繋ぐラインを液液分離槽の代わりに初留タンク又は主流タンクに切り替えられるように設置した。
セパラブルフラスコに上述の濾液のうち300gを仕込んだ。また、液液分離槽に水20cmとメチルイソブチルケトン80cm(64g)を仕込み、液液分離槽を15℃とした。棚段塔内圧力を常圧から133kPaまで減圧し、セパラブルフラスコのボトム温度を常温から60.4℃まで昇温することにより蒸留を行った。液液分離槽に留出された蒸発液は、水を主成分とする下相とメチルイソブチルケトンを主成分とする上相に二相分離された。ここで、下相は液液分離槽内に滞留したが、上相はオーバーフローして棚段塔に返送させた。メチルイソブチルケトンと共に水が蒸発されるのに伴い、下相と上相の界面が徐々に上昇し、棚段塔の塔頂温度が上昇したが、やがて蒸発するメチルイソブチルケトンと水の比率が15℃におけるイソブチルケトンに対する水の飽和溶解度に達するのに伴い、棚段塔の塔頂温度の温度上昇が57.7℃付近で鈍くなってくると共に下相と上相の界面の上昇も止まった。
棚段塔と液液分離槽を繋ぐラインを液液分離槽から初留タンク行きに切り替え、蒸発成分に含まれる水濃度が低くなるのに伴い、棚段塔の塔頂温度が58.2℃付近で温度上昇
が鈍くなってくるまで全留出させて初留57gを得た。ここで、初留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、98.0重量%であった。
還流比を2として、棚段塔と初留タンクを繋ぐラインを主留タンクに切り替え、セパラブルフラスコのボトム温度を昇温させ、67.3℃となるまで留出させ続けて主留153gを得た。主留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、99.9重量%であった。また、主留に含まれる水は、水分計により0.1重量%であり、主留に含まれる塩化水素は、電位差滴定装置により検出限界以下であった。そこで、主留におけるメチルイソブチルケトンの回収率は、(153g×0.999)÷(300g×0.740+64g)×100=53%と算出された。なお、これに初留におけるメチルイソブチルケトンの回収分を足し合わせた全留出分におけるメチルイソブチルケトンの回収率は、(57g×0.980+153g×0.999)÷(300g×0.740+64g)×100=92%と算出された。
[実施例2]
実施例1において、セパラブルフラスコに濾液300gに加え、更に実施例1で得られた初留57gを入れ、液液分離槽に実施例1で蒸発液を溜めたままにした以外は、セパラブルフラスコのボトム温度を昇温させ、67.3℃となるまで留出させ続けて主留を得る操作まで実施例1と同様に蒸留を行った。
具体的には、セパラブルフラスコに上述の濾液300gと実施例1で得られた初留57gを仕込んだ。また、液液分離槽は、実施例1で溜めた蒸発液が入ったままとし、液液分離槽を15℃とした。棚段塔内圧力を常圧から133kPaまで減圧し、セパラブルフラスコのボトム温度を常温から60.4℃まで昇温することにより蒸留を行った。液液分離槽に留出された蒸発液は、水を主成分とする下相とメチルイソブチルケトンを主成分とする上相に二相分離された。ここで、下相は液液分離槽内に滞留したが、上相はオーバーフローして棚段塔に返送させた。下相と上相の界面が徐々に上昇し、棚段塔の塔頂温度が上昇した後、棚段塔の塔頂温度の温度上昇が57.7℃付近で鈍くなってくると共に下相と上相の界面の上昇も止まった。
棚段塔と液液分離槽を繋ぐラインを液液分離槽から初留タンク行きに切り替え、蒸発成分に含まれる水濃度が低くなるのに伴い棚段塔の塔頂温度が58.2℃付近で温度上昇が鈍くなってくるまで全留出させて初留60gを得た。ここで、初留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、98.0重量%であった。
還流比を2として、棚段塔と初留タンクを繋ぐラインを主留タンクに切り替え、セパラブルフラスコのボトム温度を昇温させ、67.3℃となるまで留出させ続けて主留202gを得た。主留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、99.9重量%であった。また、主留に含まれる水は、水分計により0.1重量%であり、主留に含まれる塩化水素は、電位差滴定装置により検出限界以下であった。そこで、主留におけるメチルイソブチルケトンの回収率は、(202g×0.999)÷(300g×0.740+57g×0.980)×100=73%と算出された。なお、これに初留におけるメチルイソブチルケトンの回収分を足し合わせた全留出分におけるメチルイソブチルケトンの回収率は、(60g×0.980+202g×0.999)÷(300g×0.740+57g×0.980)×100=94%と算出された。
[比較例1]
実施例1において、棚段塔からのラインを初留タンクに繋いでおいて以外は、実施例1
と同様にして回分式蒸留塔を設置した。
セパラブルフラスコに上述の濾液300gを仕込んだ。還流比を2として、棚段塔内圧力を常圧から133kPaまで減圧し、セパラブルフラスコのボトム温度を常温から60.4℃まで昇温することにより蒸留を行った。メチルイソブチルケトンと共に水が蒸発されるのに伴い棚段塔の塔頂温度が上昇し、蒸発成分に含まれる水濃度が低くなるのに伴い温度上昇が58.2℃付近で鈍くなってくるまで全留出させて初留131gを得た。ここで、初留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、92.0重量%であった。
還流比を2のまま、棚段塔と初留タンクを繋ぐラインを主留タンクに切り替え、セパラブルフラスコのボトム温度を昇温させ、67.3℃となるまで留出させ続けて主留79gを得た。主留に含まれるメチルイソブチルケトンの濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、99.9重量%であった。また、主留に含まれる水は、水分計により0.1重量%であり、主留に含まれる塩化水素は、電位差滴定装置により検出限界以下であった。そこで、主留におけるメチルイソブチルケトンの回収率は、(79g×0.999)÷(300g×0.740)×100=36%と算出された。
初留と主留を、重量比で、初留131対、主留79で混合し、全留出液とした。全留出液に含まれる水は、水分計により5.0重量%であり、全留出液に含まれる塩化水素は、電位差滴定装置により0.1重量%であった。
実施例1、2及び比較例1における主留の組成、主留におけるメチルイソブチルケトン(MIBK)の回収率及び全留出分におけるメチルイソブチルケトン(MIBK)の回収率を表1に纏める。表1の結果より、本発明の触媒の回収方法により、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒の回収に用いた極性有機溶媒を簡便に効率良く回収できることが裏付けられた。
Figure 0006406094
[実施例3]
実施例2で得られた主留を用いて触媒回収を行った。
具体的には、撹拌子を備えたナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル27g(0.11モル)、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩(分子量467)16gを入れ、240℃のオイルバスに浸漬させた。オイルバスの温度を240℃まで昇温し、2時間反応させた。
反応後、このナス型フラスコに留出管を取り付け、ダイヤフラムポンプでフル真空下で炭酸ジフェニルとフェノールの混合物2gを留出させた。得られた釜残を100℃まで冷却した後、実施例2で得られた主留80gを加えたところ、白色のスラリー状になった。このスラリーを室温(約20℃)まで冷却し、塩化水素ガス(分子量36)0.001m
(反応液に含まれる4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド1モルに対して、塩化水素0.04モル)をバブリングさせて吸収させたところ、目視上で均一な液が得られた。この液に、水4gを30分間かけて添加したところ、再び白色のスラリー状になった。このスラリーを減圧濾過して得られた固体に、メチルイソブチルケトン10gで懸洗した後、減圧濾過することにより、18gの固体が得られた。
得られた固体の減圧濾過における濾過性は良好であった。また、この固体の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの濃度は、76重量%であった。そこで、固体として回収された4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(分子量431)の回収率は、(18g×0.76÷431)÷(16g÷467)×100=93%と算出された。なお、高速液体クロマトグラフィーで分析したがフェノールは検出限界以下であった。
[比較例2]
実施例3において、実施例2で得られた主留80gの代わりに、比較例1で得られた全留出液80gを用いた以外は、実施例3と同様に触媒回収を行った。しかしながら、全留出液を加えた白色スラリーを室温(約20℃)まで冷却し、塩化水素ガス1リットルをバブリングさせて吸収させたが、目視上で均一な液にならなかった。
[参考例1]
和光純薬株式会社製のメチルイソブチルケトンに水を加え、水濃度が0.3重量%となるように調製した。実施例3において、実施例2で得られた主留分の代わりに、この水分濃度0.3重量%のメチルイソブチルケトンを用いた以外は、実施例3と同様に触媒回収を行った。しかしながら、全留出液を加えた白色スラリーを室温(約20℃)まで冷却し、塩化水素ガス1リットルをバブリングさせて吸収させたが、目視上で固体の溶け残りが見られる白色スラリーにしかならなかった。この液に、水4gを30分間かけて添加した後、減圧濾過して得られた固体に、メチルイソブチルケトン10gで懸洗した後、減圧濾過することにより、18gの固体が得られた。
得られた固体の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの濃度は、77重量%であった。そこで、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの回収率は、(18g×0.77÷431)÷(16g÷467)×100=94%と算出された。但し、この固体を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、フェノールが3重量%検出された。
実施例3、比較例2及び参考例1における、触媒回収に用いたメチルイソブチルケトン(MIBK)中の水濃度及び4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの回収率について、表2に纏める。表2より、触媒回収に用いる極性有機溶媒は、水濃度が低いことが好ましく、特に水濃度が0.3重量%以下であることが好ましいことが裏付けられた。
Figure 0006406094
[実施例4]
実施例3で得られた回収触媒を用いて、脱カルボニル反応を行った。
先ず、実施例3で得られた固体10gを100cmナス型フラスコに入れ、オイルバスを備えたロータリーエバポレータに取付、オイルバス温度140℃、ダイヤフラムポンプでフル真空下で1時間乾燥させた。
撹拌子を備えた500cmナス型フラスコに、この乾燥させた固体5gとシュウ酸ジフェニル95g(0.4モル)とを入れ、230℃のオイルバスに浸漬させ、1時間反応させた。
反応後の液組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、炭酸ジフェニル66.0重量%、シュウ酸ジフェニル28.6重量%、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド5.0重量%、フェノール0.4重量%が含まれていた。
[参考例2]
実施例4において、実施例3で得られた固体を乾燥させたものの代わりに、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩5gを用いて、実施例4と同様に脱カルボニル反応を行った。反応後の液組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、炭酸ジフェニル65.4重量%、シュウ酸ジフェニル29.2重量%、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド5.0重量%、フェノール0.4重量%であった。
実施例4と参考例2における反応後の液組成を比較することにより、触媒回収に用いた極性有機溶媒を再利用して触媒回収を行っても高純度な炭酸ジフェニルを効率良く、安定的に製造できることが裏付けられた。
以上のように、本発明の触媒の回収方法により、回収触媒を再利用すると共に、触媒回収に用いた溶媒も再利用することにより、効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に製造できることが裏付けられた。

Claims (5)

  1. シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒の回
    収方法であって、前記触媒がテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラアリ
    ールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体であり、前記脱カルボニル反
    応後の反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液を極性有機溶媒と塩化水素に
    接触させた後、前記残液に含まれる触媒を回収する(触媒回収工程)と共に、前記極性有
    機溶媒を回収し、前記触媒回収工程に再利用し、前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を以
    下の(A)工程及び(B)工程をこの順に行うことにより精製した後に再利用することを
    特徴とする、触媒の回収方法。
    (A)工程:前記触媒回収に用いた極性有機溶媒を蒸発させ、水が入れられている液液分
    離器に留出させ、前記液液分離器の極性有機溶媒の相を前記残液側に戻すことにより、前
    記残液に含まれる塩化水素の少なくとも一部を除去する工程、
    (B)工程:(A)工程で得られた液を蒸留する工程。
  2. 請求項に記載の触媒の回収方法であって、前記触媒が非対称テトラアリールホスホニ
    ウムハライド及び/又は非対称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素と
    のアダクト体である、触媒の回収方法。
  3. 請求項1又は2に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水
    素の接触を、前記残液を極性有機溶媒と接触させた後に、塩化水素と接触させることを特
    徴とする触媒の回収方法。
  4. 請求項1又は2に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒と塩化水
    素の接触を、前記極性有機溶媒と前記塩化水素を接触させた後、これに前記残液を接触さ
    せることを特徴とする触媒の回収方法。
  5. シュウ酸ジフェニルを脱カルボニル反応させる工程を有する炭酸ジフェニルの連続製造
    方法であって、以下の第1〜第4工程をこの順に有することを特徴とする炭酸ジフェニル
    の連続製造方法。
    第1工程:シュウ酸ジフェニルをテトラアリールホスホニウムハライド及び/又はテトラ
    アリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の存在下で脱カルボニル
    反応させることにより炭酸ジフェニルを生成させる工程、
    第2工程:第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する工程、
    第3工程:第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液に含まれる触媒を析出さ
    せる工程(ここで、第3工程は、前記残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を
    接触させる工程を有する)、
    第4工程:第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を第1工程に脱カルボニル反応の
    触媒として供給する工程
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