JP6372378B2 - 触媒の回収方法、該回収触媒を用いる炭酸ジフェニルの製造方法および該炭酸ジフェニルを用いるポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
炭酸ジエステルの製造方法としては、ホスゲンと芳香族ヒドロキシ化合物をアルカリ存在下で反応させる方法が知られている。しかしながら、ホスゲン自体が毒性の強い化合物である上に多量のアルカリが必要であるため、シュウ酸ジエステルを有機リン化合物などの脱カルボニル化触媒の存在下で脱カルボニル反応させることによる炭酸ジエステルの製造方法も提案されている(特許文献1参照)。また、脱カルボニル反応に用いたホスホニウム塩触媒を、「反応混合物に、有機極性溶媒を添加して希釈すると共に、ハロゲン化水素を添加することにより、該反応混合物中に残存しているホスホニウム塩もしくはホスホニウム塩成分をハロゲン化水素付加体として析出させて分離すること」により回収する方法も提案されている(特許文献2参照)。
度な触媒を析出物として効率良く回収し、上記課題を解決できることを見出した。
本発明の触媒の回収方法では、シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル反応」又は単に「脱カルボニル反応」と言う場合がある。)による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒を回収する。また、本発明の炭酸ジフェニルの製造方
法では、この回収された触媒を用いて、シュウ酸ジフェニルを脱カルボニル反応させることにより炭酸ジフェニルを得る。
[シュウ酸ジフェニル]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において、シュウ酸ジフェニル(以下、「本発明に係るシュウ酸ジフェニル」又は単に「シュウ酸ジフェニル」と言う場合がある)は、炭酸ジフェニル(以下、「本発明に係る炭酸ジフェニル」又は単に「炭酸ジフェニル」と言う場合がある)の原料である。また、本発明に係るシュウ酸ジフェニルを原料として得られる、本発明に係る炭酸ジフェニルは、熱的に安定でポリカーボネートの原料として好適である。
[触媒]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において用いる触媒は、非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び/又は非対称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水
素とのアダクト体として反応器に供給される。なお、該非対称テトラアリールホスホニウムハライドを「本発明に係る非対称テトラアリールホスホニウムハライド」又は単に「非対称テトラアリールホスホニウムハライド」と、該ハロゲン化水素を「本発明に係るハロゲン化水素」又は単に「ハロゲン化水素」と、該アダクト体を「本発明に係るアダクト体」又は単に「アダクト体」と各々言う場合がある。
Ar1〜Ar4の芳香環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基及びチエニル基、フリル基、ピリジル基等のイオウ原子、酸素原子又は窒素原子を含有する炭素数4〜16の芳香族複素環基などが挙げられる。これらのうち安価に触媒を製造できることから芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基が更に好ましい。
ル基に結合しているハロフェニル基などが挙げられる。
本発明に係る非対称テトラアリールホスホニウムハライドにおいては、Ar1〜Ar4の少なくとも何れか1つの基は、他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基である。ここで、異なる基とは、置換基の有無、種類、置換位置が異なるものも含めて、何れかが異なる基同士のことを言う。そして、本発明においては、このようにAr1〜Ar4の何れか1つの基が他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることを「非対称」であると言う。本発明に係る非対称テトラアリールホスホニウムハライドは、Ar1〜Ar4の少なくとも何れか1つの基が他の3つの基の少なくとも何れかと異なる基であることにより、溶解性に優れる。
水素とのアダクト体が好ましく、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドと塩化水素とのアダクト体が特に好ましい。
すなわち、本発明に係る非対称テトラアリールホスホニウムハライドは、40℃において、後述する本発明に係る極性有機溶媒100gに対して、2.0g以上溶解しないことが好ましく、1.5g以上溶解しないことが更に好ましい。一方、本発明に係るアダクト体は、40℃において、後述する本発明に係る極性有機溶媒100gに対し、2.5g以上溶解することが好ましく、3.0g以上溶解することが更に好ましい。また、本発明に係る非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び本発明に係るアダクト体は、40℃において、純水100gに対して、2.5g以上溶解しないことが好ましく、2.0g以上溶解しないことが更に好ましい。これらの溶解性と触媒回収との関係については、後述する第3工程において詳述する。
ラアリールホスホニウムハライドの合計量を0.1モル以上とすることが好ましく、1モル以上とすることが更に好ましく、また、一方、50モル以下とすることが好ましく、20モル以下とすることが更に好ましい。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル反応を高選択率で維持しやすいことから、触媒と共にハロゲン化合物(以下「本発明に係るハロゲン化合物」と言う場合がある)を用いることが好ましい。
本発明に係るハロゲン化合物としては、下記の無機ハロゲン化合物及び/又は有機ハロゲン化合物などが挙げられる。これらのハロゲン化合物の中では、塩素化合物が好ましい。ハロゲン化合物は、非対称テトラアリールホスホニウムハライドの合計量に対してモル比(ハロゲン化合物/非対称テトラアリールホスホニウムハライドの合計量)が通常0.0001〜3.00、好ましくは0.001〜1.00であるように用いられるのが良い。なお、ハロゲン化合物は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
alは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。これらの構造は、例えば、一般式(a)、(b)、(c)、(d)としてそれぞれ表される。
有機ハロゲン化合物としては、例えば、以下のような化合物が具体的に挙げられる。
一般式(a)で表されるような、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル、塩化ドデシル等のハロゲン化アルキルや、塩化ベンジル、ベンゾトリクロリド、塩化トリフェニルメチル、α−ブロモ−o−キシレン等のハロゲン化アラルキルや、β−クロロプロピオニトリル、γ−クロロブチロニトリル等のハロゲン置換脂肪族ニトリルや
、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロプロピオン酸等のハロゲン置換脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
一般式(d)で表されるような、イオウ原子にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ナフタレンスルホン酸クロライド等のハロゲン化スルホニルなどが挙げられる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法における脱カルボニル反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル反応」又は単に「脱カルボニル反応」と言う場合がある)は、液相反応で行うことが好ましい。脱カルボニル反応の反応温度は、反応速度の点では高温であることが好ましいが、炭酸ジフェニルの純度の点では低温であることが好ましい。そこで、反応温度は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。反応時の圧力は、プロセス上の要件から決めればよい。
脱カルボニル反応は、反応に用いる物質の融点以上の温度で反応を行う場合は、溶媒を用いる必要はないが、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性極性溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等を適宜使用することもできる。
上記脱カルボニル反応により、原料シュウ酸ジフェニルに対応する炭酸ジフェニルを生成させることができる。脱カルボニル反応後の反応液には、炭酸ジフェニル及び脱カルボニル触媒、及び未反応シュウ酸ジフェニルが含まれている。また、この他に、シュウ酸ジフェニル、炭酸ジフェニル、脱カルボニル触媒等の転位、分解、反応等により生じた副生物なども含まれている可能性がある。副生物としては、例えば、フェノール、フェニルp−クロロ安息香酸などが挙げられる。また、前述のハロゲン化合物を用いた場合は、該ハロゲン化合物又はその副生物が含まれている可能性もある。そこで、上記カルボニル反応により得られた炭酸ジフェニルは、用途に応じた純度や形態とするために適宜精製される。
平10−152457号公報などに記載の方法を参照)。ここで、一酸化炭素にフェノー
ル、二酸化炭素、ハロゲン化水素などの不純物が含まれる場合は、吸収塔やスクラバーなどの精製装置を通した後に、シュウ酸ジフェニルの原料などに利用することが好ましい。
本発明の触媒の回収方法は、上記脱カルボニル反応に用いた触媒を、脱カルボニル反応後の反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液に極性有機溶媒及び塩化水素を接触させた後、水を接触させることにより析出物として回収する。また、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、この回収された析出物を触媒として用いて、上記脱カルボニル反応を行う。
第1工程:シュウ酸ジフェニルを非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び/又は非対称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の存在下で脱カルボニル化反応させることにより炭酸ジフェニルを生成させる工程、
第2工程:第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する工程、
第3工程:第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液の少なくとも一部に極性有機溶媒及び塩化水素を接触させた後、水を接触させることにより析出物を得る工程、
第4工程:第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を第1工程に脱カルボニル化反応
の触媒として供給する工程。
第2工程では、第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する。第2工程における分離は、蒸留、抽出、晶析などの公知の方法で行うことができる。本発明に係る非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び本発明に係るアダクト体は、通常高沸点である。そこで、第2工程における分離は、炭酸ジフェニルを蒸留により分離する方法が簡便で好ましい。すなわち、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル反応後の反応液に含まれる炭酸ジフェニルを蒸発させて取り出すことにより、本発明に係る非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び/又は本発明に係るアダクト体を含む残液を得ることが好ましい。なお、脱カルボニル反応後の反応液にシュウ酸ジフェニルや炭酸ジフェニルのフリース転位化合物などの高沸点物質が含まれている場合は、通常これらも触媒液に含まれた状態となる。
第3工程では、第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液の少なくとも一部に極性有機溶媒と塩化水素を接触させた後、水を接触させることにより析出物を得る。第3工程において、該残液に極性有機溶媒と塩化水素を接触させた後、水を接触させることにより析出物を得られるのは、以下のような現象が起きていることによるものと推定される。
塩化水素を吸収させた極性有機溶媒を用いることなどにより同時に接触させる又は極性有機溶媒と接触させた後に塩化水素と接触させることが好ましく、極性有機溶媒と接触させた後に塩化水素と接触させることが更に好ましい。なぜなら、該残液に先に塩化水素が接触すると、該残液に含まれる炭酸ジフェニルの分解によりフェノールが生成し、非対称テトラアリールホスホニウムハライドが非対称テトラアリールホスホニウムフェノラートになる反応が起こる可能性があるため、極性有機溶媒と同時又は極性有機溶媒が先に接触していることにより、この反応を起こり難くすることができると考えられるからである。
残液と接触させる極性有機溶媒は、残液に含まれる少量のジフェニルカーボネートや副生高沸点物質及び水に対する相溶性が高く、非対称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体を溶解させやすく、非対称テトラアリールホスホニウムハライドを析出させやすい溶媒が好ましい。極性有機溶媒の好ましい例としては、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭素類、そしてエステル類などが挙げられる。
ルボニル化反応の触媒として供給する。第3工程で得られるスラリーは、これを固液分離することにより得られる固体を乾燥させて脱カルボニル反応の反応器に供給することによ
り触媒として再利用することができる。但し、高沸点物質の蓄積を防ぐ観点より、第3工程で得られるスラリーは、炭酸ジフェニルより高沸点である成分を除去した後に第1工程に供給することが好ましい。ここで除去される成分としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸フェニルやフェニル(o−フェノキシカルボニルフェニル)カーボネート(PCPC)などの副生高沸点物質が挙げられる。固液分離は、加圧濾過などにより行うことができる。また、乾燥は、得られた固体を約80〜220℃で、0.1〜50kPaで、約1〜10時間乾燥させることにより、極性有機溶媒と水を除くことができる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、上記のようにして回収された高純度な触媒を再利用するため、再利用された触媒を用いて脱カルボニル反応させているにも関わらず、高純度な炭酸ジフェニルを安定的に連続製造することができる。そこで、上述の本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により得られる炭酸ジフェニルの純度は、通常99.0
重量%以上、好ましくは99.3重量%以上、更に好ましくは99.5重量%以上である。不純物が含まれる場合は、イオン性の塩素などが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.1重量ppm以下、更に好ましくは0.01重量ppm以下である。
本発明で製造される炭酸ジフェニルの用途のひとつであるポリカーボネートは、上述の方法により製造された炭酸ジフェニルと、ビスフェノールAに代表されるジヒドロキシ化合物とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させることで製造できる。炭酸ジフェニルとエステル交換させるジヒドロキシ化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物でも脂肪族ジヒドロキシ化合物でも良いが、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に炭酸ジフェニルとビスフェノールAを原料とした一例を説明する。
炭酸ジフェニルとビスフェノールAとのエステル交換反応でポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネートの製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネートを得やすい。
上記方法によりポリカーボネートを製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネートの製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
上述のように本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルは高純度であることから、本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
特に、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により、高純度な炭酸ジフェニルを効率良く得ることができることから、これを用いて高品質なポリカーボネートを得ることができる。
シュウ酸ジフェニルは、東京化成工業株式会社の1級試薬を単蒸留により精製したものを使用した。
メチルイソブチルケトン、クロロ炭酸フェニル、テトラヒドロフラン、ピリジン、トルエン、p−ヒドロキシ安息香酸フェニル、炭酸水素ナトリウム、無水硫酸マグネシウム及び塩化ナトリウムは、和光純薬工業株式会社の製品を使用した。塩化水素ガスは、住友精化株式会社の製品を使用した。なお、メチルイソブチルケトン中の水濃度を水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)より分析したところ、500重量ppmであった。
組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt Cadenza 3mm CD−C18 250mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度30℃。溶離液組成:A液 アセトニトリル:水=7.2:1.0重量%/重量%、B液0.5重量%リン
酸二水素ナトリウム水溶液。分析時間0分〜12分。A液:B液=65:35(体積比、以下同様。)。分析時間12〜35分は溶離液組成をA液:B液=92:8へ徐々に変化させ、分析時間35〜40分はA液:B液=92:8に維持、流速1ミリリットル/分)にて分析した。
以下の方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドを合成した。先ず、特開2013−82695号公報に記載された方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイドを合成した。このブロマイド体を特開平11−217393号公報に記載された方法により、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(クロライド体)に変換した。
撹拌子を備えた200cm3のナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル100g(413ミリモル)、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(分子量431)20gを入れ、150℃のオイルバスに浸漬させた。これに塩化水素ガス(分子量36)を560ミリリットル(23ミリモル)バブリングさせた後、オイルバスの温度を230℃まで昇温し、2時間反応させた。
セパラブルフラスコに合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、メチルイソブチルケトン及び塩酸を入れ、窒素雰囲気下で90℃に加熱して均一溶液にした。その後、セパラブルフラスコを室温に冷却することによりスラリーを得た。このスラリーをガラスフィルターにより濾過して得られた固体をナス型フラスコに移した。ナス型フラスコをオイルバスを備えたロータリーエバポレータに付け、オイルバスを100℃に加熱し、圧力10Torrで2時間乾燥させることにより固体を得た。この固体を京都電子工業社製の電位差滴定装置「AT−610」で分析した結果、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩であった。また、
水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)を用いて測定した含水率は0.4重量%であった。
撹拌子を備えた200cm3のナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル102g(421ミリモル)、合成例2で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩(分子量467)20gを入れ、230℃のオイルバスに浸漬させ、2時間反応させた。
実施例1において、メチルイソブチルケトン(500重量ppmの水を含む)の代わりに、該メチルイソブチルケトンに水を添加して含水量を3500重量ppmにしたメチルイソブチルケトンを用いた以外は、実施例1と同様に、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドと塩化水素ガスの存在下でシュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応を行った後、炭酸ジフェニルとフェノールの混合物を留出させて得られた釜残から4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドを含む26gの固体を得た。但し、この固体の減圧濾過における濾過性を実施例1の固体の濾過性と比較すると、実施例1の固体の濾過性の方が良好であった。
撹拌子を備えた200cm3のナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル102g(42
1ミリモル)、合成例1で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド22g(51ミリモル)を入れ、150℃のオイルバスに浸漬させた。これに塩化水素ガスを574ミリリットル(26ミリモル)バブリングさせた後、オイルバスの温度を230℃まで昇温し、2時間反応させた。
実施例1と同様に、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドと塩化水素ガスの存在下でシュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応を行った後、炭酸ジフェニルとフェノールの混合物を留出させて得られた釜残を冷却し、メチルイソブチルケトンを加えることにより白色スラリーを得た。
この固体中の水分濃度を水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)より分析したところ、10.2重量%であった。また、この固体の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド71.0重量%、メチルイソブチルケトン17.6重量%、及びその他の成分が1.2重量%(水10.2重量%を除く)であった。また、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの回収率は、(21g×0.710)÷(20g)×100=75%であった。
撹拌子を備えた500cm3のナス型フラスコに、シュウ酸ジフェニル250g(1032ミリモル)、合成例2で合成した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩(分子量467)66gを入れ、230℃のオイルバスに浸漬させ、2時間反応させた。
約30℃)まで冷却し、塩化水素ガス2000cm3(83ミリモル)をバブリングさせて吸収させたところ(4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩1モルに対して、塩化水素1.3モル=0.083÷{(66÷467)×(78÷170)}供給した)、目視上で均一な液が得られた。この液に、水3gを30分間かけて添加したところ、再び白色のスラリー状になった。このスラリーを減圧濾過した後に、メチルイソブチルケトン46gで懸洗することにより36gの固体を得た。なお、この固体の減圧濾過における濾過性は良好であった。
500cm3のセパラブルフラスコにメチルイソブチルケトン220gを入れた。そこに、塩化水素ガスを毎分300cm3でバブリングさせながら30分間供給した。バブリング後のメチルイソブチルケトン中の塩化水素濃度を、硝酸銀を用いた電位差滴定装置(京都電子工業社製「AT−610」)により分析したところ、6.6重量%であった。この塩化水素濃度が6.6重量%のメチルイソブチルケトンの一部(23g)に、メチルイソブチルケトン53gを加え、塩化水素濃度が2.0重量%のメチルイソブチルケトン76gを調製した。
実施例4で得られた触媒液の一部(90g)を、フルジャケット式の100cm3の滴下ロートに移し、160℃に加熱した。別の500cm3のナス型フラスコに、調製例1で調製した塩化水素を2.0重量%含むメチルイソブチルケトン180gを入れた後(4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩1モルに対して、塩化水素1.3モル=(180×0.020÷36)÷{(66÷467)×(90÷170)}供給した)、該ナス型フラスコを30℃のウォーターバスに浸漬させた。該ナス型フラスコの内温が30℃を維持するように、滴下ロートから触媒液90gを1時間かけて加え、目視上で均一な液を得た。
この固体中の水分濃度を水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)より分析したところ、18.9重量%であった。また、硝酸銀を用いた電位差滴定装置(京都電子工業社製「AT−610」)により、この固体中の塩化水素濃度を分析したところ6.7重量%であった。この固体の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド60.1重量%、メチルイソブチルケトン9.7重量%、炭酸ジフェニル3.5重量%、及びその他の成分が1.1重量%(水18.9重量%及び塩化水素6.7重量%を除く)であった。4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの回収率は、(22g×0.601)÷(38g×0.368)=95%であった。
実施例5で得られた固体の内の15gを100cm3のナス型フラスコに入れ、オイルバスを備えたロータリーエバポレータに設置した。オイルバスを100℃に加熱し、圧力10Torrで1時間乾燥させた。乾燥させた固体中の水分濃度を水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)より分析したところ、水分計(京都電子工業社製「MKS−500」)より、0.3重量%であった。
実施例6において、実施例5で得られた固体を乾燥させたもの5gの代わりに、合成例2で調製した4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩5g(11ミリモル)を用いて、実施例6と同様に脱カルボニル反応を1時間行った。反応後の組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。この結果、炭酸ジフェニル60.5重量%、シュウ酸ジフェニル34.0重量%、4−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド5.0重量%、フェノール0.5重量%であった。
Claims (6)
- シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造に用いた触媒の回
収方法であって、前記触媒が非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び/又は非対
称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体であり、前記脱
カルボニル反応後の反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を取得した残液に極性有機溶媒
及び塩化水素ガスを接触させた後、水を接触させることにより得られる析出物として触媒
を回収し、
前記極性有機溶媒の量(重量)は、前記残液に対して0.5倍以上10倍以下であり、
前記塩化水素ガスの量は、前記残液に含まれる非対称テトラアリールホスホニウムハライ
ド1モルに対して、1モル以上5モル以下であり、
前記極性有機溶媒の量に対する前記水の量(重量比)は、0.001倍以上0.5倍以
下であることを特徴とする、触媒の回収方法。 - 請求項1に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒及び塩化水素ガ
スの接触を、前記残液を極性有機溶媒と接触させた後に塩化水素ガスと接触させることを
特徴とする触媒の回収方法。 - 請求項1に記載の触媒の回収方法であって、前記残液への極性有機溶媒及び塩化水素ガ
スの接触を、前記極性有機溶媒と前記塩化水素ガスを接触させた後、これに前記残液を接
触させることを特徴とする触媒の回収方法。 - シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル反応による炭酸ジフェニルの製造方法であって、触
媒として、請求項1〜3の何れか1項に記載の回収方法により回収された析出物を用いる
ことを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法。 - シュウ酸ジフェニルを脱カルボニル反応させる工程を有する炭酸ジフェニルの連続製造
方法であって、以下の第1〜第4工程をこの順に有し、
下記極性有機溶媒の量(重量)は、下記残液に対して0.5倍以上10倍以下であり、
下記塩化水素ガスの量は、下記残液に含まれる非対称テトラアリールホスホニウムハラ
イド1モルに対して、1モル以上5モル以下であり、
下記極性有機溶媒の量に対する下記水の量(重量比)は、0.001倍以上0.5倍以
下であることを特徴とする炭酸ジフェニルの連続製造方法。
第1工程:シュウ酸ジフェニルを非対称テトラアリールホスホニウムハライド及び/又は
非対称テトラアリールホスホニウムハライドとハロゲン化水素とのアダクト体の存在下で
脱カルボニル化反応させることにより炭酸ジフェニルを生成させる工程、
第2工程:第1工程で得られた反応液から炭酸ジフェニルを含む成分を分離する工程、
第3工程:第2工程で炭酸ジフェニルを含む成分を分離した残液の少なくとも一部に極性
有機溶媒及び塩化水素ガスを接触させた後、水を接触させることにより析出物を得る工程
、
第4工程:第3工程で得られた析出物の少なくとも一部を第1工程に脱カルボニル化反応
の触媒として供給する工程 - 炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させる
ことによるポリカーボネートの製造方法であって、前記炭酸ジフェニルを請求項4に記載
の炭酸ジフェニルの製造方法又は請求項5に記載の炭酸ジフェニルの連続製造方法により
製造した後に、前記ジヒドロキシ化合物と重縮合させることを特徴とするポリカーボネー
トの製造方法。
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