JP6245097B2 - 炭酸ジフェニルの製造方法およびポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
炭酸ジエステルの製造方法としては、ホスゲンと芳香族ヒドロキシ化合物をアルカリ存在下で反応させる方法が知られている。しかしながら、ホスゲン自体が毒性の強い化合物である上に多量のアルカリが必要であるため、シュウ酸ジエステルをテトラフェニルホスホニウムクロライドなどの触媒の存在下で脱カルボニル化反応させることによる炭酸ジエステルの製造方法も提案されている(特許文献1参照)。また、芳香族ヒドロキシ化合物やシュウ酸アルキルアリールなどの含有量が少ないシュウ酸ジエステルを原料として用いた、炭酸ジエステルの製造方法も開示されている(特許文献2参照)。
すなわち、本発明の第1の要旨は、シュウ酸ジフェニルを触媒存在下で脱カルボニル化反応させることによる炭酸ジフェニルの製造方法であって、シュウ酸ジフェニルが下記一般式(1)で表わされるカルボン酸フェニルエステルを0.076重量%以上、10重量%以下の量含むことを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法に存する。
そして、本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の炭酸ジフェニルの製造方法であって、以下の第1〜3工程をこの順に有することを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法に存する。第1工程:脱カルボニル化反応により炭酸ジフェニルを製造する工程、第2工程:第1工程で製造された炭酸ジフェニルと触媒液とを分離する工程、第3工程:第2工程で分離された触媒液の少なくとも一部を第1工程にリサイクルする工程。
以下、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の炭酸ジフェニルの製造方法では、シュウ酸ジフェニルを触媒存在下で脱カルボニル化反応させることにより炭酸ジフェニルを製造する。
シュウ酸ジフェニルの脱カルボニル化反応は、以下に示す反応式(2)に従って行われる。
[シュウ酸ジフェニル]
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法において、シュウ酸ジフェニル(以下、「本発明に係るシュウ酸ジフェニル」又は単に「シュウ酸ジフェニル」と言う場合がある)は、炭酸ジフェニル(以下、「本発明に係る炭酸ジフェニル」又は単に「炭酸ジフェニル」と言う場合がある)の原料である。また、本発明に係るシュウ酸ジフェニルを原料として得られる、本発明に係る炭酸ジフェニルは、熱的に安定でポリカーボネートの原料として好適である。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、シュウ酸ジフェニルは、上記一般式(1)で表わされるカルボン酸フェニルエステルを0.076重量%以上、10重量%以下の量含む。シュウ酸ジフェニルに含まれるカルボン酸フェニルエステルの量は、1重量%超であることが好ましい。なお、シュウ酸ジフェニルに含まれるカルボン酸フェニルエステルの量は、シュウ酸ジフェニルの総量とカルボン酸フェニルエステルの総量の合計量に対するカルボン酸フェニルエステルの総量を言う。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法は、触媒存在下で行われる。脱カルボニル化反応に用いる触媒としては、有機リン化合物、特にリン原子の原子価が5価であって、少なくとも1個の炭素―リン結合を有する有機リン化合物が好適に用いられる。このような有機リン化合物としては、一般式(9)で表されるテトラアリールホスホニウム塩が好ましい。
Ar1〜Ar4の芳香環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基及びチエニル基、フリル基、ピリジル基等のイオウ原子、酸素原子又は窒素原子を含有する炭素数4〜16の芳香族複素環基などが挙げられる。これらのうち安価に触媒を製造できることから芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基が更に好ましい。
一般式(9)のハロゲン原子Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子である。これらのうち、脱カルボニル化反応において、高活性な触媒として作用しやすいことから塩素原子が好ましい。また、一般式(9)で表されるテトラアリールホスホニウム塩におけるアリール基は、フェニル基であることが好ましい。即ち、本発明の炭酸ジフェニルの製造において用いる触媒は、テトラフェニルホスホニウムクロライドが好まし
い。そして、ベンジルプロトンを有さないテトラアリールホスホニウムクロライドが更に好ましく、ベンジルプロトンを有さないテトラフェニルホスホニウムクロライドが最も好ましい。
ホスホニウムクロライド、テトラ(o、p−ジ-t-ブチルフェニル)ホスホニウムクロラ
イド、テトラナフチルホスホニウムクロライド、テトラ(p−フェニルフェニル)ホスホニウムクロライドなどが挙げられる。また、Ar1〜Ar4の少なくとも何れか1つが異なる芳香族炭化水素基としては、Ar1〜Ar4が何れも無置換の芳香族炭化水素基としては、p−ビフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、1−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−ナフチルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。Ar1〜Ar4が無置換の芳香族炭化水素基又は置換基を有する芳香族炭化水素基である有機ホスホニウムクロライドとしては、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、m−トリフルオロメチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のベンジルプロトンを有さずアルキル基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−クロロフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のハロゲン原子を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−エトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアルコキシ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;p−アミノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のアミノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物;m−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、p−シアノフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド等のシアノ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物及びp−ニトロフェニル−トリ−p−トリルホスホニウムクロライド等のニトロ基を有する芳香族炭化水素基を有する化合物などが挙げられる。これらのうち、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライドが特に好ましい。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル化反応を高選択率で維持しやすいことから、触媒と共にハロゲン化合物(以下「本発明に係るハロゲン化合物」と言う場合がある)を用いることが好ましい。
本発明に係るハロゲン化合物としては、下記の無機ハロゲン化合物及び/又は有機ハロゲン化合物などが挙げられる。これらのハロゲン化合物の中では、塩素化合物が好ましい。ハロゲン化合物は、触媒に対してモル比(ハロゲン化合物/触媒)が通常0.01〜300、好ましくは0.1〜100であるように用いられるのが良い。なお、ハロゲン化合物は、1種類を単独で用いても、複数種を任意の比率及び組み合わせで用いても良く、複
数種用いる場合における上記の好ましい使用量は、その合計量を表す。
alは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。これらの構造は、例えば、一般式(a)、(b)、(c)、(d)としてそれぞれ表される。
有機ハロゲン化合物としては、例えば、以下のような化合物が具体的に挙げられる。
一般式(a)で表されるような、飽和炭素にハロゲン原子が結合している構造を有する有機ハロゲン化合物としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、塩化ブチル、塩化ドデシル等のハロゲン化アルキルや、塩化ベンジル、ベンゾトリクロリド、塩化トリフェニルメチル、α−ブロモ−o−キシレン等のハロゲン化アラルキルや、β−クロロプロピオニトリル、γ−クロロブチロニトリル等のハロゲン置換脂肪族ニトリルや、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロプロピオン酸等のハロゲン置換脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
一般式(d)で表されるような、イオウ原子にハロゲン原子が結合している構造を有す
る有機ハロゲン化合物としては、p−トルエンスルホン酸クロライド、2−ナフタレンスルホン酸クロライド等のハロゲン化スルホニルなどが挙げられる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法における脱カルボニル化反応(以下、「本発明に係る脱カルボニル化反応」又は単に「脱カルボニル化反応」と言う場合がある)は、液相反応で行うことが好ましい。脱カルボニル化反応の反応温度は、反応速度の点では高温であることが好ましいが、炭酸ジフェニルの純度の点では低温であることが好ましい。そこで、常圧の場合、反応温度は、通常100℃以上、特に160℃以上、とりわけ180℃以上、また通常450℃以下、特に400℃以下、とりわけ350℃以下が好ましい。反応時の圧力は、プロセス上の要件から決めればよい。
脱カルボニル化反応は、反応に用いる物質の融点以上の温度で反応を行う場合は、溶媒を用いる必要はないが、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等の非プロトン性極性溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等を適宜使用することもできる。
脱カルボニル化反応後の反応液には、炭酸ジフェニル、触媒及び未反応シュウ酸ジフェニルが含まれている。また、この他に、シュウ酸ジフェニル、炭酸ジフェニル、触媒等の転位、分解、反応等により生じた副生物なども含まれている可能性がある。副生物としては、例えば、フェノールなどの芳香族モノヒドロキシ化合物、フェニル4−クロロ安息香酸などが挙げられる。また、前述のハロゲン化合物を用いた場合は、該ハロゲン化合物又はその副生物が含まれている可能性もある。そこで、上記カルボニル化反応により得られた炭酸ジフェニルは、用途に応じた純度や形態とするために適宜精製される。但し、本発明の脱カルボニル化反応は、カルボン酸フェニルエステルを含むシュウ酸エステルを原料として用いているため、反応液に含まれるフェノールの量は少ないと考えられる。その理由は、後述するとおり、カルボン酸フェニルエステルがフェノールと反応して炭酸ジフェニル又はシュウ酸ジフェニルとなるためと考えられる。ここで、フェノールは、触媒であるテトラアリールホスホニウムクロライドと反応して、フリース転位触媒であるテトラアリールホスホニウムフェノラートを形成することから、本発明に係る脱カルボニル化反応の阻害要因となる。そこで、カルボン酸フェニルエステルの存在によりフェノールの量が
少なくなることにより、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、簡便な方法で効率良く、高純度な炭酸ジエステルを得ることができる。
開平10−152457号公報などに記載の方法を参照)。ここで、一酸化炭素にフェノ
ール、二酸化炭素、ハロゲン化水素などの不純物が含まれる場合は、吸収塔やスクラバーなどの精製装置を通した後に、シュウ酸ジフェニルの原料などに利用することが好ましい。
本発明の炭酸ジフェニルの製造は、連続反応により行うことが好ましく、特に以下の第1〜3工程をこの順に有する方法により製造することが好ましい。
第1工程:脱カルボニル化反応により炭酸ジフェニルを製造する工程、
第2工程:第1工程で製造された炭酸ジフェニルと触媒液とを分離する工程、
第3工程:第2工程で分離された触媒液の少なくとも一部を第1工程にリサイクルする工程
第2工程においては、第1工程で製造された炭酸ジフェニルと、触媒を含む触媒液とを分離する。第2工程における分離は、蒸留、抽出、晶析などの公知の方法で行うことができる。本発明に係る脱カルボニル化反応に用いる触媒は、通常高沸点であるので、第2工程における分離は、炭酸ジフェニルを蒸留により分離する方法が簡便で好ましい。すなわち、本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、脱カルボニル化反応後の反応液に含まれる炭酸ジエステルを蒸発させて取り出すことにより、触媒を含む触媒液を分離することが好ましい。
第3工程では、第2工程で得られた触媒液の少なくとも一部にリサイクルする。このようにして、触媒を再利用することができる。
第3工程では、反応系内における高沸点化合物の蓄積を防ぐ観点より、第2工程で得られた触媒液から炭酸ジフェニルより高沸点である化合物を除去した液を第1工程にリサイクルすることが好ましい。この工程により除かれる成分としては、シュウ酸ジフェニル(1気圧における沸点334℃)や4−ヒドロキシ安息香酸フェニル(1気圧においてシュウ酸ジフェニルより高沸点)などの高沸点物質が挙げられる。高沸点化合物の除去は、蒸留、抽出、晶析など公知の方法でできる。具体的には、例えば、特開2002−45704号公報に記載の方法などで分離することができる。
本発明の炭酸ジフェニルの製造方法においては、原料シュウ酸エステルとしてカルボン酸フェニルエステルを含むシュウ酸エステルを用いて脱カルボニル化反応を行っているため、副生フェノールによる脱カルボニル化反応の阻害が起こり難く、簡便な方法で効率良く、高純度な炭酸ジフェニルを得ることができる。そこで、上述の本発明の炭酸ジフェニルの製造方法により得られる炭酸ジフェニルの純度は、通常99.0重量%以上、好まし
くは99.3重量%以上、更に好ましくは99.5重量%以上である。不純物が含まれる場合は、イオン性の塩素などが含まれる場合があるが、その場合の含有量は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.1重量ppm以下、更に好ましくは0.01重量ppm以下である。
本発明で製造される炭酸ジフェニルの用途のひとつであるポリカーボネートは、上述の方法により製造された炭酸ジフェニルと、ビスフェノールAに代表される芳香族ジヒドロキシ化合物とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させることで製造できる。炭酸ジフェニルとエステル交換させるジヒドロキシ化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物でも脂肪族ジヒドロキシ化合物でも良いが、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択
して行うことができるが、以下に炭酸ジフェニルとビスフェノールAを原料とした一例を説明する。
炭酸ジフェニルとビスフェノールAとのエステル交換反応でポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネートの製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネートを得やすい。
上記方法によりポリカーボネートを製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネートの製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
上述のように本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルは非常に高純度であることから、本発明の製造方法により得られる炭酸ジフェニルと、脂肪族ジヒドロキシ化合物または芳香族ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
[原料]
シュウ酸ジフェニルは、三菱化学製のシュウ酸ジフェニルを単蒸留により精製したものを使用した。この蒸留して得られたシュウ酸ジフェニルの組成は、水50重量ppm、フェノール200重量ppm、シュウ酸メチルフェニル10重量ppm、フェニル(o-フェノキシカルボニルフェニル)オキサレート(OCPO)検出下限(1重量ppm)以下で
あった。
以下の方法により、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイドの塩化水素塩を合成した。先ず、特開2013−82695号公報に記載された方法により、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムブロマイドを合成した。このブロマイド体を特開平11−217393号公報に記載された方法により、p−t−ブチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド(クロライド体)に変換した。
以下に示す方法により、フェニル(o−フェノキシカルボニルフェニル)オキサレート(
OCPO)を合成した。
クロロシュウ酸フェニル(PCO)を、米国特許第5892091号明細書に記載された方法と同様の方法により合成した。すなわち、マグネチックスターラーを備えた1リットルの三角フラスコにシュウ酸ジフェニル27.3g(0.11モル)とアセトン600cm3を入れた。50cm3のビーカーに水25cm3を入れ、これに酢酸6.8g(0.11モル)と炭酸カリウム7.8g(0.06モル)をゆっくり加えて混合することにより、酢酸カリウム水溶液を得た。この酢酸カリウム水溶液を滴下ロートに入れ、先に調製したシュウ酸ジフェニルのアセトン溶液に撹拌しながら4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間撹拌し、スラリーを得た。このスラリーを減圧濾過することにより得られた固形分を、アセトンで懸洗し、白色の固形分を得た。この白色の固形分を減圧乾燥させることにより、カリウムシュウ酸フェニル20.1g(0.10モル)を得た。
このカリウムシュウ酸フェニルを100cm3のナス型フラスコに入れ、ウォーターバスを用いて20℃で保温した。塩化チオニル17.5g(0.15モル)を滴下ロートに入れ、ナス型フラスコ内のカリウムシュウ酸フェニルに30分間かけて滴下した。滴下終了後、ナス型フラスコに還流管を備え、90℃まで昇温して1時間反応させた。反応終了後、ナス型フラスコの還流管を留出管に付け替え、未反応の塩化チオニルを留出させた。塩化チオニルを留去後、減圧することにより、クロロシュウ酸フェニル15.5g(0.08モル)を得た。
を分離した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100cm3を加えて十分混合することにより中和して2相分離液を得た後、水相を分離した。得られた有機相に、更に飽和塩化ナトリウム水溶液100cm3を加えることにより脱水させた後に水相を分離した。得られた有機相を500cm3の三角フラスコに移し、硫酸マグネシウム30gを加えて、さらに脱水させた。この有機相を濾過することにより硫酸マグネシウムを濾別した後、有機相を500cm3のナス型フラスコに移し、減圧下でエバポレータを用いて、テトラヒドロフランを留出させた。このテトラヒドロフランを留出させた液にヘキサンを徐々に添加し、結晶が析出してきたところでヘキサンの添加を停止して放冷した。得られたスラリーを減圧濾過して、白色の固形分を得た。この白色の固形分を減圧乾燥させることにより、フェニル(o-フェノキシカルボニルフェニル)オキサレート(OCPO)1
0.2g(0.03モル)を得た。
組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt Cadenza 3mm CD−C18 250mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度30℃。溶離液組成:A液 アセトニトリル:水=7.2:1.0重量%/重量%、B液0.5重量%リン
酸二水素ナトリウム水溶液。分析時間0分〜12分。A液:B液=65:35(体積比、以下同様。)。分析時間12〜35分は溶離液組成をA液:B液=92:8へ徐々に変化させ、分析時間35〜40分はA液:B液=92:8に維持、流速1ミリリットル/分)にて分析した。
温度計、攪拌機、留出管及び受器を備えたフルジャケット式500cm3のセパラブルフラスコに、シュウ酸ジフェニル89g (0.367モル)、p−t−ブチルフェニルト
リフェニルホスホニウムクロライドの塩化水素塩10g(0.021モル)及びフェニル(o−フェノキシカルボニルフェニル)オキサレート(OCPO)1g(0.003モル)を入れた後、セパラブルフラスコ内を昇温した。セパラブルフラスコ内が230℃に達した後、反応で発生した一酸化炭素を反応系外へ除去しながら、60分間、230℃に保った状態で反応させた。60分間反応させた液の一部を抜き出し、高速液体クロマトグラフィーにより組成分析を行ったところ、フェノール1.33重量%、シュウ酸ジフェニル20.36重量%、炭酸ジフェニル64.92重量%であった。
実施例1において、シュウ酸ジフェニルを89gから85g (0.351モル)に、フ
ェニル(o−フェノキシカルボニルフェニル)オキサレート(OCPO)を1gから5g(0.014モル)に変えた以外は、実施例1と同様にして、脱カルボニル化反応を行い、その60分間反応後の液を分析した。この結果、フェノール1.19重量%、シュウ酸ジフェニル12.89重量%、炭酸ジフェニル68.47重量%であった。
実施例1において、シュウ酸ジフェニルを89gから90g (0.372モル)に増や
し、フェニル(o−フェノキシカルボニルフェニル)オキサレート(OCPO)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、脱カルボニル化反応を行い、その60分間反応後の液を分析した。この結果、フェノール1.40重量%、シュウ酸ジフェニル21.98重量%、炭酸ジフェニル64.40重量%であった。
Claims (3)
- 請求項1に記載の炭酸ジフェニルの製造方法であって、以下の第1〜3工程をこの順に
有することを特徴とする炭酸ジフェニルの製造方法。
第1工程:脱カルボニル化反応により炭酸ジフェニルを製造する工程、
第2工程:第1工程で製造された炭酸ジフェニルと触媒液とを分離する工程、
第3工程:第2工程で分離された触媒液の少なくとも一部を第1工程にリサイクルする工
程 - 炭酸ジフェニルと、ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下で重縮合させる
ことによるポリカーボネートの製造方法であって、前記炭酸ジフェニルを請求項1又は2
に記載の炭酸ジフェニルの製造方法により製造した後に、前記ジヒドロキシ化合物と重縮
合させることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
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