JP2011093869A - 光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】医薬、農薬の原料として有用な光学活性2−フェノキシブタン酸類を、容易に入手が可能な光学活性アミノ酸を原料として、製造時に特別な装置を必要とすることがなく容易に工業化可能で、結晶として取得することができる製造方法の提供。
【解決手段】1)光学活性2−アミノ酪酸のハロゲン置換工程、2)光学活性2−ハロゲノ酪酸のエステル化工程、3)光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し0.95〜1.05モル倍量のフェノール類を作用させることによるフェノキシ置換工程からなる光学活性2−フェノキシブタン酸類を製造する。
【選択図】なし
【解決手段】1)光学活性2−アミノ酪酸のハロゲン置換工程、2)光学活性2−ハロゲノ酪酸のエステル化工程、3)光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し0.95〜1.05モル倍量のフェノール類を作用させることによるフェノキシ置換工程からなる光学活性2−フェノキシブタン酸類を製造する。
【選択図】なし
Description
本発明は、容易に入手が可能な光学活性アミノ酸を原料とした光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法に関する。光学活性2−フェノキシブタン酸類は、キラルビルディングブロックとして医薬、農薬の原料および光学分割剤として幅広く利用されている。
光学活性2−フェノキシブタン酸類は、医薬、農薬の原料として幅広く利用されており、特に医薬、農薬の不斉源として多く用いられている。例えば、光学活性2−フェノキシブタン酸類は生物活性を示すことから、除草剤として有用性である(特許文献1〜3、非特許文献1)。したがって、光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法は多く報告されており、(1)分割剤による光学分割、(2)酵素による立体選択的加水分解、(3)不斉触媒による不斉水素化と(4)光学活性カルボン酸類のフェノキシ置換による4種の製造方法が知られている。
分割剤による2−フェノキシブタン酸の光学分割は、ストリキニーネを分割剤に用いる方法が報告されている(非特許文献2)。しかし、ストリキニーネの毒性は非常に強く、入手も困難であることから実用性は低い。また、光学分割プロセスの場合、光学分割後に分割剤を除去しなければならず、プロセスが煩雑になる問題点を有している。
2−フェノキシブタン酸アミドや2−フェノキシブタン酸エステルを原料に、立体選択的加水分解酵素を有する微生物およびその処理物を用いて光学活性2−フェノキシブタン酸類を合成することもできる(特許文献4、非特許文献3)。立体選択的加水分解を行う場合、必ず未反応の原料が残るため、高い収率は望めない。また、未反応の2−フェノキシブタン酸アミドや2−フェノキシブタン酸エステルを除去しなければならず、さらには、立体選択的加水分解に使用した微生物およびその処理物も除去する必要がある。
不飽和カルボン酸を基質として、不斉触媒を用いた不斉水素化により、高選択的に光学活性2−フェノキシブタン酸類が生成物として得られる(非特許文献4、5)。しかし、不斉触媒の使用量が基質に対して20mol%となるため、触媒のコスト、触媒除去の操作の煩雑さの点から、工業化への採用は現実的ではない。
そこで、多くの光学活性2−フェノキシブタン酸類は、光学活性カルボン酸類のフェノキシ置換によって製造される。例えば、光学活性ハロゲノブタン酸からフェノキシ置換により光学活性2−フェノキシブタン酸類が製造されている(特許文献5)。しかし、カルボキシル基のような酸性官能基を有する化合物のフェノキシ置換は反応が進みにくいため収率も80%程度にとどまった。そこで、光学活性2−フェノキシブタン酸類と同様に農薬としての有用な光学活性2−フェノキシプロピオン酸類の製造では、カルボキシル基を保護した光学活性ハロゲノプロピオン酸エステルのフェノキシ置換とエステル加水分解(特許文献6)が行われている。一方、2−フェノキシアルカンカルボン酸は結晶化が困難であるため、2−フェノキシアルカンカルボン酸の塩基性塩としてかつ水分が存在しない雰囲気で取り扱わないと、結晶として回収できない(特許文献7)。したがって、光学活性2−フェノキシブタン酸類を工業的に優位性のある結晶として取得する方法は今までに報告されていない。
European Journal of Medicinal Chemistry,18(6),507(1983)
Arkiv foer Kemi,6,251(1953)
Recueil des Travaux Chimiques des Pays−Bas,111(11),490(1992)
Organic Letters,6(18),3147(2004)
Advanced Synthesis and Catalysis,348,10(2006)
光学活性2−フェノキシブタン酸類は結晶化が困難であるため、工業的に優位性のある製造方法は見出されていなかった。本発明の目的は、医薬、農薬の原料として有用な光学活性2−フェノキシブタン酸類を、容易に入手が可能な光学活性アミノ酸を原料として工業的に優位性のある結晶として取得する、光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、光学活性2−フェノキシブタン酸類を製造方法について鋭意検討を重ねた結果、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルへフェノール類を作用させた後にフェノール類の残留が光学活性2−フェノキシブタン酸類の結晶化を阻害させることを見出した。そこで、光学活性2−フェノキシブタン酸類を工業的に優位性のある結晶として取得するため、晶析のプロセス液へ残留するフェノール類の低減を図り、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し0.95〜1.05モル倍量のフェノール類を作用させることにより光学活性2−フェノキシブタン酸類を操作性に優れた状態で結晶化できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し0.95〜1.05モル倍量のフェノール類を作用させることにより、光学活性2−フェノキシブタン酸類を操作性に優れた結晶として取得するための、以下の1)および2)に示す製造方法に関する。
1)一般式(1)に示す光学活性2−アミノ酪酸を一般式(2)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸へ変換し、一般式(3)に示すアルコールを作用させることにより一般式(4)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルとした後に、一般式(4)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し0.95〜1.05モル倍量の一般式(5)で示すフェノール類を作用せしめ、一般式(6)に示す光学活性2−フェノキシブタン酸類を製造することを特徴とする光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法。ただし、式中の*は不斉点を表し、一般式(2)のXは塩素原子または臭素原子、一般式(3)のRはC1〜C6の脂肪族アルキル基、一般式(5)および(6)のYは水素または塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、C1〜C5の脂肪族アルキル基、C1〜C5の脂肪族アルコキシ基のいずれか1つ以上の置換基である。
2)一般式(5)のフェノール類がフェノールである1)に記載の光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法。
1)一般式(1)に示す光学活性2−アミノ酪酸を一般式(2)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸へ変換し、一般式(3)に示すアルコールを作用させることにより一般式(4)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルとした後に、一般式(4)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し0.95〜1.05モル倍量の一般式(5)で示すフェノール類を作用せしめ、一般式(6)に示す光学活性2−フェノキシブタン酸類を製造することを特徴とする光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法。ただし、式中の*は不斉点を表し、一般式(2)のXは塩素原子または臭素原子、一般式(3)のRはC1〜C6の脂肪族アルキル基、一般式(5)および(6)のYは水素または塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、C1〜C5の脂肪族アルキル基、C1〜C5の脂肪族アルコキシ基のいずれか1つ以上の置換基である。
本発明の光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法は、キラルビルディングブロックとして医薬、農薬の原料および光学分割剤として幅広く利用される光学活性2−フェノキシブタン酸類を操作性に優れた状態で結晶化し、取得するものである。製造時に特別な装置を必要とすることがなく、容易に工業化が可能となる。また、容易に入手可能なアミノ酸を原料としているため、経済面からも有利なプロセスとなる。
本発明では、S−2−アミノ酪酸を出発原料とした場合にR−2−フェノキシブタン酸を、R−2−アミノ酪酸を出発原料とした場合にS−2−フェノキシブタン酸を製造することができる。また、本発明は、1)光学活性2−アミノ酪酸のハロゲン置換、2)光学活性2−ハロゲノ酪酸のエステル化、3)光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルのフェノキシ置換からなる。
原料となる光学活性2−アミノ酪酸は、アミノ酸の不斉ストレッカー合成などの不斉化学合成反応や光学分割剤により分割されたものや生物化学的に分割されたものが用いられるが、特に制限はない。
また、光学活性2−アミノ酪酸は、塩酸、硫酸、りん酸などの無機酸,カルボン酸、フェノールなどの有機酸,水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの無機塩基,またはアミンなどの有機塩基と形成される塩の状態ではないことが望ましい。光学活性2−アミノ酪酸が塩基と塩を形成している場合には、光学活性2−アミノ酪酸のハロゲン置換に用いる酸の使用量が多くなり、さらには副生する塩の除去が必要になる。また、光学活性2−アミノ酪酸が酸と塩を形成している場合には、ハロゲン置換の選択性や反応性の低下の原因となる。
1)光学活性2−アミノ酪酸のハロゲン置換は、例えば、亜硝酸ナトリウムの存在下にて塩酸または臭化水素酸を作用させることにより実施することができる。塩化水素を作用させた場合には光学活性2−クロロ酪酸が、臭化水素酸を作用させた場合には光学活性2−ブロモ酪酸が得られる。
光学活性2−アミノ酪酸に対し1.0〜3.0倍モル量の亜硝酸ナトリウムを使用し、−40〜0℃に冷却した状態で塩酸または臭化水素酸を作用させる。亜硝酸ナトリウムの使用量が1.0倍モル量に満たない場合には、ハロゲン置換の進行が遅くなるとともに反応が完結しない。3.0倍モル量を超えると、反応液がスラリー状となりハロゲン置換の進行を阻害してしまう。
また、反応温度は−40℃を下回ると、反応液が凝固するために反応は進まない。0℃を超える場合は、反応中間体が急激に分解するため光学活性2−ハロゲノ酪酸は得られず、さらには爆発の危険性もある。そこで、6mol/L以上の濃度となる塩酸または臭化水素酸へ光学活性2−アミノ酪酸を混合して冷却し、ゆっくりと亜硝酸ナトリウムを粉末または水溶液の形態で添加する方法が好適である。塩酸または臭化水素酸の濃度が6mol/Lに満たないとハロゲン置換の進行が遅くなるとともに反応が完結しない場合もある。
ハロゲン置換が進行した後、反応液からエーテル、ハロゲン化炭化水素等の溶媒を用いて抽出を行うことにより、光学活性2−ハロゲノ酪酸を回収することができる。また、回収された光学活性2−ハロゲノ酪酸は、抽出溶媒等を留去した後に、減圧蒸留などの公知の方法で精製を行うと良い。
2)光学活性2−ハロゲノ酪酸のエステル化は、例えば、光学活性2−ハロゲノ酪酸に対して0.01〜0.1倍モル量の濃硫酸存在下、光学活性2−ハロゲノ酪酸に対して2.0〜10倍モル量のアルコールを作用させることにより実施することができる。
濃硫酸は光学活性2−ハロゲノ酪酸に対して0.01倍モル量に満たない場合にはエステル化の進行が著しく低下する。0.1倍モル量を超える場合には、アルコールの脱水などの副反応が進行してしまう。
エステル化に用いるアルコール類に特に制限はないが、エステル化後の除去が容易なC1〜C6のアルコールが好ましい。C6を超えるアルコールは、エステル化後の未反応アルコールの除去が困難となる。また、作用させるアルコールが2.0倍モル量に満たないとエステル化の進行が著しく低下し、10倍モル量を超えると反応装置が大きくなり生産性は低下する。エステル化は無溶媒でも進行するが、エステル化の進行に伴って副生する水を反応系外へ除去するとより好適に進行するため、水との共沸性を有する溶媒を共存させると良い。
さらには、溶媒自身が光学活性2−ハロゲノ酪酸とアルコール、濃硫酸に対して不活性であり、光学活性2−ハロゲノ酪酸とアルコール、濃硫酸の溶解性に富んでいることが望ましい。例えば、エーテル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの溶媒が挙げられ、具体的にはターシャルブチルメチルエーテルやトルエン、ジクロロエタンが挙げられる。例えば、ジクロロエタンを反応へ共存させる場合には、光学活性2−ハロゲノ酪酸に対して0.1〜10重量倍を加えると良い。0.1重量倍に満たないも反応は進行するが、反応系内に水が残留するためにエステル化が完結しなくなる。一方、10重量倍を超えて加えた場合には、光学活性2−ハロゲノ酪酸の濃度低下などにより反応の進行が著しく遅くなる。
エステル化が進行した後、反応液からエーテル、ハロゲン化炭化水素等の溶媒を用いて抽出を行うことにより、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルを回収することができる。また、回収された光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルは、抽出溶媒等を留去した後に、減圧蒸留などの公知の方法で精製を行うこともできる。
3)光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルのフェノキシ置換は、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し1.1〜5.0モル倍量の強塩基存在下にて0.95〜1.05モル倍量のフェノール類を作用することにより実施する。フェノキシ置換に用いる強塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムなどが挙げられる。
強塩基が光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し1.1モル倍量に満たない場合には、フェノキシ置換が進行しない。強塩基が光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し5.0モル倍量を超えて存在するとフェノキシ置換よりもはやくエステル加水分解が進行してしまう。この場合、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルのフェノキシ置換が阻害される。
したがって、フェノキシ置換より先にエステル加水分解が進まないように、0〜30℃の温度にて光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルにフェノール類を共存させた状態で強塩基を逐次添加し、1時間あたりの昇温を10℃以下に抑えながら還流温度まで加温していく方法が好ましい。強塩基添加時に0℃を下回っている場合には、反応液が凝固するためにフェノキシ置換が進行しなくなる。一方、30℃を超える場合および1時間あたりの昇温が10℃を超える場合には、フェノキシ置換よりも優先的にエステル加水分解が進行し、光学活性2−フェノキシブタン酸類の収率を低下させてしまう。
また、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルへ作用させるフェノール類が0.95モル倍量に満たない場合には、光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルおよび副生光学活性2−ハロゲノ酪酸が不純物として残留するために、光学活性2−フェノキシブタン酸類の結晶性が低下する。また、フェノール類が1.05モル倍量を超える場合には、残留するフェノール類が光学活性2−フェノキシブタン酸類の結晶化を阻害する。
フェノキシ置換の後、反応液からエーテル、ハロゲン化炭化水素等の溶媒を用いて抽出を行うことにより、光学活性2−フェノキシブタン酸類を回収することができる。また、回収された光学活性2−フェノキシブタン酸類は、減圧蒸留などの公知の方法で抽出溶媒等を留去することにより結晶化するので、吸引ろ過や遠心分離等の公知の方法により結晶として光学活性2−フェノキシブタン酸類を取得することができる。
得られた光学活性2−フェノキシブタン酸類は、再結晶や光学分割剤を充填剤としたクロマトグラフィーなどの公知の方法によって、光学純度を向上させることもできる。例えば、再結晶に用いられる溶媒として芳香族炭化水素類が挙げられ、具体的にはトルエンが挙げられる。
このように、本発明の方法を用いることによって、光学活性2−フェノキシブタン酸類を操作性に優れた状態で結晶化し、取得できるようになった。例えば、キラルビルディングブロックとして医薬、農薬の原料および光学分割剤として光学活性2−フェノキシブタン酸類を利用可能となる。
実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
1)光学活性2−アミノ酪酸のハロゲン置換
実施例1
R−2−アミノ酪酸10g(97mmol)を500mLのフラスコへとり、6mol/L塩酸120mLと混合した。反応器内を−10〜−5℃に冷却し、メカニカルスターラーにて撹拌を行いながら、3時間かけて亜硝酸ナトリウム10.5g(152mmol)を添加した。亜硝酸ナトリウムの添加後、−10℃にて15時間撹拌を継続した。エチルエーテル120mLにて反応液からの抽出を3回実施し、回収したエーテル層を塩化カルシウムで乾燥した。乾燥後、エチルエーテルはエバポレート留去し、油状液体としてR−2−クロロ酪酸8.7g(71mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は73%であった。
1)光学活性2−アミノ酪酸のハロゲン置換
実施例1
R−2−アミノ酪酸10g(97mmol)を500mLのフラスコへとり、6mol/L塩酸120mLと混合した。反応器内を−10〜−5℃に冷却し、メカニカルスターラーにて撹拌を行いながら、3時間かけて亜硝酸ナトリウム10.5g(152mmol)を添加した。亜硝酸ナトリウムの添加後、−10℃にて15時間撹拌を継続した。エチルエーテル120mLにて反応液からの抽出を3回実施し、回収したエーテル層を塩化カルシウムで乾燥した。乾燥後、エチルエーテルはエバポレート留去し、油状液体としてR−2−クロロ酪酸8.7g(71mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は73%であった。
実施例2
R−2−アミノ酪酸10g(97mmol)を500mLのフラスコへとり、48%臭化水素酸100mLと混合した。反応器内を−10〜−5℃に冷却し、メカニカルスターラーにて撹拌を行いながら、3時間かけて亜硝酸ナトリウム10.5g(152mmol)を添加した。亜硝酸ナトリウムの添加後、−10℃にて15時間撹拌を継続した。エチルエーテル120mLにて反応液からの抽出を3回実施し、回収したエーテル層を塩化カルシウムで乾燥した。乾燥後、エチルエーテルはエバポレート留去し、油状液体としてR−2−ブロモ酪酸9.7g(58mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は60%であった。
R−2−アミノ酪酸10g(97mmol)を500mLのフラスコへとり、48%臭化水素酸100mLと混合した。反応器内を−10〜−5℃に冷却し、メカニカルスターラーにて撹拌を行いながら、3時間かけて亜硝酸ナトリウム10.5g(152mmol)を添加した。亜硝酸ナトリウムの添加後、−10℃にて15時間撹拌を継続した。エチルエーテル120mLにて反応液からの抽出を3回実施し、回収したエーテル層を塩化カルシウムで乾燥した。乾燥後、エチルエーテルはエバポレート留去し、油状液体としてR−2−ブロモ酪酸9.7g(58mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は60%であった。
実施例3
S−2−アミノ酪酸10gを原料に、実施例1と同様の操作を行い、油状液体としてS−2−クロロ酪酸8.7g(71mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は73%であった。
S−2−アミノ酪酸10gを原料に、実施例1と同様の操作を行い、油状液体としてS−2−クロロ酪酸8.7g(71mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は73%であった。
実施例4
S−2−アミノ酪酸10gを原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてR−2−ブロモ酪酸9.7g(58mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は60%であった。
S−2−アミノ酪酸10gを原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてR−2−ブロモ酪酸9.7g(58mmol)を取得した。R−2−アミノ酪酸基準の収率は60%であった。
2)光学活性2−ハロゲノ酪酸のエステル化
実施例5
R−2−クロロ酪酸を5.0g(41mmol)を100mLのフラスコへとり、n−ブタノール24.2g(327mmol)およびジクロロエタン12.3gと混合した。室温にて濃硫酸0.22g(2.25mmol)を添加し、90℃で1時間の撹拌を実施した。反応液へエチルエーテル30mLを3回加えて、抽出を行った。得られた抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、エチルエーテルはエバポレータにて留去し、油状液体としてR−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)を定量的に取得した。
実施例5
R−2−クロロ酪酸を5.0g(41mmol)を100mLのフラスコへとり、n−ブタノール24.2g(327mmol)およびジクロロエタン12.3gと混合した。室温にて濃硫酸0.22g(2.25mmol)を添加し、90℃で1時間の撹拌を実施した。反応液へエチルエーテル30mLを3回加えて、抽出を行った。得られた抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、エチルエーテルはエバポレータにて留去し、油状液体としてR−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)を定量的に取得した。
実施例6−1
R−2−ブロモ酪酸を原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてR−2−ブロモ酪酸ブチルを定量的に取得した。
実施例6−2
S−2−クロロ酪酸を原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてS−2−クロロ酪酸ブチルを定量的に取得した。
実施例6−3
S−2−ブロモ酪酸を原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてS−2−ブロモ酪酸ブチルを定量的に取得した。反応の結果を表1に示す。
R−2−ブロモ酪酸を原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてR−2−ブロモ酪酸ブチルを定量的に取得した。
実施例6−2
S−2−クロロ酪酸を原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてS−2−クロロ酪酸ブチルを定量的に取得した。
実施例6−3
S−2−ブロモ酪酸を原料に、実施例2と同様の操作を行い、油状液体としてS−2−ブロモ酪酸ブチルを定量的に取得した。反応の結果を表1に示す。
3)光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルのフェノキシ置換
実施例7
R−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)とフェノール3.9g(41mmol)を50mLのフラスコで混合し、50重量%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(82mmol)を室温にて滴下した。滴下後、55℃で3時間の撹拌を実施した。さらに3時間かけて90℃まで加温し、90℃に到達した後に撹拌を1時間行い、反応を熟成させた。熟成後、反応液はエバポレートにて濃縮し、6mol/L塩酸水溶液72mLを加えた。ジクロロメタン30mLを3回加えることにより抽出操作を行い、抽出液は硫酸マグネシウムにより脱水を行った。エバポレートによりジクロロメタンを留去し、S−2−フェノキシ酪酸7.2g(40mmol)を粗結晶として取得した。さらに粗結晶を水10mLで洗浄し、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸7.0g(39mmol)を取得した。R−2−クロロ酪酸ブチル基準の収率は95%であった。また、S−2−フェノキシ酪酸の光学純度を以下の条件にて測定したところ、83%eeであった。
[光学純度の測定条件]
カラム:ダイセル化学Chiralcel OD−H(250mm)
カラム温度:40℃, 検出:254nm吸収
溶離液:ヘプタン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸=85/15/0.15(体積比), 流速:1.0mL/min
実施例7
R−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)とフェノール3.9g(41mmol)を50mLのフラスコで混合し、50重量%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(82mmol)を室温にて滴下した。滴下後、55℃で3時間の撹拌を実施した。さらに3時間かけて90℃まで加温し、90℃に到達した後に撹拌を1時間行い、反応を熟成させた。熟成後、反応液はエバポレートにて濃縮し、6mol/L塩酸水溶液72mLを加えた。ジクロロメタン30mLを3回加えることにより抽出操作を行い、抽出液は硫酸マグネシウムにより脱水を行った。エバポレートによりジクロロメタンを留去し、S−2−フェノキシ酪酸7.2g(40mmol)を粗結晶として取得した。さらに粗結晶を水10mLで洗浄し、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸7.0g(39mmol)を取得した。R−2−クロロ酪酸ブチル基準の収率は95%であった。また、S−2−フェノキシ酪酸の光学純度を以下の条件にて測定したところ、83%eeであった。
[光学純度の測定条件]
カラム:ダイセル化学Chiralcel OD−H(250mm)
カラム温度:40℃, 検出:254nm吸収
溶離液:ヘプタン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸=85/15/0.15(体積比), 流速:1.0mL/min
実施例8−1
R−2−ブロモ酪酸ブチルを原料に、実施例7と同様の操作を行い、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸を取得した。
実施例8−2
S−2−クロロ酪酸ブチルを原料に、実施例7と同様の操作を行い、結晶としてR−2−フェノキシ酪酸を取得した。
実施例8−3
S−2−ブロモ酪酸ブチルを原料に、実施例7と同様の操作を行い、結晶としてR−2−フェノキシ酪酸を取得した。反応の結果を表2に示す。
R−2−ブロモ酪酸ブチルを原料に、実施例7と同様の操作を行い、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸を取得した。
実施例8−2
S−2−クロロ酪酸ブチルを原料に、実施例7と同様の操作を行い、結晶としてR−2−フェノキシ酪酸を取得した。
実施例8−3
S−2−ブロモ酪酸ブチルを原料に、実施例7と同様の操作を行い、結晶としてR−2−フェノキシ酪酸を取得した。反応の結果を表2に示す。
比較例1
実施例5と同様の操作により得られたR−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)とフェノール3.1g(33mmol)を50mLのフラスコで混合し、50重量%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(82mmol)を室温にて滴下した。滴下後、55℃で3時間の撹拌を実施した。さらに3時間かけて90℃まで加温し、90℃に到達した後に撹拌を1時間行い、反応を熟成させた。熟成後、反応液はエバポレートにて濃縮し、6mol/L塩酸水溶液72mLを加えた。ジクロロメタン30mLを3回加えることにより抽出操作を行い、抽出液は硫酸マグネシウムにより脱水を行った。エバポレートによりジクロロメタンを留去したが、微黄色の粘性液体が4.2g得られた状態となり、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸を取得することができなかった。
実施例5と同様の操作により得られたR−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)とフェノール3.1g(33mmol)を50mLのフラスコで混合し、50重量%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(82mmol)を室温にて滴下した。滴下後、55℃で3時間の撹拌を実施した。さらに3時間かけて90℃まで加温し、90℃に到達した後に撹拌を1時間行い、反応を熟成させた。熟成後、反応液はエバポレートにて濃縮し、6mol/L塩酸水溶液72mLを加えた。ジクロロメタン30mLを3回加えることにより抽出操作を行い、抽出液は硫酸マグネシウムにより脱水を行った。エバポレートによりジクロロメタンを留去したが、微黄色の粘性液体が4.2g得られた状態となり、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸を取得することができなかった。
比較例2
実施例5と同様の操作により得られたR−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)とフェノール4.6g(49mmol)を50mLのフラスコで混合し、50重量%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(82mmol)を室温にて滴下した。滴下後、55℃で3時間の撹拌を実施した。さらに3時間かけて90℃まで加温し、90℃に到達した後に撹拌を1時間行い、反応を熟成させた。熟成後、反応液はエバポレートにて濃縮し、6mol/L塩酸水溶液72mLを加えた。ジクロロメタン30mLを3回加えることにより抽出操作を行い、抽出液は硫酸マグネシウムにより脱水を行った。エバポレートによりジクロロメタンを留去したが、微黄色の粘性液体が9.4g得られた状態となり、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸を取得することができなかった。
実施例5と同様の操作により得られたR−2−クロロ酪酸ブチル7.3g(41mmol)とフェノール4.6g(49mmol)を50mLのフラスコで混合し、50重量%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(82mmol)を室温にて滴下した。滴下後、55℃で3時間の撹拌を実施した。さらに3時間かけて90℃まで加温し、90℃に到達した後に撹拌を1時間行い、反応を熟成させた。熟成後、反応液はエバポレートにて濃縮し、6mol/L塩酸水溶液72mLを加えた。ジクロロメタン30mLを3回加えることにより抽出操作を行い、抽出液は硫酸マグネシウムにより脱水を行った。エバポレートによりジクロロメタンを留去したが、微黄色の粘性液体が9.4g得られた状態となり、結晶としてS−2−フェノキシ酪酸を取得することができなかった。
本発明は、容易に入手が可能な光学活性アミノ酸を原料とした光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法に関する。光学活性2−フェノキシブタン酸類は、医薬、農薬の原料および光学分割剤として幅広く利用されている。
Claims (2)
- 一般式(1)に示す光学活性2−アミノ酪酸を一般式(2)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸へ変換し、一般式(3)に示すアルコールを作用させることにより一般式(4)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルとした後に、一般式(4)に示す光学活性2−ハロゲノ酪酸エステルに対し0.95〜1.05モル倍量の一般式(5)で示すフェノール類を作用せしめ、一般式(6)に示す光学活性2−フェノキシブタン酸類を製造することを特徴とする光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法。
ただし、式中の*は不斉点を表し、一般式(2)のXは塩素原子または臭素原子、一般式(3)のRはC1〜C6の脂肪族アルキル基、一般式(5)および(6)のYは水素原子または塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、C1〜C5の脂肪族アルキル基及びC1〜C5の脂肪族アルコキシ基から選択される置換基である。
- 一般式(5)のフェノール類がフェノールである請求項1に記載の光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法。
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JP2009252257A JP2011093869A (ja) | 2009-11-02 | 2009-11-02 | 光学活性2−フェノキシブタン酸類の製造方法 |
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WO2021161099A1 (en) | 2020-02-11 | 2021-08-19 | Cheminova A/S | Process for the synthesis of s-beflubutamid from (r)-2-aminobutanoic acid |
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2009
- 2009-11-02 JP JP2009252257A patent/JP2011093869A/ja active Pending
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