JP6281191B2 - 半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルム - Google Patents

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本発明は半導体ウェハのバックグラインドやダイシング等の工程において使用される半導体製造工程用粘着テープの基材として用いられる樹脂フィルムに関し、さらに詳しくは、柔軟かつ粘着剤への悪影響を低減することができる半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルム、及びそれを用いてなる半導体製造工程用粘着テープに関する。
半導体ウェハの製造工程において、ウェハの表面に回路パターンを形成した後にウェハ裏面を研磨して所定の厚さにするバックグラインドが行われている。この際、ウェハ表面に回路パターンを保護するための粘着テープを貼り付けて研磨する方法が行われている。
さらに、バックグラインド後の半導体ウェハを個々のチップに切断分離するダイシングが行われる。この際、ウェハを固定するために粘着テープを貼り付けて切断し、その後に粘着テープを放射状にエキスパンドして個々のチップをピックアップする方法が行われている。
このような半導体ウェハは、近年の電子機器の小型化に伴い薄型化が進んでおり、ウェハの強度が低下しているため、製造工程において破損しやすくなっている。
このため、半導体ウェハへの負荷を軽減し破損を防止するために、バックグラインド用粘着テープやダイシング用粘着テープといった半導体製造工程用粘着テープは、より柔軟であることが求められている。
柔軟な半導体製造工程用粘着テープを得るため、オレフィン系熱可塑性エラストマー等を粘着テープの基材として用いる方法が知られている。
例えば、下記特許文献1には、基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が設けられてなり、当該基材フィルムが、プロピレン並びにエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンを重合成分として含有し、かつ融解ピーク温度が120℃以上であるオレフィン系熱可塑性エラストマーを含有してなるダイシング用粘着シートが開示されている。
また、下記特許文献2には、密度0.910〜0.935の直鎖状低密度ポリエチレンからなる層と、特定の融点、重量平均分子量(Mw)、及びクロス分別法による一定の範囲の組成を有するポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を積層させた粘着テープ基材が開示されている。
特開2003―7654号公報 特開2005−297247号公報
このような粘着テープの基材などの柔軟な樹脂フィルムの材料として用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマーは一般的に低分子量成分を多く含んでおり、これによって柔軟性の効果を奏している場合が多い。
例えば、上記特許文献1に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは、クロス分別法により測定した0℃における樹脂溶出量が全溶出量に対し10〜60重量%のものであり、0℃における樹脂溶出量が小さくなると、オレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる基材フィルムが硬く、エキスパンド時の伸び性が悪くなるほか、ピックアップもし辛くなる傾向があるとされている。
また、特許文献2では、ポリプロピレン系樹脂組成物における0℃以上10℃以下の樹脂溶出量が特定範囲以下であると、柔軟性に欠けるとされている。
しかし、低温における樹脂溶出量が多い、すなわち低分子量成分が多いと柔軟性の効果は良好であるものの、このような成分が粘着剤層に移行することで粘着剤の凝集力を低下させ、離型紙および貼付対象への糊残りが発生する等の問題が生じることがわかった。
本発明は上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであり、柔軟性を保持しつつも粘着剤層への低分子量成分の移行による不具合を低減させる半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムを提供することにある。
本発明は、以下のダイシング用粘着テープ基材用樹脂フィルムである。
(1)クロス分別法により測定した0℃における樹脂溶出量が全溶出量に対して10重量%未満、かつ60℃における積算樹脂溶出量が50重量%以下であるオレフィン系熱可塑性エラストマーを含有し、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント部がメタロセン触媒を用いて重合させたエチレン/プロピレン共重合体ブロックであって、多段重合で得られるオレフィン系エラストマーであることを特徴とするダイシング用粘着テープ基材用樹脂フィルム。
(2)前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを50重量%以上含有していることを特徴とする(1)に記載のダイシング用粘着テープ基材用樹脂フィルム。
(3)引張弾性率が300MPa以下である(1)又は(2)に記載のダイシング用粘着テープ基材用樹脂フィルム。
また本発明は、以下のダイシング用粘着テープである。
)(1)〜()のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの少なくとも片面側に、粘着剤層を積層してなるダイシング用粘着テープ。
本発明によれば、粘着剤層への低分子量成分の移行による不具合を低減させつつも、十分な柔軟性および機械強度に優れ、さらには透明性にも優れた半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムを提供することが出来る。
[クロス分別溶出量]
本発明においては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、クロス分別法により積算樹脂溶出量が100%となるまで測定した際の0℃における樹脂溶出量が全溶出量に対して10重量%未満であることが重要である。より好ましくは8重量%未満、特に好ましくは6重量%未満である。
0℃での樹脂溶出量が全溶出量に対して10重量%未満であれば、基材層から粘着剤層への低分子量成分の移行により発生する粘着力の低下を抑制することができる。さらに、低分子量成分の移行によって粘着剤の凝集力が低下することを防止でき、離型紙および貼付対象への糊残りが発生するといった不具合を抑制することができる。
さらに、本発明においては、オレフィン系熱可塑性エラストマーの60℃における積算樹脂溶出量が50重量%以下であることが重要である。ここで、60℃における積算樹脂溶出量とは、0℃から60℃までの樹脂溶出量の積算値である。
60℃における積算樹脂溶出量が50重量%以下とすることにより、主に夏季において高温になると想定される、倉庫やコンテナ内の温度における樹脂溶出量を上記の範囲内とすることによって、長期の在庫や輸送等に耐えうる、実用的な半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムを得ることができる。
60℃における積算樹脂溶出量が50重量%を超えるオレフィン系熱可塑性エラストマーを半導体製造工程用粘着テープの基材として用いると、高温下において粘着剤層へ移行する低分子量成分が多くなるため、倉庫やコンテナでの保管や輸送中に粘着剤の凝集力が低下し、離型紙および貼付対象への糊残り等のおそれがある。
[オレフィン系熱可塑性エラストマー]
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント部がメタロセン触媒を用いて重合させたエチレン/プロピレン共重合体ブロックであって、多段重合で得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーである。メタロセン触媒を用いて多段重合することにより、低分子量成分の生成を抑えつつ軟質ブロック(ソフトセグメント)を生成することが可能となるため、半導体工程用粘着テープの基材フィルムとして製膜した際に、粘着剤への低分子量成分の移行による不具合を抑えつつも半導体製造工程用として十分な柔軟性を持つ基材フィルムを得ることができる。
[他の成分]
本発明の半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムは、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの他に、必要に応じて他の樹脂や各種添加剤を含有することができる。このような樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤及び着色剤等が挙げられる。
本発明の半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムにおける前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの含有量は50重量%以上であることが好ましい。より好ましくは70重量%以上である。オレフィン系熱可塑性エラストマーの含有量を50重量%以上とすることにより、オレフィン系熱可塑性エラストマーの優れた特徴を活かしたフィルム設計ができ、柔軟性や透明性の点で有利な半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムとすることができる。
[基材の層構成]
本発明の半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムは、単層フィルムでも多層フィルムでもよい。
多層フィルムとする場合は、少なくとも1層が前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを50重量%以上用いていればよく、表裏層からなる2種2層の積層フィルムおよび/または表裏層と中間層からなる2種3層の積層フィルムとすることもできる。
[フィルムの厚み]
本発明の好ましい態様においては、半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムの厚みは、0.03〜0.5mmであり、更に好ましくは、0.05〜0.3mmである。上記の特定値の範囲であれば、柔軟性を保持しつつも半導体製造工程用粘着テープの基材として十分な強度を保ち、また成形加工性にも優れる。
[引張弾性率]
本発明の好ましい態様においては、該半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムの引張弾性率は300MPa以下である。より好ましくは250MPa以下である。
当該粘着テープ基材用樹脂フィルムの引張弾性率が300MPa以下であれば、柔軟性が必要とされる半導体の製造工程において好適に用いることができる。例えば、ウェハ表面のパターン面への追従性が良い、ダイシング工程においてエキスパンド性に優れる等の利点が挙げられる。
[基材の製法]
前記半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムを製造する方法としては、Tダイ押出し成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の一般的なポリオレフィン系樹脂フィルムの成形方法が用いられるが、特に本発明においては押出し成形法が適している。尚、押出し成形の際の樹脂組成物のメルトフローレートは、1〜20g/10分、好ましくは、5〜15g/10分である。樹脂組成物のメルトフローレートが1g/10分以上であれば溶融粘度が高くなり過ぎることがなく押出加工性が良好であり、20g/10分以下であれば溶融粘度が低くなり過ぎることがなく流動性が良好で加工性に優れる。
[粘着剤層]
本発明の半導体製造工程用粘着テープは、本発明で得られる単層または多層フィルムからなる粘着テープ用基材フィルムが少なくとも1層含まれていればよく、粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。
前記基材フィルムの少なくとも片面側は、プラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法により表面処理されてもよい。また、基材フィルムと粘着層の間には、必要によりプライマー層を設けてもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、粘着テープの粘着層が設けられた側の反対面に更に樹脂層を設けても良い。
[用途]
本発明の半導体製造工程用粘着テープは、用途としては特に限定されないが、例えば、ダイシングテープ、バックグラインドテープ等に好適に用いられる。
以下、本発明の実施形態を実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
オレフィン系熱可塑性エラストマーA(日本ポリプロ社製オレフィン系熱可塑性エラストマー「ウェルネクスRFX4V」)を、東芝機械製単軸押出機(50φmm、L/D=32)のホッパーに投入し、押出機温度をC1:210℃、C2:230℃、C3:230℃、C4:230℃、C5:230℃のように設定し、550mm幅Tダイ(温度設定:230℃、リップ開度0.3mm)から押出した。押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度30℃)にて冷却固化、コロナ放電処理を施し厚み0.08mmの基材フィルムを得た。
<実施例2>
実施例1で用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーAとポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ウィンテックWFW4」)を前者:後者(重量比)=80:20の割合でドライブレンドし、実施例1と同条件で製膜し厚み0.08mmの基材フィルムを得た。
<実施例3>
実施例1で用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーAとポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ウィンテックWFW4」)を前者:後者(重量比)=60:40の割合でドライブレンドし、実施例1と同条件で製膜し厚み0.08mmの基材フィルムを得た。
<比較例1>
オレフィン系熱可塑性エラストマーB(サンアロマー社製「キャタロイC200F」)を実施例1と同条件で製膜し厚み0.08mmの基材フィルムを得た。
得られた各フィルムについて、以下の評価項目について評価を行った。
<凝集力の経時評価>
粘着剤への低分子量成分の移行による凝集力の低下を評価するため、下記の通り保持力試験を実施した。作製したフィルムから試験片(寸法:長さ125mm、幅50mm)を採取し、アクリル系粘着剤転写テープ(3M製 F−9460PC 、厚さ0.05mm)を試験片の片側全面に転写して試験用粘着テープを作製した。作製した試験用粘着テープを60℃下にて1週間加熱養生し、厚さ0.1mmのPETフィルムを裏打ちして補強した試験用粘着テープを試験板(SUS304鋼板、長さ125mm、幅50mm、厚さ2mm)に貼付面積が12mm×12mmとなるよう十分に接着した。接着した試験板を40℃で30分間放置した後、試験用粘着テープが鉛直に垂れ下がるように固定し、40℃下で試験用粘着テープに1kgの荷重をかけ、試験用粘着テープが試験板から落下するまでの時間を測定した。
測定結果を表2に示した。
<柔軟性>
柔軟性を評価するため、JIS K 7127に従い、フィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃で湿度60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:50mm/分)にて引張弾性率を測定した。
評価は以下の基準で実施した。なお、△は実用範囲内である。
◎:引張弾性率が250以下
○:引張弾性率が250より大きく300以下
△:引張弾性率が300より大きく350以下
×:引張弾性率が350より大きい
測定結果を表2に示した。
なお、各実施例に使用したオレフィン系熱可塑性エラストマーのクロス分別法の測定条件は以下の通りである。
<クロス分別測定>
測定装置:クロス分別クロマトグラフ CFC2(Polymer ChAR社製)、検出器:赤外分光光度計 IR4(Polymer ChAR社製)、検出波長:3.42μm、GPCカラム:Shodex HT−806M(昭和電工社製)、カラム温度:140℃、カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)、分子量校正法:ポリスチレン換算、溶離液:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
流速:1.0mL/分、試料濃度:90mg/30mL(3mg/mL)、注入量:0.5mL、降温条件:1℃/分(140℃→0℃)、その後60分間保持、溶出区分:0℃から10℃毎に測定し、積算樹脂溶出量が100%となるまで測定実施。
測定結果を表1に示した。
Figure 0006281191
Figure 0006281191
表2から、実施例1〜3の半導体製造工程用粘着テープ基材用樹脂フィルムは経時による凝集力の低下が少なく、さらに十分な柔軟性を保持していることが認められる。
特に、実施例1、2は、実施例3に対して柔軟性の観点から優れており、特に好ましい態様であった。

Claims (4)

  1. クロス分別法により測定した0℃における樹脂溶出量が全溶出量に対して10重量%未満、かつ60℃における積算樹脂溶出量が50重量%以下であるオレフィン系熱可塑性エラストマーを含有し、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント部がメタロセン触媒を用いて重合させたエチレン/プロピレン共重合体ブロックであって、多段重合で得られるオレフィン系エラストマーであることを特徴とするダイシング用粘着テープ基材用樹脂フィルム。
  2. 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを50重量%以上含有していることを特徴とする請求項1に記載のダイシング用粘着テープ基材用樹脂フィルム。
  3. 引張弾性率が300MPa以下である請求項1又は2に記載のダイシング用粘着テープ基材用樹脂フィルム。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの少なくとも片面側に、粘着剤層を積層してなるダイシング用粘着テープ。
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