JP6227494B2 - 半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム - Google Patents
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しかしながら、特許文献1または2に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは、低温における樹脂溶出量、すなわち低分子量成分が多いことにより良好な柔軟性を付与できるものの、このような成分はフィルム表面へ滲出しやすいため製品の保管中にブロッキングを引き起こすといった不具合が生じるという問題がある。更に、保管中に樹脂が溶出することにより基材フィルムが硬くなり、エキスパンド時の伸び性が悪くなるほか、ピックアップもしにくくなるという問題がある。
[1]ポリオレフィン系樹脂(A)を含有し、引張弾性率が200MPa以下であるフィルムであって、前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、少なくとも140〜170℃の間に融解ピーク温度(Tm)を有し、結晶融解熱量(ΔHm)が25J/g以下であることを特徴とする半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
[2]前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることを特徴とする[1]に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
[3]復元率が72%以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
[4]前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、基材フィルム全体に対して50質量%以上含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、プロピレン成分とエチレン成分のモル分率の比が4:1〜19:1であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
[6][1]〜[5]のいずれか1項に記載の基材フィルムを少なくとも1つ備える、半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の基材フィルムの少なくとも片面側に、粘着剤層を積層してなる半導体製造工程用粘着フィルム。
[8][1]〜[6]のいずれか1項に記載の基材フィルムの少なくとも片面側に、粘着剤層を積層してなるダイシング用粘着フィルム。
また、融解ピーク温度(Tm)を170℃以下とすることで、基材フィルムの成形加工性が好ましくなる。
なお、本発明における融解ピーク温度(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)を用い、試料5mgを230℃まで昇温した後、25℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、再度10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれるDSCチャート(溶融曲線)のピークが現れる位置の温度のことをいう。
なお、本発明における結晶融解熱量(ΔHm)は、示差走査熱量計(DSC)を用い、試料5mgを230℃まで昇温した後、25℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、再度10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれるDSCチャート(溶融曲線)から求めることができる。すなわち、DSCチャートの吸熱開始温度と吸熱終了温度を直線で結んだベースラインと、溶融曲線とに囲まれた部分の面積により決定される。
本発明の基材フィルムは、前記ポリオレフィン系樹脂(A)の他に、必要に応じて他の樹脂や各種添加剤を含有することができる。このような樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤及び着色剤等が挙げられる。
本発明の基材フィルムに帯電防止性を付与する場合は、ポリマー型帯電防止剤を添加することもできる。ポリマー型帯電防止剤は、一般的な低分子型帯電防止剤に比べてブリードアウトが発生しにくいことで知られているが、中でもポリエーテル−ポリオレフィン共重合体を構成成分とするポリマー型帯電防止剤はオレフィン系樹脂との相溶性がよく、本発明の基材フィルムから帯電防止剤がブリードアウトしにくくなる。したがって、本発明の特徴である耐ブロッキング性および粘着剤非汚染性を損なうことなく優れた帯電防止性能を持たせることができる。
本発明の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルムは、単層フィルムでも多層フィルムでもよい。多層フィルムとする場合は、少なくとも1層が前記ポリオレフィン系樹脂(A)を含有し、引張弾性率が200MPa以下であるフィルムを用いていればよく、表裏層からなる2種2層の積層フィルムおよび/または表裏層と中間層からなる2種3層の積層フィルムとすることもできる。
本発明の基材フィルムは、上記の単層フィルム又は多層フィルムを少なくとも1つ備えていればよい。また、本発明の基材フィルムには、上記の単層フィルム又は多層フィルムが2以上積層されたフィルムも含まれる。単層フィルム又は多層フィルムが2以上積層されている場合は、各フィルムの間に接着剤層を備えることができる。
本発明の好ましい態様においては、基材フィルムの厚みは、30μm〜500μmであり、更に好ましくは、50μm〜300μmである。上記の値の範囲内であれば、柔軟性を保持しつつも半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルムとして十分な強度を保ち、また成形加工性にも優れる。
本発明の基材フィルムを製造する工程においては、Tダイ押出し成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の一般的なポリオレフィン系樹脂フィルムの成形方法が用いられるが、特に本発明においては押出し成形法が適している。尚、押出しの際の樹脂組成物のメルトフローレートは、1〜20g/10分、好ましくは、5〜15g/10分である。樹脂組成物のメルトフローレートが1g/10分以上であれば溶融粘度が高くなり過ぎることがなく押出加工性が良好であり、20g/10分以下であれば溶融粘度が低くなり過ぎることがなく流動性が良好で加工性に優れる。
本発明の粘着フィルムは、本発明で得られる単層または多層の基材フィルムが少なくとも1つ含まれていればよい。本発明の粘着フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面側に、粘着剤層を積層してなる。
粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けても良い。
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド製 DSC823e)を用い、試料約5mgを、昇温速度10℃/分で25℃から230℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で230℃まで昇温した際に測定されたDSCチャートから、融解ピーク温度(Tm)および結晶融解熱量(ΔHm)を求めた。
高温GPC装置(日本ウォーターズ製 AllianceGPCV−2000)を用い、o−ジクロロベンゼンを溶媒として、測定温度140℃にて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
核磁気共鳴装置(ブルカー・バイオスピン製 AVANCE400)を用い、試料70mgに対しo−ジクロロベンゼン1mlおよび重ベンゼン0.2mlの割合で調製した溶液を、測定温度130℃にて13C−NMRスペクトルを測定した。得られたピークを帰属し、ピークの積分値から各成分およびトリアッドのモル分率を算出し、プロピレン成分とエチレン成分の比を求めた。
・樹脂A−1:ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー(A−1)
(Tm:159℃、ΔHm:6J/g、Mw/Mn:2.1、プロピレン成分/エチレン成分:89/11)
・樹脂A−2:ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー(A−2)
(Tm:152℃、ΔHm:19J/g、Mw/Mn:2.1、プロピレン成分/エチレン成分:91/9)
・樹脂B:日本ポリプロ社製「ウェルネクスRFG4VA」
(Tm:129℃、ΔHm:28J/g、Mw/Mn:2.2、プロピレン成分/エチレン成分:94/6)
・樹脂C:プライムポリマー社製「F3900」
(Tm:160℃、ΔHm:43J/g、Mw/Mn:3.3、プロピレン成分/エチレン成分:100/0)
・樹脂D:三菱化学社製「ゼラス5053」
(Tm:161℃、ΔHm:36J/g、Mw/Mn:3.7、プロピレン成分/エチレン成分:79/21)
ポリオレフィン系樹脂を表1に記載する配合にて、単軸押出機(東洋精機製作所製D2020)を使用し、Tダイ(東洋精機製作所製T120C)を用いて押出成形した。押出した溶融樹脂をフィルム引取装置(東洋精機製作所製FT2W20)にて、押出し条件をC1温度:210℃、C2温度:230℃、C3温度:230℃、Tダイ温度:230℃、冷却ロール温度:23℃、スクリュ回転数:20rpmとし、巻取速度1.5〜1.7m/分で巻取り、厚み80μmの単層の基材フィルムを得た。
各フィルムの成形の際、冷却ロールに汚染が認められなかったものを○、油膜状のロール汚染が発生したものを×とした。
得られた基材フィルムを使用し、5cm×5cmの試験片を採取し、試験片の上下をステンレス板(SUS304BA)にて挟み、東洋精機製ギアオーブンSTD60−Pを使用し180℃下で15分間加熱した。加熱後ギアオーブンから取り出し、ステンレス板から基材フィルムを剥がした際、フィルムに破損が認められなかったものを○、フィルムに破損が発生したものを×とした。
得られた基材フィルムを使用し、JISK7127に準拠し、1号ダンベル試験片を採取し、23℃・60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフAGS−Xを用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率を測定した。
得られた基材フィルムを使用し、JISK7127の1号ダンベル試験片の形状で採取し、23℃・60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフAGS−Xを用いて、引張速度50mm/分にて50%延伸し1分間保持した後、試験機から外して5分間放置して復元させ、下記の計算式により復元率を測定した。
復元率(%)=(引張直後の長さ−復元後の長さ)÷(引張直後の長さ−引張前の長さ)×100
なお、引張直後の長さとは、オートグラフで50%延伸した状態の長さを言う。
耐汚染性、柔軟性、復元性を勘案し、総合的な実用性を以下の基準で評価した。
A:特に好ましい
B:好ましい
C:実用上使用可能な範囲
D:劣る
評価結果を表2に示した。
Claims (8)
- ポリオレフィン系樹脂(A)を含有し、引張弾性率が200MPa以下であるフィルムであって、前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、少なくとも140〜170℃の間に融解ピーク温度(Tm)を有し、結晶融解熱量(ΔHm)が25J/g以下であることを特徴とする半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
- 復元率が72%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、基材フィルム全体に対して50質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、プロピレン成分とエチレン成分のモル分率の比が4:1〜19:1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の基材フィルムを少なくとも1つ備える、半導体製造工程用粘着フィルムに使用する基材フィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の基材フィルムの少なくとも片面側に、粘着剤層を積層してなる半導体製造工程用粘着フィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の基材フィルムの少なくとも片面側に、粘着剤層を積層してなるダイシング用粘着フィルム。
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