JP7296805B2 - 均一拡張性フィルム - Google Patents
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Description
ダイシングフィルムは、ダイシング工程だけでなく、次工程であるエキスパンド工程にも用いられることが多い。エキスパンド工程において、各チップ間に均等な隙間を形成するために、ダイシングフィルムには、縦、横、斜め等あらゆる方向に対して均一に拡張する性質(以下、均一拡張性と称す)が求められる。また、近年、ダイシング工程とエキスパンド工程とが、別の半導体製造工程用フィルムを用いて行われることがある。この場合、ダイシング工程に用いられる半導体製造工程用フィルム(ダイシングフィルム)に均一拡張性は求められないが、エキスパンド工程に用いられる半導体製造工程用フィルム(エキスパンドフィルム)には、均一拡張性が求められる。
尚、特許文献2記載では、ステルスダイシングに用いることについては検討されているが、従来のダイシングブレードを用いるダイシングへの適用については検討されておらず、フィルムの復元率についても何ら開示されていない。また、ダイシングフィルムや転写フィルムは、しばしばエキスパンドされる前に、加熱されることがある。特許文献2では、ダイシングフィルムの加熱による影響についても開示されていない。
初めに引張弾性率の高い樹脂として、一般的なポリプロピレン系樹脂を混合したところ、フィルムの引張弾性率を高めることはできたが、フィルムの均一拡張性が低下することとなった。次いで、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂を混合したところ、フィルムの均一拡張性を低下させることなく、引張弾性率を高めることができた。これは長鎖分岐構造により、フィルムに剛性が付与されるとともに、フィルムが塑性変形することが妨げられたためと思われる。
また、少なくとも表層(A)と基層(B)とを備えるポリオレフィン系フィルムであって、前記基層(B)が、前記樹脂組成物(β)からなることを特徴とする前記均一拡張性フィルムが提供される。
更に、前記樹脂組成物(β)が、更に、ASTM D1505に準拠して測定される密度が885kg/m3を超え、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(β-3)を含有することを特徴とする前記均一拡張性フィルムが提供される。
更に、前記樹脂組成物(α)が、更に、前記ポリプロピレン系ランダム共重合体(α-1)とは異なる結晶性ポリオレフィン系樹脂(α-2)を含有することを特徴とする前記均一拡張性フィルムが提供される。
更に、前記ポリプロピレン系ランダム共重合体(α-1)及び/又は前記ポリプロピレン系ランダム共重合体(β-1)が、プロピレン-エチレンランダム共重合体であることを特徴とする前記均一拡張性フィルムが提供される。
更に、前記表層(A)、前記基層(B)、前記表層(A)を順に備えることを特徴とする前記均一拡張性フィルムが提供される。
更に、前記均一拡張性フィルムを基材フィルムとして用いることを特徴とするステルスダイシング用フィルムが提供される。
更に、本発明の均一拡張性フィルムが、前記樹脂組成物(β)からなる基層(B)と、表層(A)を備えていれば、フィルムを安定して製膜することができる。
尚、樹脂組成物(β)は、軟質PP(β-1)を主成分とし、更に長鎖分岐PP(β-2)を副成分として含んでいれば、一般的なポリプロピレン系樹脂(密度が885kg/m3を超え、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂)(β-3)をさらに含むことができる。
さらに、前記樹脂組成物(α)が、結晶性ポリオレフィン系樹脂(α―2)を副成分として含んでいると、均一拡張性フィルム表面のタック性が低減するため、フィルムのハンドリング性が向上する。
本発明の均一拡張性フィルムは、ダイシングフィルムやエキスパンドフィルムといった半導体製造工程用フィルムの基材フィルムとして適する。特にステルスダイシング用の基材フィルムとして適する。
本発明の均一拡張性フィルムは、軟質PP(β-1)を主成分とする層を備えるため、均一拡張性に優れ、復元性にも優れるが、安定して製膜することが難しい。またインフレーション押出法やTダイ押出法等により製膜されたフィルムは、巻き取られるまでの間に多数のロールと接するが、該軟質PP(β-1)は各ロールからの剥離性が悪い。そこで本発明の均一拡張性フィルムは、単層のフィルムであってもよいが、基層(B)の製膜性や剥離性を補う表層(A)を備えることが望ましい。該均一拡張性フィルムは、表層(A)と基層(B)を各一層備えていれば、表層(A)と基層(B)のみから成る構成(表層(A)/基層(B))であっても良く、他の樹脂層(C)を備える構成(例えば、表層(A)/樹脂層(C)/基層(B)、表層(A)/基層(B)/樹脂層(C)等)であってもよい。
尚、層構成が、表層(A)/基層(B)/表層(A)の場合、二つの表層(A)は同一の樹脂組成であってもよいが、樹脂の主成分が同じであれば、副成分や各種添加剤の種類、配合量などが異なっていても良い。
均一拡張性フィルムの各層の厚さ割合は特に限定されるものではないが、均一拡張性フィルムの厚さをt、表層(A)の厚さをtA、基層(B)の厚さをtBとしたとき、1μm≦tA≦20μmが好ましく、3μm≦tA≦10μmが好ましい。また、0.50t≦tBであることが望ましく、特に0.60t≦tB、更には0.75t≦tBであることが好ましい。基層(B)の厚さtBが全体の厚さtの1/2未満であると、均一拡張性フィルムの均一拡張性、復元性が低下する恐れがある。また表層(A)の厚さが薄くなりすぎると安定して製膜することが困難となり、厚くなりすぎるとフィルムの均一拡張性が低下する恐れがある。
表層(A)は、基層(B)を成す樹脂組成物(β)よりもロールとの密着性が低く、基層(B)の製膜性を補うことができれば、その樹脂組成は特に限定されるものではないが、後述する軟質PP(β-1)より、コモノマーの含有量が少なく、密度が高い軟質PP(α-1)を主成分とする樹脂組成物(α)からなることが好ましい。
該軟質PP(α-1)におけるコモノマー含有率は4重量%以上が好ましく、特に6重量%以上が好ましい。コモノマー含有率が4重量%よりも低い軟質PPは結晶性が高すぎる為、得られるフィルムがネッキングを起こしやすく、均一に拡張し難くなり、復元率も低くなりやすい。また軟質PP(α-1)におけるコモノマー成分は15重量%以下が好ましく、特に12重量%以下、更には8重量%以下が製膜性の観点から好ましい。
軟質PP(α-1)は、エチレンを主成分とする熱可塑性樹脂よりもゲルが発生し難く、基層(B)の均一拡張性や復元性を低下させることなく、製膜性を改善することができる。
表層(A)を成す樹脂組成物(α)に、結晶性ポリオレフィン系樹脂(α―2)を50重量%未満、好ましくは3~48重量%、更に好ましくは10~30重量%添加することにより、表層(A)のロール剥離性を向上させることができる。結晶性ポリオレフィン系樹脂(α―2)の配合量が3重量%未満では、ロール剥離性改善の効果に乏しく、50重量%以上では、基層(B)の均一拡張性、復元性を低下させる恐れがある。
結晶性ポリオレフィン系樹脂(α―2)は特に限定されるものではないが、例えば直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、プロピレン系ホモポリマー、ポリプロピレン系共重合体等を例示することができる。また上述した軟質PP(α―1)よりもコポリマー含有量が少なく、結晶性の高いポリプロピレン系ランダム共重合体であってもよい。尚、結晶性ポリオレフィン系樹脂(α-2)が、密度が910kg/m3を超える高圧法低密度ポリエチレンであると、少ない添加量で、高い製膜性改善効果を奏することができる。
表層(A)を成す樹脂組成物(α)には、本発明の目的に支障をきたさない範囲で、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤などの各種添加剤を適宜使用することができる。
均一拡張性フィルムが半導体製造工程用フィルムの基材フィルムとして用いられる場合は、少なくとも一方の表層(A)を成す樹脂組成物(α)に、界面活性剤、永久帯電防止高分子といった導電性材料を加えることが好ましい。少なくとも一方の表層(A)に導電性材料が配されている場合、半導体ウエハに静電気が発生することを、抑制または防止することができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が例示される。また永久帯電防止高分子としては、例えば、ポリエステルアミド系列、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリウレタン系列等が例示される。代表的な永久帯電防止高分子として、三洋化成工業株式会社製の商品名「ペレスタット(登録商標)」を例示する。
本発明の均一拡張性フィルムは、基層(B)が軟質PP(β-1)を主成分とし、長鎖分岐PP(β-2)を副成分とする樹脂組成物(β)からなることを特徴とする。尚、本発明の均一拡張性フィルムは、該樹脂組成物(β)を主成分とする層(基層(B))のみからなる単層のフィルムを含む。
軟質PP(β-1)は、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であって、エチレン及び/又は炭素数4~8のα-オレフィンの含有量が6重量%以上、ASTM D1505に準拠して測定される密度が885kg/m3以下のポリプロピレン系ランダム共重合体である。
コモノマーの含有量が6重量%未満、もしくは密度が885kg/m3を超えると、軟質PP(β-1)の結晶性が高くなる為、フィルムの均一拡張性や復元性が低下する。尚、コモノマー成分は、エチレン及び炭素数4~8のα-オレフィンの中から適宜選択することができるが、復元性を考慮すると、エチレンが特に適する。
また軟質PP(β-1)の密度は875kg/m3未満が好ましく、特に870kg/m3未満が、中でも865kg/m3未満が好ましい。コモノマーの含有率が上記範囲においては、密度が下がるほど、軟質PP(β-1)の結晶性は低下し、得られるフィルムの均一拡張性、復元性は良好なものとなる。
更に、軟質PP(β-1)の融点は耐熱性の観点から75℃以上が好ましく、特に100℃以上が好ましい。
中でも、エクソンモービル社の「ビスタマックス」は、非晶質分が豊富なプロピレンとエチレンの共重合体であり、アイソタクチックポリプロピレン結晶領域と非晶領域を備えており、均一拡張性、復元性に特に優れる。
尚、前述した軟質PP(α―1)と、軟質PP(β-1)とのコモノマー含有量差は、特に限定されないが3%以上であることが望ましく、特に6%以上であることが好ましい。
基層(B)を成す樹脂組成物(β)には、長鎖分岐構造を備えるポリプロピレン系樹脂(β―2)が副成分として配合されている。本発明に用いられる長鎖分岐PP(β―2)は、一般的なポリプロピレンよりも明らかに高い溶融張力を発現する樹脂で、主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上の分子鎖による分岐構造を備える樹脂であり、プロピレンに1-ブテンなどのα-オレフィンを共重合することにより形成される短鎖分岐構造のみを備えるポリプロピレン系樹脂とは、明確に区別されるものである。長鎖分岐PP(β―2)は、軟質PP(β―1)の均一拡張性を低下させることなく、フィルムに剛性を付与するために必要な成分であり、例えば下記構造式(1)に示すような分岐構造を備えた樹脂を例示することができる。
なお、下記構造式(1)において、Ca、Cb、Ccは、分岐炭素に隣接するメチレン炭素を示し、Cbrは、分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、P1、P2、P3は、プロピレン系重合体残基を示す。P1、P2、P3は、それ自体の中に、下記構造式(1)に記載されたCbrとは、別の分岐メチン炭素(Cbr)を含有することもあり得る。
式(1):log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7
[式(1)中、MT(単位:g)は、キャピログラフを使用し、温度230℃に加熱した直径9.6mmのシリンダーに樹脂を入れ、押し込み速度20mm/minで、溶融樹脂を直径2.0mm、長さ40mmのオリフィスから押し出された樹脂を、速度4.0m/min(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)で引き取った時にプーリーに検出される張力であり、MFR(単位:g/10min)は、JIS-K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレートである。]
式(2):log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.9
式(3):log(MT)≧-0.9×log(MFR)+1.1
また長鎖分岐PP(β-2)のMFRは製膜性、均一拡張性等の観点から、0.5~10.0g/10minであることが好ましく、0.5~7.0g/10minであることがより好ましく、0.5~5.0g/10minであることがさらに好ましく、1.0~3.5g/10minであることが特に好ましい。
また、長鎖分岐PP(β―2)の融点は、140~165℃であることが好ましく、145~160℃であることがより好ましく、150~160℃であることがさらに好ましい。融点が上記範囲であると、本発明の均一拡張性フィルムに耐熱性を付与することができる為、加熱工程がある半導体製造工程においても用いることができる。
上述した軟質PP(β―1)、長鎖分岐PP(β-2)は、いずれも一般的なポリプロピレン系樹脂(β-3)よりも高価である。そこで、基層(B)の性能を損なわない範囲において、樹脂組成物(β)に、一般的なポリプロピレン系樹脂(β-3)を加えることもできる。
該一般的なポリプロピレン系樹脂(β-3)とは、プロピレンの単独重合体や、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4~10のα-オレフィンの共重合体であって、ASTM D1505に準拠して測定される密度が885kg/m3を超え、長鎖分岐構造を有さない樹脂である。
本発明の樹脂組成物(β)は、軟質PP(β-1):長鎖分岐PP(β-2):ポリプロピレン系樹脂(β―3)が、50~80重量%:5~20重量%:10~45重量%であることが好ましく、特に50~70重量%:5~15重量%:15~45重量%であることが好ましい。また、本発明の目的に支障をきたさない範囲であれば、樹脂組成物(β)に、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤などの各種添加剤を適宜使用することができる。但し、滑剤やブロッキング防止剤等は添加しないことが望ましい。フィルムが表層(A)を備える場合、フィルムの製膜性は表層(A)で担保される為、滑剤やブロッキング防止剤は添加する必要がない。また本発明の均一拡張性フィルムが半導体製造工程用フィルムの基材フィルムとして用いられる場合、滑剤やブロッキング防止剤を添加すると、半導体を汚染する恐れがある。
本発明の均一拡張性フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した表層(A)用の樹脂組成物(α)と、基層(B)用の樹脂組成物(β)とを別々の押出機に供給し、1つのダイスから押出すインフレーション共押出法やTダイ共押出法、予め製膜された表層(A)用のフィルムに基層(B)用の樹脂組成物(β)を押出す押出ラミネート法、予め製膜された二つの表層(A)用フィルムの間に基層(B)用の樹脂組成物(β)を押出す押出ラミネート法等を用いることができる。しかしながら、フィルムの均一拡張性と生産効率を考慮するとTダイ(共)押出法が適する。インフレーション(共)押出法は、樹脂が配向し易い為、均一拡張性が低下する恐れがある。また押出ラミネート法は予め一方の層をフィルム状に製膜する必要がある為、生産効率が悪い。
本発明の均一拡張性フィルムから半導体製造工程用フィルムの一種であるダイシングフィルム(ステルスダイシング用のものを含む)を得るためには、該フィルムの一方の面に粘着剤を塗布する必要がある。そこで、粘着剤塗布に先立ち、粘着剤を塗布する面に、コロナ処理のような表面処理を施すことが好ましい。表面処理が施された面は粘着剤との密着性が向上する。粘着剤の塗布は、例えばメチルエチルケトン、アセトン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒドといった溶剤で希釈された粘着剤を、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行えばよい。ダイシングフィルムの粘着面は必要に応じ、セパレーターが貼合される。
[引張弾性率]
各実施例、比較例のフィルムから、測定したい方向が長さ方向となるように、JIS K7127(1989)に準拠して、4号形試験片(測定部の幅10mm)を作成し、引張速度50mm/minにて、100%(チャック間距離が40mmから80mmになるまで)引張試験を行い、引張弾性率を測定する。
尚、ステルスダイシング用の基材フィルムとして用いる場合は、引張弾性率が100MPaを超えることが望ましい
引張速度を500mm/minに変更した以外は、上述した引張弾性率の試験と同様にして引張試験を行う。各フィルムの応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)を目視確認し、応力が低下する部分(降伏点)が見られなかったものは〇、見られたものは×とする。
降伏点が見られたものは、ダイシング工程にてフィルムを拡張する際にネッキングが起こるため、均一に拡張することができない。また、フィルムが塑性変形しているため、拡張後に張力を取り除いても、フィルムが元の形状に戻ることができない。
軟質PP1:プロピレン-エチレンランダム共重合体
(エチレン含有量16重量%、密度862kg/m3)
軟質PP2:プロピレン-エチレンランダム共重合体
(エチレン含有量4.5重量%、密度889kg/m3)
長鎖分岐PP1:長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体
(溶融張力17g、融点155℃)
PP1:長鎖分岐構造を有さないプロピレン単独重合体
(密度900kg/m3、融点163℃)
表層(A)用の樹脂組成物(α)として軟質PP2を用い、基層(B)用の樹脂組成物(β)として軟質PP1(β―1)を65重量%、長鎖分岐PP1を10重量%、PP1を25重量%からなる樹脂組成物を用い、Tダイ共押出法にて、表層(A)/基層(B)/表層(A)の3層の均一拡張性フィルムを製膜した。フィルムの膜厚は100μm、各層の厚み比は1:8:1とした。
得られたフィルムの引張弾性率を測定し、併せて降伏点の有無について確認した。結果を表1に記す。
基層(B)を成す樹脂組成を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にして、比較のためのフィルムを得た。引張弾性率、降伏点の有無について表1に記す。
[復元率]
各フィルムから90mm×90mmの正方形の試験片を切り出す。試験片に評点間距離が40mmの2点を6対、書き入れる(図1参照)。次いで、テーブル二軸延伸機(チャック間距離70mm)にて3mm/sの速度で、縦、横、同時に200%(フィルム面積が元の試験片の4倍になるように)延伸する。延伸状態を1分保持後、張力を解放し、更に1分間経過後、フィルムの評点間距離を測定し、以下の式にて復元率を求めた。結果を表2に併せて記す。
復元率(%)=[延伸時評点間距離(80mm)-延伸後評点間距離(測定値)]/延伸前評点間距離(40mm)×100
復元率が100%に近い程、フィルムの復元性は良好である。復元性に優れたフィルムをダイシング用の基材フィルムとして用いた場合に、エキスパンド後のダイシングフィルムに弛みが残りにくい。
各フィルムを3mm幅に切り出し、試験片とする。この時、フィルムのMD(機械方向)を試験片の長さ方向とする。次いで、試験片をTMA測定機(日立ハイテクサイエンス社製熱分析装置TMA/SS7100)にチャック間距離が10mmとなるように装着し、フィルムに16.3N/mの荷重をかけながら、フィルムを30℃から、5℃/minの速度で昇温させる。フィルムが元の長さの120%になった温度(20%伸び温度)を測定する。結果を表2に併せて記す。
該温度が高いとフィルムは耐熱性を有することになる。耐熱性を有するフィルムは、加温されても、線膨張が小さく、変形し難い。
初めに、フィルムから90mm×90mmの正方形の試験片を切り出す。次いで、該試験片の中央部分に10mm角のマス目を書き入れる(図2参照)。該フィルムを、テーブル二軸延伸機(チャック間距離70mm)にて3mm/sの速度で、縦、横、同時に150%(フィルム面積が元の試験片の2.25倍になるように)延伸する。延伸時のマス目の状態を目視確認したところ、元のマス目の形状(正方形)が維持されていた。
よって、実施例1のフィルムは均一拡張性に優れる。均一拡張性に優れたフィルムをダイシング用の基材フィルムとして用いると、エキスパンド時に、各チップの間に均等な間隙を設けることができる。
フィルムの樹脂組成、厚さを表3、表4に記すように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~5、比較例3、4のフィルムを得た。引張弾性率および降伏点の有無を表3、表4に併せて記す。
比較例3のフィルムは、引張弾性率は高かったものの、降伏点が見られた。よって、均一に拡張することが難しく、拡張後に張力を取り除いてもフィルムに弛みが残る。
また優れた均一拡張性、復元性を示す為、ストレッチフィルム、湿布薬の基材、使い捨ておむつのサイドテープや医療用サポーター、スポーツ用サポーター、加飾フィルム、転写フィルム等に利用することができる。
Claims (7)
- プロピレンとエチレンのランダム共重合体であって、エチレンの含有量が6重量%以上、40重量%未満で、ASTM D1505に準拠して測定される密度が885kg/m3以下のポリプロピレン系ランダム共重合体(β-1)を主成分とし、
長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体(β-2)を副成分とする樹脂組成物(β)からなる層を備えることを特徴とする均一拡張性フィルム。 - 少なくとも表層(A)と基層(B)とを備えるポリオレフィン系フィルムであって、前記基層(B)が、前記樹脂組成物(β)からなることを特徴とする請求項1記載の均一拡張性フィルム。
- 前記樹脂組成物(β)が、更に、ASTM D1505に準拠して測定される密度が885kg/m3を超え、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(β-3)を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の均一拡張性フィルム。
- 前記表層(A)が、前記ポリプロピレン系ランダム共重合体(β-1)より、エチレンの含有量が少なく、密度が高いプロピレン-エチレンランダム共重合体(α-1)を主成分とする樹脂組成物(α)からなることを特徴とする請求項2に記載の均一拡張性フィルム。
- 前記表層(A)、前記基層(B)、前記表層(A)を順に備えることを特徴とする請求項2又は4に記載の均一拡張性フィルム。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の均一拡張性フィルムを基材フィルムとして用いることを特徴とする半導体製造工程用フィルム。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の均一拡張性フィルムを基材フィルムとして用いることを特徴とするステルスダイシング用フィルム。
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