JP2006335989A - 表面保護フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 常温における弾性率に優れているだけでなく、0℃もしくは0℃以下の低温における靱性が高い基材を有する表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン系基材にゴム系粘着剤層が積層されている表面保護フィルムであって、ポリオレフィン系基材が、ポリプロピレン成分からなる海相と、オレフィン系エラストマーからなる島相との海島構造を有し、電子顕微鏡により求めた島相間の平均距離が600nm以下であり、かつJIS K 7127に準拠して測定された23℃における引張弾性率が300〜2000MPaである、表面保護フィルム。
【選択図】 図1

Description

本発明は被着体表面への塵埃の付着や被着体表面の損傷を防止するために被着体表面に貼付される表面保護フィルムに関し、より詳細には、ポリオレフィン系基材の片面にゴム系粘着剤層が積層されてなる表面保護フィルムに関する。
様々な物品や部材を保護するために、物品や部材の表面に表面保護フィルムが仮着されていることが多い。例えば、合成樹脂板、金属板、化粧合板、塗装鋼板、塗装樹脂板または各種銘板などの様々な被着体の表面に、加工時及び運搬時にこれらの表面への汚れの付着や表面の傷つきを防止するために、表面保護フィルムが多用されている。
この種の表面保護フィルムは、フィルム基材の片面に粘着剤層を積層した構造を有する。上記フィルム基材としては、一般に、熱可塑性樹脂からなるフィルム基材が用いられている。表面保護フィルムは、被着体表面に上記粘着剤層の粘着力を利用して貼付され、被着体表面の保護を図る。被着体が使用される際には、表面保護フィルムは被着体表面から剥離されることになる。従って、表面保護フィルムでは、被着体の表面に容易に仮着され得るのに適切な粘着性を有することが求められており、かつ使用後には、被着体表面から容易に剥離し得る程度の良好な剥離性を有することが求められている。さらに、剥離後の被着体表面を糊残り等により汚染しないことも強く求められている。
特に、塗装鋼板などの塗膜の表面保護に用いられる表面保護フィルムは、一般に手貼りにより塗膜表面に仮着され、最終的には剥離される。この場合、塗装鋼板の塗膜表面の温度は、冬場では0℃以下となることもある。従って、このような低温下における作業性を確保するためには、表面保護フィルムもまた、低温において靱性が高いことが求められる。
他方、表面保護フィルムのフィルム基材は、作業性を考慮するとある程度の腰を有することが求められている。通常の温度、すなわち20〜25℃程度の室温下において、腰のあるフィルム基材として、ポリプロピレン系組成物からなるフィルム基材が用いられている。しかしながら、ポリプロピレン系組成物からなるフィルム基材は、室温において十分な剛性を有するものの、0℃もしくは0℃以下の低温における靱性が十分でないという問題があった。
そこで、このような問題を解決するものとして、下記の特許文献1〜4には、ポリプロピレンに、低密度ポリエチレンやエチレン−プロピレン−ゴム(EPR)などのオレフィン系エラストマーをブレンドしてなる組成のフィルム基材が提案されている。
特開昭58−111846号公報 特開昭57−73034号公報 特開昭57−159841号公報 特開昭63−4342号公報
しかしながら、低密度ポリエチレンやEPRをポリプロピレンにブレンドしただけでは、低温下における靱性を十分に高めることができないことがあった。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、20〜25℃程度の室温下における弾性率が十分に高く、作業性に優れており、しかも0℃もしくは0℃以下の低温における靱性が高められているフィルム基材を有する表面保護フィルムを提供することにある。
本発明によれば、ポリオレフィン系基材にゴム系粘着剤層が積層されてなる表面保護フィルムであって、前記ポリオレフィン系基材が、ポリプロピレン成分からなる海相と、オレフィン系エラストマーからなる島相とからなる海島構造を有し、電子顕微鏡により求めた島相間の平均距離が600nm以下であり、かつJIS K 7127に準拠して測定された23℃の引張弾性率が300〜2000MPaであることを特徴とする、表面保護フィルムが提供される。
本発明において、好ましくは、前記ゴム系粘着剤層が、ゴム系樹脂と、粘着付与樹脂とを含み、前記ゴム系樹脂がスチレン系エラストマーである。
以下、本発明の詳細を説明する。
(ポリオレフィン系基材)
本願発明者らは、ポリプロピレンにオレフィン系エラストマーを単にブレンドしてなるポリオレフィン系基材を用いただけでは、低温下における靱性を十分に高め得ないことがあることに鑑み、この問題を鋭意検討した結果、ポリプロピレン系成分に、オレフィン系エラストマーを単にブレンドするのではなく、該オレフィン系エラストマーを高度に分散させれば、特に、ある特定の密度以上にオレフィン系エラストマーを高度にかつ均一に分散させれば、低温における靱性をより一層確実に高め得ることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の特徴は、ポリプロピレン系成分からなる海相に、オレフィン系エラストマーからなる島相が分散されている海島構造を有し、しかも島相間の平均距離が600nm以下となるようにオレフィン系エラストマーが高度に分散されており、かつ23℃における引張弾性率が300〜2000MPaの範囲にあるフィルム基材を用いていることを特徴とし、それによって室温における弾性率が十分であるだけでなく、0℃もしくは0℃以下の低温における靱性が効果的に高められている。
本願出願前においては、前述した特許文献1〜4に記載のように、ポリプロピレンにオレフィン系エラストマーをブレンドしてなるポリオレフィン系基材は得られていたが、単にブレンドしていただけであるため、後述の実施例と比較例との比較からも明らかなように、低温下における靱性を十分に高め得ないことがあった。これに対して、本発明では、上記のように、島相間の平均距離が600nm以下とされているため、すなわちオレフィン系エラストマーが高度に分散されているので、低温下における靱性を確実に高め得ることが可能とされている。
上記ポリオレフィン系基材のJIS K 7127に準拠して測定された23℃の引張弾性率は、300〜2000MPaの範囲にあることが必要である。300MPa未満では、常温における引張弾性率が低く、ポリオレフィン系基材が僅かな外力で伸び、表面保護フィルムとしての被着体への貼付性能が低下する。2000MPaを超えると、引張弾性率が高くなりすぎ、曲面追従性が低下して浮きや剥離が発生して、やはり貼付作業が困難となる。
上記のように、本発明の表面保護フィルムのポリオレフィン系基材は、ポリプロピレン成分からなる海相と、オレフィン系エラストマーからなる島相とを有する。
上記ポリプロピレン成分は、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/または炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物からなる。炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、4−メチルー1−ペンテンなど任意のものが使用可能である。上記エチレンまたはα−オレフィンは1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
もっとも、本発明において、上記ポリプロピレン成分は、プロピレンに由来する単位が95質量%以上であるものをいうものとする。従って、上記エチレンまたはα−オレフィンなどのプロピレン以外の共重合成分の含有量は5質量%未満である。さらに好ましくは、上記プロピレン以外の共重合成分の割合は0.1〜3.5質量%である。エチレン及び/または炭素数4〜12のα−オレフィンの含有量が5質量%より多くなると、ポリオレフィン系基材の剛性及び耐熱性が低下するおそれがある。
上記ポリプロピレン成分は、例えば公知のチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン触媒を用い、公知の重合方法により製造され得る。上記ポリオレフィン系基材において、剛性及び耐熱性が特に要求される場合には、ポリプロピレン成分はプロピレン単独重合体であることが好ましい。また、耐衝撃性及び透明性が特に要求される場合には、ポリプロピレン成分は、プロピレンと、エチレン及び/またはα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
本発明において、ポリオレフィン系基材の島相を構成するオレフィン系エラストマーは、特に限定されるわけではないが、プロピレンと、エチレン及び/または炭素数4〜12のα−オレフィンとのオレフィン系エラストマーが好適に用いられる。上記炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどを挙げることができる。
上記オレフィン系エラストマーとは、好ましくは、プロピレンに由来する単位が50〜85質量%のものをいうものとする。より好ましくは、55〜85質量%、さらに好ましくは55〜80質量%である。プロピレンに由来する単位が85質量%を超えると、低温での耐衝撃性が不十分となり、50質量%未満では、機械的強度が極端に低下するおそれがある。
本発明に係るポリオレフィン系基材において、上記ポリプロピレン成分と、オレフィン系エラストマー成分との割合は、特に限定されないが、好ましくは、ポリプロピレン成分50〜90質量%に対し、オレフィン系エラストマー50〜10質量%の範囲とされる。オレフィン系エラストマーの割合が10質量%未満では耐衝撃性が劣ることがあり、50質量%を超えると、剛性や耐熱性が劣るおそれがある。オレフィン系エラストマーの割合は、好ましくは、10〜45質量%の範囲であり、さらに好ましくは15〜40質量%の範囲である。
上記ポリオレフィン系基材の厚みは、使用目的によっても異なるが、20〜100μmが好ましい。
(粘着剤組成物)
本発明に係る表面保護フィルムでは、上記ポリオレフィン系基材の片面にゴム系粘着剤層が積層されている。ゴム系粘着剤層は、ゴム系樹脂と、粘着付与樹脂とを好ましくは含む。上記ゴム系粘着剤層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、好ましくは、23℃で1×106Pa以下かつ70℃で2×105Pa以上である。
周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が、上記範囲外では、表面保護フィルムを被着体に仮着した場合、経時により、接着力が高くなりすぎ、剥離が困難となるおそれがある。また、塗装鋼板などの表面保護フィルムとして用いられた場合などにおいては、比較的高温下に長時間晒されるおそれがある。このような場合、粘着剤層の剪断貯蔵弾性率が23℃で1×106Paよりも高いと、被着体に気泡や皺が入った状態で仮着されると、フィルムの収縮応力が粘着剤層で緩和することができなくなる。そのため、粘着剤層が剥離部分の境界で塗膜を引き連れる状態となり、剥離後の塗膜表面に気泡や皺の跡が段差として残るおそれがある。
本発明に使用される上記ゴム系樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー;ポリイソブチレン(イソブチレンの重合体)、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンの共重合体を主成分とし、必要に応じて架橋性官能基をもったモノマーを共重合したものまたは変性したもの)、ポリブテン(1−ブテンの重合体)等のオレフィン系エラストマー;ポリクロロプレン;ニトリルゴムなどが挙げられ、これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。なかでも再剥離性、易成形性の点で、スチレン系エラストマーが好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体やスチレンイソブチレン系ブロック共重合体が例示でき、脂肪族性不飽和結合を有するものは水素添加したものが好ましい。スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算重量平均分子量で50,000〜400,000の範囲が好ましく、より好ましくは80,000〜200,000である。重量平均分子量が50,000未満では、粘着剤の凝集力が低下するため、再剥離時に被着体に糊残りが生じるおそれがある。400,000を超えると、粘着力が不足するとともに、流動性が悪くなるおそれがある。
上記粘着付与樹脂は、特に限定されず、好ましくは、上記ゴム系樹脂に添加された際に上記剪断貯蔵弾性率値を満足するものが用いられる。このような粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、アルキル・フェノール系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられ、なかでも、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂やテルペン系樹脂が、耐候性に優れているので好ましい。より具体的には、例えば、水素添加された脂環族系石油樹脂である、荒川化学社製、商品名:アルコンや、テルペン系樹脂であるヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロンなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記粘着付与樹脂は、ゴム系樹脂100重量部に対し、5〜70重量部の範囲で配合されることが好ましく、より好ましくは20〜50重量部である。5重量部未満では、上記剪断貯蔵弾性率が高くなりすぎることがあり、さらに被着体に対する粘着力が不足することがある。70重量部を超えると、粘着剤の凝集力が不足し、表面保護フィルムとして使用した後、被着体から剥離し難いことがあり、また剥離に際し、糊残りが生じるおそれがある。
本発明に係る表面保護フィルムでは、上記粘着剤層に、必要に応じて、粘着性能を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、接着昂進防止剤などが添加されてもよい。
紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の通常使用されるものが挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の通常使用されるものが挙げられる。接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
上記ゴム系粘着剤層の厚みは、使用目的によっても異なるが、3〜50μmの範囲が好ましい。
(表面保護フィルムの製造方法)
本発明に係る表面保護フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、ゴム系粘着剤層を構成する粘着剤組成物と、ポリオレフィン系基材を構成する組成物とを共押出することにより積層一体化する方法、あるいは成膜ささたポリオレフィン系基材上にゴム系粘着剤をラミネートし、積層一体化する方法などが挙げられる。
ポリオレフィン系基材とゴム系粘着剤とを共押出により積層一体化する方法としては、インフレーション法やTダイ法などの公知の方法が用いられ得る。ゴム系粘着剤をポリオレフィン系基材にラミネートする方法としては、粘着剤溶液を塗工する溶液塗工法、ドライラミネーション法、Tダイを用いた押出しコーティング法などが用いられる。これらの中でも、品質を高め、かつ経済的に製造し得るため、Tダイによる共押出法が好ましい。また、溶液塗工法の場合には、基材層と粘着剤層との間の接合強度を高めるために、ポリオレフィン系基材に予めプライマー塗布などの表面処理を施することが好ましい。
本発明に係る表面保護フィルムでは、ポリオレフィン系基材にゴム系粘着剤層が積層されている構成において、ポリオレフィン系基材が、ポリプロピレン成分からなる海相と、オレフィン系エラストマーからなる島相との海島構造を有し、該海島構造において、島相間の平均距離が600nm以下とされており、従ってオレフィン系エラストマーが高度に分散されている。そのため、0℃もしくは0℃以下の低温におけるポリオレフィン基材の靱性が効果的に高められている。よって、冬場などの低温下において、作業性に優れた表面保護フィルムを提供することができる。しかも、常温下におけるポリオレフィン系基材の引張弾性率が300〜2000MPaであるため、常温下においては、弾性率が十分高いため、被着体への貼付及び剥離も容易に行われ得る。
すなわち、本発明によれば、常温下における弾性率を高く維持したまま、低温での靱性に優れた表面保護フィルムを提供することができる。
ゴム系粘着剤層を構成しているゴム系樹脂がスチレン系エラストマーである場合には、加工性、耐候性に優れる表面保護フィルムとすることができる。
特に、ゴム系粘着剤層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が23℃で1×106Pa以下かつ70℃で2×10Pa以上である場合には、貼付に際し十分な接着力を発現し、かつ経時による接着力の上昇も生じ難いため、使用後に無理なく被着体から表面保護フィルムを剥離することが可能となる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体の水素添加物(クレイトンジャパン社製、品番:G1657)100重量部と、粘着付与樹脂(荒川化学社製、商品名:アルコンP125)20重量部とからなるゴム系粘着剤組成物を調製した。
他方、上記ゴム系粘着剤組成物と、ポリプロピレン系樹脂組成物(サンアロマー社製、品番:PB170A)とを、Tダイ法により共押出し、50μmの厚みのポリオレフィン系基材の片面に10μmの厚みのゴム系粘着剤層が積層一体化された表面保護フィルムを得た。なお、ポリオレフィン系基材として用いたポリプロピレン系樹脂組成物であるサンアロマー社製、品番:PB170Aは、ブロックポリプロピレンであり、このブロックポリプロピレン中のゴム含有量及び含まれているポリプロピレンの種類は、後述の方法で決定した。
(実施例2及び比較例1,2)
実施例1と同じゴム系粘着剤組成物を用い、但し、ポリオレフィン系基材を構成するためのポリプロピレン系樹脂組成物を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。
なお、実施例2では、ポリプロピレン系樹脂組成物は、表1から明らかなように、住友化学社製、FLX80E4(ホモポリプロピレン)70重量部と、サンアロマー社製、C200F(ブロックポリプロピレン)30重量部とを含む組成である。また、比較例1では、三井化学社製、J715(ブロックポリプロピレン)からなる。さらに、比較例2では、ポリプロピレン系樹脂組成物は、サンアロマー社製、PB270A(ブロックポリプロピレン)からなる。
上記実施例1,2及び比較例1,2において、上記ポリオレフィン系基材を構成している樹脂組成物におけるゴム含有量及びポリプロピレンの種類は、以下のように決定した。
ホモポリプロピレン:ペレットを四酸化ルテニウムにより染色した後、ミクロトームを用いて約0.05μmの厚さにスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EX II)を用いて約5000倍の倍率で写真撮影した場合に相分離構造が確認できないもので、かつJIS K 7121に準じてDSCを測定したときに融点が158℃以上のもの。
ブロックポリプロピレン:ペレットを四酸化ルテニウムにより染色した後、ミクロトームを用いて約0.05μmの厚さにスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EX II)を用いて約5000倍の倍率で写真撮影した場合に相分離構造が確認でき、かつJIS K 7121に準じてDSCを測定したときに融点が158℃以上のもの。
ランダムポリプロピレン:JIS K 7121に準じてDSCを測定したときに融点が150℃以下のもの。
ゴム含有量:ブロックポリプロピレンおよびランダムポリプロピレンのペレットを四酸化ルテニウム等により染色した後、ミクロトームを用いて約0.05μmの厚さにスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EX II)を用いて約5000倍の倍率で写真撮影した場合の相分離構造の面積比により求めた。
使用した基材のゴム含有量およびポリプロピレンの種類を下記の表2に示す。
(実施例1,2及び比較例1,2の評価)
上記のようにして得られた実施例1,2及び比較例1,2の表面保護フィルムについて、(1)フィルムの機械物性及び(2)オレフィン系エラストマーからなる島相間の距離を測定した。
(1)フィルムの機械物性
表面保護フィルムの押出し方向(MD)に平行にフィルムを切り出し、幅20mm×長さ250mmの試験片を得た。次に、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTA−500)を用い、JIS K 7127に準拠して室温(23℃)における表面保護フィルムの弾性率及び伸びを300mm/分の引張速度で測定した。次に、−20℃において、同様にして、引張弾性率及び伸びを引張速度300mm/分の条件で測定した。結果を下記の表1に示す。
(2)オレフィン系エラストマーからなる島相間の距離の測定
表面保護フィルムを四酸化ルテニウムにより染色した後、フィルムのMDと平行となるようにミクロトームを用いて、約0.05μmの厚みにフィルムをスライスし、スライスにより現れた断面を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EX II)を用い、約5000倍の倍率で写真撮影した。
図1は、実施例1で作製された表面保護フィルムのポリオレフィン系基材について、上記のようにして撮影された電子顕微鏡写真を示す。図1から明らかなように、ポリプロピレン系樹脂成分からなる海相中に、オレフィン系エラストマーからなる分散相すなわち島相が分散していることがわかる。写真の略中央の1点から任意に放射状に直線を描き、該直線上にある複数の島相において、隣り合う島相間の距離を測定した。上記直線を10本を描き、10本の直線上において求められた上記島相間の距離の総平均値を求めた。このようにして求められた総平均値を、オレフィン系エラストマー間の距離、すなわち島相間の距離とした。結果を下記の表1に示す。
表1から明らかなように、比較例1,2では、オレフィン系エラストマー間の距離、すなわち島相間の距離が1200nm以上と大きいため、−20℃における伸びが22%または54%と非常に小さかった。これに対して、実施例1,2では、島相間の距離は420または476nmと小さく、島相が高度に分散しているため、−20℃における伸びが300及び146%と高くなっていることがわかる。すなわち、常温(23℃)における弾性率が十分な大きさとされているだけでなく、低温下における伸びが大きく、低温下における靱性に優れていることがわかる。
実施例1で作製されたポリオレフィン系基材の断面において現れた海島構造を示す電子顕微鏡写真。

Claims (2)

  1. ポリオレフィン系基材にゴム系粘着剤層が積層されてなる表面保護フィルムであって、
    前記ポリオレフィン系基材が、ポリプロピレン成分からなる海相と、オレフィン系エラストマーからなる島相とからなる海島構造を有し、電子顕微鏡により求めた島相間の平均距離が600nm以下であり、かつJIS K 7127に準拠して測定された23℃の引張弾性率が300〜2000MPaであることを特徴とする、表面保護フィルム。
  2. 前記ゴム系粘着剤層が、ゴム系樹脂と、粘着付与樹脂とを含み、前記ゴム系樹脂がスチレン系エラストマーである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
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