JP4981270B2 - 表面保護フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、光学デバイスに用いられているプリズムシートのプリズム型のレンズ部の外表面を保護するための表面保護フィルムに関し、より詳細には、基材の一方面にゴム系樹脂成分からなる粘着層が積層されており、レンズ部へのゴミの付着や傷つきを防止するための表面保護フィルムに関する。
様々な被着体の表面を保護するために、シート状の基材の一方面に粘着層が積層されている表面保護フィルムが広く用いられている。他方、シートの一方面に実質的に3角柱状のプリズムが複数固定されたプリズムシートが様々な光学デバイスで用いられている。この種のプリズムシートにおいては、レンズの外表面を使用に先立ち保護する必要があった。従って、このような用途にも、上記表面保護フィルムが用いられていた。
ところで、上記プリズムシートの表面を保護するための表面保護フィルムでは、経時による接着力の上昇が大きいと、保護フィルムをプリズムシートのレンズ部表面から円滑に剥離することが困難となる。そのため、経時による接着力の上昇が大きなアクリル系粘着剤は用いられておらず、天然ゴム系粘着剤が主として用いられていた。
しかしながら、天然ゴム系粘着剤を用いた場合には、耐候性が十分でないという問題があった。
上記のように、従来の表面保護フィルムでは、プリズムシートのような突起物を有する被着体に対する保護機能及び接着性と、耐候性とを同時に満足させることはできなかった。しかも、上記プリズムシートのレンズ部は、通常、透明性に優れたアクリル樹脂やポリカーボネートなどからなるが、このような材質のプリズムシートのレンズ面に天然ゴム系粘着剤を用いた表面保護フィルムを適用した場合、多量の静電気を発生し、剥離した後にプリズム形成面に多量のほこりが付着して、適性な品質を保持できないおそれがあった。
下記の特許文献1では、天然ゴムに代えて、スチレン系エラストマーを主成分とする粘着層が用いられた表面保護フィルムが開示されており、それによって被着体に対する十分な保護機能及び接着特性と、耐候性とを同時に満たすことができると記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のスチレン系エラストマーを用いた粘着層をプリズムシートの表面保護に用いたとしても、剥離力は依然として大きく、プリズムシート表面から無理なく表面保護フィルムを剥離することは困難であった。
特開2001−234149号公報
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、シートの一面に複数の実質的に3角柱状のプリズムが固定されているプリズムシートのレンズ部の外表面を確実に保護することができ、経時による接着力の上昇をさほどまねくことなく、良好な接着性を維持し、さらに耐候性に優れ、しかも剥離力が小さい保護フィルムを提供することにある。
本発明によれば、シートと、実質的に3角柱からなるプリズム形状の複数のレンズ部とを有し、該複数のレンズ部が、前記3角柱の長さ方向に延びる1つの稜線が互いにほぼ平行となるように該稜線と対向されている側面において前記シートの一方面に固定されているプリズムシートの前記レンズ部の外表面に貼付される表面保護フィルムであって、ポリオレフィン基材にゴム系樹脂成分を主体とする粘着層が積層されており、前記ゴム系樹脂成分(1)がスチレン系重合体ブロック(A)と共役ジエン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、(2)スチレン系重合体ブロック(A)とスチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体、または(3)これらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーであり、前記スチレン系エラストマーの共役ジエンユニットの共役ジエン成分が、エチレン及びブチレンであり、エチレンとブチレンの比が0.6〜3の範囲にあり、前記粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が23℃において1×106Pa以下であり、かつ−20℃において5×106Pa以下であり、70℃で4×10 Pa以上であることを特徴とする、表面保護フィルムが提供される。
本発明に係る表面保護フィルムの他の特定の局面では、前記スチレン系エラストマーにおいて、スチレン系モノマー由来成分の含有割合が5〜20重量%の範囲である。
以下、本発明の詳細を説明する。
(プリズムシート)
本発明の表面保護フィルムが適用される被着体はプリズムシートである。プリズムシートとは、シートの一方面に複数の実質的に3角柱からなるプリズム形状のレンズが3角柱の長さ方向に延びる1つの稜線が外向きとなり、かつ互いに平行となるように1つの側面において固定されている構造を有する。このようなプリズムシートは、例えば液晶ディスプレーなどの光学装置に広く用いられている。
本発明が適用されるプリズムシートにおける上記シートを構成する材料は特に制限され ず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体のようなオレフィン極性モノマー共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの合成樹脂あるいは紙や綿などの天然物から作製される。これらの合成樹脂や天然物から作製される支持体は、単層状、積層状のいずれでも差し支えなく、これらの合成樹脂のブレンド物であっても差し支えない。
プリズムシートの製造方法としては、例えば、シート上に電磁線硬化型樹脂からなるレンズ部を形成する方法や、シートとレンズ部形成用熱可塑性樹脂をシート状に溶融押出した後、レンズ形状をエンボス賦型する方法が挙げられる。なお、後者の方法において、シートとレンズ部形成用樹脂の異同は問わない。
また、上記プリズム形状のレンズ部を構成する材料としては、透光性を有する樹脂、例えばアクリル系樹脂あるいはポリカーボネートなどからなるものを例示することができる。
プリズムシートのレンズ部は、実質的に3角柱からなるプリズム形状を有する。このプリズム形状のレンズ部の外表面が本発明の表面保護フィルムにより保護される。従って、本発明の表面保護フィルムは、シートに上記プリズム形成のレンズ部のシートに固定されている側面を隔てて、少なくとも残りの2つの側面に稜線を跨いで貼付される。
なお、3角柱のプリズム形状における側面とは、3角柱の長さ方向に延びる3つの側面をいうものとする。
本発明に係る表面保護フィルムが適用されるプリズムシートの実質的に3角柱の複数のプリズムにおいて隣り合うプリズムの中心距離は10〜1000μm程度であることが好ましく、より好ましくは10〜500μmである。また、3角柱の高さは各3角柱上のプリズム間のピッチ及び頂角で決定されることになる。
また、プリズムシートにおけるシートの厚みは、特に限定されないが、50〜1000μmの範囲が好ましい。50μm未満では、機械的強度が不足し、1000μmを超えると、光の透過性や軽量化及び薄型化に不利となるおそれがある。
(表面保護フィルムの構成)
本発明の表面保護フィルムでは、ポリオレフィン基材の一方面に、ゴム系樹脂成分からなる粘着層が積層されている。すなわち、本発明に係る表面保護フィルムは、片面に粘着層を有する粘着フィルムである。
一般に、平坦な面に粘着テープを貼付した場合の剥離力は−20℃付近の低温領域の弾性率を高めることにより低くなる。しかしながら、プリズムシートでは、複数のレンズ部が突起としてシートの片面に固定されている。このような被着体では、上述した一般的な場合とは異なり、意外にも粘着層が柔らかい場合に、剥離力が低くなることが本願発明者により見出された。すなわち、本発明は、このような新たな知見に基づくものである。
すなわち、−20℃における上記剪断貯蔵弾性率が5×106Paを超えると、剥離力が大きくなる。
そこで、本発明では、周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が23℃で1×106Pa以下、かつ−20℃で5×106Pa以下、70℃で4×105Pa以上とされている。上記周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率がこの範囲を逸脱すると、プリズムシートのレンズ面を保護するのに用いた場合、経時により浮きが生じたり、プリズムシートのレンズ面からの表面保護フィルムの剥離力が大きくなり過ぎたりする。また、70℃における剪断貯蔵弾性率が4×105Pa未満の場合には、経時による接着力の上昇が顕著に現れることとなる。
他方、23℃における上記剪断貯蔵弾性率が1×106Paを超えると、常温付近において硬くなり、粘着力が低下する結果、プリズム面との密着性が低下する。
本発明では、粘着層はゴム系樹脂成分からなり、該ゴム系樹脂成分は、スチレン系重合体ブロック(A)と共役ジエン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体、あるいはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーを用いて構成されている。
より具体的には、上記スチレン系エラストマーは下記の(1)〜(3)のスチレン系エラストマーである。
(1)スチレン系重合体ブロック(A)と、共役ジエン系共重合体ブロック(B)とのブロック共重合体を主骨格とするスチレン系エラストマー。例えば、A−B、A−B−A、(A−B)n、(A−B)nX。ただし、Xはカップリング剤の残基を示し、nは整数である。
(2)スチレン系重合体ブロック(A)と、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとのランダム共重合体ブロック(B’)とからなるブロック共重合体を主要骨格とするスチレン系エラストマー。(2−1)(A)と(B’)各1ブロックが結合したもの:A−B’ブロック共重合体、(2−2)スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーのうちスチレンが漸増するテーパーブロック(C)を含むもの:A−B’−Cブロック共重合体、(2−3)テーパーブロック(C)に代えてスチレン系重合体ブロック(A)を含むもの:A−B’−Aブロック共重合体、(2−4)これらの繰り返しやカップリングしたもの:(A−B’)n、(A−B’)nX、(A−B’−C)nX、(A−B’−A)nX。
(3)上記(1)、(2)のスチレン系エラストマーの水添物からなるスチレン系エラストマー。
上記A−B’を主要骨格とするブロック共重合体(水添物を含む)において、その構成成分であるスチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとの含有割合は、好ましくは、重量比で5:95〜20:80である。スチレンの含有量が、5重量%未満では粘着剤の凝集力が低下するため再剥離時に被着体に糊残りが生じることがあり、20重量%を超えると粘着剤の粘着力が不足して被着体への貼付が困難になることがある。
上記A−B’−Cを主要骨格とするブロック共重合体(水添物を含む)では、スチレンの含有量は、全モノマー中、ブロック(A)とブロック(C)とにおけるスチレンの結合含量は、3〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。ブロック(A)とブロック(C)におけるスチレンの結合含量が、3重量%未満では粘着剤の凝集力が低下するため再剥離時に被着体に糊残りが生じることがあり、50重量%を超えると粘着剤の粘着力が不足して被着体への貼付が困難になることがある。
上記(1)、(2)の水添物において、共役ジエン系重合体ブロック(B)と、上記スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとのランダム共重合体ブロック(B’)中の共役ジエン部分の二重結合の少なくとも80%が水素添加により飽和されていることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95〜100%である。水素添加の割合が80%未満では耐熱性や耐候性が劣下するおそれがある。
また、上記(1)及び(2)の水添物の平均分子量は、すなわち、スチレン−共役ジエン系炭化水素共重合体の水素添加物の重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算で50,000〜400,000が好ましく、より好ましくは80,000〜200,000である。重量平均分子量が、50,000未満では粘着剤の凝集力が低下するため再剥離時に被着体に糊残りが生じることがあり、400,000を超えると粘着力が不足すると共に流動性が悪くなるおそれがある。
上記スチレン系エラストマーの共役ジエン成分はエチレン、ブチレンであり、エチレンとブチレンのモル比(エチレン/ブチレン)が0.6〜3.0の範囲にある。エチレンとブチレンのモル比が0.6未満では得られるエラストマーのタックが高すぎるために、製造時のハンドリングが悪くなるおそれがある。エチレンとブチレンのモル比が3.0を超えると得られるスチレン系エラストマーの弾性率が高すぎるため、粘着剤として使用出来なくなるおそれがある。
また、本発明においては、上記粘着層には、粘着付与剤が好ましくは添加される。粘着付与剤を添加することにより、接着力を効果的に高めることができる。もっとも、粘着付与剤の使用量が多過ぎると、剥離力が低下し、糊残りが生じるおそれがあるため、プリズムシートを構成している材料や表面性状に応じ、粘着付与剤の配合割合は、スチレン系エラストマー100重量部に対し、40重量部以下とすることが望ましく、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下とすることが望ましい。
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルぺン系樹脂、テルぺンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物などの、一般的に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用できる。これら粘着付与剤は1種のみが用いられてもよくまたは2種以上併用されてもよい。
剥離性や耐候性などを高めるには、水添系の粘着付与剤が好ましい。なお、粘着付与剤としては、オレフィン樹脂とのブレンド物として市販されているものを使用することもできる。
本発明に係る表面保護フィルムの粘着層には、軟化剤が添加されてもよい。軟化剤を添加することにより、粘着層の接着力を高めることができる。軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエンやそれらの誘導体があげられる。前記誘導体としては、たとえば、片末端または両末端にOH基やCOOH基を有するものを例示でき、具体的には水添ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンモノオール、水添ポリイソプレンジオール、水添ポリイソプレンモノオールなどがあげられる。特に、被着体に対する接着性の向上を抑制する目的からは、水添ポリブタジエンや水添ポリイソプレン等のジエン系ポリマーの水添物やオレフィン系軟化剤等が好ましい。具体的には株式会社クラレ製の商品名「クラプレンLIR−200」等が入手可能である。これらの軟化剤は1種のみが用いられてもよくまたは2種以上含有されてもよい。
軟化剤の分子量は特に限定されない。もっとも、分子量が小さ過ぎると、粘着層から被着体側へ軟化剤が移行するおそれがあり、あるいは剥離力が大きくなるおそれがある。逆に、軟化剤の分子量が大きくなり過ぎると、接着力向上効果が低下するおそれがある。従って、軟化剤の数平均分子量は5000〜10万程度が好ましく、より好ましくは1万〜5万の範囲である。
軟化剤の添加量が多くなり過ぎると、高温下における糊残りが生じがちとなる。従って、軟化剤は、上記スチレン系エラストマー及び軟化剤の合計100重量部に対し、40重量部以下であることが好ましく、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
また、本発明の表面保護フィルムの粘着層には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着昂進防止剤などが挙げられる。上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の通常使用されるものが挙げられる。上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の通常使用されるものが挙げられる。上記接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
本発明に係る表面保護フィルムでは、ポリオレフィン基材に上記粘着剤組成物からなるゴム系粘着層を積層することにより得られる。
上記ポリオレフィン基材の材料としてのポリオレフィンは、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレンのホモポリマー、ランダム共重合体、ブロック共重合体等のオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリオレフィン基材の厚みは、プリズムシートのレンズ部を保護するのに十分な柔軟性を有するように構成されればよく、プリズムレンズの寸法及び表面性状によっても異なるが、20〜100μmの範囲が好ましく、他方、粘着層の厚みは3〜50μm程度とすることが望ましい。
本発明の表面保護フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、上記ポリオレフィン基材及び粘着層に用いられる材料を共押出することにより積層一体化する方法、予め成膜されたポリオレフィン基材の片面に粘着層をラミネートし、積層一体化する方法などが挙げられる。
ポリオレフィン基材と、粘着剤層とを共押出によって積層一体化する方法としては、インフレーション法、Tダイ法等の公知の方法が用いられ、粘着剤層を基材層上にラミネートする方法としては、粘着剤溶液を塗工する溶液塗工法、ドライラミネーション法、Tダイを用いた押出コーティング法等が用いられ得る。これらの中でも、Tダイ法による共押出が品質上、経済上から好ましい。なお、溶液塗工法の場合は、基材層と粘着剤層との間の接合強度を高めるために、基材に予めプライマー塗布等の表面処理をしておくことが好ましい。
本発明に係る表面保護フィルムは、上記プリズムシートのレンズ部の外表面に貼付される表面保護フィルムである。前述したように、プリズムシートのレンズ部に貼付される表面保護フィルムでは、一般の平坦な被着体に適用される粘着テープの場合とは異なり、−20℃付近の低温領域における弾性率を低めた場合に剥離力が低下する。すなわち、−20℃における剪断貯蔵弾性率が5×106Pa以下とされているため、本発明に係る表面保護フィルムは、プリズムシートに適用された際、剥離力が十分に小さくされており、従って糊残りを生じることなく、無理なく剥離することができる。また、23℃における剪断貯蔵弾性率が1×106Pa以下であるため、常温付近における弾性率が低いので、プズム面との十分な粘着力を確保することができる。
そして、上記ゴム系粘着層が、上述した特定のスチレン系エラストマーを用いて構成されているため、プリズムシートのレンズ面に十分な接着強度で貼付され得る。よって、本発明によれば、プリズムシートのレンズ面を確実に保護するように容易に貼付でき、かつ剥離に際して、糊残りを生じることなく無理なく剥離することが可能な表面保護フィルムを提供することができる。
また、上記10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が70℃で×105Pa以上であるため、経時による接着力の上昇をより効果的に抑制することができ、それによって、剥離をより一層生じさせることなく、無理なく表面保護フィルムをプリズムシートから剥離することができる。
スチレン系エラストマーにおいて、スチレン系モノマー由来成分の含有割合が5〜20重量%の範囲とされている場合には、プリズムシートから剥離する際の糊残りを確実に防止することができ、さらに、容易にかつ確実にプリズムシートのレンズ面に貼付することができる。
また、スチレン系エラストマーの共役ジエン成分が、エチレン及びブチレンであり、エチレンとブチレンとのモル比が0.6〜3の範囲とされているので、スチレン系エラストマーのタックが適度な値となり、製造時のハンドリングが容易となり、かつ該エラストマーの弾性率が適度な大きさとされ得るため、上記プリズムシートの表面保護に用いられる粘着層をより好適なものにすることができる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
下記の表1に示すように、スチレン−ブタジエン系共重合体の水素添加からなるスチレン系エラストマー(クレイトンポリマー社製、品番:G1657、エチレン−ブチレン比=2.6)100重量部に、粘着付与剤として荒川化学工業社製アルコンP−125を5重量部配合し、混練することにより粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物の剪断貯蔵弾性率を動的粘弾性スペクトル測定器(IT計測制御社製、品番:DVA200)により、周波数10Hz、昇温速度=6℃/分で−50℃〜+150℃の範囲で測定した。結果を下記の表1に示す。
他方、上記粘着剤組成物からなる粘着層と、ポリプロピレンからなる基材とを、Tダイ法により共押出し、40μmの厚みのポリプロピレン基材と、5μmの厚みの粘着層とが積層一体化された表面保護フィルムを作製した。この表面保護フィルムについて、下記の性能評価を行った。結果を下記の表1に示す。
1)初期粘着力(対プリズム面)
得られた表面保護フィルムを、プリズムシートのレンズ面を覆うように貼り付けた。プリズムシートとしては、レンズ部がアクリル樹脂からなり、シートが厚み150μmのポリエチレンテレフタレートからなり、3角柱形状のレンズ部の寸法が高さ23μm、幅50μmであるものを用意した。貼付に際しては5.9×105Paの圧力を表面保護フィルムの外側から加え、2m/分の速度で貼り付け、23℃±2℃の室内に30分間放置した。しかる後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅及び10cmにおける180度剥離強度(単位はN)を、プリズムの尾根に平行な方向に速度300mm/分及び30m/分でそれぞれ測定し、初期粘着力(対プリズム)とした。
2)初期粘着力(対フラット面)
得られた表面保護フィルムを、平坦なアクリル樹脂板に2kgのゴムローラーを用いて圧力5.9×105Pa及び速度2m/分の条件で貼り付け、23℃±2℃の室内に30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度(単位はN)を、30m/分の条件で測定し、初期粘着力(対フラット面)とした。
3)被着体の汚染の評価
1)の剥離強度測定に際し、剥離された後のプリズムシートのレンズ面の表面の汚染の有無を目視により観察した。
4)経時粘着力(対プリズム面)
得られた表面保護フィルムを、1)の初期粘着力評価に用いたプリズムシートの表面に2kgのゴムローラーを用いて圧力5.9×105Pa及び速度2m/分の条件で貼り付け、60℃±2℃の室内に1週間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を、30m/分で測定した。得られた180度剥離強度すなわち経時粘着力が、1)で測定された初期粘着力の2倍以下である場合に〇印を付し、2倍を超える場合×印を付した。
5)エチレン/ブタジエン比(E/B比)
スチレン−ブタジエン系共重合体の水素添加物10mgをクロロフォルムに溶解し、H−NMRを測定した。以下の式により、E/B比(モル比)を算出した。なお、S1.24とは、ケミカルシフト1.24ppmのピーク面積の積分値を示す。
1.4=S1.85+S1.42―S1.24×5/3―(S7.08+S6.54)×3/5
1.2=S0.82×8/3
E/B比=2×S1.4/S1.2
(実施例2,3及び比較例1,2)
使用した粘着剤及び粘着付与剤の配合割合を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、かつ表面保護フィルムを得、同様にして評価した。結果を下記の表1に示す。
Figure 0004981270
表1から明らかなように、周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が−20℃において5×106Paを超える比較例1,2では、プリズム面に対する接着力が高くなり過ぎ、剥離力が大きいことがわかる。特に、比較例1,2では、フラット面に対する接着力は、実施例2とほぼ同等であるにもかかわらず、プリズム面に対する接着力が非常に高くなり、しかも剥離力が経時により非常に大きくなることがわかる。
これに対して、実施例1〜3では、プリズム面に対する接着力が経時により高まらず、従って、プリズムシートから無理なく剥離し得ることがわかる。しかも、接着力自体も十分な大きさとされている。
よって、本発明によれば、プリズムシートのレンズを確実に保護し、良好な接着性を得るだけでなく、経時による所望でない接着力の昂進がされ難く、かつ剥離力が比較的低く、レンズ部から円滑にかつ糊残りを起こすことなく剥離し得る表面保護フィルムを提供し得ることがわかる。

Claims (2)

  1. シートと、実質的に3角柱からなるプリズム形状の複数のレンズ部とを有し、該複数の
    レンズ部が、前記3角柱の長さ方向に延びる1つの稜線が互いにほぼ平行となるように該
    稜線と対向されている側面において前記シートの一方面に固定されているプリズムシート
    の前記レンズ部の外表面に貼付される表面保護フィルムであって、
    ポリオレフィン基材にゴム系樹脂成分を主体とする粘着層が積層されており、前記ゴム
    系樹脂成分が(1)スチレン系重合体ブロック(A)と共役ジエン系重合体ブロック(B
    )とのブロック共重合体、(2)スチレン系重合体ブロック(A)とスチレン系モノマー
    と共役ジエン系モノマーとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体、
    または(3)これらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーであり、前記スチレ
    ン系エラストマーの共役ジエンユニットの共役ジエン成分が、エチレン及びブチレンであ
    り、エチレンとブチレンの比が0.6〜3の範囲にあり、
    前記粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が23℃において1×10Pa
    以下であり、かつ−20℃において5×10Pa以下であり、70℃で4×10Pa
    以上であることを特徴とする、表面保護フィルム。
  2. 前記スチレン系エラストマーにおいて、スチレン系モノマー由来成分の含有割合が5〜
    20重量%の範囲である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
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