JP2010006927A - 表面保護フィルム - Google Patents

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Katsunori Toyoshima
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Abstract

【課題】柔らかい粘着剤を使用した場合にも巻重体等とすることができ、基材の粘着層が設けられている側とは反対側の面に粘着層が粘着されても、基材の背面から粘着層を容易に剥離することができ、巻重体を無理なく展開することができる表面保護フィルムの提供。
【解決手段】ポリオレフィン系基材に、ゴム系樹脂成分(X)と粘着付与樹脂(Y)とを含む粘着層が積層されてなる表面保護フィルムであって、該粘着層の表面粗さRaが2〜8μmであり、表面突起間隔Smが25〜50μmであり、表面保護フィルムの粘着層が積層されていない側のポリオレフィン系基材の表面または最外層が摩擦処理されていることを特徴とする表面保護フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、被着体表面への塵埃の付着や被着体表面の傷つきを防止するのに用いられる表面保護フィルムに関し、より詳細には、柔らかい粘着剤を使用した場合にも巻重体等とすることができ、基材の粘着層が設けられている側とは反対側の面(以下、「基材の背面」と記すことがある。)に粘着層が粘着されても、基材の背面から粘着層を容易に剥離することができ、巻重体を無理なく展開することができる表面保護フィルムに関する。
なお、本発明でいう巻重体には、巻回体も包含され、また、表面保護フィルムには、表面保護粘着フィルム、表面保護(粘着)シートまたは表面保護(粘着)テープも包含される。
従来から、物品や部材を保護するために、表面保護フィルムが用いられている。表面保護フィルムは、例えば、合成樹脂板、化粧合板、塗装鋼板、銅板、ステンレス板などの金属板等の様々な被着体において、加工時及び運搬時にこれらの表面への汚れの付着や表面の傷つきを防止するために用いられている。この種の表面保護フィルムは、基材に粘着層が積層された構造を有する。
一般に、表面保護フィルムは、例えば、長尺状のフィルムをロール状に巻回した巻回体として工業的に製造されている。このような巻回体とした表面保護フィルムでは、巻回体を展開する際に必要な力(展開力)が小さいこと、すなわち巻回体の巻戻しが容易にできることが強く求められている。
これに対して、溶融共押出法によって製造される表面保護フィルムにおいて、展開力を下げるために、ポリエチレンからなる基材と粘着層とを積層した後、基材の背面(基材の粘着層積層側に対する反対面)を摩擦処理する方法が提案されている(特許文献1、2又は3参照。)。
一方、三層構造の最外層がポリエチレン系樹脂からなり、中間層としてポリプロピレン系樹脂を用いることにより、耐熱性、作業性に優れる自動車の塗装鋼板用の表面保護フィルムが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、柔らかい粘着剤を使用した場合には、展開力が高くなり、場合によっては使用に耐えないものになるという問題があった。
こうした状況下に、従来技術の問題点を解消した柔らかい粘着剤を使用したときでも展開力が小さい表面保護フィルムの研究開発が求められていた。
特許第2647189号公報 特許第2944249号公報 特許第2625275号公報 特開2001−121662号公報
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、柔らかい粘着剤を使用した場合にも巻重体等とすることができ、基材の粘着層が設けられている側とは反対側の面に粘着層が粘着されても、基材の背面から粘着層を容易に剥離することができ、巻重体を無理なく展開することができる表面保護フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、従来の表面保護フィルムについて鋭意研究した結果、従来の表面保護フィルムは、特に、柔らかい粘着剤を使用した場合に、巻重体として保管、移送される際に、内層の表面保護フィルムの基材背面に、外層の表面保護フィルムの粘着剤が強く粘着しがちであるため、巻重体を展開する際に、外層の表面保護フィルムが、内層の表面保護フィルムから容易に剥離しないこと、そして、これは、基材の背面と粘着剤との接着エネルギーが強いために剥離しにくい上に、基材の背面から粘着層を無理に剥離することによって、基材が変形し、この変形にエネルギーを多く消費するためであることを突き止めた。
そこで、基材の背面に長鎖脂肪酸変性物やシリコーン等の剥離剤を塗布し、基材の背面に対して粘着層が粘着し難くすることにより、巻重体の展開力を下げる方法を検討したが、この方法では、剥離剤の塗布、乾燥などの余計な工程を行うことが必要となった。さらに、基材の背面と剥離剤とのアンカー性を強化するために、基材の背面を表面処理する必要もあった。よって、表面保護フィルムの製造工程数が増加し、製造費用が嵩むという問題が生じた。
これに対して、特定の成分からなる表面層を基材とするとともに、特許文献1、特許文献2または特許文献3で記載されている処理を施すことによって、剥離剤の塗布などの余計な工程を行うことなく、基材の背面から容易に剥離することができ、巻重体を容易に展開力することができる表面フィルムを得ることを見出した。
さらに検討を重ねた結果、単層または多層からなるポリオレフィン系基材に粘着層が積層されてなる表面保護フィルムにおいて、特定の成分からなる粘着層の表面粗さRaおよび表面突起間隔Smを特定の範囲にし、粘着層が積層されていない側のポリオレフィン系基材の表面またはその上に形成された最外層を摩擦処理することにより、剥離剤の塗布などの余計な工程を行うことなく、基材の背面から容易に剥離することができ、巻重体を容易に展開することが知見を得、ことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリオレフィン系基材に、ゴム系樹脂成分(X)と粘着付与樹脂(Y)とを含む粘着層が積層されてなる表面保護フィルムであって、下記のイ)〜ニ)の要件を満たすことを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
イ)ポリオレフィン系基材は、単層または多層からなる。
ロ)ゴム系樹脂成分(X)は、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとオレフィンとのランダム共重合体ブロック(B2)とのブロック共重合体及び/またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマー(C)からなる。
ハ)粘着層の表面粗さRaが2〜8μm、且つ表面突起間隔Smが25〜50μmである。
ニ)粘着層が積層されていない側のポリオレフィン系基材の表面またはその上に形成された最外層は、摩擦処理されている。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ゴム系樹脂成分(X)は、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン重合体ブロック(B1)とのブロック共重合体からなるスチレン系エラストマーであることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、摩擦処理は、帆布による摩擦であることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、100mm幅の巻重体としたときの展開力が、12N以下であることを特徴とする表面保護フィルムが提供される。
本発明の表面保護フィルムによれば、粘着層の表面粗さRaが2〜8μmであり、且つ表面突起間隔Smが25〜50μmであり、表面保護フィルムの粘着層が積層されていない側のポリオレフィン系基材の表面または最外層が帆布等により摩擦処理されたものであるので、基材の粘着層が設けられている側とは反対側である背面に粘着層が粘着されても、基材の背面から粘着された表面保護フィルムを容易に剥離することができるという効果がある。
本発明の表面保護フィルムは、ポリオレフィン系基材に、ゴム系樹脂成分(X)と粘着付与樹脂(Y)とを含む粘着層が積層されてなる表面保護フィルムであって、下記のイ)〜二)の要件を満たすことを特徴とするものである。
イ)ポリオレフィン系基材は、単層または多層からなる。
ロ)ゴム系樹脂成分(X)は、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとオレフィンとのランダム共重合体ブロック(B2)とのブロック共重合体及び/またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマー(C)からなる。
ハ)粘着層の表面粗さRaが2〜8μmであり、且つ表面突起間隔Smが25〜50μmに調整されている。
二)粘着層が積層されていない側のポリオレフィン系基材の表面またはその上に形成された最外層は、摩擦処理されている。
以下、本発明の表面保護フィルムについて、詳細に説明する。
1.ポリオレフィン系基材
ポリオレフィン系基材は、単一のポリオレフィン系基材層からなるものであってもよく、多層構造のポリオレフィン系基材であってもよい。多層化した場合には、各ポリオレフィン系基材層に異なる機能を割り当てることができ、表面保護フィルムとして適切な機械的物性や他の性能を容易に実現することができ望ましい。
ポリオレフィン系基材の厚みは、使用目的によっても異なるが、通常、単層の場合はその層が、また、多層の場合は全ての層を合わせて、20〜100μmの範囲とすることが望ましい。20〜100μmの範囲にすることにより、接着及び剥離に際しての破損や引き裂きを効果的に抑制でき、かつ接着及び剥離に際してのハンドリング性を高めることができる。
単層のときのオレフィン系基材自体、または、多層のときの粘着層が積層されていない側のポリオレフィン系基材を最外層(i)といい、最外層(i)以外の層を形成する層を内層(ii)とも言う。各層について説明する。
(1)最外層(i)
最外層(i)において、ポリオレフィン系基材で用いるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの混合物から選ばれる樹脂成分から構成される。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖上低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のいずれでもよく、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン(ホモPP)、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)等幅広く用いることが出来る。
なお、最外層(i)には、この分野で通常配合される公知の様々な添加剤等を配合してもよい。
本発明の表面保護フィルムでは、粘着層と反対側の最外層(i)表面に、摩擦処理を施されることが必須となる。摩擦処理は、特に限定されず、例えば、特許文献1に記載された方法又はこれに準じた方法によって行うことができる。
これらの中では、帆布による摩擦であることが好ましい。また、バフ処理により行うことが好ましい。
この摩擦処理は、本発明において必須の処理であり、摩擦処理が無ければ有効な効果が得られない。このメカニズムに関しては発明者も未だ不明であるが、おそらく摩擦処理により表面の結晶構造が変わっているためだと考えている。
(2)内層(ii)
ポリオレフィン系基材が2層以上の多層のものである場合、粘着層が形成されていない面の最外層を形成する最外層(i)以外の層を形成する層である内層(ii)は、片面に粘着層が積層されており、特に限定されるものではない。
図1に、本発明の表面保護フィルムにおいて、ポリオレフィン系基材が多層である場合の一例の構成を模式断面図で示す。このような内層(ii)としては、ポリオレフィンとして、ポリプロピレン系やポリエチレン系などの一般的なポリオレフィンや、ポリオレフィンにオレフィン系エラストマーを混合したものなどを用いることができる。
なお、上記内層(ii)は、使用用途により任意の厚みが設定可能である。
内層(ii)は、物性に影響を与えない程度に、表面保護フィルムのリサイクル品を加えてもよい。リサイクル品としては、使用済みの表面保護フィルムの回収品でもよく、表面保護フィルムの生産時の耳端スリット品でもよい。例えば、表面保護フィルムのリサイクル品は、内層の全重量に対して、30%程度以下、さらに20%程度以下であることが適している。リサイクル品の含有量が多くなりすぎると、ポリオレフィン以外の成分が多量に含まれることとなり、所望の効果を十分発揮させることができなくなることがある。一方、リサイクル品を使用することで生産コストを削減でき、さらに層間密着力を高めることができる。
本発明においては、内層(ii)には、この分野で通常配合される公知の様々な添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、後述の粘着層に配合される添加剤の他、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、顔料などを挙げることができる。
特に、紫外線に晒されるような用途に使用する表面保護フィルムの場合には、内層(ii)に耐光剤が配合される。
内層(ii)に配合される耐光剤としては、紫外線遮蔽剤及び/または紫外線安定化剤が好ましく用いられる。
上記紫外線遮蔽剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数のものをブレンドして用いてもよい。なかでも、紫外線遮蔽性に優れるため、酸化チタンが特に好ましく用いられる。
上記紫外線安定化剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定化剤が挙げられる。これらは、1種のみが用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
上述した最外層(i)と内層(ii)とからなるポリオレフィン系基材は、引張弾性率が好ましくは400MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上である。これにより、長尺状の表面保護フィルムがロール状に巻回されて巻重体とされても、この巻重体が展開される際に、粘着層の粘着力によって基材が変形するのを抑制することができる。よって、基材の変形に消費されるエネルギーを少なくできるので、最外層の表面保護フィルムを内層の表面保護フィルムから容易に剥離することができ、巻重体を無理なく展開することができる。
一方、ポリオレフィン系基材が単層である場合も、多層である場合と同様の理由で、引張弾性率は、好ましくは400MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上である。
なお、最外層(i)及び内層(ii)を構成する材料として、結晶核剤を使用して、引張弾性率をより向上させることが好ましい。これにより、基材の変形をより抑制することができる。
2.粘着層
本発明において、粘着層は、ゴム系樹脂成分を主成分とする粘着剤組成物からなる。詳しくは、ゴム系樹脂成分(X)と粘着付与樹脂(Y)とを含有してなることが必要である。
本発明に係る表面保護フィルムの粘着層は、上記ポリオレフィン系基材の片面に積層されている。この粘着層は、スチレン系エラストマー(C)からなるゴム系樹脂成分(X)と、粘着付与樹脂(Y)とを含む。以下、ゴム系樹脂成分(X)と粘着付与樹脂(Y)、他の成分および粘着層の特性について説明する。
(1)ゴム系樹脂成分(X)
上記ゴム系樹脂成分(X)としてのスチレン系エラストマー(C)の一例は、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体である。また、別の一例は、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとオレフィンとのランダム共重合体ブロック(B2)とのブロック共重合体である。さらにまた、別の一例は、これらの共重合体の水添物を主骨格とするものである。
ここで、オレフィン系重合体ブロック(B)としては、イソブチレン重合体ブロック(B1)であってもよい。また、スチレンとオレフィンとのランダム共重合体ブロック(B2)としては、耐久性の理由により、スチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B2)であることが好ましい。
言い換えれば、スチレン系エラストマー(C)は、下記の1)及び2)、3)のスチレン系エラストマーであることが好ましい。
1)スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン重合体ブロック(B1)とのブロック共重合体を主骨格とするスチレン系エラストマー。このスチレン系エラストマーとしては、(A)−(B1)ブロック共重合体を主骨格とする限り、特に限定されず、例えばA−B1、A−B1−A、(A−B1)または(A−B1)Xなどで表わされる共重合体が挙げられる。なお、Xはカップリング剤に由来する残基である。
2)スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B2)とからなるブロック共重合体を主要骨格とするスチレン系エラストマー。このようなスチレン系エラストマーとしては、下記の(2−1)〜(2−4)が挙げられる。
(2−1)ブロック(A)とブロック(B2)とが結合したもの:A−B2ブロック共重合体
(2−2)スチレンとイソブチレンの内スチレンが漸増するテーパーブロック(D)を含むもの:A−B2−Dブロック共重合体
(2−3)上記テーパーブロック(D)に代えてスチレン系重合体ブロック(A)を含むもの:A−B2−Aブロック共重合体
(2−4)(2−1)〜(2−3)の繰り返しやこれらが任意の割合で結合したもの:(A−B2)、(A−B2)X、(A−B2−D)X、(A−B2−A)Xなど。
上記2)のスチレン系エラストマー(C)においては、構成成分であるスチレンと、イソブチレンとの含有割合は、重量比で5対95〜60対40の範囲が好ましく、より好ましくは7対93〜40対60である。スチレンの含有割合が5重量%未満では、粘着剤の凝集力が低下し、被着体から剥離する際に被着体に糊残りが生じるおそれがあり、60重量%を超えると、粘着力が不足し、被着体に対する貼付が困難となることがある。
2)のスチレン系エラストマー(C)において、ブロック(D)を含む構成においては、スチレン系エラストマーを構成している全モノマー構成中のブロック(A)におけるスチレン含有量とブロック(D)におけるスチレン含有量との合計であるスチレン含有割合の合計は3〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。ブロック(A)及びブロック(D)のスチレンの合計の含有割合が全モノマー中3重量%未満では、粘着剤の凝集力が低下し、被着体からの剥離に際し糊残りが生じるおそれがあり、50重量%を超えると、粘着剤の粘着力が不足し、被着体への貼付が困難となるおそれがある。上記ブロック(A)中のスチレンのスチレン系エラストマー(C)を構成している全モノマー中の割合は、3重量%以上が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。
また、本発明のスチレン系エラストマー(C)は、基材との密着性を上げる目的で、一部変性等を行っても良い。
スチレン系エラストマー(C)のGPCにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、30000〜400000の範囲が好ましく、より好ましくは50000〜200000である。30000未満では、粘着剤の凝集力が低下し、被着体からの剥離に際し糊残りが生じることがあり、400000を超えると、粘着力が不足し、かつ流動性が悪化しがちとなる。
(2)粘着付与樹脂(Y)
また、上記粘着層には、上記スチレン系エラストマー(C)からなるゴム系樹脂成分(X)に加えて、さらに粘着付与樹脂(Y)が配合されている。
具体的な粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、アルキル・フェノール系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、ロジン系樹脂、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、トール油、天然油、液状ポリイソブチレン樹脂等が挙げられる。具体的には脂環族系石油樹脂として荒川化学社製、商品名:アルコン、テルペン系樹脂としてヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロン、パラフィン系プロセスオイルとして出光興産社製、商品名:ダイアナプロセスオイル、液状ポリイソブチレン樹脂としてBASF社製、商品名:グリソパールなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記粘着付与樹脂は、スチレン系エラストマー(C)100重量部に対し、5〜70重量部の範囲で配合されることが好ましく、より好ましくは20〜50重量部である。5重量部未満では、下記で説明する剪断貯蔵弾性率が高くなりすぎることがあり、さらに被着体に対する粘着力が不足することがある。70重量部を超えると、粘着剤の凝集力が不足し、表面保護フィルムとして使用した後、被着体から剥離し難いことがあり、また剥離に際し、糊残りが生じるおそれがある。
(3)その他の成分
本発明に係る表面保護フィルムの粘着層には、必要に応じて、粘着性能を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、接着昂進防止剤、軟化剤、充填剤などが添加されてもよい。
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の通常使用されるものが挙げられる。上記光安定化剤としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の通常使用されるものが挙げられる。上記接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
(4)粘着層の特性
本発明の粘着剤層は、その表面粗さRaが2〜8μmであり、好ましくは3〜7μmであり、表面突起間隔Smが25〜50μmであり、好ましくは35〜45μmである。Raが2μm未満であるとSmが目標とする範囲内にあっても巻重体を展開する時に困難でとなり、又Raが8μmを超えると被着体に貼り付けした際に粘着力が弱くなり貼り付けた後に浮きが生じてしまう。また、Smが25μm未満であると展開力の低減効果が薄く、45μmを超えると被着体に対する粘着力が発現し難く浮きが発生する。
なお、Ra、Smは、実施例記載の方法により測定される値である。
上記Ra、Smを有する粘着剤は、賦形ロールによる形状付けや凹凸形状を有するフィルムに粘着剤溶液を塗工し得る事が可能である。
さらに、粘着層は、周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が、23℃で1×10Pa以下が好ましい。剪断貯蔵弾性率がこの範囲以外の場合には、粘着力不足により輸送中に表面保護フィルムが被着体から剥離したり、剥離工程における作業性が悪くなったりするおそれがある。
なお、剪断貯蔵弾性率は、動的粘弾性スペクトル測定装置(IT計測制御社製、品番:DVA200)により、周波数10Hz、昇温速度6℃/分で−50℃〜+150℃の範囲で測定し、23℃おいて求めた値である。
粘着層の厚みは、特に限定されないが、3〜50μmの範囲が望ましい。3μm未満の場合では、粘着力不足となることがあり、50μmを超えると、コスト的に不利となる。
3.表面保護フィルムの製造方法
本発明の表面保護フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層を構成する粘着剤組成物と、ポリオレフィン系基材を構成する組成物とを共押出することにより積層一体化する方法、あるいは成膜されたポリオレフィン系基材上に粘着剤組成物をラミネートし、積層一体化する方法などが挙げられる。
ポリオレフィン系基材と粘着剤組成物とを共押出により積層一体化する方法としては、インフレーション法やTダイ法などの公知の方法が用いられ得る。粘着剤組成物をポリオレフィン系基材にラミネートする方法としては、粘着剤溶液を塗工する溶液塗工法、ドライラミネーション法、Tダイを用いた押出コーティング法などが用いられる。これらの中でも、品質を高めることができ、かつ経済的に製造し得るため、Tダイによる共押出法が好ましい。また、溶液塗工法が行われる場合には、基材層と粘着剤層との間の接合強度を高めるために、ポリオレフィン系基材に予めプライマー塗布などし、表面処理を施すことが好ましい。
また、多層構造のポリオレフィン系基材についても、予め各ポリオレフィン系基材層を構成する組成物を上記粘着剤組成物とともに共押出し、積層一体化する方法、あるいは、予め多層構造のポリオレフィン系基材を作製した後に、粘着層を構成する粘着剤組成物をポリオレフィン系基材に塗工する方法を用いればよい。
4.表面保護フィルムの展開力
本発明に係る表面保護フィルムは、好ましくは、100mm幅の巻重体を0.3m/分の速度で巻き戻したときに要する力(展開力)が12N以下である。更に好ましくは、10N以下である。12Nを超えると巻重体の幅が1000mmを超えた場合、引出作業性が悪くなる可能性がある。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価方法、樹脂材料は以下の通りである。
1.評価方法
(1)表面粗さ(Ra、Sm)
次の装置、条件で測定した。
装置名:サーフコム1400D(東京精密製)
探針:2μmR ダイヤモンド
測定力:0.75mN
測定長:2.4mm
(2)初期粘着力
得られた表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(ガラス転移点が60℃のアルキッド・メラミン塗膜を有する鋼板、表面グロス80%)に、それぞれ2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付け、その状態で30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期粘着力とした。
(3)初期剥離力
得られた表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(ガラス転移点が60℃のアルキッド・メラミン塗膜を有する鋼板、表面グロス80%)に、それぞれ2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付け、その状態で30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を30m/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期剥離力とした。
(4)50℃1週間後粘着力
得られた表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(ガラス転移点が60℃のアルキッド・メラミン塗膜を有する鋼板、表面グロス80%)に、それぞれ2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付け、その状態で50℃の環境下に1週間間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を30m/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を50℃1週間後粘着力とした。
(5)展開力
実施例及び比較例の各表面保護フィルムの100mm幅の巻重体を0.3m/分、20m/分の速度で巻き戻したときに要する力を測定し、展開力を求めた。
(6)浮き
上記(4)で得られた粘着力測定前のサンプルで浮きの有無を目視観察した。
2.使用した材料
(1)ゴム系樹脂成分(X)(スチレン系エラストマー)
SIBS;カネカ社製、品番:シブスター 102T、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体(Mw約100000、全モノマー中のスチレン含有割合14重量%)
SEBS;旭化成社製、品番:タフテック H1052、スチレンとエチレン・ブチレンのブロック共重合体(全モノマー中のスチレン含有割合20重量%)
(2)粘着付与樹脂(Y)
PA;神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC PA95(重量平均分子量 400)
アルコンP125;荒川化学社製、水添石油樹脂
(3)ポリオレフィン系基材用材料
FL4;日本ポリプロ社製ポリプロピレン
M12;プライムポリマー社製ポリエチレン(LDPE)
QT4125;旭化成社製ポリエチレン(HDPE)
(実施例1)
粘着層に、スチレン系エラストマーとして、SIBS(カネカ社製 SIBS、品番:シブスター 102T)100重量部と、粘着付与樹脂としてのパラフィン系プロセスオイル(PA95)を20重量部を含む粘着剤組成物を用い、最外層に、M12を用い、内層にFL4を用い、Tダイ法によりT=220℃で共押出し、最外層5μm、内層35μmの厚み50μmのポリオレフィン基材上に10μmの厚みのゴム系粘着剤層が積層された表面保護フィルムを得た。
得られた表面保護フィルムの最外層表面を、帆布を用いたバフによるバフ処理にて研磨後、内径3インチの紙芯に巻き取り、表面保護フィルムの巻重体を得た。得られた表面保護フィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例2〜3及び比較例1〜4)
使用したゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂の種類および配合割合、並びに摩擦処理の有無を表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 2010006927
表1の評価結果から、実施例と発明特定事項を満たさない比較例とを比べた結果、実施例1〜3による表面保護フィルムは、粘着力、剥離力及び展開力のすべてが良好であり、柔らかい粘着剤を使用した場合にも巻重体等とすることができ、基材の粘着層が設けられている側とは反対側の面に粘着層が粘着されても、基材の背面から粘着層を容易に剥離することができ、巻重体を無理なく展開することができる表面保護フィルムであることが確認できた。
本発明の表面保護フィルムは、柔らかい粘着剤を使用した場合にも巻重体等とすることができ、基材の粘着層が設けられている側とは反対側の面に粘着層が粘着されても、基材の背面から粘着層を容易に剥離することができ、巻重体を無理なく展開することができる表面保護フィルムであるため、特に、被着体表面への塵埃の付着や被着体表面の傷つきを防止するのに用いられる、巻重体として提供される表面保護フィルムとして好適である。
本発明の表面保護フィルムにおいて、ポリオレフィン系基材が多層である場合の一例の構成を示す模式断面図である。

Claims (4)

  1. ポリオレフィン系基材に、ゴム系樹脂成分(X)と粘着付与樹脂(Y)とを含む粘着層が積層されてなる表面保護フィルムであって、下記のイ)〜ニ)の要件を満たすことを特徴とする表面保護フィルム。
    イ)ポリオレフィン系基材は、単層または多層からなる。
    ロ)ゴム系樹脂成分(X)は、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとオレフィンとのランダム共重合体ブロック(B2)とのブロック共重合体及び/またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマー(C)からなる。
    ハ)粘着層の表面粗さRaが2〜8μm、且つ表面突起間隔Smが25〜50μmである。
    ニ)粘着層が積層されていない側のポリオレフィン系基材の表面またはその上に形成された最外層は、摩擦処理されている。
  2. ゴム系樹脂成分(X)は、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン重合体ブロック(B1)とのブロック共重合体からなるスチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
  3. 摩擦処理は、帆布による摩擦であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
  4. 100mm幅の巻重体としたときの展開力が、12N以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
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