以下、図面を参照して本願発明にかかる第1〜第3実施形態について順に説明するが、各実施形態のプーリ機構は、いずれも車両の駆動源であるエンジン(原動機)に接続されたベルト式無段変速機(以下、「CVT」という。)のバリエータに適用されるものとする。
〔1.第1実施形態〕
〔1−1.構成〕
まず、図1,図2を参照して第1実施形態にかかるプーリ機構について説明する。
本実施形態にかかるプーリ機構は、図1(a)に示すように、プライマリプーリ(第1プーリ)10と、セカンダリプーリ(第2プーリ)20と、プライマリプーリ10の動力をセカンダリプーリ20へ伝達する断面V字形状のベルト(動力伝達部材)30とを有し、後述のオイルポンプ40と共にCVTのバリエータ1を構成している。
プライマリプーリ10及びセカンダリプーリ20は、いずれも、軸方向に固定された固定プーリ11,21と、軸方向に可動の可動プーリ12,22と、を有している。
固定プーリ11,21にはシーブ面11a,21aが形成され、可動プーリ12,22にはシーブ面12a,22aが形成され、互いに対向するシーブ面11aとシーブ面12a及びシーブ面12aとシーブ面22aは、断面V字形状のV溝13,23を形成している。
可動プーリ12,22は、固定プーリ11,21に接近する方向に油圧により加圧され、シーブ面11a,12a間及びシーブ面21a,22a間でベルト30を挟圧し、シーブ面11a,12a及びシーブ面21a,22aとベルト30とが必要な摩擦力で接触する。
油圧調整により可動プーリ12,22を軸方向に移動させることにより、固定プーリ11,21のシーブ面11a,21aと可動プーリ12,22のシーブ面12a,22aとの距離が変更され、V溝13,23の溝幅が変更される。
セカンダリプーリ20のV溝23の溝幅を減少しプライマリプーリ10のV溝13の溝幅を増大すれば変速比はロー側に変更され、セカンダリプーリ20のV溝23の溝幅を増大しプライマリプーリ10のV溝13の溝幅を減少すれば変速比はハイ側に変更される。
可動プーリ12,22の隣(背部)にはプライマリ軸10A,20Aに固設されたプランジャ隔壁14a,24aが設けられ、可動プーリ12,22とプランジャ隔壁14a,24aでと区画されて油室14,24が形成される。
油室14,24には、オイルポンプ40で加圧された作動油が油圧制御装置41を通じて供給され、油室14,24内の油圧がプライマリプーリ10及びセカンダリプーリ20の可動プーリ12,22に加わる。
なお、ここでは、このオイルポンプ40にエンジン(図示略)で駆動されるメカポンプが適用されるが、オイルポンプ40には電動ポンプ等の他の種類のものを適用してもよい。
また、本プーリ機構には、回転しながらその軸心(回転中心軸線)C3と交差する方向[ここでは、軸心(回転中心軸線)C3に対して直角又は略直角の方向]に潤滑油を吐出し、周囲のプライマリプーリ10、セカンダリプーリ20及びベルト30へ向けて潤滑油を吐出する潤滑油吐出部材として潤滑油供給管50が装備されている。
つまり、プライマリプーリ10とセカンダリプーリ20との間に、潤滑油供給管50が、その軸心C3をプライマリプーリ10の軸心(プライマリ軸心)C1及びセカンダリプーリ20の軸心(セカンダリ軸心)C2と平行に向けて配置されている。
潤滑油供給管50は、一端部(基端部)をトランスミッションケース2に、他端部(先端部)をサイドカバー3に、それぞれベアリング61,62を介して回転自在に支持されている。
潤滑油供給管50の軸心部には、基端部から中間部に亘って油通路51が形成され、トランスミッションケース2には、油通路51と連通する油通路52が形成されている。
潤滑油供給管50の基端部とトランスミッションケース2との間の油通路51,52を接続する箇所には、図示しないシール機構が装備されこの接続部をシールしている。
なお、トランスミッションケース2に形成された油通路52は、図示しない油路及び油圧制御装置41を通じてオイルポンプ40に接続されており、オイルポンプ40で加圧された作動油が潤滑油として油通路52に供給される。
潤滑油供給管50の中間部であって、プライマリプーリ10及びセカンダリプーリ20のV溝13,23に対応した箇所には、径を拡大された拡径部53が形成されており、図1(b)に示すように、この拡径部53に潤滑油吐出口54が形成されている。
潤滑油吐出口54は、図1(b),図1(c)に示すように、潤滑油供給管50の軸心C3を通る直径線を中心に油通路51の先端から潤滑油供給管50の径方向、即ち、潤滑油供給管50の軸心C3に対して直角又は略直角の方向に向けて延びて、拡径部53の外周面に開口している。
本実施形態では、2つの潤滑油吐出口54が、互いに180度位相をずらせて逆方向に向けて開口して形成されている。
なお、本実施形態では、潤滑油供給管50を、その中間部に拡径部53が形成され且つその基端部から中間部に亘って油通路51が形成された一部材で構成しているが、潤滑油供給管50は、その中間部を構成する拡径部材と、油通路51が形成された中空の基端部側部材と、中実の先端部側部材とに分割でき、これらを適宜別部材で分割形成して結合しても良い。
さらに、潤滑油供給管50の拡径部53に隣接しプライマリプーリ10の固定プーリ11の外周に対応した箇所には、潤滑油供給管50と同一軸心上に配置されたギア(第2歯車部)55が装備されている。
一方、プライマリプーリ10の固定プーリ11の外周には、プライマリプーリ10と同一軸心上に配置されてギア(第1歯車部)15が形成されている。
潤滑油供給管50のギア55は、プライマリプーリ10の固定プーリ11のギア15と噛合しており、ギア対15,55を通じてプライマリプーリ10の回転が潤滑油供給管50に伝達されプライマリプーリ10と連動して潤滑油供給管50も回転する。
なお、潤滑油供給管50のギア55は固定プーリ11のギア15よりも小径であり、固定プーリ11の回転速度が増加されて潤滑油供給管50へ伝達されるようになっている。
〔1−2.作用,効果〕
本実施形態にかかるプーリ機構としてのバリエータ1は上述のように構成されているので、バリエータ1の作動中には、図2に示すように、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油(作動油)が、プライマリプーリ10,セカンダリプーリ20及びベルト30へ向けて飛散する。
このとき、オイルポンプ40で加圧された潤滑油は、油圧制御装置41,油通路52を通じて潤滑油供給管50の内部の油通路51に供給されるが、潤滑油供給管50が回転するため、潤滑油吐出口54からその軸心C3に対して直角又は略直角の方向に向けて吐出される際に、潤滑油は遠心力を受ける。
したがって、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油には、油通路51内の潤滑油の静圧が変化する動圧に、潤滑油供給管50が回転することにより潤滑油吐出口54で受ける遠心力による動圧が加わり、この遠心力による動圧分だけ高圧の潤滑油圧となり、飛散しながら遠方まで到達する。
潤滑油吐出口54は潤滑油供給管50と共に回転しながら、潤滑油を遠方まで飛散させるので、プライマリプーリ10,セカンダリプーリ20のV溝13,23とベルト30とが摩擦接触を開始する部分(接触開始点)P1,P2などの最も発熱し易く潤滑油の要求が高い部分を含むバリエータ1内の各所に潤滑油が行き渡り、潤滑油により効果的に潤滑,冷却される。
一般に、プライマリプーリ10へ入力するエンジンの回転速度が高くなるほどバリエータ1の動力伝達負荷は高まり、ベルト30がプーリ10,20と摩擦接触する部分は発熱し易く、潤滑油による冷却が要求される。
これに対し、潤滑油供給管50はプライマリプーリ10の固定プーリ11によりプライマリプーリ10と比例した回転速度で駆動されるため、エンジンの回転速度が高くなるほど高速で潤滑油供給管50は回転し、遠心力による動圧分が増大する。
この結果、潤滑油をより遠方まで飛散させることができ、バリエータ1内の各所への潤滑油供給が促進され、潤滑油による発熱部の冷却が促進される。
例えば、オイルポンプ40が比較的小型で低容量のものであったり、オイルポンプ40のポンプ油圧を様々な個所に用いたりして、ベルト30とプーリ10,20との接触部分に潤滑油を十分に供給することが困難な場合であっても、遠心力を利用して潤滑油の供給が促進されるため、要求箇所に必要量の潤滑油を供給することが可能になる。
したがって、オイルポンプ40に比較的小型で低容量のものを適用することが可能になり、オイルポンプ40の軽量化やコスト削減を図ることもできる。
また、オイルポンプ40がエンジン駆動のメカポンプの場合、エンジンの低速回転時にはオイルポンプ40の吐出圧が低下し潤滑油の到達距離が低下するが、吐出時の遠心力により潤滑油の到達距離の低下が抑制されるため潤滑油を要求個所まで到達させることも可能になる。
特に、エンジンの低速回転時には、プライマリプーリ10の回転速度が低くはなるものの、潤滑油供給管50のギア55は固定プーリ11のギア15よりも小径なので、固定プーリ11の回転速度がギア対15,55を経て増速されて潤滑油供給管50へ伝達されるため、吐出される潤滑油に加わる遠心力を十分に確保でき、要求個所まで潤滑油を到達させることも可能になる。
〔2.第2実施形態〕
〔2−1.構成〕
次に、図3を参照して第2実施形態にかかるプーリ機構について説明するが、図3において図1と同符号は同様なものを示し、これらについては説明を省略又は簡略化する。
本実施形態にかかるプーリ機構は、図3に示すように、第1実施形態と同様に、プライマリプーリ(第1プーリ)10と、セカンダリプーリ(第2プーリ)20と、プライマリプーリ10の動力をセカンダリプーリ20へ伝達する断面V字形状のベルト(動力伝達部材)30とを有し、オイルポンプ40と共にCVTのバリエータ1を構成している。
本実施形態にかかるプーリ機構は、潤滑油供給管50を回転駆動する構成が、第1実施形態と異なっているが、この点を除いては第1実施形態と同様に構成されている。
第1実施形態ではギア対15,55を通じてプライマリプーリ10により潤滑油供給管50を回転駆動するが、本実施形態ではモータ70により潤滑油供給管50を回転駆動する。
つまり、潤滑油供給管50の先端部を、ベアリング61,62を介して回転自在に支持するサイドカバー3には、モータ70が装備され、モータ70の回転軸が潤滑油供給管50の先端部に結合されている。
モータ70は図示しない制御装置によって作動を制御される電動モータであって、ここでは指定した回転方向位置で停止させることが可能な位置制御付きモータが採用されているが、モータ70は油圧モータなど他の種類のモータでもよく、また、位置制御付きのものでなくても良い。
ここでは、制御装置は、オイルポンプ40で吐出されるポンプ油圧が十分に高い場合には、潤滑油吐出口54を、潤滑油がターゲットポイントに到達するような回転位相(回転方向位置)にした状態でモータ70を停止させる。
これは、ポンプ油圧が十分に高いと、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油に遠心力を加えなくても高い潤滑油圧によって潤滑油を必要個所まで到達させることができるからであり、この場合には、単に到達距離を確保するだけでなく、必要個所に集中的に潤滑油を供給することが効率的であるためである。
また、オイルポンプ40のポンプ油圧はエンジン回転速度に相関するので、エンジン回転速度[或いは、これに対応するプライマリ軸10Aの回転速度(プライマリ軸回転速度)]が予め設定した基準速度以上であれば、潤滑油の吐出圧は十分に高く、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油が必要個所まで到達するものと判定することができる。
そして、図2に示すように、接触開始点P1,P2などで最も発熱し易く潤滑油要求が高いため、この接触開始点P1,P2等をターゲットポイントにして集中的に潤滑油を供給すれば、潤滑油のトータルの吐出量を抑えながら必要な潤滑や冷却を確実に行なえ効率的である。
ただし、接触開始点P1,P2等の発熱し易く潤滑油要求が高い個所は、変速比を変更すると移動するので、変速比に応じて接触開始点P1,P2等を把握することが必要になる。
そこで、制御装置は、エンジン回転速度が基準速度以上であるか否かを判定し、エンジン回転速度が基準速度以上であれば、その時の変速比の状態から潤滑油を供給するターゲットポイントを求め、潤滑油吐出口54から吐出した潤滑油がターゲットポイントに到達するような潤滑油吐出口54の回転位相(回転方向位置)でモータ70を停止させその回転位相を保持する(図2の白矢印参照)。
一方、制御装置は、エンジン回転速度が基準速度未満であれば、オイルポンプ40からの潤滑油の吐出圧が十分ではなく、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油が必要個所まで到達しないので、モータ70を作動させて潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油に遠心力を加えて吐出圧を増加させ、潤滑油を必要個所まで到達させる。
また、本実施形態では、制御装置は、モータ70の回転作動させる際には、例えばエンジンの負荷状態などの潤滑油の要求度合いに応じてモータ70の回転速度を制御する。
つまり、モータ70の回転速度を高めると、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油により大きな遠心力を加えることができ、遠心力を大きくすると潤滑油吐出口54からの潤滑油の吐出圧が高まり潤滑油をより確実に遠方まで到達させることができる。
エンジン回転速度は低いがエンジンの負荷が高い場合、ターゲットポイント等により確実に潤滑油を到達させたいため、制御装置は、エンジン回転速度が基準速度未満でモータ70を回転させる場合、エンジンの負荷(例えば、アクセル開度)を予め設定した基準値と比較して、エンジン負荷が基準値以上(アクセル開度が基準開度以上)ならモータ70の回転速度を高めるようにしている。
〔2−2.作用,効果〕
本実施形態にかかるプーリ機構としてのバリエータ1は上述のように構成されているので、必要に応じてモータ70を作動させて潤滑油吐出口54を潤滑油供給管50と共に回転させながら潤滑油を吐出させるため、潤滑油を遠方まで飛散させることができ、ベルト30の摩擦接触部分に潤滑油を到達させることができる。
つまり、エンジン回転速度が基準速度以上の場合、オイルポンプ40からの潤滑油の吐出圧が十分ありこの吐出圧だけで必要個所まで潤滑油が到達するので、吐出した潤滑油が接触開始点P1,P2(図2)等のターゲットポイントに到達するような潤滑油吐出口54の回転位相(回転方向位置)状態でモータ70を停止させその回転位相を保持する。
エンジン回転速度が基準速度以上の高速回転状態の場合、接触開始点P1,P2などで最も発熱し易く、こうした箇所では潤滑や冷却の要求が特に強まるが、これらの箇所に集中的に潤滑油が供給されるので、潤滑油のトータルの吐出量を抑えながら必要な潤滑や冷却を確実に行なうことができる。
一方、エンジン回転速度が基準速度未満の場合、オイルポンプ40からの潤滑油の吐出圧が十分ではないので必要個所まで潤滑油が到達しないが、制御装置の制御によってモータ70が作動して、潤滑油供給管50を回転駆動するので、潤滑油吐出口54から吐出される際に潤滑油に遠心力が加わって勢いよく飛散して到達距離を延ばすことができ、必要個所に潤滑油を供給できる。
また、エンジン回転速度が低いがエンジンの負荷が高い場合には、バリエータ1の動力伝達負荷が高まるため、より確実に必要個所に潤滑油を供給したいが、本実施形態では、エンジン負荷が高い場合、モータ70を高速回転させて、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油により強い遠心力を加え、潤滑油の飛散をより強めるので、到達距離をより延ばして必要個所に確実に潤滑油を供給することができる。
バリエータ1の動力伝達負荷が高まり潤滑油をより確実に必要とするのはバリエータ1の入力回転速度が高い場合だけではないので、制御装置によるモータ70の制御によってエンジン負荷が高いと潤滑油供給管50を高い回転速度で回転させて、潤滑油により強い遠心力を加えその到達距離を増大させることは有効である。
なお、この実施形態では、エンジン回転速度が基準速度未満の場合、エンジン負荷が基準値未満ならモータ70を通常速度で回転させ、エンジン負荷が基準値以上ならモータ70を高速で回転させているが、エンジン負荷に応じて多段に或いは無段階で連続的にモータ70の回転速度を制御してもよい。
また、エンジン回転速度が基準速度未満の場合、エンジン回転速度と、エンジン負荷とに応じて、エンジン回転速度が低いほど(オイルポンプ40の吐出圧が低いほど)モータ70の回転速度が高まるように、及び、エンジン負荷が高いほどモータ70の回転速度が高まるように制御してもよい。
モータ70に位置制御付きモータを採用しない場合も、エンジン回転速度とエンジン負荷との両方または一方に基づいて、エンジン回転速度が低いほどモータ70の回転速度が高まるように、また、エンジン負荷が高いほどモータ70の回転速度が高まるように制御してもよい。
〔3.第3実施形態〕
〔3−1.構成〕
次に、図4〜図6を参照して第3実施形態にかかるプーリ機構とその変形例について説明する。図4において図1と同符号は同様なものを示し、これらについては説明を省略又は簡略化する。
本実施形態にかかるプーリ機構は、図4(a)に示すように、第1実施形態と同様に、プライマリプーリ(第1プーリ)10と、セカンダリプーリ(第2プーリ)20と、プライマリプーリ10の動力をセカンダリプーリ20へ伝達する断面V字形状のベルト(動力伝達部材)30とを有し、オイルポンプ40と共にCVTのバリエータ1を構成している。
本実施形態にかかるプーリ機構は、潤滑油供給管150を回転駆動する構成については、第1実施形態と同様であるが、第1実施形態ではプライマリプーリ10の固定プーリ11と潤滑油供給管50とをギア対15,55で駆動連結しているのに対し、本実施形態ではプライマリプーリ10の可動プーリ12と潤滑油供給管150とをギア対16,56で駆動連結している。
また、本実施形態にかかるプーリ機構では、さらに、潤滑油供給管150の潤滑油吐出口54が、可動プーリ12の軸方向移動に追従して移動するようになっているが、これらの点を除いては第1実施形態と同様に構成されている。
本実施形態の潤滑油供給管150は、図4(b)に示すように、拡径部53及びギア(第2歯車部)56を含んだ中間部材151と、先端側の先端部材152と、基端側の基端部材153と、に分割されており、これらが連結されて構成されている。
中間部材151と先端部材152との接続部154及び中間部材151と基端部材153との接続部155は、何れも軸方向に相対移動可能に構成されている。
本実施形態では、各接続部154,155は、中間部材151の両端に形成された中空部151a,151bに、先端部材152及び基端部材153の対応する端部152a,153aが摺動可能に嵌合している。
ここでは、中間部材151の外径及び先端部材152,基端部材153の主要部の外径は同径に設定されており、先端部材152及び基端部材153の端部152a,153aは中間部材151の中空部151a,151bの肉厚分だけ部分的に縮径されている。
また、中間部材151の中空部151a,151bの内周面、及び先端部材152,基端部材153の端部152a,153aの外周面は、スプライン加工されており、各接続部154,155はスプライン係合によって軸方向にスライド可能で且つ一体回転する。
可動プーリ12の外周には、ギア16が形成され、潤滑油供給管150の中間部材151に形成されたギア56が噛合している。
また、潤滑油吐出口54及びギア56を有する中間部材151は、追従機構18によって、可動プーリ12の動きに追従して軸方向に移動するようになっている。
つまり、可動プーリ12のギア(第1歯車部)16の軸方向両端部には、ギア16の外周よりも突出した環状突起部17がそれぞれ形成されている。
潤滑油供給管150のギア56は2つの環状突起部17の間に位置し、環状突起部17の対向する壁面17aにギア56の軸方向端面56aが当接しうるようになっている。
追従機構18は、可動プーリ12の外周の2つの環状突起部17とこれに当接可能なギア56の軸方向端面56aとを備え、可動プーリ12が移動すると軸方向端面56aが環状突起部17に当接してギア56及びこれを有する中間部材151を軸方向に追従移動させる。
ただし、ギア56の軸方向長さは、2つの環状突起部17間のスパンよりも長さdだけ短く設定されており、ギア56の軸方向端面56aとこれに対応する環状突起部17の壁面17aとは最大で距離dだけ隙間が形成されるようになっている。
中間部材151を可動プーリ12に追従させ軸方向に移動させるのは、可動プーリ12が移動するとV溝13の溝幅方向の中心CW1も移動し、潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝13の溝幅方向の中心CW1から大きく外れてしまうので、これを抑制するためである。
しかし、V溝13,23の溝幅方向の中心CW1の移動量は可動プーリ12の移動量の半分なので、中間部材151を可動プーリ12と同量だけ移動させたのでは、潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝13の溝幅方向の中心CW1から大きくズレることを抑制する効果は少ない。
そこで、潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝13の溝幅方向の中心CW1から大きく外れようとする位置から中間部材151を可動プーリ12と共に移動させるようにして、潤滑油吐出口54の中心CW2のV溝13の溝幅方向の中心CW1からのズレ量拡大を可能な限り抑制している。
つまり、隙間が形成されていることによって、可動プーリ12が軸方向に移動しても、この隙間が0になるまではギア56の軸方向端面56aは環状突起部17の壁面17aに当接しない。
可動プーリ12が軸方向に移動して、壁面17aがギア56の軸方向端面56aに当接すると、ギア56を有する中間部材151は可動プーリ12と連動して軸方向に移動する。
なお、ここでは、中間部材151を軸方向に移動させうる力は、環状突起部17の壁面17aからのみ加えられるものとする。
〔3−2.作用,効果〕
本実施形態にかかるプーリ機構としてのバリエータ1は上述のように構成されているので、バリエータ1の作動中には、図2に示すように、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油(作動油)が、プライマリプーリ10,セカンダリプーリ20及びベルト30へ向けて飛散する。
本実施形態では、潤滑油供給管150は、プライマリプーリ10の可動プーリ12とギア対16,56によって駆動連結されているので、可動プーリ12と連動して潤滑油供給管150及びその潤滑油吐出口54は回転し、吐出する潤滑油に遠心力を付与する。
変速比の変更時に、可動プーリ12が軸方向に移動し、可動プーリ12の環状突起部17の壁面17aがギア56の軸方向端面56aに当接すると、潤滑油吐出口54及びギア56を有する中間部材151は可動プーリ12に追従して軸方向に移動する。
このように中間部材151を軸方向移動させることで、変速比を変更しても潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝13,23の溝幅方向の中心CW1から大きく外れないようになる。
つまり、変速比を変更するために可動プーリ12,22が軸方向に移動すると、プーリ10,20のV溝13,23は可動プーリ12,22の移動方向に拡大又は縮小する。
このため、第1実施形態のように潤滑油吐出口54がV溝13,23の溝幅方向に固定されていると、変速比を変更するために可動プーリ12,22を軸方向に移動させると潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝13,23の溝幅方向の中心CW1から大きく外れることがある。
そこで、可動プーリ12,22の軸方向移動に連動させて潤滑油吐出口54を軸方向移動させるようにしているが、可動プーリ12,22の軸方向移動量に対してV溝13,23の溝幅方向中心CW1の移動量はその半分なので、この点を考慮して潤滑油吐出口54を軸方向移動させている。
例えば、図5(a)に示すように、可動プーリ12が固定プーリ11に最も接近した最ハイの状態から、可動プーリ12を固定プーリ11から離隔させて変速比をロー側へシフトさせると、隙間dが0になるまではギア56及びこれを有する中間部材151は軸方向に移動しない。
なお、図5(a)に示す潤滑油吐出口54の中心CW2の軸方向位置は、V溝13の溝幅方向中心CW1よりもやや可動プーリ12寄りに設定されている。
この状態から可動プーリ12のみが固定プーリ11から離隔移動してV溝13の溝幅方向中心CW1が可動プーリ12側に移動していくと、潤滑油吐出口54の中心CW2はV溝13の溝幅方向中心CW1よりも固定プーリ11寄りになるが溝幅方向中心CW1から軸方向に大きくは離隔しない。
可動プーリ12が更に移動して潤滑油吐出口54の中心CW2のV溝13の溝幅方向中心CW1からのズレ量が大きくなると、隙間dが0になって壁面17aがギア56の軸方向端面56aに当接し、中間部材151は可動プーリ12と連動して軸方向に移動する。
このまま可動プーリ12が軸方向に移動していくと、中間部材151も軸方向に追従移動して、潤滑油吐出口54の中心CW2はV溝13の溝幅方向中心CW1よりも可動プーリ12寄りになるが溝幅方向中心CW1から軸方向に大きくは離隔しない。
そして、潤滑油吐出口54の中心CW2が溝幅方向中心CW1から軸方向に大きくは離隔しない状態で、図5(b)に示すように、可動プーリ12が固定プーリ11から最も離隔した最ローの状態になる。
逆に、図5(b)に示す最ローの状態から、可動プーリ12を固定プーリ11に接近させて変速比をハイ側へシフトさせると、潤滑油吐出口54の中心CW2のV溝13の溝幅方向中心CW1からのズレ量が大きくなったところで、隙間dが0になって壁面17aがギア56の軸方向端面56aに当接し、中間部材151は可動プーリ12と連動して軸方向に移動する。
したがって、変速比を変更しても、潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝13の溝幅方向の中心CW1から軸方向に大きく外れることはなく、同様に、潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝23の溝幅方向の中心CW1から大きく外れることもない。
これによって、潤滑油吐出口54から吐出される潤滑油はV溝13,23の溝幅方向(プーリ10,20の軸方向)の中心CW1付近に到達し、摩擦接触部に効果的に供給される。
〔3−3.変形例〕
次に、第3実施形態の潤滑油供給管150の変形例を説明すると、図6(a)〜図6(c)に示すように、この変形例では接続部154,155に中間部材151を所定の軸方向位置に付勢するバネ部材(ここでは、コイルスプリング)156が装備されている。
つまり、接続部154においては、先端部材152の端部152aと中間部材151の一端の中空部151aとの間に、バネ部材156が圧縮状態で介装されている。
また、接続部155においては、基端部材153の端部153aと中間部材151の他端の中空部151bとの間に、バネ部材156が圧縮状態で介装されている。
これらのバネ部材156により、中間部材151に有効な外力が加わらない限り、中間部材151は潤滑油供給管150の軸方向の所定位置に保持されるようになっている。
なお、中間部材151が軸方向の所定位置にあると、中間部材151に設けられた潤滑油吐出口54の中心CW2が、可動プーリ12がストローク中心(即ち、V溝13,23の各溝幅が等しい中間的な減速比を達成する位置)にあるときのV溝13の溝幅方向の中心CW1Cに一致するように設定されている。
このような構成によって、図6(a)に示すように、可動プーリ12がストローク中心の付近にあるときには、ギア56の各軸方向端面56aは何れも可動プーリ12の環状突起部17の壁面17aと当接しないで、潤滑油吐出口54の中心CW2は、可動プーリ12がストローク中心にある時のV溝13の溝幅方向の中心CW1C付近に保持される。
この状態で可動プーリ12が移動してV溝13の溝幅方向の中心CW1が軸方向に移動しても、潤滑油吐出口54の中心CW2とV溝13の溝幅方向の中心CW1との軸方向のズレは僅かである。
図6(a)に示す位置から、可動プーリ12がある程度ロー側(固定プーリ11から離隔する側)に移動し、潤滑油吐出口54の中心CW2のV溝13の溝幅方向中心CW1からのズレ量が大きくなると、図6(b)に示すように、壁面17aがギア56の軸方向端面56aに当接し、中間部材151は可動プーリ12と連動して軸方向に移動する。
また、図6(a)に示す位置から、可動プーリ12がある程度ハイ側(固定プーリ11に接近する側)に移動し、潤滑油吐出口54の中心CW2のV溝13の溝幅方向中心CW1からのズレ量が大きくなると、図6(c)に示すように、壁面17aがギア56の軸方向端面56aに当接し、中間部材151は可動プーリ12と連動して軸方向に移動する。
したがって、第3実施形態と同様に、変速比を変更しても、潤滑油吐出口54の中心CW2がV溝13の溝幅方向の中心CW1から大きく外れることはなく、同様に、油吐出口54の中心CW2がV溝23の溝幅方向の中心CW1から大きく外れることもない。
しかも、第3実施形態のものよりもより確実に潤滑油吐出口54の中心CW2をV溝13の溝幅方向の中心CW1に接近させることができ、これによって、油吐出口54から吐出される潤滑油はV溝13,23の溝幅方向の中心CW1付近に確実に到達し、摩擦接触部に効果的に供給される。
〔その他〕
以上、本発明にかかる実施形態を説明したが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を種々変更したり、上記実施形態を部分的に適用したりして実施することができる。
つまり、上記の各実施形態では、図1(c)に示すように、潤滑油供給管50の軸心C3を通る直径線を中心に潤滑油吐出口54を形成しているが、例えば、図7(b)に示すように、潤滑油供給管50の軸心C3からズレた個所を起点にして拡径部53の外周面に向かって延びるように潤滑油吐出口54Aを形成しても良い。
また、上記の各実施形態やその変形例の潤滑油吐出口54,54Aは、潤滑油供給管50の軸心C3に対して直角又は略直角の方向に潤滑油を吐出するように、吐出方向が設定されているが、潤滑油吐出口は、少なくとも軸心C3と交差する方向に潤滑油を吐出するように吐出方向が設定されていれば、遠心力を利用することができる。
また、第3実施形態では、ギア56の軸方向端面56aとこれに対応する環状突起部17の壁面17aとの間に隙間を形成し、潤滑油吐出口54の中心CW2のV溝13の溝幅中心CW1からのズレを抑えているが、この隙間を設けずに潤滑油吐出口54を単純に可動プーリ12の軸方向移動に追従させても一定の効果が得られる場合もある。
また、可動プーリ12の一部を、潤滑油吐出口54を有する中間部材151の一部に当接させて潤滑油吐出口54の軸方向位置を可動プーリ12に追従させるため、潤滑油吐出口54の中心CW2を常時V溝13,23の溝幅中心CW1と一致させることはできないが、これを可能にするよう機構を設けることも考えられる。
つまり、可動プーリ12の軸方向移動に対してその二分の一の移動量だけ潤滑油吐出口54が軸方向移動するように、可動プーリ12と潤滑油吐出口54との間に移動量を半減させるメカニカルな機構を設けるか、潤滑油吐出口54の軸方向位置を、モータ等を利用して可動プーリ12とは個別に制御するようにすれば、潤滑油吐出口54の中心CW2を常にV溝13,23の溝幅中心CW1と一致させることができる。
また、潤滑油吐出口54の数は2つに限らず、単数又は例えば3本以上の複数でもよく、複数の場合、等しい位相間隔で配置することが好ましい。
第2実施形態において、潤滑油吐出口54の数が1つの場合、接触開始点P1,P2などで最も発熱し易く潤滑油要求が高い個所を1つ選んで、この位置に潤滑油が到達する潤滑油吐出口54の位置でモータ70を停止すればよい。