本発明に係るコンバインの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、コンバインを一例として説明するが、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、かつ、容易なもの、或いは実質的に同一のものいわゆる均等の範囲のものが含まれる。
以下の説明では、コンバインの通常の使用態様時における前後方向、左右方向、上下方向を、各部位におけるそれぞれの前後方向、左右方向、上下方向として説明する。すなわち、前後方向はコンバインの長さ方向、左右方向は幅方向、上下方向は高さ方向である。このうち、前方は、刈り取り作業時におけるコンバインの進行方向であり、左方は、前方に向かって左手方向であり、下方は、重力が作用する方向である。なお、これらの方向は、説明をわかりやすくするために便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。
<コンバイン1の全体構成>
本実施形態のコンバイン1について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本実施形態のコンバイン1の右側面概略図である。図2は、本実施形態のコンバイン1の平面概略図である。
コンバイン1は、走行しながら農作物の刈取りと脱穀を行う移動式農業機械である。コンバイン1は、機体フレーム2と、走行装置3と、刈取装置4と、脱穀装置5と、運転室6と、グレンタンク7と、ディーゼルエンジン(以下、エンジンという)8とを備える。
走行装置3は、機体フレーム2の下部に配置される。走行装置3は、エンジン8からの動力を左右一対の履帯3aに伝え、コンバイン1を走行させる。
刈取装置4は、機体フレーム2の前端部に取り付けられる。刈取装置4は、穀稈を分草する分草具4aと、分草された穀稈を引き起こす引き起こし装置4bと、引き起こされた穀稈の根元を切断する刈刃4cとを有し、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈り取る。刈取装置4により刈り取られた穀稈は、機体フレーム2の左端部に設けられた搬送チェーン(図示省略)とその上方の挟扼杆(図示省略)との間に挟まれ、エンジン8からの動力により駆動する搬送チェーンによって脱穀装置5に搬送される。
脱穀装置5は、機体フレーム2の上部左側に搭載される。脱穀装置5は、搬送チェーンにより穀稈が後方に搬送される過程で、穀稈から穀粒を切り離し(脱粒)、藁等の夾雑物と穀粒とを分離する。脱穀装置5を通過して、穀粒が扱ぎ取られた穀稈(排藁)は、搬送チェーンにより、機体フレーム2の後端部に設けられた排藁切断装置9へ搬送される。排藁は、排藁切断装置9で切断された後、例えば、圃場に放出される。
運転室6は、機体フレーム2上の右前部に配置される。運転室6は、機体フレーム2の前後方向の前方に設けられ、エンジン8の鉛直方向の上方に設けられている。また、運転室6の周囲には、作業員が着座した状態で操作可能な位置に、例えば、刈取装置4の昇降操作を行うための刈取昇降レバー(図示省略)、排出オーガ7bの昇降操作や旋回操作を行うためのオーガ操作レバー(図示省略)、表示パネル(図示省略)等が設けられている。
グレンタンク7は、機体フレーム2の上部右側であって運転室6の後方に配置される。グレンタンク7は、箱状に形成され、脱穀装置5により選別された穀粒を一時的に貯留する。グレンタンク7は、左右方向において、脱穀装置5と併設されている。グレンタンク7は、刈取脱穀作業時において、脱穀装置5から穀粒が供給されるとともに、内部に貯留された穀粒を、底部に備えた後方搬送用の螺旋から、排出用の螺旋を内蔵した揚穀筒と横送り筒とからなる排出オーガ7bに引き継いで外部に排出する。
後方搬送用の螺旋および排出オーガ7bは、詳しくは後述する第2動力伝達機構50を介して、エンジン8から回転が伝達され、駆動する。
<原動部の構成>
コンバイン1は、原動部として、エンジン8と、ラジエータ61(例えば、図3参照)と、ラジエータファン60(例えば、図4参照)とを備える。図3は、エンジン8付近の正面概略図である。図4は、エンジンルーム12の右側面概略図である。
エンジン8は、機体フレーム2の前部で、運転室6の下方に形成されたエンジンルーム12に搭載されている。エンジンルーム12の右側面には、図1および図2に示すように、防塵網10aを有するカバー10(請求項における「カバー部」)が取り付けられる。防塵網10aは、多数の小径孔を穿った目抜き状の薄肉鋼板である。つまり、カバー10は、左右方向外側となる右側面に配置される。カバー10は、開閉可能であり、カバー10を開くことで、エンジンルーム12内の保守・点検を容易に行うことができる。なお、カバー10の一部は、防塵網10aで構成されており、防塵網10aのみを開閉可能としてもよい。エンジン8および防塵網10aは、右側面視において、エンジン8の全体と防塵網10aとが重なるように配置される。
図3に示すように、エンジン8の機体外側方には、ラジエータ61を配置し、このラジエータ61とエンジン8の間の空間に、ラジエータファン(請求項における「ファン」)60(例えば、図5参照)を配置する。図5は、エンジン8付近の正面概略図である。図5では、図3に対して、ラジエータ61などの一部の構成を説明のため省略している。ラジエータファン60の外周を、ラジエータ61の背面側に設けたシュラウド120で包囲し、送風効率を高めている。ラジエータファン60とエンジン8との間には、第1動力伝達機構40によってラジエータファン60を駆動可能とするように所定の空間が設けられる。
ラジエータ61の機体外側方には、図3に示すように、エアコン用の熱交換器であるコンデンサ75を配置する。
カバー10を閉じた状態で、ラジエータファン60、ラジエータ61およびコンデンサ75の機体外側方に、上述の防塵網10aが配置される。
なお、ラジエータファン60は、右側面視において、例えば、防塵網10aの内側、つまり防塵網10aと完全に重なるように配置され、かつ、ラジエータファン60の大部分が、エンジン8と重なるように配置される。これにより、ラジエータファン60によって外部から空気を吸入した場合に、エンジン8の冷却性能を向上させることができる。
例えば、図4、図5および図6に示すように、ラジエータファン60は、シュラウド120の外側縁部間に渡し掛けた2本のフレーム122a、122bによって支持される。図6は、エンジン8側からラジエータファン60およびシュラウド120を見た概略図である。
即ち、シュラウド120で囲われた側面視で円形状の通風空間部(請求項における「開口部」)121の内側にラジエータファン60を配置し、上述の2本のフレーム122a、122b間に渡し掛けた支持プレート123により、軸受部材124を介してラジエータファン60の回転中心となる駆動軸60aを回転自在に軸受する。
エンジン8は、走行装置3に動力を伝達して、コンバイン1を走行させる他にも、刈取装置4や、脱穀装置5や、ラジエータファン60や、排出オーガ7bや、空調装置のコンプレッサ70などにも動力を伝達し、これらを駆動させる。
<動力伝達機構>
次に、動力伝達機構について、図7を用いて説明する。図7は、エンジン8からラジエータファン60などへの動力伝達を説明する伝動線図である。
コンバイン1は、ラジエータファン60などへの動力伝達機構として、第1ベルト伝動機構20と、第2ベルト伝動機構30と、第1動力伝達機構40と、第2動力伝達機構50とを備える。
第1ベルト伝動機構20は、右側に向けて延設されたエンジン8の出力軸8aに取り付けられた第1プーリ21と、第1動力伝達機構40の第1入力軸41に取り付けられた第2プーリ22と、第1プーリ21と第2プーリ22とに掛け回された第1伝動ベルト23とを備える。第1ベルト伝動機構20は、エンジン8の出力軸8aの出力回転を、第1動力伝達機構40に伝達する。第1伝動ベルト23には、第1ローラ体24によって、テンションが常時付与される。
第2ベルト伝動機構30は、エンジン8の出力軸8aに取り付けられた第3プーリ31と、第2動力伝達機構50の第3入力軸51に取り付けられた第4プーリ32と、第3プーリ31と第4プーリ32とに掛け回された第2伝動ベルト33とを備える。第3プーリ31と第4プーリ32との間には、第2伝動ベルト33のテンションを入り切りする第2ローラ体34が設けられる。第2ローラ体34は、可動機構(図示省略)によって移動し、第2伝動ベルト33のテンションを入り切りする。可動機構によって第2ローラ体34が第2伝動ベルト33に押し込まれることで、第2伝動ベルト33にテンションが付与される。また、可動機構によって第2ローラ体34が第2伝動ベルト33から離間することで、第2伝動ベルト33にはテンションが付与されなくなる。第2ベルト伝動機構30は、エンジン8の出力回転を、第2動力伝達機構50に伝達する。
第1動力伝達機構40は、第1入力軸41と、第3ベルト伝動機構42と、第4ベルト伝動機構43と、第5ベルト伝動機構44と、第1歯車伝動機構45と、第2入力軸46と、テンション機構47とを備える。第1動力伝達機構40は、エンジン8の出力回転を、ラジエータファン60に伝達する。これにより、ラジエータファン60が回転する。また、第1動力伝達機構40は、エンジン8の出力回転を、コンプレッサ70に伝達する。これにより、コンプレッサ70が駆動される。
第1入力軸41には、第1ベルト伝動機構20の第2プーリ22が取り付けられ、第1ベルト伝動機構20を介してエンジン8から回転が伝達される。第1入力軸41には、第3ベルト伝動機構42の第5プーリ420と、第1歯車伝動機構45の第1歯車450とが取り付けられる。
第3ベルト伝動機構42は、第1入力軸41に取り付けられた第5プーリ420と、ラジエータファン60の駆動軸60aに取り付けられた第6プーリ421と、第5プーリ420と第6プーリ421とに掛け回された第3伝動ベルト422とを備える。第3ベルト伝動機構42は、第1入力軸41の回転を、回転方向を逆転させることなく、ラジエータファン60に伝達する。第3ベルト伝動機構42によって、回転が伝達されて、ラジエータファン60が回転する方向を、「正転方向」とする。ラジエータファン60が正転方向に回転することで、外部から空気が吸入され、エンジンルーム12(例えば、図4参照)内に空気が送風される。これにより、例えば、ラジエータ61により冷却水が冷却され、コンデンサ75により冷媒が冷却され、エンジン8が冷却される。
第1歯車伝動機構45は、第1入力軸41に取り付けられた第1歯車450と、第1歯車450に噛み合う第2歯車451と、第1歯車450と第2歯車451とを収容する第1ギヤボックス452とを備える。第2歯車451は、第2入力軸46に取り付けられる。第1歯車450および第2歯車451は、例えば、平歯車である。第1ギヤボックス452は、第1入力軸41および第2入力軸46を回転自在に支持する。
第2入力軸46には、第2歯車451が取り付けられ、第1歯車伝動機構45を介して、第1入力軸41の回転が伝達される。第2入力軸46の回転方向は、第1入力軸41の回転方向とは逆である。第2入力軸46には、第4ベルト伝動機構43の第7プーリ430と、第5ベルト伝動機構44の第9プーリ440(請求項における「第1プーリ」)とが取り付けられる。
第4ベルト伝動機構43は、第2入力軸46に取り付けられた第7プーリ430と、ラジエータファン60の駆動軸60aに取り付けられた第8プーリ431と、第7プーリ430と第8プーリ431とに掛け回された第4伝動ベルト432とを備える。第4ベルト伝動機構43は、第1歯車伝動機構45によって回転方向が逆転された回転を、ラジエータファン60に伝達する。第1歯車伝動機構45、第4ベルト伝動機構43を介して回転が伝達されて、ラジエータファン60が回転する方向を、「逆転方向」とする。なお、ラジエータファン60は、逆転方向に回転することで、エンジンルーム12内の空気を外部に排出する。ラジエータファン60が逆転方向に回転することで、防塵網10a(図1参照)に付着した藁屑や、塵埃などを除去することができる。
テンション機構47は、第3伝動ベルト422にテンションを付与する第3ローラ体470と、第4伝動ベルト432にテンションを付与する第4ローラ体471とを備える。テンション機構47は、リンク機構472(図6参照)を介して各ローラ体470、471を一体的に移動させる。そして、テンション機構47は、何れか一方のローラ体470、471により、第3伝動ベルト422または第4伝動ベルト432に、ラジエータファン60を確実に回転させる力を発生させるテンションを選択的に(択一的に)付与する。なお、図6においては、第3伝動ベルト422にテンションを付与している状態およびテンションを付与していない状態のローラ体470と、第4伝動ベルト432にテンションを付与している状態およびテンションを付与していない状態のローラ体471とを説明のため示している。
第3ローラ体470により第3伝動ベルト422にテンションが付与されると、エンジン8の出力軸8a、第1ベルト伝動機構20、第1入力軸41、第3ベルト伝動機構42、ラジエータファン60の駆動軸60aの順に回転が伝達される。この回転伝達経路を第1経路100と称する。
また、第4ローラ体471により第4伝動ベルト432にテンションが付与されると、エンジン8の出力軸8a、第1ベルト伝動機構20、第1入力軸41、第1歯車伝動機構45、第2入力軸46、第4ベルト伝動機構43、ラジエータファン60の駆動軸60aの順に回転が伝達される。この回転伝達経路を第2経路101と称する。
テンション機構47は、第3伝動ベルト422または第4伝動ベルト432にテンションを付与することで、エンジン8の出力軸8aからラジエータファン60の駆動軸60aへの回転の伝達経路を切り替える。これにより、ラジエータファン60の回転方向が、正転方向または逆転方向に切り替えられる。
第5ベルト伝動機構44は、第2入力軸46に取り付けられた第9プーリ440と、コンプレッサ70の駆動軸70aに取り付けられた第10プーリ441(請求項における「第2プーリ」)と、第9プーリ440と第10プーリ441とに掛け回された第5伝動ベルト442(請求項における「第1ベルト」)とを備える。第5伝動ベルト442には、第5ローラ体443によって、テンションが常時付与される。コンプレッサ70の駆動軸70aには、電磁クラッチ(図示省略)が設けられている。電磁クラッチが接続されると、第5ベルト伝動機構44からコンプレッサ70へ回転が伝達される。また、電磁クラッチが遮断されると、第5ベルト伝動機構44からコンプレッサ70への回転伝達が遮断される。
第2動力伝達機構50は、第3入力軸51と、第2歯車伝動機構52とを備える。第2動力伝達機構50は、エンジン8の出力回転を、回転軸110および第3歯車伝動機構112を介して排出オーガ7bの螺旋軸7cに伝達する。
第3入力軸51には、第4プーリ32が取り付けられ、第2ベルト伝動機構30を介してエンジン8の出力軸8aから回転が伝達される。第3入力軸51には、第2歯車伝動機構52の第3歯車520が取り付けられる。
第2歯車伝動機構52は、第3歯車520と、第3歯車520に噛み合う第4歯車521と、第3歯車520と第4歯車521とを収容する第2ギヤボックス522とを備える。第3歯車520および第4歯車521は、例えば、ベベルギヤである。第4歯車521は、回転軸110に取り付けられる。
回転軸110は、第3ギヤボックス111に収容された第3歯車伝動機構112を介して、排出オーガ7bの螺旋軸7cに連動連結している。そのため、第2動力伝達機構50を介して、エンジン8の出力回転が排出オーガ7bの螺旋軸7cに伝達されて、グレンタンク7に貯留された穀粒が外部に排出される。なお、回転軸110には、グレンタンク7の底部を叩くカム体113が設けられている。
<レイアウト>
次に、上記した、エンジン8、第1動力伝達機構40、第2動力伝達機構50およびコンプレッサ70のレイアウトについて、図1〜図6、図8〜図11を用いて説明する。図8は、エンジン8付近の平面概略図である。図9は、エンジン8などを左右方向の中央側から見た概略図である。図10は、エンジンルーム12付近の正面模式図である。図11は、エンジンルーム12付近の右側面模式図である。図10では、各ベルトおよび各ローラ体を説明のため省略している。また、図11では、エンジン以外の各構成を説明のため、実線で示す。
(全体レイアウト)
第1動力伝達機構40の一部(例えば、第1ギヤボックス452)、第2動力伝達機構50(第2ギヤボックス522)、エンジン8およびコンプレッサ70は、図1、図2および図9に示すように、前後方向に並べて配置される。具体的には、後方から前方にかけて、第2ギヤボックス522、エンジン8、第1ギヤボックス452、コンプレッサ70の順に配置される。
これにより、第1動力伝達機構40の一部(例えば、第1ギヤボックス452)、第2動力伝達機構50(第2ギヤボックス522)、エンジン8およびコンプレッサ70を、メンテナンスする場合に、コンバイン1の右方向から、各構成に対して容易に作業を行うことができ、メンテナンスを容易に行うことができる。なお、前後方向に並べて配置するとは、各構成が全体的に前後方向に並べて配置されることを含み、例えば、図4、図8おおよび図9および図11に示すように、第1ギヤボックス452とエンジン8とが、前後方向で部分的に重なることを含む。
また、第1動力伝達機構40、第2動力伝達機構50、エンジン8およびコンプレッサ70は、図2に示すように、左右方向における中心に対してカバー10側、すなわち右側面側に前後方向に並べて配置される。これにより、カバー10を開くことで、各構成に対して容易に作業を行うことができ、メンテナンスを容易に行うことができる。
(第1動力伝達機構40および第2動力伝達機構50のレイアウト)
第1動力伝達機構40および第2動力伝達機構50は、図9および図11に示すように、前後方向において、エンジン8を挟んで、逆側となるように配置される。
具体的には、エンジン8の出力軸8aに対して、第1動力伝達機構40の第1入力軸41と、第2動力伝達機構50の第3入力軸51とが前後方向で逆側に配置される。また、第1動力伝達機構40の第1入力軸41および第2動力伝達機構50の第3入力軸51は、エンジン8の出力軸8aよりも下方に配置される。また、第1入力軸41に取り付けられる第2プーリ22は、エンジン8の出力軸8aに取り付けられる第1プーリ21よりも下方に配置される。また、第3入力軸51に取り付けられる第4プーリ32は、エンジン8の出力軸8aに取り付けられる第3プーリ31よりも下方に配置される。また、第1伝動ベルト23は、第1ローラ体24によって下方に向けてテンションが付与される。さらに、第2伝動ベルト33は、第2ローラ体34によって下方に向けてテンションが付与される。
これにより、エンジン8の出力軸8aには、第1ベルト伝動機構20によって前側下方へ引っ張る力が掛かり、第2ベルト伝動機構30によって後側下方へ引っ張る力が掛かる。すなわち、エンジン8の出力軸8aに対して、第1伝動ベルト23および第2伝動ベルト33により、前後方向で逆側に引っ張る力が掛かる。
例えば、第1動力伝達機構および第2動力伝達機構が、エンジンに対して後方側に配置された場合、エンジンの出力軸に対し、第1動力伝達機構および第2動力伝達機構により、後側下方に引っ張る力が掛かる。すなわち、エンジンにモーメントが掛かり易くなる。そのため、エンジンを支持する支持部材の強度を高くする必要があり、例えば、エンジンが大型化し、またコストが高くなるおそれがある。また、エンジンの振動が発生したり、このエンジンの振動によって第1伝動ベルトや、第2伝動ベルトの張力が脈動し、伝動効率が低下したり、第1伝動ベルトや、第2伝動ベルトの耐久性が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態では、上記レイアウトとすることで、エンジン8の出力軸8aに掛かる力の方向を分散し、エンジン8に掛かるモーメントを抑制することができる。そのため、エンジン8を支持する支持部材の強度を高くすることなく、エンジン8を支持することができ、例えば、エンジンを小型化し、またコストを削減することができる。
また、第1ベルト伝動機構20および第2ベルト伝動機構30によってエンジン8を取り付け面に押し付けることができ、エンジン8の振動を低減することができる。
また、このエンジン8の振動の低減によって、各伝動ベルト23、33の脈動や張力変動が減少し、耐久性を向上させることができる。
(第1動力伝達機構40のレイアウト)
第1動力伝達機構40では、第1歯車450および第2歯車451を収容する第1ギヤボックス452は、例えば、図4、図9、図10および図11に示すように、エンジン8よりも下方に配置される。なお、エンジン8よりも下方とは、第1ギヤボックス452が全体的にエンジン8よりも下方側に配置されることを含み、第1ギヤボックス452とエンジン8とが上下方向において部分的に重なることを含む。
第1ギヤボックス452がエンジン8よりも下方に配置されることで、ラジエータファン60によって吸引された空気は、第1ギヤボックス452により妨げられずに、エンジン8まで流れる。そのため、吸引された空気によってエンジン8を冷却することができる。すなわち、エンジン8の冷却性能を向上させることができる。また、エンジン8を冷却した空気がエンジン8の背面側に抜けやすくなり、エンジン8の周囲に、エンジン8を冷却することで温度が高くなった空気が滞留することを抑制することができる。そのためエンジン8の冷却性能を向上させることができる。なお、図4および図9に示すように、エンジン8とエンジンルーム12を形成するエンジンカバー12aとの間の隙間は、上方側が広くなっており、このような場合、特に、エンジン8の背面側への空気の抜けが良くなり、エンジン8の冷却性能を向上させることができる。また、エンジン8を冷却することで温度が高くなった空気が、第1ギヤボックス452に当たることを抑制することができる。そのため、第1ギヤボックス452内の油の温度が高くなることを抑制することができ、第1ギヤボックス452のオイルシール(図示省略)の劣化を抑制することができる。
また、第1ギヤボックス452は、図4、図6および図11に示すように、ラジエータファン60を支持するシュラウド120で囲まれた通風空間部121よりも外側に配置される。すなわち、第1ギヤボックス452は、ラジエータファン60による送風域よりも外側に配置される。これにより、ラジエータファン60によって吸引された空気が、第1ギヤボックス452により妨げられずにエンジン8まで流れるので、エンジン8の冷却性能を向上させることができる。
第4ベルト伝動機構43および第5ベルト伝動機構44に回転を伝達する第2入力軸46は、第3ベルト伝動機構42に回転を伝達する第1入力軸41よりも上方に配置される。
第3ベルト伝動機構42では、図11および図12に示すように、ラジエータファン60の駆動軸60aに取り付けられた第6プーリ421が、第1入力軸41に取り付けられた第5プーリ420よりも、後側上方に配置される。従って、第3ベルト伝動機構42により、第1入力軸41には、後側上方へ引っ張る力が掛かる。図12は、第1入力軸41および第2入力軸46に掛かる力について説明する図である。
また、第4ベルト伝動機構43では、ラジエータファン60の駆動軸60aに取り付けられた第8プーリ431が、第2入力軸46に取り付けられた第7プーリ430よりも、後側上方に配置される。従って、第4ベルト伝動機構43により、第2入力軸46には、後側上方へ引っ張る力が掛かる。
また、第5ベルト伝動機構44では、コンプレッサ70の駆動軸70aに取り付けられた第10プーリ441が、第2入力軸46に取り付けられた第9プーリ440よりも、前側下方に配置される。従って、第5ベルト伝動機構44により、第2入力軸46には、前側下方へ引っ張る力が掛かる。
このように、第1動力伝達機構40において、第1入力軸41および第2入力軸46を支持する第1ギヤボックス452には、第3ベルト伝動機構42または第4ベルト伝動機構43により後側上方へ引っ張る力と、第5ベルト伝動機構44により前側下方へ引っ張る力とが掛かる。そのため、同一方向へ引っ張る力が掛かる場合よりも、第1ギヤボックス452に掛かるモーメントを抑制することができる。従って、第1ギヤボックス452を機体フレーム2に取り付ける取付部材、例えばフランジ452aの強度を高くせずに、第1ギヤボックス452を機体フレーム2に取り付けることができる。
また、第1ベルト伝動機構20では、エンジン8の出力軸8aに取り付けられた第1プーリ21が、第1入力軸41に取り付けられた第2プーリ22よりも、後側上方に配置される。従って、第1ベルト伝動機構20により、第1入力軸41には、後側上方へ引っ張る力が掛かる。
このように、第1動力伝達機構40において、第1ギヤボックス452には、第1ベルト伝動機構20により後側上方へ引っ張る力と、第5ベルト伝動機構44により前側下方へ引っ張る力とが掛かる。そのため、同一方向へ引っ張る力が発生する場合よりも、第1ギヤボックス452に掛かるモーメントを抑制することができる。従って、第1ギヤボックス452を機体フレーム2に取り付ける取付部材、例えばフランジ452aの強度を高くせずに、第1ギヤボックス452を機体フレーム2に取り付けることができる。
第1動力伝達機構40では、図10および図13に示すように、第1入力軸41に第1歯車450が取り付けられ、第2入力軸46に、第1歯車450に噛み合う第2歯車451が取り付けられる。図13は、左右方向における第1ギヤボックス452の断面概略図である。そして、第1入力軸41に、ラジエータファン60を正転方向に回転させる第3ベルト伝動機構42の第5プーリ420が取り付けられる。また、第2入力軸46に、ラジエータファン60を逆転方向に回転させる第4ベルト伝動機構43の第7プーリ430が取り付けられ、さらにコンプレッサ70の駆動軸70aを回転させる第5ベルト伝動機構44の第9プーリ440が取り付けられる。
このように、一対の歯車(第1歯車450および第2歯車451)を用いた簡易な構成によって、ラジエータファン60を正転または逆転させ、さらに、コンプレッサ70を駆動させることができる。
ここで、上述した第1ギヤボックス452の構成について、図13および図14を参照しながら説明する。図14は、第1ギヤボックス452の右側面概略図である。
第1ギヤボックス452は、機体フレーム2側へ取付けるためのフランジ452aが基部に形成され、この基部から略45°の角度で斜め上方へ延伸する長円状のケース本体453が形成されている。
ケース本体453は、図13に示すように、相対的に短尺とした第1入力軸41を収容する第1軸収容部453aをケース下部に膨出形成するとともに、相対的に長尺とした第2入力軸46を収容する第2軸収容部453bをケース上部に膨出形成している。そして、ケース本体453における第9プーリ440に近接する側に、互いに噛み合う第1歯車450および第2歯車451を収納している。
第5ベルト伝動機構44の第5伝動ベルト442にテンションを付与する第5ローラ体443は、例えば、図6および図11に示すように、ロッド446に取り付けられる。ロッド446は、下方の基端部が、例えば、機体フレーム2に回動可能に支持される。また、ロッド446は、上方の先端部にテンションスプリング444が取り付けられる。テンションスプリング444は、テンション調整部445を介して、前方に位置するステー130に取り付けられる。これにより、第5ローラ体443は、前方に引っ張られ、第5伝動ベルト442に常時テンションを付与する。
テンションスプリング444およびテンション調整部445は、コンプレッサ70よりも上方に設けられる。これにより、例えば、エンジンルーム12の前側に設けられたフロアステップ11を取り外し、上方からテンション調整部445を操作してテンションを調整する際に、テンションの調整を容易に行うことができる。テンション調整部445は、例えば、調整ナットおよびロックナットにより構成される。テンションスプリング444およびテンション調整部445は、第5伝動ベルト442と接触しないように、配置される。これにより、テンション調整部445による、テンションの調整を行う際に、第5伝動ベルト442が邪魔にならず、テンションの調整を容易に行うことができる。
(コンプレッサ70のレイアウト)
コンプレッサ70は、図11および図15に示すように、フロアステップ11の下方に配置される。これにより、フロアステップ11を取り外すことで、コンプレッサ70に対して容易に作業を行うことができ、コンプレッサ70のメンテナンスを容易に行うことができる。図15は、エンジン8を左右方向の中央側から見た概略図である。
コンプレッサ70は、エンジン8よりも下方に配置される。なお、エンジン8よりも下方とは、コンプレッサ70が全体的にエンジン8よりも下方側に配置されることを含み、コンプレッサ70とエンジン8とが上下方向において部分的に重なることを含む。
これにより、第1ギヤボックス452と同様に、ラジエータファン60によって吸引された空気が、コンプレッサ70によって妨げられずにエンジン8まで流れる。従って、エンジン8の冷却性能を向上させることができる。また、エンジン8を冷却することで温度が高くなった空気が、コンプレッサ70に当たることを抑制することができる。そのため、コンプレッサ70内の冷媒の温度が高くなることを抑制することができ、コンプレッサ70のシール(図示省略)の劣化を抑制することができる。
また、コンプレッサ70は、図4、図6および図11に示すように、シュラウド120で囲まれた通風空間部121よりも外側に配置される。これにより、ラジエータファン60によって吸引された空気が、コンプレッサ70により妨げられずにエンジン8まで流れるので、エンジン8の冷却性能を向上させることができる。
コンプレッサ70の駆動軸70aは、図11および図12に示すように、第1歯車伝動機構45の第2歯車451が取り付けられた第2入力軸46よりも下方に配置される。また、コンプレッサ70の駆動軸70aに取り付けられる第5ベルト伝動機構44の第10プーリ441は、第2入力軸46に取り付けられる第5ベルト伝動機構44の第9プーリ440よりも下方に配置される。これにより、第2入力軸46とコンプレッサ70の駆動軸70aとの軸間距離を確保し、第9プーリ440と第10プーリ441との間に、テンションスプリング444などをコンプレッサ70の上方に配置する第5ローラ体443を配置することができる。また、第2入力軸46とコンプレッサ70の駆動軸70aとの軸間距離を確保しつつ、コンプレッサ70を第1ギヤボックス452に近づけて配置することができる。そのため、フロアステップ11の下方の空間に、コンプレッサ70に加えて、図11および図15に示すように、例えば、SCR(Selective Catalytic Reduction)システムで使用する尿素を貯留する尿素タンク140を配置することができる。
コンプレッサ70では、図8に示すように、冷媒が流入する流入口71および冷媒を排出する排出口72が、後方に向けて形成される。これにより、流入口71とエバポレータ(図示省略)とを接続する流入配管73(図3、図8および図10参照)および排出口72とコンデンサ75とを接続する排出配管74(図3、図8および図10参照)の長さを短くすることができる。また、流入配管73の屈曲部および排出配管74の屈曲部を少なくすることができる。屈曲部が多くなり、屈曲部の曲げ半径が小さくなると、例えば、振動などにより、各配管73、74が劣化し易くなる。本実施形態では、各配管73、74の屈曲部を少なくすることで、各配管73、74の劣化を抑制することができる。
流入配管73および排出配管74は、図8に示すように、コンプレッサ70と第1ギヤボックス452との間に形成される空間を通り、図3および図11に示すように、上下方向に沿って配置される。また、流入配管73および排出配管74は、図3および図10に示すように、シュラウド120の背面側に形成される空間を通り、上下方向に沿って配置される。これにより、各配管73、74の配置が複雑にならず、各配管73、74の屈曲部を少なくすることができ、各配管73、74の劣化を抑制することができる。
流入配管73および排出配管74は、シュラウド120の背面側、すなわち、コンバイン1の右側に配置される。これにより、カバー10を開くことで、排出配管74および流入配管73に対して容易に作業を行うことができ、各配管73、74のメンテナンスを容易に行うことができる。
流入配管73および排出配管74は、図11に示すように、シュラウド120に囲われた通風空間部121の外側に配置される。これにより、ラジエータファン60により送風され、ラジエータ61およびコンデンサ75における熱交換で温度が高くなった空気が、流入配管73および排出配管74に当たることを抑制し、各配管73、74の劣化を抑制することができる。
排出配管74は、エンジンルーム12の上方側に配置されたコンデンサ75に接続される。流入配管73は、送風ダクト(図示省略)に配置されたエバポレータに接続される。なお、コンデンサ75とエバポレータとは、配管(図示省略)により接続される。
コンプレッサ70の前方側には、例えば、図6および図11に示すように、コンプレッサ70を、例えば、機体フレーム2に取り付けるステー130が設けられる。ステー130を、流入口71および排出口72が形成される後方側とは逆側であるコンプレッサ70の前方側に設けることで、排出配管74および流入配管73を、ステー130を回避するために曲げることなく配置することができる。そのため、各配管73、74の屈曲部を少なくすることができ、各配管73、74の劣化を抑制することができる。また、ステー130をコンプレッサ70の前方側に設けることで、第5ベルト伝動機構44によって後側上方へ引っ張られるコンプレッサ70を、後方側に設ける場合と比較して小さい力で固定することができる。
上記実施形態では、第5ベルト伝動機構44においては、第9プーリ440を第2入力軸46に取り付けたが、第1入力軸41に取り付けてもよい。また、第1ベルト伝動機構20において、第2プーリ22を第1入力軸41に取り付けたが、第2入力軸46に取り付けてもよい。
上記実施形態では、カバー10を右側面側に配置し、第1動力伝達機構40、第2動力伝達機構50、エンジン8およびコンプレッサ70を、前後方向に並べて、右側面側に配置しているが、カバー10が左側面側に配置されたコンバイン1では、第1動力伝達機構40、第2動力伝達機構50、エンジン8およびコンプレッサ70を、前後方向に並べて、左側面側に配置する。
上記実施形態では、流入口71および排出口72を後側に向けて形成したが、流入口71または排出口72を、すなわち流入口71、排出口72のうち少なくとも一方を後側に向けて形成してもよい。
上記実施形態では、流入配管73および排出配管74をシュラウド120の背面側に配置したが、流入配管73または排出配管74を、すなわち流入配管73、排出配管74のうち少なくとも一方をシュラウド120の背面側に配置してもよい。
なお、第1プーリ21、第2プーリ22などの径は、適宜設定することができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。