JP6274443B2 - 透明化生物標本作製用キット及び透明化生物標本作製方法 - Google Patents

透明化生物標本作製用キット及び透明化生物標本作製方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2012年10月30日出願の日本特願2012−239465号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
技術分野
本発明は、透明化生物標本作製用キット及び透明化生物標本作製方法に関する。より詳細には、透明化生物標本作製用キット及び透明化した生物標本の保存用キット、並びに透明化生物標本作製方法及び透明化した生物標本の保存方法に関する。
生物標本を透明化する技術は、生物標本を観察する上で必要な技術であり、古くから知られている。また、近年は、生物標本を、蛍光色素を用いて観察することも多く行われており、神経細胞などの微細な組織の観察にも用いられている。
古くから用いられている生物標本の透明化方法としては、アリザリンレッドSによるホールマウント骨染色があり、具体的には、(1)アルカリ溶液または各種消化酵素を用いた組織の消化(Dingerkus et al, Stain Technology , 52: 229-232, 1977、非特許文献1、その全記載は、ここに特に開示として援用される)、(2)アルカリ溶液・グリセロール混合液による染色過剰部位の脱色(分別)、(3)上昇系列グリセロールへの置換からなるプロトコルである。
その他に、安息香酸ベンジルおよびベンジルアルコールの混合液による透明化(Yokomizo et al., nature Protocols, 7:421-423, 2012、非特許文献2、その全記載は、ここに特に開示として援用される)、また2011年に報告された尿素を主成分とするScale試薬(Hama et al., Nature Neuroscience 14 (11): 1481-1488, 2011、非特許文献3、その全記載は、ここに特に開示として援用される)(商品名SCALEVIEW(スケールビュー)(登録商標))などがある。
従来の生物標本の透明化方法においては、主に、以下の課題があった。
(1)アルカリ溶液またはタンパク分解酵素による組織消化では、組織の破損が生じやすい。
(2)アルカリ及びグリセロール混合液による染色の分別には長時間(数日から数ヶ月)を要する。
(3)グリセロールまたはScale試薬による透明化には長時間(数日から数ヶ月)を要する。また、脳、肝臓や胎盤など、特定の臓器では透明化が困難なことが多い。
(4)ベンジルアルコール及び安息香酸ベンジル混合液は有機溶媒であり、同混合液による処理によって蛍光シグナルが減弱することがあるなど(非特許文献3)、透明化後の観察を含めて、応用の範囲が限られる。
上記課題を踏まえて本発明は、組織の破損が生じにくく、ベンジルアルコールや安息香酸ベンジルなどの有機溶媒を用いることなく、比較的短時間(短期間)での透明化が可能であり、かつ透明化できる生物標本の範囲が広い、生物標本の透明化方法及び透明化用キットを提供することを目的とする。さらに本発明は、本発明の方法で透明化した生物標本の透明化した状態での保存方法及び保存用キットを提供することを目的とする。
本発明の透明化生物標本作製方法(A)は、
生物標本である被透明化物を固定液で処理して、透明化した被透明化物を得る工程(1)を含み、
前記固定液は、(a)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液または(b) ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、及びアルカリを含有する水溶液であり、
前記固定液における非イオン系界面活性剤の濃度は、1%以上である。
本発明の透明化生物標本作製方法(B)は、
生物標本を固定化した被透明化物または前記本発明の透明化生物標本作製方法(A)において固定液で処理した被透明化物を透明化促進液で処理して、透明化した被透明化物を得る工程(2)を含み、
前記透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液であり、
前記透明化促進液における非イオン系界面活性剤の濃度は、1%以上である。
本発明の透明化生物標本作製方法(C)は、
前記本発明の透明化生物標本作製方法(A)において固定液で処理した被透明化物、または前記本発明の透明化生物標本作製方法(B)において固定液及び透明化促進液で処理した被透明化物を保存液で処理または保存して、透明化した被透明化物を得る工程(3)を含み、
前記保存液は、非イオン系界面活性剤及び多価アルコールを含有する水溶液であって、前記保存液における非イオン系界面活性剤の濃度は、1%以上である。
本発明の透明化生物標本作製用キット(A)は、固定液を含むキットであって、
前記固定液は、(a)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液または(b) ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、及びアルカリを含有する水溶液であり、前記固定液における非イオン系界面活性剤の濃度は、1%以上である。
本発明の透明化生物標本作製用キット(B)は、固定液及び透明化促進液を含むキットであって、
前記固定液は、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液であり、
前記透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液であり、かつ
前記固定液及び透明化促進液における非イオン系界面活性剤の濃度は、独立に、1%以上である。
本発明の透明化生物標本作製用キット(C)は、固定液及び保存液を含むか、固定液、透明化促進液及び保存液を含むキットであって、
前記固定液は、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液であり、
前記透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液であり、かつ
前記保存液は、非イオン系界面活性剤及び多価アルコールを含有する水溶液であって、
前記固定液、透明化促進液及び保存液における非イオン系界面活性剤の濃度は、独立に、1%以上である。
本発明の透明化生物標本作製用キット(D)は、透明化促進液を含むキットであって、
前記透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液であり、かつ
前記透明化促進液における非イオン系界面活性剤の濃度は、1%以上である。
本発明の透明化生物標本作製方法は、骨染色においては、以下の効果がある。
(1)染色の時間を著しく短縮できる(従来法:数日〜数カ月,本法:1日から数日)。
(2)透明化の時間を著しく短縮できる(グリセロール:数日〜数カ月,Scale:数日〜数週間以上、本法:一晩〜数日)
(3)大量の骨染色を処理することが可能(医薬品や農薬等の生殖発生毒性試験で必須)。
(4)シンプルなプロトコルであり、骨染色の自動化が可能。
本発明の透明化生物標本作製方法は、骨染色以外の応用例においては以下の効果がある。
(1)緩衝液中で透明化されているため、蛍光観察など応用範囲が広い。
(2)水溶性の保存液であるため、ホールマウント免疫染色やin situ hybridizationで用いられるアルカリフォスファターゼ染色に応用可能である。
(3)固定の段階で内部観察が可能なほど透明化が進むため、骨染色を施さなくても、透明化した皮膚を通して骨格の観察をすることができる。
(4)水晶体の白濁がないため、水晶体の病理組織を固定標本で観察可能である。
(5)固定液の界面活性剤にTween 20を用いた場合、メラニン色素が残る為、透明化された臓器組織中に広がるメラノサイトの分布を広範囲で観察することができる。
(6)従来法では透明化が困難であった脳、肝臓、腎臓、胎盤についても、本法により(主に固定液の組成を本発明の組成にすることで)短時間で十分透明化が得られる。
(7)厚切り切片(40μm以上)の透徹に本法を応用することで、顕微鏡観察可能な深さが飛躍的に伸びる(組織標本のマウント剤としての応用が可能)。
Triton X100およびTween 20を用いた場合の透明化と界面活性剤濃度の関係についての検討結果を示す。 メダカの透明化実験結果を示す。 アマガエルの透明化実験結果を示す。 マウス胎児(胎齢14日)の透明化実験結果を示す。 新生児(生後二日)の透明化実験結果を示す。 に示すマウス成獣の小腸の透明化実験結果を示す。 マウス成獣の肝臓の透明化実験結果を示す。 C57B6/J メス成獣脳の透明化実験結果を示す。 C57B6/J メス成獣脳の透明化実験結果(グリセロール処理追加)を示す。 C57B6/J メス成獣脳の透明化実験結果(グリセロール処理追加)(続き)を示す。 ICRマウス成獣(9 wks, ♂)脳の透明化実験結果を示す。 ラット成獣前腕の透明化実験結果を示す。 メダカの透明化実験結果を示す。 エンジェルフィッシュの透明化実験結果を示す。 リン酸塩緩衝液を含まない固定液を用いた場合の透明化実験結果を示す。 リン酸塩緩衝液を含まない固定液を用いた場合の透明化実験結果を示す。
<透明化生物標本作製方法(A)>
本発明の透明化生物標本作製方法(A)は、少なくとも以下の工程(1)を含む。
生物標本である被透明化物を固定液で処理する工程(1)
工程(1)
工程(1)で使用する固定液は、(a)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液または(b) ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、及びアルカリを含有する水溶液である。固定液での処理は、被透明化物を主に、組織を固定すると同時に、穏やかな消化と著しい透明化作用を得るための処理である。
ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドは、組織固定のための成分であり、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドはそれぞれ単独で使用することもできるし、混合物として使用することもできる。ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドの水溶液中での濃度は、適切な組織固定が可能であるという観点から適宜決定することができ、例えば、1〜10w/v%の範囲とすることができ、好ましくは2〜7w/v%の範囲とすることができる。但し、これらの範囲に限定される意図ではない。
非イオン系界面活性剤は、生物標本を透明化するための成分であり、非イオン系の界面活性剤であれば制限なく使用でき、例えば、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型及びその他の型の非イオン系の界面活性剤を例示できる。非イオン系界面活性剤としては、エーテル型のものが好ましく、エーテル型非イオン系界面活性剤の例としては、Triton X-100(オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)n、nは約10である、HLB13.4〜13.5)またはTween20(ポリソルベート 20、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、HLB16.7)などを挙げることができる。Tween20はポリソルベート類の一種であり、ポリソルベート類は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドが約 20 分子縮合したものである。Tween20以外に、Tween40(ポリソルベート 40、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、HLB15.6)、Tween60(ポリソルベート 60、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、HLB14.9)、Tween65(ポリソルベート 65、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、HLB10.5)、Tween80(ポリソルベート 80、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、HLB15.0)なども挙げられる。
非イオン系界面活性剤は、上述のように生物標本を透明化するための成分である。固定液においても、生物標本を透明化させることから、固定液における非イオン系界面活性剤の濃度は、例えば、1〜40v/v%の範囲であることができ、非イオン系界面活性剤の種類と被透明化物の種類に応じて適宜選択できる。透明化促進液における非イオン系界面活性剤の濃度は、好ましくは、2〜30 v/v%の範囲であり、より好ましくは5〜25 v/v%の範囲である。但し、これらの範囲に限定される意図ではない。傾向としては、Tween20のほうがTritonX-100よりも低濃度で透明化の作用が認められている。但し、Tween20は黄色の着色があるため、目的によっては高濃度(5%以上)で使い難い場合もある。明視野、肉眼および光顕では1-5 v/v%の範囲の濃度が好ましい場合がある。TritonX100は比較的高濃度、Tween20は比較的低濃度の組み合わせが好ましい。但し、TritonX100は30%を超えると急激に粘稠度が増すので、実用的な濃度の上限は25 v/v%である。
参考例1に示すように、HLBが16.7であるTween20は、HLBが13.4〜5であるTriton x-100に比べて、低濃度でも透明化効果を示すことから、非イオン系界面活性剤のHLBにより、透明化効果に違いがある傾向がある。さらに、参考例1に示すように、Tween20とTriton x-100を併用すると、単独で使用する場合に比べて、透明化効果がさらに優れる。その理由は明らかではないが、これらの点を考慮して、非イオン系界面活性剤の種類及び濃度を、固定液における透明化に適した範囲で適宜選択することができる。
アルカリは、生体(タンパク質)消化のための成分であり、アルカリ金属元素(例えば、Li、Na、Kなど)の水酸化物であることができる。具体的には、KOHまたはNaOHであることができる。アルカリの濃度は、生体(タンパク質)消化の程度を考慮して適宜決定することができ、例えば、0.1 w/v%〜10 w/v%の範囲とすることができ、好ましく0.5 w/v%〜2 w/v%の範囲である。
固定液(a)は、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤及びアルカリに加えて、緩衝剤を含有し、固定液(b)は、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、及びアルカリを含有するが、緩衝剤を含有しない。緩衝剤は、固定液のpHを所定の範囲(例えば、5〜12、好ましくは7〜11)に調整するための成分であり、緩衝剤(例えば、pH5〜8)を共存させることで、アルカリ消化による組織の損傷を一層抑制することができる。但し、緩衝剤を含有しない固定液(b)であっても、上記成分を含有することで、被透明化物を固定することができる。しかし、緩衝剤を含有しない固定液(a)を用いる場合には、アルカリ消化による組織の損傷を抑制することができる。緩衝剤は、pHの緩衝作用を有する物質であれば、単独でも組合せでもよい。例えば、リン酸塩緩衝剤(例えば、リン酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸ニ水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどの単独又は混合物)、ホウ酸-ホウ砂緩衝剤を挙げることができる。リン酸塩緩衝剤に限定される意図ではないが、リン酸塩緩衝剤が好ましい。
固定液(a)は、具体的には、例えば、2-4%リン酸緩衝ホルムアルデヒドまたは2-4%リン酸緩衝パラホルムアルデヒド、アルカリ溶液(1% KOHまたはNaOH)、非イオン系界面活性剤(5% Triton X-100またはTween20)の混合水溶液であることができる。固定液(b)は、具体的には、例えば、2-4%ホルムアルデヒド水溶液または2-4%パラホルムアルデヒド水溶液、アルカリ溶液(1% KOHまたはNaOH)、非イオン系界面活性剤(5% Triton X-100またはTween20)の混合水溶液であることができる。
但し、各成分の濃度は、上記値に限定される意図ではなく、あくまでも例示である。
被透明化物の固定液での処理は、例えば、所定量(少なくとも被透明化物の全体が固定液に沈む量)の固定液に室温(例えば、5〜35℃、好ましく15〜30℃、以下同様)または室温から60℃の範囲の温度において、1時間〜48時間の範囲、好ましくは1〜24時間の範囲、より好ましくは2〜12時間の範囲で被透明化物を浸漬することで行われる。温度が高い方が、短時間で固定が完了する傾向はあるが、被透明化物の種類によっては、組織へのダメージが大きくなる虞もあるので、この点も考慮して、処理温度は、適宜調整することが好ましい。但し、上記温度及び時間はあくまでも例示であり、これらの範囲に限定される意図ではない。尚、緩衝剤を含有しない固定液(b)を用いる場合には、アルカリ消化による組織の損傷を抑制するという観点から、室温などの比較的低い温度での処理が好ましい。
上記被透明化物の固定液での処理は、一部又は全部の処理操作において、マイクロ波を照射しながら行うことができる。マイクロ波は、例えば、周波数が2.45GHzであることができるが、これに限定される意図ではない。マイクロ波を照射しながら上記被透明化物の固定液での処理を行うことで、透明化をより促進することができる。尚、照射するマイクロ波の出力は、被透明化物の種類や大きさ、さらには固定液の量などを考慮して適宜決定することができる。
被透明化物である生物標本には特に制限はなく、生物標本は、例えば、魚類、両生類、爬虫類、または哺乳類(但し、生体全体の場合にはヒトを除く)であることができる。生物標本は、生体組織であることもでき、生体のあらゆる組織が対象であり、例えば、内臓、血管、神経、脳、骨であることができる。尚、ヒトの臓器等の透明標本も技術的には作製可能であり、例えば、倫理委員会の承認を得るなど、倫理面の配慮をした上で行われることが適当である。但し、これらはあくまでも例示であり、生物標本である限り、限定はない。但し、固定液による処理で透明化が得られ易いという観点からは、被透明化物は、魚類、両生類、鳥類、哺乳類またはその組織であることができる。
被透明化物である生物標本は、事前に染色処理などを施したものであることができる。また、染色処理に用いる染料に特に制限はなく、顔料インクなどである他、蛍光染料による染色であってもよい。
固定液での処理後、必要により、被透明化物を洗浄することができる。洗浄には、蒸留水、緩衝液またはエチレングリコール/PB(S)などを用いることができる。洗浄は室温で行うことができる。
被透明化物は固定液での処理、または固定液での処理及び洗浄後に、必要に応じて、漂白、脱脂または漂白及び脱脂の処理をすることもできる。漂白には、例えば、過酸化水素を用いることができる。脱脂には、例えば、アセトンまたはエタノールを用いることができる。
透明化生物標本作製方法(A)においては、被透明化物の固定液での処理により、透明化した被透明化物が得られる。得られた透明化した生物標本は、そのまま次の、例えば、観察に用いることができる。但し、被透明化物の種類によっては、透明化が不十分な場合がある。このような被透明化物については、次いで本発明の透明化生物標本作製方法(B)または本発明の透明化生物標本作製方法(C)に付して、さらに透明化を促進することができる。また、保存が必要な場合は、後述する本発明の透明化生物標本作製方法(C)により保存することが好ましい。
<透明化生物標本作製方法(B)>
本発明の透明化生物標本作製方法(B)は、本発明の透明化生物標本作製方法(A)以外の方法で生物標本を固定化した被透明化物、または本発明の透明化生物標本作製方法(A)において固定液で処理した被透明化物を透明化促進液で処理する工程(2)を含む。
工程(2)
工程(2)で使用する透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液である。非イオン系界面活性剤及びアルカリは、固定液で用いたものと同様のものを利用できる。
非イオン系界面活性剤は、生物標本を透明化するめの成分であり、固定化後の生物標本を透明化促進液によりさらに透明化させる。透明化促進液における非イオン系界面活性剤の濃度は、例えば、1〜40 w/v%の範囲であることができ、非イオン系界面活性剤の種類と被透明化物の種類、固定液での処理条件(固定液の組成を含む)に応じて適宜選択できる。透明化促進液における非イオン系界面活性剤の濃度は、好ましくは、2〜20 w/v%の範囲であり、より好ましくは5〜10 w/v%の範囲である。但し、これらの範囲に限定される意図ではない。
参考例1に示すように、非イオン系界面活性剤のHLBにより、透明化促進効果に違いがある傾向がある。さらに、参考例1に示すように、Tween20とTriton x-100を併用すると、単独で使用する場合に比べて、透明化促進効果がさらに優れる。その理由は明らかではないが、これらの点を考慮して、非イオン系界面活性剤の種類及び濃度を、透明化促進に適した範囲で適宜選択することができる。
アルカリは、生体(タンパク質)消化のための成分であり、その濃度は、固定液と同様に、生体(タンパク質)消化の程度を考慮して適宜決定することができ、例えば、0.1 w/v%〜10 w/v%の範囲とすることができ、好ましく0.5 w/v%〜2 w/v%の範囲である。透明化促進液には、緩衝剤が含有される必要はなく(必要により緩衝剤を含有してもよい)、固定液に比べて、アルカリによる生体(タンパク質)の消化作用は強まるが、固定液により既に穏和な消化がなされており、緩衝剤を含有しない透明化促進液を用いても、組織の損傷が顕著になることはない。但し、組織の種類に応じて、アルカリの濃度を調整して、組織の損傷を抑制しつつ透明化促進を行うことが好ましい。
被透明化物は、本発明の透明化生物標本作製方法(A)において固定液で処理した被透明化物、または本発明の透明化生物標本作製方法(A)以外の方法で生物標本を固定化した被透明化物である。本発明の透明化生物標本作製方法(A)以外の方法は、従来から知られた方法であることができ、例えば、生物標本をホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを含み、非イオン系界面活性剤及びアルカリの一方または両方を含有しない水溶液で処理する方法であることができる。ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを含み、非イオン系界面活性剤及びアルカリの一方または両方を含有しない水溶液は、例えば、例えば、2-4%ホルムアルデヒド水溶液、2-4%パラホルムアルデヒド水溶液、2-4%リン酸緩衝ホルムアルデヒドまたは2-4%リン酸緩衝パラホルムアルデヒドであることができる。
被透明化物の透明化促進液での処理は、例えば、所定量(少なくとも被透明化物の全体が透明化促進液に沈む量)の透明化促進液に室温(例えば、5〜35℃、好ましく15〜30℃、以下同様)または室温から60℃の範囲の温度において、10分間〜48時間の範囲、好ましくは30分間〜24時間の範囲、より好ましくは1時間〜12時間の範囲で被透明化物を浸漬することで行われる。温度が高い方が、短時間で透明化促進効果が得られる傾向はあるが、被透明化物の種類によっては、組織へのダメージが大きくなる虞もあるので、この点も考慮して、処理温度は、適宜調整することが好ましい。但し、上記温度及び時間はあくまでも例示であり、これらの範囲に限定される意図ではない。
上記被透明化物の透明化促進液での処理は、一部又は全部の処理操作において、マイクロ波を照射しながら行うことができる。マイクロ波は、例えば、周波数が2.45GHzであることができるが、これに限定される意図ではない。マイクロ波を照射しながら上記被透明化物の透明化促進液での処理を行うことで、透明化をより促進することができ、より短時間での透明化が可能となる。特に、40〜50℃の温度において、マイクロ波を照射しながら上記被透明化物の透明化促進液での処理を行うことで、10〜90分程度の比較的短時間で、標本に損傷を与えることなく透明化が可能である。尚、照射するマイクロ波の出力は、被透明化物の種類や大きさ、さらには透明化促進液の量などを考慮して適宜決定することができる。
被透明化物を透明化促進液で処理することで、透明化した生物標本を得ることができる。得られた透明化した生物標本は、そのまま次の、例えば、観察に用いることができる。但し、被透明化物の種類によっては、透明化が不十分な場合がある。このような被透明化物については、次いで本発明の透明化生物標本作製方法(C)に付して、さらに透明化を促進することができる。また、保存が必要な場合も、本発明の透明化生物標本作製方法(C)を適用して保存することが好ましい。
<透明化生物標本透明化方法(C)>
本発明の透明化生物標本透明化方法(C)は、本発明の透明化生物標本作製方法(A)において固定液で処理した被透明化物、または前記本発明の透明化生物標本作製方法(B)において固定液及び透明化促進液で処理した被透明化物を保存液で処理または保存して、透明化した被透明化物を得る工程(3)を含む。
工程(3)
工程(3)で使用する保存液は、非イオン系界面活性剤及び多価アルコールを含有する水溶液であって、前記非イオン系界面活性剤の濃度は、1%以上である。非イオン系界面活性剤は、生物標本を透明化するための成分であり、透明化された生物標本の透明性を維持する成分である。非イオン系界面活性剤は、固定液及び透明化促進液で用いたものと同様のものを利用できる。
保存液における非イオン系界面活性剤の濃度は、例えば、1〜40%の範囲であることができ、非イオン系界面活性剤の種類と被透明化物の種類、固定液及び/または透明化促進液での処理条件(固定液及び/または透明化促進液の組成を含む)に応じて適宜選択できる。透明化促進液で処理した被透明化物を保存液中に保持することで、さらに透明化が進む場合があり、かつ透明性が保持される。固定液及び透明化促進液における場合と同様に、非イオン系界面活性剤のHLBにより、透明化促進効果及び透明性保持効果に違いがある傾向がある。さらに、参考例1に示すように、Tween20とTriton x-100を併用すると、単独で使用する場合に比べて、透明化促進効果及び透明性保持効果がさらに優れる。その理由は明らかではないが、これらの点を考慮して、非イオン系界面活性剤の種類及び濃度を、透明性保持に適した範囲で適宜選択することができる。
多価アルコールは、透明化を促進するための成分であり、例えば、グリコール化合物を挙げることができ、グリコール化合物の例としてエチレングリコールを挙げることができる。グリコール化合物の濃度は、標本の透明度を考慮して適宜決定することができ、例えば、1〜50 w/v%の範囲とすることができ、好ましくは10〜30 w/v%の範囲とすることができる。但し、これらの範囲に限定される意図ではない。
保存液には、非イオン系界面活性剤及び多価アルコールに加えて、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有させることもできる。DMSOを含有させることで、透明化を一層促進することができる。DMSOの含有量は、例えば、0.5〜10 v/v%の範囲とすることができ、処理対象の組織や臓器の種類によってDMSOの添加効果は異なる。一般の臓器の場合には0.5〜10 v/v%の範囲が適当である。脳の場合にはDMSOを添加することで、膨張することがあるので、長期間の保存には比較的少量の0.5〜1 v/v%の範囲が適当である。短期間の観察には、10 v/v%までの範囲でDMSOを利用することができる。
固定液及び/または透明化促進液で処理した被透明化物の保存液での処理は、例えば、所定量(少なくとも被透明化物の全体が保存液に沈む量)の保存液に室温(例えば、5〜35℃、好ましく15〜30℃、以下同様)または室温から60℃の範囲の温度において、10分間〜48時間の範囲、好ましくは30分間〜24時間の範囲、より好ましくは1時間〜12時間の範囲で被透明化物を浸漬することで行われる。温度が高い方が、短時間で透明化促進効果が得られる傾向はあるが、被透明化物の種類によっては、組織へのダメージが大きくなる虞もあるので、この点も考慮して、処理温度は、適宜調整することが好ましい。但し、上記温度及び時間はあくまでも例示であり、これらの範囲に限定される意図ではない。また、保存する場合は、そのまま室温にて保存することができる。
上記被透明化物の保存液での処理は、一部又は全部の処理操作において、マイクロ波を照射しながら行うことができる。マイクロ波は、例えば、周波数が2.45GHzであることができるが、これに限定される意図ではない。マイクロ波を照射しながら上記被透明化物の保存液での処理を行うことで、透明化をより促進することができ、より短時間での透明化が可能となる。特に、40〜50℃の温度において、マイクロ波を照射しながら上記被透明化物の保存液での処理を行うことで、10〜90分程度の比較的短時間で、標本に損傷を与えることなく透明化が可能である。尚、照射するマイクロ波の出力は、被透明化物の種類や大きさ、さらには保存液の量などを考慮して適宜決定することができる。
被透明化物を固定液で処理することで、透明化した生物標本を得ることができる。得られた透明化した生物標本は、そのまま次の、例えば、観察に用いることができ、あるいはそのまま保存することもできる。但し、被透明化物の種類によっては、透明化が不十分な場合がある。このような被透明化物については、再度、工程(2)及び工程(3)を繰り返し実施することで、さらに透明化を促進することができる。あるいは、透明化が不十分な場合、以下の透明化追加促進液を用いる処理に付すこともできる。また、透明化追加促進液を用いる処理は、本発明の透明化生物標本透明化方法(A)または(B)で得られた透明化生物標本に対して実施することもできる。
<透明化追加促進液処理>
本発明の透明化生物標本透明化方法(A)〜(C)で得られた透明化生物標本は、3価アルコール溶液または3価アルコール含有水溶液からなる透明化追加促進液に浸漬し、次いで前記透明化追加促進液に浸漬した後に得られる被透明化物を、前記保存液に保持して、透明化した被透明化物を得ることもできる。3価アルコールは、透明化をより促進する成分であり、この処理により、透明化をより促進することができる場合がある。3価アルコールとしては、例えば、グリセロールを挙げることかできる。透明化追加促進液処理は、例えば、骨、神経線維の透明度を上げる場合に有効である。
固定液、透明化促進液または保存液で処理した被透明化物の透明化追加促進液での処理は、例えば、所定量(少なくとも被透明化物の全体が透明化追加促進液に沈む量)の保存液に室温(例えば、5〜35℃、好ましく15〜30℃、以下同様)または室温から60℃の範囲の温度において、30分間〜48時間の範囲、好ましくは1時間〜24時間の範囲、より好ましくは1時間〜12時間の範囲で被透明化物を浸漬することで行われる。温度が高い方が、短時間で透明化促進効果が得られる傾向はあるが、被透明化物の種類によっては、組織へのダメージが大きくなる虞もあるので、この点も考慮して、処理温度は、適宜調整することが好ましい。但し、上記温度及び時間はあくまでも例示であり、これらの範囲に限定される意図ではない。
上記被透明化物の透明化追加促進液での処理は、一部又は全部の処理操作において、マイクロ波を照射しながら行うことができる。マイクロ波は、例えば、周波数が2.45GHzであることができるが、これに限定される意図ではない。マイクロ波を照射しながら上記被透明化物の透明化追加促進液での処理を行うことで、透明化をより促進することができ、より短時間での透明化が可能となる。特に、40〜50℃の温度において、マイクロ波を照射しながら上記被透明化物の透明化追加促進液での処理を行うことで、10〜90分程度の比較的短時間で、標本に損傷を与えることなく透明化が可能である。尚、照射するマイクロ波の出力は、被透明化物の種類や大きさ、さらには透明化追加促進液の量などを考慮して適宜決定することができる。
上記(1)固定液処理、(2)透明化促進液処理及び(3)保存液処理で用いことができる組織透明化のための基本プロトコール(step 1-4)を以下に例示する。
Step 1. 透明標本作製用固定液:室温、数時間〜数日間
(a)2-4% リン酸緩衝ホルムアルデヒドまたは2-4% リン酸緩衝パラホルムアルデヒド、5% Triton X-100または5% Tween20、1% KOH混合液、
(b)2-4%ホルムアルデヒド水溶液または2-4%パラホルムアルデヒド水溶液、5% Triton X-100または5% Tween20、1% KOH混合液
Step 2. 洗浄:室温で30分〜オーバーナイト
(i)蒸留水、または
(ii)Tris-HCl緩衝液(TB(S), pH7.5)、または
(iii)リン酸緩衝液(PB(S), pH7.2-7.4)、または
(iv)40% エチレングリコール/PB(S)
(オプション:漂白と脱脂)
漂白:(i)0.3%過酸化水素水、50%(70-50%)アセトン、50%(30-50%)エチレングリコール混合液、または
(ii)0.3%過酸化水素水、50%エタノール、50%エチレングリコール混合液、室温、数時間〜一晩
脱脂:(i)50%(70-50%)アセトン、50%(30-50%)エチレングリコール混合液、または
(ii)50% エタノール、50% エチレングリコール混合液、室温、数時間〜数日、または
(iii)50% エタノール、50% グリセロール混合液
*脱脂作用は(i)のアセトン混合液が優れる。
*マウス成獣脳では漂白1日、脱脂1日−2日が適当である。
ラット成獣脳では漂白1日、脱脂2日−3日が適当である。
Step 3. 組織透明化促進液:室温または50℃, 30分〜2日
透明化促進液1:20%(5-20%)Triton X-100、1% KOH、または
透明化促進液2:20%(5-20%)Tween20、1% KOH、または
透明化促進液3:10%(5-20%)Triton X-100、10%(5-25%)Tween20、1% KOH
透明化促進効果:促進液3>促進液1>促進液2
Step 4. 透明標本保存液:室温または50℃,30分〜2日(50-60℃で透明化は促進)
保存液1:20%(5-20%)Triton X-100、20% エチレングリコール、または
保存液2:20%(5-20%)Tween20、20% エチレングリコール、または
保存液3:25%(5-25%)Triton X-100、5%(5-1%)Tween20、20% エチレングリコール
保存液4: 20%(5-20%)Triton X-100、20% エチレングリコール、10% (0.5-10%)DMSO(ジメチルスルホキシド)(pH 8-9)
透明化促進効果:保存液4>保存液3>保存液1>保存液2
Step 4で得られた標本の透明度が足りない場合には、Step 3透明化促進液およびStep 4保存液の繰り返しを行うことで、透明度をさらに向上することができる。この場合、保存には、透明標本保存液1−4のいずれかを用いることができる(透明度:4>3>1>2)。
Step 5
標本の透明度を更に上げたい場合、または骨、神経線維等の透明度を上げたい場合には、以下に示す透明化追加促進液処理を追加することができる。透明化追加促進液は、グリセロール100%の溶液であるか、またはグリセロール50%以上の水溶液であることができる。グリセロール濃度が高いほど、透明化追加促進効果は高くなる。具体的なプロトコルは例えば、以下の通りである。
5.1 乳化:100%グリセロールで、室温、30分から数時間インキュベート。
標本を入れると同時に、乳化が始まり、溶液は乳白色となる。同時に、標本の透明化は急激に進み、硬くなる。Step 4の透明標本保存液では組織膨化が認められるが、本グリセロール処理では収縮する。
5.2 保存:5.1の標本を60%グリセロールでさらに処理する。100% グリセロールより60% グリセロールでの処理の方が、透明度が高い標本が得られる。この処理では、 オーバーナイトで少し濁り、膨化(+)が生じる。5.2の処理の後、保存液1(25% Triton X100, 5% Tween20, ethylene glycol)、または保存液3(20% Triton X100, 5% Tween20, 20% ethylene glycol)で保存すると透明度がすぐに上がる。脳の場合の透明度は、保存液1>保存液3(肝臓は保存液1<保存液3)である。
・透明化追加促進液による処理で軟部組織は、急激に著しく透明度が上がる。
・透明化追加促進液による処理は、特に脳の透明化に適した処理である。
・Step 1-4の処理では、白質の線維に乳白色の沈殿が生じる(骨化部位も同様)場合がある。これを取り除く処理として、50℃-60℃の加熱が有効であるが、72時間を越えると、突然、脳の融解(崩壊)が起こり、液化することがあるので、温度と時間の管理を適切に行うことが好ましい。
・透明化追加促進液による処理では、胎児の白色に強調されていた骨化部位の色調も落ちる(透明化する)。従って、骨が見えないほうが良い場合には、透明化追加促進液による処理は有効である。
<透明化生物標本作製用キット>
本発明の透明化生物標本作製用キットは、キット(A)固定液、キット(B)固定液及び透明化促進液、キット(C)固定液及び保存液、または固定液、透明化促進液及び保存液、キット(D)透明化促進液を、それぞれ含むものである。
前記固定液は、(a)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液または(b) ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、及びアルカリを含有する水溶液である。固定液(b)は、緩衝剤を含有しない。前記透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液である。前記保存液は、非イオン系界面活性剤及び多価アルコールを含有する水溶液である。前記固定液、透明化促進液、及び保存液における非イオン系界面活性剤の濃度は、独立に1%以上である。固定液、透明化促進液及び保存液の組成及び濃度等は、上記透明化生物標本作製方法(A)、(B)及び(C)で説明したものと同様である。
本発明のキットは、本発明の透明化生物標本作製方法(A)〜(C)に適宜用いられる。
本発明のキットは、3価アルコール溶液または3価アルコール含有水溶液からなる透明化追加促進液をさらに含むことができる。3価アルコールは、例えば、グリセロールである。透明化追加促進液の組成及び濃度等は、上記透明化生物標本作製方法及び透明化追加促進液処理で説明したものと同様である。
以下、本発明を実施例等によりさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定される意図ではない。尚、実施例において記載の保存液3及び促進液3は、前記プロトコルに記載のものである。
参考例1
透明標本保存液の組成の検討
(1)Triton X100およびTween20濃度の検討
標本として、顔料インクを血管内に注入したラット成獣の肝臓を用いた。
2%リン酸緩衝ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)、5% Triton X-100、1% KOH混合液にて潅流後、同固定液にて12時間浸漬固定した後、40%エチレングリコール/PB(リン酸塩緩衝液)にて室温保存した。
(濃度条件の設定および効果の判定)
Triton X-100(Tx100): 20%, 10%, 5%, 1.25%
Tween20(Tw20): 40%, 20%, 10%, 5%, 1.25%
Tx+Tw(各同濃度): 20%, 10%, 5%, 1.25%
Tx-Tw含まないもの: 0%
室温にて24時間インキュベーションした後に、肝臓内部の血管(インクで黒色に染まる)を指標に、実体顕微鏡下にて組織の透明度の評価を行った。結果を図1に示す。
・40% Triton 100は室温では固化するため、検討しなかった。
・赤線よりも左側の処置群で、透明化の効果が確認された。
・Triton X-100, Tween 20単独でも透明化作用は認められるが、両者の混合液では、より低濃度域から透明化作用が認められた。
<サンプル作成例>
実施例1
メダカおよびアマガエルの透明化
<条件>
(1)固定
2%リン酸緩衝ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)、5% Triton X-100、1% KOH混合液
室温、1時間〜オーバーナイト
(2)洗浄
リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.2-7.4)
室温、30分
(3)組織透明化液促
促進液2:20% Tween20、1% KOH
室温、10分〜30分
(4)透明標本保存液
20% Triton X-100、5% Tween20、20% エチレングリコール(保存液3)
室温、10分〜30分
<結果>
結果を図2に示す。従来の透明化処理法では、透明化完了までに数日から1週間程度必要(固定時間を含まず)。本法では、全身がガラスのように透明になるのが特徴であり、従来のグリセリンやScale試薬による透明標本と比べると、はるかに透明度が高く組織が硬いのが特徴である。図2に示すメダカでは、皮膚、筋肉、内臓はすべて残してある。メラニン色素は残る。図3に示すアマガエルでは、皮膚、筋肉は残してある。内臓が透けて見える。
実施例2
マウス胎児(胎齢14日)および新生児(生後二日)の透明化
<条件>
(1)固定
2%リン酸緩衝ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)、 5% Triton X-100、1% KOH混合液、
室温、1時間〜オーバーナイト
(2)洗浄
リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.2-7.4)、
室温、30分
(3)漂白(新生児のみ)
0.3%過酸化水素水、50% アセトン、50% エチレングリコール混合液、
室温、1時間
(4)透明化処理
20% Triton X-100、5% Tween20、20% エチレングリコール(保存液3)
室温、オーバーナイト
(5)組織透明化促進処理
10% Triton X-100、10% Tween20、1% KOH(促進液3)
室温、1時間(胎児)、オーバーナイト〜数日(新生児)
(6)透明化処理
20% Triton X-100、5% Tween 20、20% エチレングリコール(保存液3)
室温、30分、オーバーナイト〜数日(新生児)
<結果>
結果を図4及び5に示す。従来の透明化処理法では、透明化完了までに数日から1週間程度必要(固定時間を含まず)。本方法は、全身がガラスのように透明になるのが特徴であり、従来のグリセリンやScale試薬による透明標本と比べると、はるかに透明度が高く組織が硬いのが特徴である。透明化と同時に、骨化部位が白く強調される(Tween20またはTween20とエチレングリコール両者の作用と思われる)。Arizarin Red Sを用いた骨染色と同等以上の感度を示す。
図4に示すE14マウス胎児では、透明度が高く、軟部組織は肉眼では認識困難なほど透明度が高い。軟部組織の透明化とともに、非常に早期の骨化部位が白く染め出される(Tween20による作用と推察される)ことから、特別な骨染色を施すこと無く、非常に高感度な骨染色法としても応用できる(軟骨部は染まらない)。胎盤も透明化されている。
図5に示す生後二日目のマウス新生児では、産毛、皮膚、内臓などすべて残したまま透明化された。体表から透明化された腹部内臓の陰が観察される。骨は染色・強調(Tween20による作用と思われる)される。
実施例3
マウス成獣消化管組織の透明化(動脈からインク注入)
<条件>
(1)固定
2%リン酸緩衝ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)、5% Triton X-100、1% KOH混合液、
室温、1時間〜オーバーナイト
(2)洗浄
リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.2-7.4)、
室温、30分
(3)脱脂
50%アセトン、50%エチレングリコール混合液
室温、数時間〜オーバーナイト
(4)透明化処理
20% Triton X-100、5% Tween20、20% エチレングリコール(保存液3)
室温、30分〜1時間
<結果>
結果を図6及び7に示す。
消化管や腹壁など組織の厚さが1-2mm程度の標本の場合、透明標本用固定液にて固定された段階で、組織は十分に透明となる(固定だけで、内部観察が可能)。
小腸壁など、脱脂が不要な部位では、透明化処理全行程3時間以程度で十分である。非常に透明度が高い。
肝臓は、固定時間を長くすることでビリルビンの除去が進み、透明度が上がる。また脱脂の段階で、最終濃度が0.3%となるように過酸化水素水を加えて数時間から一晩漂白することで、組織の着色をほとんど除去することが可能である。
図6に示すマウス成獣の小腸では、 腸絨毛内の毛細血管網が透見される。
図7に示すマウス成獣の肝臓では、肝臓に分布する動脈を細部まで観察することができる。
実施例4
マウス成獣脳の透明化(その1)
<条件>
(1)固定
2%リン酸緩衝ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)、5% Triton X-100、1% KOH混合液、
室温、1時間〜オーバーナイト
(2)洗浄
リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.2-7.4)、
室温、30分
(3)漂白
0.3% 過酸化水素水、50% アセトン、50% エチレングリコール混合液
室温、24時間
(4)脱脂
50% アセトン、50% エチレングリコール混合液
室温、数時間〜オーバーナイト
(5)透明化処理
20% Triton X-100、5% Tween20、20% エチレングリコール(保存液3)
室温または50℃、24時間〜
(6)組織透明化促進処理
10% Triton X-100、10% Tween20、1% KOH(促進液3)
室温または50℃、24−48時間
(7)透明化処理、保存
20% Triton X-100、5% Tween20、20% エチレングリコール(保存液3)
<結果>
結果を図8及び9に示す。
大脳新皮質の灰白質については、漂白、脱脂処理は不要であり、促進液と保存液中で12時間ずつインキュベートすれば、透明化は完成する。目視困難なほど透明化が進む。
図8はC57B6/J メス成獣脳について、2% リン酸緩衝ホルムアルデヒド、5% Triton X-100、1% KOH混合液にて固定(室温、オーバーナイト)処理後に、アセトン・エチレングリコール混合液にて脱脂、室温、72時間した結果を図8(A)に示す。さらに、促進液3(室温、12時間)及び保存液3(室温、24時間)での処理をした結果を図8(B)に示す。灰白質は非常に透明度が高いが、白質(神経線維)に乳白色の沈殿を生じた。
白質(神経線維)に生じた乳白色の沈殿の成分は不明であるが、保存液3、50℃にて12−48時間インキュベートすることで、沈殿を除去することが可能であった。結果を図8(C)に示す。白色の沈殿はほとんど消失したが、暗視野観察で白質の線維に若干の濁りが認められる。背側大脳皮質表面から、脳底表面を走る血管を顕微鏡下に観察することができる。
・グリセロール処理の追加で更に透明化の亢進(特に白質の透明化)が可能であった。結果を図9−1及び9−2に示す。保存液3でも十分に透明度が高いが、深部の白質(神経線維)では若干透明度が落ちる。保存液中で透明化が完了した脳を、100%グリセロールに入れると、速やかに脳全体の透明度が著しく上がり、白質の濁りも消える。本実験における保存は、60%グリセロールよりも保存液3に戻したほうが良い結果(透明度が更に上がる)が得られた。
実施例5
ICRマウス成獣(9 wks, ♂)脳の透明化(その2)
<条件>
(1)固定
2%PFA(パラホルムアルデヒド)、5% Triton X100、0.5% KOH、使用まで数か月間固定液中で保存
(2)前処理(洗浄)
20% エチレングリコール、5% Triton X-100、1% KOH、室温、オーバーナイト
(3)保存液(透明化処理1)
20% エチレングリコール、25% Triton X-100、pH 8.5、室温、オーバーナイト(数時間で十分)
(4)保存液(透明化処理4)
20% エチレングリコール、20% Triton X-100、10% DMSO、pH 8.5、室温、オーバーナイト(数時間で十分)
<結果>
上記(2)、(3)及び(4)の各処理後の結果(写真)を図10に示す。
実施例5では、実施例4におけるグリセロールの使用及び加熱を要しない。(2)の処理においても、透明化は進行するが、(3)の処理後に透明化はほぼ完成する。(4)の処理後は、目視困難なほど透明化が進む。本実施例では、(4)の保存液が10% DMSOを含有するため、標本は膨張するので短時間の観察用に適する。本実施例では脳の例を示したが、肺でも同様に透明化が進むことを確認済みである。肺の場合には、(4)の保存液が10% DMSOを含有しても、標本は膨張しない。
実施例6
ラット成獣前腕(動脈にインク注入)
標本作製過程は、実施例4に記載の脳の標本作製過程に準じる。結果を図11に示す。
・筋肉をすべて残したまま透明化した。前腕の太い筋肉を通して、骨が明瞭に確認できる。
・筋肉内に分布する血管網が透見できる。
・顕微鏡のフォーカス面における筋線維の走行が確認できる(断層撮影のような観察が可能)。
実施例7
迅速骨染色法
<条件>
(1)固定:オーバーナイト〜数日, 室温
2%リン酸緩衝ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド), 5% Triton X-100, 1% KOH
・固定後、すぐに透明化が始まる。
・色素はどんどん抜ける。特に赤はよく抜ける。一方、メラニンはなかなか抜けない。
・この段階で十分透明化しておくと、骨染色後の脱色・分別時間が大幅に短縮される。
・皮をはいでおく方が、透明化の時間が短いが、皮を残しておいても十分に透明になる。
・メダカは一晩の固定が適当である。固定液中で、数日でガラス状になる。
・ドジョウは一晩の固定が適当である。しかし体色は十分抜けていない。真っ白になるまで2-3週間、その後に染色する場合、完了まで半日程度かかる。
(2)皮剥ぎ(骨染色、その他の目的で皮膚が邪魔な時のオプション)
推奨は、数時間固定してから皮剥ぎすることである。
・固定前に皮剥ぎをしておくと透明化は非常に早いが、皮剥ぎの時にサンプルが壊れやすい。
・数日固定して十分に透明化が進んでいると、皮剥ぎは非常に楽にできる。
・本法では時間をかけると、皮膚も十分に透けるので皮剥ぎは必須ではない。
(3)骨染色:室温、2時間
0.05% アリザンレッドS、1% KOH、1% Tween 20(または1% Triton X-100)
(4)透明化促進および洗浄:50℃、数時間〜一晩
透明化促進液2:20% Tween20、1% KOH
染色液の抜けが悪い、透明化が十分に進まないときは、下記いずれかの透明化促進液を用いることができる。
透明化促進液1:20% Triton X-100, 1% KOH, 50℃
透明化促進液3:10% Triton X-100, 10% Tween20, 1% KOH
・魚、カエルでは透明化促進液2が適している。
・哺乳動物は透明化促進液3が良い。
・固定時に標本が半透明になっていれば、染色工程は3−4時間で終了する。
・室温でも洗浄可能であるが、遅く、50℃が好ましい。
・中性〜酸性では、急激な組織破壊が起きるため、透明化促進液にはKOHを添加する。
(5)透明標本保存液
保存液3:20% Triton X-100、5% Tween20、20% エチレングリコール
*保存液3はグリセロールよりも透明度が高い場合があった(特に哺乳動物の組織の場合)
*グリセロール置換による透明化の方法では、メダカ、カエルなどで、固定後〜染色終了までの所要時間は数日から1週間である。本法では半日から1日で完了する。
図12及び13に、得られた魚の骨染色標本(固定:2%リン酸緩衝パラホルムアルデヒド、5%Triton X-100, 1%KOH)を示す。
図12に示すメダカでは、半日で完成する。透明度はグリセロール標本よりも高い。
図13に示すエンジェルフィッシュでは、比較的大きい標本でも24時間程度で完成する。
実施例8(リン酸塩緩衝液を含まない固定液を用いた方法)
条件1:
固定化: 固定液(2% パラホルムアルデヒド, 5%Triton X-100, 1% KOH混合液)にて固定(室温、オーバーナイト)
保存: 保存液(25% Triton X100, 1% Tween 20, 20% ポリエチレングリコール)にて保存
条件2(通常の固定後に本発明の透明化処理):
固定化: 固定液(2% パラホルムアルデヒド)にて固定(室温、オーバーナイト)
透明促進化: 透明促進化液(5%Triton X-100, 1% KOH混合液)(室温、オーバーナイト)
保存: 保存液(25% Triton X100, 1% Tween 20, 20% ポリエチレングリコール) にて保存
条件3(通常の固定後に本発明の透明化処理):
固定化: 固定液(4% パラホルムアルデヒド)にて固定(室温、オーバーナイト)
透明促進化: 透明促進化液(5%Triton X-100, 1% KOH混合液)にて固定(室温、オーバーナイト)
保存: 保存液(25% Triton X100, 1% Tween 20, 20% ポリエチレングリコール) にて保存
固定化後の標本および透明化および保存後の標本の写真を図14に示す。写真中の番号が条件番号である。
実施例9(リン酸塩緩衝液を含まない固定液を用いた骨染色方法)
条件1:
固定化: 固定液(2% パラホルムアルデヒド, 5%Triton X-100, 1% KOH混合液)にて固定(室温、オーバーナイト)
染色: Alizarin red Sにて骨染色
透明促進化: 透明促進化液(20% Tween 20, 1% KOH)、(42℃、オーバーナイト)
透明追加促進化: 透明追加促進化液(グリセロール(100%))
条件2(通常の固定後に透明化処理):
固定化: 固定液(2% パラホルムアルデヒド)にて固定(室温、オーバーナイト)
透明促進化: 透明促進化液(5%Triton X-100, 1% KOH混合液)(室温、オーバーナイト)
染色: Alizarin red Sにて骨染色
透明促進化: 透明促進化液(20% Tween 20, 1% KOH)、(42℃、オーバーナイト)
透明追加促進化: 透明追加促進化液(グリセロール(100%))
条件3(通常の固定後に透明化処理):
固定化: 固定液(4% パラホルムアルデヒド)にて固定(室温、オーバーナイト)
透明促進化: 透明促進化液(5%Triton X-100, 1% KOH混合液)(室温、オーバーナイト)
染色:Alizarin red Sにて骨染色
透明促進化: 透明促進化液(20% Tween 20, 1% KOH)(42℃、オーバーナイト)
透明追加促進化: 透明追加促進化液(グリセロール(100%))
固定化後の標本および透明化および保存後の標本の写真を図15に示す。写真中の番号が条件番号である。
本発明は、生物標本の観察が必要な分野において有用である。

Claims (14)

  1. 固定液を含む透明化生物標本作製用キット、又は固定液を含み、かつ透明化促進液及び保存液のいずれか一方若しくは両方を含む透明化生物標本作製用キットであって、
    前記固定液は、(a)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液または(b) ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、及びアルカリを含有する水溶液であり、
    前記透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液であり、
    前記保存液は、非イオン系界面活性剤及び多価アルコールを含有する水溶液であって、かつ前記固定液、透明化促進液及び保存液における非イオン系界面活性剤の濃度は、独立に1v/v%以上、40v/v%以下(但し、Triton (登録商標) X-100の場合は、40v/v%は除く)であるキット(但し、尿素及び尿素誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む透明化試薬を含むキットを除く)。
  2. 3価アルコール溶液または3価アルコール含有水溶液からなる透明化追加促進液をさらに含む請求項1に記載のキット。
  3. 生物標本である被透明化物を固定液で処理して、透明化した被透明化物を得る工程(1)を含む透明化生物標本作製方法であって、前記固定液は、(a)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液または(b)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、及びアルカリを含有する水溶液であり、かつ非イオン系界面活性剤の濃度は、1v/v%以上、40v/v%以下(但し、Triton(登録商標) X-100の場合は、40v/v%は除く)である方法(但し、固定液が尿素及び尿素誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む透明化試薬を含む方法を除く)。
  4. 生物標本を固定化した被透明化物(但し、前記生物標本は、生体全体または内臓、血管、神経及び脳から成る群から選ばれる少なくとも1種の組織)または請求項3に記載の方法の工程(1)において固定液で処理した被透明化物を透明化促進液で処理して、透明化した被透明化物を得る工程(2)を含む透明化生物標本作製方法であって、前記透明化促進液は、非イオン系界面活性剤及びアルカリを含有する水溶液であり、かつ非イオン系界面活性剤の濃度は、1v/v%以上、40v/v%以下(但し、Triton(登録商標) X-100の場合は、40v/v%は除く)であり、かつ
    前記請求項3に記載の方法の工程(1)における固定液は、(a)ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、非イオン系界面活性剤、アルカリ及び緩衝剤を含有する水溶液であり、かつ非イオン系界面活性剤の濃度は、1v/v%以上、40v/v%以下(但し、Triton(登録商標) X-100の場合は、40v/v%は除く)である方法(但し、透明化促進液が尿素及び尿素誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む透明化試薬を含む方法を除く)。
  5. 前記生物標本を固定化した被透明化物は、生物標本をホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを含み、非イオン系界面活性剤及びアルカリの一方または両方を含有しない水溶液で処理したものである請求項4に記載の方法。
  6. 請求項3に記載の方法の工程(1)において固定液で処理した被透明化物、または請求項4または5に記載の方法の工程(2)において透明化促進液で処理した被透明化物を保存液で処理して、透明化した被透明化物を得る工程(3) を含む透明化生物標本作製方法であって、前記保存液は、非イオン系界面活性剤及び多価アルコールを含有する水溶液であり、かつ非イオン系界面活性剤の濃度は、1v/v%以上、40v/v%以下(但し、Triton(登録商標) X-100の場合は、40v/v%は除く)である方法。
  7. 固定液で処理した被透明化物を漂白、脱脂又は漂白及び脱脂処理した後に、透明化促進液または保存液で処理する請求項4または5に記載の方法。
  8. 請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法における工程(1)の処理は、5〜60℃の範囲の温度で行い、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法における工程(2)の処理は、5〜60℃の範囲の温度で行い、又は請求項6〜7のいずれか1項に記載の方法における工程(3)の処理は、5〜60℃の範囲の温度で行う請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法における工程(1)で得られた透明化した被透明化物を3価アルコール溶液または3価アルコール含有水溶液からなる透明化追加促進液に浸漬し、次いで前記透明化追加促進液に浸漬した後に得られる被透明化物を、請求項6に記載の保存液に保持して、透明化した被透明化物を得る、又は
    請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法における工程(2)で得られた透明化した被透明化物を3価アルコール溶液または3価アルコール含有水溶液からなる透明化追加促進液に浸漬し、次いで前記透明化追加促進液に浸漬した後に得られる被透明化物を、請求項6に記載の保存液に保持して、透明化した被透明化物を得る、又は
    請求項6〜7のいずれか1項に記載の方法における工程(3)の処理で得られた透明化した被透明化物を3価アルコール溶液または3価アルコール含有水溶液からなる透明化追加促進液に浸漬し、次いで前記透明化追加促進液に浸漬した後に得られる被透明化物を、請求項6に記載の保存液に保持して、透明化した被透明化物を得る請求項3〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記生物標本は、魚類、爬虫類、両生類、鳥類または哺乳類である請求項3〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記生物標本は生体組織であり、生体組織は、内臓、脳、または骨である請求項3〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記被透明化物は、固定液による処理前または後に染色処理されたものである請求項3〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記染色処理が、蛍光染色である請求項12に記載の方法。
  14. 請求項3〜13のいずれか1項に記載の方法に用いられる請求項1または2に記載のキット。
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