JP6271824B2 - ポリアリレート樹脂およびそれからなるフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性、透過性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性および機械特性に十分に優れ、かつ、誘電率、誘電正接、屈折率および低比重が十分に低いポリアリレート樹脂およびそれからなるフィルムに関するものである。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略称する場合がある。)の残基とテレフタル酸およびイソフタル酸の残基とからなる非晶性ポリエステル(以下、「フタル酸ポリアリレート」と略称する。)はエンジニアリングプラスチックとして知られている。
フタル酸ポリアリレートは耐熱性が高く、衝撃強度に代表される機械的強度および寸法安定性に優れ、かつ透明であるため、その成形品は電気・電子、自動車、機械等の分野に幅広く応用されている。
しかし、フタル酸ポリアリレート樹脂は、被膜としたときに可視光線の短波長側領域から紫外線領域における透過率の低いことが指摘されていた。
さらに、フタル酸ポリアリレート樹脂はジクロロメタンおよびクロロホルムといったハロゲン系溶媒にしか溶解しないため、環境への影響および安全性の問題から、使用できる用途が限られていた。このため、被膜を形成するための溶媒として一般的に使用されるケトン系溶剤(シクロヘキサノン、シクロペンタノン等)および芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン等)への溶解性が求められていた。
上記のような課題を解決するために、特許文献1にはジフェニルエーテルジカルボン酸残基を含むポリアリレート樹脂が開示されている。
一方、特許文献2には、耐傷性の観点から、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン等の二価フェノール成分と、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸成分とから得られるポリアリレート樹脂が開示されている。
特開2006−290959号公報 国際公開第2014/115694号
ポリアリレート樹脂は、特に電気絶縁性および誘電特性が優れていることから、フィルムコンデンサー、プリント配線基板、光導波路が搭載された光電混載基板等の電子部品への応用が展開されている。近年、電子機器では、高速大容量通信に向けた高周波化が進んでおり、信号処理の高速化が求められている。電気信号の伝播遅延および伝送損失には、絶縁材料の誘電率および誘電正接が影響するため、一般的なビスフェノールA型のポリアリレート樹脂では不十分であり、優れた機械特性を維持した状態で、より低い誘電率および低い誘電正接をもった材料が求められていた。
一方、コンデンサーおよびプリント配線基板上の部品の接合および固定などに、紫外線などの光硬化樹脂が用いられることがあり、硬化させる面の逆側から光線照射をおこないたい場合、用いられる材料には可視光領域から紫外線領域の透過性が求められていた。
耐熱性の点では、近年、鉛フリーはんだの使用およびリフローはんだ付けがおこなわれたり、車載用部品として使う場合では長期耐熱性が必要となったりするため、一般的なビスフェノールA型のポリアリレート樹脂では耐熱性が不十分であり、さらなる耐熱性をもった材料が求められていた。
また、比重の点では、例えばモバイル機器および車載用部品などに用いられる場合は、軽量化させるために、低比重な材料が求められていた。
なお、ここで記載する優れた機械特性とは、引張破断強度および伸度が大きい値を示す特性のことであり、優れた誘電特性とは、誘電率および誘電正接が十分に低い特性のことである。
特許文献1,2に開示されているポリアリレート樹脂は、耐熱性、短波長領域での透過性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性および誘電特性が総合的に十分ではなかった。
特許文献1で記載されているポリアリレート樹脂は、誘電特性、屈折率および比重などについては、十分に触れられておらず、実際にそれらの特性は総合的に満足できるものではなかった。また、特許文献1で挙げられているビスフェノール残基は、短波長領域での透過性は記載されているものの満足できるものではなく、さらなる透過性の向上が可能なビスフェノール残基求められていた。
一方、特許文献2では、透過性、誘電率、誘電損失、機械強度、屈折率および比重などについては、十分に触れられておらず、実際に特許文献2の実施例で記載されているポリアリレート樹脂は、短波長領域での透過性および機械特性が満足できるものではなかった。
本発明は、かかる従来技術を鑑み、耐熱性、透過性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性および機械特性の全ての特性に十分に優れ、かつ、誘電率、誘電正接、屈折率および比重が十分に低いポリアリレート樹脂およびそれからなるフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定の環状アルキル基(すなわちシクロアルカン部)を有する二価フェノール残基と、特定のジフェニルエーテルジカルボン酸残基を含むポリアリレート樹脂を用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
<1> 一般式(1)で示される二価フェノール残基と、一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基を含むポリアリレート樹脂。
(式(1)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、pおよびqは、独立して、0〜4の整数を表し、mは6〜14の整数を表す。)
(式(2)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、rおよびsは、独立して、0〜4の整数を表す。)
<2> 一般式(1)で示される二価フェノール残基が、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン残基である<1>に記載のポリアリレート樹脂。
<3> 一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基が、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基である<1>または<2>に記載のポリアリレート樹脂。
<4> 一般式(1)で表される二価フェノール残基の含有量が、全二価フェノール成分に対して、10モル%以上である<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
<5> 一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基の含有量が、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、70モル%以上である<1>〜<4>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
<6> さらに一般式(3)で示されるビフェノール残基を含む<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
(式(3)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、tおよびuは、独立して、0〜4の整数を表す。)
<7> 一般式(3)で示されるビフェノール残基の含有量が、全二価フェノール成分に対して、90モル%以下である<6>に記載のポリアリレート樹脂。
<8> さらに一般式(4)で示されるフタル酸残基を含む<1>〜<7>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
<9> 一般式(4)で示されるフタル酸残基の含有量が、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、30モル%以下である<8>に記載のポリアリレート樹脂。
<10> <1>〜<9>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂からなるフィルム。
本発明によれば、耐熱性、透過性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性および機械特性に十分に優れ、かつ、誘電率、誘電正接、屈折率および比重が十分に低いポリアリレート樹脂およびそれからなるフィルムを提供することができる。本発明のポリアリレート樹脂およびそれからなるフィルムは、ディスプレイ、フィルムコンデンサー、照明、太陽電池、プリント配線基板等の基板フィルムに好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリアリレート樹脂は、二価フェノール残基と芳香族二価カルボン酸残基とから構成される。
本発明のポリアリレート樹脂は、二価フェノール残基として、特定の環状アルキル基(すなわち特定のシクロアルカン部)を有する一般式(1)で示される残基を含有することが必要である。一般式(1)で示される残基を含有させることで、耐熱性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性を向上させ、比誘電率、誘電正接、屈折率および比重を低下させることができる。
一般式(1)において、RおよびRは、ベンゼン環に結合する置換基を表し、それぞれ独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基等)、炭素数が1〜6のハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)を表す。これらの中でも、工業的に入手し易いことおよび合成し易いことから、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、または炭素数3〜6のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基等)が好ましい。RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(特に臭素原子)、または炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)がより好ましい。
一般式(1)において、pおよびqは、ベンゼン環に結合する置換基RおよびRの数を表し、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。なお、pおよびqが0の場合、一般式(1)中におけるベンゼン環に結合するすべての水素原子がRおよびRに置換されていないことを表す。pが2〜4の場合、複数のRは、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。qが2〜4の場合、複数のRは、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。pおよびqは、工業的に入手し易いことおよび合成し易いことから、それぞれ独立して0または1であることが好ましく、互いに同じ値であることがより好ましい。pおよびqは、耐熱性のさらなる向上観点から、0であることがさらに好ましい。
一般式(1)において、mは環状アルキル基(すなわち特定のシクロアルカン部)のメチレン基の数を表し、6〜14の整数を表す。mは、耐熱性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性および誘電特性の観点から、好ましくは7〜13、より好ましくは8〜13の整数である。耐熱性、非ハロゲン系有機溶剤(特に非ハロゲン芳香族炭化水素系溶剤)への溶解性および誘電特性のさらなる向上の観点から、mは10〜12の整数であることがさらに好ましい。mが6より小さい場合、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性が低下したり、かつ/または比誘電率および誘電正接が大きくなる場合がある。一方、mが14より大きい場合、工業的に入手したり、合成することが難しい場合がある。
一般式(1)で表される二価フェノール残基を与える化合物として、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロウンデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロトリデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロテトラデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタデカンおよび上記化合物の芳香環上の水素が置換基で置換された誘導体が挙げられる。置換基としては、上記RおよびRとして例示した基および原子が挙げられる。これらの化合物の中でも、特に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンが好ましい。耐熱性および透過性のさらなる向上の観点から、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンがより好ましい。
一般式(1)で表される残基の含有量は、全二価フェノール成分(すなわち全二価フェノール成分に由来する全残基)に対して、通常5モル%以上であり、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性のさらなる向上の観点から、10モル%以上とすることが好ましく、20モル%以上とすることがより好ましく)、30モル%以上とすることがさらに好ましく、35モル%以上とすることが特に好ましく、40モル%以上とすることが最も好ましい。一般式(1)で表される残基の含有量は、全二価フェノール成分に対して、通常100モル%以下であり、耐熱性、比誘電率および誘電正接のさらなる向上の観点から、90モル%以下とすることが好ましく、80モル%以下とすることがより好ましく、60モル%以下とすることがさらに好ましく、50モル%以下とすることが最も好ましい。一般式(1)で表される残基の含有量は、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性、耐熱性、比誘電率および誘電正接の良好なバランスの観点から、全二価フェノール成分に対して、10〜100モル%とすることが好ましく、10〜90モル%とすることが特に好ましく、30〜90モル%とすることがより好ましく、40〜65モル%とすることが最も好ましい。二価フェノール成分に一般式(1)で示される残基が含まれない場合、透過性および/または耐熱性が低下したり、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性が低下したり、かつ/または比誘電率および誘電正接、屈折率および比重が高くなるので好ましくない。
本発明のポリアリレート樹脂は、さらに、二価フェノール残基として一般式(3)で表されるビフェノール残基を含有することが好ましい。一般式(1)に加えて、一般式(3)で表されるビフェノール残基を含有させることで、耐熱性および比誘電率を維持しつつ、機械特性が向上し、誘電正接の値をさらに低下させることができる。
一般式(3)において、RおよびRは、ベンゼン環に結合する置換基を表し、それぞれ独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基等)、炭素数が1〜6のハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)を表す。これらの中でも、工業的に入手し易いことおよび合成し易いことから、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、または炭素数3〜6のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基等)が好ましい。RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(特に臭素原子)、または炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)がより好ましい。
一般式(3)において、tおよびuは、それぞれベンゼン環に結合する置換基RおよびRの数を表し、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。なお、tおよびuが0の場合、一般式(3)中におけるベンゼン環に結合するすべての水素原子がRおよびRに置換されていないことを表す。tが2〜4の場合、複数のRは、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。uが2〜4の場合、複数のRは、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。非ハロゲン系有機溶剤への溶解性のさらなる向上の観点から、tおよびuはそれぞれ独立して1〜4が好ましく、互いに同じ値であることがより好ましい。
一般式(3)で表されるビフェノール残基を与える化合物として、例えば、4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールが挙げられる。
一般式(3)で示されるビフェノール残基の含有量は、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性のさらなる向上の観点から、全二価フェノール成分(すなわち全二価フェノール成分に由来する全残基)に対して、90モル%以下とすることが好ましく、80モル%以下とすることがより好ましく、70モル%以下とすることがさらに好ましく、65モル%以下とすることが特に好ましく、60モル%以下とすることが最も好ましい。一般式(3)で表されるビフェノール残基の含有量は、全二価フェノール成分に対して、耐熱性、比誘電率および誘電正接のさらなる向上の観点から、10モル%以上とすることが好ましく、20モル%以上とすることがより好ましく、40モル%以上とすることがさらに好ましく、50モル%以上とすることが最も好ましい。一般式(3)で表されるビフェノール残基の含有量は、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性、耐熱性、比誘電率および誘電正接の良好なバランスの観点から、全二価フェノール成分に対して、10〜90モル%とすることが好ましく、10〜70モル%とすることがより好ましく、35〜60モル%とすることが最も好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂は、二価フェノール残基として、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)および(3)で示される残基以外の他の二価フェノール残基を含有してもよい。他の二価フェノール残基を与える二価フェノールとしては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフルオレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−[1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)]、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジ−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、イサチン二価フェノール、イサチンビスクレゾール、ビス(2ーヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレン二価フェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2ーヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9、9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。なお、ここで用いられる二価フェノールとして、フッ素原子が含まれる二価フェノールは、廃棄処理が困難であったり、使用中にフッ素系化合物が発生して腐食が発生したり、耐熱性が不足したりする懸念があるため、好ましくない。当該他の二価フェノール残基の含有量は、耐熱性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性、誘電特性のさらなる向上の観点から全二価フェノール成分(すなわち全二価フェノール成分に由来する全残基)に対して、10モル%未満とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましく、ポリアリレート樹脂は当該他の二価フェノール残基を実質的に含まないことがさらに好ましい。すなわち、同観点からは、本発明のポリアリレート樹脂を構成する二価フェノール残基は、一般式(1)で示される残基のみからなるか、または一般式(1)で示される残基および一般式(3)で示される残基のみからなることが好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂は、芳香族二価カルボン酸残基として、一般式(2)で示される残基を含有することが必要である。一般式(2)で示される残基を含有させることで、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性および短波長領域での透過性が向上する。
一般式(2)において、RおよびRは、ベンゼン環に結合する置換基を表し、それぞれ独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基等)、炭素数が1〜6のハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)を表す。これらの中でも、工業的に入手し易いことおよび合成し易いことから、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、または炭素数3〜6のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基等)が好ましい。RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(特に臭素原子)、または炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)がより好ましい。
一般式(2)において、rおよびsは、ベンゼン環に結合する置換基の数を表し、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。なお、rおよびsが0の場合、式(2)中におけるベンゼン環に結合するすべての水素原子がRおよびRに置換されていないことを表す。rが2〜4の場合、複数のRは、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。sが2〜4の場合、複数のRは、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。耐熱性のさらなる向上の観点から、rおよびsはそれぞれ独立して0または1(特に0)であることが好ましく、互いに同じ値であることがより好ましい。
一般式(2)において、2つのベンゼン環における2つのカルボニル基の結合位置は、エーテル結合の位置を基準にしたとき、それぞれ独立して、オルト位、メタ位またはパラ位であってもよく、工業的に入手し易いことおよび所定のポリエステルの重合度が上がり易いことの観点から、共通して、パラ位であることが好ましい。
一般式(2)で示される残基を与える芳香族二価カルボン酸としては、例えば、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手しやすいことから、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が好ましい。
一般式(2)で表される残基の含有量は、全芳香族二価カルボン酸成分(すなわち全芳香族二価カルボン酸成分に由来する全残基)に対して、通常は50モル%以上であり、耐熱性、透過性および非ハロゲン系有機溶剤への溶解性のさらなる向上の観点から、60%以上とすることが好ましく、65モル%以上とすることがより好ましく、70モル%以上とすることがさらに好ましい。一般式(2)で表される残基の含有量は、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、通常100モル%以下であり、耐熱性および/または機械強度のさらなる向上の観点から、90モル%以下とすることが好ましく、80モル%以下とすることがより好ましく、75モル%以下とすることがさらに好ましい。一般式(2)で表される残基の含有量は、耐熱性、透過性および非ハロゲン系有機溶剤への溶解性の良好なバランスの観点から、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、50〜80モル%とすることが好ましく、60〜80モル%とすることが特に好ましく、60〜75モル%とすることがより好ましい。芳香族二価カルボン酸成分に一般式(2)で示される残基が含まれない場合、耐熱性が低下したり、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性が低下したり、被膜としたときに可視光線の短波長側領域から紫外線領域における透過率が低くなるため好ましくない。
本発明のポリアリレート樹脂は、さらに、芳香族二価カルボン酸残基として一般式(4)で表されるフタル酸残基を含有することが好ましい。一般式(2)に加えて、一般式(4)で表されるフタル酸残基を含有させることで、耐熱性および引張破断伸びをさらに向上させることができる。一般式(4)で表される二価カルボン酸残基を与える化合物として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸が挙げられる。
一般式(4)において、1つのベンゼン環における2つのカルボニル基の結合位置は、相互に、オルト位、メタ位またはパラ位であってもよく、耐熱性のさらなる向上の観点から、パラ位であることが好ましい。
一般式(4)で示されるフタル酸残基の含有量は、全芳香族二価カルボン酸成分(すなわち全芳香族二価カルボン酸成分に由来する全残基)に対して、通常は50モル%以下であり、可視光線の短波長側領域から紫外線領域における透過性の観点から、40%以下とすることが好ましく、35モル%以下とすることがより好ましく、30モル%以下とすることがさらに好ましい。一般式(4)で表されるフタル酸残基の含有量は、耐熱性および/または機械強度の観点から、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、10モル%以上とすることが好ましく、20モル%以上とすることがより好ましく、25モル%以上とすることがさらに好ましい。一般式(4)で表されるフタル酸残基の含有量は、光硬化性樹脂を硬化させるために必要な透過性の確保と、耐熱性および/または機械強度の観点から、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、20〜50モル%とすることが好ましく、20〜40モル%とすることがより好ましく、25〜40モル%とすることがさらに好ましい。
本発明においては、芳香族二価カルボン酸残基は、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(2)および一般式(4)の残基を与える芳香族二価カルボン酸以外の他の芳香族二価カルボン酸の残基を含有していてもよい。そのような残基を与える芳香族二価カルボン酸としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基等)が置換したテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等のフタル酸誘導体;4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸類およびその誘導体;および1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類およびその誘導体が挙げられる。当該他の芳香族二価カルボン酸残基の含有量は、耐熱性、非ハロゲン系有機溶剤への溶解性のさらなる向上の観点から、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、10モル%未満とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましく、ポリアリレート樹脂は当該他の芳香族二価カルボン酸残基を実質的に含まないことがさらに好ましい。すなわち、同観点からは、本発明のポリアリレート樹脂を構成する芳香族二価カルボン酸残基は、一般式(2)で示される残基のみからなるか、または一般式(2)で示される残基および一般式(4)で示される残基のみからなることが好ましい。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアリレート樹脂には、二価フェノール成分および芳香族二価カルボン酸成分以外に、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸等の他のモノマー成分を含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。他のモノマー成分の含有量は、ポリアリレート樹脂の原料モノマーの総モル数に対して、10モル%未満とすることが好ましく、ポリアリレート樹脂は当該他のモノマー成分を実質的に含まないことがより好ましい。すなわち、本発明のポリアリレート樹脂は二価フェノール成分および芳香族二価カルボン酸成分のみからなることが好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂の重量平均分子量は、耐熱性のさらなる向上の観点および機械強度、加工性の向上の観点から、重量平均分子量が60000〜150000であることが好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂のガラス転移温度は、プリント配線基板等の電子部品に用いる場合、鉛フリーのリフローはんだ付けに対する耐熱性が求められることから、240℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましく、275℃以上であることがさらに好ましい。ポリアリレート樹脂のガラス転移温度の上限値は特に限定されず、当該ガラス転移温度は通常、320℃以下、特に300℃以下である。
本発明のポリアリレート樹脂の比誘電率は、電子回路の信号速度を速くする観点から、1MHzにおいて2.9以下であることが好ましく、2.85以下であることがより好ましく、2.8以下であることがさらに好ましい。ポリアリレート樹脂の比誘電率の下限値は特に限定されず、当該比誘電率は通常、2.6以上、特に2.7以上である)。
また、信号の伝送損失を小さくする観点から、ポリアリレート樹脂の誘電正接は1MHzにおいて0.02以下であることが好ましく、0.016以下であることがより好ましく)、0.012以下であることがさらに好ましい。ポリアリレート樹脂の誘電正接の下限値は特に限定されず、当該誘電正接は通常、0.001以上、特に0.004以上である。
本発明のポリアリレート樹脂は、有機溶剤への溶解性に優れている。本発明のポリアリレート樹脂が溶解可能な有機溶剤としては、ハロゲン系有機溶剤および非ハロゲン系有機溶剤が挙げられる。ハロゲン系有機溶剤としては、例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等が挙げられる。非ハロゲン系有機溶剤は非ハロゲンケトン系溶剤、非ハロゲン芳香族炭化水素系溶剤および非ハロゲン環状エーテル系溶剤を包含する。非ハロゲンケトン系溶剤として、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。非ハロゲン芳香族炭化水素系溶剤として、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等が挙げられる。非ハロゲン環状エーテル系溶剤として、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。中でも、ハロゲンフリーの観点から、非ハロゲン系有機溶剤が好ましい。有機溶剤のハロゲンフリーおよびポリアリレート樹脂の非ハロゲン系有機溶剤への溶解性のさらなる向上の観点から、非ハロゲン芳香族炭化水素系溶剤(特に、トルエン、キシレン)、非ハロゲン環状エーテル系溶剤(特に、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン)、非ハロゲンケトン系溶剤(特に、シクロヘキサノン、シクロペンタノン)が好ましく、非ハロゲン芳香族炭化水素系溶剤(特に、キシレン)、非ハロゲンケトン系溶剤(特に、シクロヘキサノン)がより好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂は、可視光線の短波長側領域から紫外線領域における透過性に優れている。光硬化性樹脂の硬化性を確保するために、100μmフィルムでの透過率(紫外光345nm)として、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂の比重に優れており、軽量化への寄与が可能となる。比重は、1.20以下が好ましく、1.17以下がより好ましく、1.15以下がさらに好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂は、屈折率が低いことも特徴である。光線を照射・貫通させる際に、光線の表面反射および/または散乱を抑制するために、屈折率は1.61未満が好ましく、1.60以下がより好ましく、1.59以下がさらに好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂の製造方法としては、界面重合法および溶液重合法等の有機溶媒中で反応させる方法、または溶融重合等の溶融状態で反応させる方法が挙げられる。重合性および得られる樹脂の外観の観点から、有機溶媒中での反応、特に低温での反応が可能な界面重合法を用いるのが好ましい。
界面重合法としては、二価カルボン酸ハライドを水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、二価フェノール、末端封止剤、酸化防止剤および重合触媒を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下の温度で1〜8時間撹拌しながら重合反応をおこなう方法が挙げられる。
有機相に用いる溶媒としては、水と相溶せずポリアリレートを溶解する溶媒が好ましい。このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンが好ましい。
水相に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムの水溶液および水酸化カリウムの水溶液が挙げられる。
末端封止剤は、ポリアリレート樹脂の分子量を調整するため、および熱安定性を向上させるために用いられる。末端封止剤としては、例えば、一価フェノール、一価酸クロライド、一価アルコール、一価カルボン酸が挙げられる。一価フェノールとしては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2−フェニル−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。一価酸クロライドとしては、例えば、ベンゾイルクロライド、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートが挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールが挙げられる。一価カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸が挙げられる。中でも、熱安定性が高いことから、p−tert−ブチルフェノールが好ましい。
酸化防止剤は、二価フェノール成分の酸化を防止するために用いられる。酸化防止剤としては、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、トコフェノール、ブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。中でも、水溶性に優れていることから、ハイドロサルファイトナトリウムが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩;およびトリ−n−ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムハライド、トリメチルベンジルホスホニウムハライド、トリエチルベンジルホスホニウムハライド等の第四級ホスホニウム塩が挙げられる。中でも、分子量が高く、酸価の低いポリマーを得ることができることから、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハライド、トリ−n−ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムハライドが好ましい。
本発明のポリアリレート樹脂は、流延法および溶融押出法等の方法で加工することによりポリアリレート樹脂のフィルムを得ることができる。流延法とは、樹脂を有機溶剤に溶解した後、その樹脂溶液を基材に塗布し、乾燥した後、基材から剥離してフィルムを作製する方法である。一方、溶融押出法とは、乾燥した樹脂を押出機に投入し、溶融樹脂をTダイ等から冷却ロールに押出し、捲き取る方法である。無色透明のフィルムを得るためには、熱分解による色調低下が生じないことから、流延法でフィルムを作製することが好ましい。
流延法に用いられる有機溶剤としては、前記したハロゲン系有機溶剤および非ハロゲン系有機溶剤(例えば、非ハロゲンケトン系溶剤、非ハロゲン芳香族炭化水素系溶剤および非ハロゲン環状エーテル系溶剤)が挙げられる。中でも、例えば、ハロゲン系有機溶剤(特に、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン)、非ハロゲン芳香族炭化水素系溶剤(特に、トルエン、ベンゼン、キシレン)、非ハロゲン環状エーテル系溶剤(特に、テトラヒドロフラン)が好ましい。
基材としては、例えば、PETフィルム、ポリイミドフィルム、ガラス板、ステンレス板が挙げられる。塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーター塗り、フィルムアプリケーター塗り、はけ塗り、スプレー塗り、グラビアロールコーティング法、スクリーン印刷法、リバースロールコーティング法、リップコーティング、エアナイフコーティング法、カーテンフローコーティング法、浸漬コーティング法が挙げられる。
本発明のポリアリレート樹脂から得られるフィルムの引張破断強さは、機械的強度の観点から、70MPa以上であることが好ましく、80MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。フィルムの引張破断強さの上限値は特に限定されず、当該引張破断強さは通常、200MPa以下、特に150MPa以下である。
また、靭性の観点からフィルムの引張破断伸びは20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。フィルムの引張破断伸びの上限値は特に限定されず、当該引張破断伸びは通常、200%以下、特に100%以下である。
また、フィルムの引張弾性率は1.6GPa以上であることが好ましく、1.7GPa以上であることがより好ましく、1.8GPa以上であることがさらに好ましい。フィルムの引張弾性率の上限値は特に限定されず、当該引張弾性率は通常、3GPa以下、特に2.5GPa以下である。
本発明のポリアリレート樹脂およびそれから得られるフィルムは、耐熱性、透過性および非ハロゲン系有機溶剤への溶解性に十分に優れ、かつ、誘電率および誘電正接が十分に低い。そのため、ディスプレイ、フィルムコンデンサー、照明、太陽電池、プリント配線等の基板フィルムとして電気・電子材料分野で好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、ポリアリレート樹脂の物性測定は、以下の方法によりおこなった。
(1)数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量を測定した。
送液装置:ウォーターズ社製、Isocratic HPLC Pump 1515
検出器:ウォーターズ社製、Refractive Index Detector 2414
カラム:Mixed−D(充填シリカゲル粒径5μm、チューブ長さ300mm、内径7.5mm)
溶媒:クロロホルム
流速:1mL/分
測定温度:35℃
(2)ガラス転移温度(Tg)
ポリアリレート樹脂10mgをサンプルとして用いて、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製、DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で昇温し、昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をガラス転移温度とした。
◎:275℃以上(最良)。
○:260℃以上275℃未満(良)。
△:240℃以上260℃未満(実用上問題なし)。
×:240℃未満(実用上問題あり)。)
(3)比誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)
ポリアリレート樹脂10〜15質量部にクロロホルム90〜85質量部を加えて樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液を用いて、PETフィルム上に塗膜を形成した。室温で風乾後、塗膜をPETフィルムから剥離し、減圧にて150℃で24時間乾燥して、厚さ100μmのフィルムを作製した。
得られたフィルムを用いて、JIS C 2138に準拠し、自動平衡ブリッジ法にて以下の条件で測定した。
装置:アジレント・テクノロジー株式会社製、プレシジョンLCRメータE4980A
試料寸法:長さ60mm×幅60mm×厚み100μm
周波数:1MHz
測定温度:23℃
電極寸法:主電極径φ36mm、環状電極内径φ38mm
電極材質:スズ箔貼付
試験環境:23℃±1℃、50%RH±5%RH
・比誘電率
◎:2.8以下(最良)。
○:2.8超2.85以下(良)。
△:2.85超2.9以下(実用上問題なし)。
×:2.9超(実用上問題あり)。
・誘電正接
◎:0.012以下(最良)。
○:0.012超0.016以下(良)。
△:0.016超0.02以下(実用上問題なし)。
×:0.02超(実用上問題あり)。
(4)透過率
(3)で得られたフィルムを用いて、自動分光光度計(日立製作所製 U−4000型)を用いて、波長345nmにおける光線透過率を測定した。
◎:80%以上(最良)。
○:40%以上80%未満(良)。
△:20%以上40%未満(実用上問題なし)。
×:20%未満(実用上問題あり)。
(5)屈折率(589nm)
(3)で得られたフィルムについて、多波長アッベ屈折計「DR−M2」(アタゴ社製)を用い、測定温度25℃、光源波長589nmで測定した。
◎:1.59以下(最良)。
○:1.59超1.60以下(良)。
△:1.60超1.61未満(実用上問題なし)。
×:1.61以上(実用上問題あり)。
(6)引張破断強さ、引張破断伸びおよび引張弾性率
(3)で得られたフィルムを用いてJIS K7127に準拠し、以下の条件で測定した。
試験装置:株式会社インテスコ製、Model2020
引張速度:50mm/分
試験環境:23℃、60%RH
・引張破断強さ
◎:100MPa以上(最良)。
○:80MPa以上100MPa未満(良)。
△:70MPa以上80MPa未満(実用上問題なし)。
×:70MPa未満(実用上問題あり)。
・引張破断伸び
◎:40%以上(最良)。
○:25%以上40%未満(良)。
△:20%以上25%未満(実用上問題なし)。
×:20%未満(実用上問題あり)。
・引張弾性率
◎:1.8GPa以上(最良)。
○:1.7GPa以上1.8GPa未満(良)。
△:1.6GPa以上1.7GPa未満(実用上問題なし)。
×:1.6GPa未満(実用上問題あり)。
(7)溶解性
ポリアリレート樹脂15質量部にキシレンまたはシクロヘキサノン85質量部を加えて、ウェーブローターを用いて室温で攪拌した。1日後の樹脂溶液の状態を以下の基準で評価した。
◎:樹脂溶液は流動性を有しており、非常に優れた透明性を示した(最良)。
○:樹脂溶液は流動性を有しており、優れた透明性を示した(良)。
△:樹脂溶液は流動性を有しており、樹脂は溶解していたが、白濁していた(実用上問題なし)。
×:樹脂溶液が流動性を有していなかったか、樹脂が全く溶解していなかった(実用上問題あり)。
(8)比重
(3)で得られたフィルムから1辺が5cmである正方形のサンプルを切り出し、電子天秤によりサンプルの重量を測定した。次に、厚み測定装置(ハイデンハイン社製)を用いて、サンプルの厚みを測定した。得られたサンプルの重量と厚みから、比重を求めた。
◎:1.15g/cm以下(最良)。
○:1.15g/cm超1.17g/cm以下(良)。
△:1.17g/cm超1.20g/cm以下(実用上問題なし)。
×:1.20g/cm超(実用上問題あり)。
実施例1
攪拌装置を備えた反応容器中に、二価フェノール成分として1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(PCDE)100.00質量部、末端封止剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)1.24質量部、アルカリとして水酸化ナトリウム(NaOH)172.6質量部、重合触媒としてトリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロライド(TBBAC)の50質量%水溶液を1.22質量部、酸化防止剤としてハイドロサルファイトナトリウム0.50質量部を仕込み、水2800質量部に溶解させた(水相)。また、これとは別に、塩化メチレン2200質量部に、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロリド(DEDC)84.92質量部を溶解させた(有機相)(PCDE:PTBP:DEDC:TBBAC:NaOH=98.57:2.86:100.00:0.68:1500(モル比))。水相をあらかじめ攪拌しておき、有機相を水相中に強攪拌下で添加し、15℃で2時間、界面重合法で重合をおこなった。この後、攪拌を停止し、水相と有機相をデカンテーションして分離した。水相を除去した後、塩化メチレン500質量部、純水3000質量部および酢酸10質量部を添加して反応を停止し、15℃で30分間攪拌した。その後、有機相を純水で10回洗浄し、有機相をメタノール中に添加してポリマーを沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過した後、150℃真空下で24時間乾燥し、ポリアリレート樹脂を得た。
実施例2〜8、比較例1〜7
表1に示すように、樹脂組成を変更する以外は実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアリレート樹脂を得た。二価フェノールおよび二価カルボン酸クロライドの使用量はそれぞれ、モル数が実施例1における二価フェノールおよび二価カルボン酸クロライドのモル数と同様であるような量であった。
実施例1〜8、比較例1〜7で得られたポリアリレート樹脂の評価結果を表1に示す。
実施例1〜8のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分および芳香族二価カルボン酸成分に特定モノマーを用いたため、ガラス転移温度、キシレンおよびシクロヘキサノンへの溶解性および透過性が十分に高く、かつ、比誘電率および誘電正接が十分に低かった。また、比重も低いものであった。
比較例1のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)の残基を与えるモノマーを用いず、ビスフェノールAを用いたため、透過率が不十分であるとともに、耐熱性が低く、比誘電率および誘電正接の値が高く、キシレンへの溶解性が低く、引張弾性率も低かった。また、比重も高かった。
比較例2のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)の残基を与えるモノマーを用いなかったため、透過率が不十分であるとともに、耐熱性が低く、比誘電率および誘電正接の値が高かった。
比較例3、4のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)の残基を与えるモノマーを用いず、一般式(3)を与えるモノマーのみを用いた。比較例3では、キシレンおよびシクロヘキサノンへの溶解性が低く、加工性に問題があり、比較例4では破断伸びが不十分で機械特性に問題があった。また、比較例3,4はいずれも、耐熱性はあるものの、屈折率および比重が高かった。
比較例5のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)の残基を与えるモノマーを用いたものの、二価カルボン酸成分に一般式(2)を用いなかったために、透過率が不十分であった。また、機械特性は使える範囲ではあるものの、改善を要するものであった。
比較例6および7のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)、二価カルボン酸成分に一般式(2)を用いなかったために、耐熱性、誘電特性、透過率、屈折率が不十分であった。また、比重も不十分なものであった。
本発明のポリアリレート樹脂およびそれからなるフィルムは、ディスプレイ、フィルムコンデンサー、照明、太陽電池、プリント配線等のフィルムとして好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 二価フェノール残基および芳香族二価カルボン酸残基から構成され、
    二価フェノール残基が一般式(1)で示される二価フェノール残基および一般式(3)で示されるビフェノール残基のみからなり、
    芳香族二価カルボン酸残基が一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基のみからなり、
    一般式(1)で表される二価フェノール残基の含有量が、全二価フェノール成分に対して、10モル%以上80モル%以下であり、
    一般式(3)で示されるビフェノール残基の含有量が、全二価フェノール成分に対して、20モル%以上90モル%以下である、ポリアリレート樹脂。
    (式(1)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、pおよびqは、独立して、0〜4の整数を表し、mは6〜14の整数を表す。)
    (式(2)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、rおよびsは、独立して、0〜4の整数を表す。)
    (式(3)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、tおよびuは、独立して、0〜4の整数を表す。)
  2. 二価フェノール残基および芳香族二価カルボン酸残基から構成され、
    二価フェノール残基が一般式(1)で示される二価フェノール残基および一般式(3)で示されるビフェノール残基のみからなり、
    芳香族二価カルボン酸残基が一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基および一般式(4)で示されるフタル酸残基のみからなり、
    一般式(1)で表される二価フェノール残基の含有量が、全二価フェノール成分に対して、10モル%以上80モル%以下であり、
    一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基の含有量が、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、50モル%以上であり、
    一般式(3)で示されるビフェノール残基の含有量が、全二価フェノール成分に対して、20モル%以上90モル%以下である、ポリアリレート樹脂。
    (式(1)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、pおよびqは、独立して、0〜4の整数を表し、mは6〜14の整数を表す。)
    (式(2)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、rおよびsは、独立して、0〜4の整数を表す。)
    (式(3)中、RおよびRは、独立して、炭素数が1〜6の炭化水素基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、tおよびuは、独立して、0〜4の整数を表す。)
  3. 一般式(1)で示される二価フェノール残基が、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン残基である請求項1または2に記載のポリアリレート樹脂。
  4. 一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基が、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
  5. 一般式(4)で示されるフタル酸残基の含有量が、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、10モル%以上50モル%以下である請求項に記載のポリアリレート樹脂。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のポリアリレート樹脂からなるフィルム。
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