JP4217362B2 - 電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体並びにこの電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは特定の樹脂および電荷輸送物質を含有する表面層を有する電子写真感光体並びにこの電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方法は、米国特許第2297691号明細書に示されているように、画像露光の間に受けた光照射量に応じて電気抵抗が変化し、かつ暗所では絶縁性である物質をコーティングした支持体よりなる光導電性材料を用いて行われる。この光導電性材料を用いた電子写真感光体に要求される基本的な特性としては、(1)暗所で適当な電位に帯電できること、(2)暗所において電荷の逸散が少ないこと、(3)光照射によって速やかに電荷を逸散させ得ること、などが挙げられる。
【0003】
従来より、電子写真感光体としては、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機光導電性材料を主成分とする感光層を有する無機感光体が広く使用されてきた。しかし、これらは前記(1)〜(3)の条件は満足するが、熱安定性、耐湿性、耐久性、生産性等において、必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
無機感光体の欠点を克服する目的で、様々な有機光導電性化合物を主成分とする電子写真感光体の開発が、近年盛んに行われている。例えば、米国特許3837851号明細書には、トリアリルピラゾリンを含有する電荷輸送層を有する感光体が、米国特許3871880号明細書には、ペリレン顔料の誘導体からなる電荷発生層と3−プロピレンおよびホルムアルデヒドの縮合体からなる電荷輸送層とからなる感光体が、それぞれ記載されている。
【0005】
さらに有機光導電性化合物は、その化合物の種類によって電子写真感光体の感光波長域を自由に選択することが可能であり、例えばアゾ顔料では、特開昭61-272754号公報および特開昭56-167759号公報に示された物質が、可視領域で高感度を示す。また特開昭57-19576号公報および特開昭61-228453号公報に示された化合物は、赤外領域まで感度を有していると記載されている。
【0006】
これらの材料のうち、赤外領域に感度を示すものは、近年進歩の著しいレーザービームプリンタ―(以下LBPと略す)やLEDプリンターに使用され、その需要頻度は高くなってきている。
【0007】
これら有機光導電性化合物を用いた電子写真感光体は、電気的および機械的双方の特性を満足させるために、電荷輸送層と電荷発生層とを積層させた機能分離型の感光体として使用される場合が多い。一方、当然のことながら、電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、さらには光学的特性を備えていることが要求される。
【0008】
特に、繰り返し使用される電子写真感光体においては、その電子写真感光体表面に、コロナまたは直接帯電、画像露光、トナー現像、転写工程、表面クリーニングなどの電気的および機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性も要求される。
【0009】
具体的には、帯電時のオゾンおよび窒素酸化物による電気的劣化や、帯電時の放電による電気的劣化、および、クリーニング部材の摺擦によって、表面が摩耗したり傷が発生したりする機械的劣化に対する耐久性が求められている。
【0010】
電気的劣化については、光が照射した部分にキャリアーが滞留し、光が照射していない部分との間に電位差が生じる現象が特に問題であり、これはフォトメモリーとして生じる。
【0011】
機械的劣化については、特に無機感光体と異なり物質的に柔らかいものが多い有機感光体は、機械的劣化に対する耐久性が劣るため、耐久性向上は特に切望されているものである。
【0012】
上記のような感光体に要求される耐久特性を満足させるために、様々な試みがなされてきた。
【0013】
表面層によく使用され、耐摩耗性および電気特性の良好な樹脂として、ビスフェノールAを骨格とするポリカーボネート樹脂が注目されているが、前述したような問題点すべてを解決できるわけではなく、次のような問題点を有している。
【0014】
(1)溶解性に乏しく、ジクロロメタンや1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類の一部にしか良好な溶解性を示さないうえ、これらの溶剤は低沸点のため、これらの溶剤で調製した塗工液を用いて感光体を製造すると、塗工面が白化しやすい。塗工液の固形分管理などにも手間がかかる。
【0015】
(2)ハロゲン化脂肪族炭化水素類以外の溶剤に対しては、テトラヒドラフラン、ジオキサン、シクロへキサノンあるいはそれらの混合溶剤に一部可溶であるが、その溶液は数日でゲル化するなど、経時性が悪く感光体製造には不向きである。
【0016】
(3)さらに上記(1)、(2)が改善されたとしても、ビスフェノールAを骨格とするポリカーボネート樹脂にはソルベントクラックが発生しやすい。
【0017】
(4)加えて、従来のポリカーボネート樹脂では、該樹脂で形成された被膜に潤滑性がないため、感光体に傷がつきやすく、電子写真感光体の摩耗量を低くするようなクリーニング設定では画像欠陥になったり、クリーニングブレードの早期の劣化によるクリーニング不良、トナー融着などが生じたりしてしまうことがある。
【0018】
前記(1)、(2)に挙げた溶液安定性については、ポリマーの構造単位として、嵩高いシクロへキシレン基を有するポリカーボネートZ樹脂を使用するか、ビスフェノールZ、ビスフェノールCなどと共重合させることによって解決されてきた。
【0019】
また、ソルベントクラックについても、特開平6-51544号公報および特開平6-75415号公報に開示されているように、シリコン変性ポリカーボネートおよびエーテル変性ポリカーボネートを用いることにより解決することが可能である。ところがこれら変性ポリカーボネートは従来のポリカーボネート樹脂に比べソルベントクラックへの対策としてポリマー内の内部応力にたいして柔軟性をもたしている構造をとっているため、結果、重合体本体の機械的強度が低下するという欠点があった。
【0020】
さらに近年、特開昭57-17826号公報および特開昭58‐40566号公報に開示されているような、帯電部材に直接電圧をかけ電子写真感光体に電荷を印加する直接帯電方式が主流となりつつある。
【0021】
これは、導電ゴムなどで構成されたローラー状の帯電部材を直接電子写真感光体に当接させて電荷を印加する方法であり、(a)スコロトロンなどに比べ、オゾン発生量が格段に少ない、(b)スコロトロンは帯電器に流す電流の80%前後はシールドに流れるために浪費されるのに対して、直接帯電はこの浪費分がなく、非常に経済的である、などのメリットをもつ。
【0022】
しかし、直接帯電は、パッシェン則による放電による帯電のため、帯電安定性が非常に悪いという欠点をもつ。この対策として、直流電圧に交流電圧を重畳させた、いわゆるAC/DC帯電方式が考案されている(特開昭63-149668号公報)。
【0023】
この帯電方式により、帯電時の安定性は良化したが、ACを重畳するために、電子写真感光体表面の放電量は大幅に増大してしまい、電子写真感光体の削れ量が増加してしまうという欠点が新たに生じ、機械的強度のみならず、電気的強度も電子写真感光体に要求されるようになってきた。
【0024】
機械的強度を向上させるため、特開昭57-30841号公報においては、ポリカーボネート樹脂の代わりにポリアリレート樹脂が用いられている。ポリアリレート樹脂を用いることによって機械的強度には優れた物が得られるが、それだけではソルベントクラックや電気的強度で実用上満足いかない点が見られる。
【0025】
また、特開平2-226160号公報にはヒドラゾン化合物を含有する電荷輸送層を有する感光体が示されている。このヒドラゾン化合物はバインダーとの相溶性が良く、これを用いた感光体は高感度であるが、これもそれだけではソルベントクラックや機械的強度および電気的強度で実用上満足いかない点が見られる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂を表面層として有する電子写真感光体の有していた問題点を解決し、耐ソルベントクラック性をもちつつ機械的強度が強く、かつ直接帯電(AC重畳帯電)による耐電気特性が良好であり製造が容易な電子写真感光体を提供することである。さらに、本発明の目的は、この電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定の樹脂と特定の電荷輸送物質とを組み合わせることによって上記目的が達成されることを見い出し、本発明を完成した。
【0028】
すなわち、本発明は、導電性支持体および感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1)で示される構成単位を有する重合体および下記式(2)で示される電荷輸送物質を含有することを特徴とする電子写真感光体を提供する(ただし、該表面層が、下記式(2)’で示されるヒドラゾン化合物を含有する場合を除く。)。
【0029】
【化4】
(式(1)中、Xは、−CR3R4−(ただしR3およびR4は各々独立に水素原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、またはアリール基である)、置換されてもよいシクロアルキリデン基、α,ω−アルキレン基、単結合、−O−、−S−、−SO−、または−SO2−である。また、R1およびR2は各々独立に、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基またはアリール基であり、aおよびbは各々独立に、1〜4の整数である。)
【0030】
【化5−1】
(式(2)中、Y1およびY2は各々独立に置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基である。Y3およびY4は各々独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン原子である。)
【化5−2】
(式(2)’中、R 5 およびR 9 は、置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、または、複素環基である。R 6 、R 7 およびR 8 は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、または、ハロゲン原子である。)
【0031】
本発明の電子写真感光体において、上記式(1)で示される構成単位は、好ましくは、下記式(3)で示される構成単位である。
【0032】
【化6】
【0033】
また本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供する。すなわち、上記電子写真感光体、並びに、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジ、並びに、上記電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段および転写手段を備えた電子写真装置を提供する。
【0034】
本発明のプロセスカートリッジおよび電子写真装置において、帯電手段は好ましくは接触帯電手段である。
【0035】
本発明による電子写真感光体は、表面層を形成する樹脂および電荷輸送物質として、前述のような特定の樹脂および電荷輸送物質の組み合わせを選択することにより、特に優れた耐ソルベントクラック性と機械的強度と直接帯電(特にAC重畳帯電)における耐電気特性とをあわせ持ち、良好な電子写真特性を持っているものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の電子写真感光体の表面層は、上記式(1)で示される構成単位を有する重合体(以下、本発明に用いるポリアリレート樹脂ともいう)を含有する。
【0037】
式(1)において、Xは、−CR3R4−(ただし、R3およびR4は、各々独立に、水素原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、または、アリール基である。)、置換されてもよいシクロアルキリデン基、のα,ω−アルキレン基、単結合、−O−、−S−、−SO−、または、−SO2−である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。シクロアルキリデン基としては、シクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基などが挙げられる。シクロアルキリデン基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基などが挙げられる。また、シクロアルキリデン基の置換には、1つ以上のベンゼンと縮合環を形成することも包含される。このような縮合環を形成した基としては、9−フルオレニリデン基が挙げられる。α,ω−アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。
【0038】
また、式(1)において、R1およびR2は各々独立に、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基またはアリール基であり、aおよびbは各々独立に、1〜4の整数である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルキル基が有していてもよい置換基としては、上記のようなハロゲン原子およびアリール基が挙げられる。アリール基が有していてもよい置換基としては、上記のようなハロゲン原子が挙げられる。aが2以上の場合、各々のR1は互いに同一でも相違していてもよい。bが2以上の場合、各々のR2は互いに同一でも相違していてもよい。
【0039】
式(1)においてベンゼン環を挟む二つのカルボキシル基の位置は、1位および4位と1位および2位との混在であることが好ましく、1位および4位である構成単位と1位および2位である構成単位との比は、通常、7:3〜3:7、好ましくは約1:1である。
【0040】
式(1)で示される構成単位の具体例を表1〜3に示すが、これらに限られるものではない。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
本発明に用いるポリアリレート樹脂は、式(1)で示される構成単位が同―のもので構成される重合体でも、2種類以上の式(1)で示される別種の構成単位からなる共重合体でもよい。
【0045】
構成単位の好ましい例としては、構成単位例1、2および7が挙げられ、構成単位が同一のもので構成される重合体の場合には構成単位例1からなる重合体が特に好ましく、2種類以上の式(1)で示される別種の構成単位からなる共重合体の場合には構成単位例1と構成単位例2からなる共重合体が特に好ましい。
【0046】
本発明に用いるポリアリレート樹脂の重量平均分子量は、通常には、20000〜60000、好ましくは35000〜50000である。
【0047】
本発明に用いるポリアリレート樹脂は、本発明で得られる効果(これを含む表面層を有する感光体の耐ソルベントクラック性、機械的強度、耐電気特性等の向上)を低下させない範囲であれば、式(1)で示される構成単位以外の構成単位を有していてもよい。通常には、式(1)で示される構成単位は、全構成単位の(式(1)で示される構成単位が複数種の場合、その合計で)50mol%以上である。
【0048】
本発明に用いるポリアリレート樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0049】
本発明において用いられる、式(1)で示される構成単位を有する重合体は、下記式(4)で示されるビスフェノールを、通常溶解性を上げるためにテレフタル酸塩化物およびイソフタル酸塩化物の混合物とともにアルカリ下で、溶媒/水系中で撹拌することにより行われる界面重合で得ることができる。
【0050】
【化7】
(式(4)中、Xは、−CR3R4−(ただし、R3およびR4は、各々独立に、水素原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、または、アリール基である。)、置換されてもよいシクロアルキリデン基、α,ω−アルキレン基、単結合、−O−、−S−、−SO−、または、−SO2−である。R 1およびR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基またはアリール基であり、aおよびbは、各々独立に、0〜4の整数である。)
【0051】
テレフタル酸塩化物およびイソフタル酸塩化物の合計のビスフェノールに対するモル比率は通常約1:1である。テレフタル酸塩化物とイソフタル酸塩化物との比率は、合成される重合体の溶解性を考慮して決定される。なお、いずれかの塩化物が30mol%以下になると、合成した重合体の溶解性が極端に低下するので注意が必要であり、通常は1/1の比率で合成するのが好ましい。
【0052】
本発明に用いるポリアリレート樹脂は、市販のポリアリレート樹脂として得ることも可能である。
【0053】
本発明の電子写真感光体の表面層は、また、上記式(2)で示される電荷輸送物質(以下、本発明に用いるヒドラゾン化合物ともいう)を含有する。
【0054】
式(2)において、Y1およびY2は、各々独立に、置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、または、複素環基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。アルケニル基としては、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。複素環基としては、N、O又はSを有する6員又は5員環基、より具体的にはピリジル基、フリル基、チエニル基などが挙げられる。置換基としては、上記のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
【0055】
また、式(2)において、Y3およびY4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン原子である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
【0056】
Y1に結合する窒素原子に結合する2つのヒドラゾン構造含有部分は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0057】
以下に、式(2)で示される電荷輸送物質の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
本発明に用いるヒドラゾン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0062】
以下、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0063】
本発明の電子写真感光体は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送層と電荷発生層に分離した積層型でもよいが、電子写真特性的には積層型が好ましい。本発明の電子写真感光体の表面層とは、帯電およびクリーニングにより電気的および機械的外力を受ける層である。従って、単層型の場合、表面層は、電荷輸送材料と電荷発生材料と含有する層となり、積層型の場合、通常、電荷輸送層となる。
【0064】
表面層は、通常、バインダー樹脂として有効な量の本発明に用いるポリアリレート樹脂および電荷輸送に有効な量の本発明に用いるヒドラゾン化合物を含有する。具体的には、表面層は、通常、30〜70質量%の本発明に用いるポリアリレート樹脂、及び、30〜70質量%の本発明に用いるヒドラゾン化合物を含有する。上記ポリアリレート樹脂および上記ヒドラゾン化合物は、本発明で得られる効果(これを含む表面層を有する感光体の耐ソルベントクラック性、機械的強度、耐電気特性等の向上)を低下させない範囲であれば、それぞれ、公知の他のバインダー樹脂、および、公知の他の電荷輸送物質と混合して用いることも可能である。
【0065】
本発明の電子写真感光体の表面層以外の構成は従来の電子写真感光体と同様の構成を採用することができる。
【0066】
使用する導電性支持体は、導電性を有するものであればよく、アルミニウム、ステンレスなどの金属、あるいは導電層を設けた金属、紙、プラスチックなどが挙げられ、形状はシート状、円筒状などが挙げられる。
【0067】
LBPなどのように、画像入力がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止、または基盤の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。導電層は、カーボンブラック、金属粒子などの導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は、通常5〜40μm、好ましくは10〜30μmが適当である。
【0068】
導電層の上に、接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、などが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.3〜1μmが適当である。
【0069】
積層型(機能分離型)の場合、導電性支持体(場合により導電層または中間層)の上には電荷発生層が形成される。本発明に用いられる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。電荷発生層は前記電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着剤樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。電荷発生層の膜厚は、通常5μm以下、好ましくは0.1〜2μmが適当である。
【0070】
電荷輸送層は、主として本発明に用いるポリアリレート樹脂および本発明に用いるヒドラゾン化合物を溶剤中に溶解させた塗料を塗工乾燥して形成する。使用される溶剤、塗工乾燥の条件等は、ポリアリレート樹脂をバインダー樹脂として用いた従来の場合の電荷輸送層の形成におけるものと同様でよい。上記ヒドラゾン化合物は通常0.5〜2倍量の上記ポリアリレート樹脂と組み合わされる。電荷輸送層の膜厚は、通常、5〜40μm、好ましくは15〜30μmが適当である。
【0071】
単層型の場合、導電性支持体(場合により導電層または中間層)の上には、電荷発生材料および電荷輸送材料を含む感光層が形成される。この感光層は、電荷輸送材料として本発明に用いるヒドラゾン化合物、バインダー樹脂として本発明に用いるポリアリレート樹脂を用いる他は従来の単層型の感光層と同様に形成することができる。この感光層の膜厚は、通常10〜50μm、好ましくは15〜30μmが適当である。
【0072】
表面層には、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の公知の添加剤を必要に応じて添加することもできる。
【0073】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンタ―、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版など電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0074】
本発明のプロセスカートリッジおよび電子写真装置の構成は、電子写真感光体として本発明の電子写真感光体を用いる他は、従来のプロセスカートリッジおよび電子写真装置の構成と同様でよい。
【0075】
本発明の電子写真装置は、少なくとも、電子写真感光体と、感光体表面を均一に帯電させる帯電手段と、帯電した感光体表面に部分的に光を当て、光の当たった部分の帯電電荷を除去し、静電潜像を形成する像露光手段と、トナーを潜像に付着させ、トナー像を形成する現像手段と、記録紙等の転写材にトナー像を転写する転写手段とを備える。本発明の電子写真装置は、さらに感光体表面の除電を行う除電手段および感光体表面に付着したトナー等を除去するクリーニング手段並びに転写されたトナー像を転写材に定着させる定着手段を有していてもよい。これらの構成要素は、電子写真プロセスが実施されるように組み合わされる。
【0076】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱可能であるように構成される。電子写真本体は、プロセスカートリッジに含まれない、電子写真プロセスを実施するのに必要なその他の手段を備えるものである。
【0077】
本発明の電子写真感光体は、直接帯電に対する耐電気特性に優れているので、帯電手段は、帯電ローラなどの接触帯電手段であることが好ましい。
【0078】
図1に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の例の概略構成を示す。
【0079】
図1において、1は円筒(ドラム)状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0080】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0081】
像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へ排出される。
【0082】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光(除電)手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し像形成に使用される。尚、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0083】
本発明においては、上述の電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、少なくとも1つの手段とをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9を感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0084】
【実施例】
以下実施例に従って説明する。なお、実施例において、「部」は特記しない限り質量部である。
【0085】
<実施例1〜3、5、及び7〜17、並びに、参考例4、6及び18>
30φ254mmのAlシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸せき法で塗布し、140℃で30分熱硬化して厚さ15μmの導電層を形成した。
【0086】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール(v/v=0.2/0.8) 20部
【0087】
次に、この導電層上に、N−メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部をメタノール65部およびn−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸せき法で塗布し、0.5μmの中間層を形成した。
【0088】
次に、CuKαのX線回折スペクトルにおいて回折角2θ土0.2°が9.0°、14.2°、23.9°、27.1°の位置に強いピークを有するチタニルフタロシアニン(TiOPc)4部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部、およびシクロヘキサノン60部を、φ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて、電荷発生層用分散液を調製した。これを浸せき法で塗布し、厚さ0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0089】
次に、表4に示す電荷輸送物質10部および表5に示す重合体10部をモノクロロベンゼン30部およびジクロロメタン70部の混合溶媒に溶解した。この塗料を浸せき法で塗布し、120℃で3時間乾燥し、厚さ25μmの電荷輸送層を形成した。
【0090】
表5に示す各種の重合体(ポリマー)は以下の様に製造した。
構成単位中のビフェノール由来部分の構造を有するビフェノール((複数の場合、合計で)0.01mol)を、水酸化ナトリウム(0.8g)および塩化テトラメチルアンモニウム(1g)を水100mlに溶かしたものとともに1Lのミキサー中に投入した。これに、1,2−ジクロロエタン(30ml)にテレフタル酸塩化物(0.005mol)およびイソフタル酸塩化物(0.005mol)を溶かしたものを撹拌しながら投入し、そして10分高速撹拌した。2時間放置後、1,2−ジクロロエタン液を回収し、これに大量のへキサンを投入しポリマーとして回収した。回収後、水洗浄、クロロホルム溶解、メタノール滴下による精製工程を行った。製造されたポリマーの構成単位のモル分率および重量平均分子量を表5に示す。テレフタル酸塩化物とイソフタル酸塩化物の混合比はモル比で1:1とした。
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
次に評価について説明する。
装置は、一次帯電手段として直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される帯電ローラーを備えるヒューレットパッカード製LBP「レーザージェット4plus」(ブロセススピード71mm/sec)を改造して用いた。改造は、一次帯電の制御を定電圧制御とした。作成した電子写真感光体について、この装置を用いて、28℃90%RHの条件下で通紙耐久試験をおこなった。シーケンスは、プリント1枚ごとに1回停止する間欠モードとした。トナーがなくなったならば補給し、画像に問題がでるまで続けた。
【0094】
また、研磨テープを用いたテーバー摩耗試験機を用いて15分摩耗させ、そのときの重量減少分を測定した。
【0095】
さらに電子写真感光体の一部に、3000lux10分間の白色蛍光灯の光をあて、10分間放置後に明部電位を測定し、光を当てる前から明部電位がどれだけ下がったかを測定してフォトメモリー値とした。
【0096】
さらに耐ソルベントクラック性は、表面に皮脂を付着させ48時間放置し顕微鏡観察によりソルベントクラックの有無を観察した。ソルベントクラックが観察されない場合を○、観察された場合を×と評価した。
【0097】
以上の結果を表6に示す。
【0098】
【表6】
【0099】
【比較例1〜4】
電荷輸送層の電荷輸送物質として比較例1は下記式(29)で示される化合物、比較例2、3および4は式(5)で示されるヒドラゾン系化合物を用い、バインダー樹脂として表7の条件1から4のものをそれぞれ比較例1〜4において用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し評価した。その結果を表8に示す。
【0100】
【化11】
【0101】
【表7】
【0102】
【表8】
【0103】
表6および表8の結果から明らかなように、特定のポリアリレート樹脂と特定のヒドラゾン化合物とを組み合わせることにより得られた電子写真感光体は、H/H耐久限界値が大きく(機械的強度および直接帯電に対する耐電気特性に優れる)、テーバー減少値が小さく(機械的強度に優れる)、フォトメモリー値が小さく(電子写真特性に優れる)、かつ耐ソルベントクラック性に優れている。
【0104】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度を損なうことなく優れた耐ソルベントクラック性を有し、さらに機械的強度が強く、直接帯電による放電に対する耐電気特性が良好であり、かつ電子写真特性が良好である、製造が容易な直接帯電に適した電子写真感光体、並びに、この電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 本発明の電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 画像露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 レール
Claims (6)
- 導電性支持体および感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1)で示される構成単位を有する重合体、および、下記式(2)で示される電荷輸送物質を含有することを特徴とする電子写真感光体(ただし、該表面層が、下記式(2)’で示されるヒドラゾン化合物を含有する場合を除く。)。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジ。
- 前記帯電手段が接触帯電手段である請求項3に記載のプロセスカートリッジ。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段および転写手段を備えた電子写真装置。
- 前記帯電手段が接触帯電手段である請求項5に記載の電子写真装置。
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