JP6268472B2 - インクジェット捺染用インク組成物およびインクジェット記録方法 - Google Patents
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本発明に係るインク組成物の一態様は、
水と、顔料と、樹脂エマルジョンと、水溶性包接化合物と、を含み、
前記水溶性包接化合物の含有量と前記樹脂エマルジョン(固形分)の含有量との比(水溶性包接化合物/樹脂エマルジョン(固形分))が、質量基準で0.01以上5以下であることを特徴とする。
適用例1のインク組成物において、
前記水溶性包接化合物を2種以上含むことができる。
適用例1または適用例2のインク組成物において、
前記水溶性包接化合物が、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインク組成物において、
前記樹脂エマルジョンに含まれる樹脂のガラス転移温度が0℃以下であることができる。
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインク組成物において、
前記樹脂エマルジョンが、ウレタン樹脂、スチレンアクリル樹脂、およびアクリル樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことができる。
適用例1ないし適用例5のいずれか一例のインク組成物において、
前記樹脂エマルジョンが、自己反応型のウレタン樹脂を含むことができる。
適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインク組成物において、
前記水溶性包接化合物の含有量と前記顔料(固形分)の含有量との比(水溶性包接化合物/顔料(固形分))が、質量基準で0.1以上5以下であることができる。
適用例1ないし適用例7のいずれか一例のインク組成物は、布帛へ記録を行う捺染用インクであることができる。
適用例1ないし適用例8のいずれか一例のインク組成物は、インクジェットインクであることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、適用例9のインクジェットインクを用いてインクジェット記録を行うことを特徴とする。
種である布帛(の表面)にインクを記録することをいい、インクジェット記録の一種である。「印捺物」とは、被記録媒体の一種である布帛(の表面)にインクが記録されて画像が形成されたものをいう。
本実施の形態に係るインク組成物は、水と、顔料と、樹脂エマルジョンと、水溶性包接化合物と、を含み、前記水溶性包接化合物の含有量と前記樹脂エマルジョン(固形分)の含有量との比(水溶性包接化合物/樹脂エマルジョン(固形分))が、質量基準で0.01以上5以下であることを特徴とする。
本実施の形態に係るインク組成物は、樹脂エマルジョンを含む。インク組成物が樹脂エマルジョンを含むことにより、印捺物の柔軟性が優れたものとなり、かつ、インク(顔料)の定着性が優れたものとなる。これにより、印捺物の洗濯堅牢性や摩擦堅牢性が良好となる。
酸価(mg/g)=(EP1−BL1)×FA1×C1×K1/SIZE
上記の数式中、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(0.0mL)、FA1は滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL)(0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、K1は係数(1)、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。
クリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上、BASF社製)、NKバインダー R−5HN(新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係るインク組成物は、水溶性包接化合物を含む。インク組成物が水溶性包接化合物を含むことにより、水溶性包接化合物が樹脂エマルジョン等に由来する異物を内包し、インク中での異物の発生が抑制される。インク中での異物の発生が抑制された結果、インクの保存安定性及びノズルヘッドからの吐出安定性や目詰まりといった信頼性が良好となる。
低い理由は、以下のように考えられる。すなわち、シクロデキストリン中のヒドロキシ基は、環状構造のため隣接するヒドロキシ基と分子内で水素結合を形成し安定化するという特徴を有している。β−シクロデキストリン中のヒドロキシ基は、構造上、この安定化効果が高く、周囲の水分子と水素結合しにくいため、水に対する溶解度が低くなる。
本実施の形態に係るインク組成物は、色材としての顔料を含む。顔料としては、特に制限されず、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用可能である。
Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係るインク組成物は、液状媒体としての水を含む。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。インク組成物中の水の含有量は、インク組成物の総質量を100質量%としたときに、20〜80質量%である。ここで、水の含有量は、水を添加した量に限られず、他の添加剤中の水分も含むものである。
本実施の形態に係るインク組成物は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、インク成分の布帛への浸透を促進させる浸透剤やインクの保湿性を高める保湿剤が挙げられる。
本実施の形態に係るインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤のうち少なくともいずれかが好ましい。インク組成物がこれらの界面活性剤を含むことにより、布帛に付着したインク組成物の乾燥性が一層良好となり、かつ、高速印刷が可能となる。これらの中でも、インクへの溶解性に優れるため、ポリシロキサン系界面活性剤がより好ましい。
本実施の形態に係るインク組成物は、その保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することができる。
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、上述のインクジェットインクを用いてインクジェット記録を行うことを特徴とする。インクジェットインクはインクジェット法により吐出して用いるインクでありインクジェット記録用インクとも言う。本実施の形態に係るインクジェット記録方法によれば、インク中での異物の発生が効果的に抑制される結果、ノズルヘッドからの吐出安定性や目詰まりといった信頼性が良好となるため、良好
なインクジェット記録を行うことができる。
布帛上でインクが滲むのを防止するため、上記のインク組成物を布帛上に付着させて画像を形成する前に、前処理剤を用いて布帛を前処理しておくこと、すなわち前処理工程を行うことが好ましい。当該前処理工程は、凝集剤を含む前処理剤を布帛に付与するというものであり、より具体的に言えば、布帛に前処理剤を付着させた後、布帛を乾燥するというものである。前処理の方法としては、以下に限定されないが、例えば前処理剤中に布帛を浸漬する手段、及び前処理剤を布帛に塗布又は噴霧する手段が挙げられる。
上記の付着工程では、まず、布帛(上記前処理がなされたものを含む。)の面に向けて、上記インク組成物を吐出し付着させて、画像を形成する。なお、吐出条件は、吐出されるインク組成物の物性によって適宜決定すればよい。
上記の加熱工程では、インク組成物が付着した布帛を加熱処理する。当該加熱処理により、インク組成物に含まれるウレタン樹脂エマルジョン等の樹脂(ポリマー)を布帛の表面に融着させ、かつ、水分を蒸発させることができる。その結果、印捺物の耐擦性を一層優れたものとすることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
表1〜表2に示す材料を、表1〜表2に示す含有量(単位:質量%)で、それぞれ混合し、十分に撹拌した。この混合液を孔径5μmの金属フィルターで濾過した後、真空ポンプを用いて脱気処理して、実施例及び比較例で用いる各インク組成物を得た。
硝酸カルシウム・四水和物(カルシウムイオン濃度17質量%)20質量%、アクリル樹脂エマルジョン(新中村化学工業株式会社製、商品名「NKバインダー R−5HN、固形分44%」)10質量%、ポリシロキサン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−348」)0.1質量%、及びイオン交換水(残部)を、総質量が100質量%となるように混合し、十分に撹拌して均一とすることにより、前処理剤を調製した。得られた前処理剤において、カルシウムイオン濃度は3.4質量%であり、アクリル樹脂の固形分濃度は4.4質量%であった。
3.3.1.前処理工程
布帛として綿100%のTシャツ(HANES社製のヘビーウェイト、黒色生地)を用い、これに上記で調製した前処理剤をA4サイズあたり18〜20gとなるようにローラーを用いて均一に塗布した。塗布後、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間加熱処理を行った。
前処理工程を経た布帛に対して、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記で調製したインク組成物を布帛に付着させた。記録条件としては、記録解像度を1440dpi×1440dpiとし、ベタパターン画像を4層重ね塗りした。このようにして、インクジェット捺染を行った。
インクが付着した布帛を、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間加熱処理を行い、該インクを布帛に定着させた。このようにして、布帛に画像が形成された印捺物を製造した。
3.4.1.洗濯堅牢性評価
全自動洗濯機(株式会社東芝製、型式「AW−424V6型」)を用い、各印捺物を10回ずつ洗濯し、JIS L0804:2004(ISO 105−A02:1993)の変退色グレースケール(染色堅ろう度試験の結果、試験片に生じた変退色の程度を視感によって判定する場合、その基準として用いる変退色用グレースケールについて規定)に従って、退色の程度を評価した。評価基準は以下の通りである。
A:4−5級(中間等級)〜5級
B:3−4級(中間等級)〜4級
C:2−3級(中間等級)〜3級
D:2級以下
上記で調製した各インク組成物40gを50cc容のガラス瓶に入れ密栓した後に、こ
れらのガラス瓶を60℃の恒温槽内に入れ、7日間放置した。7日後に取り出し、室温に戻した後、そのインク組成物を孔径1.2μmのメンブランフィルター(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で全量ろ過し、下記評価基準に従って、異物の有無を確認した。
有:全量メンブランフィルターを通過しない。
無:全量メンブランフィルターを通過する。
上記で調製した各インク組成物40gを50cc容のガラス瓶に入れ密栓した後に、これらのガラス瓶を60℃の恒温槽内に入れ、7日間放置した。7日後に取り出し、室温に戻した後、DVM−E型回転粘度計(東京計器株式会社製)を用いて25℃での粘度を測定した。そして、事前に測定した初期粘度に対する、7日間放置後の粘度の変動率を計算した。評価基準は以下の通りである。
A:±3%未満
B:±3%以上±5%未満
C:±5%以上
上記で調製した各インク組成物を、インクジェットプリンターの専用カートリッジに充填した。そして、該カートリッジをインクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)に装着し、10分間連続して印刷し、全てのノズルから正常にインクが吐出していることを確認した後、インクカートリッジを取り外し、記録ヘッドをヘッドキャップから外した状態で、50℃の環境下に3ヶ月間放置した。放置後、全ノズルが初期と同等に吐出するまで、クリーニング動作を繰り返し、以下の判断基準により回復性を評価した。
A:ヘッドクリーニング2回以内で初期と同等に印刷できる。
B:ヘッドクリーニング3回以上4回以下で初期と同等に印刷できる。
C:ヘッドクリーニング4回以内では初期と同等の印刷ができない。
上記で調製した各インク組成物を、インクジェットプリンターの専用カートリッジに充填した。そして、該カートリッジをプリンターPX−G930に装着して、35℃で湿度35%RHの雰囲気下において、A4版のXerox P(商品名、富士ゼロックス株式会社製)に、マイクロソフトワード文章(文字サイズ11、標準、MSPゴシック)を4000字/頁の割合で、500頁印刷を行った後、同じワード文章を、白色インク印刷物が見やすいように、透明フィルム(商品名「ルミラー」、東レ株式会社製、PETフィルム)に印刷した。評価基準は以下の通りである。
A:全く印字乱れがない。
B:1〜3カ所の印字乱れがある。
C:4カ所以上の印字乱れがある。
表1〜表2に、各インク組成物の組成及び評価試験の結果を示す。
<顔料分散液>
・酸化チタンスラリー(シーアイ化成株式会社製、商品名「NanoTek(R)Slurry」、酸化チタン固形分濃度20%、平均粒子径250nm)
<樹脂エマルジョン>
・ウレタン樹脂A(第一工業製薬株式会社製、商品名「スーパーフレックス(R)470」、ガラス転移温度(Tg)−31℃、固形分濃度38%)
・ウレタン樹脂B(第一工業製薬株式会社製、商品名「スーパーフレックス(R)420」、ガラス転移温度(Tg)−20℃、固形分濃度32%)
・ウレタン樹脂C(第一工業製薬株式会社製、商品名「スーパーフレックス(R)150」、ガラス転移温度(Tg)40℃、固形分濃度30%)
・自己架橋型スチレンアクリル樹脂D(日本合成化学株式会社製、商品名「モビニール966A」、ガラス転移温度(Tg)−32℃、固形分濃度45%)
・アクリル樹脂E(日本合成化学株式会社製、商品名「モビニール7320」、ガラス転移温度(Tg)−20℃、固形分濃度40%)
・スチレンアクリル樹脂F(新中村化学工業株式会社製、商品名「NKバインダー R−5HN」、ガラス転移温度(Tg)−18℃、固形分濃度44%)
<水溶性有機溶剤>
・グリセリン
・TEG(トリエチレングリコール)
・TEGmBE(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)
・2−ピロリドン
<界面活性剤>
・BYK−348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリシロキサン系界面活性剤)
<水溶性包接化合物>
・α−シクロデキストリン(水100mLに対する溶解度(25℃):14.5g)
・β−シクロデキストリン(水100mLに対する溶解度(25℃):1.8g)
・γ−シクロデキストリン(水100mLに対する溶解度(25℃):23.2g)
Claims (7)
- 水と、顔料と、樹脂エマルジョンと、水溶性包接化合物と、を含み、
前記樹脂エマルジョンに含まれる樹脂のガラス転移温度が0℃以下であり、
前記水溶性包接化合物の含有量と前記樹脂エマルジョン(固形分)の含有量との比(水溶性包接化合物/樹脂エマルジョン(固形分))が、質量基準で0.01以上5以下であることを特徴とする、インクジェット捺染用インク組成物。 - 前記水溶性包接化合物を2種以上含む、請求項1に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
- 前記水溶性包接化合物が、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
- 前記樹脂エマルジョンが、ウレタン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、およびアクリル樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
- 前記樹脂エマルジョンが、自己反応型のウレタン樹脂を含む、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
- 前記水溶性包接化合物の含有量と前記顔料(固形分)の含有量との比(水溶性包接化合物/顔料(固形分))が、質量基準で0.1以上5以下である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インク組成物を用いてインクジェット記録を行う、インクジェット記録方法。
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