JP6265028B2 - 多孔質炭素電極 - Google Patents
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Description
本発明の多孔質炭素電極は、以下の工程[1]〜[4]を含む製造方法によって製造することができる。
工程[1]:炭素短繊維が炭素により結着された多孔質炭素電極基材に撥水剤と界面活性剤を含有する溶液を含浸させる工程。
工程[2]:撥水剤と界面活性剤を含有する溶液を含浸した多孔質炭素電極基材上にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング液を塗布し、均一なコーティング層1を形成させる工程。
工程[3]:コーティング層1を形成した多孔質炭素電極基材に工程[2]と同様にコーティング層2を形成させ、50〜200℃の環境下においてコーティング層を乾燥させる工程。
工程[4]:乾燥後のコーティング層を形成した多孔質炭素電極基材を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する工程。
多孔質炭素電極基材に撥水性を付与すべく行う撥水処理には、フッ素樹脂などの撥水剤の粒子を溶媒中に分散させた分散液を用いる。溶媒として水を用いる場合、撥水剤は、そのままでは水には分散しないため、適当な界面活性剤によって水中に分散させる。また、分散液としてはあらかじめ撥水剤が分散されたディスパージョン等を用いることもできる。撥水処理手順としては、撥水剤と界面活性剤の分散液を使用して、既存のスプレー法や浸漬法などによって多孔質炭素電極基材に含浸処理を行い、次いで任意の熱処理によって乾燥・焼結処理を行うことが通例であるが、撥水処理工程における熱処理工程を省略することも出来る。
撥水剤は、たとえば、フッ素樹脂などが挙げられる。フッ素樹脂としては例えばテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などがあげられ、とりわけポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。PTFEを界面活性剤によって水中に分散させても良いし、あらかじめ分散されたディスパージョンを用いることも出来る。撥水剤の濃度としては、多孔質炭素電極基材の撥水性を担保するため、重量濃度で1〜30wt%であることが好ましく、より好ましくは2〜20wt%である。
カーボン粉および撥水剤からなるコーティング液の溶媒は、水系もしくは有機溶媒と水との混合溶媒または有機溶媒からなる。カーボン粉および撥水剤の割合は、カーボン粉100質量部に対し、撥水剤が5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部含まれることが好ましい。
多孔質炭素電極基材上にコーティング層を形成するためのコーティング液を塗布方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えばバーコート法、ブレード法、スクリーン印刷法、スプレー法、カーテンコーティング法およびロールコート法などがあげられる。これらの方法により、多孔質炭素電極基材上に均一なコーティング層を形成することができる。
本発明においては、コーティング層1を形成した多孔質炭素電極基材に、コーティング層2をコーティング層1の上に形成させる。コーティング層1の乾燥後の厚みは2〜50μm、コーティング層2の乾燥後の厚みは2〜50μmであることが好ましく、形成された2層のコーティング層の乾燥後の合計厚みが、5〜99μmの範囲にあることが好ましい。また、コーティング層1の厚みとコーティング層2の厚みは異なっていることが好ましい。各コーティング層の厚みの大小関係は、いずれが大、いずれが小であってもよい。コーティング層1とコーティング層2の乾燥後の厚みの差は1〜48μmであることが好ましく、より好ましくは2μm以上、48μm以下、更に好ましくは10μm以上、40μm以下である。厚みの差が適度な範囲内であれば、後の焼結工程においてコーティング層間で収縮応力が緩和されるため、コーティング層表面の収縮が生じにくくなり、結果として表面平滑性の高いコーティング層が得られる。コーティング層1上にコーティング層2を形成させる方法としては、コーティング層1を塗布した直後にコーティング層2を塗布し形成る方法、コーティング層1を塗布した後、一旦乾燥を経て、コーティング層2を塗布形成する方法があり、いずれの方法も用いることができる。
本発明においては、乾燥後の「コーティング層を形成した多孔質炭素電極基材」を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する。
本発明の製造方法により、多孔質炭素電極基材から電気抵抗が低く、排水性の良い固体高分子型燃料電池用の多孔質炭素電極を製造することができる。多孔質炭素電極基材であれば、どのようなものであっても本発明の技術を使用することにより、従来の製造技術を使用するよりも上記の効果を発現することができる。
シート状物を製造するにあたっては、液体の媒体中に、炭素短繊維(A)を分散させて抄造する湿式法、空気中に、炭素短繊維(A)を分散させて降り積もらせる乾式法などの抄紙方法を適用できる。好ましくは湿式法である。
<炭素短繊維(A)>
炭素短繊維(A)としては、その原料によらず用いることができるが、ポリアクリロニトリル(以後PANと略す。)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維から選ばれる1つ以上の炭素繊維を含むことが好ましく、PAN系炭素繊維あるいはピッチ系炭素繊維を含むことがより好ましい。炭素短繊維(A)の平均直径は、ガス拡散層としての表面平滑性と導電性の観点から、3〜30μm程度が好ましく、4〜20μmがより好ましく、4〜8μmがさらに好ましい。炭素短繊維(A)の長さは、抄紙時の分散性とガス拡散層としての機械的強度の観点から、2〜12mmが好ましく、3〜9mmがさらに好ましい。
炭素繊維前駆体短繊維(b)は、長繊維状の炭素繊維前駆体繊維を適当な長さにカットしたものである。炭素繊維前駆体短繊維(b)の繊維長は、分散性の点から、2〜20mm程度が好ましい。炭素繊維前駆体短繊維(b)の断面形状は特に限定されないが、炭素化した後の機械的強度、製造コストの面から、真円度の高いものが好ましい。また、炭素繊維前駆体短繊維(b)の直径は、炭素化時の収縮による破断を抑制するため、5μm以下であることが好ましい。
フィブリル状繊維(b´)は、天然繊維、合成繊維の区別なく、いかなる繊維を用いることも出来る。たとえば、アクリル等を主成分とするフィブリル状炭素前駆体(b´−1)から天然繊維である木材パルプまで含む。中でも含有する金属分が少ないことが好ましいため、フィブリル状繊維(b´)は、合成繊維であることが好ましい。より好ましくはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)などを用いることができる。これらをそれぞれ単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、炭素化収率を向上させるには、以下に示すフィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)を用いることが好ましい。
抄紙体の製造にあたっては、以下の方法をとることもできる。好適な長さに切断した炭素短繊維(A)を水中に均一に分散させ、分散している炭素短繊維を網上に抄造し、抄造した炭素短繊維シートをポリビニルアルコールの水系分散液に浸漬し、浸漬したシートを引き上げて乾燥させる。前記ポリビニルアルコールは、炭素短繊維同士を結着するバインダーの役目を果たし、炭素短繊維が分散した状態において、それらがバインダーにより結着された状態の炭素短繊維のシートが製造される。バインダーとしては、他に、スチレン−ブタジエンゴム、エポキシ樹脂などを用いることが出来る。
交絡処理は必ずしも必要ではないが、シート状物を交絡処理することで、炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)が3次元に交絡した交絡構造を有するシート(交絡構造シート)を形成することができる。
<樹脂>
抄紙体に含浸させる樹脂としては、炭素化した段階でガス拡散層の炭素繊維を結着することのできる公知の樹脂から適宜選んで用いることができる。炭素化工程を有する多孔質炭素電極基材を製造する場合は、炭素化後に導電性物質として残存しやすいという観点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ピッチ等が好ましく、加熱による炭素化の際に炭化率の高いフェノール樹脂が特に好ましい。炭素化工程を有さない多孔質炭素電極基材を製造する際には、熱可塑性・熱硬化性樹脂を問わず、使用することができる。多孔質炭素電極基材の撥水性を高める観点から、フッ素樹脂が好ましい。また、炭素化工程の有無に関わらず、多孔質炭素電極基材の導電性をさらに向上させることを目的として、これらの樹脂に炭素粉を混合することも有効である。炭素粉としては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、葉片状黒鉛、塊状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛粒子、更には、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。特に限定はされないが、上記炭素粉のうちでも、黒鉛粒子、カーボンブラックがより好ましい。これらを単数あるいは複数用いてもよい。
熱硬化性樹脂を含浸させる方法としては、公知の方法を用いることが出来る。たとえば、ディップ法やキスコート法、スプレー法、カーテンコート法などを用いることが出来る。とりわけ製造コストの観点から、スプレー法やカーテンコート法を用いることが好ましい。
乾燥方法としては、公知の技術を用いることが出来る。加熱されたロールに接触させて乾燥させるドラム乾燥や熱風による乾燥方法などを用いることが出来る。メンテナンスの簡便さから、非接触方式による乾燥が好ましい。乾燥温度としては、樹脂が硬化しない温度範囲60〜110℃、より好ましくは70〜100℃が好ましい。
炭素化処理は前駆体シート中の炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´)および熱硬化性樹脂を炭素化する。炭素化処理は多孔質炭素電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で行うことが好ましい。炭素化処理は、通常1000℃以上の温度で行なわれる。炭素化処理温度範囲は、1000〜3000℃が好ましく、1000〜2200℃がより好ましい。炭素化処理時間は、例えば10分間〜1時間程度である。また、炭素化処理の前に、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行うことができる。
炭素化工程を省略することで、炭素化を行う場合に比べてエネルギーコストを大幅に低減することができる。炭素化工程の省略による導電性の低下を抑制するため、さらなる導電性物質を導入することが必要である。上述した、炭素短繊維が分散した抄紙体に前記導電性物質などを添加・定着させる方法や、導電性物質とバインダー樹脂からなるスラリーを調製し、それらを製膜後、熱処理を行って多孔質炭素電極基材を製造する方法がある。前者の方法であれば、上述した炭素化工程を有する多孔質炭素電極基材の製造方法に準じて、抄紙体に樹脂含浸を行う要領で、導電性物質を添加し、その後にプレス成形することで定着させて多孔質炭素電極基材を製造することができる。また、後者の製造方法においても、上記抄紙体を製造する際のスラリー調製方法と同様にして、導電性物質を単数もしくは複数選択し、バインダー物質と溶液中で混合することでスラリーを調製し、公知のコーティング技術を用いて製膜後、乾燥・熱処理を施すことで多孔質炭素電極基材を製造できる。また、これらに供する導電性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、炭素繊維であればポリアクリロニトリル系(PAN系)炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、その他、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどを適宜用いることができる。用いる種類は限定されず、単独で使用してもよくあるいは複数選択して用いてもよい。導電性物質を決着させるバインダーとしては、樹脂を用いることができる。樹脂としては、撥水性を有するフッ素系、あるいはシリコン系樹脂などが好適である。上記スラリーを調製するにあたっては、スラリーの溶媒として、水、アセトン、エタノール、メタノールなどを適宜用いることができるが、環境負荷の低減、製造装置のコスト低減の観点から、溶媒としては水を用いることが最も好ましい。また、スラリー中における導電性物質およびバインダー物質の分散性を向上させるべく、界面活性剤や粘剤などの添加剤を適宜用いてもよい。
本発明の多孔質炭素電極は、多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が2層形成された多孔質炭素電極であって、多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差が1〜48μmである多孔質炭素電極である。嵩密度が0.20〜0.75g/cm3、面直方向の透気度が50〜300ml/hr・cm2・mmAq(14.16〜84.98mL/(m 2 ・Pa・s))、かつ、コーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さが0.1〜2μm、かつ、最大表面粗さが5〜20μmであることが好ましい。
本発明においては、「多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成されたもの」を「多孔質炭素電極」という。
本発明の多孔質炭素電極はカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を層有するが、多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差は1〜48μmであることを必須とする。この差が小さすぎるとコーティング層1とコーティング層2の目付および嵩密度のバランスが等しくなるため、積層効果が得られず、単層のコーティング層を形成させた場合と同様の表面粗さの大きなコーティング層しか得ることができない。大きすぎると厚みの大きいコーティング層の効果が支配的となり、厚みの小さいコーティング層による効果が得られず、単層のコーティング層を形成させた場合と同様の表面粗さの大きなコーティング層しか得ることができない。コーティング層1の厚みとコーティング層2の厚みの差は、好ましくは2〜48μm、より好ましくは2〜40μmである。
多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みは、上記の「多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差は1〜48μmである」条件を満たすことが必須であるが、それぞれ独立して1〜50μmであることが好ましい。厚みが薄すぎると多孔質電極基材表面の形状の寄与が大きくなるため、コーティング層の表面粗さが大きくなってしまい、燃料電池に使用した際に電極触媒層との接触性が低下する。また、容易にコーティング層を多孔質電極基材に含まれる炭素短繊維が突き破り、リーク電流等の原因にもなる。厚みが厚すぎると多孔質炭素電極の厚み方向における貫通抵抗値が増大し、燃料電池に用いた際に発電性能を低下させてしまう。各層の厚みは、より好ましくは2〜50μm、特に好ましくは5〜40μmである。なお、孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの合計は、5〜99μmであることが好ましい。合計の厚みが薄すぎると多孔質炭素電極の表面粗さが大きくなるため、コーティング層としての効果を得られず、厚すぎると多孔質炭素電極の厚み方向における貫通抵抗値が増大し、コーティング層表面にクラックなどの欠陥が生じるである。合計の厚みは、より好ましくは10〜90μm、特に好ましくは20〜80μmである。
本発明の多孔質炭素電極の嵩密度は、電気抵抗を下げる観点からは高いほど良いが、一方で液体や気体の排出性の観点からは、低い方が良い。具体的には0.20〜0.80g/cm3であり、0.20〜0.75g/cm3の範囲にあることが好ましい。
本発明の多孔質炭素電極の面直方向における透気度は、液体に加えて気体の拡散性を良好に保つためには、後述するガーレー法で測定した際に、50〜500ml/hr・cm2・mmAq(14.16〜141.63mL/(m 2 ・Pa・s))である。好ましくは50〜300ml/hr・cm2・mmAq(14.16〜84.98mL/(m 2 ・Pa・s))であることが好ましい。
多孔質炭素電極の厚みは、良好な電気導電性と排水性を発現するために、50〜350μmの範囲にあることが好ましい。50μm以上であれば、ハンドリング可能であり、350μm以下であれば良好な電気伝導性が得られる。さらに好ましい厚みは、100〜250μmの範囲である。
本発明のコーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さは、触媒層との接触性を向上させるため0.1〜2μmの範囲内にあることが好ましい、なおかつ、最大表面粗さが5〜20μmであることで良好な触媒層との接触性が得られる。
製造した多孔質炭素電極から、3×3cm角の試験片を10点、ランダムに取り出し、それぞれの厚みをマイクロメーターにより各サンプルに対して5点ずつ測定して平均厚みを算出し、重量を電子天秤により秤量した。下式に従って多孔質炭素電極の嵩密度を算出した。10点測定した嵩密度の平均値を其のサンプルの代表値として採用した。
<算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さの測定>
多孔質炭素電極のコーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さは、JIS規格B−0601に準拠し、表面粗さ計サーフテストSJ―402(ミツトヨ社製)を用いて算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さをそれぞれ測定し、一つのサンプルについて10点測定を行い、その平均値を代表値として採用した。
JIS規格P−8117に準拠し、ガーレーデンソメーターを使用して200mLの空気が透過するのにかかった時間を測定し、ガス透気度(ml/hr/cm2/mmAq)(mL/(m 2 ・Pa・s))、を算出した。
コーティング層の厚みは、以下の2通りの測定方法により測定を行った。コーティング層形成前後の厚み測定において各コーティング層の厚みを測定する方法と、多孔質炭素電極の断面像を走査型電子顕微鏡にて撮影し、各コーティング層の厚みを測定する方法である。厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ((株)ミツトヨ製、商品名:7321)を使用して測定した。測定子の大きさは直径10mmで、測定圧力は1.5kPaとした。いずれの測定方法においても、一つのサンプルについて10点測定を行い、その平均値を代表値として採用した。
(多孔質炭素電極基材)
多孔質炭素電極基材は、市販のカーボンペーパーやカーボンクロスなどを用いることが出来るが、本発明では平滑な多孔質炭素電極基材を得るべく、多孔質炭素電極基材から製造を行った。
炭素短繊維(A)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ミキサーを通して離解処理し、離解スラリー繊維(SA)とした。
炭素繊維前駆体短繊維(b)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ミキサーを通して離解処理し、離解スラリー繊維(Sb)とした。
前記易割繊性アクリル系海島複合短繊維を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散させミキサーを通して叩解・離解処理し、離解スラリー繊維(Sb´)とした。
炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)およびフィブリル状繊維(b´)とが、質量比70:10:20で、かつスラリー中の繊維の濃度が、1.44g/Lとなるように離解スラリー繊維(SA)、離解スラリー繊維(Sb)、離解スラリー繊維(Sb´)、希釈水を計量し、分散させた。抄紙には、ネット駆動部及び幅60cm×長さ585cmのプラスチックネット製平織メッシュをベルト状につなぎあわせて連続的に回転させるネットよりなるシート状物搬送装置、スラリー供給部幅が48cm、ネット下部に配置した減圧脱水装置からなる処理装置を用いた。処理装置の下流に下記の3本のウォータージェットノズルを備えた加圧水流噴射処理装置を配置した。
幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)
1列配置、ノズル有効幅500mm
ノズル2:孔径φ0.15mm×501孔
幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)
1列配置、ノズル有効幅500mm
ノズル3:孔径φ0.15mm×1002孔
幅方向孔間ピッチ1.5mm
3列配置、列間ピッチ5mm、ノズル有効幅500mm
加圧水流噴射圧力を1MPaノズル1、圧力2MPa(ノズル2)、圧力1MPa(ノズル3)として、繊維の分散したスラリーをスラリー供給部より投入し、減圧脱水を経た後、ノズル1、ノズル2、ノズル3の順で通過させて交絡処理を加え3次元交絡構造を持つ抄紙体を得た。抄紙体を、ピンテンター試験機(辻井染機工業(株)製PT−2A−400)により150℃で3分間、乾燥させて抄紙体を得た。なお、抄紙体における炭素短繊維(A)および炭素繊維前駆体短繊維(b)、フィブリル状繊維(b´)の分散状態は、良好でさらにハンドリング性は良好であった。
得られた抄紙体にフェノール樹脂ディスパージョンを含浸させ、熱風乾燥機を用いて雰囲気温度100℃にて乾燥させた。
次に、この抄紙体の両面を、シリコーン系離型剤をコートした紙で挟み込むように配置し、ダブルベルトプレス装置にて190℃、ベルト速度0.2m/分にてプレス成形を行った。
その後、この前駆体シートをバッチ炭素化炉にて、窒素ガス雰囲気中、2000℃の条件下で1時間炭素化処理して多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は反りやうねりが生じておらず平滑であった。
デンカブラック(電気化学工業株式会社製)、イオン交換水、イソプロピルアルコールをそれぞれ5:100:80の割合で混合し、ホモミクサーMARK−II(プライミクス株式会社製)を用いて、冷却しながら15000rpmで30分間撹拌を行って、コーティング液1を得た。
コーティング液1を冷却し、液温を10℃以下にした後、冷却しながらポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョンをカーボンブラック1に対し、0.3の割合で添加しディスパーによって500rpmで5分間の撹拌を行い、コーティング液2を得た。
多孔質炭素電極基材用の撥水処理液の作成には、PTFEディスパージョン(31−JR、三井デュポンフロロケミカル製)と界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)および蒸留水を用いた。撥水処理液における固形分濃度が、PTFEは1wt%、界面活性剤は2wt%となるように調整した後、蒸留水を添加して、ディスパーを用いて1000rpm、10分間撹拌することによって撥水処理液を作成した。
多孔質炭素電極基材を上記の撥水処理液に浸漬することによって含浸させた。含浸後の多孔質炭素電極基材をアプリケーター(テスター産業製)のガラス面に静置し、付属のアプリケーターバーを多孔質炭素電極基材に押し当て、アプリケーターバーを100mm/secの速度で搬送することによって、多孔質炭素電極基材に付着した余分な撥水処理液を取り除いた。
さらに、アプリケーター(テスター産業製)を用いて、コーティング層の厚みが45μm前後となるよう、コーティング液2を多孔質炭素電極基材上にコーティングし、ついで100℃に設定した熱風乾燥機を用いて20分間乾燥させ、コーティング層1を形成した多孔質炭素電極基材を得た。アプリケーター(テスター産業製)を用いてコーティング液2をコーティング層の厚みが49μm前後となるよう、コーティング層1上に塗布し、コーティング層2を形成し、乾燥させて、マッフル炉にて360℃1時間焼結処理をおこない、2層のコーティング層を形成した多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを35μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを25μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを15μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを5μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを45μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを35μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを25μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを15μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを5μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1のみを形成し、その厚みを30μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1のみを形成し、その厚みを50μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1のみを形成し、その厚みを70μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1のみを形成し、その厚みを90μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも30μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも20μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも10μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも5μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
Claims (6)
- 多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が2層形成された多孔質炭素電極であって、多孔質炭素電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差が1〜48μmであり、嵩密度が0.20〜0.75g/cm 3 、面直方向の透気度が50〜300ml/hr・cm 2 ・mmAq(14.16〜84.98mL/(m 2 ・Pa・s))、かつ、コーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さが0.1〜2μm、かつ、最大表面粗さが5〜20μmである多孔質炭素電極。
- 多孔質炭素電極基材の一方の面上のみに、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成された請求項1に記載の多孔質炭素電極。
- コーティング層1の厚みが2〜50μm、コーティング層2の厚みが2〜50μmである請求項1または2に記載の多孔質炭素電極。
- コーティング層1の厚みが、コーティング層2の厚みよりも小である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質炭素電極。
- コーティング層1の厚みが、コーティング層2の厚みよりも大である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質炭素電極。
- 多孔質炭素電極基材の一方の面上に、形成された2層のコーティング層の合計厚みが、5〜99μmである請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質炭素電極。
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