JP6183065B2 - 多孔質炭素電極とその製造方法 - Google Patents
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Description
工程[1]:撥水処理を施していない多孔質炭素電極基材上にカーボン粉と撥水剤からなる塗工液を塗布し、均一な塗工膜を形成させるとともに多孔質炭素電極基材多孔質炭素電極基材中にカーボン粉と撥水剤を染み込ませる工程。
工程[2]:塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材を50〜200℃の環境下において塗工膜を乾燥させる工程。
工程[3]:乾燥後の塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する工程
本発明の多孔質炭素電極は、以下の工程[1]〜[3]を有する製造方法によって製造することができる。
工程[1]:撥水処理を施していない多孔質炭素電極基材上にカーボン粉と撥水剤からなる塗工液を塗布し、均一な塗工膜を形成させるとともに多孔質炭素電極基材多孔質炭素電極基材中にカーボン粉と撥水剤を染み込ませる工程。
工程[2]:塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材を50〜200℃の環境下において塗工膜を乾燥させる工程。
工程[3]:乾燥後の塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する工程。
(i)工程[1]の前に、多孔質炭素電極基材に界面活性剤溶液を含浸させる工程[1’]を設ける方法。
(ii)工程[1]の前に、多孔質炭素電極基材に界面活性剤溶液を含浸させる工程[1’]を設け、工程[1’]と工程[1]の間に、界面活性剤溶液を含浸させた多孔質炭素電極基材を50〜200℃で乾燥させる工程[1”]を設ける方法。
(iii)工程[1]の前に、上記工程[1’]及び工程[1”]を設けない方法。
従来は多孔質炭素電極基材に撥水性を付与するべく上記の工程[1]に該当する工程(多孔質炭素電極基材上にカーボン粉と撥水剤からなる塗工液を塗布し、均一な塗工膜を形成させる工程)の前に下処理として撥水剤によって撥水処理がなされていた。撥水処理は、フッ素樹脂などの撥水剤の粒子を溶媒中に分散させた分散液を用いる。溶媒として水を用いる場合、撥水剤は、そのままでは水には分散しないため、適当な界面活性剤によって水中に分散させる。撥水処理は、撥水剤と界面活性剤の分散液を使用して、スプレーや浸漬によって多孔質電極基材に処理を行い、さらに乾燥処理を行う。こういった従来の方法では、多孔質炭素電極基材の撥水性は高くなるが、液体水が電池に存在する条件においては、かえって液体水が排出されにくくなる傾向にあった。本発明では、工程[1]の前に多孔質炭素電極基材に下処理としての撥水処理を行わない。本発明においては、コーティング層を形成する際に、コーティング塗工液から撥水剤を染み出させて、多孔質炭素電極基材に撥水性を付与する。
カーボン粉および撥水剤からなる塗工液は、水系もしくは混合溶媒からなる。カーボン粉および撥水剤の割合は、カーボン粉100質量部に対し、撥水剤が5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部含まれることが好ましい。
多孔質炭素電極基材上に塗工膜を形成するための塗工液を塗布方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えばバーコート法、ブレード法、スクリーン印刷法、スプレー法、カーテンコーティング法およびロールコート法などがあげられる。これらの方法により、多孔質炭素電極基材上に均一な塗工膜を形成することができる。
本発明においては、塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材を50〜200℃の環境下におくことにより、塗工膜を乾燥させる。例えば熱風乾燥機やIRヒーターなどを用いて50〜200℃の環境を作ることができる。
本発明においては、乾燥後の「塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材」を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する。
本発明においては、塗工膜を形成する前(即ち、工程[1]の前)に、多孔質炭素電極基材の下処理を行っても良い。具体的な下処理方法としては、多孔質炭素電極基材に界面活性剤溶液を含浸させる方法や多孔質炭素電極基材に電気化学反応を生じさせ、多孔質炭素電極基材表面に官能基を修飾するなど電気化学的に処理する方法などが挙げられる。より簡便でコストの安い、多孔質炭素電極基材に界面活性剤溶液を含浸させる方法を用いることが好ましい。
更に、塗工性の向上と塗膜と基材との接着性を上げるという観点から、上記工程[1’]の後(かつ工程[1]の前)、界面活性剤溶液を含浸させた多孔質炭素電極基材を50〜200℃で乾燥させる前処理を行っても良い。界面活性剤溶液を含浸させた多孔質炭素電極基材を乾燥する際の乾燥温度としては、50〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは70〜180℃である。また乾燥時間は2〜20分程度が好ましく、より好ましくは2〜10分である。
本発明の製造方法により、多孔質炭素電極基材から電気抵抗が低く、排水性の良い固体高分子型燃料電池用の多孔質炭素電極を製造することができる。多孔質炭素電極基材であれば、どのようなものであっても本発明の技術を使用することにより、従来の製造技術を使用するよりも上記の効果を発現することができる。
シート状物を製造するにあたっては、液体の媒体中に、炭素短繊維(A)を分散させて抄造する湿式法、空気中に、炭素短繊維(A)を分散させて降り積もらせる乾式法などの抄紙方法を適用できる。好ましくは湿式法である。
<炭素短繊維(A)>
炭素短繊維(A)としては、その原料によらず用いることができるが、ポリアクリロニトリル(以後PANと略す。)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維から選ばれる1つ以上の炭素繊維を含むことが好ましく、PAN系炭素繊維あるいはピッチ系炭素繊維を含むことがより好ましい。炭素短繊維(A)の平均直径は、ガス拡散層としての表面平滑性と導電性の観点から、3〜30μm程度が好ましく、4〜20μmがより好ましく、4〜8μmがさらに好ましい。炭素短繊維(A)の長さは、抄紙時の分散性とガス拡散層としての機械的強度の観点から、2〜12mmが好ましく、3〜9mmがさらに好ましい。
炭素繊維前駆体短繊維(b)は、長繊維状の炭素繊維前駆体繊維を適当な長さにカットしたものである。炭素繊維前駆体短繊維(b)の繊維長は、分散性の点から、2〜20mm程度が好ましい。炭素繊維前駆体短繊維(b)の断面形状は特に限定されないが、炭素化した後の機械的強度、製造コストの面から、真円度の高いものが好ましい。また、炭素繊維前駆体短繊維(b)の直径は、炭素化時の収縮による破断を抑制するため、5μm以下であることが好ましい。
フィブリル状繊維(b´)は、天然繊維、合成繊維の区別なく、いかなる繊維を用いることも出来る。たとえば、アクリル等を主成分とするフィブリル状炭素前駆体(b´−1)から天然繊維である木材パルプまで含む。中でも含有する金属分が少ないことが好ましいため、フィブリル状繊維(b´)は、合成繊維であることが好ましい。より好ましくはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)などを用いることができる。これらをそれぞれ単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、炭素化収率を向上させるには、以下に示すフィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)を用いることが好ましい。
抄紙体の製造にあたっては、以下の方法をとることもできる。好適な長さに切断した炭素短繊維(A)を水中に均一に分散させ、分散している炭素短繊維を網上に抄造し、抄造した炭素短繊維シートをポリビニルアルコールの水系分散液に浸漬し、浸漬したシートを引き上げて乾燥させる。前記ポリビニルアルコールは、炭素短繊維同士を結着するバインダーの役目を果たし、炭素短繊維が分散した状態において、それらがバインダーにより結着された状態の炭素短繊維のシートが製造される。バインダーとしては、他に、スチレン−ブタジエンゴム、エポキシ樹脂などを用いることが出来る。
交絡処理は必ずしも必要ではないが、シート状物を交絡処理することで、炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)が3次元に交絡した交絡構造を有するシート(交絡構造シート)を形成することができる。
<樹脂>
抄紙体に含浸させる樹脂としては、炭素化した段階でガス拡散層の炭素繊維を結着することのできる公知の樹脂から適宜選んで用いることができる。炭素化工程を有する多孔質電極基材を製造する場合は、炭素化後に導電性物質として残存しやすいという観点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ピッチ等が好ましく、加熱による炭素化の際に炭化率の高いフェノール樹脂が特に好ましい。炭素化工程を有さない多孔質電極基材を製造する際には、熱可塑性・熱硬化性樹脂を問わず、使用することができる。また、炭素化工程の有無に関わらず、多孔質炭素電極基材の導電性をさらに向上させることを目的として、これらの樹脂に炭素粉を混合することも有効である。炭素粉としては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、葉片状黒鉛、塊状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛粒子、更には、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。特に限定はされないが、上記炭素粉のうちでも、黒鉛粒子、カーボンブラックがより好ましい。これらを単数あるいは複数用いてもよい。
熱硬化性樹脂を含浸させる方法としては、公知の方法を用いることが出来る。たとえば、ディップ法やキスコート法、スプレー法、カーテンコート法などを用いることが出来る。とりわけ製造コストの観点から、スプレー法やカーテンコート法を用いることが好ましい。
乾燥方法としては、公知の技術を用いることが出来る。加熱されたロールに接触させて乾燥させるドラム乾燥や熱風による乾燥方法などを用いることが出来る。メンテナンスの簡便さから、非接触方式による乾燥が好ましい。乾燥温度としては、樹脂が硬化しない温度範囲60〜110℃、より好ましくは70〜100℃が好ましい。
炭素化処理は前駆体シート中の炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´)および熱硬化性樹脂を炭素化する。炭素化処理は多孔質電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で行うことが好ましい。炭素化処理は、通常1000℃以上の温度で行なわれる。炭素化処理温度範囲は、1000〜3000℃が好ましく、1000〜2200℃がより好ましい。炭素化処理時間は、例えば10分間〜1時間程度である。また、炭素化処理の前に、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行うことができる。
<炭素化工程を省略した多孔質炭素電極基材の製造方法>
炭素化工程を省略することで、炭素化を行う場合に比べてエネルギーコストを大幅に低減することができる。炭素化工程の省略による導電性の低下を抑制するため、さらなる導電性物質を導入することが必要である。上述した、炭素短繊維が分散した抄紙体に前記導電性物質などを添加・定着させる方法や、導電性物質とバインダー樹脂からなるスラリーを調製し、それらを製膜後、熱処理を行って多孔質炭素電極基材を製造する方法がある。前者の方法であれば、上述した炭素化工程を有する多孔質電極基材の製造方法に準じて、抄紙体に樹脂含浸を行う要領で、導電性物質を添加し、その後にプレス成形することで定着させて多孔質炭素電極基材を製造することができる。また、後者の製造方法においても、上記抄紙体を製造する際のスラリー調製方法と同様にして、導電性物質を単数もしくは複数選択し、バインダー物質と溶液中で混合することでスラリーを調製し、公知のコーティング技術を用いて製膜後、乾燥・熱処理を施すことで多孔質炭素電極基材を製造できる。また、これらに供する導電性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、炭素繊維であればポリアクリロニトリル系(PAN系)炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、その他、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどを適宜用いることができる。用いる種類は限定されず、単独で使用してもよくあるいは複数選択して用いてもよい。導電性物質を決着させるバインダーとしては、樹脂を用いることができる。樹脂としては、撥水性を有するフッ素系、あるいはシリコン系樹脂などが好適である。上記スラリーを調製するにあたっては、スラリーの溶媒として、水、アセトン、エタノール、メタノールなどを適宜用いることができるが、環境負荷の低減、製造装置のコスト低減の観点から、溶媒としては水を用いることが最も好ましい。また、スラリー中における導電性物質およびバインダー物質の分散性を向上させるべく、界面活性剤や粘剤などの添加剤を適宜用いてもよい。
本発明の製造方法により得られる多孔質炭素電極は、多孔質炭素電極基材の一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成された多孔質炭素電極であって、嵩密度が0.30〜0.65g/cm3、面直方法の透気度が50〜300ml/hr・cm2・mmAq、かつ、面圧0.5MPaを付与した際の面直方向における電気抵抗が0.45〜0.60Ω・cmである多孔質炭素電極である。
本発明においては、「多孔質炭素電極基材の一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成されたもの」を「多孔質炭素電極」という。
本発明の多孔質炭素電極の嵩密度は、電気抵抗を下げる観点からは高いほど良いが、一方で液体や気体の排出性の観点からは、低い方が良い。具体的には0.30〜0.65g/cm3であり、0.33〜0.55g/cm3の範囲にあることが好ましい。
本発明の多孔質炭素電極の面直方向における透気度は、液体に加えて気体の拡散性を良好に保つためには、後述するガーレー法で測定した際に、50〜300ml/hr・cm2・mmAqである。好ましくは50〜130ml/hr・cm2・mmAqであることが好ましい。
多孔質炭素電極の厚みは、良好な電気導電性と排水性を発現するために、50〜350μmの範囲にあることが好ましい。50μm以上であれば、ハンドリング可能であり、350μm以下であれば良好な電気伝導性が得られる。さらに好ましい厚みは、100〜250μmの範囲である。
本発明の多孔質炭素電極の面圧0.5MPaを付与した際の面直方向における電気抵抗は、燃料電池の内部抵抗を小さくし、高電流密度領域でも発電可能とするために、0.45〜0.60Ω・cmである。好ましくは0.47〜0.50Ω・cmであることがより好ましい。
本発明の多孔質炭素電極における多孔質炭素電極基材は、コーティング層を有する面から、もう一方のコーティング層を有さない面に向かって、カーボン粉と撥水剤の付着率が低くなっている。
製造した多孔質炭素電極から、3×3cm角の試験片を10点、ランダムに取り出し、それぞれの厚みをマイクロメーターにより各サンプルに対して5点ずつ測定して平均厚みを算出し、重量を電子天秤により秤量した。下式に従って多孔質炭素電極の嵩密度を算出した。10点測定した嵩密度の平均値を其のサンプルの代表値として採用した。
<面圧0.5MPaを付与した際の面直方向における電気抵抗の測定>
多孔質炭素電極の厚さ方向の電気抵抗(貫通方向抵抗)は、金メッキした銅板に多孔質炭素電極を挟み、銅板の上下から0.5MPaで加圧し、10mA/cm2の電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求めた。なお多孔質炭素電極の試料サイズは直径=25mmである。
<透気度の測定>
JIS規格P−8117に準拠し、ガーレーデンソメーターを使用して200mLの空気が透過するのにかかった時間を測定し、ガス透気度(ml/hr/cm2/mmAq)を算出した。
両面に触媒担持カーボン(触媒:Pt、触媒担持量:50質量%)からなる触媒層(触媒層面積:25cm2、Pt付着量:0.3mg/cm2)を形成したパーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜(膜厚:30μm)を、多孔質炭素電極のコーティング層側を高分子電解質膜と接するように2組の多孔質電極基材で挟持し、これらを接合して得たMEAを蛇腹状のガス流路を有する2枚のカーボンセパレーターによって挟み、固体高分子型燃料電池(単セル)を形成し、温度を60℃としたこの単セルに水素ガスと空気を70℃のバブラーを介して供給し、相対湿度が156.5%という高加湿条件で発電させた。起電力―電流密度曲線を記録し、電流密度1.2A/cm2で発電時に取り出される起電力を評価した。
(多孔質炭素電極基材)
多孔質炭素電極基材は、市販のカーボンペーパーやカーボンクロスなどを用いることが出来るが、本発明では平滑な多孔質炭素電極基材を得るべく、多孔質炭素電極基材から製造を行った。
炭素短繊維(A)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ミキサーを通して離解処理し、離解スラリー繊維(SA)とした。
炭素繊維前駆体短繊維(b)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ミキサーを通して離解処理し、離解スラリー繊維(Sb)とした。
前記易割繊性アクリル系海島複合短繊維を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散させミキサーを通して叩解・離解処理し、離解スラリー繊維(Sb´)とした。
炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)およびフィブリル状繊維(b´)とが、質量比70:10:20で、かつスラリー中の繊維の濃度が、1.44g/Lとなるように離解スラリー繊維(SA)、離解スラリー繊維(Sb)、離解スラリー繊維(Sb´)、希釈水を計量し、分散させた。抄紙には、ネット駆動部及び幅60cm×長さ585cmのプラスチックネット製平織メッシュをベルト状につなぎあわせて連続的に回転させるネットよりなるシート状物搬送装置、スラリー供給部幅が48cm、ネット下部に配置した減圧脱水装置からなる処理装置を用いた。処理装置の下流に下記の3本のウォータージェットノズルを備えた加圧水流噴射処理装置を配置した。
幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)
1列配置、ノズル有効幅500mm
ノズル2:孔径φ0.15mm×501孔
幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)
1列配置、ノズル有効幅500mm
ノズル3:孔径φ0.15mm×1002孔
幅方向孔間ピッチ1.5mm
3列配置、列間ピッチ5mm、ノズル有効幅500mm
加圧水流噴射圧力を1MPaノズル1、圧力2MPa(ノズル2)、圧力1MPa(ノズル3)として、繊維の分散したスラリーをスラリー供給部より投入し、減圧脱水を経た後、ノズル1、ノズル2、ノズル3の順で通過させて交絡処理を加え3次元交絡構造を持つ抄紙体を得た。抄紙体を、ピンテンター試験機(辻井染機工業(株)製PT−2A−400)により150℃で3分間、乾燥させて抄紙体を得た。なお、抄紙体における炭素短繊維(A)および炭素繊維前駆体短繊維(b)、フィブリル状繊維(b´)の分散状態は、良好でさらにハンドリング性は良好であった。
得られた抄紙体にフェノール樹脂ディスパージョンを含浸させ、熱風乾燥機を用いて雰囲気温度100℃にて乾燥させた。
次に、この抄紙体の両面を、シリコーン系離型剤をコートした紙で挟み込むように配置し、ダブルベルトプレス装置にて190℃、ベルト速度0.2m/分にてプレス成形を行った。
その後、この前駆体シートをバッチ炭素化炉にて、窒素ガス雰囲気中、2000℃の条件下で1時間炭素化処理して多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は反りやうねりが生じておらず平滑であった。
デンカブラック(電気化学工業株式会社製)、イオン交換水、イソプロピルアルコールをそれぞれ5:100:80の割合で混合し、ホモミクサーMARK−II(プライミクス株式会社製)を用いて、冷却しながら15000rpmで30分間撹拌を行って、コーティング液1を得た。
コーティング液を冷却し、液温を10℃以下にした後、冷却しながらポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョンをカーボンブラック1に対し、0.3の割合で添加しディスパーによって500rpmで5分間の撹拌を行い、コーティング液2を得た。
次に、アプリケーター(テスター産業製)を用いてコーティング液2を多孔質炭素電極基材上に塗工し、ついで100℃に設定した熱風乾燥機を用いて20分間乾燥させた。さらに、乾燥後マッフル炉にて360℃1時間焼結処理をおこなってコーティング層を形成した多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.30g/cm3、貫通抵抗は0.576Ω・cm、透気度は121.2ml/hr・cm2・mmAqであり、良好であった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、良好な発電性能を示したため、本発明の多孔質炭素電極の排水性は良好であった。表1に結果をまとめた。また、図1のように多孔質炭素電極の表面は均一であった。
コーティング層を形成する前に、下処理として多孔質炭素電極基材を濃度0.1wt%の界面活性剤溶液(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、和光純薬工業製)に含浸したのち、熱風乾燥機を用いて100℃で10分間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.46g/cm3、貫通抵抗は0.483Ω・cm、透気度は83.0ml/hr・cm2・mmAqであり、良好であった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、良好な発電性能を示したため、本発明の多孔質炭素電極の排水性は良好であった。表1に結果をまとめた。
多孔質炭素電極基材の下処理に用いた界面活性剤の濃度を1wt%としたこと以外は実施例2と同様にして多孔質炭素電極を製造した。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.37g/cm3、貫通抵抗は0.493Ω・cm、透気度は72.6ml/hr・cm2・mmAqであり、良好であった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、良好な発電性能を示したため、本発明の多孔質炭素電極の排水性は良好であった。表1に結果をまとめた。
多孔質炭素電極基材の下処理に用いた界面活性剤の濃度を2wt%としたこと以外は実施例2と同様にして多孔質炭素電極を製造した。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.42g/cm3、貫通抵抗は0.490Ω・cm、透気度は63.7ml/hr・cm2・mmAqであり、良好であった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、良好な発電性能を示したため、本発明の多孔質炭素電極の排水性は良好であった。表1に結果をまとめた。
多孔質炭素電極基材の下処理に用いた界面活性剤の濃度を5wt%としたこと以外は実施例2と同様にして多孔質炭素電極を製造した。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.51g/cm3、貫通抵抗は0.489Ω・cm、透気度は52.6ml/hr・cm2・mmAqであり、良好であった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、良好な発電性能を示したため、本発明の多孔質炭素電極の排水性は良好であった。表1に結果をまとめた。
多孔質炭素電極基材の下処理に際し乾燥を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして多孔質炭素電極を製造した。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.64g/cm3、貫通抵抗は0.455Ω・cm、透気度は50.6ml/hr・cm2・mmAqであり、良好であった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、良好な発電性能を示したため、本発明の多孔質炭素電極の排水性は良好であった。表1に結果をまとめた。
コーティング層を形成する前に、下処理として多孔質炭素電極基材を固形分1wt%のPTFEディスパージョン(31−JR、三井デュポンフロロケミカル製)と濃度2wt%の界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)の混合液に含浸した(撥水処理した)のち、熱風乾燥機を用いて100℃で10分間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.33g/cm3、貫通抵抗は0.619Ω・cm、透気度は48.0ml/hr・cm2・mmAqであり、特に貫通抵抗が非常に高くなってしまった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、多孔質炭素電極の排水性が悪く、電池内部に水詰まりが生じてしまい、所定の電流密度まで起電力を得ることができず発電状態を維持することができなかった。表1に結果をまとめた。
コーティング層を形成する前に、下処理に5wt%のPTFEディスパージョン(31−JR、三井デュポンフロロケミカル製)と濃度2wt%の界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)の混合液を用いた(撥水処理した)こと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.46g/cm3、貫通抵抗は0.668Ω・cm、透気度は40.1ml/hr・cm2・mmAqであり、特に貫通抵抗が非常に高くなってしまった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、多孔質炭素電極の排水性が悪く、電池内部に水詰まりが生じてしまい、所定の電流密度まで起電力を得ることができず発電状態を維持することができなかった。表1に結果をまとめた。
コーティング層を形成する前に、下処理に10wt%のPTFEディスパージョン(31−JR、三井デュポンフロロケミカル製)と濃度2wt%の界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)の混合液を用いた(撥水処理した)こと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の嵩密度は0.51g/cm3、貫通抵抗は0.689Ω・cm、透気度は30.3ml/hr・cm2・mmAqであり、特に貫通抵抗が非常に高くなってしまった。固体高分子型燃料電池の正極および負極に多孔質電極基材を組み込んで発電性能を評価したところ、多孔質炭素電極の排水性が悪く、電池内部に水詰まりが生じてしまい、所定の電流密度まで起電力を得ることができず発電状態を維持することができなかった。表1に結果をまとめた。
Claims (7)
- 多孔質炭素電極基材の一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成された多孔質炭素電極であって、多孔質炭素電極基材内にカーボン粉と撥水剤が存在し、嵩密度が0.30〜0.65g/cm3、面直方法の透気度が50〜300ml/hr・cm2・mmAq、かつ、面圧0.5MPaを付与した際の面直方向における電気抵抗が0.45〜0.60Ω・cmである多孔質炭素電極。
- 多孔質炭素電極の多孔質炭素電極基材において、コーティング層を有する面からもう一方のコーティング層を有さない面に向かって、カーボン粉と撥水剤の付着率が低くなっている請求項1に記載の多孔質炭素電極。
- 多孔質炭素電極基材の表面が粗い側にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成された請求項1または2に記載の多孔質炭素電極。
- 以下の工程[1]〜[3]を有する多孔質炭素電極の製造方法。
工程[1]:撥水処理を施していない多孔質炭素電極基材上にカーボン粉と撥水剤からなる塗工液を塗布し、均一な塗工膜を形成させるとともに多孔質炭素電極基材多孔質炭素電極基材中にカーボン粉と撥水剤を染み込ませる工程。
工程[2]:塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材を50〜200℃の環境下において塗工膜を乾燥させる工程。
工程[3]:乾燥後の塗工膜を形成した多孔質炭素電極基材を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する工程。 - 工程[1]の前に、多孔質炭素電極基材に界面活性剤溶液を含浸させる工程[1’]を有する請求項4に記載の製造方法。
- 工程[1’]と工程[1]の間に、界面活性剤溶液を含浸させた多孔質炭素電極基材を50〜200℃で乾燥させる工程[1”]を有する請求項5に記載の製造方法。
- 工程[1’]で用いる界面活性剤がポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルであって、濃度が、0.1〜5wt%以下である請求項5または6に記載の製造方法。
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