JP5336911B2 - 多孔質電極基材、その製造方法、膜−電極接合体、および燃料電池 - Google Patents
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Description
そこで、特許文献1では、厚みが0.05〜0.5mmで嵩密度が0.3〜0.8g/cmであり、かつ、歪み速度10mm/min、支点間距離2cmおよび試験片幅1cmの条件での3点曲げ試験において曲げ強度が10MPa以上でかつ曲げの際のたわみが1.5mm以上多孔質電極基材が提案されている。
一方、特許文献2では、一方の面に触媒層が形成されたカーボンシートからなり、その一方の面から他方の面に貫通する複数の貫通孔が形成されている多孔質電極基材が記載されている。
本発明は、充分に高いガス透気度を備え、厚み方向にも貫通方向にも導電性に優れた多孔質電極基材であり、燃料電池とした時に、加湿状態が変動しても電池性能の変動が少ないという、高い水分管理機能を発揮する多孔質電極基材の製造方法を提供することを目的とする。更に、その製造方法、膜−電極接合体、および燃料電池を提供することを目的とする。
(A)炭素短繊維とバインダー短繊維とを、分散し炭素短繊維紙を作製する工程;
(B)平均粒径10nm〜2μmのポリテトラフルオロエチレン粒子とポリアクリロニトリルとを炭素短繊維紙に付与する工程;
(C)(B)で得られた炭素短繊維紙を、炭素短繊維をPANで融着させ、かつ、多孔質電極基材の厚みムラの低減を目的として、加熱温度120〜200℃にて加熱加圧する工程;
(D)ポリアクリロニトリルを炭素化すると同時に、ポリテトラフルオロエチレン粒子を熱分解する工程
上記製造方法の発明において、(C)と(D)工程の間に、酸化処理する工程を行うことが好ましい。
本発明の第二の要旨は、上記の多孔質電極基材の製造方法で製造される多孔質電極基材である。
上記の多孔質電極基材において、分散した炭素短繊維同士が、多孔質化した炭素によって接合されていることが好ましい。
本発明の第三の要旨は、上記の多孔質電極基材を用いた膜−電極接合体である。
本発明の第四の要旨は、上記の膜−電極接合体を用いた燃料電池である。
本発明で用いる炭素短繊維の原料である炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などいずれであっても良いが、PAN系炭素繊維が好ましい。特に、多孔質電極基材の機械的強度を比較的高くすることができることから、PAN系炭素繊維のみからなることが好ましい。
炭素短繊維の直径は、炭素短繊維の生産コスト、分散性の面から、3〜9μmであることが好ましい。最終的に得られる多孔質電極基材の平滑性の面から、4μm以上、8μm以下であることがさらに好ましい。
炭素短繊維の繊維長は、分散性の点から、2〜12mmが好ましい。
バインダー短繊維は、炭素短繊維紙中で各成分をつなぎとめるバインダー(糊剤)として使用され、炭素繊維紙中の炭素短繊維の配向が変化するのを防止する。バインダー短繊維としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる繊維などを用いることができる。バインダー短繊維は単体もしくは混合物を用いることができる。特にPVAバインダー短繊維は炭素短繊維紙作製工程での結着力に優れるため、炭素短繊維の脱落が少なくバインダーとして好ましい。
また、後述するポリテトラフルオロエチレン粒子とポリアクリロニトリルとを炭素短繊維紙に付与する工程で水を用いる場合には、炭素短繊維紙の強度を維持する観点において、バインダー短繊維として水溶性ではないポリエチレンテレフタレートバインダー短繊維を用いることが好ましい。
本発明における「分散」では、炭素短繊維の配向方向は実質的にランダムであっても、特定方向への配向性が高くなっていても良い。
炭素短繊維とバインダー短繊維とを分散して、炭素短繊維紙を作製する方法としては、液体に炭素短繊維とバインダー短繊維を分散後抄造する湿式法や空気中に炭素短繊維とバインダー短繊維を分散して降り積もらせる乾式法が適用できる。中でも湿式法が好ましい。炭素短繊維が単繊維に分繊して分散するのを助け、分散した単繊維が再び収束するのを防止することができる。
また、炭素短繊維紙の作製は連続で行う方法とバッチ式で行う方法とがあるが、本発明では、目付のコントロールが容易であり、作製される炭素短繊維紙の機械的強度が高いという観点から炭素短繊維紙の作製を連続で行う方法が好ましい。本発明では、炭素短繊維紙の目付けは、10〜200g/m2とすることが好ましい。
本発明では、溶剤に溶解して炭素繊維紙に付与する際に、適度な粘着性・流動性を示し、炭素化後、導電性物質として残存するPANを用いる。
本発明では、平均粒径が10nm〜2μmのPTFE粒子を用いる。この粒子は、炭素化時に工程で熱分解して、導電性物質としてほとんど残存しない。PTFEは、PANの溶剤溶液中で不溶であるため、粒子形状を維持できる。
粒子の形状は、真球状、楕円状、ブロック状等どのような形態であっても良いが、炭素化時に消失することによって形成される空孔が連続的となる点において真球状が好ましい。粒子の平均粒子径は、2μm以下であることが炭素短繊維紙中に適度に空隙を付与させる点で必要である。また、粒子の消失によって形成する空孔によって高い水分管理機能を発揮できるように10nm以上であることが必要である。さらに好ましくは、30nm以上、1μm以下である。特に好ましくは、50nm以上、600nm以下である。粒子径の分布の分散性は高くても低くても良いが、空隙サイズをより精密に制御できるという点から単分散性が高いほうが好ましい。
また、PTFE粒子は、単体のものを用いても混合物を用いても良い。
本発明では、コーターを用いて炭素短繊維紙表面にPANの溶剤溶液を均一にコートする方法、更に、絞り装置を用いるdip−nip方法、なかでも炭素短繊維紙とPANフィルムとを重ねて、PANを炭素短繊維紙に転写する方法が、連続的に行うことができ、生産性よく長尺ものも製造できるという点で好ましい。
多孔質電極基材が高い水分管理機能を発現するためには炭素化後のPANが、炭素短繊維100質量部に対し20〜50質量部であることが好ましいため、炭素短繊維紙に付与するPANの量は、炭素短繊維100質量部に対し、70〜120質量部付与することが好ましい。
PANが炭化した多孔質炭素の強度を維持し、形成される空隙が独立孔にならず、連続的孔が形成されるためには、PTFE粒子の量は、PAN100質量部に対し、100〜500質量部付与することが好ましく、形成される空隙をより有効に形成させるためには、PTFE粒子を250〜400質量部付与することがより好ましい。
(B)工程を終えた炭素短繊維紙は、炭素化処理の前に炭素短繊維をPANで融着させ、かつ、多孔質電極基材の厚みムラの低減を目的として加熱加圧される。加熱加圧は、前駆体シートを均等に加熱加圧できる技術であれば、いかなる技術も適用できる。その例としては、上下両面から平滑な剛板にて熱プレスする方法や連続ベルトプレス装置を用いて行う方法がある。
連続製造による前駆体シートを加熱加圧する場合は、連続ベルトプレス装置を用いて行う方法が、長尺の多孔質電極基材ができるという点で好ましい。多孔質電極基材が長尺であれば、多孔質電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後のMEA製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。また、本発明の多孔質電極基材は、連続的に巻き取ることも可能で、多孔質電極基材や燃料電池の生産性、コストの観点から好ましい。連続ベルト装置におけるプレス方法としては、ロールプレスによりベルトに線圧で圧力を加える方法と液圧ヘッドプレスにより面圧でプレスする方法があるが、後者の方がより平滑な多孔質電極基材が得られるという点で好ましい。
効果的に表面を平滑にするために、加熱温度は200℃以下が好ましく、120〜190℃がより好ましい。
圧力は特に限定されないが、PANの比率が多い場合は、圧力が低くても前駆体シートの表面を平滑にすることが容易である。このとき必要以上にプレス圧を高くすることは、加圧時に炭素短繊維を破壊する、多孔質電極基材としたときその組織が緻密になりすぎるなどの問題が生じる場合がある。例えば、20kPa〜10MPaの圧力で加圧することができる。
加熱加圧の時間は、例えば30秒〜10分とすることができる。
剛板に挟んで、又連続ベルト装置で前駆体シートの加熱加圧を行う時は、剛板やベルトに炭素化後の樹脂などが付着しないようにあらかじめ剥離剤を塗っておくか、前駆体シートと剛板やベルトとの間に離型紙を挟んで行うことが好ましい。
前駆体シートを加熱加圧後に炭素化する、さらにその加熱加圧後の前駆体シートを酸化処理した後に炭素化することが可能である。前駆体シートの炭素化は、炭素短繊維をPANで融着させ、かつPANを炭素化することより、多孔質電極基材の機械的強度と導電性を発現させることを目的に行う。
炭素化は、多孔質電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で行うことが好ましい。炭素化は、1000℃以上の温度で行う。1000〜3000℃の温度範囲で炭素化することが好ましく1000〜2200℃の温度範囲がより好ましい。1000℃未満の温度で炭素化して得られた多孔質電極基材は、導電性が十分ではない。炭素化の前に300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行っても良い。
炭素化の時間は、例えば10分〜1時間とすることができる。
連続製造による前駆体シートを炭素化する場合は、前駆体シートの全長にわたって連続で炭素化を行うことが、低コスト化という観点で好ましい。多孔質電極基材が長尺であれば、多孔質電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後のMEA製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減に大きく寄与することができる。また、本発明の多孔質電極基材は、連続的に巻き取ることも可能で、多孔質電極基材や燃料電池の生産性、コストの観点から好ましい。
PANが含浸された前駆体シートは、加熱加圧した後、200℃以上300℃未満の温度で酸化処理することが、炭素短繊維をPANでより融着させ、かつ、PANの炭素化率を向上させるという点で好ましい。
酸化処理は、200〜300℃の温度範囲で行うことが好ましく、240〜270℃で行うことがより好ましい。酸化処理は、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
酸化処理の時間は、例えば1分〜2時間とすることができる。
連続製造による前駆体シートを酸化処理する場合は、前駆体シートの全長にわたって連続に行うことが低コスト化という観点で好ましい。多孔質電極基材が長尺であれば、多孔質電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後のMEA製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減に大きく寄与することができる。また本発明の多孔質電極基材は、連続的に巻き取ることも可能で、多孔質電極基材や燃料電池の生産性、コストの観点から好ましい。
本発明の多孔質電極基材の厚みは、50〜300μmであることが好ましい。
以上のような本発明の多孔質電極基材は、膜−電極接合体に好適に用いることができる。そして、本発明の多孔質電極基材を用いた膜−電極接合体は、燃料電池に好適に用いることができる。
炭素短繊維100質量部を水中に均一に分散して単繊維に解繊し、十分に分散したところに、PVA短繊維40質量部、PET短繊維30質量部を均一に分散し、標準角型シートマシン(商品名:No.2555 標準角型シートマシン、熊谷理機工業(株)製)を用いてJIS P−8209法に準拠して手動により炭素短繊維紙の作製を行い、乾燥させて、目付けが34g/m2の炭素短繊維紙を得た。炭素短繊維の分散状態は良好であった。
得られた炭素短繊維紙に平均粒子径180nmの単分散性の高いPTFE粒子を20質量%含む水分散液を含浸し、室温にて8時間乾燥させることによって、目付けが94g/m2のPTFE粒子を包含した前駆体シートを得た。続いて、PTFE粒子を包含した前駆体シートに、PANを10質量%含むPANのジメチルアセトアミド溶液を含浸させ、室温で8時間乾燥させることによって、目付けが111g/m2のPANとPTFE粒子を包含した前駆体シートを得た。これは、炭素短繊維100質量部に対し、ポリアクリロニトリルを86質量部付着させたことになる。また、PAN100質量部に対し、PTFE粒子を338質量部混合させたことになる。
加熱加圧した前駆体シートをバッチ炭素化炉にて、窒素ガス雰囲気中、2000℃の条件下で1時間炭素化することで多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材は、ガス透気度、厚み、貫通方向抵抗がそれぞれ良好な結果であった。結果を表1に示す。
(1)ガス透気度
JIS P−8117に準拠し、ガーレーデンソメーターを使用して200mLの空気が透過するのにかかった時間を測定し、ガス透気度を算出した。
(2)厚み
多孔質電極基材の厚みは、厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ(商品名:7321、(株)ミツトヨ製)を使用して測定した。測定子の大きさは直径10mmで、測定圧力は1.5kPaとした。
(3)貫通方向抵抗
多孔質電極基材の厚さ方向の電気抵抗(貫通方向抵抗)は、試料を金メッキした銅板に多孔質電極基材を挟み、金メッキした銅板の上下から1MPaで加圧し、10mA/cm2の電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求めた。
貫通抵抗(mΩ・cm2)=測定抵抗値(mΩ)×試料面積(cm2)
(4)平均粒子径
粒子の平均粒子径の算出は、電子顕微鏡等を用いて複数個の粒子の粒子径を計測する方法、粒子の溶液を用いて、光散乱法によって算出する方法等が挙げられるが、真球度が高い粒子の粒子径を算出する場合は、走査型電子顕微鏡を用いて、50個以上の粒子の直径を計測することによって算出した。
<比較例1>
実施例1で得られた多孔質電極基材をカソード用、アノード用に2組用意した。両面に触媒担持カーボン(触媒:Pt、触媒担持量:50質量%)からなる触媒層(触媒層面積:25cm2、Pt付着量:0.3mg/cm2)を形成したパーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜(膜厚:30μm)を、カソード用、アノード用の多孔質電極基材で挟持し、これらを接合してMEAを得た。
前記(1)で作製したMEAを、蛇腹状のガス流路を有する2枚のカーボンセパレーターによって挟み、固体高分子型燃料電池(単セル)を形成した。この単セルの電流密度−電圧特性を測定することによって、燃料電池特性評価を行った。燃料ガスとしては水素ガスを用い、酸化ガスとしては空気を用いた。セル温度を80℃、燃料ガス利用率を60%、酸化ガス利用率を40%とした。また、ガス加湿はバブラーにそれぞれ燃料ガスと酸化ガスを通すことによって行った。
加湿器温度80℃、電流密度が0.8A/cm2のときの燃料電池セルのセル電圧が0.651Vであった。また、加湿器温度60℃、電流密度が0.8A/cm2のときの燃料電池セルのセル電圧が0.602Vと良好な特性を示し、加湿状態が変動しても電池性能の変動が少ないという、高い水分管理機能を有していることが確認できた。
<比較例2>
Claims (6)
- 以下の工程を順に行う多孔質電極基材の製造方法。
(A)炭素短繊維とバインダー短繊維とを分散し、炭素短繊維紙を作製する工程;
(B)平均粒径10nm〜2μmのポリテトラフルオロエチレン粒子と、ポリアクリロニトリルとを炭素短繊維紙に付与する工程;
(C)(B)で得られた炭素短繊維紙を、炭素短繊維をPANで融着させ、かつ、多孔質電極基材の厚みムラの低減を目的として、加熱温度120〜200℃にて加熱加圧する工程;
(D)ポリアクリロニトリルを炭素化すると同時に、ポリテトラフルオロエチレン粒子を熱分解する工程 - (C)工程と(D)工程の間に、酸化処理する工程を行う請求項1に記載の多孔質電極基材の製造方法。
- 請求項1または2のいずれか一項に記載の多孔質電極基材の製造方法で製造される多孔質電極基材。
- 分散した炭素短繊維同士が、多孔質化した炭素によって接合されている請求項3に記載の多孔質電極基材。
- 請求項3または4に記載の多孔質電極基材を用いた膜−電極接合体。
- 請求項5に記載の膜−電極接合体を用いた燃料電池。
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