JP2014239028A - 多孔質炭素電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面の平滑性が高い固体高分子型燃料電池用の多孔質炭素電極の提供。【解決手段】多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が2層形成された多孔質炭素電極であって、多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差が1〜48μmである多孔質炭素電極。好ましくは、コーティング層1の厚みが2〜50μm、コーティング層2の厚みが2〜50μmである上記の多孔質電極基材。【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池に用いられる多孔質炭素電極に関する。
固体高分子型燃料電池は、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化ガスを電気化学的に反応させることにより起電力を得る装置であり、前記固体高分子型燃料電池には、水素イオン(プロトン)を選択的に伝導する高分子電解質膜を有する。また、高分子電解質膜の両面には、内側から貴金属系触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層及びガス拡散電極基材とを有する2組のガス拡散電極が接合されている。
このような高分子電解質膜と2組のガス拡散電極からなる接合体は膜−電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)と呼ばれている。また、MEAの両外側には、燃料ガスまたは酸化ガスを供給し、かつ生成ガスおよび過剰ガスを排出することを目的とするガス流路を形成したセパレーターが設置されている。
ガス拡散電極基材は、主に次の3つの機能が要求される。第一の機能は、その外側に配置されたセパレーターに形成されたガス流路から触媒層中の貴金属系触媒に均一に燃料ガスまたは酸化ガスを供給する機能である。第2の機能は、触媒層での反応により生成した水を排出する機能である。第3の機能は、触媒層での反応に必要な電子または触媒層での反応により生成される電子をセパレーターへ導電する機能である。これらの機能を充足する基材としては、通常、炭素質材料からなる多孔質構造を有する基材が使用される。具体的には、カーボンペーパー、炭素繊維クロス、炭素繊維フェルト等の炭素繊維を用いた基材が一般的に用いられる。これらの基材は炭素繊維によって高い導電性を示すだけでなく、多孔質材料であるため、燃料ガスおよび生成水などの液体の透過性が高いためガス拡散層に好適な材料である。
以上に挙げたカーボンペーパーやカーボンクロスなどの多孔質炭素電極基材と電極触媒層との接触抵抗を下げ、発電時に発生する生成水を効率よく排出することを目的として、カーボン微粒子や撥水剤からなるコーティング層を多孔質炭素電極基材と電極触媒層との間に設けることがある。また、排水性の観点からガス拡散電極基材自体の撥水性を高める処理がなされることが一般的であり、その方法としてはガス拡散電極基材にフッ素系化合物の溶液を含浸後・乾燥させた後焼結させる方法がある。多孔質炭素電極基材に設けられるコーティング層の平滑性を高くするために、スプレー法によってコーティング層を形成する方法(特許文献1参照)、気相成長炭素繊維をコーティング層の一部に導入する方法(特許文献2参照)等が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載されているスプレーによって多孔質炭素電極基材にコーティング層を形成する方法では、スプレーの孔が経時変化により目詰まりを起こすため、形成されるコーティング層の目付ムラが大きくなってしまう問題が生じていた。また、特許文献2に記載されている気相成長炭素繊維を用いる方法では、コーティング層内の多孔度が増すため、多孔質炭素電極の透気度は高くすることが可能であるが、気相成長炭素繊維が非常に高価であることと、非常に凝集性が高く取扱い性に難があるため、大量生産時に使用することは実質困難であるという問題があった。
特許第4051080号 特許第4421264号
本発明は、簡便な製造方法でありながらも、コーティング層の平滑性が高い固体高分子型燃料電池用の多孔質炭素電極を提供することを目的とする。
具体的には、前記課題は以下の発明(1)〜(7)によって解決される。
(1) 多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が2層形成された多孔質炭素電極であって、多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差が1〜48μmである多孔質炭素電極。
(2) 多孔質炭素電極基材の一方の面上のみに、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成された上記(1)に記載の多孔質炭素電極。
(3) コーティング層1の厚みが2〜50μm、コーティング層2の厚みが2〜50μmである上記(1)または(2)に記載の多孔質電極基材。
(4) コーティング層1の厚みが、コーティング層2の厚みよりも小である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質電極基材。
(5) コーティング層1の厚みが、コーティング層2の厚みよりも大である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質電極基材。
(6) 多孔質炭素電極基材の一方の面上に、形成された2層のコーティング層の合計厚みが、5〜99μmである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質炭素電極。
(7) 嵩密度が0.20〜0.75g/cm、面直方法の透気度が50〜300ml/hr・cm・mmAq、かつ、コーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さが0.1〜2μm、かつ、最大表面粗さが5〜20μmである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔質炭素電極。
簡便な製造方法でありながらも、コーティング層の表面平滑性が高い固体高分子型燃料電池用の多孔質炭素電極を提供できる。
多孔質炭素電極の概念図である。
以下、本発明について詳細に示す。
1.多孔質炭素電極の製造方法
本発明の多孔質炭素電極は、以下の工程[1]〜[4]を含む製造方法によって製造することができる。
工程[1]:炭素短繊維が炭素により結着された多孔質炭素電極基材に撥水剤と界面活性剤を含有する溶液を含浸させる工程。
工程[2]:撥水剤と界面活性剤を含有する溶液を含浸した多孔質炭素電極基材上にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング液を塗布し、均一なコーティング層1を形成させる工程。
工程[3]:コーティング層1を形成した多孔質炭素電極基材に工程[2]と同様にコーティング層2を形成させ、50〜200℃の環境下においてコーティング層を乾燥させる工程。
工程[4]:乾燥後のコーティング層を形成した多孔質炭素電極基材を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する工程。
<多孔質炭素電極基材の処理>
多孔質炭素電極基材に撥水性を付与すべく行う撥水処理には、フッ素樹脂などの撥水剤の粒子を溶媒中に分散させた分散液を用いる。溶媒として水を用いる場合、撥水剤は、そのままでは水には分散しないため、適当な界面活性剤によって水中に分散させる。また、分散液としてはあらかじめ撥水剤が分散されたディスパージョン等を用いることもできる。撥水処理手順としては、撥水剤と界面活性剤の分散液を使用して、既存のスプレー法や浸漬法などによって多孔質炭素電極基材に含浸処理を行い、次いで任意の熱処理によって乾燥・焼結処理を行うことが通例であるが、撥水処理工程における熱処理工程を省略することも出来る。
<工程[1]:炭素短繊維が炭素により結着された多孔質炭素電極基材に撥水剤と界面活性剤を含有する溶液を含浸させる工程>
撥水剤は、たとえば、フッ素樹脂などが挙げられる。フッ素樹脂としては例えばテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などがあげられ、とりわけポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。PTFEを界面活性剤によって水中に分散させても良いし、あらかじめ分散されたディスパージョンを用いることも出来る。撥水剤の濃度としては、多孔質炭素電極基材の撥水性を担保するため、重量濃度で1〜30wt%であることが好ましく、より好ましくは2〜20wt%である。
撥水剤を水に分散させ、多孔質炭素電極基材の濡れ性を制御するために使用する界面活性剤は公知のものを利用できる。例えばポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(例えばACROS ORGANICS社製のTriton X−100)、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテルなど非イオン性界面活性剤が挙げられる。取扱い性および分解温度から、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを用いることが好ましい。また濃度としては、ぬれ性の制御および分解時間を鑑みて0.1〜10wt%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0wt%である。
含浸方法としては、たとえば、ディップ・ニップ法、キスコート法、スプレー法、カーテンコート法など公知の技術を利用することが出来る。
含浸後の多孔質炭素電極基材における水分率は、後工程におけるコーティング液のコーティング性および取扱い性を鑑みると、未処理の多孔質炭素電極基材の重量に対して、100〜500%であることが好ましく、より好ましくは200〜400%である。かかる水分率は、含浸処理前後の多孔質炭素電極基材の重量測定により算出される。
<工程[2]:撥水剤と界面活性剤を含有する溶液を含浸した多孔質炭素電極基材上にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング液を塗布し、均一なコーティング層1を形成させる工程>
カーボン粉および撥水剤からなるコーティング液の溶媒は、水系もしくは有機溶媒と水との混合溶媒または有機溶媒からなる。カーボン粉および撥水剤の割合は、カーボン粉100質量部に対し、撥水剤が5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部含まれることが好ましい。
コーティング液は、カーボン粉の分散液および撥水剤の分散液をそれぞれ調製し、混合することで得られる。カーボン分散液を得るためには、カーボン粉に水を混合するが、このとき、カーボン粉の濡れ性をよくして分散性を向上させるために有機溶媒や界面活性剤を添加するのが好ましい。かかる有機溶媒としては、低級のアルコール類及びアセトンなどが好ましい。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(例えばACROS ORGANICS社製のTriton X−100)、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどがあげられる。界面活性剤の添加量としては、カーボン粉の分散性を上げるためにとコーティング液全体に対し0.1wt%以上であれば良く、また添加量が多すぎるとコーティング液が発泡してしまうため、5wt%以下であることが好ましい。
使用するカーボン粉としては、たとえば、黒鉛粉やカーボンブラックなどを用いることができる。例えばカーボンブラックとしてはアセチレンブラック(例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック)、ケッチェンブラック(例えばライオン(株)製のKetjen Black EC)、ファーネスブラック(例えばCABOT社製のバルカンXC72)などを用いることができる。より高い導電性を発現するといった観点から、カーボンブラックを使用することが好ましい。
用いるカーボンブラックの一次粒径としては、本発明の効果を損なわない範囲であればよいが、20〜80nmであるのが好ましい。撥水剤は、たとえば、フッ素樹脂である。フッ素樹脂としては例えばテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などがあげられ、とりわけポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。PTFEを界面活性剤によって水中に分散させても良いし、あらかじめ分散されたディスパージョンを用いることも出来る。
<<コーティング層の形成>>
多孔質炭素電極基材上にコーティング層を形成するためのコーティング液を塗布方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えばバーコート法、ブレード法、スクリーン印刷法、スプレー法、カーテンコーティング法およびロールコート法などがあげられる。これらの方法により、多孔質炭素電極基材上に均一なコーティング層を形成することができる。
<工程[3]:コーティング層1を形成した多孔質炭素電極基材に工程[2]と同様にコーティング層2を形成させ、50〜200℃の環境下においてコーティング層を乾燥させる工程>
本発明においては、コーティング層1を形成した多孔質炭素電極基材に、コーティング層2をコーティング層1の上に形成させる。コーティング層1の乾燥後の厚みは2〜50μm、コーティング層2の乾燥後の厚みは2〜50μmであることが好ましく、形成された2層のコーティング層の乾燥後の合計厚みが、5〜99μmの範囲にあることが好ましい。また、コーティング層1の厚みとコーティング層2の厚みは異なっていることが好ましい。各コーティング層の厚みの大小関係は、いずれが大、いずれが小であってもよい。コーティング層1とコーティング層2の乾燥後の厚みの差は1〜48μmであることが好ましく、より好ましくは2μm以上、48μm以下、更に好ましくは10μm以上、40μm以下である。厚みの差が適度な範囲内であれば、後の焼結工程においてコーティング層間で収縮応力が緩和されるため、コーティング層表面の収縮が生じにくくなり、結果として表面平滑性の高いコーティング層が得られる。コーティング層1上にコーティング層2を形成させる方法としては、コーティング層1を塗布した直後にコーティング層2を塗布し形成る方法、コーティング層1を塗布した後、一旦乾燥を経て、コーティング層2を塗布形成する方法があり、いずれの方法も用いることができる。
上述した乾燥後のコーティング層の厚み、乾燥後の2層の合計厚み、並びに乾燥後の2層の厚みの差を出すためには、工程[2]および[3]において、本発明で使用するコーティング層の組成であれば、具体的には乾燥させる前の状態で以下の厚みとなるようにコーティング層を形成すればよい。コーティング層1の厚みは10〜250μm、コーティング層2の厚みは10〜250μmであることが好ましく、形成された2層のコーティング層の合計厚みが、20〜500μmの範囲にあることが好ましい。各コーティング層の厚みの大小関係は、いずれが大、いずれが小であってもよい。コーティング層1とコーティング層2の厚みの差は5〜240μmであることが好ましく、より好ましくは10μm以上、240μm以下、更に好ましくは50μm以上、200μm以下である。厚みの差が適度な範囲内であれば、厚みの小さい方のコーティング層が形成されてから、完全に乾燥するまでの間、コーティング層中の液の流動性が向上するため、乾燥後に形成されるコーティング層の平滑性が高くなる。
コーティング層を乾燥させる方法として、本発明においては、50〜200℃の環境下におくことにより、コーティング層を乾燥させる。例えば熱風乾燥機やIRヒーターなどを用いて50〜200℃の環境を作ることができる。
乾燥させる際の雰囲気温度としては、乾燥速度およびコーティング層の凝集によるクラック発生を防ぐため、50〜200℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは70〜150℃である。時間としては、生産性を考慮すると5分〜20分であることが好ましく、より好ましくは7〜15分である。
<工程[4]:乾燥後のコーティング層を形成した多孔質炭素電極基材を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する工程>
本発明においては、乾燥後の「コーティング層を形成した多孔質炭素電極基材」を300〜400℃の環境下において焼成させることで多孔質炭素電極を製造する。
この焼成工程においては、第一に多孔質炭素電極基材およびコーティング層中に含まれる界面活性剤を消失させ、加えて撥水剤を融点付近まで加熱することによって、撥水剤粒子を溶融させてその形状をコントロールすることでコーティング層の細孔構造制御とカーボン粉のバインディングを強固にする。したがって、温度としては、300〜400℃の範囲が好ましく、より好ましくは340〜400℃である。また焼成時間としては5〜90分が好ましく、より好ましくは10〜60分である。
<<多孔質炭素電極基材>>
本発明の製造方法により、多孔質炭素電極基材から電気抵抗が低く、排水性の良い固体高分子型燃料電池用の多孔質炭素電極を製造することができる。多孔質炭素電極基材であれば、どのようなものであっても本発明の技術を使用することにより、従来の製造技術を使用するよりも上記の効果を発現することができる。
上述した通り、本発明における多孔質炭素電極基材はどのようなものであっても使用することができる。
多孔質炭素電極基材としては、導電性フィラーである炭素粉や炭素繊維や金属繊維そして樹脂などを原料とした導電性ペーパーやクロス、不織布などのあらゆる導電性多孔質材料を用いることができる。具体的には、市販のカーボンペーパーなどを用いることが出来るが、炭素短繊維が炭素により結着された多孔質炭素電極基材を用いることもできる。炭素短繊維を結着する炭素としては、炭素繊維前駆体短繊維や樹脂等があり、これらを高温で処理することで炭素化する方法がある。炭素短繊維と炭素源となる短繊維および樹脂などから炭素繊維シートを作成し、成形・炭素化工程を経て炭素短繊維が炭素により結着された多孔質炭素電極基材を製造することが出来る。これらの工程は品質および生産性の観点から連続的に製造されることが望ましい。また、上記の多孔質炭素電極基材に限らず、炭素化工程を有さない、エネルギーコストの小さい多孔質炭素電極基材も使用することができる。これらの例としては、炭素短繊維を導電性物質粒子を充てんさせたバインダーで決着させた炭素繊維ウェブやカーボンなどの微細な導電性物質を樹脂などのバインダーで決着させた多孔質炭素電極基材などがある。
<多孔質炭素電極基材の製造方法>
シート状物を製造するにあたっては、液体の媒体中に、炭素短繊維(A)を分散させて抄造する湿式法、空気中に、炭素短繊維(A)を分散させて降り積もらせる乾式法などの抄紙方法を適用できる。好ましくは湿式法である。
炭素繊維(A)と共に、炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b’)を分散させることにより、炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b’)とが絡み合うことでシート状物の強度が向上し、実質的にバインダーフリーとすることもできる。
なお、本発明においては、有機高分子化合物をバインダーとして少量用いてもよい。バインダーとして使用する有機高分子化合物は特に限定されないが、例えばポリビニルアルコール(PVA)や、熱融着するポリエステル系あるいはポリオレフィン系のバインダー等が挙げられる。バインダーは繊維や粒子のような固体状でも液体状でもよい。バインダーの含有量としては100g/m以下が好ましく、より好ましくは50g/m以下、特に好ましくは30g/m以下である。バインダーの添加方法は特に限定されない。
以下、炭素短繊維を用いた場合の多孔質炭素電極基材の製造方法の一例について詳細に述べる。多孔質炭素電極基材は以下の手順(1)〜(4)を経て製造される。
手順(1):炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)を分散させた抄紙体を製造する工程
<炭素短繊維(A)>
炭素短繊維(A)としては、その原料によらず用いることができるが、ポリアクリロニトリル(以後PANと略す。)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維から選ばれる1つ以上の炭素繊維を含むことが好ましく、PAN系炭素繊維あるいはピッチ系炭素繊維を含むことがより好ましい。炭素短繊維(A)の平均直径は、ガス拡散層としての表面平滑性と導電性の観点から、3〜30μm程度が好ましく、4〜20μmがより好ましく、4〜8μmがさらに好ましい。炭素短繊維(A)の長さは、抄紙時の分散性とガス拡散層としての機械的強度の観点から、2〜12mmが好ましく、3〜9mmがさらに好ましい。
<炭素繊維前駆体短繊維(b)>
炭素繊維前駆体短繊維(b)は、長繊維状の炭素繊維前駆体繊維を適当な長さにカットしたものである。炭素繊維前駆体短繊維(b)の繊維長は、分散性の点から、2〜20mm程度が好ましい。炭素繊維前駆体短繊維(b)の断面形状は特に限定されないが、炭素化した後の機械的強度、製造コストの面から、真円度の高いものが好ましい。また、炭素繊維前駆体短繊維(b)の直径は、炭素化時の収縮による破断を抑制するため、5μm以下であることが好ましい。
このような炭素繊維前駆体短繊維(b)として用いられるポリマーとして、炭素化処理する工程における残存質量が20質量%以上であることが好ましい。このようなポリマーとしては、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーを挙げることができる。
紡糸性および低温から高温にかけて炭素短繊維(A)同士を接合させることができ、炭素化時の残存質量が大きい点、さらに、後述する交絡処理を行う際の繊維弾性、繊維強度を考慮すると、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。従って、炭素繊維前駆体繊維(b)としては、アクリル繊維、(アクリロニトリル単位を50質量%以上含有する)アクリル系繊維が好ましい。
炭素繊維前駆体短繊維(b)は、1種類を用いてもよく、繊維直径やポリマー種が異なる2種類以上の炭素繊維前駆体短繊維(b)を用いてもよい。
<フィブリル状繊維(b´)>
フィブリル状繊維(b´)は、天然繊維、合成繊維の区別なく、いかなる繊維を用いることも出来る。たとえば、アクリル等を主成分とするフィブリル状炭素前駆体(b´−1)から天然繊維である木材パルプまで含む。中でも含有する金属分が少ないことが好ましいため、フィブリル状繊維(b´)は、合成繊維であることが好ましい。より好ましくはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)などを用いることができる。これらをそれぞれ単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、炭素化収率を向上させるには、以下に示すフィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)を用いることが好ましい。
フィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)とは、適当な長さにカットした長繊維状の易割繊性海島複合繊維であり、リファイナーやパルパーなどによって叩解しフィブリル化するものである。フィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)は、共通の溶剤に溶解し、かつ非相溶性である2種類以上の異種ポリマーを用いて製造され、少なくとも1種類のポリマーが、炭素化処理する工程における残存質量が20質量%以上であることが好ましい。
易割繊性海島複合繊維に用いられるポリマーのうち、炭素化処理する工程における残存質量が20質量%以上であるものとしては、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、フェノール系ポリマーが挙げられる。中でも、紡糸性および炭素化処理工程における残存質量の観点から、アクリロニトリル単位を50質量%以上含有するアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。
フィブリル状繊維(b´)の断面形状は、特に限定されない。分散性、炭素化時の収縮による破断を抑制するため、フィブリル状繊維(b´)の繊度は、1〜10dtexであることが好ましい。フィブリル状繊維(b´)の平均繊維長は、分散性の観点から、1〜20mmが好ましい。
<抄紙体の製造>
抄紙体の製造にあたっては、以下の方法をとることもできる。好適な長さに切断した炭素短繊維(A)を水中に均一に分散させ、分散している炭素短繊維を網上に抄造し、抄造した炭素短繊維シートをポリビニルアルコールの水系分散液に浸漬し、浸漬したシートを引き上げて乾燥させる。前記ポリビニルアルコールは、炭素短繊維同士を結着するバインダーの役目を果たし、炭素短繊維が分散した状態において、それらがバインダーにより結着された状態の炭素短繊維のシートが製造される。バインダーとしては、他に、スチレン−ブタジエンゴム、エポキシ樹脂などを用いることが出来る。
炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)を分散させた抄紙体の製造方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維(A)と、炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)とを分散させて抄造する湿式法、空気中に炭素短繊維(A)と、炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)とを分散させて降り積もらせる乾式法、などの抄紙方法を適用できる。しかし、抄紙体の均一性が高いという観点から、湿式法を用いることが好ましい。
炭素短繊維(A)と、炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)の混合比としては、炭素短繊維(A)100重量部に対し、炭素繊維前駆体繊維(b)およびフィブリル状繊維(b´)の総量が、20〜100重量部となるように混合することが好ましい。炭素繊維前駆体繊維(b)およびフィブリル状繊維(b´)の総量が少ないと、抄紙体の強度が低くなり、炭素繊維前駆体繊維(b)およびフィブリル状繊維(b´)の総量が多いと、結果的に得られる多孔質炭素電極基材の電気伝導性が低くなってしまう。また、炭素繊維前駆体繊維(b)とフィブリル状繊維(b´)との割合は、炭素繊維前駆体繊維(b)100重量部に対し、フィブリル状繊維(b´)が25〜100重量部の割合で含まれることが好ましい。
炭素短繊維(A)が単繊維に開繊するのを助け、開繊した単繊維が再収束することを防止するためにも、炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)を使用する。また、必要に応じてバインダーを使用して、湿式抄紙することもできる。
バインダーとは、炭素短繊維(A)と、炭素前駆体繊維(b)とを含む前駆体シート中で、各成分をつなぎとめる糊剤としての役割を有する。バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニルなどを用いることができる。特に、抄紙工程での結着力に優れ、炭素短繊維(A)の脱落が少ないことから、ポリビニルアルコールが好ましい。本発明では、バインダーを繊維形状にして用いることも可能である。
本発明では、バインダーを用いずに抄紙化しても、炭素短繊維(A)と、炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)との適度な絡みを得ることができる。
炭素短繊維(A)および炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)を分散させる液体の媒体としては、例えば、水、アルコールなどの炭素前駆体繊維(b)が溶解しない媒体が挙げられる。この中でも、生産性の観点から、水を用いることが好ましい。
繊維質を分散させたスラリー中の繊維質濃度が1〜50g/L程度となる割合で水などの媒体を用いることが好ましい。スラリー中の繊維質濃度が低いと、抄紙速度を遅くせざるを得ず、生産性が悪くなり、繊維質濃度が高くなりすぎるとスラリー中の繊維質の分散性が低下するため、繊維質の塊が発生しやすく、目付ムラの大きな抄紙体が得られる。
炭素短繊維(A)および炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)を混合する方法としては、水中で攪拌分散させる方法、これらを直接混ぜ込む方法が挙げられるが、均一に分散させる観点から、水中で拡散分散させる方法が好ましい。炭素短繊維(A)と、炭素繊維前駆体繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)とを混合し、抄紙して抄紙体を製造することにより、抄紙体の強度を向上させることができる。また、その製造途中で、前駆体シートから炭素短繊維(A)が剥離し、炭素短繊維(A)の配向が変化することを防止することができる。
手順(2):抄紙体に交絡処理を施す工程
交絡処理は必ずしも必要ではないが、シート状物を交絡処理することで、炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)が3次元に交絡した交絡構造を有するシート(交絡構造シート)を形成することができる。
交絡処理は、交絡構造が形成される方法から必要に応じて選択することができ、特に限定されない。ニードルパンチング法などの機械交絡法、ウォータージェットパンチング法などの高圧液体噴射法、スチームジェットパンチング法などの高圧気体噴射法、あるいはこれらの組み合わせによる方法で行うことができる。交絡処理工程での炭素短繊維(A)の破断と、炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)の破断を、容易に抑制することができ、かつ適切な交絡性が容易に得られるという点で、高圧液体噴射法が好ましい。
交絡処理工程により抄紙体の引張強度が向上するため、通常抄紙で使用されるポリビニルアルコール等のバインダーを使用せずに済み、かつ水中あるいは湿潤状態でもシートの引張強度を維持できる。
手順(3):抄紙体に樹脂を含浸させ、乾燥・成形を行う工程
<樹脂>
抄紙体に含浸させる樹脂としては、炭素化した段階でガス拡散層の炭素繊維を結着することのできる公知の樹脂から適宜選んで用いることができる。炭素化工程を有する多孔質炭素電極基材を製造する場合は、炭素化後に導電性物質として残存しやすいという観点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ピッチ等が好ましく、加熱による炭素化の際に炭化率の高いフェノール樹脂が特に好ましい。炭素化工程を有さない多孔質炭素電極基材を製造する際には、熱可塑性・熱硬化性樹脂を問わず、使用することができる。多孔質炭素電極基材の撥水性を高める観点から、フッ素樹脂が好ましい。また、炭素化工程の有無に関わらず、多孔質炭素電極基材の導電性をさらに向上させることを目的として、これらの樹脂に炭素粉を混合することも有効である。炭素粉としては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、葉片状黒鉛、塊状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛粒子、更には、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。特に限定はされないが、上記炭素粉のうちでも、黒鉛粒子、カーボンブラックがより好ましい。これらを単数あるいは複数用いてもよい。
<含浸方法>
熱硬化性樹脂を含浸させる方法としては、公知の方法を用いることが出来る。たとえば、ディップ法やキスコート法、スプレー法、カーテンコート法などを用いることが出来る。とりわけ製造コストの観点から、スプレー法やカーテンコート法を用いることが好ましい。
<乾燥・成形工程>
乾燥方法としては、公知の技術を用いることが出来る。加熱されたロールに接触させて乾燥させるドラム乾燥や熱風による乾燥方法などを用いることが出来る。メンテナンスの簡便さから、非接触方式による乾燥が好ましい。乾燥温度としては、樹脂が硬化しない温度範囲60〜110℃、より好ましくは70〜100℃が好ましい。
樹脂含浸・乾燥後の抄紙体を成形する工程が重要である。炭素化工程を有する多孔質炭素電極基材を製造する場合は、これにより前駆体シート中の炭素短繊維(A)を炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)で融着させ、かつ熱硬化性樹脂を硬化させることで、炭素化後の多孔質炭素電極基材の強固な導電パスが形成される。炭素化工程を有さない多孔質炭素電極基材を製造する場合は、成形工程によって製品寸法が決まってしまうため、フィブリル状炭素前駆体繊維(b´−1)と樹脂の溶融状態をコントロールしなければならない。成形の後200−400℃の雰囲気中で熱処理を行うことで、炭素化工程の製造プロセスは終了となる。
成形方法は、抄紙体を均等に加熱加圧成形できる技術であれば、いかなる技術も適用できる。例えば、抄紙体の両面に平滑な剛板を当てて熱プレスする方法、連続ロールプレス装置や、連続ベルトプレス装置を用いる方法が挙げられる。
加熱加圧成形における加熱温度は、前駆体シートの表面を効果的に平滑にするために、200℃未満が好ましく、120〜190℃がより好ましい。
成形圧力は特に限定されないが、抄紙体中における炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状繊維(b´)の含有比率が多い場合は、成形圧が低くても容易にシートYの表面を平滑にすることができる。このとき必要以上にプレス圧を高くすると、加熱加圧成形時に炭素短繊維(A)が破壊されるという問題や、多孔質炭素電極基材の組織が緻密になりすぎるという問題等が生じる可能性がある。成形圧力は、20kPa〜10MPa程度が好ましい。
加熱加圧成形の時間は、例えば30秒〜10分とすることができる。抄紙体を2枚の剛板に挟んでまたは連続ロールプレス装置や連続ベルトプレス装置で加熱加圧成形する時は、剛板またはロールやベルトに炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´)などが付着しないように、あらかじめ剥離剤を塗っておくことや、抄紙体と剛板またはロールやベルトとの間に離型紙を挟むことが好ましい。
手順(4):前記手順(3)で得られた前駆体シートを、窒素雰囲気下において2000〜3000℃で炭素化して多孔質炭素質電極基材を製造する工程。
<炭素化>
炭素化処理は前駆体シート中の炭素繊維前駆体短繊維(b)および/またはフィブリル状炭素前駆体繊維(b´)および熱硬化性樹脂を炭素化する。炭素化処理は多孔質炭素電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で行うことが好ましい。炭素化処理は、通常1000℃以上の温度で行なわれる。炭素化処理温度範囲は、1000〜3000℃が好ましく、1000〜2200℃がより好ましい。炭素化処理時間は、例えば10分間〜1時間程度である。また、炭素化処理の前に、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行うことができる。
連続的に製造された前駆体シートを炭素化処理する場合は、製造コスト低減化の観点から、前駆体シートの全長にわたって連続で炭素化処理を行うことが好ましい。多孔質炭素電極基材が長尺であればハンドリング性が高く、多孔質炭素電極基材の生産性が高くなり、かつその後の膜−電極接合体(MEA)の製造も連続で行うことができるので、燃料電池の製造コストを低減できる。また、多孔質炭素電極基材や燃料電池の生産性および製造コスト低減化の観点から、製造された多孔質炭素電極基材を連続的に巻き取ることが好ましい。
上述した手順を経て多孔質炭素電極基材を得ることが出来る。なお手順(2)および手順(3)は省略することも出来る。
<炭素化工程を省略した多孔質炭素電極基材の製造方法>
炭素化工程を省略することで、炭素化を行う場合に比べてエネルギーコストを大幅に低減することができる。炭素化工程の省略による導電性の低下を抑制するため、さらなる導電性物質を導入することが必要である。上述した、炭素短繊維が分散した抄紙体に前記導電性物質などを添加・定着させる方法や、導電性物質とバインダー樹脂からなるスラリーを調製し、それらを製膜後、熱処理を行って多孔質炭素電極基材を製造する方法がある。前者の方法であれば、上述した炭素化工程を有する多孔質炭素電極基材の製造方法に準じて、抄紙体に樹脂含浸を行う要領で、導電性物質を添加し、その後にプレス成形することで定着させて多孔質炭素電極基材を製造することができる。また、後者の製造方法においても、上記抄紙体を製造する際のスラリー調製方法と同様にして、導電性物質を単数もしくは複数選択し、バインダー物質と溶液中で混合することでスラリーを調製し、公知のコーティング技術を用いて製膜後、乾燥・熱処理を施すことで多孔質炭素電極基材を製造できる。また、これらに供する導電性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、炭素繊維であればポリアクリロニトリル系(PAN系)炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、その他、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどを適宜用いることができる。用いる種類は限定されず、単独で使用してもよくあるいは複数選択して用いてもよい。導電性物質を決着させるバインダーとしては、樹脂を用いることができる。樹脂としては、撥水性を有するフッ素系、あるいはシリコン系樹脂などが好適である。上記スラリーを調製するにあたっては、スラリーの溶媒として、水、アセトン、エタノール、メタノールなどを適宜用いることができるが、環境負荷の低減、製造装置のコスト低減の観点から、溶媒としては水を用いることが最も好ましい。また、スラリー中における導電性物質およびバインダー物質の分散性を向上させるべく、界面活性剤や粘剤などの添加剤を適宜用いてもよい。
2.多孔質炭素電極
本発明の多孔質炭素電極は、多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が2層形成された多孔質炭素電極であって、多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差が1〜48μmである多孔質炭素電極である。嵩密度が0.20〜0.75g/cm、面直方法の透気度が50〜300ml/hr・cm・mmAq、かつ、コーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さが0.1〜2μm、かつ、最大表面粗さが5〜20μmであることが好ましい。
<多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成された多孔質炭素電極>
本発明においては、「多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成されたもの」を「多孔質炭素電極」という。
コーティング層に用いるカーボン粉は、たとえば、黒鉛粉やカーボンブラックなどを用いることができる。例えばアセチレンブラック(例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック)、ケッチェンブラック(例えばライオン(株)製のKetjen Black EC)、ファーネスブラック(例えばCABOT社製のバルカンXC72)などを用いることができる。カーボン粉を用いる割合としては、カーボン粉を溶媒に分散させた際の濃度が、5〜30%となるように用いることが好ましい。撥水剤としてはフッ素樹脂やシリコン樹脂などが挙げられ、これらを水などの溶媒に分散させて用いることが出来る。撥水性の高さから特に好ましくはフッ素樹脂である。フッ素樹脂としては例えばテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などがあげられ、特にPTFEが好ましい。撥水剤を用いる割合としては、撥水剤を溶媒に分散させた際の濃度が、5〜60%となるように用いることが好ましい。
カーボン粉および撥水剤を分散させる溶媒としては、水や有機溶媒を用いることが出来る。有機溶媒の危険性、コスト及び環境負荷の観点から、水を使用することが好ましい。有機溶媒を使用する際には、水と混合可能な溶媒である低級アルコールやアセトンなどの使用が好ましい。これら有機溶媒を用いる割合としては、水1に対して0.5〜2の比率で用いることが好ましい。
カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層とは、カーボン粉がバインダーである撥水剤によって結合されたものである。言い換えれば、撥水剤によって形成されるネットワーク中にカーボン粉が取り込まれ、微細な網目構造を有する。コーティング層を形成させる際に、組成物の一部が多孔質炭素電極基材へと染み込むため、コーティング層と多孔質炭素電極基材との明確な境界線の定義は困難であるが、本発明においてはコーティング層組成物の多孔質炭素電極基材へのしみこみが生じていない部分、すなわちカーボン粉と撥水剤のみから構成される層のみをコーティング層と定義する。
本発明の多孔質炭素電極は、多孔質炭素電極基材の面のいずれか一方の面上にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を有している。両面に当該コーティング層を有していてもよいが、プロセスが増加による生産性の低下および両面にコーティング層を有することでガス拡散性と排水性が低下する可能性があることから、多孔質炭素電極基材の一方の面上にのみカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成されているものが好ましい。コーティング層を形成させる表面はどちらでも良いが、強固なコーティング層を形成させるためにはある程度の表面粗さを有する面であることが好ましい。ただし、多孔質炭素電極基材の一方の面にガス流路を形成したものなどはこの限りではなく、もう一方の平滑な面に形成することが好ましい。
<多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差>
本発明の多孔質炭素電極はカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を層有するが、多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差は1〜48μmであることを必須とする。この差が小さすぎるとコーティング層1とコーティング層2の目付および嵩密度のバランスが等しくなるため、積層効果が得られず、単層のコーティング層を形成させた場合と同様の表面粗さの大きなコーティング層しか得ることができない。大きすぎると厚みの大きいコーティング層の効果が支配的となり、厚みの小さいコーティング層による効果が得られず、単層のコーティング層を形成させた場合と同様の表面粗さの大きなコーティング層しか得ることができない。コーティング層1の厚みとコーティング層2の厚みの差は、好ましくは2〜48μm、より好ましくは2〜40μmである。
コーティング層1の厚みとコーティング層2は、上記の様な差があれば、いずれの層が他方より厚くてもよい。
<コーティング層の厚み>
多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みは、上記の「多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差は1〜48μmである」条件を満たすことが必須であるが、それぞれ独立して1〜50μmであることが好ましい。厚みが薄すぎると多孔質電極基材表面の形状の寄与が大きくなるため、コーティング層の表面粗さが大きくなってしまい、燃料電池に使用した際に電極触媒層との接触性が低下する。また、容易にコーティング層を多孔質電極基材に含まれる炭素短繊維が突き破り、リーク電流等の原因にもなる。厚みが厚すぎると多孔質炭素電極の厚み方向における貫通抵抗値が増大し、燃料電池に用いた際に発電性能を低下させてしまう。各層の厚みは、より好ましくは2〜50μm、特に好ましくは5〜40μmである。なお、孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの合計は、5〜99μmであることが好ましい。合計の厚みが薄すぎると多孔質炭素電極の表面粗さが大きくなるため、コーティング層としての効果を得られず、厚すぎると多孔質炭素電極の厚み方向における貫通抵抗値が増大し、コーティング層表面にクラックなどの欠陥が生じるである。合計の厚みは、より好ましくは10〜90μm、特に好ましくは20〜80μmである。
<嵩密度>
本発明の多孔質炭素電極の嵩密度は、電気抵抗を下げる観点からは高いほど良いが、一方で液体や気体の排出性の観点からは、低い方が良い。具体的には0.20〜0.80g/cmであり、0.20〜0.75g/cmの範囲にあることが好ましい。
本発明の嵩密度は、後述の実施例において具体的に説明する測定方法によって測定することができる。
<面直方向の透気度>
本発明の多孔質炭素電極の面直方向における透気度は、液体に加えて気体の拡散性を良好に保つためには、後述するガーレー法で測定した際に、50〜500ml/hr・cm・mmAqである。好ましくは50〜300ml/hr・cm・mmAqであることが好ましい。
なお、本発明で用いる多孔質炭素電極基材は、液体を効率よく排出するという観点から、面直方向における透気度が2000〜20000ml/hr・cm・mmAqであることが好ましい。
<多孔質炭素電極の厚み>
多孔質炭素電極の厚みは、良好な電気導電性と排水性を発現するために、50〜350μmの範囲にあることが好ましい。50μm以上であれば、ハンドリング可能であり、350μm以下であれば良好な電気伝導性が得られる。さらに好ましい厚みは、100〜250μmの範囲である。
<算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さ>
本発明のコーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さは、触媒層との接触性を向上させるため0.1〜2μmの範囲内にあることが好ましい、なおかつ、最大表面粗さが5〜20μmであることで良好な触媒層との接触性が得られる。
本発明の「多孔質炭素電極のコーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さ」は、後述の実施例において具体的に説明する測定方法によって測定することができる。
下記の手法を用いて各種物性値の測定を行った。
<嵩密度の算出>
製造した多孔質炭素電極から、3×3cm角の試験片を10点、ランダムに取り出し、それぞれの厚みをマイクロメーターにより各サンプルに対して5点ずつ測定して平均厚みを算出し、重量を電子天秤により秤量した。下式に従って多孔質炭素電極の嵩密度を算出した。10点測定した嵩密度の平均値を其のサンプルの代表値として採用した。
(嵩密度)=試験片重量(g)/試験片厚み(cm)/試験片面積(cm
<算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さの測定>
多孔質炭素電極のコーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さは、JIS規格B−0601に準拠し、表面粗さ計サーフテストSJ―402(ミツトヨ社製)を用いて算術平均表面粗さおよび、最大表面粗さをそれぞれ測定し、一つのサンプルについて10点測定を行い、その平均値を代表値として採用した。
<透気度の測定>
JIS規格P−8117に準拠し、ガーレーデンソメーターを使用して200mLの空気が透過するのにかかった時間を測定し、ガス透気度(ml/hr/cm/mmAq)を算出した。
<多孔質炭素電極のコーティング層の厚み測定>
コーティング層の厚みは、以下の2通りの測定方法により測定を行った。コーティング層形成前後の厚み測定において各コーティング層の厚みを測定する方法と、多孔質炭素電極の断面像を走査型電子顕微鏡にて撮影し、各コーティング層の厚みを測定する方法である。厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ((株)ミツトヨ製、商品名:7321)を使用して測定した。測定子の大きさは直径10mmで、測定圧力は1.5kPaとした。いずれの測定方法においても、一つのサンプルについて10点測定を行い、その平均値を代表値として採用した。
<実施例1>
(多孔質炭素電極基材)
多孔質炭素電極基材は、市販のカーボンペーパーやカーボンクロスなどを用いることが出来るが、本発明では平滑な多孔質炭素電極基材を得るべく、多孔質炭素電極基材から製造を行った。
炭素短繊維(A)として、平均繊維径が7μm、平均繊維長が3mmのPAN系炭素繊維を用意した。また、炭素繊維前駆体短繊維(b)として、平均繊維径が4μm、平均繊維長が3mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン(株)製、商品名:D122)、フィブリル状繊維(b´)として、叩解によってフィブリル化するアクリル系ポリマーとジアセテート(酢酸セルロース)とからなる易割繊性アクリル系海島複合短繊維(三菱レイヨン(株)製、商品名:ボンネルM.V.P.−C651、平均繊維長:3mm)を用意した。
以下の<1>〜<10>の操作によって多孔質炭素電極を製造した。
<1> 炭素短繊維(A)の離解
炭素短繊維(A)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ミキサーを通して離解処理し、離解スラリー繊維(SA)とした。
<2> 炭素繊維前駆体短繊維(b)の離解
炭素繊維前駆体短繊維(b)を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散して、ミキサーを通して離解処理し、離解スラリー繊維(Sb)とした。
<3> フィブリル状繊維(b´)の離解
前記易割繊性アクリル系海島複合短繊維を、繊維濃度が1%(10g/L)になるように水中へ分散させミキサーを通して叩解・離解処理し、離解スラリー繊維(Sb´)とした。
<4> 抄紙体の製造
炭素短繊維(A)と炭素繊維前駆体短繊維(b)およびフィブリル状繊維(b´)とが、質量比70:10:20で、かつスラリー中の繊維の濃度が、1.44g/Lとなるように離解スラリー繊維(SA)、離解スラリー繊維(Sb)、離解スラリー繊維(Sb´)、希釈水を計量し、分散させた。抄紙には、ネット駆動部及び幅60cm×長さ585cmのプラスチックネット製平織メッシュをベルト状につなぎあわせて連続的に回転させるネットよりなるシート状物搬送装置、スラリー供給部幅が48cm、ネット下部に配置した減圧脱水装置からなる処理装置を用いた。処理装置の下流に下記の3本のウォータージェットノズルを備えた加圧水流噴射処理装置を配置した。
ノズル1:孔径φ0.15mm×501孔
幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)
1列配置、ノズル有効幅500mm
ノズル2:孔径φ0.15mm×501孔
幅方向孔間ピッチ1mm(1001孔/幅1m)
1列配置、ノズル有効幅500mm
ノズル3:孔径φ0.15mm×1002孔
幅方向孔間ピッチ1.5mm
3列配置、列間ピッチ5mm、ノズル有効幅500mm
加圧水流噴射圧力を1MPaノズル1、圧力2MPa(ノズル2)、圧力1MPa(ノズル3)として、繊維の分散したスラリーをスラリー供給部より投入し、減圧脱水を経た後、ノズル1、ノズル2、ノズル3の順で通過させて交絡処理を加え3次元交絡構造を持つ抄紙体を得た。抄紙体を、ピンテンター試験機(辻井染機工業(株)製PT−2A−400)により150℃で3分間、乾燥させて抄紙体を得た。なお、抄紙体における炭素短繊維(A)および炭素繊維前駆体短繊維(b)、フィブリル状繊維(b´)の分散状態は、良好でさらにハンドリング性は良好であった。
<5> 樹脂含浸・乾燥
得られた抄紙体にフェノール樹脂ディスパージョンを含浸させ、熱風乾燥機を用いて雰囲気温度100℃にて乾燥させた。
<6> 加圧加熱成形
次に、この抄紙体の両面を、シリコーン系離型剤をコートした紙で挟み込むように配置し、ダブルベルトプレス装置にて190℃、ベルト速度0.2m/分にてプレス成形を行った。
<7> 炭素化処理
その後、この前駆体シートをバッチ炭素化炉にて、窒素ガス雰囲気中、2000℃の条件下で1時間炭素化処理して多孔質炭素電極基材を得た。得られた多孔質炭素電極基材は反りやうねりが生じておらず平滑であった。
<8> コーティング液1の調製
デンカブラック(電気化学工業株式会社製)、イオン交換水、イソプロピルアルコールをそれぞれ5:100:80の割合で混合し、ホモミクサーMARK−II(プライミクス株式会社製)を用いて、冷却しながら15000rpmで30分間撹拌を行って、コーティング液1を得た。
<9> コーティング液2の調製
コーティング液1を冷却し、液温を10℃以下にした後、冷却しながらポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョンをカーボンブラック1に対し、0.3の割合で添加しディスパーによって500rpmで5分間の撹拌を行い、コーティング液2を得た。
<10> 多孔質炭素電極基材用の撥水処理液の作成
多孔質炭素電極基材用の撥水処理液の作成には、PTFEディスパージョン(31−JR、三井デュポンフロロケミカル製)と界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)および蒸留水を用いた。撥水処理液における固形分濃度が、PTFEは1wt%、界面活性剤は2wt%となるように調整した後、蒸留水を添加して、ディスパーを用いて1000rpm、10分間撹拌することによって撥水処理液を作成した。
<11> 多孔質炭素電極基材への撥水処理液の含浸
多孔質炭素電極基材を上記の撥水処理液に浸漬することによって含浸させた。含浸後の多孔質炭素電極基材をアプリケーター(テスター産業製)のガラス面に静置し、付属のアプリケーターバーを多孔質炭素電極基材に押し当て、アプリケーターバーを100mm/secの速度で搬送することによって、多孔質炭素電極基材に付着した余分な撥水処理液を取り除いた。
<12> コーティング層の形成
さらに、アプリケーター(テスター産業製)を用いて、コーティング層の厚みが45μm前後となるよう、コーティング液2を多孔質炭素電極基材上にコーティングし、ついで100℃に設定した熱風乾燥機を用いて20分間乾燥させ、コーティング層1を形成した多孔質炭素電極基材を得た。アプリケーター(テスター産業製)を用いてコーティング液2をコーティング層の厚みが49μm前後となるよう、コーティング層1上に塗布し、コーティング層2を形成し、乾燥させて、マッフル炉にて360℃1時間焼結処理をおこない、2層のコーティング層を形成した多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例2>
コーティング層1の厚みを35μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例3>
コーティング層1の厚みを25μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例4>
コーティング層1の厚みを15μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例5>
コーティング層1の厚みを5μm前後、コーティング層2の厚みを49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例6>
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを45μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例7>
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを35μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例8>
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを25μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例9>
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを15μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<実施例10>
コーティング層1の厚みを49μm前後、コーティング層2の厚みを5μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、良好であった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例1>
コーティング層1のみを形成し、その厚みを30μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例2>
コーティング層1のみを形成し、その厚みを50μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例3>
コーティング層1のみを形成し、その厚みを70μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例4>
コーティング層1のみを形成し、その厚みを90μm前後になるようにコーティング層を形成したことと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例5>
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも49μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例6>
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも30μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例7>
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも20μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例8>
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも10μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。
<比較例9>
コーティング層1およびコーティング層2の厚みを両方とも5μm前後になるようにそれぞれのコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質炭素電極を得た。得られた多孔質炭素電極の表面粗さを計測したところ、算術平均表面粗さが大きく、平滑性が良好でなかった。算術平均表面粗さ、最大表面粗さ、嵩密度、透気度などの結果は、表1にまとめた。

Claims (7)

  1. 多孔質炭素電極基材の少なくとも一方の面上に、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が2層形成された多孔質炭素電極であって、多孔質電極基材側のコーティング層1の厚みと、外側のコーティング層2の厚みの差が1〜48μmである多孔質炭素電極。
  2. 多孔質炭素電極基材の一方の面上のみに、カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層が形成された請求項1に記載の多孔質炭素電極。
  3. コーティング層1の厚みが2〜50μm、コーティング層2の厚みが2〜50μmである請求項1または2に記載の多孔質電極基材。
  4. コーティング層1の厚みが、コーティング層2の厚みよりも小である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質電極基材。
  5. コーティング層1の厚みが、コーティング層2の厚みよりも大である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質電極基材。
  6. 多孔質炭素電極基材の一方の面上に、形成された2層のコーティング層の合計厚みが、5〜99μmである請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質炭素電極。
  7. 嵩密度が0.20〜0.75g/cm、面直方法の透気度が50〜300ml/hr・cm・mmAq、かつ、コーティング層が形成された表面の算術平均表面粗さが0.1〜2μm、かつ、最大表面粗さが5〜20μmである請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質炭素電極。
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