〔実施形態〕
図1は本発明に係る液滴吐出装置が搭載された画像形成装置の全体図である。以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
((画像形成装置の構成))
まず、本発明に係る液滴吐出装置が搭載された画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。図1は画像形成装置1の全体構成を説明する側面概略図、図2は図1に示した画像形成装置のキャリッジ周辺の平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置である。図1、2に示す画像形成装置1は、主に、画像形成部、給紙部A、搬送部B、排紙部C、維持回復部Dなどを備えている。
図2に示すように、画像形成部において、画像形成装置1の左右の側面には、側板21A、21Bが配列されている。側板21A,21Bにはガイドロッド31、32が横架されている。本発明に係る液滴吐出装置が搭載されたキャリッジ33は、ガイドロッド31、32により主走査方向に摺動自在に保持されている。キャリッジ33は、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2の矢印で示したキャリッジ主走査方向に移動走査する。
このキャリッジ33は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する複数の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を有する。各記録ヘッド記録ヘッド34a、34bには、液滴を各々吐出する複数のノズルからなるノズル列が、主走査方向と直交する副走査方向に配列されている。このキャリッジ33は、ノズル列のインク滴吐出方向を下方に向くように装着されている。
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有している。記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を吐出する。記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、吐出する。なお、別の構成として、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備える記録ヘッドなどを用いてもよい。
キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するサブタンク35a、35bを搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
また、図1を参照して、給紙部は、用紙積載部41を有する給紙トレイ2、給紙コロ43、分離パッド44、ガイド部材45、カウンタローラ46、搬送ガイド47、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48を備えている。給紙コロ43に対向し摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44が給紙コロ43側に付勢されている状態で、用紙Sは、用紙積載部41から1枚ずつ分離給送される。そして、この給紙トレイ2から給紙された用紙Sは、ガイド部材45に案内され、カウンタローラ46と、搬送ガイド47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48により、記録ヘッド34の下側に送り込まれる。
また、搬送部は、搬送ベルト51、搬送ローラ52、テンションローラ53を備えている。搬送ベルト51は給送された用紙Sを静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送する。搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されており、図示しない副走査モータによってタイミングよく搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動する。
また、この搬送ベルト51の表面を帯電させる帯電手段として、帯電ローラ56が配置されている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙Sを排紙する排紙部として、搬送ベルト51から用紙Sを分離する分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、画像形成装置1の装置本体の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙Sを取り込んで反転させて再度、カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復する維持回復機構81が配置されている。この維持回復機構81は、キャップ82a、82b、ワイパーブレード83、空吐出受け84、キャリッジロック87などを備えている。キャップ82a、82bは記録ヘッド34a、34bの各ノズル面をキャピングする。ワイパーブレード83はノズル面をワイピングする。空吐出受け84は、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける。キャリッジロック87はキャリッジ33の位置を固定する。このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容する廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着されている。
また、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88が配置されている。この空吐出受け88は、記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置でのプリント動作について説明する。給紙トレイ2から1枚ずつ分離給紙され略鉛直上方に給紙された用紙Sは、ガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド47で案内される。その後、先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧が印加されて、帯電ローラ56が交番電流による帯電電圧パターンを用いて搬送ベルト51を帯電する。この帯電した搬送ベルト51上に用紙Sが給送されると、用紙Sが搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙Sが副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、キャリッジ33を搬送ベルト51の上の位置に動かし、停止している用紙Sにインク滴を吐出して1行分の画像形成を行う。用紙Sが搬送ベルト51により所定量搬送された後、キャリッジ33が次の行の画像形成を行う。画像形成終了信号又は用紙Sの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、キャリッジ33の画像形成動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動させる。維持回復機構81は、キャップ82a、82bによるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行う。このような動作により、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
このようなインクジェット記録装置からなる画像形成装置において、下記に説明する本発明を実施した液滴吐出装置を搭載しているので、高粘度インクを用いた普通紙高画質記録を高速で行うことができる。
((液滴吐出装置の構成))
次に、本発明の液滴吐出装置である、記録ヘッドを構成している液滴吐出ヘッドの一例について図3〜図5を参照して説明する。なお、図3は液滴吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は図3の液滴吐出ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液滴吐出ヘッド(記録ヘッド)34では、流路板101と、この流路板101の下面に接合した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とが接合して積層されている。これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104、ノズル連通路105、圧力発生室である加圧液室(インク室、圧力発生室)106、流体抵抗部107、共通液室108、インク供給路109などを形成している。
加圧液室106のインクは、ノズルと連通する流路であるノズル連通路105を通って、ノズル104から吐出される。その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室106内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室106内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。このとき、インクタンク(サブタンク)35から供給されたインクは共通液室108に流入し、共通液室108からインク供給路109を経て流体抵抗部107を通り、加圧液室106内に充填される。
また、液滴吐出ヘッドは、振動板102を変形させて加圧液室106内のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ)であり、電気機械変換素子として機能する2個(図3では1列のみ図示)の積層型圧電部材121を備えている。
また、この圧電部材121を接合固定し、圧電部材121などとともにアクチエーターユニットを構成するベース基板122が配置されている。この圧電部材121では、分割しないスリット加工で溝を形成することで複数の圧電素子121A、支柱部材121Bが形成されている。この例では、圧電素子121Aは駆動波形を印加する駆動圧電素子柱とし、支柱部材121Bは駆動波形を印加しない非駆動圧電素子柱としている。
圧電部材121の一端面の端面電極はハーフカットによるダイシング加工で分割されて櫛歯状の個別電極154となり、他端面の端面電極は切り欠き等の加工による制限で分割されずにすべての圧電素子121Aで導通した共通電極153となる。共通電極153は、圧電素子121Aの端部に電極層を設けて回し込んでFPCケーブル126のグラウンド(GND)電極に接続している。FPCケーブル126には、図6で示すヘッドドライバ(ドライバIC)107が実装されており、圧電素子121Aの共通電極153への駆動電圧印加を制御している。
そして、振動板102の周縁部がフレーム部材130に接合されている。フレーム部材130には、圧電部材121やベース基板122等からなるアクチュエータユニットを収納する貫通部131と、共通液室108として機能する凹部と、共通液室108に外部からインクを供給する供給口であるインク供給穴132が形成されている。
流路板101では、シリコン単結晶基板を用いてインク供給路109、流体抵抗部107、加圧液室106となる溝と、およびノズル104に対する位置にノズル連通路105なる貫通口をエッチング工法でパターニングにより形成される。エッチングで残された部分が加圧液室106の隔壁110となる。また、この液滴吐出ヘッド34ではエッチング幅を狭くする部分を設けられており、この部分が流体抵抗部107となる。
図5は、図3の液滴吐出ヘッドの液室平面方向に沿う断面図である。振動板102は、ニッケルの金属プレートを2層重ねて形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他の金属板や樹脂板或いは金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。
この振動板102は加圧液室106に対応する部分に変形を容易にする厚みが2〜10μmの薄肉部(ダイアフラム部)102−2及び圧電素子121Aと接合する厚肉部(島状凸部)102−1Aを形成する。また、この振動板102の島状凸部102−1Aと圧電素子121Aの共通電極(可動部)153、振動板102とフレーム部材130との結合は、ギャップ材を含んだ接着層123をパターニングして接着している。なお、ここでは、振動板102を2層構造のニッケル電鋳で形成している。この場合、ダイアフラム部102−2の厚みは3μm、幅は35μm(片側)としている。
ノズル板103は各加圧液室106に対応して直径10〜35μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103としては、ステンレス、ニッケルなどの金属、金属とポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂との組み合せ、シリコン、及びそれらの組み合わせからなるものを用いることができる。ここでは、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成している。また、ノズル104の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成し、このノズル104の穴径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmとしている。さらに、各列のノズルピッチは150dpiとし、2列配置により300dpiとしている。
また、ノズル板103のノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けている。撥水処理層としては、例えば、PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたものや、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定して形成される。このような撥水処理膜により、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
圧電部材121は、厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電材料151と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極152とを交互に積層したものである。内部電極152は、交互に端面の端面電極(外部電極)である個別電極154、共通電極153に電気的に接続されている。
圧電素子121Aの圧電常数はd33あり、この圧電素子121Aが受ける印加電圧の変化による伸縮により加圧液室106を収縮、膨張させている。圧電素子121Aは駆動信号が印加され充電が行われると伸長し加圧液室106を膨張させ、また圧電素子121Aは充電された電荷が放電すると反対方向に加圧液室106を収縮するようになっている。
このような液滴吐出ヘッド34では、ヘッドドライバ509で生成される駆動電圧に基づいて、例えば圧電素子121Aに印加する電圧を基準電位Veから下げる(駆動波形10〜50Vのパルス電圧等を印加する)ことで駆動圧電素子121Aが収縮する。よって、振動板102が下降して加圧液室106の体積が膨張することで、加圧液室106内にインクが流入する。
その後、圧電素子121Aに印加する電圧を上げて駆動圧電素子柱である圧電素子121Aを積層方向に伸長させることで、振動板102をノズル104方向に変形させて加圧液室106の体積を収縮させる。この動作により、加圧液室106内のインクが加圧され、ノズル104からインク滴が吐出(噴射)される。
そして、駆動圧電素子柱121Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、加圧液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から流体抵抗部107を通って、加圧液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出の動作に移行する。
ここで、流体抵抗部107は、抵抗として吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、流路が狭くなるため再充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部107の素材を適宜選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
なお、一般に、インクジェットヘッドで振動板を使用するものについては、押し打ち法、引き打ち法、これらを組み合わせた方法で駆動するものがある。押し打ち法での駆動では、振動板を加圧室側に押し込み、加圧室内の容積を小さくすることでインク滴を吐出させる。引き打ち法での駆動では、振動板102を加圧液室106の外側方向の力で変形させ加圧液室106の内容積を広げた状態から元の容積になるように振動板の変位を元に戻すことでインク滴を吐出させる。
上述のヘッドの駆動方法については上記のように、(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
((制御部))
次に、液滴吐出装置300が搭載された、画像形成装置1の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、図6は画像形成装置1の制御部500とその周辺のブロック説明図である。
この制御部500は、CPU501、ROM502、RAM503、不揮発性メモリ504、ASIC505、ホストインターフェイス(I/F)506、印刷制御部508、モータ駆動部510、ACバイアス供給部511を備えている。
CPU501は画像形成装置1全体の制御を司る本発明に係る空吐出動作の制御を行う手段を兼ねる。ROM502は、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納する。RAM503は画像データ等を一時格納する。書き換え可能な不揮発性メモリ504は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持する。ASIC505は画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御する入出力信号を処理する。ホストI/F506はホスト側とのデータ、信号の送受を行う。
また、印刷制御部508は駆動波形生成部701や記録ヘッド34を駆動制御するデータ転送部702等を含む(図7参照)。印刷制御部508は、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と接続されている。
モータ駆動部510は、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81のキャップ82やワイパーブレード83の移動などを行なう維持回復モータ556を駆動する。ACバイアス供給部511は帯電ローラ56にACバイアスを供給する。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行う操作パネル514が接続されている。
この制御部500は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してホストI/F506で受信する。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
印刷制御部508において、データ転送部702は、上述した画像データをシリアルデータで転送し、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。駆動波形生成部701は、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成され、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して吐出パルスを生成する。そして、記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段としての圧電素子に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスの一部又は全部及び駆動パルスを形成する波形用要素の全部又は一部を使用することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出する光学センサや、機内の温度を監視するサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
((駆動制御部の構成))
次に、本発明の駆動制御部を構成する、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図6を参照して説明する。
印刷制御部508は、駆動波形生成部701と、データ転送部702と、空吐出駆動波形生成部703とを備えている。
駆動波形生成部701は画像形成時に1印刷周期内に、複数の滴サイズの滴形成に寄与する複数の駆動パルス(駆動信号)を時系列で含む共通駆動波形を生成して出力する。共通駆動波形は、吐出動作における1駆動周期内の最終駆動パルスの直後に、液滴を吐出させない程度にメニスカスに変動を与える微調整波形も含んでいる。上記吐出パルス(駆動パルス)及び微調整波形は勾配(傾斜)のある立ち上がり期間、勾配のある立ち下がり期間、及び電位保持期間を有する波形である。
データ転送部702は、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、液制御信号(選択信号)M0〜M3を出力する。空吐出駆動波形生成部703は空吐出用の駆動波形を生成して出力する。
データ転送部702が生成する選択信号M0〜M3は、ヘッドドライバ509の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビット(2値)のデジタル信号である。液滴信号は各滴サイズと少なくとも同数設けられ、M0は大滴、M1は中滴、M2は小滴、M3は微滴に対応する。微滴に対応するM3は設けても設けなくてもよい。データ転送部702は、滴サイズに応じて、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき駆動パルス及び微調整波形の区間の波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移させた選択信号を生成する。
ヘッドドライバ509は、シフトレジスタ711、ラッチ回路712、デコーダ713、レベルシフタ714、アナログスイッチ715とを備えている。シフトレジスタ711には、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)が入力される。ラッチ回路712は、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチする。デコーダ713は階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力する。レベルシフタ714はデコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換する。アナログスイッチ715は、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)される。
このアナログスイッチ715は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形が入力されている。従って、シリアル転送された画像データ(階調データ)と選択信号MN0〜MN3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにする。アナログスイッチ715がオンしている期間、共通駆動波形を構成する所要の駆動パルス及び微調整波形等の波形要素が(選択されて)圧電素子121に印加される。
空吐出駆動波形生成部703は、空吐出動作を行うときに、空吐出駆動波形を生成してアナログスイッチ715に出力する。空吐出動作とは、印刷開始前等に、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる動作をいう。なお、駆動波形生成部701からの共通駆動波形と空吐出駆動波形生成部703からの空吐出駆動波形とは、選択的に生成され、あるいは、選択的にアナログスイッチ715に入力される。
((制御概要))
ここで、サテライト滴とは、ヘッドノズルから、射出されたインク滴の主滴から分離してでる点々とした小さな液滴のことを指す。より詳しくは、液滴供給により比較的大きい液滴が吐出されるが、供給停止後も後部に引き伸ばされた細い棒状の液が続いて吐出される。この棒状の液により、表面張力により大きい液滴(主滴)とノズルから分離してサテライトと呼ばれる小さい液滴が形成される。
このように、吐出工程で最終の液滴が吐出される際に、主滴とサテライト滴の速度差によって、記録媒体上で主滴とは離れた位置に分離してサテライト滴が着弾してしまうおそれがあった。
そうなると、画質の低下をもたらし、あるいはサテライト滴がミスト化してヘッドのノズル面や記録媒体あるいはプリンタ内を汚してしまうおそれがあった。これを防止するために、吐出パルスの直後にサテライト滴の速度を速める加振パルスを印加することが好ましい。
また、上記液滴吐出ヘッドにおいて、特に、粘度の低い液体を吐出させた場合や粘度が下がる高温環境において、滴吐出後の残留振動により次の滴吐出時に滴曲がりやマージ不良、滴速度の変動など、画像不具合の原因となる現象が引き起こされることがある。これを防止するため、吐出パルスの直後にメニスカスの残留振動と逆位相となるようにインク室に圧力を与えて残留振動を抑える制振パルスを印加することが好ましい。
なお、一般に、圧力発生素子(アクチュエーター)による加圧振動を一度だけ行う単パルス滴種(小滴)はサテライトが出やすく、アクチュエーターによる振動を複数回行い、メニスカスの残留振動を利用して滴を吐出させる多パルス滴種(大滴)はサテライトが出にくいことが知られている。これは、多パルス滴種(大滴)によって発生した強い残留振動が、サテライト短縮に対して加振パルスと同じ効果をもたらすためである。もし多パルス滴種(大滴)において上記加振パルスを印加すると、もともと強い残留振動がさらに強められノズルから意図せぬインク吐出が発生してしまうおそれがある。
そこで、本発明の制御では、残留振動が小さくサテライトが発生しやすい単パルス滴種(小滴)への印加電圧では、吐出動作における1駆動周期内の最終吐出パルス(最終駆動パルス)の後に、強加振を行う波形を配置する。強加振を発生させるためには、上記最終吐出パルスによって滴が吐出された後のメニスカス残留振動に対して同位相で、波形を与える。
一方残留振動が大きくサテライトが発生しにくい多パルス滴種(大滴)への印加電圧では、上記最終吐出パルスによって滴が吐出された後のメニスカス残留振動に対し位相ずれが大きなタイミングで、上記強加振波形よりもサテライト短縮効果の弱い波形を与える。さらに、サテライト短縮効果の弱い波形として、多パルス滴種(大滴)への印加電圧では、吐出パルスの直後にメニスカスの残留振動と逆位相となるようにインク室に圧力を与えて残留振動を抑える制振パルスを入れると、より好ましい。
下記に具体的な制御の例として実施例を説明する。共通駆動信号は複数の駆動パルスと実施例ごとに異なる制振波形、加振波形(強加振、中加振、弱加振)、及び微駆動波形等の微調整波形を有している。なお、微調整波形が制振波形、加振波形(強加振、中加振、弱加振)の場合、共通駆動波形は微調整波形とは別に、液滴吐出前にノズル104から滴を吐出させない程度にメニスカスを揺らして乾燥を防止する微駆動パルス(波形)を、複数の駆動パルスの前に含んでもよい。
<<第1実施例>>
図8〜10は本発明の第1実施例を説明する図である。図8は本実施例の共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示すグラフである。本実施例の微調整波形は残留振動の抑制を行う残留振動抑制波形(制振波形、抑制波形)である。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に1つの微駆動パルス、T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、T2〜T3の区間に1つの吐出パルス、T3〜T4の区間に1つの吐出パルス、T4〜T6の区間に制振波形を持っている。本実施例の微駆動パルスは吐出パルスの前に配置され、液滴吐出の前にノズル104から滴を吐出させない程度にメニスカスを揺らして乾燥を防止する。
各選択信号はONの時に液滴吐出ヘッド34の圧電素子121Aに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって、本実施例では、大滴(第2滴サイズ)波形は4つの吐出パルスと制振波形を有し、中滴波形は2つの吐出パルスと制振波形を有する。また、小滴(第1滴サイズ)波形は1つの吐出パルスと、制振波形の一部を使用したサテライト短縮波形(加振波形)を有する。
図9は、図8に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された大滴の駆動信号と小滴の駆動信号を示す。大滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6が制振波形となっている。図10(a)は上段が大滴の時刻T3〜T4の吐出パルスと時刻T4〜T6の制振波形、下段がメニスカス振動の概念図である。制振波形は、最終吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から制振波形の立ち上がり要素の中間時刻までの時間Taが個別液室液体振動周期Tcの半分となるタイミングで印加する(Ta=1/2Tc)。即ち、吐出パルス後の残留振動に対して180°位相がずれた逆位相で、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろにずれたタイミングとなるように立ち上がりの微振動を与えて、図10(a)下段に示すように振動を抑制させる(Tb=Tc×(n−1/2):n=自然数)。
なお、図8に選択信号を示した中滴の駆動信号は、共通駆動信号の時刻T2〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6は大滴同様に制振波形となっているため、詳細説明は割愛する。
一方、図10(b)は上段が小滴の時刻T3〜T4の吐出パルスと時刻T4〜T6の加振波形、下段がメニスカス振動の概念図である。図9に示すように、小滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T4を選択し、T4〜T5は選択せずに、T5〜T6を再び選択する。したがって、時刻T5で垂直に電圧が立ち上がり、時刻T4〜T6の期間には大滴の制振波形とは異なる形状の波形が印加される。つまり、選択信号を利用して共通駆動信号にはなかった垂直形状の波形を印加させている。この時刻T4〜T6の波形は、時刻T5の電圧立ち上がりタイミングがT3〜T4で吐出された滴のサテライト滴を加振させるタイミングとなっている。図10(b)上段に示すように、時刻T3〜T4の吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻からT5までの時間Tbを個別液室液体振動周期Tcと設定する(Tb=Tn)。即ち、最終吐出パルス後の残留振動と同位相(Tc)で、もしくはそこからさらにTcの自然数倍のタイミングとなるように立ち上がりの微振動を与えて、図10(b)下段に示すように、メニスカス振動を加振させる(Tb=Tc×n :n=自然数)。これにより、時刻T3〜T4の吐出パルスによる吐出滴のサテライトの速度を速めることができる。
このように、選択信号の切り替えで共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、大滴には残留振動抑制波形、小滴にはサテライト短縮波形を入れることができる。この方法であれば、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
また、(図示はしないが)本実施例において、図8あるいは図9に示したT5のタイミングを変えることでサテライトを短縮する加振の強さを変化させることも可能である。したがって、例えば、小滴と中滴とで波形の立ち上がりタイミングが各々異なるサテライト短縮波形を入れることもできる。この場合も、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要はなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
<<第2実施例>>
図11〜13は本発明の第2実施例を説明する図である。図11は本実施例の共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示すグラフである。本実施例の微調整波形は、第1実施例同様、残留振動抑制波形である。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間1つの微駆動パルス、T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、T2〜T3の区間に1つの吐出パルス、T3〜T4の区間に1つの吐出パルス、T4〜T6の区間に残留振動を抑制する制振波形を持っている。
各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって本実施例では、大滴波形は4つの吐出パルスと制振波形を有し、中滴波形は2つの吐出パルスと制振波形を有する。また、小滴波形は1つの吐出パルスと、制振波形の一部を使用したサテライト短縮波形(加振波形)を有する。
図12は、図11に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された大滴の駆動信号と小滴の駆動信号を示す。図12(a)では大滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6が制振波形となっている。図13(a)は、大滴の時刻T3〜T4の吐出パルスと時刻T4〜T6の制振波形の概念拡大図である。制振波形は、吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から制振波形の立ち上がり要素の中間時刻までの時間Taが個別液室液体振動周期Tcの半分となるタイミングで印加する。即ち、最終吐出パルス後の残留振動に対して180°位相がずれた逆位相で、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろにずれたタイミングで、立ち上がりの微振動を与えることで、振動を抑制させる。
なお、図11に選択信号を示した中滴の駆動信号は、共通駆動信号の時刻T2〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6は大滴同様に制振波形となっているため、詳細説明は割愛する。
一方、図12(b)に示すように、小滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T4を選択し、T4〜T5は選択せずに、T5〜T6を再び選択する。したがって、時刻T5で垂直に電圧が立ち上がり、時刻T4〜T6の期間には大滴の制振波形とは異なる形状の波形が印加される。つまり、選択信号を利用して共通駆動信号にはなかった垂直形状の波形を印加させている。この時刻T4〜T6の波形は、時刻T5の電圧立ち上がりタイミングがT3〜T4で吐出された滴のサテライト滴を加振させるタイミングとなっている。図13(b)に示すように、時刻T3〜T4の吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から時刻T5までの時間Tbを個別液室液体振動周期Tcと設定することで、吐出パルス後の残留振動と同位相で、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろのタイミングで、立ち上がりの微振動を与えて、メニスカス振動を加振させる。これにより、時刻T3〜T4の吐出パルスによる吐出滴のサテライトの速度を速めることができる。
このように、選択信号の切り替えで共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、大滴には残留振動抑制波形、小滴にはサテライト短縮波形を入れることができる。この方法であれば、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
なお、図示はしないが、小滴に加え、中滴の選択信号も切り替えることで、共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、小滴、中滴で異なる強さのサテライト短縮波形を生成し、大滴で制振波形を入れるようにしてもよい。この方法であれば、共通駆動信号に複数のサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
この場合、1駆動周期内で印加する吐出パルスが少なく液滴のサイズが小さいほど、垂直立ち上がりタイミングT5を図13(b)で示したタイミング(Tc)に近づけるよう調整する。この場合であっても、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
なお、第1実施例及び第2実施例においては、共通駆動波形としての微調整波形を吐出パルス後の残留振動と逆位相で印加電圧を立ち上げ、液室を収縮させることで、制振波形を作成していた。しかし、微調整波形について、例えば後述の図16(a)のタイミングのように、吐出パルス後の残留振動と同位相で印加電圧を立ち下げることで制振波形を作成し液室を膨張させてもよい。
また、微調整波形の一部を使用して、吐出パルス後の残留振動と同位相で印加電圧を垂直に立ち上げて液室を収縮させることで、加振波形を作成していたが、例えば後述の図16(b)のタイミングのように、波形を吐出パルス後の残留振動と逆位相で印加電圧を垂直に立ち下げる加振波形の作成により液室を膨張させてもよい。
<<第3実施例>>
図14〜16は本発明の第3実施例を説明する図である。図14は本実施例の共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示すグラフである。本実施例の微調整波形は、サテライト短縮波形(加振波形)である。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に1つの微駆動パルス、時刻T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、時刻T2〜T4の区間に1つの吐出パルス、時刻T4〜T5の区間に1つの吐出パルスと加振波形を持っている。
各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって本実施例では小滴波形は1つの吐出パルスとサテライト短縮波形(加振波形)を有し、中滴波形は2つの吐出パルスと加振波形を有する。大滴波形は4つの吐出パルスと加振波形の一部を使用した残留振動抑制波形を有する。
図15は、図14に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された大滴の駆動信号と小滴の駆動信号である。小滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6がサテライト短縮波形となっている。図15(b)では小滴の時刻T3〜T4の吐出パルスと時刻T4〜T6のサテライト短縮波形である。図16(b)に示すように、サテライト短縮波形は、吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻からサテライト短縮波形の立ち下がり要素の中間時刻までの時間Tbが個別液室液体振動周期Tcの半分となるタイミング(Tb=1/2Tc)で印加し、吐出パルス後の残留振動に対して逆位相、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろにずれたタイミングとなるように、立下りの微振動を与えることで振動を加振させ、サテライト滴の速度を加速させる(Tb=Tc×(n−1/2):n=自然数)。
なお、図15に選択信号を示した中滴の駆動信号は、共通駆動信号の時刻T2〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6は小滴同様にサテライト短縮波形となっているため、詳細説明は割愛する。
一方、図15(a)に示すように、大滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T4を選択し、T4〜T5は選択せずに、T5〜T6を再び選択する。したがって、時刻T5で垂直に電圧が下がり、時刻T4〜T6の期間には小滴のサテライト短縮波形とは異なる形状の波形が印加される。つまり、選択信号を利用して共通駆動信号にはなかった垂直形状の波形を印加させている。この時刻T4〜T6の波形は、時刻T5の電圧立ち下がりタイミングがT3〜T4で吐出された滴の残留振動を制振させるタイミングとなっている。図16(a)に示すように、時刻T3〜T4の吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から時刻T5までの時間Taを個別液室液体振動周期Tcとすることで、吐出パルス後の残留振動の位相に対して、同位相の、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろのタイミングとなるように立ち下がりの微振動を与えることになり、メニスカス振動を制振させることができる(Tb=Tc×n:n=自然数)。
本実施例では、第1、第2実施例とは異なり、印加電圧を立ち下げることで、メニスカス振動を制御する。図10(a)下段と図10(b)下段のメニスカスとその方向を参照して、印加電圧を立ち下げて制御する場合は、印加電圧を立ち上げて制御する場合と比較して加振及び制振が起きる位相が1/2ずれる。
このように、選択信号の切り替えで共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、大滴には残留振動抑制波形、小滴にはサテライト短縮波形を入れることができる。この方法であれば、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
なお、第3実施例においては、共通駆動波形としての微調整波形を吐出パルス後の残留振動と逆位相で印加電圧を立ち下げて、液室を膨張させることで、加振波形を作成している。しかし、微調整波形を、例えば、上述の図10(b)のタイミングのように、吐出パルス後の残留振動と同位相で印加電圧を立ち上がる波形に設定して加振波形を作成して液室を膨張させてもよい。
また、微調整波形の一部を使用して、吐出パルス後の残留振動と同位相で印加電圧を垂直に立ち下げて液室を膨張させることで、制振波形を作成していたが、例えば、上述の図10(a)のタイミングのように、吐出パルス後の残留振動と逆位相で印加電圧を垂直に立ち上げて液室を収縮させることで制振波形を作成してもよい。
<<第4実施例>>
図17〜19は本発明の第4実施例を説明する図である。図17は本実施例の共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示すグラフである。実施例の微調整波形は、微駆動パルスである。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に2つの吐出パルス、T1〜T2の区間に1つの吐出パルス、T2〜T3の区間に1つの吐出パルス、T3〜T5の区間に微駆動パルスを持っている。本実施例の微駆動パルスは非印字周期にノズル104から滴を吐出させない程度にメニスカスを揺らして乾燥を防止する。
各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって本実施例では、小滴波形は1つの吐出パルスと微駆動パルスの一部を使用した加振波形を有する。大滴波形は4つの吐出パルスと微駆動パルスの一部を使用した制振波形を有する。中滴波形は、2つの吐出パルスを有し、微調整波形は選択しない。
図18は、図17に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された大滴の駆動信号と小滴の駆動信号である。時刻T3〜T5の部分が、大滴の駆動信号では残留振動抑制波形、小滴の駆動信号ではサテライト短縮波形となっており、選択信号を利用して、大滴の駆動信号では時刻T5、小滴の駆動信号では時刻T4に共通駆動信号にはない垂直形状の波形を印加している。時刻T4とT5は図18に示すような下記タイミングとなっている。
なお、微駆動波形は、液滴を吐出しないようにメニスカスを揺らすため、図19に示すように、最終吐出からの立ち上がり、立ち下がり時刻は、メニスカス残留振動Tcに対して、Ta又はTb=Tc(n−1/4)又はTc(n−3/4)に設定されている。そのため、振動を与えても、残留振動やサテライト滴の速度に影響を及ぼさない。
図19(a)に示すように、大滴波形について、時刻T2〜T3の吐出パルスの立ち上げ要素の中間時刻から垂直に立ち上がる時刻T5までの時間を個別液室液体振動周期Tcの(3/2)とすることで、吐出パルス後の残留振動の位相に対して180°ずらした位相で微振動を与え、大滴吐出後のメニスカス振動を制振させることができる。なお、大滴波形の立ち下がりは微駆動波形を用いるので(例えば、図19(a)では吐出パルスの立ち上げ要素の中間時刻から微駆動波形の立ち下がりまでの時間は1/4Tc)、残留振動やサテライト滴の速度に影響を及ぼさない。
また、図19(b)に示すように、小滴波形について、時刻T2〜T3の吐出パルスの立ち上げ要素の中間時刻から垂直に立ち下がる時刻T4までの時間を個別液室液体振動周期Tcの(1/2)とすることで、吐出パルス後の残留振動に対して同位相の微振動を与えて振動を加振させ、サテライト滴の速度を加速させる。なお、小滴波形の立ち上がりは微駆動波形を用いるので(例えば、図19(b)では吐出パルスの立ち上げ要素の中間時刻から微駆動波形の立ち上がりまでの時間は5/4Tc)、残留振動やサテライト滴の速度に影響を及ぼさない。
このように、大滴の残留振動抑制波形と小滴のサテライト短縮波形を、共通駆動信号の中の微駆動パルスの一部から選択信号を利用して形成することで、滴種に応じた制御波形を入れることができる。そして、この方法であれば、共通駆動信号に大滴用の残留振動抑制波形と小滴用のサテライト短縮波形を設ける必要がないので、波形長を短縮でき、高周波駆動が可能となる。
第1実施例〜第4実施例では、微調整波形を利用して、大滴用の残留振動抑制波形と小滴用のサテライト短縮波形という役割の異なる信号を作成していた。しかし、微調整波形は役割の異なるものに限られず、同じ役割で強弱の異なるものを作成してもよい。強弱の異なる調整波形について、下記第5実施例〜第9実施例を用いて説明する。
まず、第5実施例及び第6実施例について、残留振動抑制波形の制振の強さを調整する例を示す。この構成は、残留振動の制振が問題になりやすい低粘度インクを使用する液体吐出ヘッドや、インク粘度が低下する高温領域での駆動において特に有効である。
<<第5実施例>>
図20及び図21は本発明の第5実施例を説明する図である。図20は共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示す。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に滴を吐出させない程度にメニスカスを揺らして乾燥を防止する微駆動パルス、時刻T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、時刻T2〜T3の区間に1つの吐出パルス、時刻T3〜T4の区間に1つの吐出パルス、時刻T4〜T6の区間に強い制振波形を持つ構成となっている。各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。
図21は、図20に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された大滴の駆動信号と小滴の駆動信号である。大滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6が強い制振波形となっている。一方、小滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T4を選択し、T4〜T5は選択せずに、T5〜T6を再び選択する。それにより、時刻T5〜T6が弱い制振波形となっている。
図21(a)に示す大滴の強い制振波形は、共通駆動信号により印可される。この時、大滴最終吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から制振波形の立ち上がり要素の中間時刻までの時間Taが個別液室液体振動周期Tcの半分となる、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろにずれたタイミングとなるようにTaが設定されることが望ましい(Ta=Tc×(n−1/2):n=自然数)。このタイミングで、インク室を微収縮させ(すなわち、外部方向に滴が吐出しない程度の微変位を与え)ることで、吐出パルス後の残留振動に対して180°位相がずれた微振動を与えて、滴吐出後のメニスカスの振動を強く制振することができる。
図21(b)に示す小滴の弱い制振波形では、図20の共通駆動信号から時刻T3〜T4までの吐出パルスは選択し、T4〜T5は選択しない。これにより、T4〜T5の間は電位が一定に保持される。そして、前記Taより少し後(又は少し前)のタイミングT5で再び共通駆動信号からの選択信号をONにし、選択信号を利用して共通駆動信号にはなかった垂直形状の波形を印加させる。
このときT5は小滴吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から制振波形の立ち上がり要素の中間時刻までの時間Tbが、以下の式(1)を満たすように設定される。
このタイミングで、インク室を微収縮させ(すなわち、外部方向に滴が吐出しない程度の微変位を与え)ることで、滴吐出後のメニスカスの振動を弱く制振することができる。そしてその後は共通駆動信号通りに中間電位に戻る。
このように、選択信号の切り替えで共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、大滴には強い制振波形、小滴には弱い制振波形を入れることができる。この方法であれば、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
また、図示はしないが、本実施例においても、大滴、中滴、小滴それぞれについて選択信号を利用して異なる強さの制振を生成することができる。この時、駆動周期あたりの吐出パルスが多い場合ほど、強い制振を行うことが望ましい。この場合においても、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
<<第6実施例>>
図22、23は本発明の第6実施例を説明する図である。図22は共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示す。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に滴を吐出させない程度にメニスカスを揺らして乾燥を防止する微駆動パルス、時刻T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、時刻T2〜T3の区間に1つの吐出パルス、時刻T3〜T4の区間に1つの吐出パルス、時刻T4〜T6の区間に弱い制振波形を持つ構成となっている。各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって、ここでは、例えば、小滴吐出時は共通駆動信号の中のT3〜T6までを選択した小滴波形を用いる。すなわち、1つの吐出パルスと弱い制振波形で小滴波形は構成される。
図22は、図23に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された小滴の駆動信号と大滴の駆動信号である。小滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T6を選択する。時刻T4〜T6が弱い制振波形となっている。一方、大滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T4を選択し、T4〜T5は選択せずに、T5〜T6を再び選択する。時刻T4〜T6が強い制振波形となっている。
制振波形とは、一般に、吐出パルスによって励起された残留振動を打ち消すタイミングで印加する波形で、これにより、吐出滴の後に意図しない吐出が発生するのを防ぐことができる。ただし、制振が強すぎるとサテライト滴が発生しやすくなるため、制振は吐出パルスによって発生する残留振動の強さに応じて、意図しない吐出が発生しない最低限の強さだけ行うことが望ましい。これによりサテライト滴がミスト化するのを抑制したり、サテライト滴の着弾による画像品質の低下を防いだりすることができる。
図23(a)に示す大滴の強い制振波形では、図22の共通駆動信号から時刻T3〜T4までの吐出パルスは選択し、T4〜T5は選択しない。これにより、T4〜T5の間は電位が一定に保持される。そして、大滴最終吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から制振波形の立ち上がり要素までの時間Taが個別液室液体振動周期Tcの半分となるタイミング、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろにずれたタイミングであるT5(Ta=Tc×(n−1/2):n=自然数)で再び共通駆動信号からの選択信号をONにし、選択信号を利用して共通駆動信号にはなかった垂直形状の波形を印加させる。これにより吐出パルス後の残留振動に対して180°位相がずれた微振動を与えて、強い振動抑制効果を得ることができる。
さらに、本実施例においては、振動抑制波形は垂直形状の立ち上がりを持つ波形であるので、共通駆動信号よりも強い振動抑制効果を得ることができる。そしてその後は共通駆動信号通りに中間電位に戻る。
一方、図23(b)に示す小滴の弱い制振波形は、前記T5より少し後(又は少し前)のタイミングで共通駆動信号により印可される。このときT5は小滴吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から制振波形の立ち上がり要素の中間時刻までの時間Tbが、式(1)を満たすように設定される。
このタイミングで、インク室を微収縮させ(すなわち、外部方向に滴が吐出しない程度の微変位を与え)ることで、滴吐出後のメニスカスの振動を弱く制振することができる。
このように、選択信号の切り替えで共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、大滴と小滴で異なる強さの制振波形を入れることができる。この方法であれば、共通駆動信号に複数の制振波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
また、図示はしないが、本実施例においては、大滴、中滴、小滴それぞれについて選択信号のタイミングをずらすことで同一の共通駆動信号から異なる強さの制振を実施することができる。この時、駆動周期あたりの吐出パルスが多い場合ほど、強い残留振動が残るため、強い制振を行うことが望ましい。この場合においても、共通駆動信号に残留振動抑制波形とサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
なお、第5実施例及び第6実施例においては、吐出パルス後の残留振動と逆位相であるタイミングT5で印加電圧を立ち上げて大滴用の強い制振波形を作成して液室を収縮させていた。しかし、例えば図16(a)のタイミングのように、吐出パルス後の残留振動と同位相で印加電圧を立ち下げて、大滴用の強い制振波形を作成して液室を膨張させてもよい。
また、吐出パルス後の残留振動と逆位相から少しずれて印加電圧を垂直に立ち上げることで、小滴用の弱い制振波形を作成して、液室を収縮させていたが、吐出パルス後の残留振動と同位相から少しずれて印加電圧を立ち下げることで、弱い制振波形を作成して液室を膨張させてもよい。
なお、弱い制振波形を作る際に同位相から少しずれて印加電圧を立ち下げる場合は、最終吐出パルスの収縮の立ち上がり要素の中間時刻から弱い制振波形の垂直立ち下がり時間Tbとすると、時間Tbが、以下の式(2)を満たすように設定される。
次に、第7実施例〜第9実施例について、サテライト短縮波形の加振の強さを調整する例を示す。この構成は、残留振動の加振が問題になりやすい高粘度インクを使用する液体吐出ヘッドや、インク粘度が上昇する低温領域での駆動において特に有効である。
<<第7実施例>>
図24、25は本発明の第7実施例を説明する図である。図24は本実施例の共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示すグラフである。本実施例の微調整波形は残留振動抑制波形(制振波形)ではなく、強いサテライト短縮(強加振波形)である。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に1つの微駆動パルス、T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、T2〜T3の区間に1つの吐出パルス、T3〜T4の区間に1つの吐出パルス、T4〜T6の区間に強加振波形を持っている。
各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって本実施例では、小滴波形は1つの吐出パルスと強いサテライト短縮波形を有する。中滴波形は2つの吐出パルスと強加振波形の一部を使用した弱加振波形を有し、大滴波形は4つの吐出パルスと強加振波形の一部を使用した弱加振波形を有する。
加振波形とは、一般により吐出パルスによって励起された残留振動と同じタイミングで印加する波形で、これにより、残留振動が小さくサテライトが発生しやすい波形でも、主滴とサテライト滴の速度差により、記録媒体上で主滴とは離れた位置に分離してサテライト滴が着弾してしまうのを防ぐことができる。
図25は、図24に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された大滴の駆動信号と小滴の駆動信号である。小滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6がサテライト短縮波形となっている。図25(b)は小滴の時刻T3〜T4の吐出パルスと時刻T4〜T6のサテライト短縮波形である。図25(b)に示すように、サテライト短縮波形は、吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻からサテライト短縮波形の立ち下がり要素の中間時刻までの時間Tbが個別液室液体振動周期Tcと同じになるタイミングで印加し(Tb=Tc)、吐出パルス後の残留振動に対して同位相の微振動を与えることで振動を加振させ、サテライト滴の速度を加速させる。
図25(a)に示す大滴の弱い加振波形では、図24の共通駆動信号から時刻T3〜T4までの吐出パルスは選択し、T4〜T5は選択しない。これにより、T4〜T5の間は電位が一定に保持される。そして、前記Taより少し後のタイミングT5で再び共通駆動信号からの選択信号をONにし、選択信号を利用して共通駆動信号にはなかった垂直形状の波形を印加させる。
なお、中滴の駆動信号は、共通駆動信号の時刻T2〜T4を選択し、T4〜T5は選択せず、T5〜T6を選択したもので、時刻T4〜T6は大滴同様に弱加振波形となっているため、詳細説明は割愛する。
このとき、T5は大滴吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から加振波形の立ち上がり要素の中間時刻までの時間Taが、以下の式(3)を満たすように設定される。
このタイミングで、インク室を微収縮させ(すなわち、外部方向に滴が吐出しない程度の微変位を与え)ることで、滴吐出後のメニスカスの振動を弱く加振することができる。そしてその後は共通駆動信号通りに中間電位に戻る。
このように、選択信号の切り替えで共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、小滴には強い加振波形、大滴には弱い加振波形を入れることができる。この方法であれば、共通駆動信号に複数のサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
<<第8実施例>>
図26、27は上記第7実施例の変形例としての第8実施例を説明する図である。本実施例においては、多くのパルスを用いる滴種ほど、サテライト短縮波形による加振を弱める構成を明らかにする。ここで、多数のパルスを共振するタイミングで連続して並べる大滴波形においては吐出パルスによる残留振動が非常に大きくなる。そこで、大滴について、上述のサテライトを短縮する加振波形の代わりに、切り替えタイミングを調整して残留振動を抑制する制振波形を用いることがあり、その制振波形を利用する方法を説明する。
図27は本変形例の共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示す。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に1つの微駆動パルス、T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、T2〜T3の区間に1つの吐出パルス、T3〜T4の区間に1つの吐出パルス、T4〜T6の区間に強加振波形を持っている。
各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって本変形例では、小滴波形は1つの吐出パルスと強いサテライト短縮波形を有する。中滴波形は2つの吐出パルスと強加振波形の一部を使用した弱加振波形を有する。大滴波形は4つの吐出パルスと強加振波形の一部を使用した残留振動抑制波形を有する。
図27は、図26に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された小滴、中滴、大滴の駆動信号である。
まず、図27(b)において、小滴(第2滴サイズ)の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T6を選択する。時刻T4〜T6が強いサテライト短縮波形となっている。この小滴のサテライト短縮波形は、吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻からサテライト短縮波形の立ち上がり要素の中間時刻T5までの時間Tbが個別液室液体振動周期Tcと同位相なるタイミングで印加し、吐出パルス後の残留振動に対して同位相の、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろのタイミングで、立ち上がり微振動を与えることで振動を強く加振させ、サテライト滴の速度を強く加速させて、加圧液室106を微収縮させる(Tb=Tc×n:n:自然数)。
図27(a2)において、中滴(第1滴サイズ)の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T4を選択し、T4〜T5−1は選択せずに、T5−1〜T6を再び選択する。これにより、T4〜T5−1の間は電位が一定に保持される。そして、図27に示す滴吐出後のメニスカス残留振動が同位相となるタイミングT5より少し後のタイミングT5−1において、再び共通駆動信号からの選択をONにする。即ち、共通駆動信号の加振波形の途中で、中滴用の選択信号が切り替わることにより、中滴に対応する印加電圧について、微調整波形の一部を、吐出パルス及び微調整波形が持たない垂直形状の立ち上がりを有する波形を印加する。
印加電圧がこのタイミングで瞬時に垂直に立ち上がることにより、上記強いサテライト短縮波形より残留振動の位相に対してずれた位相で駆動素子に印加され、メニスカスの残留振動が弱く加振される。そしてその後は共通駆動信号通りに中間電位に戻る。この時、T5−1は下記の式(4)を満たす値である。ここで、最終吐出パルスの収縮の立ち上がり要素の中間時刻から加振波形の垂直立ち上がり時間T5−1までの期間をTx−1とする。
式(4)のT
X−1の範囲は、第7実施例の弱い加振波形の立ち上がりタイミングを示す式(3)の範囲と同一である。よって、中滴は、小滴より弱いサテライト短縮波形となっている。
図27(a1)において、大滴(第3滴サイズ)の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T4を選択し、T4〜T5−2は選択せずに、T5−2〜T6を再び選択する。時刻T4〜T6(T5−2〜T6)はサテライト短縮効果のない制振波形(残留振動抑制波形)となっている。
大滴においては、図26の共通駆動信号から時刻T1〜T4までの吐出パルスは選択し、T4〜T5−2は選択しない。これにより、T4〜T5−2の間は電位が一定に保持される。そして、図27に示す滴吐出後の前記T5よりも後のメニスカス残留振動が同位相となるタイミングT5、及びその後のT5−1よりもさらに後のT5−2において、再び共通駆動信号からの選択をONにする。即ち、共通駆動信号の加振波形の途中で、大滴用の選択信号が切り替わることにより、大滴に対応する印加電圧について、微調整波形の一部を、吐出パルス及び微調整波形にはなかった垂直形状の立ち上がりを有する波形を印加する
なお、大滴の波形について、印加電圧が立ち上がる時刻T5−2が、例えばメニスカス残留振動が同位相であるT5よりもメニスカス残留振動の逆位相に近い場合は、抑制波形となる。この時、時刻T5−2が以下の式(5)を満たす場合、大滴の波形がメニスカスの残留振動抑制波形となる。ここで、最終吐出パルスの収縮終端からT5−2までの期間をTx−2とする。
式(5)のT
x−2の範囲は、第5、第6実施例の弱い制振波形の式(1)の範囲と同一である。従って、大滴の波形はサテライト短縮効果のない制振波形(残留振動抑制波形)となっている。なお、大滴の波形の立ち上がりタイミングT5−2を、同位相に近く、式(3)を満たす範囲に調整すれば、中滴よりもさらに弱い加振波形とすることもできる。
この第8実施例において、1駆動周期内で印加する吐出パルスが多く液滴のサイズが大きいほど、加振効果が小さくなるタイミングで前記液室を収縮させるように調整している。
このように、選択信号の切り替えで共通駆動信号とは異なる波形を作り出すことで、小滴、中滴で異なる強さのサテライト短縮波形を入れ、大滴で制振波形を入れることができる。この方法であれば、共通駆動信号に複数のサテライト短縮波形を別々に設ける必要がなく、波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能となる。
なお、本実施例では小滴、中滴を強さの異なる加振波形とし、大滴だけ制振としたが、パルス数が多くなるにつれて加振が弱まり、制振が強まる組み合わせであれば、中滴についても、加振波形でなく制振波形にしても良い。制振、加振の選択は各滴種の残留振動の大きさと、許容されるサテライト長によって決まる。すなわち、許容されるサテライト長が短く、また残留振動が小さいほど強加振波形のタイミングとすることが望ましく、逆の場合は弱い加振、または制振のタイミングとすることが望ましい。
<<第9実施例>>
図28及び図29は本発明の第9実施例を説明する図である。図28は本実施例の共通駆動信号と大・中・小滴と微駆動の選択信号を示すグラフである。本実施例の微調整波形は、弱い加振波形である。共通駆動信号は時刻T0〜T1の区間に1つの微駆動パルス、時刻T1〜T2の区間に2つの吐出パルス、時刻T2〜T4の区間に1つの吐出パルス、時刻T4〜T6の区間に弱い加振パルスを持っている。
各選択信号はONの時にヘッドに共通駆動信号を印加し、OFFのときは印加しない。したがって本実施例では、大滴波形は4つの吐出パルスと弱いサテライト短縮波形(弱加振波形)を有し、中滴波形は2つの吐出パルスと弱加振波形を有する。小滴波形は1つの吐出パルスと弱加振波形の一部を使用した強加振波形を有する。
図29は、図28に示す選択信号によって共通駆動信号から選択された小滴の駆動信号と大滴の駆動信号である。小滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T3〜T6を選択する。時刻T4〜T6が弱い制振波形となっている。一方、大滴の駆動信号は共通駆動信号の時刻T1〜T4を選択し、T4〜T5は選択せずに、T5〜T6を再び選択する。時刻T4〜T6が強い制振波形となっている。
図29(a)に示す小滴の強い加振波形では、図28の共通駆動信号から時刻T3〜T4までの吐出パルスは選択し、T4〜T5は選択しない。これにより、T4〜T5の間は電位が一定に保持される。そして、小滴最終吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から加振波形の立ち上がり要素までの時間Taが個別液室液体振動周期Tcと同位相となるタイミング、もしくはそこからさらにTcの自然数倍だけ後ろにずれたタイミング、であるT5で再び共通駆動信号からの選択信号をONにし、選択信号を利用して共通駆動信号にはなかった垂直形状の波形を印加させる。これにより吐出パルス後の残留振動に対して同位相で立ち上がる微振動を与えて、強い加振効果を得ることができる。
さらに、本実施例においては、加振波形は垂直形状の立ち上がりを持つ波形であるので、共通駆動信号よりも強い加振効果を得ることができる。そしてその後は共通駆動信号通りに中間電位に戻る。
図29(a)に示すように、大滴の弱い加振波形は、前記T5より少し後のタイミングで共通駆動信号により印可される。このときT5は大滴最終吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から加振波形の立ち上がり要素の中間時刻までの時間Taが、式(6)を満たすように設定される。
このタイミングで、インク室を微収縮させ(すなわち、外部方向に滴が吐出しない程度の微変位を与え)ることで、滴吐出後のメニスカスの振動を弱く加振することができる。
このように、大滴の弱いサテライト短縮波形と小滴の強いサテライト短縮波形を、共通駆動信号の中の弱いサテライト短縮波形の一部から選択信号を利用して形成することで、滴種に応じた制御波形を入れることができる。そして、この方法であれば、共通駆動信号に大滴用の制振波形と小滴用のサテライト短縮波形を設ける必要がないので、波形長を短縮でき、高周波駆動が可能となる。
なお、第7実施例〜第9実施例においては、吐出パルス後の残留振動と同位相であるタイミングT5で印加電圧を立ち上げることで、小滴用の強い加振波形を作成して液室を収縮させていた。しかし、例えば図16(a)のタイミングのように、吐出パルス後の残留振動と逆位相で印加電圧を立ち下げることで、強い加振波形を作成して液室を膨張させてもよい。
また、吐出パルス後の残留振動と同位相の少し後で印加電圧を垂直に立ち上げて液室を収縮させることで、大滴又は中滴用の弱い加振波形を作成していたが、吐出パルス後の残留振動と逆位相から少しずれて印加電圧を垂直に立ち下げることで、弱い加振波形を作成しても液室を膨張させてもよい。なお、弱い加振波形を作る際に逆位相で印加電圧を立ち下げる場合は、大滴最終吐出パルスの立ち上がり要素の中間時刻から加振波形の立ち下がり要素(の中間時刻)までの時間Taが、以下の式(3)を満たすように設定される。
上述のように、本発明では、共通駆動信号から一部あるいは複数部を選択することで、複数の滴種の駆動信号を使い分ける駆動方式において、複数滴種の中に残留振動を抑制させたい滴種とサテライトを短縮させたい滴種が混在している場合に、駆動周波数を低減させることなく、滴種ごとの残留振動抑制とサテライト短縮を実現することが可能になる。これにより、印刷動作の高速化と高画質化が両立できる。
或いは、複数滴種の中に、残留振動の大きさが異なる単パルス滴種と多パルス滴種が混在している場合に、駆動周波数を犠牲にすることなく、意図しない吐出による画像不具合を発生させず、滴種ごとのサテライト短縮又は滴種ごと残留振動抑制を実現することができる。
なお、本発明のインクジェット記録装置とは、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置を含む。
((ライン型画像形成装置への搭載))
ここで、図1、図2では本発明の液滴吐出ヘッド34はシリアル型画像形成装置1に搭載されていたが、下記に本発明の液滴吐出装置を搭載する別の例として、図30、図31を参照してライン型画像形成装置について、説明する。
図30は本発明に係る液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置を含むライン型画像形成装置1Aの構成を示す側面断面図である。本発明に係る画像形成装置1Aは、ライン型画像形成装置であり、装置本体9、給紙トレイ2、排紙トレイ3a、搬送ユニット4、画像形成ユニット5、ヘッドクリーニング装置8、搬送ガイド部7を有している。
給紙トレイ2は用紙Sを積載し給紙する。排紙トレイ3aは印刷された用紙Sを排紙積載する。搬送ユニット4は用紙Sを給紙トレイ2から排紙トレイ3aまで搬送する。画像形成ユニット5は搬送ユニット4によって搬送される用紙Sに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドモジュールアレイ(キャリッジ)330を含む。ヘッドクリーニング装置8は印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各ヘッドモジュールアレイ330の複数のヘッドの維持回復を行う維持回復機構である。搬送ガイド部7はヘッドクリーニング装置8を開閉する。
また、本搭載例の画像形成装置は、画像形成ユニット5のヘッドモジュールアレイ330にインクを供給する図示しないサブタンク350や図示しないメインタンクで構成されるインク供給系をさらに備えている。なお、被記録媒体である用紙Sには、紙に限られず、OHPシートなどの他の材料からなるシートも用いられる。
装置本体9は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Sは、分離ローラ210及び給紙ローラ220によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ410Aと搬送従動ローラ410Bと、これらのローラ410A、410B間に掛け回された無端状の搬送ベルト430とを備えている。この搬送ベルト430の表面には複数の図示しない吸引穴が形成されており、搬送ベルト430の下部には用紙Sを吸引する吸引ファン440が配置されている。また、搬送駆動ローラ410A、搬送従動ローラ410B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ420A、420Bが図示しないガイドに保持されて、自重にて搬送ベルト430に当接している。
搬送ベルト430は、搬送駆動ローラ410Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Sは搬送ベルト430上に吸引ファン440により吸い付けられ、搬送ベルト430の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ410B、搬送ガイドローラ420A、420Bは搬送ベルト430に従動して回転する。
搬送ユニット4の上部には、用紙Sに印字する液滴を吐出するヘッドモジュールアレイ330で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはヘッドクリーニング装置8上方まで移動し、画像形成時には図30の位置に戻される。
画像形成ユニット5は、搬送ベルト430上に吸着保持されて搬送される用紙Sに対して4色分のインク(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK)の液滴を吐出するライン型記録ヘッドを構成するヘッドモジュールアレイ330を有している。
ヘッドモジュールアレイ330では、各列の記録ヘッド340にインクを分配して供給する分岐部材54が一体に設けられている。分岐部材54にはサブタンク350からインクが供給され、サブタンク350にはインクカカートリッジ等のメインタンクからインクが供給される。なお使用するインク色はこれら4色に限らず再現する色や階調の領域を拡大するためにレッド、グリーン、ブルー、グレー等の色を加える構成となる場合もある。
図31は図30のライン型画像形成装置1Aの上面図である。図31にて、ヘッド配列方向(図31においてX方向、用紙搬送方向に対して直交する方向)において隣り合う2つの記録ヘッド340の端部の1又は複数のノズルが重なり合う(重複する)ように記録ヘッド340は配列されている。これにより、2つの記録ヘッド340それぞれのノズルによって同じ記録位置(ドット位置)に記録を行うことができる。この同じ記録位置に記録を行うことのできる記録ヘッド340の端部のノズルを「重複ノズル」といい、重複ノズルの領域は繋ぎ部、ノズル列重複部分、重複ノズル領域(又は部分)若しくはオーバーラップ領域(又は部分)等ともいわれる。
搬送ユニット4の下流側には用紙Sを排紙トレイ3aに排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Sは排紙トレイ3aに排紙される。排紙トレイ3aは、用紙Sの幅方向を規制する対のサイドフェンス37と用紙Sの先端を規制するエンドフェンス38を備えている。
ヘッドクリーニング装置8には、画像形成ユニット5の各記録ヘッドの各ヘッド340に対応するキャップ部材84、図示しないワイパ部材、及び吸引ポンプ85が配置されている。吸引ポンプ85はキャップ部材84で記録ヘッド340のノズル面(ノズル104が形成された面、図4参照)をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する。
また、この画像形成装置1Aにおいては、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ410Bを支点に矢印B方向に回動可能である。印刷中、搬送ユニット4は図30の実線で示す位置にある。印刷終了後、クリーニング(維持回復動作)時には、図30にも示すように、印刷停止後に、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ410Bを支点に矢印B方向に回動する。維持回復時とは、印刷終了後、液滴を吐出する記録ヘッド340の各記録ヘッドのノズル面をヘッドクリーニング装置8のキャップ部材84でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合である。又は、記録ヘッドの各ヘッド340のノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合であってもよい。
搬送ユニット4がBの位置にあると、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくなり、画像形成ユニット5の移動スペースを確保できる。このとき、ヘッドクリーニング装置8上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板73も支点74にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置8の上方が開放される。
その後、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置8上方で停止する。そして、キャップ部材84などが上昇して記録ヘッドの各ヘッド340のクリーニング動作に移行する。
このようなライン型画像形成装置において、上述のような本発明の液滴吐出装置を搭載しているので、高粘度インクを用いた普通紙高画質記録を高速で行うことができる。詳しくは、複数滴種を吐出するに際し、波形長を長くせず、駆動周波数を低減させることなく、残留振動を抑制させたい滴種の制振とサテライトを短縮させたい滴種の加振の両方を実現することできる。
或いは、複数滴種の中に、残留振動の大きさが異なる単パルス滴種と多パルス滴種が混在している場合に、駆動周波数を犠牲にすることなく、意図しない吐出による画像不具合を発生させず、滴種ごとのサテライト短縮又は滴種ごと残留振動抑制を実現することができる。
なお、本発明に係る画像形成装置は、例えば、プリンタ/ファックス/コピアの単機能機やこれらの複合機などの画像形成装置に適用することができる。また、インク以外の液体である記録液や定着処理液などを用いる画像形成装置、その他の前述したような各種の液体を吐出する液体吐出装置にも適用することができる。
なお、上述においては、本発明に係る液滴吐出ヘッドをインクジェットヘッドに適用したが、インク以外の液体の滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液滴吐出ヘッドなどにも適用することできる。
より詳しくは、本願において、液滴吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。ここで、媒体での紙とは、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。
さらに、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与し、単に液滴を媒体に着弾させること、記録、印字、印写、印刷等)をも意味する。
また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。