以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
((画像形成装置の構成))
まず、本発明に係る液滴吐出装置が搭載された画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。図1は画像形成装置1の全体構成を説明する側面概略図、図2は図1に示した画像形成装置のキャリッジ周辺の平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置である。図1、2に示す画像形装置1は、主に、画像形成部、給紙部A、搬送部B、排紙部C、維持回復部Dなどを備えている。
図2に示すように、画像形成部において、画像形成装置1の左右の側面には、側板21A、21Bが配列されている。側板21A、21Bにはガイドロッド31、32が横架されている。本発明に係る液滴吐出装置が搭載されたキャリッジ33は、ガイドロッド31、32により主走査方向に摺動自在に保持されている。キャリッジ33は、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2の矢印で示したキャリッジ主走査方向に移動走査する。
このキャリッジ33は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する複数の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を有する。各記録ヘッド記録ヘッド34a、34bには、複数のノズルからなるノズル列が、主走査方向と直交する副走査方向に配列されている。このキャリッジ33は、ノズル列のインク滴吐出方向を下方に向くように装着されている。
本発明の実施形態において、液滴吐出ヘッド(記録ヘッド)34は、複数の滴サイズの液滴を各々吐出する複数のノズル104と、その複数のノズル104と各々に連通する複数の液室(加圧液室)106と、その複数の液室106各々の内の液体に印加電圧の変化により圧力を発生させる複数の圧力発生手段(圧電素子)121Aを有している。
具体的に、図2の構成では、記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有している。記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を吐出する。記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、吐出する。なお、別の構成として、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備える記録ヘッドなどを用いてもよい。
キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するサブタンク35a、35bを搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
また、図1を参照して、給紙部は、用紙積載部41を有する給紙トレイ2、給紙コロ43、分離パッド44、ガイド部材45、カウンタローラ46、搬送ガイド47、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48を備えている。給紙コロ43に対向し摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44が給紙コロ43側に付勢されている状態で、用紙42は、用紙積載部41から1枚ずつ分離給送される。そして、この給紙トレイ2から給紙された用紙42は、ガイド部材45に案内され、カウンタローラ46と、搬送ガイド47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48により、記録ヘッド34の下側に送り込まれる。
また、搬送部は、搬送ベルト51、搬送ローラ52、テンションローラ53を備えている。搬送ベルト51は給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送する。搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されており、図示しない副走査モータによってタイミングよく搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動する。
また、この搬送ベルト51の表面を帯電させる帯電手段として、帯電ローラ56が配置されている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙する排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離する分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、画像形成装置1の装置本体の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度、カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復する維持回復機構81が配置されている。この維持回復機構81は、キャップ82a、82b、ワイパーブレード83、空吐出受け84、キャリッジロック87などを備えている。キャップ82a、82bは記録ヘッド34a、34bの各ノズル面をキャピングする。ワイパーブレード83はノズル面をワイピングする。空吐出受け84は、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける。キャリッジロック87はキャリッジ33の位置を固定する。このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容する廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着されている。
また、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88が配置されている。この空吐出受け88は、記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置でのプリント動作について説明する。給紙トレイ2から1枚ずつ分離給紙され略鉛直上方に給紙された用紙42は、ガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド47で案内される。その後、先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧が印加されて、帯電ローラ56が交番電流による帯電電圧パターンを用いて搬送ベルト51を帯電する。この帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、キャリッジ33を搬送ベルト51の上の位置に動かし、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分の画像形成を行う。用紙42が搬送ベルト51により所定量搬送された後、キャリッジ33が次の行の画像形成を行う。画像形成終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、キャリッジ33の画像形成動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動させる。維持回復機構81は、キャップ82a、82bによるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行う。このような動作により、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
このようなインクジェット記録装置からなる画像形成装置において、下記に説明する本発明を実施した液滴吐出装置を搭載しているので、高粘度インクを用いた普通紙高画質記録を高速で行うことができる。
((液滴吐出装置の構成))
次に、本発明の液滴吐出装置である、記録ヘッドを構成している液滴吐出ヘッドの一例について図3〜図5を参照して説明する。なお、図3は液滴吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は図3の液滴吐出ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液滴吐出ヘッドでは、流路板101と、この流路板101の下面に接合した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とが接合して積層されている。これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104、ノズル連通路105、圧力発生室である加圧液室106、流体供給路(抵抗部)107、共通液室108、インク供給口109などを形成している。
加圧液室106のインクは、ノズルと連通する流路であるノズル連通路105を通って、ノズル104から吐出される。その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室106内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室106内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。このとき、インクタンク(サブタンク)35から供給されたインクは共通液室108に流入し、共通液室108からインク供給口109を経てインク供給路107を通り、加圧液室106内に充填される。
また、液滴吐出ヘッドは、振動板102を変形させて加圧液室106内のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)であり、電気機械変換素子として機能する2個(図3では1列のみ図示)の積層型圧電部材121を備えている。
また、この圧電部材121を接合固定し、圧電部材121などとともにアクチエーターユニットを構成するベース基板122が配置されている。この圧電部材121では、分割しないスリット加工で溝を形成することで複数の圧電素子121A、支柱部材121Bが形成されている。この例では、圧電素子121Aは駆動波形を印加する駆動圧電素子柱とし、支柱部材121Bは駆動波形を印加しない非駆動圧電素子柱としている。また、圧電部材121の圧電素子121Aには図示しない各圧電素子121Aに選択的に駆動波形を印加する駆動回路(駆動IC)と接続したFPCケーブル126が接続されている。
圧電部材121の一端面の端面電極はハーフカットによるダイシング加工で分割されて個別電極154となり、他端面の端面電極は切り欠き等の加工による制限で分割されずにすべての圧電素子121Aで導通した共通電極153となる。共通電極153は、圧電素子121Aの端部に電極層を設けて回し込んでFPCケーブル126のグラウンド(GND)電極に接続している。
そして、振動板102の周縁部がフレーム部材130に接合されている。フレーム部材130には、圧電部材121やベース基板122等からなるアクチュエータユニットを収納する貫通部131と、共通液室108として機能する凹部と、共通液室108に外部からインクを供給する供給口であるインク供給穴132とが形成されている。
図5は、図3の液滴吐出ヘッドの液室平面方向に沿う断面図である。振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他の金属板や樹脂板或いは金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。
この振動板102は加圧液室106に対応する部分に変形を容易にする厚みが2〜10μmの薄肉部(ダイアフラム部)102−2及び圧電素子121Aと接合する厚肉部(島状凸部)102−1Aを形成する。また、振動板102は支柱部121Bに対応する部分及びフレーム部材130との接合部にも厚肉部102−1Bを形成する。平坦面側を流路板101に接着剤接合し、島状凸部102−1Aを圧電素子121Aに接着剤接合し、更に厚肉部102−1Bを支柱部121B及びフレーム部材130に接着剤123で接合している。なお、ここでは、振動板102を2層構造のニッケル電鋳で形成している。この場合、ダイアフラム部102−2の厚みは3μm、幅は35μm(片側)としている。
ノズル板103は各加圧液室106に対応して直径10〜35μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103としては、ステンレス、ニッケルなどの金属、金属とポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂との組み合せ、シリコン、及びそれらの組み合わせからなるものを用いることができる。ここでは、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成している。また、ノズル104の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成し、このノズル104の穴径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmとしている。さらに、各列のノズルピッチは150dpiとし、2列配置により300dpiとしている。
また、ノズル板103のノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けている。撥水処理層としては、例えば、PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたものや、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定して形成される。このような撥水処理膜により、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
圧電部材121は、厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電材料151と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極152とを交互に積層したものである。内部電極152は、交互に端面の端面電極(外部電極)である個別電極154、共通電極153に電気的に接続されている。
圧電素子121Aの圧電常数はd33あり、この圧電素子121Aが受ける印加電圧の変化による伸縮により加圧液室106を収縮、膨張させている。圧電素子121Aは駆動信号が印加され充電が行われると伸長し加圧液室106を膨張させ、また圧電素子121Aは充電された電荷が放電すると反対方向に加圧液室106を収縮するようになっている。
このように構成した液滴吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子121Aに印加する電圧を基準電位Veから下げる(駆動波形10〜50Vのパルス電圧等を印加する)ことによって駆動圧電素子121Aが収縮する。よって、振動板102が下降して液室106の体積が膨張することで、液室106内にインクが流入する。
その後、圧電素子121Aに印加する電圧を上げて駆動圧電素子柱である圧電素子121Aを積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の体積を収縮させる。この動作により、液室106内のインクが加圧され、ノズル104からインク滴が吐出(噴射)される。
そして、駆動圧電素子柱121Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出の動作に移行する。
なお、一般に、インクジェットヘッドで振動板を使用するものについては、押し打ち法、引き打ち法、これらを組み合わせた方法で駆動するものがある。押し打ち法での駆動では、振動板を加圧室側に押し込み、加圧室内の容積を小さくすることでインク滴を吐出させる。引き打ち法での駆動では、振動板をインク室の外側方向の力で変形させインク室内の内容積を広げた状態から元の容積になるように振動板の変位を元に戻すことでインク滴を吐出させる。
上述のヘッドの駆動方法については上記のように、(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
((制御部))
次に、液滴吐出装置300が搭載された、画像形成装置1の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、図6は画像形成装置1の制御部500とその周辺のブロック説明図である。
この制御部500は、CPU501、ROM502、RAM503、不揮発性メモリ504、ASIC505を備えている。CPU501は画像形成装置1全体の制御を司るとともに、本発明に係る空吐出動作の制御を行う。ROM502は、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データが格納する。RAM503は画像データ等を一時格納する。不揮発性メモリ504は書き換え可能に、装置の電源が遮断されている間もデータを保持する。ASIC505は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御する入出力信号の処理を実行する。
さらに、制御部500は、印刷制御部508、ヘッドドライバ(ドライバIC)509、モータ駆動部510、ACバイアス供給部511、搬送速度取得抽出部516などを備えている。印刷制御部508は記録ヘッド34を駆動制御するデータ転送手段と駆動信号発生手段を含む。ヘッドドライバ509はキャリッジ33側に設けられ、記録ヘッド34を駆動する。モータ駆動部510はキャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81のキャップ82やワイパーブレード83の移動などを行う維持回復モータ556を駆動する。ACバイアス供給部511は、帯電ローラ56にACバイアスを供給する。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行う操作パネル514が接続されている。
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うインターフェースI/F506を持っている。パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506でデータや信号を受信する。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送する。また、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。それ以外にも、ROM502に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部701(図7〜図9参照)を含む。印刷制御部508の駆動信号生成部が、1又は複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる共通駆動信号Pvの駆動波形を構成する駆動パルスP1〜P5(図10参照)を選択して印加電圧の第2の変化とする。さらに、液制御信号M0〜M3を基に生成されるデジタル信号MNにより、印加電圧にステップ的な変化である第1の変化を起こす。このように生成された印加電圧を圧電素子121Aに対して印加する。圧電素子121Aは記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段であり、記録ヘッド34を駆動する。
このとき、印加電圧の第2の変化を構成する駆動パルスP1〜P5の一部又は全部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。なお、大滴は、大ドットを形成し、中滴は中ドットを形成し、小滴は小ドットを形成する。
搬送速度取得抽出部516は記録ヘッド34の移動速度、及び記録媒体の搬送速度をモータ駆動部510で検知して取得し、ヘッドドライバ509、あるいは印刷制御部508に出力する。なお、構成例によっては搬送速度取得手段516は設けなくても構わない。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出する光学センサや、機内の温度を監視するサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
次に、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の構成例について図7〜図9を参照して説明する。図7、図8、図9は、本発明の液滴吐出装置300のブロック図である。なお、本発明において、印刷制御部508、ヘッドドライバ509、及び記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)34を合わせて液滴吐出装置300としている。
図7〜図9共通の構造として、印刷制御部508は駆動波形生成部701と印字データ作成部702を備えている。
駆動波形生成部701は画像形成時に1印刷周期内でそれぞれ液滴を吐出させる駆動波形を基となる複数の駆動パルスP1〜P5と制振波形とを時系列で含む共通駆動信号Pvを生成して出力する。
なお、印刷制御部508は、空吐出駆動波形生成部(不図示)を備えてもよく、空吐出動作を行うときに、空吐出駆動波形を生成して後述するヘッドドライバ509のアナログスイッチドライバ717へ出力する。なお、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Pvと空吐出駆動波形生成部からの空吐出駆動波形とは選択的に生成され、あるいは、生成後選択的にアナログスイッチドライバ717へ入力される。
印字データ作成部702は、入力された画像データを基にして、印刷画像に応じた2ビットの印字データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号(M0〜M3等)を生成し、出力する。なお、生成する印字データ、滴制御信号の数は構成例ごとに異なる。
ここで、印字データとは、何(何色のどのサイズの液滴)をどこに打つという情報になり、生成されたこの時点ではあるクロックタイミング区間内でどうON・OFFするのかというデータではなく、単にある画素では大滴、中滴、小滴のどれかであることを示すデータである。クロック信号は、1回の吐出動作に該当する共通駆動信号Pvの駆動波形の印刷周期を規定する。
滴制御信号M0〜M3は、後述の図10で説明するように形成する画像に対応する画素値(諧調パターン)を表す液滴のサイズを分類して、適切な液滴サイズを選択するのに利用される。具体的に、滴制御信号M0〜M3は、ヘッドドライバ509のアナログスイッチドライバ717のオンオフを滴毎に指示する2ビットの信号である。滴制御信号M0〜M3は共通駆動信号Pvの駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき駆動パルス又は波形成分でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。即ち、この液制御信号M0〜M3は、共通駆動信号Pvから1又は複数の前記駆動パルスを選択させる吐出可能状態を示し、この滴制御信号M0〜M3を基に、各種デジタル信号MN0〜MN2が生成される。
図7〜図9共通で、ヘッドドライバ509は、第1シフトレジスタ711、第1レジスタ712、第2シフトレジスタ713、レジスタ714、セレクタ715、レベルシフタ716、アナログスイッチドライバ717を備えている。このように、シフトレジスタとレジスタを用いてデータ転送するのは、同時並列処理のための公知の工夫である。
第1シフトレジスタ711には印字データ作成部702からの印字データが入力されている。第1レジスタ712には、第1シフトレジスタ711からのデータと印字データ作成部702からのクロック信号が入力されている。
第2シフトレジスタ713には印字データ作成部702からの滴制御データが入力されており、第2レジスタ714には第2シフトレジスタ713からのデータ等が入力されている。
第2レジスタ(MN)714デジタルMNxの定義データを表す信号を出力する。即ち、定義データとは、MN00とは何か、MN01とは何か等を解釈するために、アナログスイッチドライバ717におけるON/OFFのタイミング定義情報を提供する。なお、実際はデジタル的な0/1の情報になる。(滴制御信号あるいは調整されたもの:M0、M1、M2、M3)
第2レジスタ714にて扱う情報は3×3で9つになるので、少なくとも第2レジスタ714は9bit必要になる。(MN大fast、MN大normal、MN大slow、MN中fast、MN中normal、MN中slow、M2→MN小fast、MN小normal、MN小slow)なお、微滴の制御を行う場合は10Bit必要になる。
セレクタ715は第2レジスタ714からの切替タイミングに係るデータと第1レジスタ712からの印字データ、クロックに係るデータが入力されている。セレクタ715は、入力されたデータに基づき、その滴制御データを用いるか、選択する。
レベルシフタ716はセレクタ715からのデータ(電圧信号)が入力されており、セレクタ715からの入力されたロジックレベル電圧信号をアナログスイッチドライバ717が動作可能なレベルへとレベル変換する。レベルシフタ716で変換され、出力された信号がデジタル信号MNとなる。即ち、レベルシフタ716の時点では、「チャンネルごとに、あるクロックタイミング区間(1画素に対応)でどうON・OFFするかという情報を持っている状態」になる。
アナログスイッチドライバ717は、レベルシフタ716からのデジタル信号MNに応じて印加電圧の出力をON/OFF(開閉)する。より詳しくは、アナログスイッチドライバ717は、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Pvとレベルシフタ716からの印加電圧の生成に用いるデジタル信号MNxが入力されている。したがって、印字データ(階調データ)と液制御信号M0〜M3が反映されたデジタル信号MNに応じてアナログスイッチドライバ717がオンにすることにより、この切替タイミングで印加電圧にステップ的な第1の変化を起こして圧電素子121Aへ出力される。また、共通駆動波形Pvにより、印加電圧に第1の変化とは異なる第2の変化を起こす。
より詳しくは、駆動波形生成部701から、クロックタイミングごとに基準駆動波形Pvがアナログスイッチドライバ717に対して(192ch並列に)常に加えられている状態になっている。よって、レベルシフタ716からきているチャンネルごとのどうON/OFFするかという情報(デジタル信号MN)がHの部分に基づいて、クロックタイミング単位でチャンネルごとに与えられるべき波形を、印加電圧として圧電素子へ与える。
下記に具体的な構成例について説明する。
(第1構成例)
図7に印刷制御部508及びヘッドドライバ509の第1構成例を示す。本構成例の図7において、上述の共通の構造に追加して、ヘッドドライバ509には、条件をフィードバックする先である定義データ切替手段718が、定義情報を提供する第2レジスタ714に併設されている。
さらに、ヘッドドライバ509は、搬送速度取得抽出部516と接続されている。搬送速度取得抽出部516は例えば、エンコーダセンサ等を含み、設定されたヘッド移動速度や吐出速度等のヘッドの特性に応じて、後述の高速化条件と低速化条件を予め抽出し、それらの抽出結果をヘッドドライバ509の定義データ切替手段718へ入力する。
本構成例では、搬送速度の変動に対応して、MN信号の定義データを生成後に切り替える。より詳しくは、印字データ作成部702は異なる三つの液滴の大きさに対応する液制御データM0、M1、M2を出力する。このとき、微滴に対応するM3を出力してもよい。そして、印字データ作成部702は4値(3サイズ+微滴)の滴制御データ(印字データ)を生成する。
そして、搬送速度取得抽出部516によって抽出された条件によって定義データ切替手段718がslow/normal/fastの3種に対応する切替タイミングを調整して切り替える(図10、丸で囲まれた範囲参照)。即ち、定義データ切り替え手段718は、M1(normal)として提供すべきタイミング情報を、フィードバックされたヘッド・環境情報に基いてM0(fast)やM2(slow)に変更してから定義情報を第2シフトレジスタ713へ提供する。
そして、この提供された情報により、第2シフトレジスタ713、第2レジスタ714により切り替えタイミングの一部が切り替わり、セレクタ715により、適切な情報が選択される。
このとき、第2レジスタ714にて扱う情報は3×3で9つになるので、少なくとも第2レジスタ714は9ビット必要になる。なお、微滴がある場合は、10ビットあるとよい。
(第2構成例)
図8に印刷制御部508及びヘッドドライバ509の第2構成例を示す。図8において、本構成例の印字データ作成部702Aは、搬送速度取得抽出部516と接続された切替手段703を有する。本構成例ではヘッドドライバ509Aは定義データ切替手段を有さず、搬送速度取得抽出部516からのフィードバック先が、印字データ作成部702Aの切替手段703となる。
ここで、印字データ作成部702Aは、ある画素ではMNxであるというデータを、印字データ作成部702Aに設けた切替手段703によりフィードバックされた条件に基づいてMNxx(fast)にしたり、MNxx(slow)にしたりする。即ち、本構成例では、印字データそのものを作成する際に、搬送速度取得抽出部516で取得した速度情報に基づいて、速度の異なるslow/normal/fastの3種の速度成分を有するMNデータを作成する。即ち、印字データ作成部702Aが、9値の印字データを作成する。このとき、MN信号データとして9通り用意しておく必要があるため、第2レジスタ714Aに送られる液制御データは9種類必要となる。なお、さらに微駆動用(微滴)のMN信号を用意してもよく、MN信号は10通りとなってもよい。
そして、データ転送して、そのMNxx(例えば、slow)を解釈してセレクタ715、レベルシフタ716AにてON/OFFタイミングを取得して、アナログスイッチドライバ717にてchごとにそのON/OFFタイミングで駆動波形生成部701からの基準駆動波形Pvを選択すればよい。
(第3構成例)
図9に印刷制御部508及びヘッドドライバ509の第3構成例を示す。図9において、本構成例の印字データ作成部702Bは、パターン記憶部704、吐出履歴取得部705、印字データ補正部706を有する。ヘッドドライバ509Bは、上記第2構成例と同様の構成要素を有する。
本構成例では、印字データ作成部702Bが直前に吐出する滴サイズに応じた印字データの補正を行う。より詳しくは、印字データ作成部702Bにおいて、吐出履歴取得部705は前回吐出のサイズ(履歴)を取得する。パターン記憶部704は、予め前の滴のサイズに応じて、fast/normal/slowのどれを選ぶべきか、という対応関係を滴ごとに記憶している。そして、印字データ補正部706は、吐出履歴取得部705の前回吐出のサイズ(履歴)に基づいて、パターン記憶部704が記憶した対応関係を参照して、デジタル信号MNをfastにしたり、slowにしたり等印字データの補正を行う。なお、印字データの補正は、印字データ作成の時点、又は印字データを出力する前に行う。
即ち、本構成例では、印字データを作成する際に、パターン記憶部704で抽出された高速化条件、低速化条件に基づき、切替タイミングが調整された、速度の異なるslow/normal/fastの3種の速度成分を有するMNデータを作成する。即ち、印字データ作成部702Bが、9値の印字データを作成する。
このとき、MN信号データとして9通り用意しておく必要があるため、第2レジスタ714Bに送られる液制御データは9種類必要となる。なお、さらに微駆動用のMN信号を用意してもよく、MN信号は10通りとなってもよい。
以上の第1構成例〜第3構成例により、駆動制御部508、509は、アナログスイッチドライバ717のON/OFFによって元々共通駆動波形には存在しない電圧変動を生じさせており、その切り替えタイミングを異ならせている。さらに、このON/OFFの切り替えタイミングを条件によって調節している。
(信号の合成)
なお、ここで図10に共通駆動波形Pv、滴制御信号M0〜M2、と印加電圧についての対応関係を示す。滴制御信号は液滴のサイズに対応し、M0は大滴、M1は中滴、M2は小滴に対応するものである。図示はしないが、微滴用にM3を設定してもよい。
まず、共通駆動波形Pvを生成させるため、例えば図10のグラフのように、1印刷周期内でそれぞれ液滴を吐出させる複数の駆動パルスP1〜P5を時系列的に生成して、その駆動パルスP1〜P5を組み合わせて共通駆動波形Pvとして出力する。なお、図10では示していないが、M3は微滴を生成する際の滴制御信号を表す。
そして、一つの共通駆動波形Pvの中(区間P1〜P5)から一部あるいは複数部を所望の液滴サイズに応じて選択することで複数滴種(例えば大・中・小滴)の印加電圧の第2の変化を作り出している。より詳しくは、例えば相対的に大きなドットを形成するときには2以上の駆動パルスを選択して複数の液滴を吐出させることで、複数の液滴を飛翔中に合体させて着弾させることによって、複数の液滴サイズのドットを形成する。また、共通駆動波形中に滴吐出を伴わないでヘッドを駆動する非吐出パルスを含ませ、同様に非吐出パルスを選択することで微駆動を行うようにしてもよい。
具体的には、アナログスイッチドライバ717は、駆動波形生成部701から、クロックタイミングごとに基準駆動波形Pvが常に加えられている状態になっている。そこで、アナログスイッチドライバ717はレベルシフタ716からきているチャンネルごとのどうON/OFFするかというデジタル信号MNのHの部分によって、クロックタイミング単位でチャンネルごとに与えられるべき波形を印加電圧として合成して生成し、圧電素子121Aへ出力する。
より詳しくは、液制御信号M0〜M2がHになっている期間は、共通駆動信号Pvが選択可能状態、即ち、アナログスイッチドライバ717がONになっている期間であり、液滴のサイズごとに、選択されている駆動パルスP1〜P5が異なっている。この選択された共通駆動波形(選択駆動成分)Pvが印加電圧の第2の変化となる。
なお、本グラフの制御において、大・中・小・微滴での諧調は例えば、表1のように設定されている。なお、諧調は、デジタル化された画像の明るさの濃淡の段階数であり、256階調において、明るい画素ほど高い画素値(255)をとり、暗い画素ほど低い画素値(0)をとる。
このように生成された共通駆動波形Pvを液滴のサイズに合わせて選択的に利用する制御方法として、例えば、特開2011−62821号公報に記載されている。
ここで、図10での、駆動パルスの波形と制御動作の対応を説明する。駆動波形が基準電位から所定のホールド電位まで立ち下がる間は、膨張波形成分となり、圧電素子121Aが加圧液室106を膨張させる。駆動波形が立ち下がった電位(ホールド電位)を保持する間は、保持成分となり、加圧液室106の状態も保持される。駆動波形がホールド電位やその他の電位から立ち上がっている間は、収縮波形成分となり、加圧液室106を収縮させる。なお、ホールド電位とは当該駆動パルスのうちで最も加圧液室106を膨張させる状態の電位を意味する。
図10の波形は後述の図14〜16を用いて説明する共通駆動波形Pvと同一の波形である。なお、図10、14〜16では、印加電圧の第2の変化として、共通駆動波形Pvの中から、大滴の場合はすべての駆動パルス(駆動パルスP1〜P5)を選択し、中滴の場合は駆動パルスP3、P5の2つを選択し、小滴の場合は駆動パルスP5の1つを選択している。これらの印加電圧の第2の変化において、大滴ではP1の駆動パルス、中滴ではP3の駆動パルス、小滴ではP5の駆動パルスの開始点が膨張開始点となり、後述の切替タイミングの調整の対象となる。
なお、大滴では印加電圧の第2の変化はすべての駆動パルスを選択し、小滴では1つのP5の駆動パルスを選択しているので、一印刷周期において、デジタル信号は一回だけONになるが、中滴では2回ON/OFF切替が起こる。このように、印刷の1周期において複数回切り替えがある場合は、前回の吐出動作終了後、最初の駆動パルスの開始点が膨張開始点を、切替タイミングとして規定する(中滴ではP3)。
ここで、ステップ的に変化するとは、デジタル的に電圧を急俊(垂直)に立ち上げ又は立ち下げ、共通駆動波形Pvとは異なる波形で、電圧を変位させることをいう。なお、デジタル信号MNの切替が切替タイミングとして利用される際は、印加電圧は、切替タイミングで電位がステップ的に変化するため、デジタル信号MN切替時の立ち上がりと立下りで印加電圧の電圧値が異なる。デジタル信号MNの切替が切替タイミングとして利用されない場合は、デジタル信号MN切替時の立ち上がりと立下りで印加電圧での電位が同一である。
また、大滴、中滴、小滴、すべての印加電圧の第2の変化において、駆動パルスP5の終端が、最終パルスの収束終端点となっている(図10、矢印参照)。
なお、共通駆動波形Pvや印加電圧のパルスP6は、制振用パルスであり、直前の吐出動作によって発生したメニスカス振動の振幅を抑える効果を有するが、基本的に、本発明では、リフィル振動やメニスカス振動の新たな発生源とはならないと考える。
さらに、図10では滴制御信号M0〜M3の吐出動作の最初にHレベルになるタイミングが仮の切替タイミングとして用いている。滴制御信号M0〜M3に切替タイミングを調整した信号が、レベルシフタ716から出力されるデジタル信号MNxとなる。図7の構成では搬送速度取得抽出部516の抽出条件に基づき、定義データ切替手段718でデジタル信号MNの切替タイミングを図10の丸で囲まれた範囲で調整する。図8の構成では、印字データ作成部702Aが、搬送速度取得抽出部516の抽出条件に基づき図10の丸で囲まれた範囲で切替タイミングが調整された、同じ液滴サイズに対して複数のデジタル信号MNを作成する。図9の構成では、印字データ作成部702Bが、パターン記憶部704の抽出条件に基づき図10の丸で囲まれた範囲で切替タイミングが調整された、同じ液滴サイズに対して複数のデジタル信号(液制御信号)MNを生成する。
アナログスイッチドライバ717は上述のように、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Pvと、とレベルシフタ716からのデジタル信号MNに基づいて、印加電圧を生成している。
このように、デジタル信号MNの調整された切替タイミングに基づいて、印加電圧はステップ的な第1の変化を起こす。
印加電圧は、各圧電素子121Aの内部電極152に印加されて、各圧電素子121Aの電圧を変化させる。ここで、デジタル信号MNと共通駆動波形Pvから合成された印加電圧において、共通駆動波形Pvは、レベルシフタ716から出力されたデジタル信号MNとなる液制御信号M0〜M3に基づく部分が選択されて、印加電圧の第2の変化になる。
印加電圧は、少なくともデジタル信号MNに起因して第1の変化をする第1段膨張工程の波形(ステップ的な変化)、共通駆動波形Pvの膨張波形に起因する第2段膨張工程の波形(第1の変化とは異なる第2の変化)、共通駆動波形Pvの収縮波形(第2の変化)に対応して収縮工程を行う波形を有する。このようにこの各圧電素子121Aは電圧の変化に応じて膨張、収縮して、液滴吐出ヘッド34のノズル104からインクを吐出させる。このような動作により、画像を形成する。
((基本的な制御概要))
ここで、図7〜図9では、駆動制御部を構成する印刷制御部508及びヘッドドライバ509は、ステップ的に変化する(電位差を生じる)第1の変化と第1の変化と異なる変化をする第2の変化を有する印加電圧を生成し、生成した印加電圧を圧力発生手段である圧電素子121Aに印加する。
より詳しくは、駆動制御手段508、509は、印加電圧の第1の変化により、圧電素子121Aを収縮させることにより液室106を膨張させ、ノズル104内のメニスカスを引き込む第1段膨張工程と、第1段膨張工程後の印加電圧の最初の第2の変化により、圧電素子121Aを収縮させることにより液室106を膨張させメニスカスを引き込む第2段膨張工程と、第2段膨張工程の後に印加電圧の第2の変化により、圧電素子121Aを膨張させることにより液室106を収縮させてノズル104から液滴を吐出させる第1の収縮工程と、を制御することで吐出動作が実行される。この際、駆動制御手段508、509は、印加電圧の第1の変化のタイミングを調整する。
また、駆動制御手段508、509は、デジタル信号MNが1の値(HまたはスイッチON)の際に、液滴サイズに基づき共通駆動波形Pvから1又は複数の駆動パルスP1〜P5を選択する。デジタル信号MNは、前回の吐出動作後に、最初に複数のデジタル信号の値を切り替えるタイミングである切替タイミングにおいて、印加電圧をステップ的に変化させて印加電圧に第1の変化を起こすように構成されている。
この制御では、駆動制御手段508、509は、デジタル信号MNの切替タイミングを調整することで印加電圧の第1の変化による第1段膨張開始点から印加電圧の最初の第2の変化による第2段膨張開始点までの間隔を設定し、印加電圧での第1の変化のタイミングを調整している。
具体的な制御として、図7において、駆動制御手段508、509は、複数の駆動パルスP1〜P5を時系列で含み、印加電圧に第2の変化を起こす共通駆動波形Pvと、液滴サイズに対応している、液滴サイズの数と略同数のデジタル信号MN(大、中、小3つ)を生成している。
また、図8及び図9において、駆動制御手段508、509は複数の駆動パルスP1〜P5を時系列で含み、印加電圧に第2の変化を起こす共通駆動波形と、各液滴サイズに対応している、それぞれの液滴サイズに対して複数のデジタル信号(大、中、小につきそれぞれfast,normal,slowで9つ)を生成している。
その後、図7〜図9の構成例において、デジタル信号が1の値(HまたはスイッチON)の際に、アナログスイッチ717は液滴サイズに基づき共通駆動波形Pvから1又は複数の駆動パルスP1〜P5を選択する。選択された共通駆動信号Pvの駆動パルスが第2の変化を起こす。
図8、図9では、複数のデジタル信号は、同じ液滴サイズに対して、複数の異なる切替タイミングで印加電圧に第1の変化が起きるようにデジタル信号を複数生成するように構成されている。そして、駆動制御手段508、509は、同じ液滴サイズに対応している生成された複数のデジタル信号であって複数の異なる切替タイミングで印加電圧に第1の変化が起きる複数のデジタル信号のうち、いずれか一つのデジタル信号を選択することで印加電圧の第1の変化による第1段膨張開始点から前記印加電圧の最初の第2の変化による第2段膨張開始点までの間隔を設定し、印加電圧の第1の変化のタイミングを調整している。
ここで、本発明では、印刷制御部508又はヘッドドライバ509、ヘッドの搬送速度に応じて(図7、図8)、又は/及び前回の吐出動作に応じて(図9)、デジタル信号MNのハイ/ロー切替タイミングを調整している。
吐出動作として、アナログスイッチドライバ717に入力されたデジタル信号MNがHレベルになることで、切替タイミングとして、印加電圧に第1の変化が起こり、デジタル信号MNがLの場合の時と比べて、圧電素子121Aの電圧がステップ的に変化する(電位差が生じる)。この電圧のステップ的な変化により、圧電素子121Aに加圧液室106を膨張させメニスカスを引き込む(第1段膨張工程)。
また、デジタル信号MNの切替により、アナログスイッチドライバ717がOFFからONになり、共通駆動波形Pvは、選択される。即ち、デジタル信号MNがON(ハイ)の値のときのみ、印加電圧に第2の変化が起きる。よって、ステップ的な第1段膨張工程の後、選択された共通駆動波形Pvの波形は、印加電圧の第2の変化となる。この印加電圧の第2の変化により、圧電素子121Aに加圧液室106を膨張させメニスカスを引き込む(第2段膨張工程)。これらの膨張により、加圧液室106を二段階膨張させる。
また、第2段膨張工程の後、共通駆動波形Pvを基にした印加電圧の第2の変化に合わせて、圧電素子121Aに加圧液室106を収縮させて液滴を吐出させる第1の収縮工程を実行する。
((直前の吐出動作と今回の吐出動作の間隔とメニスカス振動の関係))
本願の駆動制御を説明する前に、前回の吐出動作によって発生したメニスカス振動と、所定の開始点で次の吐出動作を行った場合の液滴速度の関係について説明する。ここで、前回の吐出動作とは、印刷時に吐出動作が連続する際における直前の吐出動作を意味し、前回の吐出動作から所定の時間経過した場合は、前回の吐出動作からのメニスカス振動は考慮せず、設定値を利用する。
図11は、前回の吐出動作によって発生したメニスカス振動と、各吐出動作の開始点にて次の吐出動作を開始した場合の次の液滴の液滴速度を示している。図11において、液滴吐出動作の直後には、ヘルムホルツ共振周期(Tc周期)を有する振幅の大きな振動と、共通液室から個別液室へのインクの流入に伴う慣性力でリフィル周期(Rf周期、Tc<Rf)を有する振動(残留振動)が発生する。
例えば、ヘルムホルツ共振周期(以下、Tc周期)のメニスカス振幅が大きい時間領域の駆動周波数では、振幅が大きいために、振幅に応じて次の液滴の先頭滴の速度が高速化したり低速化したりする。
Tc振幅が大きくメニスカス速度がノズル内側方向に切り替わるピーク領域(Pout近傍)で次の液滴吐出動作の膨張工程が開始されると、次の液滴の速度は高速化する。
逆に、Tc振幅が大きくメニスカス速度が紙面方向に切り替わるピーク領域(Pin近傍)で次の液滴吐出動作の膨張工程が開始されると、次の液滴速度は低速化する。
また、Tc振幅が小さくてもリフィル周期が大きい場合に、次の液滴吐出動作の膨張工程が開始されると、次の液滴速度は低速化する。なお、リフィル周期とは、共通液室108から個別液室(加圧液室)106へのインク流入の慣性によるノズルからのインク溢れ周期であり、リフィル周期が大きく、リフィル周期のピーク付近であると、ノズルからメニスカスが溢れ気味の領域となる。
このように、前回の吐出動作の有無、滴種(大滴・中滴・小滴・微滴)、周波数(駆動間隔)によって、次の液滴の速度がばらつき、着弾位置精度が悪化し、図12に示すような画像不具合が発生することがある。
図12の着弾ズレAでは、8滴連続吐出時の着弾位置ズレにより、ベタ画像部の先頭滴が分離し、離れた線のようになってしまう現象である。先頭滴は前に吐出動作がなく、狙い通りの速度で吐出されるが、2滴目以降の液滴が前回の吐出によって発生したメニスカス振動により低速化し、先頭滴に対して着弾位置が後ろにずれることによって発生している。
図12の着弾ズレBとCでは、前回の吐出で吐出される滴種の差(大・中・小・微)によって、Tc振動周期の位相がずれたり、Rh周期の振幅量が変化したりする。例えば、中滴の終端パルスと大滴の終端パルスの収縮終端点のタイミングや大きさや次の印加電圧の先頭のパルスまでの波形間隔等が異なる場合、残留振動の開始位置が異なるため、次の吐出開始時の残留振動の位相が異なる。また、小滴と大滴では吐出量が異なるため、リフィル振幅が異なり、吐出量が多いほど、発生するリフィル振幅は大きくなる。
そのため、前回の吐出滴種の違いにより、次の吐出滴の速度がばらつき、同一滴種のラインを描こうとしても、直前の吐出滴種の違いにより、着弾位置がばらつき、画質が低下し、バーコード読み取りエラーや文字品質の低下を発生させることがある。
((本発明の制御の詳細))
ここで、液滴吐出直後のノズル内のメニスカスは、残留振動で大きく振動した状態となっている。一定の速度で次の液滴を吐出させたい場合は、この残留振動がおさまってから吐出動作を開始するのが理想である。しかし、高周波駆動の実現のため、この残留振動が十分減衰しきる前に次の吐出動作を開始するため、ヘルムホルツ共振周期(Tc振動)、リフィル周期(Rf振動)等との関係性に応じて、次の液滴速度が増減してしまう。
本発明では、デジタル信号MNに起因する切替タイミングでの印加電圧のステップ的な変化(第1段パルスと呼ぶ)により、圧電素子121Aは1段目膨張する。さらに、共通駆動波形Pvに起因する印加電圧の第2の変化の最初の膨張波形の開始(最初の第2の変化)(第2段パルスとする)により圧電素子121Aは2段目膨張する。このように2段階膨張した1印刷動作の先頭の波形を合わせて先頭の吐出パルスと呼ぶ。
そこで、デジタル信号MNに起因する切替タイミングでの印加電圧のステップ的な第1の変化による1段目膨張と共通駆動波形Pvに起因する印加電圧の第2の変化である最初の膨張波形による2段目膨張開始の時間間隔を、前回の吐出履歴とヘルムホルツ共振周波数(Tc振動)、リフィル周期(Rf振動)との関係に応じて変化させることで、次の液滴吐出の速度ばらつきを大幅に低減することが可能となる。
上記の制御についての場合分けを、図13〜図16を用いて説明する。
ここで、図14、15、16に示すグラフでは、ほぼ同じ液滴サイズについて、説明のため2段目膨張開始点を等しくするため、1段目の切替タイミングが異なるデジタル信号MNを設けて、1段目―2段目の膨張間隔が異なる3種類の印加電圧を合成している例を示している。なお、実際の制御において、アナログスイッチドライバ717での合成に利用されるデジタル信号MNxはセレクタ715で選択され、レベルシフタ716から出力された一つのデジタル信号のみであり、合成される印加電圧は各ノズルにつき一つである。
図14及び図11から明らかなように、メニスカスの引込みが大きい箇所(Pin)で、印加電圧の最初の膨張波形(最初の第2の変化)による第2段膨張開始点があると(T15)、その後の収縮による液体の吐出が早くなる。反対に、メニスカスの引込みが小さい箇所(Pout)で、印加電圧の最初の第2の変化による第2段膨張開始点があると(大_slow波形、T15参照)、その後の収縮による液体の吐出が遅くなる。
この性質を用いて、本発明では、第1膨張開始から第2段膨張開始点までの間隔を調整するように、切替タイミングでの電圧変位(印加電圧のステップ的な変化)による第1段膨張開始点のタイミングを調整することで、メニスカスの状態に応じた2段目膨張工程の速度を調整することができる。具体的には、一つの液滴のサイズに対して複数の印加電圧fast、normal、slowを合成せず、複数のデジタル信号MNfast,MNnormal、MNslowの中から所望の切替タイミング(印加電圧のステップ的な変化)のデジタル信号を選択したり、デジタル信号の切替タイミングを生成後に調整したりすることで、と2段目膨張工程の速度を調整する。この制御により、吐出が行われる収縮工程で液滴の速さを均一化し、着弾位置のずれを軽減する。
より詳しくは、直前の液滴吐出を含む吐出動作における印加電圧の最終駆動パルスの収縮終端点から次の吐出滴の先頭の印加電圧の切替タイミングでの電圧変位(印加電圧のステップ的な変化)による1段目膨張工程までの時間間隔に基づいて、第1段膨張開始点から第2段膨張開始点までの間隔を調整する制御を行う。この方法について、下記説明する。
図13は1段目の膨張と2段目の膨張の間隔を調整する場合分けを示すフローチャートである。なお、このフローチャートは図7の構成で用いるとより好ましい。図14は共通駆動波形と、液滴が大滴の場合のデジタル信号と、各デジタル信号に対応する印加電圧の例を表すグラフである。
図13において、まず、最初に、ステップS11(以下、単にステップをSとして表す)として、前回の吐出滴と次の吐出滴の間隔が、図11における「高速化条件(time=Pout近傍)」を満たすかどうか、確認する。例えば、図7のエンコーダー等からなる搬送速度取得部抽出部516より、搬送速度を測定することで、高速化条件に該当しているか確認する。
<前回の吐出滴の影響による高速化条件>
ここで、「前回の吐出滴の影響による高速化条件」とは、前回の吐出滴の最終駆動パルスの収縮終端点から次の吐出滴の二段階膨張する印加電圧の切替タイミングでの電圧変位に基づく1段目膨張開始点までの時間間隔Tdが以下の条件(1)を満たすこと、である。
(Tc:ヘルムホルツ共振周期、Rf:リフィル周期、n:自然数)
時間間隔Tdが上記の式(1)の時間領域を満たすときは、図11におけるPout近傍であり、Tc振動に起因して高速化してしまう時間領域である。この領域は、Tc振幅が大きくメニスカス速度がノズル内側方向に切り替わるピーク領域なので、この時点で次の液滴吐出の膨張工程が開始されると、次の液滴の速度は高速化する。
そこで、上記の「高速化条件」を満たす場合(S11でYES)、S12へ進み、1段目膨張開始点と2段目膨張開始点の時間間隔Twをヘルムホルツ共振周波数Tcの逆位相となるタイミングでデジタル信号MNを切り替えて、先頭の吐出パルスが低速化される。例えば、図7の定義データ切替手段718が搬送速度取得抽出部516からの搬送速度をもとに、第二シフトレジスタ713に入力される直前に滴制御データの切替タイミングを低速化になるように調整する。
<1段目膨張と2段目膨張による先頭に吐出パルスを低速化させる条件>
ここで、「先頭の吐出パルスが低速化される条件」とは、1段目膨張開始点と2段目膨張開始点の時間間隔Twが、下記の式を持たす場合である。
このように、切替タイミングでの印加電圧のステップ的な変化による第1段膨張開始点と印加電圧の第2の変化の最初の膨張波形による第2段膨張開始点までの時間間隔Twが式(2)を満たすようにヘルムホルツ共振周波数Tcの逆位相の駆動となると(S12)、印加電圧の第2の変化の波形が低速化する(S13)。具体的に図14では、複数の印加電圧大fast、大normal、大slowの中から、印加電圧の第1の変化との第2の変化の膨張波形の開始の時間間隔Tdが低速化する間隔を有する印加電圧大slowが印加電圧となるように、デジタル信号MNslowを選択して、2段目膨張工程の速度を低速化させる。
よって、前滴の残留振動のヘルムホルツ共振周波数Tcによる高速化を、1段目膨張と2段目膨張の間隔の低速化による吐出速度が増大する効果で相殺して、狙いの速度に近づけることが可能となる。
逆に、S11においてNOであるとき、前回の吐出滴と次の吐出滴の間隔が図11における「低速化条件(time=Pin近傍)」を満たすかどうか確認する(S14)。例えば、図7のエンコーダー等からなる搬送速度取得部抽出部516より、搬送速度を測定することで、低速化条件に該当しているか確認する。
<前回の吐出滴の影響による低速化条件>
ここで、「前回の吐出滴の影響による低速化条件」とは、前回の吐出滴の最終駆動パルスの収縮終端点から次の吐出滴の先頭の二段階吐出パルスの1段目膨張開始点までの時間間隔Tdが以下(3)のいずれかの条件を満たすこと、である。
例えば、上記式(3)−1及び(3)−2を満たす場合は、時間間隔TdはTc振動によって低速化してしまう時間領域である。
例えば、上記式(3)−3を満たす場合は、時間間隔Tdがリフィル周期(共通液室から個別液室へのインク流入の慣性によるノズルからのインク溢れ周期)のピーク付近である。Tc振幅が小さく、Rf振幅が大きい領域は、ノズルからメニスカスが溢れ気味の領域であり、Rf振動によって次の液滴の速度は低速化する。
上記の(3)−1、(3)−2、もしくは(3)−3の「低速化条件(図14のtime=Pin近傍)」を満たす場合には(S14でYES)、S15に進む。
ここで、切替タイミングでの印加電圧のステップ的な変化による第1段膨張開始点から印加電圧の第2の変化の最初の膨張波形による第2段膨張開始点までの時間間隔Twをヘルムホルツ共振周期振動の同位相となるようなタイミングでデジタル信号MNを切替えて(S15)、先頭の吐出パルスが高速化される(S16)。例えば、図7の定義データ切替手段718が搬送速度取得抽出部516からの搬送速度をもとに、第2シフトレジスタ713に入力される直前に、滴制御データの切替タイミングを高速化になるように調整する。
<1段目膨張と2段目膨張による先頭の吐出パルスを高速化させる条件>
ここで、「先頭の吐出パルスが高速化される条件」とは、1段目膨張開始点と2段目膨張開始点の時間間隔Twが、下記の式を持たす場合である。
このように、切替タイミングでの印加電圧のステップ的な変化(第1の変化)による第1段膨張開始点と印加電圧の第2の変化の最初の膨張波形による第2段膨張開始点までの時間間隔Twが式(2)を満たすようにヘルムホルツ共振周波数Tcとが同位相の駆動となると、印加電圧の第2の変化の駆動による駆動波形が高速化し、吐出速度が増大する。具体的に図14では、複数の印加電圧大fast、大normal、大slowの中から、印加電圧の第1の変化である切替タイミングと第2の変化である最初の膨張まで時間間隔が高速化する間隔を有する印加電圧大fastが印加電圧となるようにデジタル信号MNfastを選択することで、2段目膨張工程の速度を高速化させる。
よって、前滴の残留振動のリフィルによる低速化を、1段目膨張開始点と2段目膨張開始点の時間間隔の高速化により吐出速度が増大する効果により相殺して、狙いの速度に近づけることが可能となる。
また、上記以外の条件(低速化も高速化もしない条件)の場合、前回の吐出動作による残留振動が小さい場合である(S11、S14ともにNO)。このときは、1段目膨張開始点と2段目膨張開始点の時間間隔Twをヘルムホルツ共振周期振動の同位相でも逆位相でもない中間点でデジタル信号MNを切り替える(S17)。
<1段目膨張と2段目膨張の中間点>
ここで、「中間点」とは、1段目膨張開始点と2段目膨張開始点の時間間隔Twが、下記の式を持たす場合である。
式(5)を満たすとき、メニスカス速度は大きくも小さくもならない。具体的に図14では、複数の印加電圧大fast、大normal、大slowの中から、切替成分から印加電圧の第2の変化の膨張までの時間間隔が高速化も低速化もさせない間隔を有する印加電圧大normalが印加電圧となるようにデジタル信号MNnormalを選択することで、2段目膨張工程の速度を変えない。例えば、図7の定義データ切替手段718が搬送速度取得抽出部516からの搬送速度をもとに、第2シフトレジスタ713に入力される直前に滴制御データの切替タイミングを、印刷速度を変えないように調整する。この際、normalに合わせてデータを作成していた場合は切替タイミングの変更は行わない。
上記のように、液滴吐出の駆動について、前回の吐出によるメニスカスの影響を相殺するような制御を行うことによって、高周波駆動でも液滴速度のばらつき量を大幅に低減することができる。さらに、滴吐出が早いことで得られる飛翔中の液滴をひとつの滴にマージしやすくすることや、二段階膨張による効果として吐出滴曲がりも発生しづらくする効果も得られる。このように、画質を向上させることが可能となる。
上記のように調整したデジタル信号MNを基にした切替成分と、共通駆動波形Pvから選択した印加電圧の第2の変化を有する印加電圧を用いて二段階膨張を行い、その後の収縮工程で着弾速度のばらつきが低減された吐出を行う(S18)。
図15は共通駆動波形と、液滴が中滴の場合のデジタル信号と、各デジタル信号に対応する印加電圧の例を表すグラフであり、図16は共通駆動波形と、液滴が小滴の場合のデジタル信号と、各デジタル信号に対応する印加電圧の例を表すグラフである。
図14では、特定滴種(例えば大滴)の先頭の吐出パルスにおいて切替タイミングでの電圧のステップ的な変化による第1段膨張開始点と印加電圧の印加電圧の第2の変化の最初の膨張波形による第2段膨張開始点による第2段膨張開始点までの間隔を制御するようにデジタル信号MNの切替タイミングについて切替制御、選択について説明した。液滴が中滴や、小滴の時でも同様に、第1段膨張開始点と第2段膨張開始点の間隔を調整することで、他滴の前回の吐出滴による速度ばらつきを大幅に低減することができる。
図14〜16のグラフは、先頭の吐出パルスの切替タイミングでの電圧のステップ的な変化による第1段膨張開始点から印加電圧の第2の変化の最初の膨張波形による第2段膨張開始点までの間隔を規定するデジタル信号MNのON切替タイミングがそれぞれ異なる、大滴に対応したデジタル信号MNを3種類示しており、各デジタル信号MNに対応して同じ数の印加電圧も生成されると仮定して示している。しかし、実際の制御では、セレクタ715で選択されレベルシフタ716での調整により、アナログスイッチドライバ717に入力されるデジタル信号MNxは一つである。よって、アナログスイッチドライバ717が、1つのデジタル信号MNxと共通駆動波形Pvを基に出力する印加電圧(印加電圧)は1つであり、その1つの印加電圧が、圧電素子121Aへ印加される。
より詳しくは、同じ液滴サイズの液について、吐出が行われる収縮工程で液滴の速さを均一化して着弾位置のずれを軽減できるように、第2段膨張開始点までの間隔を調整するため二段階膨張する先頭の吐出パルスの一段階膨張開始点となるON切替タイミングをそれぞれ異ならせた例である。
尚、本発明の実施形態では、前滴との吐出動作に応じた二段膨張により液滴速度のばらつきを制御しているが、上述の説明とメニスカス周期を1/2ずらすことで、一段目をデジタル信号に基づいて収縮させた後に、二段目を膨張させる収縮工程・膨張工程の組み合わせによっても液歴速度のばらつき制御することもできる。この制御でも、着弾位置ズレを抑制できる。
((実施例1))
次に、図13の調整方法を用いた制御システム全体の構成例1に対応する制御の実施例1について説明する。図17は、本発明の実施例1に係る駆動制御の全体の流れを示すフローチャートである。
ここで、同じサイズの液滴を吐出する場合であっても、形成される画像によって記録ヘッド34の速度が異なる。本発明の制御では、図17の制御フローに示すように、制御部500内のROM502等で、予め画像データに応じて、ヘッド移動速度を設定しておく(S101)。
また、搬送速度取得抽出部516が設定されたヘッド移動速度に応じて、前述の高速化条件、低速化条件を、予め抽出しておく(S102)。
その上で、印刷の際、搬送速度取得抽出部516は前回の液滴吐出のヘッド移動速度(搬送速度)を、モータ駆動部510から取得する(S103)。
前回の吐出のうち、駆動パルスの収縮波形による液滴吐出終了すると(S104)、搬送速度取得抽出部516から搬送速度を受け取った定義データ切替手段718は前回の液滴吐出のヘッド移動速度の高速化条件、低速化条件に基づいて、第2シフトレジスタ713へ入力される滴制御データMN0〜MN2の切替タイミングを調整する。具体的には、S105にて、ON切替タイミングである図14〜図16でのtime=T11、T12、T13の調整をする。
図7の構成例では、ヘッドドライバ509の要素718、713〜716が、同じ液滴のサイズに対応している、液滴ヘッド34の複数の圧電素子121Aへ印加する印加電圧の最初の第2の変化による第2段膨張開始点がすべて等しくなるように、この切替タイミングを調整する。
そして、調整された切替タイミングを含むデジタル信号MNxがアナログスイッチドライバ717へ入力され、常に入力されている共通駆動波形Pvのうち、デジタル信号MNxの切替部とHの部分が反映されて、共通駆動波形を構成する1または複数の駆動パルスを含む波形成分と切替タイミングのステップ的な変化を含む印加電圧を生成する。
そして、デジタル信号MNxの切替により、アナログスイッチドライバ717がONになり(time=T11、T12、T13、図14〜図16)、切替タイミングで印加電圧のステップ的な第1の変化が起こり圧電素子121Aを介して、液室106を第1段膨張させ、メニスカスを引き込む(S106、第1段膨張工程)。なお、本実施例では、デジタル信号MNをONすることで、液室106を第1段膨張させたが、デジタル信号MNをOFFすることで、液室106を第1段膨張させるように制御してもよい
その後、すべての同じタイミングで共通駆動波形Pvの膨張が始まるように調整された(time=T15、図14〜図16)それぞれの条件に沿って選択された複数の印加電圧を用いると、同じ液滴サイズに対しては印加電圧の第2の変化が同じタイミングで始まる。これに合わせて、共通駆動信号Pvに対応する最初の第2の変化が起こる電圧を圧電素子121Aへ印加し、液室106を第2段膨張させ、メニスカスを引き込む(S107、第2段膨張工程)。なお、上記の調整は図12のような画像不良を防止するために行われ、液滴吐出の印刷周期の先頭の吐出パルスにのみ用いられる。なお、先頭の吐出パルスの第2段膨張工程の後、最終収縮工程の前に、印加電圧の第2の変化である膨張波形に応じて、複数膨張してよい(図14、15)。吐出動作のうち、次以降のパルスについては、印加電圧の第2の変化(駆動パルス)に基づいて行われる。
その後、印加電圧の第2の変化の収縮成分に合わせて、圧電素子121Aへの印加電圧量を調整し、駆動パルスの収縮波形により液滴を吐出させる(S108)。
このような制御により、上述のような、液滴速度のばらつき量を低減させ、画質を向上させることが可能となる。
((比較例))
ここで、比較例として図17、図18および図19を参照して、1段目の膨張タイミングを調整しない場合の、2段目膨張パルスの開始タイミングとメニスカス振動の関係について説明する。
図17は、液滴が大適の場合の第1段膨張に起因するメニスカス振動と2段目の膨張開始タイミングの関係を表す。図17において、切替タイミングで、印加電圧のステップ的な第1の変化による1段目膨張で引き込んだメニスカス振動が、Pout付近のときに選択された共通駆動波形Pvの駆動パルスが最初に膨張し始める最初の第2の変化により2段目膨張が起きる場合(T15fast参照)、次の液滴の速度は高速化する。次の液滴の速度が高速化すると、図12のB・Cで示したように、先頭滴に対して、次の液滴が前にずれ、先頭滴と次の液滴とが近づきすぎるという着弾ずれが起きる。
また、図17において、切替タイミングでの印加電圧のステップ的な第1の変化による1段目膨張で引き込んだメニスカス振動が、Pin付近のときに、共通駆動波形Pvに対応する印加電圧の最初の第2の変化により2段目膨張が起きる場合(T15slow参照)、次の液滴の速度は低速化する。次の液滴の速度が低速化すると、図12のAで示したように、先頭滴に対して、次の液滴が後ろにずれ、次の液滴が離れてしまうことがある。
また、図17において、切替タイミングでの電圧のステップ的な第1の変化による1段目膨張で引き込んだメニスカス振動がPinとPoutの中間付近のときに、共通駆動波形Pvに対応する最初の第2の変化により2段目膨張が起きる場合(T15normal参照)、次の液滴の速度は変わらない。図18は、液滴が中滴の場合のメニスカス振動と2段目の膨張開始タイミングの関係を表す。図19は、液滴が小滴の場合のメニスカス振動と2段目の膨張開始タイミングの関係を表す。液滴が中滴や、小滴の時でも図17の場合と同様に、第1段膨張開始点と第2段膨張開始点の間隔次第で、次の液滴の速度がばらつくことがある。
((実施例2))
実施例1では、同じサイズの液滴に対して、タイミングを調整する例を説明したが、違うサイズの液滴について、タイミングを調整してもよい。
実施例2について、図21、図22を参照して説明する。この実施例において、図13の調整方法を用いた、制御システム全体の制御例について説明する。
図21は、具体的な例について表す説明図である。図21、図22に示す実施例2では、例えば図8及び図9の構成例に該当し、共通駆動波形Pvは1種類の波形に対して、上述の図14、図15、及び図16に示すように、滴種ごとに二段階膨張する先頭の吐出パルスの1段目膨張開始点と2段目膨張開始点の時間間隔Twが異なる3種類のMNセットを調整ではなくあらかじめ生成する。大滴_fast,大_normal、大滴_slow、中滴_fast、中滴_normal、中滴_slow、小滴_fast、小滴_normal、小滴_slowのように、3滴種x3速度=9セットのデジタル信号MNを設定する。これに加えて、微滴についても生成してもよい。
つまり、切替タイミングでの電圧のステップ的な第1の変化による第1段膨張開始点から印加電圧の印加電圧の最初の第2の変化の膨張波形による第2段膨張開始点までの間隔を規定する二段階膨張する先頭の印加電圧のステップ的な第1の変化の切替タイミングがそれぞれ異なる、大滴に対応したデジタル信号MNを3種類有する。同様に、中滴や小滴でもそれぞれ先頭の吐出パルスの切替タイミングがそれぞれ異なるデジタル信号MNをそれぞれ3種類ずつ有する。
そして、あらかじめヘッド特性の測定により、前回の滴種および駆動間隔による高速化条件と低速化条件を抽出しておき、画像データの形成時に図21に示すように吐出パターンと諧調セットを紐付けし、打ち分ける。
表2は本発明の滴のサイズ(滴種)と諧調設定の例を表す。表3は、記録ヘッドの速度を表す。表の速度@2khzは、圧電素子の駆動周波数が2kHZのときの液滴の速度を意味する。より詳しくは、吐出直前のメニスカス振動がほとんどない、2kHZのような低周波駆動の状態のような同一条件で各波形(fast/normal/slow)を駆動すると、表3に示すような速度が得られる。
実施例2についてのより詳しい制御のフローについて、図9の構成例を用いたときの本実施例について図22を用いて説明する。図22において、制御部500内のROM502等で、予め画像データに応じて、ヘッド移動速度を設定する(S201、表2、表3)。また、印刷制御部508の印字データ作成部702のパターン記憶部704は、画像データを元に、形成する画像に対応する画素値(諧調パターン)を表す液滴のサイズを分類して、適切な液滴サイズを選択する(S202、表2、表3)。
パターン記憶部704は、移動速度や吐出し速度等のヘッドの特性に応じて、前述の高速化条件、低速化条件を、予め抽出しておく(S203)。
その上で、印刷の際、吐出履歴取得部705はモータ駆動部510等から前回の液滴吐出のヘッド移動速度と、液滴のサイズを取得する。そして、そのデータを印字データ補正部706に送り、印字データ補正部706は生成するデジタル信号の切替タイミングを調整してから、調整後の9つのデジタル信号を第2シフトレジスタ713Bへ出力する。(S204)。
前回の吐出のうち、駆動パルスの収縮波形による液滴吐出終了すると(S205)、セレクタ715は同じ液滴サイズのために生成された複数のデジタル信号を用いて作成された複数の調整されたデジタル信号MNの中から、前回の液滴吐出のヘッド移動速度および液種ごとの高速化条件、低速化条件に応じたものを選択して出力する。これによりON切替タイミングが選択される(S206)。
セレクタ715で選択されたデジタル信号MNxを基にして、アナログスイッチドライバ717がONすることで、印加電圧にステップ的な第1の変化が起きる。そのため、圧電素子121Aを介して液室106を第1段膨張させ、メニスカスを引き込む(S207、第1段膨張工程)。なお、本実施例では、デジタル信号MNをONすることで、液室106を第1段膨張させたが、デジタル信号MNをOFFすることで、液室106を第1段膨張させるように制御してもよい。
その後、所望のタイミングの共通駆動波形Pvの膨張が始まり、(time=T15、図14〜図16)最初の第2の変化が起きた印加電圧を圧電素子121Aへ印加することで、液室106を第2段膨張させ、メニスカスを引き込む(S208、第2段膨張工程)。なお、上記の調整は図12のような画像不良を防止するために、液滴吐出の印刷周期の先頭の駆動パルスにのみ用いられる。吐出動作のうち、次以降のパルスについては、印加電圧の選択された共通駆動波形Pvに基づいて行われる。
その後、共通駆動波形Pvに対応する印加電圧の第2の変化の収縮波形に合わせて圧電素子121Aへの印加電圧量を調整し、駆動パルスの収縮波形により液滴を吐出させる(S209)。
例えば、図12のような着弾位置ズレが発生している場合に、着弾が遅れている吐出条件(低速化条件)においてはfast波形を駆動し、着弾が速まっている吐出条件(高速化条件)において、slow波形を駆動する。この設定により、全ての吐出滴が狙いの速度に近づけることが可能となる。よって、着弾位置精度が向上し画質を向上させることが可能となる。
上述の制御により、前回の吐出動作の履歴によらず、次の吐出滴の速度の増減を大幅に低減することができ、着弾位置精度が向上して画質が改善する。
デジタル信号数の増設には、共通駆動波形Pvを作る共通駆動信号の増設に比べてずっとデータ量の増大や消費電力の増大が少なくて済む。例えば、図7〜図9においてもデジタル信号の増設は、制御信号M0〜M3を基にして生成されたので、ヘッドドライバ509において第2シフトレジスタ713、第2レジスタ714、場合よっては定義データ切替手段718の追加のみで可能となる。駆動回路のサイズアップ(特に印刷制御部508のサイズアップ)や消費電力の増大等の問題を回避できる。
さらに、本発明では、共通駆動信号から一部あるいは複数部を選択し、複数の滴種の駆動信号を使い分ける駆動方式であるので、共通駆動信号自体を長くするものではない。従って、印写速度(駆動周波数)を低減させることなく、波形制御によって画質を向上させる液滴吐出を行う、液滴吐出装置を提供できる。
このように、このインクジェット記録装置においては本発明を実施したインクジェットヘッドを搭載しているので、高粘度インクを用いた普通紙高画質記録を高速で行うことができる記録装置が得られる。
(ライン型画像形成装置への搭載)
ここで、図1、図2では本発明の液滴吐出ヘッド34はシリアル型画像形成装置1に搭載されていたが、下記に本発明の液滴吐出装置を搭載する別の例として、図12、図13を参照してライン型画像形成装置について、説明する。
図12は本発明に係る液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置を含むライン型画像形成装置1Aの構成を示す側面断面図である。本発明に係る画像形成装置1Aは、ライン型画像形成装置であり、装置本体9、給紙トレイ2A、排紙トレイ3A、搬送ユニット4、画像形成ユニット5、ヘッドクリーニング装置8、搬送ガイド部7を有している。
給紙トレイ2Aは用紙Sを積載し給紙する。排紙トレイ3Aは印刷された用紙Sを排紙積載する。搬送ユニット4は用紙Sを給紙トレイ2Aから排紙トレイ3Aまで搬送する。画像形成ユニット5は搬送ユニット4によって搬送される用紙Sに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドモジュールアレイ(キャリッジ)330を含む。ヘッドクリーニング装置8は印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各ヘッドモジュールアレイ330の複数のヘッドの維持回復を行う維持回復機構である。搬送ガイド部7はヘッドクリーニング装置8を開閉する。
また、本搭載例の画像形成装置は、画像形成ユニット5のヘッドモジュールアレイ330にインクを供給する図示しないサブタンク350や図示しないメインタンクで構成されるインク供給系をさらに備えている。なお、被記録媒体である用紙Sには、紙に限られず、OHPシートなどの他の材料からなるシートも用いられる。
装置本体9は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2A上に積載されている用紙Sは、分離ローラ210及び給紙ローラ220によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ410Aと搬送従動ローラ410Bと、これらのローラ410A、410B間に掛け回された無端状の搬送ベルト430とを備えている。この搬送ベルト430の表面には複数の図示しない吸引穴が形成されており、搬送ベルト430の下部には用紙Sを吸引する吸引ファン440が配置されている。また、搬送駆動ローラ410A、搬送従動ローラ410B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ420A、420Bが図示しないガイドに保持されて、自重にて搬送ベルト430に当接している。
搬送ベルト430は、搬送駆動ローラ410Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Sは搬送ベルト430上に吸引ファン440により吸い付けられ、搬送ベルト430の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ410B、搬送ガイドローラ420A、420Bは搬送ベルト430に従動して回転する。
搬送ユニット4の上部には、用紙Sに印字する液滴を吐出するヘッドモジュールアレイ330で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはヘッドクリーニング装置8上方まで移動し、画像形成時には図12の位置に戻される。
画像形成ユニット5は、搬送ベルト430上に吸着保持されて搬送される用紙Sに対して4色分のインク(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK)の液滴を吐出するライン型記録ヘッドを構成するヘッドモジュールアレイ330を有している。
ヘッドモジュールアレイ330では、各列の記録ヘッド340にインクを分配して供給する分岐部材54が一体に設けられている。分岐部材54にはサブタンク350からインクが供給され、サブタンク350にはインクカカートリッジ等のメインタンクからインクが供給される。なお使用するインク色はこれら4色に限らず再現する色や階調の領域を拡大するためにレッド、グリーン、ブルー、グレー等の色を加える構成となる場合もある。
図13は図12のライン型画像形成装置1Aの上面図である。図13にて、ヘッド配列方向(図13においてX方向、用紙搬送方向に対して直交する方向)において隣り合う2つの記録ヘッド340の端部の1又は複数のノズルが重なり合う(重複する)ように記録ヘッド340は配列されている。これにより、2つの記録ヘッド340それぞれのノズルによって同じ記録位置(ドット位置)に記録を行うことができる。この同じ記録位置に記録を行うことのできる記録ヘッド340の端部のノズルを「重複ノズル」といい、重複ノズルの領域は繋ぎ部、ノズル列重複部分、重複ノズル領域(又は部分)若しくはオーバーラップ領域(又は部分)等ともいわれる。
搬送ユニット4の下流側には用紙Sを排紙トレイ3Aに排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Sは排紙トレイ3Aに排紙される。排紙トレイ3Aの上面には、用紙Sの幅方向を規制する対のサイドフェンス37と用紙Sの先端を規制するエンドフェンス38を備えている。
ヘッドクリーニング装置8には、画像形成ユニット5の各記録ヘッドの各ヘッド340に対応するキャップ部材84、図示しないワイパ部材、及び吸引ポンプ85が配置されている。吸引ポンプ85はキャップ部材84で記録ヘッド340のノズル面(ノズル104が形成された面、図4参照)をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する。
また、この画像形成装置1Aにおいては、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ410Bを支点に矢印B方向に回動可能である。印刷中、搬送ユニット4は図13の実線で示す位置にある。印刷終了後、クリーニング(維持回復動作)時には、図13にも示すように、印刷停止後に、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ410Bを支点に矢印B方向に回動する。維持回復時とは、印刷終了後、液滴を吐出する記録ヘッド340の各記録ヘッドのノズル面をヘッドクリーニング装置8のキャップ部材84でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合である。又は、記録ヘッドの各ヘッド340のノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合であってもよい。
搬送ユニット4がBの位置にあると、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくなり、画像形成ユニット5の移動スペースを確保できる。このとき、ヘッドクリーニング装置8上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板73も支点74にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置8の上方が開放される。
その後、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置8上方で停止する。そして、キャップ部材84などが上昇して記録ヘッドの各ヘッド340のクリーニング動作に移行する。
本搭載例においても、共通駆動信号から一部あるいは複数部を選択し、複数の滴種の駆動信号を使い分ける駆動方式であるので、共通駆動信号自体を長くするものではない。従って、印写速度(駆動周波数)を低減させることなく、波形制御によって画質を向上させる液滴吐出を行う、液滴吐出装置を提供できる。
なお、上記実施形態では本発明に係る画像形成装置をプリンタ構成の画像形成装置に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、例えば、プリンタ/ファックス/コピア複合機などの画像形成装置にも適用することができる。また、記録液以外の液体を用いる画像形成装置にも適用することができる。
一般に、記録媒体は材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。
なお、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。
また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味し、記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。
また、「液体」とは、記録液、インクに限るものではなく、吐出されるときに流体となるものであれば特に限定されるものではない。また、「液体吐出装置」とは液体吐出ヘッドから液体を吐出する装置を意味し、画像形成を行うものに限定されない。
また、液体吐出ヘッドは、インク滴(記録液体)を吐出させるためのアクチュエータ手段の種類により、幾つかの方式に大別される。例えば加圧液室の壁の一部を薄い振動板とし、これに対応して電気機械変換素子としての圧電素子を配置し、電圧印加に伴って発生する圧電素子の変形により振動板を変形させることで加圧液室内の圧力を変化させて、インク滴を吐出させるピエゾ方式のもの、加圧液室内部に発熱体素子を配置し、通電による発熱体の加熱によって気泡を発生させ、気泡の圧力によってインク滴を吐出させるバブルジェット方式のものを利用してもよい。
また、液室の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向して配置された液室外の個別電極とを備え、振動板と電極との間に電界を印加することで発生する静電力により振動板を変形させて、液室内の圧力/体積を変化させることによりノズルからインク滴を吐出させる静電型のものでもよい。
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。