以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
実施形態の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
また実施形態において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インク等の液体を吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
[第1の実施形態]
本実施形態においては、「液体が付着可能なもの」が用紙である場合を一例として説明する。また液体を吐出する装置は、画像形成装置であり、液体吐出ヘッドは記録ヘッドであり、吐出される液体は、水性又は油性であるインク等の記録液である場合を一例として説明する。なお以下では、用紙を記録媒体と称し、記録液を液体と称する。
まず、本実施形態の画像形成装置1の構成の一例を、図1を参照して説明する。図1は、画像形成装置1の構成の一例を示している。なお、実線の矢印で示された方向Aは、主走査方向を表し、方向Bは副走査方向を表している。
図1に示されているように、画像形成装置1は、記録ヘッド2と、キャリッジ3と、主走査モータ4と、ギヤ5と、加圧コロ6と、タイミングベルト7とを有している。画像形成装置1は、記録ヘッド2をキャリッジ3により走査させる所謂シリアル型の画像形成装置である。なお、画像形成装置1は、「液体を吐出する装置」の一例である。
記録ヘッド2は、ブラック用記録ヘッド2kと、シアン用記録ヘッド2cと、マゼンタ用記録ヘッド2mと、イエロー用記録ヘッド2yとを有し、キャリッジ3に固定されている。各記録ヘッド2k~2yは、各色の液体を吐出する。なお、記録ヘッド2は、「液体吐出手段」の一例である。なお、記録ヘッド2k~2yを特に区別しない場合は、記録ヘッド2と総称する。
主走査モータ4は回転に伴う駆動力を、ギヤ5と、加圧コロ6と、タイミングベルト7を介して、キャリッジ3に伝達する。キャリッジ3は、ガイドロッド8に沿って、主走査方向に往復移動する。キャリッジ3の主走査方向の往復移動により、記録ヘッド2は、主走査方向における位置を変化させることができる。
エンコーダシート10は、主走査方向における位置を示すリニアスケールを有している。キャリッジ3に設けられたエンコーダセンサ9は、キャリッジ3の主走査方向への移動の際に、エンコーダシート10のリニアスケールを読み取り、主走査方向における位置を検出する。エンコーダセンサ9の出力により、記録ヘッド2の主走査方向における位置が検知される。
一方、記録媒体11は、画像形成装置1の供給部から所定の搬送経路に沿って、副走査方向に搬送され、プラテン12の位置に到達する。
記録ヘッド2は、主走査方向の所定の位置に移動しながら、プラテン12の上で副走査方向に移動する記録媒体11に向けて、所定のタイミングで液体を吐出する。記録ヘッド2の主走査方向への移動と、記録媒体11の副走査方向への移動と、これらに伴う記録ヘッド2による吐出が繰り返されることで、記録媒体11上にカラー画像が形成される。
次に、記録ヘッド2の構成の一例を、図2を参照して説明する。図2は、記録ヘッド2のノズル配列方向と平行な方向の断面説明図である。
図2に示すように、記録ヘッド2は、ベース部材13上に接合した圧電部材14を有している。圧電部材14にはハーフカットダイシングによって溝加工が施され、1つの圧電部材14に対して所要数の柱状の圧電素子14A、14Bが所定の間隔で櫛歯状に形成されている。
ここでは、圧電部材14の圧電素子14Aは駆動波形を与えて駆動させる圧電素子とし、圧電素子14Bは駆動波形を与えないで単なる支柱として使用しているが、すべての圧電素子14A、14Bを駆動させる圧電素子として使用することもできる。なお、圧電部材14は、「液室内の液体を加圧または減圧する圧力を発生させる圧力発生手段」の一例である。
圧電素子14Aは、振動板部材19の振動領域15に形成した島状の厚肉部である凸部15aに接合している。また、圧電素子14Bは、振動板部材19の厚肉部である凸部15bに接合している。
圧電部材14は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、外部電極にフレキシブル配線部材が接続されている。
このように構成された記録ヘッド2においては、例えば圧電素子14Aに与える電圧を基準電位から下げることで圧電素子14Aが収縮する。これにより振動板部材19の振動領域15が下降して個別液室17の容積が膨張することで、個別液室17内に液体が流入する。なお、個別液室17は、「ノズルと連通する液室」の一例である。
その後、圧電素子14Aに与える電圧を上げて圧電素子14Aを積層方向に伸長させ、振動板部材19の振動領域15をノズル16に向かう方向に変形させて個別液室17の容積を収縮させる。これにより個別液室17内の液体が加圧され、ノズル16から液体が吐出される。なお、ノズル16は、「ノズル」の一例である。
圧電素子14Aに与える電圧を基準電位に戻すことで振動板部材19の振動領域15が初期位置に復元し、個別液室17が膨張する。膨張により個別液室17内に生じる負圧によって、共通液室から個別液室17内に液体が充填される。ノズル16のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方により、引き打ちや押し打ち等を行なうこともできる。また、上述した実施形態では、個別液室17に圧力変動を与える圧力発生手段として積層型圧電素子を用いて説明したが、これに限定されない。例えば薄膜状の圧電素子を用いることも可能である。また個別液室17内に発熱抵抗体を配し、発熱抵抗体の発熱によって気泡を生成して圧力変動を与えるものや、静電気力を用いて圧力変動を生じさせるものを用いることもできる。
次に、本実施形態の画像形成装置1のハードウェア構成を説明する。
図3は、本実施形態の画像形成装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。 画像形成装置1は、メイン制御基板100と、ヘッド中継基板200と、画像処理基板300とを備える。
メイン制御基板100には、CPU(Central Processing Unit)101、FPGA(Field-Programmable Gate Array)102、RAM(Random Access Memory)103、ROM(Read Only Memory)104、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)105、モータドライバ106、駆動波形生成回路107などが実装されている。
CPU101は、画像形成装置1の全体の制御を司る。 例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM104に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置1における各種動作を制御するための制御指令を出力する。この際、CPU101は、FPGA102と通信しながら、FPGA102と協働して画像形成装置1における各種の動作制御を行う。
FPGA102には、CPU制御部111、メモリ制御部112、I2C制御部113、センサ処理部114、モータ制御部115、および記録ヘッド制御部116が設けられている。
CPU制御部111は、CPU101と通信を行う機能を持つ。メモリ制御部112は、RAM103やROM104にアクセスする機能を持つ。I2C制御部113は、NVRAM105と通信を行う機能を持つ。
センサ処理部114は、各種センサ130のセンサ信号の処理を行う。各種センサ130は、画像形成装置1における各種の状態を検知するセンサの総称である。 各種センサ130には、上述したエンコーダセンサ9のほか、記録媒体Pの通過を検知する記録媒体センサ、カバー部材2aの開放を検知するカバーセンサ、環境温度や湿度を検知する温湿度センサ、記録媒体Pを固定するレバーの動作状態を検知する記録媒体固定レバー用センサ、カートリッジの液体残量を検知する残量検知センサなどが含まれる。なお、温湿度センサなどから出力されるアナログのセンサ信号は、例えばメイン制御基板100などに実装されるADコンバータによりデジタル信号に変換されてFPGA102に入力される。
モータ制御部115は、各種モータ140の制御を行う。 各種モータ140は、画像形成装置1が備えるモータの総称である。 各種モータ140には、キャリッジ3を動作させるための主走査モータ4、記録媒体Pを副走査方向に搬送するための副走査モータ、記録媒体Pを供給するための供給モータ、維持機構を動作させるための維持モータなどが含まれる。
ここで、主走査モータ4の動作制御を例に挙げて、CPU101とFPGA102のモータ制御部115との連携による制御の具体例を説明する。 まず、CPU101がモータ制御部115に対して、主走査モータ4の動作開始指示とともに、キャリッジ3の移動速度および移動距離を通知する。 この指示を受けたモータ制御部115は、CPU101から通知された移動速度および移動指示の情報をもとに駆動プロファイルを生成し、センサ処理部114から供給されるエンコーダ値(エンコーダセンサ9のセンサ信号を処理して得られた値)との比較を行いながら、PWM指令値を算出してモータドライバ106に出力する。 モータ制御部115は、所定の動作を終了するとCPU101に対して動作終了を通知する。 なお、ここではモータ制御部115が駆動プロファイルを生成する例を説明したが、CPU101が駆動プロファイルを生成してモータ制御部115に指示する構成であってもよい。 CPU101は、印字枚数のカウントや主走査モータ4のスキャン数のカウントなども行っている。
記録ヘッド制御部116は、ROM104に格納されたヘッド駆動データ、吐出同期信号LINE、吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107に渡して、駆動波形生成回路107に共通駆動波形信号Vcomを生成させる。 駆動波形生成回路107が生成した共通駆動波形信号Vcomは、ヘッド中継基板200に実装された後述の記録ヘッドドライバ210に入力される。
図4は画像処理部310の構成例を示す機能ブロック図である。
画像処理部310は、受付けた画像データについて、階調処理、画像変換処理などを行い、記録ヘッド制御部116で処理可能な形式の画像データに変換する。そして、画像処理部310は、変換後の画像データを、記録ヘッド制御部116へ出力する。
詳細には、画像処理部310は、インターフェイス41と、階調処理部42と、画像変換部43と、画像処理部RAM44と、を有する。
インターフェイス41は、画像データの入力部であり、CPU101、およびFPGA102との通信インターフェイスである。階調処理部42は、受付けた多値の画像データに階調処理を行い、小値の画像データへ変換する。小値の画像データは、圧電素子14が吐出する液滴の種類(大滴、中滴、小滴)に等しい階調数の画像データである。そして、階調処理部42は、変換した画像データを、画像処理部RAM44上に1バンド分以上保持する。1バンド分の画像データとは、圧電素子14が一度の主走査方向Xの走査で記録可能な最大の副走査方向の幅に相当する画像データを指す。
画像変換部43は、画像処理部RAM44上の1バンド分の画像データについて、主走査方向Xへの1度の走査(1スキャン)で出力する画像単位で、画像データを変換する。この変換は、インターフェイス41を介してCPU701から受付けた、印字順序、および印字幅(=1スキャンあたりの画像記録の副走査幅)の情報に従い、圧電素子14の構成に合わせて変換する。
印字順序、印字幅は記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する1パス印字でも良く、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査で画像を形成するマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向に記録ヘッドを並べて、同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
印字幅とは、圧電素子14の一度の主走査方向Xへの走査(1スキャン)で記録する画像の、副走査方向Yの幅を示す。本実施の形態では、印字幅は、CPU701が設定する。画像変換部43は、変換した画像データSD'を、インターフェイス41を介して出力する。
画像処理部310の機能は、FPGAやASIC等のハードウェア機能として実行されても良いし、画像処理部310内部の記憶装置に記憶された画像処理プログラムによって実施されるものであっても良い。
また、画像処理部310の機能は画像形成装置の内部ではなく、コンピュータにインストールされたソフトウェアで行っても良い。
図5は、記録ヘッド制御部116、駆動波形生成回路107、記録ヘッドドライバ210の構成例を示すブロック図である。
記録ヘッド制御部116は、吐出のタイミングのトリガーとなるトリガー信号Trigを受信すると、駆動波形信号の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成回路107へ出力する。さらに、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107へ出力する。(図3参照)。 駆動波形生成回路107は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで共通駆動波形信号Vcomを生成する。
さらに、記録ヘッド制御部116は、画像処理基板300に設けられた画像処理部310から画像処理後の画像データSD'を受け取り、この画像データSD'をもとに、圧電素子14の各ノズルから吐出させる液滴の大きさに応じて共通駆動波形信号Vcomの所定波形を選択するためのマスク制御信号MNを生成する。 マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。そして、記録ヘッド制御部116は、画像データSD'と、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNとを、記録ヘッドドライバ210に転送する。
記録ヘッドドライバ210は、図5に示すように、シフトレジスタ211、ラッチ回路212、階調デコーダ213、レベルシフタ214、およびアナログスイッチ215を備える。
シフトレジスタ211は、記録ヘッド制御部116から転送される画像データSD'および同期クロック信号SCKを入力する。 ラッチ回路212は、シフトレジスタ211の各レジスト値を、記録ヘッド制御部116から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
階調デコーダ213は、ラッチ回路212でラッチした値(画像データSD')とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ214は、階調デコーダ213のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ215が動作可能なレベルへとレベル変換する。
アナログスイッチ215は、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力でオン/オフするスイッチである。 このアナログスイッチ215は、圧電素子14が備えるノズルごとに設けられ、各ノズルに対応する圧電素子の個別電極に接続されている。 また、アナログスイッチ215には、駆動波形生成回路107からの共通駆動波形信号Vcomが入力されている。 また、上述したようにマスク制御信号MNのタイミングが共通駆動波形信号Vcomのタイミングと同期している。したがって、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチ215のオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形信号Vcomを構成する駆動波形の中から各ノズルに対応する圧電素子に印加される波形が選択される。その結果、ノズルから吐出される液滴の大きさが制御される。
ここで、画像形成装置におけるサテライトの影響について説明する。なお、以降では、主液滴、又はサテライトが記録ヘッドから吐出され、大気中を飛翔する速度を液滴速度と称する。また主液滴、又はサテライトが記録媒体に「到達する」ことを「着弾する」と称し、着弾した位置を「着弾位置」と称する場合がある。さらに記録媒体に着弾し、付着した主液滴、及びサテライトをそれぞれ主液滴画像、及びサテライト画像と称する。
図6は、サテライトによるチリが発生した画像の一例を示している。(a)は、記録媒体52に形成された1ドットのライン画像、すなわち罫線画像を示している。実線の矢印で示された搬送方向51は、キャリッジ3の搬送方向である。サテライトは、主液滴に対して液滴速度が遅いため、記録媒体52に遅れて着弾する。その結果、図6(a)に示されるように、記録媒体52で主液滴画像53に対して搬送方向上流側にずれて、サテライト画像54が形成されている。このような記録媒体52上でのサテライト画像54はチリと呼ばれ、主液滴により形成された罫線画像を滲ませる等の不具合を生じさせる。図6(b)は、図6(a)の一部の拡大図である。
図7は、サテライトによるチリが発生したバーコード画像の一例を示している。(a)は、記録媒体52に形成されたバーコード画像の一部を示している。実線の矢印で示された搬送方向51は、図6と同様にキャリッジ3の搬送方向である。(b)は、(a)において点線60で示した部分の拡大図である。主液滴により形成されたバーコード画像61に対して搬送方向上流側にずれて、サテライト画像62が形成されている。図示されているようなLadderパターンのバーコード画像を形成する場合に、サテライトが発生するとバーコード画像の白紙部の濃度が高くなる。
図8は、記録媒体の白紙部におけるサテライト画像の被覆率とバーコードの可読率との関係の一例を示している。横軸はサテライト画像の被覆率であり、右にいくほど被覆率が高い。またサテライトの発生率が高いほど、サテライト画像の被覆率は高くなる。縦軸はバーコードの可読率を表し、上にいくほど可読率が高い。
バーコードは濃淡差が大きいほど可読性が良い。そのためサテライト画像によって白紙部の濃度が高くなると、バーコード画像との濃淡差が小さくり、その結果、バーコードの可読率が低下する。範囲71は可読不可の範囲を示しており、サテライト画像の被覆率が高くなりすぎると、バーコードを読み取ることができなくなる。
次に、駆動波形による記録ヘッド2の駆動周波数とサテライトとの関係を、図9~10を参照して説明する。
図9は、駆動波形による記録ヘッド2の駆動周波数と、記録ヘッド2から吐出された主液滴の液滴速度との関係の一例を示している。横軸は駆動周波数を表し、縦軸は液滴速度を表している。なお、この場合の駆動波形における電圧、及びパルス幅は、駆動周波数によらず一定である。
図9に示されているように、駆動周波数が高くなると液滴速度が速くなる。液滴速度が速いほどサテライトが発生しやすい。また液滴速度が速いほど、吐出直後におけるノズル部の液体の振動、すなわちメニスカスの残留振動が大きい。なおメニスカスとは、ノズル部における液体と空気の界面である。残留振動が大きいと、駆動波形により液体に所望の振動を与えることができず、記録ヘッドから液体が吐出されない不吐出や、吐出された液滴が曲がる吐出曲りといった不具合が生じる。
液滴速度は駆動波形の電圧等によって調整できるため、図9において、60kHzでサテライトが発生しない液滴速度になるように駆動波形の電圧等を調整すると、20kHz等の低い周波数で駆動したときの液滴速度が遅くなる。
また図10は、液滴速度と液滴の着弾位置ばらつきとの関係の一例を示している。横軸は、ノズル1列の各ノズルから吐出される液滴の平均速度を表している。縦軸は、同様にノズル1列の各ノズルから吐出される液滴の着弾位置ばらつきを表している。破線で示したプロット91は、ノズルから記録媒体までの距離が長い場合であり、一点鎖線で示したプロット92は、ノズルから記録媒体までの距離が短い場合である。
液滴速度が遅いほど、各ノズル間の速度の差の影響が大きくなり、着弾ばらつきが増大している。またノズルから記録媒体までの距離が長いほど、同様に各ノズル間の速度の差の影響が大きくなり、着弾ばらつきが多くなっている。
このように図9~10は、駆動周波数、すなわち駆動周期の調整によりサテライトを抑制すると、記録ヘッドから吐出される液滴の液滴速度が遅くなり、着弾ばらつきを増大させる場合があることを示している。着弾ばらつきの増大は、形成される画像の品質を低下させる。
本実施形態では、吐出において、直後の駆動周期で液体を吐出させない場合に、非吐出パルス波形の電位を変更する。これにより駆動周期を変えることなく、サテライトを抑制している。この詳細を以下に説明する。
図11は、本実施形態の画像形成装置1の有する調整部80の機能構成の一例を示している。調整部80は、吐出有無判定部81と、非吐出パルス波形電位変更部82とを有し、駆動波形生成回路107に接続している。
吐出有無判定部81は、吐出において、直後の駆動周期で液体を吐出するかを判定する。具体的には、例えば記録ヘッド2が有する所定のノズルから液体を吐出させ、Nライン目の画像を記録媒体11に形成する場合、吐出有無判定部81は、N+1ライン目の画像形成でこのノズルから液体を吐出させるかを判定する。判定結果は、非吐出パルス波形電位変更部82に出力される。
非吐出パルス波形電位変更部82は、N+1ライン目の画像形成でこのノズルから液体を吐出させないと吐出有無判定部81により判定された場合には、駆動波形を生成する元のデータとなる駆動波形データの一部を構成する非吐出パルス波形の電位を変更する。N+1ライン目の画像形成でこのノズルから液体を吐出させると吐出有無判定部81により判定された場合には、このような変更は行われない。
調整部80による駆動波形データは、駆動波形生成回路107に出力され、駆動波形が生成される。駆動波形は、記録ヘッドドライバ210に出力され、記録ヘッド2は駆動波形に基づき、液体を吐出する。
なお、調整部80の機能は、例えばFPGA102の記録ヘッド制御部116等により実現される。又はCPU101により実現するようにしても構わない。
上記では、駆動波形を生成する元のデータとなる駆動波形データを変更する例を示したが、駆動波形生成回路107により生成された後に、駆動波形を変更するようにしてもよい。この場合の調整部80の機能は、例えば専用の電気回路等により実現される。
また、駆動波形生成回路107の有する機能を記録ヘッド2が有するような構成としてもよい。
調整部80は、「調整部」の一例であり、駆動波形生成回路107は、「駆動波形生成部」の一例である。
上記のような駆動波形の変更とその作用を、図12~13を参照して詳述する。
図12は、駆動波形の一例を示している。横軸は時間、縦軸は電位をそれぞれ表している。図12において、太実線で示された駆動波形データ110は、時間に伴う電圧の変化である。駆動波形データ110のうち、電位保持要素K1、K2、K3、P1、及びP2は、電位を一定に保持する。また収縮要素Tf1、及びTf2は、圧電素子により記録ヘッド2の個別液室を収縮させ、膨張要素Tr1、及びTr2は、圧電素子により記録ヘッド2の個別液室を膨張させる。
収縮要素Tf1により個別液室内に負圧を発生させ、電位保持要素P1で一定期間、電位を保持した後、膨張要素Tr1により個別液室内に正圧を発生させる。この正圧により液体が吐出される。
個別液室の負圧がピークになったタイミングで、正圧を発生させると、液体の圧力振動が最も効率的に利用される状態、つまり共振状態となる。個別液室の液体の負圧がピークになるタイミングは、個別液室と液体の粘度等で決まる固有振動周期Tc毎で異なる。通常、この固有振動周期Tcに応じて、電位保持要素P1で電位が保持される期間、すなわちパルス幅が決定される。
収縮要素Tf1、電位保持要素P1、及び膨張要素Tr1は、液体を吐出させるための「吐出パルス波形」の一例である。
一方、膨張要素Tr2、電位保持要素P2、及び収縮要素Tf2を有するパルス波形は、吐出直後のメニスカスの残留振動を抑制させるため、残留振動に対してカウンターとなる圧力を加える制振パルス波形である。この制振パルス波形は、液体を吐出させない「非吐出パルス波形」の一例であり、以下では非吐出パルス波形と称する。
本実施形態における「非吐出パルス波形の電位を変更」とは、電位保持要素P2の電位を変更することをいう。一例として、電位保持要素P2aは、電位保持要素P2に対し、電位保持要素の電位が電位V0から電位V1に変更されたものである。この変更では、電位保持要素の開始時間T1と終了時間T2を固定し、電位のみ小さくする。そのため、変更後の膨張要素Tr2aとTf2aの単位時間当たりの電位変化は、変更前に対して小さくなる。なお、P2aは一例であり、電位保持要素P2に対し、電位保持要素の電位を上げることも「非吐出パルス波形の電位を変更」することに含まれる。開始時間T1と終了時間T2までの期間は、非吐出パルス波形における「電位を一定に保持する期間」の一例である。
このような「非吐出パルス波形の電位を変更」することの作用の一例について、図13を参照して説明する。図13は、非吐出パルス波形がサテライトとメニスカス残留振動に与える作用の一例を説明する図である。(a)は駆動波形データを示し、(b)は、吐出直後のメニスカスの残留振動を示している。
図13(a)において、実線で示された駆動波形データ121は、非吐出パルス波形の電位が変更されていないものである。破線で示された駆動波形データ122は、非吐出パルス波形の電位が比較的大きく変更されたものである。一点鎖線で示された駆動波形データ123は、非吐出パルス波形の電位が比較的小さく変更されたものである。
図13(b)において、横軸は時間、縦軸はメニスカス変位を表している。時間「0」の状態は、記録ヘッド2に駆動波形が入力される前であり、個別液室に圧力が加わっていない状態である。
時間「0」の状態から記録ヘッド2に駆動波形が入力されると、吐出パルス波形による負圧によりメニスカスが個別液室の内側方向に引き込まれる。その後、吐出パルス波形による正圧によりメニスカスが個別液室の外側方向、すなわち吐出方向に押し出される。その結果、時間124のタイミングで液体が吐出される。時間124以降の時間のメニスカス変位は、吐出直後のメニスカスの残留振動である。
図13(b)においても図13(a)と同様に、実線で示された変位125は、非吐出パルス波形の電位が変更されていない駆動波形を用いた場合のメニスカス変位である。破線で示された変位126は、非吐出パルス波形の電位が比較的大きく変更された駆動波形を用いた場合のメニスカス変位である。一点鎖線で示された変位127は、非吐出パルス波形の電位が比較的小さく変更された駆動波形を用いた場合のメニスカス変位である。
また図13(b)において期間Tで示された期間は、駆動波形による記録ヘッド2の駆動周期である。時間128は、画像におけるNライン目の吐出を開始するタイミングを示し、時間129、及び130は、同様にN+1ライン目、及びN+2ライン目の吐出を開始するタイミングを示している。
ここで、駆動波形データ121~123に基づく駆動波形を用いた吐出により、液体を記録媒体に着弾させ、主液滴画像とサテライト画像との距離Lを計測すると、駆動波形データ123による距離Lが最も大きくなった。駆動波形データ121による距離Lが次に大きく、駆動波形データ122による距離Lが最も小さくなった。これは、非吐出パルス波形における電位保持要素の電位が高いほど、サテライト抑制の効果が大きいことを示している。
一方、図13(b)に示されているように、変位125の残留振動による変位が最も小さく、変位127の残留振動による変位が次に小さく、変位126の残留振動の変位が最も大きい。
安定して吐出させることが可能なメニスカスの残留振動による変位の範囲を、許容範囲131とすると、変位126、及び127では、N+1ライン目の吐出のタイミングを示す時間129での変位は、許容範囲131を超えている。そのため、N+1ライン目では安定吐出ができず、不吐出や吐出曲りといった吐出不良が発生する場合がある。
本実施形態では、連続吐出する場合、つまり直後の駆動周期で液体を吐出させる場合は、非吐出パルス波形の電位を変更しない駆動波形データ121に基づき液体を吐出させる。これによりメニスカスの残留振動を抑制し、液体を安定吐出させることができる。そして直後の駆動周期で液体を吐出させない場合は、非吐出パルス波形における電位保持要素の電位を高くした駆動波形データ122に基づき液体を吐出させる。これによりサテライトを抑制することができる。
例えば、Nライン目とN+2ライン目で吐出させ、N+1ライン目では吐出させない場合、Nライン目の吐出で駆動波形データ122を用いたとしても、N+2ライン目の吐出を行う時には、メニスカスの残留振動は減衰している。1駆動周期分の吐出させない期間が確保されているためである。その結果、メニスカスの残留振動は許容範囲131の範囲内に収まり、安定吐出が可能となる。
次に、本実施形態の効果について、図14~15を参照して説明する。
図14は、本実施形態の画像形成装置1によるサテライト抑制の効果の一例を説明する図である。図14は、搬送方向51に搬送されるキャリッジ3に固定された記録ヘッド2からの吐出により画像形成を行った例を示している。(a)はNライン目が形成された画像、(b)はNライン目とN+1ライン目が形成された画像、(c)はNライン目とN+1ライン目とN+2ライン目が形成された画像である。
この場合、Nライン目、及びN+1ライン目のための吐出は、「直後の駆動周期で液体を吐出させる場合」に該当する。N+2ライン目のための吐出は、「直後の駆動周期で液体を吐出させない場合」に該当する。
図14(a)では、主液滴像131aによりNライン目の画像が形成され、主液滴像131aから搬送方向上流にずれてサテライト像132aが形成されている。
図14(b)では、主液滴像131aによるNライン目の画像に対し、搬送方向上流の位置に、主液滴像131bによるN+1ライン目の画像が形成されている。また主液滴像131bから搬送方向上流にずれてサテライト像132bが形成されている。サテライト像132aは、主液滴像131bに覆われて視認されなくなっている。
図14(c)では、主液滴像131aによるNライン目の画像に対し、搬送方向上流の位置に、主液滴像131bによるN+1ライン目の画像が形成され、さらに搬送方向上流の位置に、主液滴像133によるN+2ライン目の画像が形成されている。サテライト像132bは、主液滴像133に覆われて視認されなくなっている。主液滴像133は、非吐出パルス波形の電位が変更された駆動波形で吐出された液体で形成されたものである。非吐出パルス波形の電位の変更により、サテライトが抑制され、視認されなくなっている。
一方、図15は、本実施形態の画像形成装置1によるサテライト抑制の効果の別の例を説明する図である。図15は、図14と同様に、搬送方向51に搬送されるキャリッジ3に固定された記録ヘッド2からの吐出により画像形成を行った例を示している。(a)は本実施形態を適用していない場合であり、(b)は本実施形態を適用した場合である。図15(a)、(b)において薄いハッチングで示された主液滴像141は、非吐出パルス波形の電位が変更されていない駆動波形によるものであり、サテライト像を伴っている。但し、「直後の駆動周期で液体が吐出されている」場合には、吐出された液体によりサテライト像は覆われ見えなくなっている。
濃いハッチングで示された主液滴像142は、非吐出パルス波形の電位が変更された駆動波形によるものであるため、サテライト像が生じていない。図15(a)に対し、図15(b)ではサテライト像、すなわちチリが視認されない。
このようにして、サテライト、及びサテライト像が抑制される。つまり、「直後の駆動周期で液体を吐出させる場合」には、非吐出パルス波形による制振作用により残留振動が抑制され、直後の駆動周期における液体の吐出の安定性が確保される。制振作用のある非吐出パルス波形によりサテライトが発生するが、サテライト像は、直後の駆動周期で吐出された液体による主液滴像で覆われるため、視認されることはない。
一方、「直後の駆動周期で液体を吐出させない場合」には、制振作用の小さい非吐出パルス波形によりサテライトが抑制され、サテライト像は生じず、視認されない。制振作用の小さい非吐出パルス波形であるため、残留振動が大きくなるが、直後の駆動周期では液体を吐出させないため、残留振動による吐出の不安定性の影響は受けない。
さらに、サテライトの抑制のために駆動波形の駆動周期を変化させていないため、記録ヘッドから吐出される液滴の液滴速度は変化しない。そのため液滴速度の変化に伴う着弾ばらつきの増大は生じず、形成される画像の品質が低下することもない。
図16は、本実施形態の画像形成装置1による処理の一例を示すフローチャートである。
まずステップS1601で、Nライン目の吐出において、吐出有無判定部81はN+1ライン目で吐出をするかを判定する。
続いて、ステップS1601でN+1ライン目で吐出をすると判定した場合は、吐出有無判定部81は、駆動波形生成回路107で生成される駆動波形の元となる駆動波形データの変更を行わず、駆動波形データを駆動波形生成回路107に出力する。
一方、ステップS1601でN+1ライン目で吐出をしないと判定した場合は、ステップS1603において、非吐出パルス波形電位変更部82は、駆動波形データにおける非吐出パルス波形の電位保持要素の電位を変更する。非吐出パルス波形電位変更部82は、変更した駆動波形データを駆動波形生成回路107に出力する。
続いて、ステップS1605において、駆動波形生成回路107は、入力された駆動波形データに基づき、駆動波形を生成し、記録ヘッドドライバ210に出力する。
続いて、ステップS1607において、記録ヘッドドライバ210は、記録ヘッド2を駆動し、Nライン目の画像形成のための液体を吐出する。
以上説明してきたように、本実施形態によれば、駆動周期を変えることなく、サテライトを抑制することができる。またサテライト像、すなわちチリの発生を抑制することができる。
なお、本実施形態では、駆動波形において吐出から非吐出に切り替わるタイミングで、制振パルス波形、すなわち非吐出パルス波形の電位を変更する。上記では、非吐出パルス波形がメニスカスを押し出す波形、すなわち所謂プッシュ波形である場合を例に説明したが、これに限定されることはない。例えば、図17に示すように、メニスカスを引き込む波形、すなわち所謂プル波形で、メニスカスの残留振動を制振する場合があるが、このような場合にも本実施形態を適用可能である。なお、図17で、期間161は吐出パルス波形を示し、期間162は非吐出パルス波形を示している。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の画像形成装置について説明する。なお、第1の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
本実施形態の画像形成装置1aでは、記録ヘッドの備える複数のノズルで駆動波形を共有し、共通の駆動波形により各ノズルから液体を吐出させる。
図18は、本実施形態の画像形成装置1aの有する調整部80aの機能構成の一例を示すブロック図である。調整部80aは、吐出有無判定部81aを有している。
吐出有無判定部81aは、N+1ライン目で、吐出するノズルの数がA個以上あるかを判定する。
図19は、本実施形態の画像形成装置1aによる処理の一例を示すフローチャートである。
まずステップS1901で、Nライン目の吐出において、吐出有無判定部81aはN+1ライン目で、吐出するノズルの数がA個以上あるかを判定する。なお、「A個」は、「所定の数」の一例である。
続いて、ステップS1901でN+1ライン目で吐出するノズルの数がA個以上と判定した場合は、吐出有無判定部81aは、駆動波形生成回路107で生成される駆動波形の元となる駆動波形データの変更を行わず、駆動波形データを駆動波形生成回路107に出力する。
一方、ステップS1901でN+1ライン目で吐出するノズル数がA個未満と判定した場合は、ステップS1903において、非吐出パルス波形電位変更部82は、駆動波形データにおける非吐出パルス波形の電位保持要素の電位を変更する。非吐出パルス波形電位変更部82は、変更した駆動波形データを駆動波形生成回路107に出力する。
続いて、ステップS1905において、駆動波形生成回路107は、入力された駆動波形データに基づき、駆動波形を生成し、記録ヘッドドライバ210に出力する。
続いて、ステップS1907において、記録ヘッドドライバ210は、記録ヘッド2を駆動し、Nライン目の画像形成のための液体を吐出させる。
本実施形態によれば、複数のノズルで共通の駆動波形を用いて吐出する場合においても、直後の駆動周期で液体を吐出させない場合に、非吐出パルス波形の電位保持要素の電位を変更することで、サテライトを抑制することができる。
なお、上記以外の効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態の画像形成装置について説明する。なお、第1~2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
本実施形態の画像形成装置1bでは、2つ以上の吐出パルス波形の期間と2以上の非吐出パルス波形の期間が含まれる駆動波形を用いて、記録ヘッドを駆動し、液体を吐出させる。
図20は、本実施形態の画像形成装置1bで用いられる駆動波形の一例を示している。期間191は、第1の吐出パルス波形の期間であり、期間192は、第1の非吐出パルス波形の期間である。期間193は、第2の吐出パルス波形の期間であり、期間194は、第2の非吐出パルス波形の期間である。図20に示される駆動波形は、「複数の吐出パルス波形の期間と、複数の非吐出パルス波形の期間とを含む駆動波形」の一例である。また第1の非吐出パルス波形の期間と第2の非吐出パルス波形の期間は、「1以上の非吐出パルス波形の期間」の一例である。
本実施形態では、直後の駆動周期で液体を吐出させない場合に、第1の非吐出パルス波形、又は第2の非吐出パルス波形の何れか1つ以上の電位保持要素の電位を変更する。これによりサテライトを抑制することができる。なお、電位195は、第1の非吐出パルス波形の電位保持要素の電位である。また電位196は、第2の非吐出パルス波形の電位保持要素の電位である。
上記では、吐出パルス波形の期間と非吐出パルス波形の期間を各1つずつ含む駆動波形の一例を示したが、それぞれ1つ以上が備えられてもよいし、吐出パルス波形と非吐出パルス波形の数が異なっていても構わない。
また、2以上の非吐出パルス波形の電位保持要素の電位を変更する場合、変更量をそれぞれで異ならせてもよい。このようにすることで、サテライトを抑制する波形を最適化、又は適正化することができる。
なお、上記以外の効果は、第1~2の実施形態で説明したものと同様である。
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態の画像形成装置について説明する。なお、第1~3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
本実施形態の画像形成装置1cでは、2つ以上の吐出パルス波形の期間を含み、各吐出パルス波形の有効、又は無効を切り替えて異なる体積の液滴を形成することが可能な駆動波形を用い、記録ヘッドを駆動し、液体を吐出させる。各吐出パルス波形の有効、又は無効は、例えばMNマスクと呼ばれるマスク信号で行うことができる。
図21は、本実施形態の画像形成装置1cで用いられる駆動波形の一例を示している。図21(a)において、期間201、及び203は、それぞれ第1の吐出パルス波形、及び第2の吐出パルス波形の期間であり、期間202、及び204は、それぞれ第1の非吐出パルス波形、及び第2の非吐出パルス波形の期間である。MNマスクにより期間201を有効にし、期間203を無効にすると、体積の小さい小滴が吐出される。期間201、及び203を有効にすると、体積の小さい小滴が2滴吐出され、それらが記録媒体に着弾するまでに結合して1つの大きな大滴になる。このようにして、1つの駆動波形により、吐出される液滴の体積を異ならせることができる。
図21(b)は、期間201、及び202の駆動波形を有効にした場合である。この場合、第1の吐出パルス波形により小滴が形成される。期間202の非吐出パルス波形における電位保持要素の電位205を変更することで、第1の吐出パルス波形により形成される小滴のサテライトが抑制される。
図21(c)は、期間201、203、及び204を有効にした場合である。この場合、第1、及び第2の吐出パルス波形により大滴が形成される。期間204の非吐出パルス波形における電位保持要素の電位206を変更することで、第1、及び第2の吐出パルス波形により形成される大滴のサテライトが抑制される。
図21(d)は、期間201~204を全て有効にした場合である。この場合、第1、及び第2の吐出パルス波形により大滴が形成される。期間202の非吐出パルス波形における電位保持要素の電位207を変更することで、第1、及び第2の吐出パルス波形により形成される大滴のサテライトが抑制される。
図21(e)は、期間203、及び204を有効にした場合である。この場合、第2の吐出パルス波形により小滴が形成される。期間204の非吐出パルス波形における電位保持要素の電位208を変更することで、第2の吐出パルス波形により形成される小滴のサテライトが抑制される。
このように、異なる体積の液滴、すなわち滴種を形成することが可能な駆動波形を用いる場合に、滴種毎にサテライトを抑制する駆動波形を最適化、又は適正化することができる。
なお、上記以外の効果は、第1~3の実施形態で説明したものと同様である。
以上、実施形態に係る液体を吐出する装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
例えば上記では、所謂シリアル型の画像形成装置を例に説明したが、記録ヘッドを走査させない、所謂ライン型の画像形成装置にも適用可能である。