以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置である。装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持している。そして、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。他の部材も同様)が搭載されている。各記録ヘッド34は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有している。そして、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。また、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、記録ヘッド34としては、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部としてのヘッドタンク35a、35bを搭載している。一方、カートリッジ装填部4には各色のインクカートリッジ(メインタンク)10y、10m、10c、10kが着脱自在に装着される。そして、インクカートリッジ10から供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して各ヘッドタンク35に各色のインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向する分離パッド44を備えている。この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備える。そして、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)を備えている。
また、維持回復機構81は、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83を備えている。また、維持回復機構81は、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置している。この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送される。更に、用紙42の先端は搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ56によって搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターンで帯電されている。この帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3及び図4は同ヘッドの液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、流路板101と、振動板部材102と、ノズル板103とを接合している。これにより、液滴を吐出するノズル104が貫通孔105を介して通じる個別液室106、個別液室106に液体を供給する流体抵抗部107、液体導入部108がそれぞれ形成される。そして、フレーム部材117に形成した共通液室110から振動板部材102に形成されたフィルタ109を介してインクが液体導入部108に導入され、液体導入部108から流体抵抗部107を介して個別液室106にインクが供給される。
なお、「個別液室」は、加圧室、加圧液室、圧力室、個別流路、圧力発生室などと称されるものを含む意味である。
流路板101は、SUSなどの金属板を積層して、貫通孔105、個別液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。振動板部材102は各液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの壁面を形成する壁面部材であるとともに、フィルタ部109を形成する部材である。なお、流路板101は、SUSなどの金属板に限らず、シリコン基板を異方性エッチングして形成することもできる。
そして、振動板部材102の液室106と反対側の面に個別液室106のインクを加圧してノズル104から液滴を吐出させるエネルギーを発生するアクチュエータ手段(圧力発生手段)としての柱状の積層型の圧電部材112が接合されている。この圧電部材112の一端部はベース部材113に接合され、また、圧電部材112には駆動波形を伝達するFPC115が接続されている。これらによって、圧電アクチュエータ111を構成している。
なお、この例では、圧電部材112は積層方向に伸縮させるd33モードで使用しているが、積層方向と直交する方向に伸縮させるd31モードでもよい。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば、図3に示すように、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veから下げることによって圧電部材112が収縮し、振動板部材102が変形して個別液室106の容積が膨張する。これにより、個別液室106内にインクが流入する。
その後、図4に示すように、圧電部材112に印加する電圧を上げて圧電部材112を積層方向に伸長させ、振動板部材102をノズル104方向に変形させて個別液室106の容積を収縮させる。これにより、個別液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴301が吐出される。
そして、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veに戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。なお、図5は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行するプログラムを含む各種プログラムなどの固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503とを備えている。また、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509とを備えている。また、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81のキャップ82やワイパ部材83の移動、吸引ポンプ812などを行なう維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510とを備えている。また、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、送液ポンプ241を駆動する供給系駆動部512などを備えている。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、画像読み取り装置、撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像を出力するためドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行なうことも、制御部500で行なうこともできる。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。また、ROM502に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含む。そして、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して記録ヘッド34の圧力発生手段としての圧電部材112に対して与える。これにより、記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがある。I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
次に、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図6のブロック説明図を参照して説明する。
印刷制御部508は、駆動波形生成部701と、データ転送部702とを備えている。駆動波形生成部701は、画像形成時に1印刷周期(1駆動周期)内に複数のパルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する。データ転送部702は、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号MN0〜MN3を出力する。
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ509の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉(ON/OFF)を滴毎に指示する2ビットの信号である。そして、滴制御信号は、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべきパルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711と、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712を備えている。
また、ヘッドドライバ509は、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714とを備えている。
そして、ヘッドドライバ509は、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715を備えている。
このアナログスイッチ715は、各圧電部材112の選択電極(個別電極)に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形Pvが入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号MN0〜MN3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにすることにより、共通駆動波形Pvを構成する所要のパルス(あるいは波形要素)が通過して(選択されて)圧電部材112に印加される。
次に、本発明の第1実施形態における駆動波形について図7を参照して説明する。図7は同駆動波形を説明する説明図である。
なお、以下の実施形態の説明において、駆動波形、駆動パルス、MN信号、吐出波形、吐出パルスは、次の意味を有する用語とする。
駆動波形:ROM502などに記憶した波形データをD/A変換して得られる波形であり、1印刷周期(1駆動周期)相当の波形である。
駆動パルス:駆動波形を構成する単位パルスを示し、1滴吐出(膨張→保持→収縮)を含むパルスである。
MN信号(滴制御信号):駆動波形を入力するアナログスイッチの開閉を滴サイズごとに指示する2ビットの信号である。ここでは、MN信号がONの時に駆動波形の印刷周期にあわせて選択すべき駆動パルス又は波形要素が通過して圧力発生手段に与えられる。
吐出波形:MN信号の切替によって駆動波形から切り出した一連の駆動パルス又は波形要素で構成される波形であり、1印刷周期内で圧力発生手段に与えられる波形である。
吐出パルス:吐出波形を構成する単位パルスを示し、1滴吐出(膨張→保持→収縮)を含む単位吐出波形の意味である。
なお、このほか、非吐出パルス(微駆動パルス)を使用するが図示は省略する。非吐出パルスとは圧力発生手段に印加されるが滴を吐出させない(ノズル内のインクを流動させる)パルスを示す用語として使用する。また、以下で説明するパルスは一例であって、これに限るものではない。
本実施形態は、3種類の滴サイズの液滴(大滴、中滴、小滴)を吐出させる駆動波形の例である。駆動波形生成部701からは図7(a)に示すような駆動波形(共通駆動波形)Vcomが出力される。この駆動波形Vcomは、1印刷周期(1駆動周期)内で、いずれも液滴を吐出させる吐出パルスとなる駆動パルスP1〜P5を時系列で生成した波形である。
各駆動パルスP1ないしP5の波形要素は、次のとおりである。
駆動パルスP1、P3、P4は、いずれも、図8に示すように、基準電位Veから所定のホールド電位まで立ち下がって個別液室106を膨張させる波形要素(膨張波形要素又は引き込み波形要素)aと、立ち下がった電位(ホールド電位)を保持する波形要素(保持波形要素)bと、ホールド電位から立ち上がって個別液室106を収縮させる波形要素(収縮波形要素又は押し込み波形要素)cとで構成される(ただし、ホールド電位は異なる。)。なお、ホールド電位とは当該駆動パルスのうちで最も個別液室106を収縮させる状態の電位を意味するものとする。
駆動パルスP2は、図8に示すように、基準電位Veより低い電位Vfから所定のホールド電位まで立ち下がって個別液室106を膨張させる波形要素(膨張波形要素又は引き込み波形要素)aと、立ち下がった電位(ホールド電位)を保持する波形要素(保持波形要素)bと、ホールド電位から立ち上がって個別液室106を収縮させる波形要素(収縮波形要素又は押し込み波形要素)cとで構成される
駆動パルスP5は、図9に示すように、基準電位Veからホールド電位まで立ち下がって個別液室106を膨張させる膨張波形要素aと、ホールド電位を保持する保持要素bと、ホールド電位から基準電位Veを越える電位まで立ち上がって個別液室106を収縮させる収縮波形要素dと、波形要素dの立ち上がり電位を保持する保持要素e1と、保持要素e1で保持された電位から更に立ち上がって個別液室106を収縮させる収縮波形要素fと、収縮波形要素fの立ち上がり電位を保持する保持要素e2と、保持要素e2の保持電位から基準電位Veとの間に電位差ΔVがある電位Vgまで立ち下がる波形要素gとで構成される。
つまり、この駆動波形Vcomは、始端電位である基準電位Veと終端電位Vgとの間に電位差ΔVが設定された波形である。
図7に戻って、データ転送部702からは図7(b)に示すように小滴用MN信号、中滴用MN信号、大滴用MN信号が出力される。
小滴用MN信号は、駆動パルスP5を選択する信号であり、駆動パルスP4と駆動パルスP5との間で「H」に遷移し、駆動パルスP5が出力された後「L」に遷移する。
中滴用MN信号は、駆動パルスP3と駆動パルスP5を選択する信号であり、駆動パルスP2と駆動パルスP3との間で「H」に遷移し、駆動パルスP3が出力された後「L」に遷移し、駆動パルスP4と駆動パルスP5との間で「H」に遷移し、駆動パルスP5が出力された後「L」に遷移する。
大滴用MN信号は、駆動パルスP1ないしP5を選択する信号であり、駆動パルスP1の引き込み波形要素aの開始点より時間的に前に「H」に遷移し、駆動パルスP5が出力された後「L」に遷移する。
したがって、前回の駆動周期においてアナログスイッチがオフ状態になったとき(滴制御信号が最終的に「L」になったとき)の圧電部材の電位は、駆動パルスP5の選択が終了したときの終端電位Vgに保たれる。
ここで、前述したように駆動波形Vcomの終端電位Vgは始端電位(基準電位)Veに対して電位差ΔVだけ高い電位である。
したがって、今回の駆動周期において滴制御信号(MN信号)が「H」に遷移してアナログスイッチがオン状態になったとき、圧電部材の電位は終端電位Vgから基準電位Veまでデジタル的に立ち下がることになる。
これにより、図10に示すように、最初に与える駆動パルスを選択するときに、終端電位Vgと始端電位(基準電位)Veの電位差ΔVによって、1段目の引き込み波形要素a1が形成される。そして、基準電位Veをホールド電位とするホールド時間b1を経て、最初に選択された駆動パルスの引き込み波形要素aによって、1段目の引き込み波形要素a1で膨張された個別液室106を滴吐出のための収縮開始前の膨張状態まで膨張させる2段目の引き込み波形要素a2が形成される。
具体的には、図7(c)に示すように、小滴用吐出波形では、小滴用MN信号が「H」に遷移し、最初に与える駆動パルスP5を選択するときに、終端電位Vgと始端電位(基準電位)Veの電位差ΔVによって、1段目の引き込み波形要素a1が形成される。なお、1段目の引き込み波形要素a1による膨張工程を「第1膨張工程」とも称する。
そして、基準電位Veをホールド電位とするホールド時間b1を経て、最初に選択された駆動パルスP5の引き込み波形要素aによって、1段目の引き込み波形要素a1で膨張された個別液室106を滴吐出のための収縮開始前の膨張状態まで膨張させる2段目の引き込み波形要素a2が形成される。なお、2段目の引き込み波形要素a2による膨張工程を「第2膨張工程」とも称する。
また、図7(d)に示すように、中滴用吐出波形では、中滴用MN信号が「H」に遷移し、最初に与える駆動パルスP3を選択するときに、終端電位Vgと始端電位(基準電位)Veの電位差ΔVによって、1段目の引き込み波形要素a1が形成される。
そして、基準電位Veをホールド電位とするホールド時間b1を経て、最初に選択された駆動パルスP3の引き込み波形要素aによって、1段目の引き込み波形要素a1で膨張された個別液室106を滴吐出のための収縮開始前の膨張状態まで膨張させる2段目の引き込み波形要素a2が形成される。
なお、中適用吐出波形では、駆動パルスP3の選択終了後に中滴用MN信号が「L」に遷移し、再度、駆動パルスP5を選択するために「H」に遷移するが、このとき駆動パルスP3の戻り電位は基準電位Veであるので、駆動パルスP5を選択するときには電位差による引き込み波形要素は形成されない。
また、図7(e)に示すように、大滴用吐出波形では、大滴用MN信号が「H」に遷移し、最初に与える駆動パルスP1を選択するときに、終端電位Vgと始端電位(基準電位)Veの電位差ΔVによって、1段目の引き込み波形要素a1が形成される。
そして、基準電位Veをホールド電位とするホールド時間b1を経て、最初に選択された駆動パルスP1の引き込み波形要素aによって、1段目の引き込み波形要素a1で膨張された個別液室106を滴吐出のための収縮開始前の膨張状態まで膨張させる2段目の引き込み波形要素a2が形成される。
このように、駆動波形は、始端電位と終端電位との間に電位差が設定された波形であり、最初に与える駆動パルスを選択するとき、終端電位と始端電位との電位差により、第1段目の引き込み波形要素を形成し、最初に選択された駆動パルスで第2段目の引き込み波形要素を形成することで、駆動波形の波形長さを長くすることなく、2段階引き込みが可能になり、また、複数の滴サイズの液滴を吐出する場合に所要の滴サイズの吐出波形のみ2段階引き込みを適用することが可能になる。
ここで、液滴を吐出させる前に個別液室106を2段階で膨張させる(2段階の引き込みを行う)ことによって、撥水膜の磨耗や剥離が生じた場合でも、噴射曲がりを低減することができる。
この点に関し、まず、撥水膜の劣化とメニスカスの溢れについて図11を参照して説明する。図11は同説明に供するノズル部分の拡大説明図である。
まず、図11(a)に示すように、ノズル板103はノズル基材131の表面に撥水膜132が形成されている。この撥水膜132は維持回復動作におけるワイピングなどによる経時的な磨耗などで劣化して、ノズル104の周囲に劣化部分(劣化した撥水膜)132aが生じる。
この場合、通常の静止状態においては、図11(a)に示すように、ノズル104には本来インク300のメニスカスが形成されており、メニスカスはノズルエッジを基点として、液室側にブリッジを形成しており、撥水膜の劣化の影響は少ない状態にある。
しかしながら、図11(b)に示すように、滴吐出後或いは高周波駆動直後のメニスカス溢れなど、インクがノズル104の外側にせり出すような状態が発生したとき、劣化した撥水膜132aによって、メニスカスがノズル中心に対して非対称な形状を形成する。
なお、滴吐出後のメニスカス溢れとは、液滴を吐出すると、ノズル104からの流出に対して発生した共通液室110からのインク流入速度がすぐには静止しないため、勢いあまってノズル104のメニスカス溢れを発生させる現象をいう。
特に、1印字周期内にサイズの大きな滴を吐出する波形(単位時間の射出量が大きい波形)ほど、メニスカス溢れは大きくなる。また、高周波駆動直後のメニスカス溢れとは、高周波駆動によって多量のインクがノズルから流出するのに伴って発生した共通液室110からのインク流入速度が、すぐには静止せず、勢いあまってノズル104のメニスカス溢れを発生させる現象をいう。これは、個別液室の固有振動周期Tcとは異なるリフィル周期Rfを有する現象である。
次に、比較例1の駆動パルスにおける噴射曲がりについて図12を参照して説明する。図12は同噴射曲がりの説明に供するノズル部分の説明図及び比較例1の駆動パルスの説明図である。
比較例1の駆動パルスは、図12の右側部分に示すように、引き込み波形要素aでホールド電位まで1段階の引き込み(1段階の膨張)を行い、保持波形要素bを経て収縮波形要素cで液室の収縮を行うパルスとする。なお、図12では左側部分のノズルメニスカスの状態に対する駆動パルスの波形部分を太線にして示している。
この駆動パルスを使用する場合、図12(a)に示すように、メニスカス溢れが生じた状態で、図12(b)に示すように、駆動パルスの引き込み波形要素aによって個別液室106を膨張させることで、メニスカスはノズル104内に引き込まれる。このとき、劣化した撥水膜132aの部分に一部のインク303が残留してしまう。
この状態から、図12(c)に示すように、駆動パルスの収縮要素(押し込み波形要素)cによって個別液室106を収縮させることで、メニスカスが押し出される。このとき、上述したようにメニスカスがノズル中心に対して非対称な状態から液滴が形成されるために、噴射曲がりが発生する。
次に、本実施形態における噴射曲がりの抑制について図13を参照して説明する。図13は同実施形態による吐出波形を与えたときのノズル部分の説明図及び同最初に与える駆動パルス部分の説明図である。なお、図13では左側部分のノズルメニスカスの状態に対する駆動パルス部分の波形部分を太線にして示している。
この場合には、図13(a)に示すように、メニスカス溢れが生じた状態で、図13(b)に示すように、第1段目の込み波形要素a1によって個別液室106を膨張させることで、メニスカスはノズル104内に引き込まれる。このとき、劣化した撥水膜132aの部分に一部のインク303が残留してしまう。
しかしながら、図13(c)に示すように、第1段目の引き込み波形要素a1から最初に与える駆動パルスの引き込み波形要素aまでの保持期間の間に、メニスカスの揺り戻し(振幅)が発生し、ノズル104内のインクと残留したインク303が合体する。
そこで、図13(d)に示すように、最初に与える駆動パルスの引き込み波形要素aを第2段目の引き込み波形要素a2として、個別液室106を膨張させることで、残留したインク303もノズル104内に引き込まれて、メニスカスはノズル中心に対して対称形状となる。
この状態から、図13(e)に示すように、駆動パルスの収縮要素cによって個別液室106を収縮させることにより、メニスカスが押し出されて液滴が吐出されるが、このとき、メニスカスはノズル中心に対して対称形状であるため、噴射曲がりを生じない。
このようにして、メニスカスの2段階の引き込み(個別液室の2段階膨張)を行うことによって噴射曲がりを抑制することができる。
次に、2段階引き込みを行う場合の比較例2の駆動波形について図14を参照して説明する。
この比較例2の駆動波形は、駆動パルスP101ないしP105を時系列で含む信号である。そして、大滴用吐出波形、中滴用吐出波形、小滴用吐出波形を構成する最初の吐出パルスとなる駆動パルスP101(大滴)、P102(中滴)、P105(小滴)が、それぞれ2段階の引き込みを行う波形要素a1、a2を有する構成としたものである。ただし、ここでは、第1段目の引き込み波形要素a1は、基準電位Veから基準電位Veより低い電位Vfまで立ち下がる波形要素としている。
しかしながら、この比較例2のような波形とすると、駆動波形の波形長が長くなり、結果として駆動周波数が低減して、印刷速度が低下することになる。
これに対して、本実施形態のように、最初に与える駆動パルスを選択するとき、駆動波形の終端電位と始端電位との電位差により、第1段目の引き込み波形要素を形成することで、駆動波形の波形長の増加を抑えつつ、噴射曲がりを抑えることができる。
次に、第1段目の引き込み波形要素を所要の滴サイズの滴を吐出するための吐出波形の先頭駆動パルスに入れられることによる効果について説明する。
つまり、吐出波形の先頭駆動パルス(吐出パルス)を2段膨張型の吐出パルスにすることで、上述したように、メニスカスが溢れた状態でも曲がり量を低減させることが可能となり、劣化ヘッドにおいても高画質画像を形成できる。
ここで、小滴や中滴の先頭駆動パルスは、大滴の吐出波形の先頭以外の駆動パルスを使用することが好ましい。つまり、例えば、小滴、中滴、大滴の着弾位置を同一とするために、着弾時間が一致する速度設計を実施する。このとき、大滴の先頭駆動パルスを小滴の吐出パルスとすると、滴速度が速すぎて、大滴の吐出波形を構成する吐出パルス群として先頭滴がマージしなくなるためである。
したがって、大滴の吐出波形において、先頭吐出パルス以外の吐出パルスを2段膨張型吐出パルスとするメリットはない。むしろ、大滴の吐出波形などの途中の吐出パルス間に2段膨張型のメニスカス振動が存在すると、曲がりの発生要因になる。例えば、吐出パルス直後の振幅の大きなメニスカス振動タイミングで、2段膨張吐出パルスで駆動されると、前の吐出パルスで発生したメニスカスの固有振動周期Tcの振動に対して、1段膨張工程や2段膨張工程の駆動タイミングが悪いと、固有振動周期Tcの振動周期(定在波)を崩し、メニスカスの対象性が低下して次の吐出滴が曲がりやすくなる。また、前の吐出パルスと2段膨張工程により曲がりが発生しない条件は特定の共振に連動したタイミングしか存在しないため、結局波形長が増大してしまったりする。また、次の吐出滴の速度制御範囲を狭めたりすることになる。
そこで、本発明のように滴制御信号による選択を行うことで、電位差による第1段目の引き込み波形要素が形成されるようにすれば、小滴の先頭吐出パルスのみ、ないし中滴の先頭吐出パルスのみというように、目的の吐出パルスのみ2段膨張型吐出パルスに変化させることができる。これにより、パルス間に無用に2段膨張型吐出パルスが発生して、曲がりやマージの尤度が低下するリスクを大幅に回避することが可能となる。
次に、滴制御信号(MN信号)のレベル遷移(駆動パルスの選択動作)によって生成した2段膨張型吐出パルスは、MN信号によって発生する第1の膨張工程の開始点(もしくは終端点)から、駆動パルスの形状で生成される第2の膨張工程の開始点までの間隔Tb1(図10参照)は、3/4Tc〜5/4Tcの範囲内であることが好ましい。
この点について図15及び図16を参照して説明する。
収縮工程の開始点及び収縮工程直前の膨張工程の開始点において、ノズルに形成されたメニスカスが溢れて対称性の良いエッジが形成されていないと吐出滴が曲がってしまうことになる。ただし、この収縮工程直前の膨張工程より更に前の工程において、第1の膨張工程が行われると、上述したように、第1の膨張工程と保持工程の期間で溢れたインクが引き込まれるため、対称性の良いメニスカスが第2の膨張工程の開始前に形成されて滴曲がりが発生しにくくなる。このとき、溢れたインクの量が多いと、ノズルに対称性の良いメニスカスが形成されるまでに時間を要する。
まず、第1の膨張工程で発生させるインクの引込み効果は、個別液室が膨張することで、個別液室の圧力が下がって、ノズルから溢れたインクを引き込む効果と、第1の膨張工程で発生させた個別液室の固有振動周期Tcに連動するメニスカス振動によって個別液室側に大きくメニスカスが引き込まれる効果とを合わせたものである。
そのため、第1の膨張工程の開始点から1/2Tcの時間だけ経過したタイミングが、最もメニスカスが液室側に引き込まれている状態であるため、1/2Tc以降の時間領域で第2の膨張工程が駆動されることが好ましい。
また、第1の膨張工程(1段目の膨張工程)ではメニスカス振動が発生するため、第2の膨張工程(2段目の膨張工程)を含む吐出パルスの吐出滴は、1段目の膨張工程との時間によって大きく速度が変動する。つまり、固有振動周期Tcによるメニスカス振動の影響、共振タイミングや反共振タイミングで滴速度Vjが大きく変動する。
なお、図15に1段目と2段目の膨張パルス(引き込み波形要素)の間隔と滴速度(吐出速度)の関係の一例を示している。
そして、寸法ばらつきや接合ばらつきによって、個別液室の共振周期Tcが変動するため、吐出滴の速度変動を小さくするためには、1段目の膨張工程と2段目の膨張工程の間隔は、共振タイミング近傍(n×Tc近傍)もしくは反共振タイミング近傍([2n−1]/2×Tc近傍)とすることで、ヘッドばらつき(Tcばらつき)による滴速度Vjの変化量を低減することが可能となる。
ヘッドばらつきによる滴速度Vjのばらつきが低減すると、ヘッドごとの着弾ばらつきが低減し画質が向上する。その中でも、1段目と2段目の膨張工程の間隔を共振タイミングn×Tcのタイミングとすることで、吐出効率が増大して消費電力を抑えることができる。
一方、1段目の膨張工程と2段目の膨張工程の間隔を長く取りすぎると、駆動波形の波形長が増大し、印刷速度が低下してしまう。なお、図16にはTcばらつきと吐出速度ばらつきの一例を示している。
よって、波形長を短く、ヘッドばらつきによる滴速度Vjの低下を抑え、消費電力を低減して、溢れ発生時の曲がりを低減することが可能な1段目の引き込み波形要素による膨張開始点と2段目の引き込み波形要素による膨張開始点との間隔Tb1は、1Tc近傍(1Tc±1/4Tc)とすることが好ましい。
より具体的には、
小滴を吐出させるとき、n×Tc±1/8Tc(n=1)の範囲内であり、
大滴を吐出させるとき、(2n−1)/2Tc±1/4Tc(n:自然数)の範囲内である
ことが好ましい。
次に、本発明の第2実施形態における駆動波形について図17を参照して説明する。図17は同駆動波形を説明する説明図である。
本実施形態では、小滴、中滴については、最初に与える駆動パルスよりも時間的に前の段階で、第1段目の引き込み波形要素a1を形成するため、小滴MN信号、中滴MN信号に、最初に与える駆動パルスを選択する前に「H」に遷移させたのち「L」に戻す波形を入れ込んでいる。
この場合、第1段目の引き込み波形要素a1と駆動パルスによる第2段目の引き込み波形要素a2との間に、駆動パルスP2が介在する。
次に、本発明の第3実施形態における駆動波形について図18を参照して説明する。図18は同駆動波形を説明する説明図である。
本実施形態では、駆動パルスP5について、ホールド波形要素e2に続いて立ち下がる波形要素を、電位Vg1まで立ち下がる立ち下がり波形要素g1と、立ち下がり波形要素g1後所定時間を経て、電位Vg2(Vg1>Vg2>Ve)まで立ち下がる立ち下がり波形要素g2とで構成している。
そして、小滴用MN信号は、駆動パルスP3を選択する信号であり、駆動パルスP2と駆動パルスP2との間で「H」に遷移し、駆動パルスP3が出力された後「L」に遷移する。さらに、駆動パルスP5の立ち下がり波形要素g2のタイミングで所定時間「H」に遷移する。これにより、小滴吐出波形を与えた場合の終端電位は電位Vg2になる。
中滴用MN信号は、駆動パルスP3と駆動パルスP5を選択する信号であり、駆動パルスP2と駆動パルスP3との間で「H」に遷移し、駆動パルスP3が出力された後「L」に遷移し、駆動パルスP4と駆動パルスP5との間で「H」に遷移し、駆動パルスP5が出力された後「L」に遷移する。さらに、駆動パルスP5の立ち下がり波形要素g1、g2のタイミングで所定時間「H」に遷移する。これにより、中滴吐出波形を与えた場合の終端電位は最終的な電位Vg2になる。
大滴用MN信号は、駆動パルスP1ないしP5を選択する信号であり、駆動パルスP1の引き込み波形要素aの開始点より時間的に前に「H」に遷移し、駆動パルスP5が出力された後「L」に遷移する。さらに、駆動パルスP5の立ち下がり波形要素g1のタイミングで所定時間「H」に遷移する。これにより、大滴吐出波形を与えた場合の終端電位は電位Vg1になる。
したがって、図19(a)に示すように、小滴用MN信号を遷移させて駆動パルスP3を選択するとき、図19(b)に示すように、前回の駆動周期で吐出した滴が大滴であった場合には、第1段目の引き込み波形要素a1の電位変化量は、電位Vg1と基準電位Veとの電位差ΔV1となる。
また、図19(c)、(d)に示すように、前回の駆動周期で吐出した滴が中滴又は小滴であった場合には、第1段目の引き込み波形要素a1の電位変化量は、電位Vg2と基準電位Veとの電位差ΔV2となる。
なお、今回の駆動周期で中滴を吐出する場合も同様である。
ここで、電位差ΔV1、ΔV2は、1段目の引き込み波形要素a1による引き込み量、すなわち、第1膨張工程における膨張量を規定する。
このように、滴種(滴サイズ)に応じて最終保持電位(終端電位)もしくは開始保持電位が異なるようにして、MN信号の切替によって形成する第1膨張工程の膨張量を、前記あの駆動周期における吐出滴の滴サイズによって異ならせている。
つまり、上述したように、大滴吐出波形の終端電位は、小滴や中滴の吐出波形の終端電位より高い電位で保持されたまま、次の周期の液滴吐出に移行させる。そして、次の周期の吐出波形は、前の吐出滴種によって、MN信号の切替で発生する第1膨張工程の膨張量が異なる。大滴吐出後の第1膨張工程の膨張量は、小滴および中滴吐出後より大きくなることとしている。
なお、最終パルスの制振駆動タイミングや中間電位へのシフトタイミングも、MN信号の切替によって、滴種ごとに最適なタイミングとシフト電圧量に制御可能である。
つまり、図20には1滴吐出後のメニスカス位置の変動と3滴吐出後のメニスカス位置の変化の一例を示している。ここでは1滴の場合は上記駆動パルスP3で吐出したとき、3滴の場合は上記駆動パルスP1,P2,P3で吐出したときで示している。
この図20から分かるように、吐出量が大きいほど、吐出直後に発生するメニスカスの溢れ量が大きくなる(リフィル振幅量が大きくなる)。そして、溢れ量が多いほど、次の吐出滴は曲がりやすく、速度も低下することになる。
そこで、本実施形態のように、MN信号の切替によって形成する2段膨張工程の膨張量を、大滴直後の吐出動作においては、膨張量が大きくなるようにすると、より多くのメニスカスが溢れていても、第1膨張工程で多量に引き込むために曲がり量を低減できる。さらに、第1膨張工程の膨張量を増大させて吐出波形の波高値を増大させることにより、メニスカス溢れによる速度低下を相殺し、前の吐出滴種によらず吐出速度を一定化させることができる。
そして、小滴や中滴といった吐出量が少なく、吐出直後のメニスカス溢れ量が小さい滴種については、次の吐出波形で生成するMN信号の切替による第1膨張工程の膨張量を小さくすることで、メニスカス溢れ量に応じた、曲がり低減制御と速度制御を、滴種ごとに異なる値に制御することができる。
つまり、第1膨張工程の膨張量は、メニスカスが溢れていないのに、膨張量を大きくしすぎると、却って曲がり発生要因になったり、速度が大きくなりすぎることになるため、前の吐出滴種、すなわちメニスカスの溢れ量に応じた膨張量に適宜制御できることが好ましい。
なお、最終パルスの制振駆動タイミングや中間電位へのシフトタイミングも、MN信号の切替によって、滴種ごとに最適なタイミングとシフト電圧量に制御可能である。
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味である。被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。