JP6003128B2 - インクジェット記録装置及びインクジェット記録ヘッドの駆動制御方法 - Google Patents
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Description
インクジェット記録ヘッドは、インク滴(記録液体)を吐出させるためのアクチュエータ手段の種類により、幾つかの方式に大別され、一般にピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式がよく知られている。
バブルジェット(登録商標)方式は、液室内部に発熱体素子を配置し、通電による発熱体の加熱によって気泡を発生させ、気泡の圧力によってインク滴を吐出させる方式である。
そのため、後者のような低増粘状態では、空吐出動作により増粘インクを排出する方法が用いられている。これは、増粘インクを強制的に吐出させることで、インク室内をフレッシュなインクに置き換える技術で、既に知られている。
この液体噴射装置の空吐出動作では、正常吐出時のインク粘度が低温では高く、高温では低いという性質から、空吐出動作においても、低温では電圧の高い波形を用い、高温では電圧の弱い波形を用いている。
しかし、放置された環境温度が高いほど、外気中の飽和水蒸気量が多く、ノズル近傍の水分蒸発速度が高くなるため、インク増粘速度は、高温環境ほど速く低温環境ほど遅くなる。
図1は、本インクジェット記録装置の記録ヘッドを構成するインクジェット記録ヘッド10の液室長手方向に沿う断面図である。図2は、記録ヘッドを構成するインクジェット記録ヘッド10の液室短手方向に沿う断面図である。図3は、記録ヘッドを構成するインクジェット記録ヘッド10の液室平面方向に沿う断面図である。
外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極54となる。他方はダイシング加工では分割されずに導通しており共通電極55となる。
振動板6は、薄膜のダイヤフラム部62と、このダイヤフラム部62の中央部に形成した駆動部56となる積層圧電素子5と接合する島状凸部(アイランド部)61と、フレーム1に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口63となる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成している。ダイヤフラム部62の厚さは3μm、幅は35μm(片側)である。
その後、インク滴吐出の終了に伴い、圧力発生室22内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動電圧(駆動パルス)の放電過程によって圧力発生室22内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室12に流入し、共通液室12からインク流入口63を経て流体抵抗部21を通り、圧力発生室22内に充填される。
図4は前記制御部100の概要を示すブロック図である。
制御部100は、インクジェット記録装置全体の制御を行い、かつその空吐出動作の制御を行うCPU101と、CPU101が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM102と、画像データ等を一時格納するRAM103と、インクジェット記録装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能なNVRAM(不揮発性メモリ)104と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC105とを備えている。
制御部100のCPU101は、ホストI/F106に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC105にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部108からヘッドドライバ109に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト120側のプリンタドライバ121で行っている。
ヘッドドライバ109は、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、インクジェット記録ヘッド10において、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
センサ群115は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、機内の湿度を監視するための湿度センサ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部113は様々なセンサ情報について前記処理を行うことができる。
印刷制御部108は、既に述べたように、画像形成時に1印刷周期内において複数の駆動パルス(即ち駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力すると共に、空吐出動作時に1空吐出周期内において複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部201と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、転送クロック、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部202とを備えている。
なお、滴制御信号M0〜M3は、ヘッドドライバ109の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ215の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、駆動波形非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
図6は、空吐出動作に使用する駆動信号について説明する図であり、図7は、従来の空吐出動作における駆動電圧と温度の関係について説明する図である。
図6Aは空吐出動作に使用する印刷制御部108で作成した駆動波形の例である。縦軸は電圧、横軸は時間を表す。
空吐出では、ノズル近傍の増粘したインクを強制的に吐出する必要がある。そのため、空吐出駆動信号の電圧は一般に印字信号の電圧よりも大きい。図6Bは、駆動波形を構成するパルスのうちの一つを抜き出したものである。図示するパルスの放電要素b1により圧力発生室の体積が膨張し、同保持要素b2(時間幅PW)で圧力室内の体積を一定に保ち、同充電要素b3により圧力室内の体積を収縮させ、インク室内のインクを吐出する。
一般に温度が高いほど飽和水蒸気量が多い、すなわち多くの水が空気中で水蒸気として存在することができる。したがって、ノズルからインク滴を吐出しない状態が継続すると、水分蒸発により、メニスカスの表面だけでなく、ノズル開口部や個別インク室内のインクも、外気に近い領域から徐々に粘度が上昇していく。インクの増粘速度は、インクに含まれる湿潤剤の量や性質にも依存するが、ノズルに張ったメニスカスが晒される外気環境にも大きく依存する。即ち、飽和水蒸気量の多い高温環境ほどインク内の水分の蒸発速度は速く、逆に低温環境では蒸発速度は遅い。
実際のインクジェット記録ヘッド10では、ノズル面にキャップ等で保湿機構を設けているため、外気放置よりも増粘速度は低下するが、高温ほど蒸発速度が速いことに変わりはなく、一定の放置時間後には上記と同様の粘度の逆転が起こる。
したがって、このような放置後の空吐出動作においては、空吐出駆動信号の電圧と温度が図7に示す関係にあるのは好ましくない。つまり、高温であるほど空吐出動作の効率が悪く、低温では電圧が強すぎるために、ミストの発生や電力消費量が大きくなるという問題が生じる。
図10は、放置後空吐出信号の第一の実施形態について説明する図であり、インクジェット記録ヘッド10に適用する放置後空吐出信号の第一の実施形態である。図10Aの実線で示した曲線は、放置後空吐出信号の駆動電圧(吐出電圧)と環境温度の関係、点線で示した曲線は、放置前空吐出信号の駆動電圧(吐出電圧)と環境温度の関係を表す。
2つの曲線の同一温度環境における駆動電圧差ΔVは、環境温度が高いほど大きくなる。図10Bは、空吐出信号電圧と放置時間の関係を表しており、実線で示した曲線が高温放置の場合、点線で示した曲線が低温放置の場合となっている。図10Bの放置時間0における駆動電圧は図10Aの放置前空吐出に対応している。放置前とは、具体的には、印字動作直後から数分程度を意味する。このとき、インクはほぼフレッシュな状態にあるため、粘度は「高温<低温」の関係にある。したがって、その関係に合わせて放置前空吐出の駆動信号の駆動電圧と温度の関係は図10Aの点線曲線のようにするのが一般的である。
したがって、放置後の空吐出動作において、空吐出信号の駆動電圧と放置時間の関係を図10Bのような曲線とすると、例えば、時刻Bでは温度に対する駆動電圧の関係が図10Aの実線のように低温ほど低電圧、高温ほど高電圧の関係となり、インクの増粘度に合わせた電圧を設定して空吐出動作を行うことができる。
これにより、放置時間中にインクの乾燥速度が速い高温ほど強い振動を圧力発生室に生じさせて、増粘インクを強制的に吐出させる。
さらに、図11Aの駆動波形の電圧保持時間twを圧力発生室内のインクを共振させる長さにすると、増粘インクを強い振動で効率よく排出し、かつ、1回の吐出での滴量も稼げるので、最小限の滴数で増粘インクをフレッシュなインクに置き換えることができる。
さらに、図12Aの駆動波形を構成するパルスの電圧保持時間twを圧力発生室内のインクを共振させる長さにすると、より一層増粘インクを効率よく排出することができる
図13Aは多パルスからなる空吐出波形で、縦軸が電圧V、横軸は時間Tを表す。ここでは2つのパルスで構成されているが、パルスの数は2つ以上でもよい。パルスの間隔t1は圧力発生室内のインクを共振させるタイミング(圧力発生室のインクを共振させる長さ)となっている。波形Aの1パルス目の波高値Vaと2パルス目の波高値VbはVa=Vbとなっている。Va(=Vb)は図13Cのように温度に対して変動させ、放置時間中にインクの乾燥速度が速い高温ほど強い振動を圧力発生室に生じさせて、増粘インクを強制的に吐出させる。
したがって、2パルス目で吐出される液滴は1パルス目で吐出される液滴よりも滴速度と滴量を大きくできるので、単パルスで構成される空吐出波形よりも増粘インクを効率よく排出することができる。
このように、一駆動周期(空吐出周期)内で吐出できる滴量は高温ほど少なくなってしまう。しかし、そもそも放置された環境が高温であるほど、インク増粘範囲は広く、フレッシュなインクに置き換えるまでに多くの滴量を排出しなければならない。
そこで、図13Bのように2パルス目の波高値Vbを1パルス目の波高値Vaよりも大きくした波形を形成して使用する。このように、放置された環境の温度が高いほどVbの値が大きくなるように設定すれば、インク振動の減衰が速い分のロスを補うことができる。
図13Cは、縦軸に電圧、横軸に温度をとって、1パルス目の波高値Vaの時間変化を表している。温度と共に波高値Vaが上がっていくのが分かる。
図14は図10の第一の実施形態で示した空吐出動作に使用する駆動電圧と温度の関係を、湿度によって変えたものである。放置される環境湿度が低ければインク増粘速度は速く、環境湿度が高ければインク増粘速度は遅い。
したがって、図14のように、低湿度の時ほど駆動信号の電圧が高くなるように、湿度によって駆動電圧−温度曲線を変えて設定してもよい。
放置後のインク室内のインクは、ノズル近傍の粘度が最も高い。したがって、放置後空吐出動作の初期は強い振動を与えて固いインクを排出させる必要があるが、ノズル近傍の固いインクが排除された後は、インク流入口63を通じてフレッシュなインクが徐々に個別インク室内に送られ、個別インク室内の増粘インクと混じり合い、インク粘度は低下していく。
このときに、波高値VHが大きい強い波形で空吐出動作を続けると、個別液室内に気泡を巻き込んだり、メニスカスが壊れる原因となる。また、インク滴速度が速すぎるとミストも増加する。
これにより、固いインクが排出された後の増粘インク粘度低下期間に、気泡を巻き込んだり、メニスカスを壊すことなく、増粘インクをフレッシュなインクに置き換えることができる。さらに、ミストの軽減化にもなる。
図15Cは、初期波高値VH及び後期波高値VHを温度上昇に合わせて上昇させていく様子を示している。
放置後の空吐出動作の初期はノズル近傍で増粘した固いインクを強制的に吐出する必要があるため、波高値Vaをノズル近傍の固いインクを強制的に排出させるのに充分な値に設定した波形Aで空吐出動作を行い、1空吐出周期の後期すなわちノズル近傍の固いインクが排除された後は、波形Aよりも波高値の低く設定した波形Bにより空吐出動作を行う。
また、1空吐出周期内において波形Bの液滴を先に吐出するパルスほど液滴速度が遅く、後のパルスほど液滴速度が速くし、かつ最終滴が飛翔中にそれ以前に吐出された液滴に追いつくようにすれば、最終滴がそれ以前に吐出された液滴のミストを回収し、ミストの軽減化になる。さらに、波形Bに制振用のパルスを入れればメニスカスをより安定な状態に保つこともできる。
図16Cは図16Aと図16Bのまとめた図であり、図16Dは、1空吐出周期内における空吐出初期の波高値Vaと空吐出後期における波高値Vbが温度と共に上昇していく様子を示したものである。
ノズル近傍の固いインクが排除された後は、インク流入口63を通じてフレッシュなインクが徐々に個別インク室内に送られ、個別インク室内の増粘インクと混じり合い、インク粘度は低下していく。したがって、空吐出動作の中期では波高値VHを下げる。
さらに、空吐出動作の後期ではインク室内はフレッシュなインクの割合が大きくなり、粘度が正常吐出時の値に近づき、高温時粘度<低温時粘度となる。このときに、中期の電圧のまま空吐出を行うと、特に粘度が大きく下がる高温においては、インク室内に与える振動が大きすぎるために吐出滴の速さが速く、多くのミストを発生させたり、さらにひどい場合には気泡を巻き込んだり、メニスカスが破壊される。
そのため、せっかくインク室内のインクがフレッシュなインクに置き換えられたにもかかわらず、正常吐出可能状態を行うことができず、気泡排出やメニスカス安定化のための回復動作を追加で行わなくてはならなくなる。
なお、図16に示した第七の実施形態のように、空吐出動作初期、中期、後期で異なる波形を使用してもよい。
また、実施形態で使用した用語はこれに限定する趣旨ではなく、その代替物や均等物で実施形態を構成して本発明を構成することができる場合は、本発明はそれらも包含する。
Claims (10)
- ノズルと、前記ノズルに連通する圧力発生室と、前記圧力発生室に圧力を発生させる圧力発生素子とを備えたインクジェット記録ヘッドと、前記圧力発生素子に駆動電圧を印加してインクジェット記録ヘッドを駆動するヘッド制御部と、前記ヘッド制御部に駆動電圧を供給する印刷制御部を備えたインクジェット記録装置であって、
前記印刷制御部は、放置時間が、前記ノズル近傍のインク粘度と温度との関係が、インク粘度が高温の場合の方が低温の場合よりも低くなる関係から高温の場合の方が低温の場合よりも高くなる関係に逆転するまでの所定時間未満の時、放置後環境温度が低温の場合のほうが高温の場合よりも駆動電圧を大きく設定した空吐出信号を前記ヘッド制御部に供給し、放置時間が前記所定時間以上の時、放置後環境温度が高温の場合のほうが低温の場合よりも駆動電圧を大きく設定する空吐出信号を前記ヘッド制御部に供給し、
前記ヘッド制御部は、供給される空吐出信号の駆動電圧を前記圧力発生素子に印加して、前記ノズル近傍および前記圧力発生室内の増粘したインクを前記ノズルから吐出させることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記空吐出信号は、温度によって波形形状が異なるように設定される
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項1又は2に記載されたインクジェット記録装置において、
前記空吐出信号は、インク滴を吐出させるパルスを含み、前記パルスのパルス幅が前記圧力発生室内のインクを共振させる長さに設定される
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項3に記載されたインクジェット記録装置において、
前記空吐出信号は、2つ以上のパルスを含むとき、前記パルスの間隔は前記圧力発生室内のインクの振動を共振させるタイミングに設定される
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載されたインクジェット記録装置において、
前記空吐出信号は環境湿度が低いほど駆動電圧が高く、環境湿度が高いほど駆動電圧が低く設定される
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載されたインクジェット記録装置において、
一空吐出周期内において前記空吐出信号を終えた後に第二の空吐出信号が続く空吐出動作を行う
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項6に記載されたインクジェット記録装置において、
前記第二の空吐出信号は、前記空吐出信号より駆動電圧が低い
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項6に記載されたインクジェット記録装置において、
前記第二の空吐出信号は、前記空吐出信号と波形形状が異なる
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項6ないし8のいずれかに記載されたインクジェット記録装置において、
一空吐出周期内において、前記第二の空吐出信号に続く第三の空吐出信号を備え、前記第三の空吐出信号は、環境温度が高温であるほど駆動電圧が低く、環境温度が低温であるほど駆動電圧が高く設定される
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - ノズルと、前記ノズルに連通する圧力発生室と、前記圧力発生室に圧力を発生させる圧力発生素子とを備えたインクジェット記録ヘッドと、前記圧力発生素子に駆動電圧を印加してインクジェット記録ヘッドを駆動するヘッド制御部と、前記ヘッド制御部に駆動電圧を供給する印刷制御部を備えたインクジェット記録装置におけるインクジェット記録ヘッドの駆動制御方法であって、
前記印刷制御部が、前記ノズル近傍のインク粘度と温度との関係が、インク粘度が高温の場合の方が低温の場合よりも低くなる関係から高温の場合の方が低温の場合よりも高くなる関係に逆転するまでの所定時間未満の時、放置後環境温度が低温の場合のほうが高温の場合よりも駆動電圧を大きく設定した空吐出信号を前記ヘッド制御部に供給し、放置時間が前記所定時間以上の時、放置後環境温度が高温の場合のほうが低温の場合よりも駆動電圧を大きく設定する空吐出信号を前記ヘッド制御部に供給する工程と、
前記ヘッド制御部が、供給された空吐出信号の駆動電圧を前記圧力発生素子に印加して、前記ノズル近傍および前記圧力発生室内の増粘したインクを前記ノズルから吐出させる工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの駆動制御方法。
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