本発明において、最大の特徴部分となるものは導電性補助液であり、この導電性補助液は導電性を有していて導電率が電解液より低いものである。この導電性補助液の導電率は、電解液の導電率(約3mS/cm以上)より低ければよいが、数値的には、2mS/cm以下が好ましく、1mS/cm以下がより好ましく、800μS/cm以下がさらに好ましく、また、1μS/cm以上が好ましく、5μS/cm以上がより好ましく、8μS/cm以上がさらに好ましい。
つまり、この導電性補助液は、導電率が電解液のように高くなると、電解コンデンサの特性向上に適さなくなり、また、導電率が低くなりすぎても、電解コンデンサの特性向上への寄与が少なくなるので、前記のように、導電率が1μS/cm〜2mS/cmの範囲のものが好ましい。
本発明において、導電性補助液の導電率は、温度25℃で、株式会社堀場製作所製(以下、簡略化して、「堀場製作所社製」で表す)の導電率測定器(F−55)で測定するが、これと同等の導電率測定器で測定してもよい。
本発明において、この導電性補助液は、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤と、ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物とを含んで構成される。上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤における沸点とは、1atm(つまり、1013.25hPa)下での沸点をいう。
上記のような沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール(沸点:198℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:203℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。なお、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600やポリエチレングリコール1500(ポリエチレングリコールの後の数字は分子量を表す)などのように常圧下では沸点が存在しないものもあるが、どのようなポリエチレングリコールであっても、常圧下150℃未満で沸騰するものはないので、本発明では、このポリエチレングリコ−ルも沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤の範疇に含めるものとする。
このような沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤は、本発明における導電性補助液において、ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物を溶解させる溶媒として用いられているものであるが、本発明において、溶媒として、このような高沸点の有機溶剤を用いるのは、短期的には、電解コンデンサの製造時の溶接工程での内圧上昇を抑えるためであり、長期的には、有機溶剤の揮発を抑制するという理由に基づくものである。
上記特定の芳香族系化合物におけるニトロ基とカルボキシル基とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物としては、例えば、ニトロベンゼンカルボン酸、ニトロベンゼンジカルボン酸、ジニトロベンゼンカルボン酸、ニトロトルエンカルボン酸、ニトロアニソールカルボン酸などが挙げられルが、特にニトロベンゼンカルボン酸、ニトロベンゼンジカルボン酸が、高性能の電解コンデンサが得られやすいことから好ましい。
また、ニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物としては、例えば、ニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸アルキルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジアルキルエステル ジニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステル、ニトロトルエンカルボン酸アルキルエステル、ニトロアニソールカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられ、特にニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジアルキルエステルが、高性能の電解コンデンサが得られやすいことから好ましい。
上記ニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジアルキルエステルなどにおけるアルキル基としては、炭素数が1〜8のものが好ましい。つまり、ニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物としては、例えば、ニトロベンゼンカルボン酸メチルエステル、ニトロベンゼンカルボン酸エチルエステル、ニトロベンゼンカルボン酸プロピルエステル、ニトロベンゼンカルボン酸ブチルエステル、ニトロベンゼンカルボン酸ペンチルエステル、ニトロベンゼンカルボン酸ヘキシルエステル、ニトロベンゼンカルボン酸ヘプチルエステル、ニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルなどアルキル基の炭素数が1〜8のニトロベンゼンカルボン酸アルキルエステルや、ニトロベンゼンジカルボン酸ジメチルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジエチルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジプロピルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジブチルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジペンチルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジヘキシルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジヘプチルエステル、ニトロベンゼンジカルボン酸ジオクチルエステルなどアルキル基の炭素数が1〜8のニトロベンゼンジカルボン酸ジアルキルエステルが好ましい。
本発明において、上記のようなニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物は、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできるが、ニトロ基とカルボキシル基を有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物とニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物とを併用すると、導電性高分子の電子伝導を補助する能力がより高くなり、耐熱性の優れた電解コンデンサが得られやすくなることから、より好ましい。
上記のようにニトロ基とカルボキシル基とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物とニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物とを併用する場合、その両者の割合としては、質量比で、ニトロ基とカルボキシル基とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物:ニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物が1:100〜100:1であることが好ましく、1:5〜10:1であることがより好ましい。
上記導電性補助液においては、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤が溶媒となり、ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物が溶質となるが、このニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物の導電性補助液中における濃度としては、0.1〜30質量%が好ましく、その範囲内で、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、また、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。つまり、ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物の濃度が上記より低い場合は、電解コンデンサのESRが充分に低くならず、耐熱性も悪くなるおそれがあり、また、ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物の濃度が上記より高い場合は、それらの析出が起こりやすくハンドリングが難しくなるだけでなく、電解コンデンサのESRが悪くなるおそれがある。
上記ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物の高沸点有機溶剤への溶解性は必ずしも良好ではないので、導電性補助液中の芳香族系化合物の濃度を高めようとする場合には、例えば、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、エチルヘキシルオキシプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチル−3−エチルイミダゾールなどの主として有機系のアルカリ剤を溶解補助剤として使用することが好ましい。
この溶解補助剤の使用量はニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物の種類や導電性補助液中の濃度などにあわせて適宜決めればよい。
上記導電性補助液には、さらに、ヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物を含ませると、導電性高分子の電子伝導を補助する能力がさらに高まることから好ましい。
このヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物としては、例えば、ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸プロピルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸ペンチルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸ヘキシルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸ヘプチルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸オクチルエステルなどのアルキル基の炭素数が1〜8のヒドロキシベンゼンカルボン酸アルキルエステル、ヒドロキシベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシ安息香酸)、ヒドロキシナフタリンカルボン酸(つまり、ヒドロキシナフトエ酸)、4−(4−ヒドロキシフェノール)ベンゼンカルボン酸、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、p−ヒドロキシフェノールなどが好適に用いられる。
そして、このヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物を導電性補助液中に含有させる場合、その導電性補助液中の濃度は、前記ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物の導電性補助液中の濃度とかかわりを有するので、その説明にあたっては、前記の「ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物」を「芳香族系化合物(A)」とし、この「ヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物」を「芳香族系化合物(B)」として説明すると、この芳香族系化合物(B)の導電性補助液中の濃度は、前記芳香族系化合物(A)との合計量で、前記芳香族系化合物(A)を単独で導電性補助液中に含有させる場合と同程度から若干高めの濃度にすることが好ましい。
この芳香族系化合物(B)(ヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物)を導電性補助液中に含ませる場合の好ましい濃度をあらためて示すと、この芳香族系化合物(B)と前記芳香族系化合物(A)との合計量で、0.2〜50質量%にすることが好ましく、その範囲内で1質量%以上にすることがより好ましく、5質量%にすることがさらに好ましく、また、30質量%以下にすることがより好ましく、20質量%以下にすることがさらに好ましい。つまり、芳香族系化合物(B)と芳香族系化合物(A)との合計濃度が上記より低い場合は、電解コンデンサのESRを充分に低くすることができず、耐熱性も悪くなるおそれがあり、また、芳香族系化合物(A)と芳香族系化合物(B)との合計濃度が上記より高い場合は、それらの析出が起こりやすくハンドリングが難しくなるだけでなく、電解コンデンサのESRが悪くなるおそれがある。
そして、この芳香族系化合物(B)(つまり、ヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物)を導電性補助液中に含有させる場合、芳香族系化合物(A)(つまり、ニトロ基とカルボキシル基またはカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物)との使用比率を特定しておくことが好ましく、その比率としては、質量比で、芳香族系化合物(A):芳香族系化合物(B)が1:100〜100:1であることが好ましく、1:20〜10:1であることがより好ましい。
本発明において、この補助的に導電性補助液に含有させるヒドロキシル基を有する芳香族系化合物に関して、ニトロ基を有しないものとしているのは、このヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物を添加することによって、前記のように、導電性高分子の電子伝導作用をより高めることができ、また耐熱性をより向上させることができるからである。
また、上記導電性補助液に、エポキシ化合物またはその加水分解物、エポキシ化合物またはその加水分解物の重合物、シラン化合物またはその加水分解物、シラン化合物またはその加水分解物の重合物およびポリアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の結合剤を含有させておくと、電解コンデンサの漏れ電流を低減させる作用と耐電圧を向上させる作用が増加することから好ましい。
上記結合剤の導電性補助液中における濃度としては、0.05〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
そして、上記結合剤としてのエポキシ化合物またはその加水分解物としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジル、メタクリル酸グリシジル、エポキシプロパノール( つまり、グリシドール)、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エポキシブタン( つまり、グリシジルメタン) 、エポキシペンタン( つまり、グリシジルエタン) 、エポキシヘキサン( つまり、グリシジルプロパン) 、エポキシヘプタン( つまり、グリシジルブタン) 、エポキシオクタン( つまり、グリシジルペンタン) 、エポキシシクロヘキセン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、エポキシ化合物の重合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられ、エポキシ化合物の加水分解物の重合物としては、例えば、エポキシ化合物の開環物の重合物などが挙げられ、シラン化合物またはその加水分解物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられ、シラン化合物またはその加水分解物の重合物としては、例えば、ポリシロキサン、シリカゾルなどが挙げられ、ポリアルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが挙げられる。
さらに、上記導電性補助液に、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸またはそのエステルを含有させておくと、電解コンデンサの耐熱性を向上させるので好ましい。これは、電解コンデンサの貯蔵中に、上記不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸エステルが自己重合してオリゴマー化やポリマー化を起こし、電解コンデンサ中の導電性補助液が抜け出ていくのを防止することによるものと考えられる。したがって、導電性補助液に溶解する場合は、あらかじめオリゴマー化またはポリマー化したものを添加してもよい。
上記不飽和カルボン酸またはそのエステルの導電性補助液中の濃度としては、0.05〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
本発明において、導電性高分子を合成するためのモノマーとしては、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、アニリンまたはその誘導体などが用いられ、特にチオフェンまたはその誘導体が好ましい。
上記チオフェンまたはその誘導体におけるチオフェンの誘導体としては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3−アルキルチオフェン、3−アルコキシチオフェン、3−アルキル−4−アルコキシチオフェン、3,4−アルキルチオフェン、3,4−アルコキシチオフェンや、上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられ、そのアルキル基やアルコキシ基の炭素数は1〜16が好ましく、特に1〜4が好ましい。
上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンについて詳しく説明すると、上記3,4−エチレンジオキシチオフェンやアルキル化3,4−エチレンジオキシチオフェンは、下記の一般式(1)で表される化合物に該当する。
そして、上記一般式(1)中のRが水素の化合物が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3−Dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4−エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本書では、この「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を「3,4−エチレンジオキシチオフェン」と表示している。そして、上記一般式(1)中のRがアルキル基の場合、該アルキル基としては、炭素数が1〜4のもの、つまり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(1)中のRがメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Methyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−エチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Ethyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−プロピル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Propyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、一般式(1)中のRがブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−ブチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Butyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。また、「2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を、以下、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン」で表わす。そして、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの中でも、メチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンが好ましい。
これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。さらに、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンと3,4−エチレンジオキシチオフェンとを併用することもできる。そして、これらのメチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキフシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンなどの合成法は、本件出願人の出願に係る国際公開第2011/068026号公報、国際公開第2011/074380号公報などに記載されている。
本発明の電解コンデンサにおける導電性高分子としては、導電性高分子の分散液を用いたものと、モノマーをいわゆる「その場重合」で重合させて得られる導電性高分子のいずれも用いることができる。
上記導電性高分子の分散液を用いる場合、その導電性高分子の合成に当たって用いるドーパントとしては、既存のものを各種用い得るが、特にポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などや、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体などの高分子スルホン酸系のポリマーアニオン(高分子ドーパント)が好ましい。
上記ポリスチレンスルホン酸としては、重量平均分子量が10,000〜1,000,000のものが好ましい。
すなわち、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が10,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が1,000,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって、使用しにくくなるおそれがある。そして、上記ポリスチレンスルホン酸としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、20,000以上のものが好ましく、40,000以上のものがより好ましく、また、800,000以下のものが好ましく、300,000以下のものがより好ましい。
上記スルホン化ポリエステルは、スルホイソフタル酸エステルやスルホテレフタル酸エステルなどのジカルボキシベンゼンスルホン酸ジエステルとアルキレングリコールとを酸化アンチモンや酸化亜鉛などの触媒の存在下で縮重合させたものであり、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が5,000〜300,000のものが好ましい。
すなわち、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が300,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものが好ましく、20,000以上のものがより好ましく、また、100,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、例えば、次の一般式(2)
で表される繰り返し単位を有するものが好ましく、このようなフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が5,000〜500,000のものが好ましい。
すなわち、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が500,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものがより好ましく、また、400,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
上記ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などのポリマーアニオンは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。
前記のスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体(以下、これを「スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体」という場合がある)をドーパントとして、チオフェンまたはその誘導体を酸化重合することにより得られる導電性高分子は、導電性が高く、かつ耐熱性が優れているので、ESRが低く、かつ高温条件下における信頼性が高く、しかも漏れ電流が少ない電解コンデンサを製造するのに適している。
上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体を合成するにあたって、スチレンスルホン酸と共重合させるモノマーとしては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるが、上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸スルホヘキシルナトリウム、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシステアリルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシポリオキシエチレン、メタクリル酸メトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸エトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシブチルなどを用い得るが、特にメタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、メタクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
また、上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジフェニルブチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸スルホヘキシルナトリウム、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルグリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルなどを用い得るが、特にアクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のアクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、アクリル酸グリシジルやアクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、アクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
そして、上記不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどの不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物やそれらの加水分解物を用いることができる。この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物の加水分解物とは、例えば、不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物が上記3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合は、メトキシ基が加水分解されてヒドロキシル基になった構造である3−メタクリロキシトリヒドロキシシランになるか、またはシラン同士が縮合してオリゴマーを形成し、その反応に利用されていないメトキシ基がヒドロキシル基になった構造を有する化合物になる。そして、この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
このスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体における、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの比率としては、質量比で、1:0.01〜0.1:1であることが好ましい。
そして、上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体は、その分子量が、重量平均分子量で5,000〜500,000程度のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましく、重量平均分子量で40,000〜200,000程度のものがより好ましい。
このスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体も、前記のポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などの高分子スルホン酸と併用することもできるし、また、このスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体をドーパントとして合成した導電性高分子の分散液と前記高分子スルホン酸をドーパントとして合成した導電性高分子の分散液とを混合して用いることもできる。
次に、ポリマーアニオンをドーパントとしてモノマー(モノマーとしては最も代表的なチオフェンまたはその誘導体を例に挙げて説明する)を酸化重合して導電性高分子を合成する手段について説明すると、上記ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などや、スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体(すなわち、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体)などは、いずれも、水や水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液に対して溶解性を有していることから、酸化重合は水中または水性液中で行われる。
上記水性液を構成する水混和性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの水混和性溶剤の水との混合割合としては、水性液全体中の50質量%以下が好ましい。
導電性高分子を合成するにあたっての酸化重合は、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用することができる。
化学酸化重合を行うにあたっての酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられるが、その過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、10℃〜30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。
電解酸化重合は、定電流でも定電圧でも行い得るが、例えば、定電流で電解酸化重合を行う場合、電流値としては0.05mA/cm2〜10mA/cm2が好ましく、0.2mA/cm2〜4mA/cm2がより好ましく、定電圧で電解酸化重合を行う場合は、電圧としては0.5V〜10Vが好ましく、1.5V〜5Vがより好ましい。電解酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、特に10℃〜30℃が好ましい。また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。なお、電解酸化重合にあたっては、触媒として硫酸第一鉄または硫酸第二鉄を添加してもよい。
上記のようにして得られる導電性高分子は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子の分散液を超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーや遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去することが好ましい。このときの動的光散乱法により測定した導電性高分子の粒径としては、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、また、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、陰イオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成したものを除去し、後述するように、必要に応じて、導電性向上剤やバインダを添加してもよい。
上記のようにして得られた導電性高分子の分散液には、上記のように導電性向上剤を含有させてもよい。このように、導電性高分子の分散液中に導電性向上剤を含有させておくと、該導電性高分子の分散液を乾燥して得られる導電性高分子の被膜などの導電性を向上させ、該導電性高分子を電解質として用いた電解コンデンサのESRを低くすることができる。
これは、電解コンデンサの製造にあたって、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬し、取り出して乾燥したときに、導電性高分子の厚み方向の層密度を高くさせ、それによって、導電性高分子間の面間隔が狭くなり、導電性高分子の導電性が高くなって、該導電性高分子を電解コンデンサの電解質として用いたときに、電解コンデンサのESRを低くさせるものと考えられる。
このような導電性向上剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの高沸点(例えば、150℃以上の高沸点)の有機溶剤や、エリスリトール、グルコース、マンノース、プルランなどの糖類が挙げられるが、特にジメチルスルホキシドやブタンジオールが好ましい。
このような導電性向上剤の添加量としては、分散液中の導電性高分子に対して質量基準で5〜3,000%(すなわち、導電性高分子100質量部に対して導電性向上剤が5〜3,000質量部)が好ましく、特に20〜700%が好ましい。導電性向上剤の添加量が上記より少ない場合は、導電性を向上させる作用が充分に発揮されず、導電性向上剤の添加量が上記より多い場合は、分散液の乾燥に時間を要するようになり、また、かえって、導電性の低下を引き起こすおそれがある。
なお、分散液中における導電性高分子の含有量は、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬し、取り出す時などの作業性に影響を与えるので、通常0.5〜15質量%程度が好ましい。つまり、導電性高分子の含有量が上記より少ない場合は、乾燥に時間を要するようになるおそれがあり、また、導電性高分子の含有量が上記より多い場合は、分散液の粘度が高くなって、電解コンデンサの製造にあたっての作業性が低下するおそれがある。
このようにして得られる導電性高分子の分散液を乾燥して得られた導電性高分子は、その合成にあたってドーパントとして用いたポリマーアニオンの特性に基づき、導電性が高く、かつ耐熱性が優れているので、それを電解質として用いたときに、ESRが低く、かつ高温条件下での使用に際して信頼性が高い電解コンデンサが得られる要因になる。
上記のようにして得られた導電性高分子の分散液を電解コンデンサの作製にあたって用いる際は、その導電性高分子の分散液にコンデンサ素子を浸漬し、取り出して(引き上げて)、乾燥して得られる導電性高分子を電解質として使用に供することになる。この導電性高分子はコンデンサ素子において陽極となる弁金属の表面の上記弁金属の酸化被膜からなる誘電体層上に設けることになる。ただし、コンデンサ素子の他の部位に導電性高分子が付着していてもよい。また、上記のように導電性高分子の分散液にコンデンサ素子を浸漬するのに代えて、導電性高分子の分散液をコンデンサ素子に吹き付けたり、塗布してもよい。
そして、その際、導電性高分子とコンデンサ素子の誘電体層との密着性を高めるために、導電性高分子の分散液にバインダを添加しておくことが好ましい。そのようなバインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレン、シランカップリング剤などが挙げられ、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレンなどが好ましく、特にスルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレンのように、スルホン基が付加されていると、導電性高分子の導電性を向上させることができるので、より好ましい。
上記導電性高分子の分散液を巻回型電解コンデンサの製造にあたって用いる場合、例えば、アルミニウム箔などのような弁金属箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行って上記弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔のような弁金属箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して作製したコンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬し、取り出して、乾燥し、これらの操作を繰り返して導電性高分子の層を形成したのち、上記コンデンサ素子に導電性補助液を含浸させ、その後、外装材で外装して、巻回型電解コンデンサを製造することができる。
上記のように誘電体層上に導電性高分子を設けたコンデンサ素子に導電性補助液を含浸させるには、例えば、上記コンデンサ素子を導電性補助液に浸漬することによって行われるが、コンデンサ素子を導電性補助液から取り出した際に、含浸させた導電性補助液は主としてセパレータや導電性高分子に保持されることになる。つまり、セパレータは多孔質体で構成されているし、また、導電性高分子も微視的には多孔質化しているので、導電性補助液はそれらの孔中に侵入し、その状態で保持されることになる。
上記導電性高分子の分散液をタンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサ、積層型アルミニウム電解コンデンサなどの非巻回型電解コンデンサの作製にあたって用いる場合、例えば、陽極となるタンタル、ニオブ、アルミニウムなどの弁金属の多孔体と、それらの弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を有するコンデンサ素子を、導電性高分子の分散液に浸漬し、取り出した後、乾燥し、この分散液への浸漬と乾燥する工程を繰り返すことによって、導電性高分子の層を形成した後、上記コンデンサ素子に導電性補助液を含浸させ、その後、カーボンペースト、銀ペーストを付け、乾燥した後、外装することによって、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサ、積層型アルミニウム電解コンデンサなどを作製することができる。また、上記のように導電性高分子の分散液にコンデンサ素子を浸漬するのに代えて、導電性高分子の分散液をコンデンサ素子に吹き付けたり、塗布してもよい。
また、「その場重合」により合成する導電性高分子を用いる場合には、例えば、芳香族スルホン酸などの有機スルホン酸をドーパントとして用い、モノマー、酸化剤を含む液に、上記のコンデンサ素子を浸漬し、取り出した後、乾燥して重合を行い、その後、水に浸漬し、取り出し、洗浄した後、乾燥することによって、いわゆる「その場重合」で導電性高分子をコンデンサ素子上に合成した後、それら全体を導電性補助液に浸漬して、導電性補助液をコンデンサ素子に含浸させ、そのコンデンサ素子に所定の外装をすることによって電解コンデンサを製造することができる。この場合においても、モノマー、酸化剤を含む液にコンデンサ素子を浸漬するのに代えて、コンデンサ素子にモノマー、酸化剤を含む液を吹き付けたり、塗布してもよいし、この場合のみならず、前記のように導電性高分子の分散液を用いてコンデンサ素子上に導電性高分子を設ける場合でも、導電性補助液の含浸は、例示したように、コンデンサ素子を導電性補助液に浸漬するのに代えて、導電性補助液をコンデンサ素子に吹き付けたり、塗布してもよい。
導電性高分子の分散液を用いてコンデンサ素子上に導電性高分子を設けるにあたっては、その前処理として、コンデンサ素子をヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と150℃以上の高沸点溶剤とを有機溶剤に溶解した溶液(以下、この溶液を「前処理用溶液」という場合がある)で処理しておくと、得られる電解コンデンサの特性がより向上する。そのような前処理用溶液の調製にあたって用いるヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物としては、次のようなものが挙げられる。
すなわち、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物としては、ベンゼン系のもの、ナフタレン系のもの、アントラセン系のもののいずれも用いることができ、そのベンゼン系のものの具体例としては、例えば、ヒドロキシベンゼンカルボン酸、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、アミノニトロフェノール、ヒドロキシアニソール、ヒドロキシジニトロベンゼン、ジヒドロキシジニトロベンゼン、アルキルヒドロキシアニソール、ヒドロキシニトロアニソール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、トリヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸などが挙げられ、ナフタレン系のものの具体例としては、例えば、ニトロナフトール、アミノナフトール、ジニトロナフトール、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンカルボン酸、トリヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、アントラセン系のものの具体例としては、例えば、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンジカルボン酸、ジヒドロキシアントラセンジカルボン酸、テトラヒドロキシアントラセンジオンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いることができ、また、2種類以上を併用することもできる。そして、上記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物において、特にカルボキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物またはニトロ基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が好ましく、とりわけ、カルボキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物とニトロ基を少なくとも1つ有する環状有機化合物とを併用する場合が好ましい。そして、このカルボキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物とニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族系化合物とを併用する場合において、その両者の割合としては、質量比で、カルボキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物:ニトロ基を少なくとも1つ有する環状有機化合物が1000:1〜1:100が好ましく、50:1〜1:1がより好ましい。
上記カルボキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の具体例としては、前記したようなヒドロキシベンゼンカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンジカルボン酸、アミノヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、アセチルアミノヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸などが挙げられ、ヒドロキシベンゼンカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸などが好ましい。ニトロ基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の具体例としては、例えば、前記したようなニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、ヒドロキシジニトロベンゼン、ジヒドロキシジニトロベンゼン、ヒドロキシニトロアニソール、アミノニトロフェノール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、ニトロナフトール、ジニトロナフトールなどが挙げられ、ニトロフェノール、アミノニトロフェノール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ニトロナフトールなどが好ましい。
そして、上記前処理用溶液の調製にあたって用いる150℃以上の高沸点溶剤としては、前記の導電性補助液の調製にあたって用いた沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤と同様のものを用いることができる。
上記前処理用溶液において、沸点が150℃以上の高沸点溶剤をヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と共存させているのは、得られる電解コンデンサのESRを低くさせ、静電容量を大きくさせるためである。これは上記前処理用溶液を乾燥したときに、上記沸点が150℃以上の高沸点溶剤が一部残ってヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみをよくすることによるものと考えられる。つまり、完全な乾燥状態では、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみが悪く、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物による電解コンデンサの特性向上が充分に達成されないが、上記沸点が150℃以上の高沸点溶剤が一部残っていることによって、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみをよくして、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物による電解コンデンサの特性向上が達成されるようになるものと考えられる。
上記前処理用溶液を、調製するにあたって用いる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなどの低沸点の有機溶剤が用いられる。
上記の低沸点とは、沸点が150℃以上の高沸点溶剤の沸点より低いという意味であり、前処理工程における乾燥は、この溶媒としての有機溶剤の除去を主目的として行われ、乾燥は、通常、この有機溶剤の沸点より高い温度で行われる。
そして、前処理用溶液中の沸点が150℃以上の高沸点溶剤は、乾燥時に、上記有機溶剤と共沸して、そのほとんど取り除かれることになるが、その一部がヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に吸着したような状態で残り、前記のように、その一部残ったものが、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物と導電性高分子とのなじみをよくし、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物による特性向上に寄与するものと考えられる。
上記高沸点溶剤に関して、沸点が150℃以上としているのは、たとえ、それが電解コンデンサ中に残ったとしても、電解コンデンサの耐熱性に悪影響を与えないようにするためと、電解コンデンサの耐熱性の評価にあたっての試験の一つに150℃での貯蔵試験が採用されていることに基づくものである。
そして、上記前処理用溶液中において、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の濃度としては0.1〜50質量%が好ましく、その範囲内で1質量%以上がより好ましく、10質量%以下がより好ましく、また、沸点が150℃以上の高沸点溶剤の濃度としては、0.05〜10質量%が好ましく、その範囲内で0.2質量%以上がより好ましく、5質量%以下がより好ましい。
また、上記前処理用溶液の調製にあたって、有機溶剤としてメタノール、エタノールなどの低級アルコールを用いる場合、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物の溶解性を高めるためには、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどの低級アミン化合物や、アンモニア、イミダゾール、メチルイミダゾール、メチルエチルイミダゾール、メチルブチルイミダゾールなどの塩基性物質を添加してもよい。
さらに、上記前処理用溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジル、メタクリル酸グリシジルなどを添加しておくと、電解コンデンサの耐電圧性を向上させることができるので好ましい。上記のような3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどからなる耐電圧向上剤のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物を含む溶液への添加量は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物に対して、0.1〜1000質量%(すなわち、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する環状有機化合物100質量部に対して耐電圧向上剤0.1〜1000質量部)が好ましく、上記範囲内で、10質量%以上がより好ましく、また、300質量%以下がより好ましい。
上記前処理用溶液による前処理は、コンデンサ素子を前処理用溶液に浸漬し、取り出して、乾燥するか、または前処理用溶液をコンデンサ素子に吹き付けたり、塗布したりした後、乾燥することによって行われる。
また、コンデンサ素子に導電性高分子の分散液を用いて導電性高分子を設ける工程を経由した後、導電性補助液を含浸させる前に、コンデンサ素子を沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する溶液で処理すると、得られる電解コンデンサの特性をより向上させることができる。その際の沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:203℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、グリセロール(グリセリン)(沸点:290℃)、トリエチレングリコール(沸点:288℃)などが挙げられるが、本発明においては、沸点が180℃から210℃のものが作業性や付与する特性の面から特に好ましく、具体的には、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、γ−グチロラクトン(沸点:203℃)が特に好ましい。
また、上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する溶液の調製にあたって用いる溶剤としては、特に限定されることはないが、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール、水、アセトニトリル、アセトン、テトロヒドロフラン、酢酸エチルなどを用い得るが、特に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが好ましい。
そして、上記溶液において、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤の含有量を20質量%以上にするのは、該高沸点有機溶剤の濃度が20質量%より低い場合は、わざわざ、この溶液を用いて処理するにもかかわらず、ESRを低くさせるなど、コンデンサ特性を向上させることが充分に行えないからである。
また、上記のような沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する溶液に、例えば、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチル、p−ニトロフェノール、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチル、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチル、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸プロピル、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、o−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、o−ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチル、m−ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチル、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、ベンゼンジカルボン酸、ジニトロフェノールなどの添加剤を添加すると、コンデンサ特性をさらに向上させることができるので好ましい。その中でも、特にp−ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチル、p−ニトロフェノール、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸が、コンデンサ特性、特にESRを顕著に低減させ、充放電特性を顕著に向上させることから好ましい。これらの添加剤は、上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または上記高沸点有機溶剤を特定割合で含有する溶液中に0.5質量%以上の濃度で添加することが好ましく、1質量%以上の濃度で添加することがより好ましいが、添加量が多くなりすぎると、ESRを増加させるおそれがあるので、20質量%以下の濃度で添加することが好ましく、10質量%以下の濃度で添加することがより好ましい。そして、これらのベンゼン系添加剤は、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボキシエステル基などの官能基を有しているが、それらの異なる官能基を有する添加剤を2種類以上併用すると、特性をより向上させることができるので好ましく、また、1つの化合物中に上記官能基を2種類以上有するベンゼン系化合物を用いると、官能基の異なる2種類以上の添加剤を併用する場合と同等またはそれ以上の効果が得られるので好ましい。
さらに、上記添加剤に加えて、アルコキシシラン化合物、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを添加してもよいし、グリシジル化合物、例えば、エチレングリコールジグリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジル、メタクリル酸グリシジル、グリシド酸、グリシド酸エステル、ペンタエリスリトールグリシジルエーテルなどを添加してもよい。また、エポキシ樹脂や、多価アルコール、例えば、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1500、ジグリセロール、ポリグリセロールなどを添加してもよい。上記のようなアルコキシシラン化合物やグリシジル化合物を添加すると、コンデンサ特性、特に静電容量を大きくさせたり、破壊電圧を高くさせ、耐電圧特性を向上させることができる。また、エポキシ樹脂や上記例示のような沸点が非常に高い多価アルコールを沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤に添加した場合も、同様の効果が得られる。これらの添加剤は、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または上記高沸点有機溶剤を特定割合で含有する溶液中に0.1質量%以上添加することが好ましく、0.5質量%以上添加することがより好ましいが、添加量が多くなりすぎると、ESRを低下させるおそれがあるので、10質量%以下で添加することが好ましく、5質量%以下で添加することがより好ましい。また、これらの添加剤は、例えば、アルコキシシラン化合物とグリシジル化合物というように、系列の異なるものを2種類以上を併用すると、さらに特性を向上させることができるので好ましい。
上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する溶液(以下、この溶液を「中間処理用溶液」という場合がある)によるコンデンサ素子の処理は、導電性高分子を設けたコンデンサ素子を上記中間処理用溶液に浸漬し、取り出して、乾燥するか、または上記コンデンサ素子に上記中間処理用溶液を吹き付けたり、塗布したりした後、乾燥することによって行われる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度や使用量を示す際の%は、特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
まず、最初に、実施例1〜16とそれらと対比すべき比較例1〜4について説明するが、それらの実施例や比較例の説明に先立ち、それらの実施例で用いる導電性補助液の調製例を調製例1〜14で示し、比較例で用いる電解液の調製例を調製例15〜17で示し、実施例などで用いる導電性高分子の分散液の調製例を調製例(I)〜(III)で示す。
調製例1
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに15gのニトロベンゼンカルボン酸と35gのヒドロキシベンセンカルボン酸メチルエステルと3gのジエチルアミンと3gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は240μS/cmであった。
上記エチレングリコールは沸点198℃であって、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤に該当し、上記ニトロベンゼンカルボン酸はニトロ基とカルボキシル基を有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンカルボン酸の導電性補助液中の濃度は約2.7%であり、上記ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルエステルはヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物に該当し、これらニトロベンゼンカルボン酸とヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルエステルとの合計量の導電性補助液中の濃度は約9%であり、ニトロベンゼンカルボン酸とヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルエステルとの比率は、質量比で1:2.33である。そして、上記ジエチルアミンは溶解補助剤に該当し、このジエチルアミンの導電性補助液中の濃度は約0.54%であり、上記3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは漏れ電流抑制作用を有する結合剤に該当し、この3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの導電性補助液中の濃度は約0.54%である。
調製例2
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに20gのニトロベンゼンジカルボン酸と30gのヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルエステルと6gのジエチルアミンと5gのジグリセロールを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は380μS/cmであった。
上記ニトロベンゼンジカルボン酸はニトロ基とカルボキシル基とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンジカルボン酸の導電性補助液中の濃度は約3.57%であり、上記ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルエステルはヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物に該当し、これらニトロベンゼンジカルボン酸とヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルエステルとの合計量の導電性補助液中の濃度は約9%であり、上記ニトロベンゼンジカルボン酸とヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルエステルとの比率は、質量比で1:1.5である。そして、上記ジエチルアミンの導電性補助液中の濃度は約1.07%であり、上記ジグリセロールは漏れ電流抑制作用を有する結合剤に該当し、このジグリセロールの導電性補助液中の濃度は約0.89%であった。
調製例3
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに10gのニトロベンゼンカルボン酸と40gのヒドロキシベンゼンカルボン酸へプチルエステルと1gのジエチルアミンと5gのポリエチレングリコール400を添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は80μS/cmであった。
上記ニトロベンゼンカルボン酸は調製例1の場合と同様にニトロ基とカルボキシル基とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンカルボン酸の導電性補助液中の濃度は約1.80%であり、上記ヒドロキシベンゼンカルボン酸ヘプチルエステルはヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物に該当し、これらニトロベンゼンカルボン酸とヒドロキシベンゼンカルボン酸ヘプチルエステルとの合計量の導電性補助液中の濃度は約9%であり、上記ニトロベンゼンカルボン酸とヒドロキシベンゼンカルボン酸ペプチルエステルとの比率は、質量比で1:4である。そして、上記ジエチルアミンの導電性補助液中の濃度は約0.18%であり、上記ポリエチレングリコール400は漏れ電流抑制作用を有する結合剤に該当し、このポリエチレングリコール400の導電性補助液中の濃度は約0.9%である。
調製例4
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに20gのニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルと15gのヒドロキシナフタレンカルボン酸と5gのポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は70μS/cmであった。
上記ニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルはニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルの導電性補助液中の濃度は約3.70%であり、上記ヒドロキシナフタレンカルボン酸はヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物に該当し、これらニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルとヒドロキシナフタレンカルボン酸との合計量の導電性補助液中の濃度は約6%であり、上記ニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルとヒドロキシナフタレンカルボン酸との比率は、質量比で1:0.75である。そして、上記ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルは漏れ電流抑制作用を有する結合剤に該当し、このポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの導電性補助液中の濃度は約0.93%である。
調製例5
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに20gのニトロベンゼンジカルボン酸ジメチルエステルと30gのヒドロキシベンゼンカルボン酸オクチルエステルと5gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は10μS/cmであった。
上記ニトロベンゼンジカルボン酸ジメチルエステルはニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンジカルボン酸ジメチルエステルの導電性補助液中の濃度は3.60%であり、上記ヒドロキシベンゼンカルボン酸オクチルエステルはヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンジカルボン酸ジメチルエステルとヒドロキシベンゼンカルボン酸オクチルエステルとの合計量の導電性補助液中の濃度は約9%であり、上記ニトロベンゼンジカルボン酸ジメチルエステルとヒドロキシベンゼンカルボン酸オクチルエステルとの比率は、質量比で1:1.5である。そして、上記3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの導電性補助液中の濃度は約0.9%である。
調製例6
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに25gのニトロベンゼンカルボン酸と5gのニトロベンゼンカルボン酸エチルエステルと6gのジエチルアミンと5gのジグリセロールを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は490μS/cmであった。
上記ニトロベンゼンカルボン酸は調製例1の場合と同様にニトロ基とカルボキシル基を有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、上記ニトロベンゼンカルボン酸エチルエステルはニトロ基とカルボキシエステル部とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンカルボン酸とニトロベンゼンカルボン酸エチルエステルとの合計量の導電性補助液中の濃度は約6%であり、上記ニトロベンゼンカルボン酸とニトロベンゼンカルボン酸エチルエステルとの比率は、質量比で5:1である。そして、ジエチルアミンの導電性補助液中の濃度は約1.11%であり、ジグリセロールの導電性補助液中の濃度は約0.92%である。
調製例7
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに20gのニトロベンゼンカルボン酸と30gの4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンカルボン酸と5gのジエチルアミンと5gのジグリセロールを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は670μS/cmであった。
上記ニトロベンゼンカルボン酸は調製例1の場合と同様にニトロ基とカルボキシル基を有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンカルボン酸の導電性補助液中の濃度は約3.57%であり、上記4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンカルボン酸はヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンカルボン酸と4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンカルボン酸との合計量の導電性補助液中の濃度は約9%であり、上記ニトロベンゼンカルボン酸と4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンカルボン酸との比率は、質量比で1:1.5である。そして、ジエチルアミンの導電性補助液中の濃度は約0.89%であり、ジグリセロールの導電性補助液中の濃度は約0.89%である。
調製例8
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに20gのニトロベンゼンカルボン酸と10gのエトキシフェノールと4gのジエチルアミンと5gのジグリセロールを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は360μS/cmであった。
上記ニトロベンゼンカルボン酸は調製例1の場合と同様にニトロ基とカルボキシル基とを有し且つヒドロキシル基を有しない芳香族系化合物に該当し、このニトロベンゼンカルボン酸の導電性補助液中の濃度は約3.71%であり、上記エトキシフェノールはヒドロキシル基を有し且つニトロ基を有しない芳香族系化合物に該当し、これらニトロベンゼンカルボン酸とエトキシフェノールとの合計量の導電性補助液中の濃度は約6%であり、上記ニトロベンゼンカルボン酸とエトキシフェノールとの比率は、質量比で1:0.5である。そして、ジエチルアミンの導電性補助液中の濃度は約0.74%であり、ジグリセロールの導電性補助液中の濃度は約0.93%である。
調製例9
エチレングリコールに代えて、γ−ブチロラクトンを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は710μS/cmであった。
上記γ−ブチロラクトンは沸点が203℃であって、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤に該当し、その他は調製例1と同様であることから、この調製例9の導電性補助液はニトロベンゼンカルボン酸15gとヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルエステル35gとジエチルアミン3gと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gとを含んでいる。
調製例10
エチレングリコールに代えて、スルホランを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は600μS/cmであった。
上記スルホランは沸点が285℃であって、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤に該当し、その他の成分については調製例9の導電性補助液に関して説明したのと同様である。
調製例11
エチレングリコールに代えて、γ−ブチロラクトンを用いた以外は、すべて調製例3と同様の操作を行って導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は170μS/cmであった。
上記γ−ブチロラクトンは前記のように沸点が203℃であって、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤に該当し、その他は調製例3と同様であることから、この調製例11の導電性補助液はニトロベンゼンカルボン酸10gとヒドロキシベンゼンカルボン酸ヘプチルエステル40gとジエチルアミン1gと5gのポリエチレングリコール400を含んでいる。
調製例12
エチレングリコールに代えて、スルホランを用いた以外は、すべて調製例3と同様の操作を行って導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は130μS/cmであった。
上記スルホランは前記のように沸点が285℃であって、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤に該当し、その他の成分については調製例11の導電性補助液に関して説明したのと同様である。
調製例13
エチレングリコールに代えて、γ−ブチロラクトンを用いた以外は、すべて調製例5と同様の操作を行って導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は15μS/cmであった。
この調製例13の導電性補助液では、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としてγ−ブチロラクトンが用いられているが、その他は調製例5と同様であるということから、この調製例13の導電性補助液は、ニトロベンゼンジカルボン酸ジメチルエステル20gとヒドロキシベンゼンカルボン酸オクチルエステル30gと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5gとを含んでいる。
調製例14
エチレングリコールに代えて、スルホランを用いた以外は、すべて調製例5と同様の操作を行って導電性補助液を調製した。
この導電性補助液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この導電性補助液の導電率は13μS/cmであった。
この調製例14の導電性補助液では、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としてスルホランが用いられているが、その他の成分については調製例13の導電性補助液に関して説明したのと同様である。
調製例15(比較例用)
撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに50gのアジピン酸アンモニウムを添加した後、24時間撹拌することによって電解液を調製した。
この電解液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この電解液の導電率は3.3mS/cmであった。
調製例16(比較例用)
さらに5gのグリセリンを添加した以外は、調製例15と同様の操作を行って電解液を調製した。
この電解液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条
件下で測定したところ、この電解液の導電率は3.5mS/cmであった。
調製例17(比較例用)
さらに5gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した以外は、すべて調製例15と同様の操作を行って電解液を調製した。
この電解液の導電率を、堀場製作所社製導電率測定器(F−55)により25℃の条件下で測定したところ、この電解液の導電率は3.5mS/cmであった。
導電性高分子の分散液の調製例(I)
テイカ社製ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量100、000)の3%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、硫酸第一鉄・7水和物0.3gを添加し、その中に3,4−エチレンジオキシチオフェン4mLをゆっくり滴下した。
それらをステンレス鋼製の攪拌翼で攪拌し、容器に陽極を取り付け、攪拌翼の付け根に陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合を行った。上記電解酸化重合後、水で6倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US−T300(商品名)〕で2時間分散処理を行った。その後、オルガノ社製のカチオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名)を100g添加し、1時間攪拌機で攪拌した。次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中の鉄イオンなどのカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して濃度を2%に調整した後、28%アンモニア水溶液でpHを3に調整した。そして、その溶液40gに対し、エチレングリコール4gを添加し、導電性高分子の分散液(I)を得た。この導電性高分子の分散液(I)中の導電性高分子の粒度分布を大塚電子製ELS−Zで測定したところ、平均粒径が125nmであった。
導電性高分子の分散液の調製例(II)
導電性高分子の分散液の調製例(I)で調製した導電性高分子の分散液(I)の40gを撹拌機付きビーカーに入れ、撹拌しながら0.4gのニトロベンゼンカルボン酸を添加した。しかし、数日撹拌してもニトロベンゼンカルボン酸は溶解しなかった。
導電性高分子の分散液の調製例(III)
2Lの攪拌機付きセパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム190g(スチレンスルホン酸として170g)とアクリル酸ヒドロキシエチル10gを添加した。そして、その溶液に酸化剤として過硫酸アンモニウムを1g添加してスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの重合反応を12時間行った。
そして、その後、その反応液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去し、濃度を3%に調整してスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の3%水溶液を得た。
得られたスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、ゲル濾過カラムを用い、デキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、150,000であった。
そして、前記導電性高分子の分散液(I)における濃度3%のポリスチレンスルホン酸水溶液に代えて、上記スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の3%水溶液を用いた以外は、すべて前記導電性高分子の分散液の調製例(I)と同様の操作を行って、濃度2%の導電性高分子の分散液を得た。その濃度2%の導電性高分子の分散液に対して、28%アンモニア水溶液を加えてpHを3に調整して、導電性高分子の分散液(III)を得た。この導電性高分子の分散液(III)中の導電性高分子の粒度分布を大塚電子製ELS−Zで測定したところ、平均粒径が130nmであった。
実施例1
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行ってアルミニウムの酸化被膜からなる誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。このコンデンサ素子は、ESRが15mΩ以下、静電容量が50μF以上、破壊電圧(耐電圧)が100V以上になるように設定したものである。
上記コンデンサ素子を前記調製例(I)で調製した導電性高分子の分散液(I)に浸漬し、5分後に取り出し、150℃で30分間乾燥した。この操作を2回行って、コンデンサ素子の誘電体層上に導電性高分子を設けた。
次に、上記のように導電性高分子を設けたコンデンサ素子を前記調製例1で調製した導電性補助液に浸漬し、コンデンサ素子に導電性補助液を含浸させ、5分後に取り出し、これを外装材で外装して、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例2〜14および比較例1〜3
調製例1で調製した導電性補助液に代えて、調製例2〜14で調製した導電性補助液および調製例15〜17で調製した電解液をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例4
導電性補助液を含浸させることを行わなかった以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例15
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行ってアルミニウムの酸化被膜からなる誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。このコンデンサ素子は、ESRが15mΩ以下、静電容量が50μF以上、破壊電圧(耐電圧)が100V以上になるように設定したものである。
上記コンデンサ素子を前記調製例(III)で調製した導電性高分子の分散液(III)に浸漬し、5分後に取り出し、105℃で5分間乾燥した。その後、エチレングリコールとジメチルスルホキシドとを質量比で95:5で混合した溶液に上記コンデンサ素子を浸漬し、5分後に取り出し、180℃で30分間乾燥した。この操作をさらにもう1回行って、コンデンサ素子の誘電体層上に導電性高分子を設けた。
次に、上記のように導電性高分子を設けたコンデンサ素子を前記調製例1で調製した導電性補助液に浸漬し、コンデンサ素子に導電性補助液を含浸させ、5分後に取り出し、これを外装材で外装して、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例16
エチレングリコールとジメチルスルホキシドとを質量比で95:5で混合した溶液に代えて、エチレングリコールとエタノールとを質量比で6:4で混合した溶液を用い、前記調製例1で調製した導電性補助液に代えて、調製例5で調製した導電性補助液を用いた以外は、すべて実施例15と同様の操作を行って、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
上記のようにして製造した実施例1〜16および比較例1〜4の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、漏れ電流を測定した。その結果を、使用した導電性補助液または電解液の種類と共に表1に示す。なお、ESR、静電容量および漏れ電流の測定方法は次の通りである。
ESR:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、100kHzで測定する。
静電容量:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、120Hzで測定する。
漏れ電流:
巻回型アルミニウム電解コンデンサに、25℃で63Vの電圧を60秒間印加した後、デジタルオシロスコープにて漏れ電流を測定する。
上記の測定は、各試料とも、20個ずつについて行い、ESR、静電容量および漏れ電流に関して表1に示す数値は、その20個の測定値の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものである。そして、導電性補助液または電解液の種類は調製例番号で示す。なお、表1では、スペース上の関係で、上記「導電性補助液または電解液の種類」を簡略化して「液の種類」で示す。
また、上記特性測定後の実施例1〜16および比較例1〜4の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(それぞれ10個ずつ)を260℃の乾燥機中に静置状態で3分間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定し、破壊電圧を測定した。その結果を表2に示す。なお、破壊電圧の測定は、松定プレシジョン社製PRK650−2.5を用い、25℃の条件下で電圧を1V/秒の速度で昇圧させて破壊時の電圧を測定することによって行った。
上記の測定は、各試料とも、10個ずつについて行い、ESR、静電容量および漏れ電流に関して表2に示す数値は、その10個の測定値の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものである。そして、破壊電圧に関して示す数値は、10個の測定値の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
また、前記表1に示す特性測定後の実施例1〜16および比較例1〜4の巻回型アルミニウム電解コンデンサの残りの10個ずつについて、150℃の乾燥機中に静置状態で250時間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表3に前記表2の場合と同様の態様で示す。
表1に示すように、実施例1〜16の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、「巻回型アルミニウム電解コンデンサ」を簡略化して「コンデンサ」と表示する場合がある)は、ESRが11.0〜12.2mΩであって、15mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が58.8〜59.2μFであって、50μF以上という設定静電容量を満たし、かつ、比較例1〜3のコンデンサに比べて、ESRが低く(小さく)、静電容量や漏れ電流に関しても、比較例1〜3のコンデンサと同程度であって、これらに関して、大きな特性低下を招くことなく、低ESR化を達成することができた。
つまり、電解液より導電率が低い導電性補助液を導電性高分子と併用した実施例1〜16のコンデンサは、電解液を導電性高分子と併用した比較例1〜3のコンデンサより、ESRが低かった。
また、導電性補助液の含浸を行っていない比較例4のコンデンサは、実施例1〜16のコンデンサに比べて、ESRが高く(大きく)、静電容量が小さく、漏れ電流が大きかった。
また、表2に示すように、260℃という高温で3分間貯蔵後においても、実施例1〜16のコンデンサは、破壊電圧が117〜121Vであって、100V以上という設定破壊電圧を満たし、かつ、比較例1〜3のコンデンサに比べて、ESRが低く、さらに、表3に示すように、150℃で250時間貯蔵後においても、実施例1〜16のコンデンサは、比較例1〜3のコンデンサに比べて、ESRが低かった、特に電解液を用いた比較例1〜3のコンデンサは、実施例1〜16のコンデンサに比べて、150℃で250時間貯蔵したことによるESRの増加が大きく、耐熱性が悪かった。つまり、導電率の低い導電性補助液を用いた実施例1〜16のコンデンサは、電解液を用いた比較例1〜3のコンデンサに比べて、耐熱性が優れていた。
そして、破壊電圧(耐電圧)に対しては、表2に示すように、実施例1〜16のコンデンサは、比較例1、2、4のコンデンサに比べて高く、優れていて、比較例3のコンデンサと同等であり、破壊電圧に関する特性低下は認められなかった。
実施例17
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行ってアルミニウムの酸化被膜からなる誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。このコンデンサ素子は、ESRが15mΩ以下、静電容量が50μF以上、破壊電圧(耐電圧)が100V以上になるように設定したものである。
そして、ブチル化エチレンジオキシチオフェンと3,4−エチレンジオキシチオフェンとを質量比で80:20で混合したモノマー溶液と、濃度が60%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液(テイカトロンAF60E、商品名、テイカ株式会社製)とを質量比で1:4で混合した溶液を用意し、この溶液に前記のコンデンサ素子を浸漬し、1分後に取り出し、50℃で1時間化学酸化重合を行った。その後、そのコンデンサ素子をパラトルエンスルホン酸の2%メタノール溶液に10分間浸漬して洗浄した後、純水に5分間浸漬して洗浄を行った後、105℃に設定した乾燥機で30分間乾燥した。
このようにして、そのアルミニウム箔の誘電体層上にいわゆる「その場重合」により導電性高分子を合成したコンデンサ素子(上記誘電体層上以外の部分に導電性高分子が付着してもいい)を前記調製例1で調製した導電性補助液に浸漬し、コンデンサ素子に導電性補助液を含浸させ、5分後に取り出し、これを外装材で外装して、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例18〜21および比較例5〜7
調製例1で調製した導電性補助液に代えて、調製例2〜5で調製した導電性補助液および調製例15〜17で調製した電解液をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例17と同様の操作を行って、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例8
導電性補助液を含浸させることを行わなかった以外は、すべて実施例17と同様の操作を行って、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
上記のように製造した実施例17〜21および比較例5〜8の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、「巻回型アルミニウム電解コンデンサ」を、簡略化して、「コンデンサ」と表示する場合がある)について、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表4に前記表1の場合と同様の態様で示す。
また、上記特性測定後の実施例17〜21および比較例5〜8のコンデンサ(それぞれ10個ずつ)を260℃の乾燥機中に静置状態で3分間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定し、破壊電圧を測定した。その結果を表5に前記表2の場合と同様の態様で示す。
また、前記表4に示す特性測定後の実施例17〜21および比較例5〜8のコンデンサの残りの10個ずつについて、150℃の乾燥機中に静置状態で250時間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表6に前記表3の場合と同様の態様で示す。
表4に示すように、実施例17〜21のコンデンサは、ESRが12.6〜13.2mΩであって、15mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が59.1〜59.2μFであって、50μF以上という設定静電容量を満たし、かつ、比較例5〜7のコンデンサに比べて、ESRが低かった。
つまり、これら実施例17〜21および比較例5〜7のコンデンサ間においても、電解液より導電率が低い導電性補助液を導電性高分子と併用した実施例17〜21のコンデンサは、電解液を導電性高分子と併用した比較例5〜7のコンデンサより、ESRが低かった。
また、導電性補助液の含浸を行っていない比較例8のコンデンサは、実施例17〜21のコンデンサに比べて、ESRが高く(大きく)、静電容量が小さく、漏れ電流が大きかった。
また、表5に示すように、260℃という高温で3分間貯蔵後においても、実施例17〜21のコンデンサは、破壊電圧が110〜113Vであって、100V以上という設定破壊電圧を満たし、かつ、比較例5〜7のコンデンサに比べて、ESRが低く、さらに、表6に示すように、150℃で250時間貯蔵後においても、実施例17〜21のコンデンサは、比較例5〜7のコンデンサに比べて、ESRが低かった。特に電解液を用いた比較例5〜7のコンデンサは、実施例17〜21のコンデンサに比べて、150℃で250時間貯蔵したことによるESRの増加が大きく、耐熱性が悪かった。つまり、導電率の低い導電性補助液を用いた実施例17〜21のコンデンサは、電解液を用いた比較例5〜7のコンデンサに比べて、耐熱性が優れていた。
そして、破壊電圧(耐電圧)に関して、表5に示すように、実施例17〜21のコンデンサは、比較例5、6、8のコンデンサに比べて、高く、優れていて、比較例7のコンデンサと同等であり、破壊電圧に関する特性低下は認められなかった。