JP6253476B2 - ポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法 Download PDF

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Description

本発明は、無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法に関するものである。更に詳しくは、鋳造および射出成型に使用される水溶性の中子として用いられたポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法に関するものである。
鋳型に熔けた金属を流し込み、冷やし固めて、鋳型から取り出して金属製品を製造する鋳造は、古くから用いられ、現在では、様々な工業製品が生産されている。
鋳型には、主として砂型が用いられるが、自動車のエンジン等の工業製品においては金型が用いられている。
また、エンジン等の機械部品の鋳造品の内部に空間を設けるためには、中子が利用されている。中子とは、中に空洞がある鋳物を造る時に空洞にあたる部分として、鋳型の中にはめ込む型であり、複雑形状なものを鋳造する時に使用されるものである。
金型の中に、中子を入れ、金属を流し込むことによって形を造り、最後に中子は取り出すために原型を失くし、中子は1度きりしか使用できないものである。
かかる中子として、従来から砂型や塩型が用いられており、近年では、強度の向上や成形性向上のため、砂などのフィラーと樹脂とを含有する組成物も用いられている。かかる樹脂に求められる性能としては、成形性や崩壊性であるが、複雑形状の中子であっても水に溶かすことで容易に取り出すことができることから水溶性の樹脂が注目されている。
特に近年では、環境問題に対する関心の高まりの点からも、水溶性樹脂を用いた中子の再利用に関する技術が種々検討されている。
例えば、特許文献1には、水溶性樹脂材質のコア(中子)を水に溶解させ、樹脂水溶液の水分を除去し、濃縮させた樹脂を完全に乾燥させ、回収する方法が提案されている。
また、特許文献2には、遠心分離機を用いずに、造型機の中子型へ送られる混練砂(スラリー)の鋳砂と液体との配合比を、簡易且つ短時間に、良好な精度で調製することを実現可能な、水溶性中子の再利用のための技術が提案されている。
しかしながら、かかる特許文献1の技術では水分の除去に時間や熱をかけるエネルギーが多く必要であることが問題であり、かかる特許文献2の技術では、スラリーの鋳砂と水溶性無機塩溶液の配合比を所定値に調製するステップが必要であり、回収コストや手間がかかることが問題であった。
特開平04−259512号公報 特開2008−149360号公報
本発明者らは、溶融成形が可能なため、射出成型で成形体を作製でき、更に水溶性であるポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂という)を用い、かかる成形体を水溶解除去し、水溶解除去後の水溶液からPVA系樹脂と無機微粒子の配合比を調整する工程なしに、リサイクル原料を製造する方法を見出し、ここに発明を完成させた。
本発明の要旨は、無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法であって、
(A)無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂成形体を水と接触させ、該成形体中のポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解して、無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得る溶解工程、
(B)得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、炭素数3〜6のアルコールを主成分とする析出液と接触させて、無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂を析出させる析出工程、
(C)得られた析出物を分離し、乾燥させる回収工程、
を含むポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法にある。
本発明のリサイクル方法によると、PVA系樹脂の回収率が高く、PVA系樹脂と無機フィラーを一定の含有割合で回収することができ、再利用時にPVA系樹脂と無機フィラーの含有量を再調整する必要がない。
次に、発明の実施の形態を説明する。
〔PVA系樹脂〕
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂について説明する。
PVA系樹脂は、ビニルエステル系単量体を共重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
本発明で用いられるPVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、350〜1000であり、特に400〜800、さらに450〜600のものが好ましく用いられる。
かかる平均重合度が小さすぎると成形体が強度不足となる傾向があり、大きすぎると射出成型時のせん断発熱発生により樹脂が分解する傾向がある。
また、本発明で用いられるPVA系樹脂のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、60〜99.9モル%であり、特に80〜99.5モル%、殊に90〜99.5モル%のものが好適に用いられる。
かかるケン化度が低すぎると、水溶性が低下する傾向があり、高過ぎると溶融成形が困難になる傾向がある。
また、本発明では、PVA系樹脂として、ビニルエステル系樹脂の製造時に各種単量体を共重合させ、これをケン化して得られたものや、未変性PVAに後変性によって各種官能基を導入した各種変性PVA系樹脂を用いることができる。かかる変性は、PVA系樹脂の水溶性が失われない範囲で行うことができる。
ビニルエステル系モノマーとの共重合に用いられる単量体としては、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
また、後反応によって官能基が導入されたPVA系樹脂としては、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基が有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVAと反応させて得られたものなどを挙げることができる。
かかる変性PVA系樹脂中の変性種、すなわち共重合体中の各種単量体に由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、変性種によって特性が大きく異なるため一概には言えないが、通常、0.1〜20モル%であり、特に0.5〜12モル%の範囲が好ましく用いられる。
これらの各種変性PVA系樹脂の中でも、本発明においては、下記一般式(1)で示される側鎖に1,2−ジオール構造を有する構造単位を有するPVA系樹脂が、溶融成形が可能で、水溶性にも優れる点で好ましく用いられる。
Figure 0006253476
なお、一般式(1)におけるR、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示すものである。前記炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等を有していても良い。
中でも、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR〜R、及びR〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である構造単位を有するPVA系樹脂が最も好ましい。
また、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のXは熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で単結合であるものが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよく、かかる結合鎖としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CHO)m−、−(OCH−、−(CHO)CH−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは1〜5の整数)が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CHOCH−が好ましい。
かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂の製造法としては、特に限定されないが、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法や、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱炭酸する方法や、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法が好ましく用いられる。
Figure 0006253476
Figure 0006253476
Figure 0006253476
上記一般式(2)、(3)、(4)中のR、R、R、X、R、R、Rは、いずれも一般式(1)の場合と同様である。また、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはR−CO−(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基である)である。R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825に説明されている方法を用いることができる。
中でも、共重合反応性および工業的な取扱い性に優れるという点から、(i)の方法において、一般式(2)で表わされる化合物として3,4−ジアシロキシ−1−ブテンを用いることが好ましく、特に3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂に含まれる1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常、0.1〜20モル%であり、さらに0.5〜12モル%、特に3〜8モル%のものが好ましく用いられる。かかる含有量が低すぎると、側鎖1,2−ジオール構造の効果が得られにくく、逆に高すぎると、高湿度でのガスバリア性の低下が著しくなる傾向がある。
なお、PVA系樹脂中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、PVA系樹脂を完全にケン化したもののH−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には1,2−ジオール単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出すればよい。
また、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を用いる場合の好ましいケン化度は、通常、80〜99.9モル%、好ましくは、98.5〜99.5モル%である。かかるケン化度が低すぎると、成形物が分解したり、高温で変形したりする傾向がある。
また、本発明で用いられるPVA系樹脂は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよく、その場合は、上述の未変性PVA同士、未変性PVAと一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂、ケン化度、重合度、変性度などが異なる一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂同士、未変性PVA、あるいは一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂と他の変性PVA系樹脂、などの組み合わせを用いることができる。
〔無機フィラー〕
本発明で用いられる無機フィラーは、特に限定されるものはないが、一般的には、タルク、ガラス繊維、シリカ、アルミナ、珪砂(珪粉)、チタン酸カリウム、炭化珪素、珪酸ジルコニウム、繊維状チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム等が挙げられる。中でも回収率の点でタルク、ガラス繊維が好ましい。
本発明で用いられる無機フィラーの形状は、不定形、繊維状、球状でもどの形状でも良いが、汎用性の面で、粉体状及び繊維状のものが好ましい。
またかかる無機フィラーの平均粒径は、粉体状の場合、通常、0.1〜1000μm、好ましくは、1〜50μm、更に好ましくは1〜3μmで、繊維状の場合は、通常、0.1〜1000μm、好ましくは、0.1〜0.6μm、更に好ましくは0.1〜0.3μmである。
かかる無機フィラーの含有量は、中子として用いる場合、中子の重量に対して通常2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは10〜20重量%である。かかる含有量が多すぎると成形時のせん断発熱が強くなり、樹脂が分解する傾向があり、少なすぎると耐熱変形性が弱くなる傾向がある。
〔その他の成分〕
本発明のPVA成形体には、本発明の効果を損なわない程度であれば、無機フィラーのほかに添加剤としてステアリン酸マグネシウムや12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム等の滑剤を添加しても良い。さらにグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グリセリンのエチレンオキサイド付加物等の可塑剤を必要に応じて含有させても良い。
〔PVA系樹脂成形体〕
本発明のPVA系樹脂成形体は、主に中子として利用されるものであって、PVA系樹脂に無機フィラーを含有させて、成形させたものである。
かかるPVA系樹脂成形体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、代表的な方法を下記に示す。
まずPVA系樹脂粉末に無機フィラーを配合し、必要に応じて、滑剤や可塑剤等を必要量添加し、均一に混合する。その後、二軸押出機にてPVA系樹脂組成物のペレットを得る。かかるペレットを射出成型し、PVA系樹脂成形体を製造することができる。
〔PVA系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法〕
次に、上記で得られたPVA系樹脂成形体を中子等として使用した後のリサイクル方法について順次説明する。
(A)溶解工程
本発明の溶解工程は、PVA系樹脂と無機フィラーを含有する成形体を水と接触させ、該成形体中のPVA系樹脂を水に溶解して、無機フィラーを含有するPVA系樹脂水溶液を得ることができれば、特に限定されないが、一般的な方法を下記に示す。
まず、PVA系樹脂成形体を水と接触させる方法としては、通常、常圧熱水溶解法、高圧熱水溶解法などが挙げられ、中でも熱水温度の点で高圧熱水溶解方法が好ましい。
かかる高圧熱水溶解方法での水温は通常、50〜150℃であり、好ましくは80〜120℃である。かかる水温が低すぎるとPVA系樹脂の溶解性が低くなる傾向があり、高すぎるとPVA系樹脂が分解してしまうという問題がある。
また溶解時間は通常、0.5〜50時間、好ましくは1〜25時間、さらに好ましくは、1.5〜5時間である。かかる溶解時間が短すぎると未溶解分が残る傾向があり、長すぎると経済的に好ましくない傾向がある。
かかる溶解工程で得られるPVA系樹脂水溶液の濃度としては、その種類や溶解装置等によって多少異なるが、通常、1〜40重量%であり、さらには5〜30重量%、特には10〜20重量%の範囲である。かかる濃度が低すぎると回収工程の繰り返し回数が多くなる傾向があり、非効率的であり、高すぎると溶解性が低くなり溶解工程の効率が低下する傾向がある。
(B)析出工程
次に、前記で得られたPVA系樹脂水溶液と炭素数3〜6のアルコールを主成分とする析出液を混合し、PVAを析出させる析出工程を説明する。かかる工程は以下に限定されるものではないが、一般的な方法について示す。
使用される炭素数3〜6のアルコールとしては、具体的には、イソプロピルアルコール(IPA)、n−プロピルアルコール(nPA)、ブタノール等が挙げられ、中でも回収率や安全性の観点からIPA、nPAが好適に用いられ、2種以上を混合して用いることもできる。
本発明で用いられる析出液は、上記炭素数3〜6のアルコールを主成分とするもので、その含有量は通常50〜100重量%であり、好ましくは、80〜100重量%である。かかる含有量が少なすぎると析出効果が低下する傾向がある。
炭素数3〜6のアルコール以外の成分としては、析出性を阻害しないものであれば、特に限定されないが、通常は水が好適に用いられる。
かかる析出液の使用量は、PVA系樹脂水溶液100重量部に対して、通常150〜300重量部、好ましくは180〜250重量部である。また、PVA系樹脂100重量部に対しては、通常、750〜1500重量部、好ましくは900〜1300重量部である。かかる析出液の使用量が少なすぎるとPVA系樹脂の析出が不十分になる傾向があり、多すぎると析出繊維が硬くなる傾向がある。また、かかる析出液の温度は通常10〜30℃、好ましくは20〜25℃である。
かかる析出液とPVA系樹脂水溶液を混合し、無機フィラーを含有するPVA系樹脂を析出させるわけであるが、析出液とPVA系樹脂水溶液を混合する方法は特に限定されない。例えば、PVA系樹脂水溶液に析出液を添加する方法、析出液の中にPVA系樹脂を添加する方法、PVA系樹脂水溶液と析出液を一度に混合する方法などが挙げられるが、繊維析出を効率的に行えるようにする点で、析出液にPVA系樹脂水溶液を少量ずつ添加する方法が好ましい。
また、PVA系樹脂水溶液と析出液を混合させる時には、攪拌すると繊維状のPVA系樹脂が巻きつくため、カッターポンプ等で、繊維を切断しながら、全体を液循環させることが好ましい。
代表的な析出方法としては、析出液をタンクに充填し、カッターポンプで循環させ、循環している析出液にPVA系樹脂水溶液を少量ずつ添加していく方法である。かかるPVA系樹脂水溶液の添加量としては通常0.1〜3.0kg/分、好ましくは0.3〜1.5kg/分である。析出液中に添加されたPVA系樹脂水溶液からPVA系樹脂が析出し、析出液と析出したPVA系樹脂がカッターポンプ内を循環し、かかるPVA系樹脂はカッターにて粉砕され、繊維状のPVA系樹脂が得られる。
(C)回収工程
前記析出工程で析出した無機フィラーを含有するPVA系樹脂を析出液と分離し、回収する工程について説明する。
回収方法については特に限定されるものではないが、例えば、析出したPVA系樹脂を析出液から濾過し、遠心分離機にかけ、その後、振動流動乾燥機や真空乾燥機等によって乾燥させ、PVA系樹脂と無機フィラーを含有する樹脂組成物を得ることができる。
乾燥時間は通常2〜24時間、好ましくは3〜15時間であり、乾燥温度は、通常40〜120℃、好ましくは60〜80℃である。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
<PVA系樹脂成形体の作製>
一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR〜R、及びR〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である構造単位を有するPVA系樹脂(ケン化度99.2モル%、重合度450、1,2-ジオール構造単位含有量 3モル%) 80重量部、タルク20重量部を二軸押出機にて、溶融混練し、ペレット化した。その後、そのペレットを射出成型機に充填し、射出成型して、タルクを含有するPVA系樹脂成形体(a)を作製した。得られたPVA系樹脂成形体(a)の重量は7重量部であった。
かかるPVA系樹脂成形体(a)の形状は、全長66.7mm、外径27.9mm、内径20.3mmの円筒状で、外壁には、全長方向に5.3mm間隔で、2.6mmの環状の突起を設けた。かかる突起は円筒の端部においては2.7mm幅であって、端部以外は1.7mm幅であった。
(A)溶解工程
軟水28重量部を50LのSUS缶に投入し、PVA系樹脂成形体(a)7重量部を金網に入れて、互いに傷つかないように浸漬した。その後、ゆっくり攪拌し、80℃に昇温後、2.5時間攪拌し、PVA系樹脂成形体(a)が完全に水に溶解し、タルクを含有するPVA系樹脂成形体(a)の水溶液が得られた。
(B)析出工程
イソプロピルアルコール(IPA)80重量部を150L−GL缶に仕込み、カッターポンプで280L/minの流速で循環させた。そこに前記で得られたPVA系樹脂成形体(a)の20重量%水溶液を0.39重量部/分で35重量部を添加した。添加したPVA系樹脂成形体(a)の水溶液からタルクを含有するPVA系樹脂組成物が析出し、かかる析出物をカッターポンプで循環・切断を継続し、タルクを含有するPVA系樹脂繊維(a’)を得た。
(C)回収工程
前期工程で得られたPVA系樹脂繊維(a’)をろ布にてろ過し、PVA系樹脂繊維(a’)とろ液とを分離し、PVA系樹脂繊維(a’)を回収した。
かかるPVA系樹脂繊維(a’)は、箱型真空乾燥機で60℃で12時間乾燥した。
評価方法
<PVA系樹脂と無機フィラーの重量比測定>
得られたPVA系樹脂繊維(a’)をTGAによって600℃まで加熱し、PVA系樹脂繊維(a’)中のPVA系樹脂を完全分解し、残渣の重量(タルクの重量)を測定し、かかる測定値からPVA系樹脂の重量を算出した。かかる回収されたPVA系樹脂及びタルクの重量と、PVA系樹脂成形体(a)の作製工程でのPVA系樹脂及びタルクの重量から回収率を算出した。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、IPAをn−プロピルアルコール(nPA)に変更した以外は実施例1と同様にし、評価した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、IPAをエタノールに変更した以外は実施例1と同様にし、評価した。結果を表1に示す。
比較例2
実施例1において、IPAをメタノールに変更した以外は実施例1と同様にし、評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006253476
析出液として、エタノール、メタノールを用いた比較例1及び2では、PVA系樹脂の回収率が低く、比較例2ではタルクの回収率も低いものであった。本発明の実施例1及び2では、回収率がいずれも90%以上であり、高い回収率が得られた。
更に、回収されたPVA系樹脂組成物のPVA系樹脂とタルクの回収率の比は、比較例1及び2では、0.95と0.84で、溶解前のPVA系樹脂成形体とは異なる含有比となるが、実施例1及び2では1.0であり、溶解前のPVA系樹脂成形体と同様の含有比であり、再利用の際に、各成分の含有量を調整する必要のないものが得られた。
本発明のリサイクル原料を製造する方法は、回収率も高く、PVA系樹脂と無機フィラーの含有率も溶解前のPVA系樹脂成形体とほぼ同等であるため、無機フィラーの量の調整無しに再利用できる。

Claims (4)

  1. 無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法であって、
    (A)無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂成形体を水と接触させ、該成形体中のポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解して、無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得る溶解工程、
    (B)得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、炭素数3〜6のアルコールを主成分とする析出液と接触させて、無機フィラーを含有するポリビニルアルコール系樹脂を析出させる析出工程、
    (C)得られた析出物を分離し、乾燥させる回収工程、
    を含むポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法。
  2. ポリビニルアルコール系樹脂が下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法。
    Figure 0006253476
    〔式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
  3. 無機フィラーが、タルクである請求項1又は2記載のポリビニルアルコール系樹脂成形体からリサイクル原料を製造する方法。
  4. ポリビニルアルコール系樹脂成形体が鋳造用の中子である請求項1〜3いずれか記載のリサイクル原料を製造する方法。
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