JP6251103B2 - 直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子、複合樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体 - Google Patents
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Description
前記種粒子が、直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体との混合樹脂を含み、
前記直鎖状低密度ポリエチレンが、115〜130℃の軟化温度を有し、
前記エチレン共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとエチレンとの共重合体であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来成分を1〜20重量%含み、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから選択され、
前記混合樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部とエチレン共重合体20〜100重量部とを含むことを特徴とする直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記複合樹脂粒子に発泡剤を含浸した後、発泡させることにより得られ、50〜15kg/m3の嵩密度を有する発泡粒子が提供される。
更にまた、上記発泡粒子を発泡成形させることにより得られた発泡成形体が提供される。
混合樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部とエチレン共重合体20〜100重量部とを含む場合、発泡成形体の耐熱性及び遅燃性をより大幅に低下させることなく、高倍時での耐衝撃性を更に向上させ得るシード重合用の種粒子としての直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子を提供できる。
複合樹脂粒子が、前記樹脂分100重量部に対して、1.5〜6.0重量部の難燃剤を含む場合、発泡成形体の高倍時での耐衝撃性をより大幅に低下させることなく、発泡成形体の耐熱性及び遅燃性を更に向上させ得る複合樹脂粒子を提供できる。
更に難燃助剤を含み、前記難燃助剤が、ジクミルパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン及びクメンヒドロパーオキサイドから選択される場合、発泡成形体の高倍時での耐衝撃性をより大幅に低下させることなく、発泡成形体の耐熱性及び遅燃性を更に向上させ得る複合樹脂粒子を提供できる。
そこで、本発明の発明者等は、発泡成形体の原料を見直した。発泡成形体は、種粒子にスチレンを含浸重合させる、所謂、シード重合法により製造された複合樹脂粒子を発泡成形することで得られる。上記各種物性には、種粒子の構成が大きく影響することを発明者等は見い出している。
また、高密度ポリエチレンを使用すると、高倍でも所定の耐熱性及び遅燃性を得ることが可能であるが、耐衝撃性が低下することになる。
更に、ポリプロピレンを使用すると、高倍でも所定の耐熱性、遅燃性及び耐衝撃性を得ることが可能であるが、発泡成形時に高圧の蒸気圧を使用することが必要となり、生産性が低下することになる。
上記結果を鑑み、発明者等は、更に、種々の原料を検討した結果、直鎖状低密度ポリエチレンと、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体との混合物を含むシード重合法用の種粒子としての直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子により、高圧の蒸気圧での発泡成形を必要とせずに、発泡成形体の高倍時での耐衝撃性の大幅な低下なく、発泡成形体の耐熱性及び遅燃性を更に向上させ得ることを意外にも見出し、本発明に至った。
本発明の種粒子は、直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体との混合樹脂を含む直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子である。
(1)直鎖状低密度ポリエチレン
直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば中低圧下の重合反応により、エチレンにプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数3〜20のα−オレフィンを少量(1〜10モル%)共重合させることにより、直鎖状の幹ポリマーに適当数の短鎖分岐を導入し、それにより密度を低下させた樹脂である。なお、共重合に用いるα−オレフィンとしては、発泡成形体の耐衝撃性の観点から炭素数5〜8のα−オレフィンを用いることが好ましい。
軟化温度が115℃未満の場合、耐熱性の向上効果が不十分となることがある。130℃より高い場合、シード重合による複合樹脂粒子製造において重合粉末が多数発生したり、発泡性が不十分となることがある。好ましい軟化温度は115〜125℃であり、より好ましくは115〜120℃である。
直鎖状低密度ポリエチレンは、920〜945kg/m3の密度を有していることが好ましい。密度が920kg/m3未満の場合、成型体の耐熱性や遅燃性の向上効果が不十分となることがある。945kg/m3より大きい場合、発泡性が低下したり耐衝撃性が不十分となることがある。好ましい密度は930〜945kg/m3であり、より好ましくは935〜940kg/m3である。
エチレン共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとエチレンとの共重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエルテルは、分子中に−COO−結合を有していることが特徴的である。
エチレン共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来成分が占める割合が1〜20重量%でありさえすれば、特に限定されず、市販の樹脂を使用できる。例えば、日本ポリエチレン、住友化学等から入手可能である。
エチレン共重合体は、75〜110℃の軟化温度を有していることが好ましい。軟化温度が75℃未満の場合、耐熱性の低下を招くことがある。110℃より高い場合、遅燃性の向上効果が不十分となることがある。好ましい軟化温度は80〜100℃であり、より好ましくは80〜95℃である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから選択される。
エチレン共重合体は、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に対して、20〜100重量部の範囲で混合樹脂中に含まれることが好ましい。エチレン共重合体の含有量が20重量部未満の場合、遅燃性の向上効果が不十分となることがある。100重量部より多い場合、耐熱性や耐衝撃性の低下を招くことがある。より好ましい含有量は30〜90重量部であり、更に好ましくは40〜75重量部である。
種粒子には、直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体以外の成分(他の成分)が含まれていてもよい。他の成分としては、着色剤、核剤、安定剤、充填材(補強材)、高級脂肪酸金属塩、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、天然又は合成油、ワックス、紫外線吸収剤、耐候安定剤、防曇剤、坑ブロッキング剤、スリップ剤、被覆剤、中性子遮蔽剤等が挙げられる。他の成分の含有量は、種粒子全量に対して、10重量%以下であることが好ましい。
種粒子は、公知の方法により得ることができる。例えば、直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体を、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体を押出機に投入する前に、ミキサーにより混合しておいてもよい。
種粒子は、円筒状、楕円球状(卵状)又は球状であることが好ましい。また形状は、種粒子から得られる発泡粒子の金型への充填性をよくするために、楕円球状又は球状であることがより好ましい。
種粒子は、0.5〜1.4mmの平均粒子径を有していることが好ましい。
(1)複合樹脂粒子の構成
本発明の複合樹脂粒子は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と、スチレン系重合体とからなる樹脂分とを含んでいる。直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に由来する。スチレン系重合体は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に、含浸重合させた(シード重合させた)スチレン系モノマーに由来する。
スチレン系重合体は、樹脂分中に、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対して、100〜500重量部の割合で含まれている。スチレン系重合体の含有量が100重量部より少ない場合、発泡成形体の剛性が低下することがある。含有量が500重量部を超える場合、発泡成形体の耐薬品性及び耐衝撃性が低下することがある。好ましい含有量は150〜400重量部であり、より好ましい含有量は200〜350重量部である。なお、スチレン系重合体の含有量は、スチレン系モノマーの添加量にほぼ対応する。
難燃剤は、樹脂分100重量部に対して、1.5〜6.0重量部含まれていることが好ましい。難燃剤の含有量が1.5重量部より少ない場合、難燃性の向上効果が不足することがある。含有量が6.0重量部を超える場合、発泡成形体の耐薬品性及び耐衝撃性、耐熱性が低下することがある。好ましい含有量は1.5〜4.0重量部であり、より好ましい含有量は2.0〜2.5重量部である。
難燃助剤は、難燃剤100重量部に対して、50重量部までの量で含まれていることが好ましい。難燃剤の含有量が50重量部を超える場合、発泡成形体の耐薬品性、耐衝撃性及び耐候性が低下することがある。より好ましい含有量は10〜40重量部であり、更に好ましい含有量は15〜25重量部である。
複合樹脂粒子の形状は、円筒状、略球状ないしは球状であり、平均粒子径が0.6〜1.8mmであることが好ましい。形状は、複合樹脂粒子に由来する発泡粒子の金型への充填性をよくするには略球状又は球状がより好ましい。
複合樹脂粒子は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子を種粒子として使用する、所謂シード重合法により形成できる。シード重合法は、以下の手順で行うことができる。
すなわち、水性懸濁液中に、種粒子と、スチレン系モノマーと、必要に応じて重合開始剤とを分散させる。なお、スチレン系モノマーと重合開始剤とを予め混合して用いてもよい。
水性懸濁液を構成する水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、スチレン系モノマー100重量部に対して、0.1〜0.9重量部が好ましい。0.1重量部未満ではスチレン系モノマーの重合に時間がかかり過ぎることがある。0.9重量部を超える重合開始剤の使用は、ポリスチレン系樹脂の分子量が低くなることがある。より好ましい使用量は、0.2〜0.5重量部である。
次に、得られた分散液をスチレン系モノマーが実質的に重合しない温度に加熱してスチレン系モノマーを種粒子に含浸させる。種粒子内部にスチレン系モノマーを含浸させる時間は、30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行するとポリスチレン系樹脂の重合体粉末を生成してしまうからである。スチレン系モノマーが実質的に重合しない温度とは、高い方が含浸速度を速めるには有利であるが、重合開始剤の分解温度を考慮して決定することが好ましい。
なお、スチレン系モノマーの含浸と重合を複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けることで、ポリスチレン系樹脂の重合体粉末の発生を極力少なくできる。
上記工程により複合樹脂粒子を得ることができる。得られた複合樹脂粒子は、内部がポリスチレン系樹脂リッチであり、外殻部がポリエチレン系樹脂リッチであるため、発泡成形体の物性に好影響を与えると発明者等は考えている。
難燃剤及び難燃助剤を含む複合樹脂粒子は、難燃剤及び難燃助剤をスチレン系モノマーと共に種粒子に含浸させる方法、重合後の樹脂粒子に含浸させる方法等により得ることができる。
発泡粒子は、複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させることで発泡性粒子を得た後、発泡性粒子を発泡させることにより得られた粒子である。発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ジメチルエーテル等が挙げられる。これら発泡剤は、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。発泡剤の含有量は、複合樹脂粒子100重量部に対して、5〜25重量部であることが好ましい。
発泡性粒子は、重合中又は重合終了後の複合樹脂粒子に発泡剤を含浸することで得ることができる。この含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉式の容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉式の容器中で、発泡剤を圧入することにより行われる。
更に、発泡性粒子の発泡は、例えば、容器中の発泡性粒子を水蒸気で加熱する方法のような公知の方法で行うことができる。
発泡成形体は、発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、水蒸気で加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒子同士を熱融着させることで得ることができる。上記種粒子を含む発泡粒子は、発泡成形体を得るための発泡成形条件に、高圧を要求しないという利点を有する。具体的には、一般的なゲージ圧である0.05〜0.15MPaの圧力の水蒸気により、発泡成形体を得ることができる。従って、普通発泡用の発泡成形機を使用できるため、発泡成形体を得るためのコストを低減できる。
発泡成形体は、収縮率、難燃性及び耐衝撃性が特に優れている。
具体的には、JIS K6767に準拠した80℃での寸法変化測定時に、2.0%以下の寸法変化率を示す発泡成形体を提供できる。また、FMVSS 302に準拠した燃焼速度試験方法において、80mm/分以下の燃焼速度を示す発泡成形体を提供できる。更に、40cm以上の落球衝撃値を示す発泡成形体を提供できる。
本発明の発泡成形体は、種々の用途に使用できるが、バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の車両用緩衝材、電子部品、ガラスを含む各種工業資材、食品の緩衝材や搬送容器等の各種用途に使用できる。特に、車両用緩衝材に好適に使用できる。
以下の実施例における各種物性の測定法を下記する。
<直鎖状低密度ポリエチレンの密度>
密度は、JIS K6922−1:1998に準拠して密度勾配管法で測定する。
メルトマスフローレイト(MFR)は、東洋精機製作所社製のセミオートメルトインデクサー2Aを用い、JIS K 7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定する。測定条件は、試料3〜8g、予熱270秒、ロードホールド30秒、試験温度190℃、試験荷重21.18N、ピストン移動距離(インターバル)25mmとする。試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10分)の値とする。
<直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン系共重合体の融点>
JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんする。充填後、窒素ガス流量20mL/分のもと、30℃から−40℃まで降温した後10分間保持する。保持後、−40℃から220℃まで昇温し(1st Heating)、10分間保持する。次いで、220℃から−40℃まで降温し(Cooling)、10分間保持後−40℃から220℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得る。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。本明細書において、融点とは、装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値である。
JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」記載の方法に準拠し測定する。
すなわち、樹脂試料を180℃で5分間熱プレスして、厚み1mm、直径10mmの円盤プレート状試験片を作製する。熱・応力・歪み測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「EXSTRAR TMA/SS6100」)を用い、窒素雰囲気下で針入試験モード(針の先端 φ1mm、石英製プローブ)、荷重500mNで、試験片に針を当てて、30℃から昇温速度5℃/分で温度を上げていきTMA曲線を得る。得られたTMA曲線を装置付属の解析ソフトで石英係数設定による補正を行い、TMA曲線の圧子(針)が侵入を始めるよりも低温側に認められる直線部分を高温側に延長し、侵入速度が最大となる部分の接線の低温側への延長との交点を針入温度とし、その針入温度をこの樹脂試料の軟化温度とする。なお、TMA曲線から針入温度の規定方法を図1に示す。
発泡粒子の嵩密度は、下記の要領で測定する。まず、発泡粒子をメスシリンダに500cm3の目盛りまで充填する。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達していれば、充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した発泡粒子の重量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その重量をW(g)とする。次式により発泡粒子の嵩密度を算出する。
発泡粒子の嵩密度(kg/m3)=W/500×1000
発泡成形体(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/m3)を求める。
発泡成形体の加熱寸法変化率をJIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定する。具体的には、発泡成形体から縦150mm×横150mm×高さ20mmの試験片を切り出す。前記試験片の表面に、縦方向に指向する長さ50mmの直線を3本、互いに平行に50mm間隔毎に記入すると共に、横方向に指向する長さ50mmの直線を3本、互いに平行に50mm間隔毎に記入する。しかる後、試験片を80℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間に亘って放置した後に取出し、標準状態(20±2℃、湿度65±5%)の場所にて1時間に亘って放置する。次に、試験片の表面に記入した6本の直線の長さをそれぞれ測定し、6本の直線の長さの相加平均値L1を算出する。下記の式に基づいて変化度Sを算出し、変化度Sの絶対値を加熱寸法変化率(%)とする。
S=100×(L1−50)/50
加熱寸法変化率について、
○(良) : 0≦S<1.5;寸法変化率が低く、寸法の安定性が良好であった
△(可) : 1.5≦S<2.0;寸法変化がやや見られるが、実用上使用は可能であった
×(不可): S≧2.0;寸法の変化が著しく見られ、実用上使用不可能であった
と判定する。
燃焼速度は、米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法で測定する。
試験片は、350mm×100mm×12mm(厚み)とし、少なくとも350mm×100mmの二面には表皮が存在するものとする。
燃焼速度は、以下の基準で評価する。
○(良):所定の密度の発泡成形体において、燃焼速度が80mm/分より小さい場合もしくは、所定の密度の発泡成形体において、測定開始点に達する前に消火した場合。なお、この場合の燃焼速度を0mm/分(自己消化性)とする。
×(不可):所定の密度の発泡成形体において、燃焼速度が80mm/分より大きい場合
JIS K7211:1976「硬質プラスチックの落錘衝撃試験方法通則」に記載の方法に準拠して落球衝撃強度を測定する。
所定の密度の発泡成形体を温度50℃で1日間乾燥した後、この発泡成形体から40mm×215mm×20mm(厚さ)の試験片(6面とも表皮なし)を切り出す。
次いで、支点間の間隔が150mmになるように試験片の両端をクランプで固定し、重さ321gの剛球を所定の高さから試験片の中央部に落下させて、試験片の破壊の有無を観察する。
試験片5個が全数破壊する最低の高さから全数破壊しない最高の高さまで5cm間隔で剛球の落下高さ(試験高さ)を変えて試験して、落球衝撃値(cm)、すなわち50%破壊高さを次の計算式により算出する。
H50=Hi+d[Σ(i・ni)/N±0.5]
H50:50%破壊高さ(cm)
Hi:高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ
d:試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i:Hiのときを0とし,1つずつ増減する高さ水準(i=…−3、−2、−1、0、1、2、3…)
ni:各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
N:破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
±0.5:破壊したデータを使用するときは負の数、破壊しなかったデータを使用するときは正の数を採用
○(良) :落球衝撃値が30cm以上
△(可) :落球衝撃値が25cm以上30cm未満の範囲
×(不可):落球衝撃値が25cm未満
発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚み20mmの平面長方形状の板状試験片を切り出し、23℃、湿度50%の条件で24時間放置する。なお、試験片の上面全面が発泡成形体の表皮から形成されるように試験片を発泡成形体から切り出す。次に、試験片の上面にガソリン1gを均一に塗布し、23℃、湿度50%の条件で60分放置する。その後、試験片の上面から薬品を拭き取り、試験片の上面を目視観察して下記基準に基づいて判断する。
耐薬品性について、
○(良) : 変化なし
△(可) : 表面軟化
×(不可): 面陥没(収縮)
と判定する。
発泡粒子を発泡成形機の300mm×400mm×30mmの金型内に充填し、水蒸気により加熱して発泡粒子を発泡させながら、発泡粒子同士を熱融着させて縦400mm×横300mmの上面を有し、厚み30mmの直方体形状の発泡成形体を得る。
水蒸気による加熱の際、水蒸気の蒸気圧を0.08MPaから0.25MPaまで0.01MPa刻みで変化させて20秒間水蒸気を導入し成型テストを実施する。
以上の成型の結果、得られた発泡成形体の、融着率が90%以上であった最も低い蒸気圧を元に、以下の基準で評価する。また、90%の融着率が得られた最も低い蒸気圧を成型時調圧と称する。
〇(良) :0.12MPa以下の蒸気圧で融着率90%以上の発泡成形体が得られた。低圧での成形が可能であり、非常に生産性が高い。
△(可) :0.12MPaより高く、0.15MPa以下の蒸気圧で融着率90%以上の発泡成形体が得られた。
×(不可):0.15MPaを越える蒸気圧が融着率90%以上の発泡成形体を得るためには必要であり、生産性に難が見られる。
融着率は、以下の手順で測定する。
発泡成形体の上面に、カッターで横方向に沿って長さ300mm、深さ約5mmの切り込み線を入れ、この切り込み線に沿って発泡成形体を2分割する。そして、2分割された発泡成形体の破断面の発泡粒子について、発泡粒子内で破断している発泡粒子数(a)と、発泡粒子間の界面で破断している発泡粒子数(b)を測定し、下記式に基づいて融着率を算出する。
融着率(%)=100×(a)/〔(a)+(b)〕
成型性、寸法変化率、燃焼速度、落球衝撃値、外観、耐薬品性の計6項目の評価結果を元に、以下の基準で評価する。
◎:6項目すべての評価基準において良の結果が得られた。
〇:6項目のうち1項目において可の結果が得られている。
△:6項目のうち2項目において可の結果が得られている。
×:6項目のうち1項目以上で不可の評価が得られているか、3項目以上において可の結果が得られている。
密度937kg/m3、MFR1.8g/10分、融点127℃の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(プライムポリマー社製SP4020)100重量部とエチレン−アクリル酸エチル共重合体(エチレン共重合体、日本ポリエチレン製、レクスパール品番A1100、MFR0.4g/10分、融点104℃、軟化温度83℃、エチレンアクリル酸エチル由来成分含有量10重量%)67重量部とをタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子(種粒子)を得た。なお、この直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.6mgであった。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを4g溶解させたスチレン1100gを4時間30分かけて滴下した。滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの重量比30/70)。
次いで、30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0gとを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。更に、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部300g(520mL)をオートクレーブに入れた。この後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けることで発泡性粒子を得ることができた。その後、30℃以下まで冷却して、発泡性粒子をオートクレーブから取り出し、脱水乾燥させた。
その後、0.09MPaの水蒸気を20秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、融着率90%以上の密度25kg/m3の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の外観は良好であった。
発泡粒子の嵩密度及び発泡成形体の密度を22kg/m3に変更すること以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
実施例3
分散用媒体に30℃で種粒子800gを分散させ、第1の重合において、ジクミルパーオキサイドを0.8g溶解させたスチレン単量体400gを使用し、第2の重合において、ジクミルパーオキサイドを4g溶解させたスチレン単量体800gを使用することと、発泡粒子の嵩密度及び発泡成形体の密度を33kg/m3に変更すること以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
直鎖状低密度ポリエチレンを、密度937kg/m3、MFR3.5g/10分、融点126℃、軟化温度119℃の直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、品番140HK)に変更することと、0.11MPaの水蒸気において加熱すること以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
実施例5
直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体との重量比を30:70に、分散用媒体に30℃で種粒子800gを分散させ、第1の重合において、ジクミルパーオキサイドを0.8g溶解させたスチレン単量体400gを使用し、第2の重合において、ジクミルパーオキサイドを4g溶解させたスチレン単量体800gを使用することと、発泡粒子の嵩密度及び発泡成形体の密度を33kg/m3に、難燃剤量を3.0重量部に、難燃助剤量を1.5重量部に変更すること、0.13MPaの水蒸気において加熱すること以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体との重量比を50:50に、難燃剤量を3.0重量部に、難燃助剤をビスクミルに変更すること以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
実施例7
分散用媒体に30℃で種粒子1000gを分散させ、第1の重合において、ジクミルパーオキサイドを1.0g溶解させたスチレン単量体500gを使用し、第2の重合において、ジクミルパーオキサイドを3g溶解させたスチレン単量体500gを使用することと、発泡粒子の嵩密度及び発泡成形体の密度を33kg/m3に変更すること、0.12MPaの水蒸気において加熱すること、以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
エチレン共重合体を日本ポリエチレン社製、品番A3100(MFR3.0g/10分、融点104℃、軟化温度75℃、アクリル酸エチル由来成分含有量10重量%)に変更すること以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は融着良好な成型品を得た場合、外観において一部収縮が見られた。
実施例9
エチレン共重合体を住友化学社製、品番WD201(MFR2.0g/10分、融点100℃、軟化温度75℃、メタクリル酸メチル由来成分含有量10重量%)に、直鎖状低密度ポリエチレンを宇部丸善ポリエチレン社製、品番140HKに、難燃剤量を3.0重量部に、難燃助剤量を1.0重量部に変更すること、0.14MPaの水蒸気において加熱すること、以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
種粒子として、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、品番NF444A、密度912kg/m3、MFR2g/10分、融点121℃、軟化温度93℃)のみからなる粒子を使用すること、0.08MPaの水蒸気において加熱すること、以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
比較例2
エチレン共重合体を、エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製、品番LV342、MFR3.0g/10分、融点94℃、軟化温度80℃、酢酸ビニル由来成分含有量10重量%)に変更すること、0.13MPaの水蒸気において加熱すること、以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は融着良好な成型品を得た場合、外観において一部収縮が見られた。
エチレン共重合体を、エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製、品番LV115、MFR0.3g/10分、融点108℃、軟化温度92℃、酢酸ビニル由来成分含有量4重量%)に変更すること、0.13MPaの水蒸気において加熱すること、以外は実施例1と同様にして融着率90%以上の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観は良好であった。
上記実施例及び比較例から得られた結果を表1及び2に示す。
表中、A樹脂はエチレン共重合体を、B樹脂は直鎖状低密度ポリエチレンを、TAIC6Bはトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを、BCはビスクミルを、DCPはジクミルパーオキサイドを、AEは自己消火性を、意味する。
実施例と比較例1とから、直鎖状低密度ポリエチレンのみの種粒子を使用すると、寸法変化率及び燃焼速度が増加することが分かる。
実施例と比較例2及び3とから、エチレン共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体であると、寸法変化率が増加したり、落球衝撃値が低下したりすることが分かる。
Claims (8)
- シード重合時の種粒子として使用される直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子であり、
前記種粒子が、直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン共重合体との混合樹脂を含み、
前記直鎖状低密度ポリエチレンが、115〜130℃の軟化温度を有し、
前記エチレン共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとエチレンとの共重合体であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来成分を1〜20重量%含み、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから選択され、
前記混合樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部とエチレン共重合体20〜100重量部とを含むことを特徴とする直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子。 - 前記エチレン共重合体が、75〜110℃の軟化温度と0.2〜1.0g/10分のMFRを有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来成分を5〜15重量%含む請求項1に記載の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子。
- 請求項1又は2に記載の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に由来する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100重量部と、前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸重合させて得られたスチレン系重合体100〜500重量部とからなる樹脂分を含むことを特徴とする複合樹脂粒子。
- 前記複合樹脂粒子が、前記樹脂分100重量部に対して、1.5〜6.0重量部の難燃剤を含む請求項3に記載の複合樹脂粒子。
- 前記難燃剤が、ハロゲン系難燃剤である請求項4に記載の複合樹脂粒子。
- 更に難燃助剤を含み、前記難燃助剤が、ジクミルパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン及びクメンヒドロパーオキサイドから選択される請求項4又は5に記載の複合樹脂粒子。
- 請求項3〜6のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子に発泡剤を含浸した後、発泡させることにより得られ、50〜15kg/m3の嵩密度を有する発泡粒子。
- 請求項7に記載の発泡粒子を発泡成形させることにより得られた発泡成形体。
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