JP6241668B2 - ダブルステータ型回転電機 - Google Patents

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Description

本発明は、外側ステータと内側ステータの間にロータを介在させて構成されるダブルステータ型回転電機に関する。
従来では、小型で高出力、振動騒音を少なくすることを目的とするインホイールモータに関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。このインホイールモータは、ホイールシャフトと一体回転するようにホイールシャフトに連結されたロータと、ロータに対してその回転半径方向外側に位置するようにハウジングに固定したアウターステータと、ロータに対してその回転半径方向内側に位置するようにハウジングに固定したインナーステータとを備える。すなわち、二つのステータと間に挟まれる一つのロータとからなる二重空隙ダブルステータ型のモータである。
アウターステータとインナーステータは、それぞれ複数個の鉄心と、各鉄心に巻回されるコイルを有する。ロータは、リング状の薄鋼板の積層体から成るロータコアと、ロータコアの外周面に周方向に沿って形成された複数の嵌合穴に嵌着される外側永久磁石と、ロータコアの内周面に周方向に沿って外側永久磁石に対向する位置に貼り着けられる内側永久磁石とを有する。
特開2007−261342号公報
特許文献1に開示されたロータは、マグネットトルクを発生する複数の磁石をもち大きなマグネットトルクを発揮できる。しかし、磁石極と隣の磁石極とをそれらの背面でつなぐリング状のヨーク部をもつため、ステータから見たときの界磁磁束通路の磁気抵抗はリング状ヨーク部をもたない場合に比べて小さく、すなわち直軸インダクタンスは大きい特徴をもつ。一方でロータ表面は磁石の極となっていて横軸磁束の通れる余地もなく、横軸インダクタンスは大きくならない。このため、直軸インダクタンスが小さく横軸インダクタンスが大きいときに大きくなるリラクタンストルクは小さく留まり、その結果マグネットトルクとリラクタンストルクの総合トルクは小さく、体格の割にはトルクが低いという問題点があった。
リラクタンストルクを改善するために上記リング状ヨーク部をなくすことが考えられ、そうしても作動は出来る。ただし、アウターステータとインナーステータの磁束は直列に貫通することになり、幾何学的必然性として、インナーステータの磁束通路はアウターステータの磁束通路よりも狭くなってしまう。また、体格的に大きいアウターステータを貫く磁束の量は、通路の狭いインナーステータの通過磁束にまで絞られてしまうため、体格の割に大きな出力を出せないという問題点がある。さらに外側永久磁石は、ロータコアの外周面に形成された複数の嵌合穴に嵌着されるだけであるので、高速回転に伴って生じる遠心力に対して弱いという問題点もある。
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、第1の目的は、同一体格の場合にはリラクタンストルクや出力を従来よりも大きくできるダブルステータ型回転電機を提供することである。第2の目的は、遠心力に耐え得る遠心耐力を従来よりも向上できるダブルステータ型回転電機を提供することである。
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、第1多相巻線(13a)が巻回される外側ステータ(13)と、第2多相巻線(14a)が巻回される内側ステータ(14)と、前記外側ステータと前記内側ステータとの相互間にギャップ(G)を介して配置されるロータ(15)とを有するダブルステータ型回転電機(MG)において、前記外側ステータと前記内側ステータとは、径方向に磁束(φ)が流れるように、同一の極数かつ同一の周方向位置に設けられるとともに、前記第1多相巻線に通電して生じる磁極(13p)と、前記第2多相巻線に通電して生じる磁極(14p)とは、前記同一の周方向位置で異なる極性となるように構成し、前記ロータは、前記外側ステータと前記内側ステータとを前記径方向に磁束通路として継ぐ複数のラジアルヨーク部(15a)を有し、前記第1多相巻線の一相と前記第2多相巻線の一相との巻線は、共通となる少なくとも一本の導体線(11)からなり、前記導体線は、前記外側ステータと前記内側ステータとの間であって、軸方向の一端側で径方向と周方向を組み合わせた斜め方向に渡される渡り部(11a)を含むことを特徴とする。
この構成によれば、ラジアルヨーク部は外側ステータと内側ステータとを径方向に磁束通路として継ぐので、リラクタンストルクを大きくすることができる。よって、同一体格で従来よりも出力を大きく確保することができる。また、外側ステータと前記内側ステータとの間に渡されるコイルエンドは、一端側で内外かつ周方向斜めに成形される。よって、一端側のコイルエンドを低く成形できるので小型化できる。
第2の発明は、前記ロータは、周方向に隣り合う前記ラジアルヨーク部を連結し、径方向に沿った断面の断面積が前記ラジアルヨーク部よりも小さく成形される複数のリング状ヨーク部(15d)を有し、前記リング状ヨーク部の外側面(15o)と内側面(15i)とには、それぞれ前記径方向に着磁した永久磁石(M1,M2)を配置することを特徴とする。
この構成によれば、磁束が外側ステータと内側ステータを全て直列に通ることがなくなり、外側ステータと内側ステータとの大きさの違いによる内外の通路の差をロータのリング状ヨーク部で吸収できる。したがって、同一体格の場合は出力を高めることができ、同一出力の場合は体格を小型化することができる。
第3の発明は、前記ラジアルヨーク部の周方向幅(Wa,Wc)は、前記外側ステータを構成する外側ティース(13t)および前記内側ステータを構成する内側ティース(14t)の周方向幅よりも広く設定されることを特徴とする。
この構成によれば、磁束(特に横軸磁束)が遮られることなく通過するため、リラクタンストルクが大きくなり、出力を高めることができる。
第4の発明は、第1多相巻線(13a)が巻回される外側ステータ(13)と、第2多相巻線(14a)が巻回される内側ステータ(14)と、前記外側ステータと前記内側ステータとの相互間にギャップ(G)を介して配置されるロータ(15)とを有するダブルステータ型回転電機(10)において、前記外側ステータと前記内側ステータとは、径方向に磁束(φ)が流れるように、同一の極数かつ同一の周方向位置に設けられるとともに、前記第1多相巻線に通電して生じる磁極(13p)と、前記第2多相巻線に通電して生じる磁極(14p)とは、前記同一の周方向位置で異なる極性となるように構成し、前記ロータは、前記外側ステータと前記内側ステータとを前記径方向に磁束通路として継ぐ複数のラジアルヨーク部(15a)と、周方向に隣り合う前記ラジアルヨーク部を連結する複数のリング状ヨーク部(15d)とを有し、前記リング状ヨーク部の外側面と内側面とにそれぞれ配置される永久磁石(M1,M2)は、同一の前記径方向に着磁され、かつ、前記ラジアルヨーク部を挟んで着磁方向が交互に変わっており、前記リング状ヨーク部の内側面に配置される永久磁石(M2)は、前記リング状ヨーク部の外側面に配置される永久磁石(M1)よりも、個数を少なく設定し、かつ、合計した周方向幅を小さく設定することを特徴とする。
この構成によれば、ラジアルヨーク部は外側ステータと内側ステータとを径方向に磁束通路として継ぐので、リラクタンストルクを大きくすることができる。よって、同一体格で従来よりも出力を大きく確保することができる。また、ロータを介して外側ステータと内側ステータとの間で磁束を径方向により確実に流すことができるため、トルクを高められる。さらに、リラクタンストルクが向上し、出力するトルクを高めることができる。
なお、「第1多相巻線」と「第2多相巻線」は、個別の巻線(導体線)でもよく、一本の巻線(導体線)でもよい。多相の相数は、三相以上であれば問わない。「一本の巻線」には、複数の導体線を電気的に接続して一本状にしたものを含む。「外側ステータ」は内側ステータよりも外側(外径側や外周側とも呼ぶ。以下同じである。)に位置し、「内側ステータ」は外側ステータよりも内側(内径側や内周側とも呼ぶ。以下同じである。)に位置する。「ロータ」は、ラジアルヨーク部とリング状ヨーク部とを交互に配置して円状(円環状や円筒状等を含む)に成形される。「ラジアルヨーク部」と「リング状ヨーク部」は、一体成形してもよく、それぞれ別個に成形した後に固定(一体化)してもよい。「架橋部」は、永久磁石の少なくとも一面にかかる一部または全部を覆えば任意の形状で成形してもよい。「ダブルステータ型回転電機」は、回転する部材(例えば軸やシャフト等)を有する機器であれば任意である。例えば、発電機,電動機,電動発電機等が該当する。「巻回」は巻き回すことを意味し、巻いて装う「巻装」と同義に用いる。
ダブルステータ型回転電機の第1構成例を模式的に示す断面図である。 図1に示すII方向から見たロータの構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 電磁鋼板の第1構成例を模式的に示す平面図である。 図2に示すIV方向から見たロータの側面図である。 永久磁石の着磁方向と通電によって生じる磁束の方向を説明する図である。 トルク/磁石量と第1比率の関係例を示すグラフ図である。 トルク/磁石量と第2比率の関係例を示すグラフ図である。 トルク/磁石量と第3比率の関係例を示すグラフ図である。 ロータの第1構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 ロータの第1構成例にかかる磁束の流れを示す模式図である。 ロータの第2構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 ロータの第2構成例にかかる磁束の流れを示す模式図である。 ロータの第3構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 ロータの第3構成例にかかる磁束の流れを示す模式図である。 ロータの第4構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 ロータの第4構成例にかかる磁束の流れを示す模式図である。 ロータの第5構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 ロータの第5構成例にかかる磁束の流れを示す模式図である。 ロータの第6構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 ロータの第6構成例にかかる磁束の流れを示す模式図である。 ダブルステータ型回転電機の第2構成例を模式的に示す断面図である。 導体線の第1構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。 導体線の第2構成例を部分的に拡大して模式的に示す平面図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。見易くするためにハッチングを行うため、ハッチングされた要素が必ずしも断面とは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。許容誤差範囲は、製造許容誤差、設計許容誤差、実用上支障がない誤差などを含む範囲である。以下では、「ダブルステータ型回転電機」を単に「回転電機」と呼ぶことにする。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は図1〜図14を参照しながら説明する。図1に示す回転電機10Aは、回転電機10の一例であって、ダブルステータ型の電動発電機である。当該回転電機10Aは、外側ステータ13(固定子),内側ステータ14(固定子),ロータ15(回転子),ディスク16,回転軸18(シャフト)などをハウジング12内に有する。
ハウジング12は、ハウジング本体部12aやカバー部12bなどを有する。ハウジング本体部12aは、外側ステータ13,内側ステータ14,ロータ15などを収容可能であれば形状を問わない。カバー部12bは、ハウジング本体部12aを塞ぐ部材であり、ハウジング本体部12aに対して着脱可能に構成するとよい。例えば、ハウジング本体部12aは開口部位を有するカップ状に成形し、カバー部12bはハウジング本体部12aの開口部位を塞ぐ円板状に成形する。ハウジング本体部12aおよびカバー部12bと、回転軸18との間には軸受17(ベアリング)が介在されることで、回転軸18は回転自在に支持される。回転軸18は回転する限りにおいて任意の形状で成形してよい。
外側ステータ13と内側ステータ14は、ロータ15を介して対向配置されるとともに、それぞれハウジング12の内壁面に固定される。各ステータの固定方法は問わない。外側ステータ13には第1多相巻線13aが巻回され、内側ステータ14には第2多相巻線14aが巻回される。具体的には、外側ステータ13のステータコア(「ステータ鉄心」とも呼ぶ。以下同じである。)に第1多相巻線13aが巻回され、内側ステータ14のステータコアに内側ステータ14が巻回される。
ロータ15はディスク16に固定され、ディスク16は回転軸18に固定される。これらの固定方法は問わない。すなわち、ディスク16を介してロータ15と回転軸18とが固定される。ロータ15を最適化した構成例については後述する(図6〜図13を参照)。ディスク16は任意の形状で成形してよく、例えば図1に示すように断面が径方向と軸方向に沿ったL字状に成形される。
外側ステータ13とロータ15との間や、ロータ15と内側ステータ14との間にはそれぞれギャップGが設けられる(図5を参照)。ギャップGは、小さく(狭く)なるにつれて、磁束φが流れ易くなりトルクが増える。その反面、衝突等のように大きな外力を受ける場合にはステータとロータ15とが接触し易くなる。よって磁束φの流れ易さと接触防止とを考慮してギャップGを設定するとよい。
図2〜図4に示すロータ15は、周方向にラジアルヨーク部15aとリング状ヨーク部15dとを交互に配置して円筒状(円環状を含む。以下同じである。)に成形される。すなわちロータ15は、複数のラジアルヨーク部15aと、複数のリング状ヨーク部15dとを有する。図2と図3ではラジアルヨーク部15aとリング状ヨーク部15dを各々破線で示す。ラジアルヨーク部15aの数とリング状ヨーク部15dの数は各々任意に設定してよい。
図2,図3に示す構成例のラジアルヨーク部15aは、外側の周方向幅Waと、内側の周方向幅Wcとを異ならせて成形する(Wa<Wc)。ただし、周方向幅Wa,Wcは、図5に示す外側ステータ13のティース幅Wtよりも広く(大きく)設定する(Wa>Wt,Wc>Wt)。リング状ヨーク部15dは径方向幅Wdで成形し、ラジアルヨーク部15aの径方向幅Wbよりも小さい(Wd<Wb)。言い換えると、リング状ヨーク部15dの断面積(すなわち図2に径方向幅Wdで示すように径方向に沿った断面の断面積)は、ラジアルヨーク部15aの断面積(すなわち図2に径方向幅Wbで示すように径方向に沿った断面の断面積)よりも小さい。
ラジアルヨーク部15aとリング状ヨーク部15dは、図示するように一体成形してもよく、それぞれ別体に成形してから固定してもよい。またラジアルヨーク部15aとリング状ヨーク部15dは、いずれも単体や積層体等の形態を問わない。本形態では、図3に示すように磁性体の一つである電磁鋼板(鉄鋼材料)を複数枚用い、図4に示すように積層して成形する。以下では、複数のラジアルヨーク部15aと複数のリング状ヨーク部15dからなる構造体を単に「ロータコア」と呼ぶことにする。
リング状ヨーク部15dの外側面15oには永久磁石M1が配置されて固定される。リング状ヨーク部15dの内側面15iには永久磁石M2が配置されて固定される。永久磁石M1,M2の固定方法は問わない。永久磁石M1,M2の数は、各々任意に設定してよい。例えば相数に対応する極対数でもよく、分割して数を増やしてもよい。図2では、複数の分割磁石M1a,M1bで永久磁石M1を構成し、区別のために永久磁石ごとに異なるハッチ線を示す。永久磁石M1,M2は、いずれも径方向に同一方向に磁化される。図2では磁化方向を太線矢印で示す。図2では、中央側の永久磁石M1,M2を外側(図面上側)に向けて着磁し、左右両側の永久磁石M1,M2を内側(図面下側)に向けて着磁している。このように、ラジアルヨーク部15dを挟んでリング状ヨーク部15dの内外側面に固定される永久磁石M1,M2の着磁方向が交互に変わっている。
リング状ヨーク部15dの周方向両側(図2では左側と右側)にはラジアルヨーク部15aが配置される。これらのラジアルヨーク部15aの外縁部15aeどうしを架橋する部位が橋梁部15bである。橋梁部15bは、リング状ヨーク部15dの外側面15oに配置される永久磁石M1,M2の一部または全部を覆う。この橋梁部15bは、ロータコアの表面(外側面;図面上側)に凹凸が生じないように、外縁部15aeと連続するように成形するとよい。橋梁部15bの厚さ(径方向幅)任意に設定してよい。
橋梁部15bは磁気回路の一部となり得るので、外側ステータ13とのギャップGが小さくなり、磁束φがより流れ易くなる。橋梁部15bの厚さは、磁束が流れ易くするには小さく(薄く)するのがよく、橋梁部15bの剛性を高めるには大きく(厚く)するのがよいので、双方を考慮して設定するとよい。
橋梁部15bとリング状ヨーク部15dとの間には、分割磁石M1aと分割磁石M1bを区画する区画部15cを設けてもよい。区画部15cを設ける場合は、橋梁部15bと区画部15cは結合されてT字状の形状になる。
図3には、上述したロータ15Aの構成例となるように加工された電磁鋼板の一例を示す。磁石用穴部Ha,Hbは、いずれもラジアルヨーク部15a,橋梁部15b,区画部15c,リング状ヨーク部15dで囲まれる穴部である。これらの穴部は永久磁石を収容できれば、貫通穴でもよく、非貫通穴(凹状部位)でもよい。磁石用凹部Hcは、ラジアルヨーク部15aとリング状ヨーク部15dで囲まれる凹部(あるいは切欠部)である。図2に示すように、磁石用穴部Haには分割磁石M1aを収容する。磁石用穴部Hbには分割磁石M1aを収容する。磁石用凹部Hcには永久磁石M2を収容する。
図5には、内側ステータ14,ロータ15A,外側ステータ13の構成例(一部分)を示す。内側ステータ14は、内側ティース14t、スロット13sに巻回して収容された第2多相巻線14aなどを有する。外側ステータ13は、外側ティース13t、スロット14sに巻回して収容された第1多相巻線13aなどを有する。スロット13s,14sは、いずれも隣り合うティース(内側ティース14tや外側ティース13t)の相互間に形成される空間である。
図5は、凡例で示す向きに電流を流した場合において、第1多相巻線13aに通電して生じる磁極13pと、第2多相巻線14aに通電して生じる磁極14pの一例を矢印(白抜き図形)で示す。磁極13p,14pは、各ステータに生じる磁界の向き(すなわち電磁石の向き)を示す。磁極13pは、外側ステータ13の内周面側(ロータ15の対向面側)がS極となる例である。磁極14pは、内側ステータ14の外周面側(ロータ15の対向面側)がN極となる例である。すなわち、内側ステータ14と外側ステータ13とは、同一の周方向位置(同一の角度位置)について磁極13pと磁極14pとが異なる極性(N極またはS極)となるように構成される。磁極13p,14pは、周方向に磁極範囲MP(例えば電気角で180度)ごとに変わる。分割磁石M1a,M1bおよび永久磁石M2にかかる各々の着磁方向は、図2と同様に太線矢印で示す。第1多相巻線13aと第2多相巻線14aには、各々任意の種類の線を用いてよい。図5には断面が四角形状の角線を用いた例を示す。その他には、断面が長方形状の平角線、断面が円形状(楕円形状を含む)の丸線、複数の細線を縒って成形されたリッツ線などを用いてもよい。
ここで、図2に示すラジアルヨーク部15aの周方向幅Wa(あるいは周方向幅Wc)、リング状ヨーク部15dの径方向幅Wd、分割磁石M1a,M1bおよび永久磁石M2にかかる磁石量(磁石容積とも呼ぶ。)、図5に示す外側ティース13tのティース幅Wtについて様々の値を適用して、回転電機10Aから出力されるトルクを計測した。その計測結果を図6〜図8に示す。なお、周方向幅Waと周方向幅Wcはどちらを適用してもよいので、以下では周方向幅Waを適用した計測結果を示す。
図6には、トルク/磁石量を縦軸とし、周方向幅Waと径方向幅Wdとの第1比率Ra(=Wd/Wa)を横軸とした場合の計測結果を示す。各計測点を丸点や菱形で示す。菱形で示す計測点は、後述するモデル(第1モデル〜第6モデル)である。また、周方向幅Wa,径方向幅Wd,磁石量に対して高いトルクが得られるように最適化した特性線L1を太破線で示す。特性線L1に対応する周方向幅Wa,径方向幅Wd,磁石量を設定すれば、第1比率Raの広い範囲で高いトルクが得られる。
図7には、トルク/磁石量を縦軸とし、径方向幅Wdとティース幅Wtの第2比率Rb(=Wd/Wt)を横軸とした場合の計測結果を示す。図6と同様に各計測点を丸点や菱形で示す。周方向幅Wa,径方向幅Wd,磁石量に対して高いトルクが得られるように最適化した特性線L2を太破線で示す。特性線L2に対応する周方向幅Wa,径方向幅Wd,磁石量を設定すれば、第2比率Rbの広い範囲で高いトルクが得られる。
図8には、トルク/磁石量を縦軸とし、周方向幅Waとティース幅Wtの第3比率Rc(=Wa/Wt)を横軸とした場合の計測結果を示す。図6,図7と同様に各計測点を丸点や菱形で示す。
以下では、図6〜図8に菱形で示す計測点にかかる6つのモデルについて、図9〜図20を参照しながら説明する。計測に用いた回転電機10Aは、外側ステータ13の直径を290[mm]とし、軸方向の長さを50[mm]とし、外側ステータ13と内側ステータ14に各々生じる磁極数を20とする。
なお図9〜図20において、外側ステータ13A〜13Fは外側ステータ13の一例である。ロータ15A〜15Fはロータ15の一例である。内側ステータ14A〜14Fは内側ステータ14の一例である。第1比率Ra1〜Ra5は第1比率Raに含まれる。第2比率Rb1〜Rb4は第2比率Rbに含まれる。第3比率Rc1〜Rc4は第3比率Rcに含まれる。図10,図12,図14,図16,図18,図20には、磁束φの流れを等高線状の模様で示し、さらに横軸磁束領域A1と直軸磁束領域A2を示す。横軸磁束領域A1は、周方向成分が径方向成分よりも大きな横軸の磁束が流れる領域であり、リラクタンストルクの発生する領域である。直軸磁束領域A2は、径方向成分が周方向成分よりも大きな直軸の磁束が流れる領域であり、マグネットトルクの発生する領域である。横軸磁束領域A1と直軸磁束領域A2によって、磁束φが外側ステータ13と内側ステータ14を全て直列に通ることがなくなる。
(第1モデル)
第1モデルの構成を図9に示し、磁束の流れを図10に示す。この第1モデルは、第1比率Ra4=Wd/Wa=0.36とし、第2比率Rb2=Wd/Wt=0.95とし、第3比率Rc5=Wa/Wt=2.6とし、磁石量を8.1[cc/極]とした。第1モデルの回転電機10Aは、例えば437.3[Nm]のトルクが得られ、トルク/磁石量が0.053になった。トルク/磁石量については、図6に計測値Da5で示し、図7に計測値Db4で示し、図8に計測値Dc4で示す。図10に示すように、内側ステータ14Aからロータ15Aを介して外側ステータ13Aに向かって径方向に流れる磁束φが生じる。ロータ15Aは、破線で囲んで示す横軸磁束領域A1(端側領域)と、一点鎖線で囲んで示す直軸磁束領域A2(中央側領域)とで生じる磁束の流れが異なる。
(第2モデル)
第2モデルの構成を図11に示し、磁束の流れを図12に示す。この第2モデルは、第1比率Ra1=Wd/Wa=0.17とし、第2比率Rb1=Wd/Wt=0.45とし、第3比率Rc3=Wa/Wt=2.6とし、磁石量を9.6[cc/極]とした。第2モデルの回転電機10Aは、例えば468.4[Nm]のトルクが得られ、トルク/磁石量が0.048になった。トルク/磁石量については、図6に計測値Da4で示し、図7に計測値Db3で示し、図8に計測値Dc4で示す。図12に示すように、内側ステータ14Bからロータ15Bを介して外側ステータ13Bに向かって径方向に流れる磁束φが生じる。ロータ15Bは、破線で囲んで示す横軸磁束領域A1と、一点鎖線で囲んで示す直軸磁束領域A2とで生じる磁束の流れが異なる。
(第3モデル)
第3モデルの構成を図13に示し、磁束の流れを図14に示す。この第3モデルは、第1比率Ra2=Wd/Wa=0.2とし、第2比率Rb1=Wd/Wt=0.3とし、磁石量を12.6[cc/極]とした。第3モデルの回転電機10Aは、例えば483.9[Nm]のトルクが得られ、トルク/磁石量が0.045になった。図6では計測値Da2で示す。図14に示すように、内側ステータ14Cからロータ15Cを介して外側ステータ13Cに向かって径方向に流れる磁束φが生じる。ロータ15Cは、破線で囲んで示す横軸磁束領域A1と、一点鎖線で囲んで示す直軸磁束領域A2とで生じる磁束の流れが異なる。
(第4モデル)
第4モデルの構成を図15に示し、磁束の流れを図16に示す。この第4モデルは、第1比率Ra3=Wd/Wa=0.34とし、第2比率Rb1=Wd/Wt=0.38とし、第3比率Rc1=Wa/Wt=1.05とし、磁石量を13.7[cc/極]とした。第4モデルの回転電機10Aは、例えば406.9[Nm]のトルクが得られ、トルク/磁石量が0.03になった。トルク/磁石量については、図6に計測値Da1で示し、図8に計測値Dc1で示す。図16に示すように、内側ステータ14Dからロータ15Dを介して外側ステータ13Dに向かって径方向に流れる磁束φが生じる。ロータ15Dは、破線で囲んで示す横軸磁束領域A1と、一点鎖線で囲んで示す直軸磁束領域A2とで生じる磁束の流れが異なる。
(第5モデル)
第5モデルの構成を図17に示し、磁束の流れを図18に示す。この第5モデルは、第1比率Ra5=Wd/Wa=0.77とし、第2比率Rb4=Wd/Wt=1.5とし、第3比率Rc2=Wa/Wt=1.9とし、磁石量を6.9[cc/極]とした。第5モデルの回転電機10Aは、例えば330.4[Nm]のトルクが得られ、トルク/磁石量が0.047になった。トルク/磁石量については、図6に計測値Da3で示し、図7に計測値Db2で示し、図8に計測値Dc3で示す。図18に示すように、内側ステータ14Eからロータ15Eを介して外側ステータ13Eに向かって径方向に流れる磁束φが生じる。ロータ15Eは、破線で囲んで示す横軸磁束領域A1と、一点鎖線で囲んで示す直軸磁束領域A2とで生じる磁束の流れが異なる。
(第6モデル)
第6モデルの構成を図19に示し、磁束の流れを図20に示す。この第6モデルは、第1比率Ra5=Wd/Wa=0.6とし、第2比率Rb4=Wd/Wt=1.6とし、第3比率Rc4=Wa/Wt=2.6とし、磁石量を12.3[cc/極]とした。第6モデルの回転電機10Aは、例えば393.5[Nm]のトルクが得られ、トルク/磁石量が0.031になった。トルク/磁石量については、図8に計測値Dc2で示す。図20に示すように、内側ステータ14Fからロータ15Fを介して外側ステータ13Fに向かって径方向に流れる磁束φが生じる。ロータ15Fは、破線で囲んで示す横軸磁束領域A1と、一点鎖線で囲んで示す直軸磁束領域A2とで生じる磁束の流れが異なる。
上述した第1モデルから第6モデルまでの回転電機10Aを考慮し、高いトルクを得るために周方向幅Wa、径方向幅Wd、磁石量、ティース幅Wtを最適化するための設定例(第1設定例〜第3設定例)を以下に述べる。
(第1設定例)
図6に示す特性線L1によれば、第1比率Ra=0.4付近でトルク/磁石量の値が最大になる。このことは、リング状ヨーク部15dの径方向幅Wdが小さ過ぎたり大き過ぎたりすると、高いトルクは得られないことを示す。図6に示すように、第2モデルのロータ15Bと第5モデルのロータ15Eは、第1モデルのロータ15Aよりもトルク/磁石量の値が小さい。そこで、トルク/磁石量の閾値を第1モデルで得られた計測値Da5とし、当該閾値以上となる範囲(図6では下限値RL1から上限値RU1までの設定範囲RS1)内で径方向幅Wdを設定するのが望ましい。
(第2設定例)
図7に示す特性線L2によれば、第2比率Rb=1付近でトルク/磁石量の値が最大になる。このことは、リング状ヨーク部15dの径方向幅Wdと、外側ステータ13のティース幅Wtとの差分値が大きくなると、高いトルクは得られないことを示す。図7に示すように、第2モデルのロータ15Bと第5モデルのロータ15Eは、第1モデルのロータ15Aよりもトルク/磁石量の値が小さい。そこで、トルク/磁石量の閾値Dbth(例えば第1モデルで得られた計測値Db4よりも低い値)を設定し、当該閾値Dbth以上となる範囲(図7では下限値RL2から上限値RU2までの設定範囲RS2)内で径方向幅Wdとティース幅Wtとを設定するのが望ましい。
(第3設定例)
図8に示すロータ15A(第1モデル),ロータ15B(第2モデル)およびロータ15F(第6モデル)は、第3比率Rcが同程度(2.6前後)であるのに対して、トルク/磁石量が大きく異なる。そこで、ロータ15A(第1モデル)とロータ15F(第6モデル)と比較してみる。
図10,図11に示すロータ15Aは、永久磁石M1(M1a,M1b)が周方向幅Wf1であり、永久磁石M2が周方向幅We1であり、周方向幅比(We1/Wf1)は0.45である。図19,図20に示すロータ15Fは、永久磁石M1(M1a,M1b)が周方向幅Wf2であり、永久磁石M2が周方向幅We2であり、周方向幅比(We2/Wf2)は0.75である。周方向幅Wf1と周方向幅We1に様々の数値を設定して回転電機10Aのトルクを計測してみた結果、永久磁石の周方向幅比が大きくなるにつれて、トルク/磁石量も大きくなることが分かった。このことは、図10(第1モデル)と図20(第6モデル)に示す横軸磁束領域A1を比較してみると、明らかに図10(第1モデル)で多くの磁束φが流れ、多くのリラクタンストルクを得ている。
よって永久磁石M2は、永久磁石M1よりも、個数を少なくしたり、永久磁石M2の周方向幅を小さく(例えば0.6以下に)したりして設定するのが望ましい。ただし、永久磁石M2の周方向幅をあまりにも小さく設定すると径方向への磁束φが流れにくくなるので、適切な周方向幅比(We1/Wf1)の範囲内(例えば0.2〜0.6;望ましくは0.3〜0.5)で設定するとよい。また、全ての永久磁石M2の合計した周方向幅(ΣWe1)は、全ての永久磁石M1の合計した周方向幅(ΣWf1)よりも小さく設定するとよい。なお、記号「Σ」は総和を意味するものとする。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は図21〜図23を参照しながら説明する。なお図示および説明を簡単にするため、特に明示しない限り、実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。よって、主に実施の形態1と相違する点を説明する。
図21に示す回転電機10Bは、回転電機10の一例であって、ダブルステータ型の電動発電機である。当該回転電機10Bは、外側ステータ13,内側ステータ14,ロータ15,回転軸18などをハウジング12内に有する。図1に示す回転電機10Aと相違するのは、巻線である。すなわち、回転電機10Aは第1多相巻線13aと第2多相巻線14aを個別に有するのに対して、回転電機10Bは多相巻線11を有する。
多相巻線11は、第1多相巻線13aと第2多相巻線14aのほかに、第1多相巻線13aと第2多相巻線14aとを接続する渡り部11aを有する。多相巻線11は、第1多相巻線13aの一相と第2多相巻線14aの一相との巻線は、共通となる少なくとも一本の導体線で構成してもよい。この場合は、第1多相巻線13a、渡り部11a、第2多相巻線14aを一本の導体線で構成する。多相巻線11は、第1多相巻線13aの一部、渡り部11a、第2多相巻線14aの一部をU字状に一体成形したU字状導体を含めてもよい。多相巻線11は、複数のU字状導体を接続して構成してもよい。要するに、渡り部11aを備えていればよい。
渡り部11aの構成例について、図22と図23を参照しながら説明する。図22は、第1多相巻線13aと第2多相巻線14aに角線を用いた例を示す。この場合は、渡り部11aも角線になる。実線で示す渡り部11aは、第1多相巻線13aを収容するスロット13sと第2多相巻線14aを収容するスロット14sとを異ならせ、径方向と周方向を組み合わせた斜め方向に渡される。図22の例では、外側ステータ13と内側ステータ14とで対応するスロットを1磁極ピッチ(例えば電気角で180度)だけ異ならせている。二点鎖線で示す渡り部11bは、第1多相巻線13aと第2多相巻線14aを収容するスロット13s,14sを同じ位置(角度)にする。渡り部11a,11bは、ステータコアから突出する部位である「コイルエンド」に含まれる。
図23には、第1多相巻線13aと第2多相巻線14aに平角線を用いた例を示す。第1多相巻線13aは平角線の長辺を径方向に沿ってスロット13sに収容し、第2多相巻線14aは平角線の長辺を周方向に沿ってスロット14sに収容する。このように構成することで、外側ステータ13と内側ステータ14のコア(特に外側ティース13tや内側ティース14t)を大きく確保することができる。コアを大きく確保することで、磁束を流し易くなる。渡り部11aは平角線になり、図22と同様に斜め方向に(すなわち1磁極ピッチずらして)渡される。ただし、第1多相巻線13aと第2多相巻線14aの収容方向が異なるので、渡り部11aの途中に捻り部位11cを有する。
外側ステータ13、内側ステータ14、ロータ15については、実施の形態1と同様に構成することができる(図2〜図20を参照)。そのため、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1,2に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えると、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
上述した実施の形態1,2では、永久磁石M1は2つの分割磁石M1a,M1bで構成した(図2,図5等を参照)。この形態に代えて、永久磁石M1は3つ以上の分割磁石で構成してもよい。また、永久磁石M2を2つ以上の分割磁石で構成してもよい。永久磁石M2を分割磁石で構成する場合は、永久磁石M1を構成する分割磁石の個数よりも少なく設定するとよい。図2に示す区画部15cと同様に、分割磁石どうしを区画する区画部を必要に応じて設けてもよい。永久磁石を分割するか否かの相違に過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、回転電機10(10A,10B)は、ダブルステータ型の電動発電機として構成した(図1,図21を参照)。この形態に代えて、ダブルステータ型の発電機として構成してもよく、ダブルステータ型の電動機として構成してもよい。回転電機10の使用目的に応じて構成すればよい。単に機能が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、ラジアルヨーク部15aは、外側の周方向幅Waと、内側の周方向幅Wcとを異ならせて成形する構成とした(図2,図3を参照)。この形態に代えて、周方向幅Waと周方向幅Wcとを同じにして成形する構成としてもよい。このように成形しても、磁束φは実施の形態1,2と同様に流れる。よって、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、磁石用穴部Ha,Hbは、永久磁石M1(M1a,M1b)よりも大きく成形し、区画部15cとリング状ヨーク部15dの間に空隙が生じるように構成した(図2,図3を参照)。この形態に代えて、磁石用穴部Ha,Hbは、永久磁石M1(M1a,M1b)と同等(製造誤差範囲内)に成形し、区画部15cとリング状ヨーク部15dの間に空隙が生じないように構成してもよい。図10に示す永久磁石M1の周方向幅Wf1を大きく確保し、トルクを高めることができる。
上述した実施の形態1,2では、永久磁石M2をリング状ヨーク部15dの内側面15iに固定する構成とした(図2,図5等を参照)。この形態に代えて、図2に示す橋梁部15bと同様にして、ラジアルヨーク部15aの内縁部どうしを架橋する内側橋梁部を設け、当該内側橋梁部とリング状ヨーク部15dとの間に永久磁石M2を収容して固定する構成としてもよい。内側橋梁部が永久磁石M2を保持する機能を担うので、永久磁石M2をより強固に固定することができる。内側橋梁部は磁気回路の一部となり得るので、内側ステータ14とのギャップGが小さくなり、磁束φがより流れ易くなる。
上述した実施の形態1,2では、ハウジング12は、コップ状のハウジング本体部12aと、円板状のカバー部12bで構成した(図1を参照)。この形態に代えて、ハウジング本体部12aをコップ状以外の形状で成形してもよく、カバー部12bを円板状以外の形状で成形してもよい。要するに、ハウジング本体部12aとカバー部12bは、外側ステータ13,内側ステータ14,ロータ15,回転軸18などを収容できれば、どのような形状で構成してもよい。ハウジング12の構造が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
〔作用効果〕
上述した実施の形態1,2および他の実施の形態によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
(1)第1多相巻線13aが巻回される外側ステータ13と、第2多相巻線14aが巻回される内側ステータ14と、外側ステータ13と内側ステータ14との相互間にギャップを介して配置されるロータ15とを有する回転電機10において、外側ステータ13と内側ステータ14とは、径方向に磁束φが流れるように、同一の極数かつ同一の周方向位置に設けられ、第1多相巻線13aに通電して生じる磁極13pと、第2多相巻線14aに通電して生じる磁極14pとは、同一の周方向位置で異なる極性となるように構成し、ロータ15は、外側ステータ13と内側ステータ14とを径方向に磁束通路として継ぐ複数のラジアルヨーク部15aを有する構成とした(図1,図5,図21を参照)。さらに、第1多相巻線13aと第2多相巻線14aは一本の導体線(多相巻線11)からなり、多相巻線11は、外側ステータ13と内側ステータ14との間であって、軸方向の一端側で径方向と周方向を組み合わせた斜め方向に渡される渡り部11aを含む構成とした(図21〜図23を参照)。この構成によれば、ラジアルヨーク部15aは外側ステータ13と内側ステータ14とを径方向に磁束通路として継ぐので、リラクタンストルクを大きく確保することができる。そのためリラクタンストルクを高められて、マグネットトルクとあわせた総合トルクを高めることができる。また、渡り部11aは一端側で内外かつ周方向斜めに成形される。よって、一端側の渡り部11a(コイルエンド)を低く成形できるので回転電機10を小型化することができる。
(2)ロータ15は、隣り合うラジアルヨーク部15aを連結し、径方向に沿った断面の断面積がラジアルヨーク部15aよりも小さく成形される複数のリング状ヨーク部15dを有し、リング状ヨーク部15dの外側面15oと内側面15iとには、それぞれ径方向に着磁した永久磁石M1,M2を配置する構成とした(図2を参照)。この構成によれば、横軸磁束領域A1と直軸磁束領域A2によって磁束φが外側ステータ13と内側ステータ14を全て直列に通ることがなくなり(図10,図12,図14,図16,図18,図20を参照)、外側ステータ13と内側ステータ14との大きさの違いによる内外の通路の差をロータ15のリング状ヨーク部15dで吸収できる。したがって、同一体格の場合は出力を高めることができ、同一出力の場合は体格を小型化することができる。
(3)ラジアルヨーク部15aの周方向幅Waは、外側ステータ13を構成する外側ティース13tのティース幅Wtよりも広く(大きく)設定される構成とした(図2,図5を参照)。内側ステータ14を構成する内側ティース14tの周方向幅よりも広く設定してもよい。これらの構成によれば、磁束φ(特に横軸磁束領域A1の磁束)が遮られることなく通過するため、リラクタンストルクが大きくなり、出力を高めることができる。
(4)回転電機10において、外側ステータ13と内側ステータ14とは、径方向に磁束φが流れるように、同一の極数かつ同一の周方向位置に設けられ、第1多相巻線13aに通電して生じる磁極13pと、第2多相巻線14aに通電して生じる磁極14pとは、同一の周方向位置で異なる極性となるように構成し、ロータ15は、外側ステータ13と内側ステータ14とを径方向に磁束通路として継ぐ複数のラジアルヨーク部15aと、周方向に隣り合うラジアルヨーク部15aを連結する複数のリング状ヨーク部15dとを有する構成とした(図1,図5,図21を参照)。さらに、リング状ヨーク部15dの外側面15oと内側面15iとにそれぞれ配置される永久磁石M1,M2は、同一の径方向に着磁され、かつ、ラジアルヨーク部15aを挟んで着磁方向が交互に変わっており、リング状ヨーク部15dの内側面15iに配置される永久磁石M1,M2は、リング状ヨーク部15dの外側面15oに配置される永久磁石M1,M2よりも、個数を少なく設定し、かつ、合計した周方向幅を小さく設定する構成とした(図2,図5を参照)。この構成によれば、ラジアルヨーク部15aは外側ステータ13と内側ステータ14とを径方向に磁束通路として継ぐので、リラクタンストルクを大きく確保することができる。そのためリラクタンストルクを高められて、マグネットトルクとあわせた総合トルクを高めることができる。また、ロータ15を介して外側ステータ13と内側ステータ14との間で磁束φを径方向により確実に流すことができるため、トルクを高められる。さらに、リラクタンストルクが向上し、出力するトルクを高めることができる。
(5)ラジアルヨーク部15aの周方向幅Waは、リング状ヨーク部15dの径方向幅Wdよりも大きく設定する構成とした(図6を参照)。具体的には図6に示す設定範囲RS1内の値で設定する。周方向幅Wcについても径方向幅Wdよりも大きく設定する構成としてもよい。これらの構成によれば、永久磁石M1,M2の磁石量に対して高いトルクを得ることができる。
(6)リング状ヨーク部15dの周方向両側に配置されるラジアルヨーク部15aの外縁部15aeどうしを架橋されるとともに、リング状ヨーク部15dの外側面15oに配置される永久磁石M1を覆う橋梁部15bを有する構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、永久磁石M1がロータ15の回転に伴って生じる遠心力を受けても、橋梁部15bが永久磁石M1を保持することができる。
(7)リング状ヨーク部15dの外側面15oと内側面15iとに配置される永久磁石M1,M2は、同一の径方向に着磁する構成とした(図2,図5に示す太線矢印を参照)。この構成によれば、ロータ15を介して外側ステータ13と内側ステータ14との間で磁束φを径方向により確実に流すことができる。そのため、トルクを高められる。
(8)リング状ヨーク部15dの外側面15oに配置する永久磁石M1の周方向幅Wf1と、リング状ヨーク部15dの内側面15iに配置する永久磁石M2の周方向幅We1との比率である周方向幅比(We1/Wf1)は、0.2以上かつ0.6以下の範囲内に設定する構成とした(図10を参照)。この構成によれば、リラクタンストルクが向上し、出力するトルクを高めることができる。
(9)リング状ヨーク部15dの内側面15iに配置する永久磁石M2は、リング状ヨーク部15dの外側面15oに配置する永久磁石M1よりも、個数を少なく設定し、かつ、合計した周方向幅を小さく設定する構成とした(図2,図5を参照)。この構成によれば、リラクタンストルクが向上し、出力するトルクを高めることができる。また、永久磁石M1の厚み(径方向幅)を抑制することで、橋梁部15bの厚みが増やせて耐遠心力を向上させることができる。
(10)ロータ15は、複数の電磁鋼板15eを積層して成形される構成とした(図4を参照)。この構成によれば、電磁鋼板15eの厚みや、積層する枚数に応じてロータ15の厚みを適切かつ容易に設定することができる。また、加工(特にプレス加工)によって永久磁石M1,M2を収容可能な形状を容易に成形することができる。
10(10A,10B) ダブルステータ型回転電機
13 外側ステータ(固定子)
13a 第1多相巻線
14 内側ステータ(固定子)
14a 第2多相巻線
15 ロータ(回転子)
15a ラジアルヨーク部
15d リング状ヨーク部
M1(M1a,M1b),M2 永久磁石

Claims (10)

  1. 第1多相巻線(13a)が巻回される外側ステータ(13)と、第2多相巻線(14a)が巻回される内側ステータ(14)と、前記外側ステータと前記内側ステータとの相互間にギャップ(G)を介して配置されるロータ(15)とを有するダブルステータ型回転電機(10)において、
    前記外側ステータと前記内側ステータとは、径方向に磁束(φ)が流れるように、同一の極数かつ同一の周方向位置に設けられるとともに、前記第1多相巻線に通電して生じる磁極(13p)と、前記第2多相巻線に通電して生じる磁極(14p)とは、前記同一の周方向位置で異なる極性となるように構成し、
    前記ロータは、前記外側ステータと前記内側ステータとを前記径方向に磁束通路として継ぐ複数のラジアルヨーク部(15a)を有し、
    前記第1多相巻線の一相と前記第2多相巻線の一相との巻線は、共通となる少なくとも一本の導体線(11)からなり、
    前記導体線は、前記外側ステータと前記内側ステータとの間であって、軸方向の一端側で径方向と周方向を組み合わせた斜め方向に渡される渡り部(11a)を含むことを特徴とするダブルステータ型回転電機。
  2. 前記ロータは、周方向に隣り合う前記ラジアルヨーク部を連結し、径方向に沿った断面の断面積が前記ラジアルヨーク部よりも小さく成形される複数のリング状ヨーク部(15d)を有し、
    前記リング状ヨーク部の外側面(15o)と内側面(15i)とには、それぞれ前記径方向に着磁した永久磁石(M1,M2)を配置することを特徴とする請求項1に記載のダブルステータ型回転電機。
  3. 前記ラジアルヨーク部の周方向幅(Wa,Wc)は、前記リング状ヨーク部の径方向幅(Wd)よりも大きく設定することを特徴とする請求項に記載のダブルステータ型回転電機。
  4. 前記リング状ヨーク部の周方向両側に配置される前記ラジアルヨーク部の外縁部(15ae)どうしを架橋されるとともに、前記リング状ヨーク部の外側面に配置される前記永久磁石(M1)を覆う橋梁部(15b)を有することを特徴とする請求項2または3に記載のダブルステータ型回転電機。
  5. 前記リング状ヨーク部の外側面と内側面とに配置される前記永久磁石は、同一の前記径方向に着磁することを特徴とする請求項2からのいずれか一項に記載のダブルステータ型回転電機。
  6. 前記リング状ヨーク部の外側面に配置する永久磁石(M1)の周方向幅(Wf1)と、前記リング状ヨーク部の内側面に配置する永久磁石(M2)の周方向幅(We1)との比率である周方向幅比(We1/Wf1)は、0.2以上かつ0.6以下の範囲内に設定することを特徴とする請求項2からのいずれか一項に記載のダブルステータ型回転電機。
  7. 前記リング状ヨーク部の内側面に配置する永久磁石(M2)は、前記リング状ヨーク部の外側面に配置する永久磁石(M1)よりも、個数を少なく設定し、かつ、合計した周方向幅を小さく設定することを特徴とする請求項2からのいずれか一項に記載のダブルステータ型回転電機。
  8. 前記ラジアルヨーク部の周方向幅(Wa,Wc)は、前記外側ステータを構成する外側ティース(13t)および前記内側ステータを構成する内側ティース(14t)の周方向幅よりも広く設定されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のダブルステータ型回転電機。
  9. 前記ロータは、複数の電磁鋼板(15e)を積層して成形されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のダブルステータ型回転電機。
  10. 第1多相巻線(13a)が巻回される外側ステータ(13)と、第2多相巻線(14a)が巻回される内側ステータ(14)と、前記外側ステータと前記内側ステータとの相互間にギャップ(G)を介して配置されるロータ(15)とを有するダブルステータ型回転電機(10)において、
    前記外側ステータと前記内側ステータとは、径方向に磁束(φ)が流れるように、同一の極数かつ同一の周方向位置に設けられるとともに、前記第1多相巻線に通電して生じる磁極(13p)と、前記第2多相巻線に通電して生じる磁極(14p)とは、前記同一の周方向位置で異なる極性となるように構成し、
    前記ロータは、前記外側ステータと前記内側ステータとを前記径方向に磁束通路として継ぐ複数のラジアルヨーク部(15a)と、周方向に隣り合う前記ラジアルヨーク部を連結する複数のリング状ヨーク部(15d)とを有し、
    前記リング状ヨーク部の外側面と内側面とにそれぞれ配置される永久磁石(M1,M2)は、同一の前記径方向に着磁され、かつ、前記ラジアルヨーク部を挟んで着磁方向が交互に変わっており、
    前記リング状ヨーク部の内側面に配置される永久磁石(M2)は、前記リング状ヨーク部の外側面に配置される永久磁石(M1)よりも、個数を少なく設定し、かつ、合計した周方向幅を小さく設定することを特徴とするダブルステータ型回転電機。
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