(画像形成装置の実施形態)
以下、本発明の一実施形態の画像形成装置について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態の画像形成装置であるタンデム型のカラー複写機の構成を示す。
図1に示すように、カラー複写機200(画像形成装置)は、装置本体中央部に位置する画像形成部200Aと、該画像形成部200Aの下方に位置する給紙部200Bと、画像形成部200Aの上方に位置する図示しない画像読取部と、を有する高速機である。また、カラー複写機200は、画像形成部200A及び給紙部200Bの間でかつ可動形成部のシート搬送方向下流側に、後述する定着装置10が組み込まれている。
画像形成部200Aには、水平方向に延びる転写面を有する転写ベルト210が配置されていて、該転写ベルト210の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。即ち、補色関係にある色のトナー(イエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックK)による像を担持可能な像担持体としての感光体205Y、205M、205C、205K、が転写ベルト210の転写面に沿って並置されている。
各感光体205Y、205M、205C、205Kはそれぞれ同じ方向(図中反時計周り方向)に回転可能なドラムで構成されている。例えば、感光体205Yの周りには、回転家庭において画像形成処理を実行する光書き込み装置、帯電装置、現像装置、一次転写装置が配置されている。各感光体205Y、205M、205C、205Kについても、感光体205Yと同様に、その周囲に各装置が配置されている。
また、各現像装置203Y、203M、203C、203Kには、それぞれのカラートナーが収容されている。転写ベルト210は、駆動ローラと従動ローラに架け渡されて感光体205Y、205M、205C、205Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。また、該従動ローラの一つであるローラに対向する位置に転写ローラ212が設けられている。また、転写ローラ212から定着装置10までのシートP(図2に示す)の搬送経路は横パスとなっている。
給紙部200Bは、記録媒体としてのシートPを積載収容する給紙トレイ(図示しない)と、該給紙トレイ内のシートPを最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ212の位置まで搬送する搬送機構221を有している。
カラー複写機200における画像形成に当たっては、感光体205Yの表面が帯電装置202Yにより一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体205Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像は、イエローのトナーを収容した現像装置203Yによりトナー像T(図2に示す)として可視像化され、該トナー像Tは所定のバイアスが印加される一次転写装置204Y(204M、204C、204K)により転写ベルト210上に一次転写される。他の感光体205M、205C、205Kでもトナーの色が異なるだけで、帯電装置202M、202C、202Kにより、同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像Tが転写ベルト210上に静電気力で順に転写されて重ね合わされる。
次に、感光体205Y、205M、205C、205Kから転写ベルト210上に一次転写されたトナー像Tは、ローラ211、転写ローラ212により搬送されたシートPに転写される。トナー像Tが転写されたシートPは、さらに定着装置10まで搬送され、定着ベルト14と加圧ローラ15との定着ニップ部Nにて定着が行われる。定着ニップ部を通過したシートPは、下流側に配置された第1分離爪、第2分離爪により、シートPは定着ベルト14、加圧ローラ15に巻き付くことなく定着ニップ部N(図2に示す)の下流側に排出される。ついで、定着ニップ部から排出されたシートPは排出経路に沿って、スタッカ(図示しない)へ送り出される。
(定着装置の実施形態)
続いて、本発明の定着装置の例示的一実施形態を、図2〜図10を参照して説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる定着装置の概略構成図である。
定着装置10は、図2(A)に示すように、定着ローラ11と、加熱ローラ12と、テンションローラ13と、定着ベルト14(加熱回転体)と、加圧ローラ15(加圧回転体)と、加圧力調節部材と、図示しない第1、第2分離爪と、を備えている。また、この定着装置10は、定着ローラ11を回転駆動する図示しない駆動部と、駆動部を制御する図示しない制御部と、を備えている。
定着ローラ11は、アルミニウム又は鉄(それぞれの合金を含む)などの金属製の芯金(図示しない)と、この芯金の上に形成されたシリコーンゴム等の弾性層11b(図2(A)に示す)と、を備えて構成されている。
加熱ローラ12は、アルミニウム製又は鉄製の中空ローラで、定着ローラ11と軸同士が互いに平行になるように間隔をあけて対向配置されている。加熱ローラ12は、その内部にハロゲンヒータなどのヒータ12hからなる熱源を有している。熱源は、電磁誘導加熱機構(IH)でもよい。加熱ローラ12は、弾性層11bを有する定着ローラ11と比較して熱膨張量は無視できる程度のものとされている。または、熱源となるヒータ12hは、加熱ローラ12内ではなく定着ベルト14の外周面に対向して配置されていてもよい。
テンションローラ13は、アルミニウムや鉄などの金属製又は樹脂製の中空ローラから構成されている。テンションローラ13は、定着ローラ11と加熱ローラ12との間に、軸同士が互いに平行で、かつ、その軸が定着ローラ11と加熱ローラ12のそれぞれの軸を含む一平面内に収まらないようにずれて配置されている。
定着ベルト14は、無端ベルトから構成され、例えばニッケル、ステンレス、ポリイミドなどの基材にシリコーンゴムからなる弾性層を形成した2層構造に構成されている。定着ベルト14は、定着ローラ11、加熱ローラ12及びテンションローラ13に一定のテンションで架け渡されている。定着ベルト14の回転移動により加熱ローラ12が回転されるように、定着ベルト14の内周面と加熱ローラ12の外周面とは滑りが発生しない摩擦係数に設定されている。
加圧ローラ15は、定着ベルト14側へ移動されて定着ベルト14を介して定着ローラ11を押圧(加圧)すること、及び定着ベルト14から引き離す方向へ移動されて定着ローラ11を脱圧することが可能とされている。加圧ローラ15は、図2(B)に示すように、定着ベルト14との間に定着ニップ部Nを形成している。
第1分離爪は、定着ニップ部Nのシート排出側であって先端が、加圧ローラ15に当接して配置されて、シートPの加圧ローラ15への巻き付けを防止する。第2分離爪は、定着ニップ部Nのシート排出側であって先端が定着ベルト14に近接して配置され、シートPの定着ベルト14への巻き付けを防止する。
駆動部は、モータやギアを有して形成されており、制御部からの制御信号に基づいて定着ローラ11を回転駆動する。定着ローラ11が回転駆動されることにより、定着ベルト14が回転移動する。または、駆動部は、定着ローラ11に代えて加圧ローラ15を回転駆動するように構成されていてもよく、または、定着ローラ11及び加圧ローラ15を共に回転駆動するように構成されていてもよい。制御部は、マイクロコンピュータで構成され、定着ベルト14を目標とする速度で回転させるように、駆動部に対して制御信号を出力する。
さらに、定着装置10は、図3、図4に示すように、定着ベルト14の表面に周面が摺擦されて、定着ベルト14の表面粗さを小さくするスジ消しローラ1(摺擦部材)を備えている。このスジ消しローラ1は、ビッカース硬度が85HV以上である金属(非鉄系金属以上の硬度を有する金属)であるとともに、砥粒を含まない金属、即ち芯金1aから円筒状又は円柱状に構成されている。このスジ消しローラ1は、図5(A)(B)(C)に示すように、丸ダイス20A、20Bと呼ばれる工具を用いて転造加工が施され、芯金1aに、その軸を中心とした右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bが形成されることにより得られたものである。この芯金1aは、常温から150度近い温度にさらされるため、非鉄系金属以上の硬度(例えば、ビッカーズ硬度85HV)を有して構成されていることが好ましい。
芯金1aに、その軸を中心とした右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bが形成されることにより得られた凹凸形状の成形には、転造加工が生産性の面からも適しており、芯金1aの素材は、転造加工の塑性性からも低炭素鋼が優位である。芯金1aの素材として、低炭素鋼を選択した場合は、錆の抑制が必要とされる。錆の抑制からステンレス系の素材を選択する場合もあるが、転造加工性及び製造コストを考慮して得られたものである。即ち、本実施例においては、低炭素鋼(STKM11C鋼管)表面に、微小な凹凸形状を形成し、この後、凹凸形状全体を覆うように3μm程度の無電解ニッケルメッキが施されて得られたものである。ここで、凹凸形状は、芯金1aの表面に規則的に整列された凸状突起2のことをいう場合もある。凸状突起2は、右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bに囲まれた凸状の突起のことである。
スジ消しローラ1において、凸状突起2の頂面21は、図4(B)に示すように、矢印X方向の面粗さが、カットオフ値0.08mmで、算術平均粗さRa:0.03μm、十点平均粗さRzjis:0.1μm、最大高さRt(Ry):0.3μmである。また、矢印Y方向の面粗さが、カットオフ値0.08mmで、算術平均粗さRa:0.04μm、十点平均粗さRzjis:0.17μm、最大高さRt(Ry):0.26μmである。
一般的に丸ダイス20A、20Bは、図5(A)(B)(C)に示すように、2つの丸ダイス20A、20Bを一組として使用する場合が多く、本実施例においても丸ダイス20A、20Bを一組として使用する。スジ消しローラ1は、芯金1aを、旋盤加工機(図示しない)の主軸に把持させ、この状態で、二つの丸ダイス20A、20Bを挟圧するように接触させ、この状態で、芯金1aを回転駆動させることで形成されている。すると、芯金1aを挟圧するように接触した丸ダイス20A、20Bの歯型が、略同時に連れ回りを開始する。この状態で芯金1aをその軸方向の一端から他端に向かって移動させ、芯金1aの表面全体に凹凸形状、即ち、右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bを形成する。この後、右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bが形成された芯金1aの表面全体に無電解ニッケルメッキを施し、図6に示すような、スジ消しローラ1を得る。また、本発明にあっては、右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bが形成された芯金1aの表面全体にニッケルメッキの代わりに、亜鉛メッキを施してもよい。
ところで、スジ消しローラ1は、その周面を図3、図7に示すように、定着ベルト14に摺擦される際、2個の圧縮バネ16をスジ消しローラ1の軸方向の両端の2箇所に固定し、定着ベルト14に対して所定の押し圧を付与する。この際、スジ消しローラ1は、その周面が、定着ベルトの表面に摺擦されるように、回転自在に支持されている。こうしてスジ消しローラ1は、定着ベルト14の表面に押し付けられ、この状態で、定着ベルト14に連れ回る。ここで、一定の押し圧をスジ消しローラ1の軸方向両端に加えることから、押し圧の軸方向の圧力偏差を回避することが求められる。一般に、円筒状のローラ外径に、予め設定した押力偏差分の径差(クラウン量)を設けることは知られている。つまり、スジ消しローラ1は、その径寸法が、軸方向の中央部より両端部が大きい、又は、軸方向の両端部より中央部が大きいなどの径差を有する形態である場合、凹凸形状の形成は困難である。そこで、本発明では前述した転造加工を採用すること、及び、以下に示すようなスジ消しローラ1を図7に示すようなツツミ形状にすることで、この課題を達成した。
このような図7に示すスジ消しローラ1を、図1に示されたカラー複写機200に組み込む際には、図7に示すように、2個の圧縮バネ16をスジ消しローラ1の軸方向の両端の2箇所に固定し、定着ベルト14に対して所定の押し圧を設定する。スジは、転写紙幅に対応する2箇所で発生するから、スジの除去は同時に2箇所で行う必要があるが、2箇所の圧縮バネ16の定着ベルト14に対する接圧に微妙なばらつきが生じる可能性がある。このばらつきを吸収する方法として、スジ消しローラ1を、図7に示すように、ツツミ形状にすることで、定着ベルト14の軸方向に間隔をあけて生じたスジに対し集中的に荷重を掛けている。ツツミ形状のスジ消しローラ1は、径寸法が、スジ消しローラ1の軸方向の中央部より両端部が大きくなるように形成されている。また、スジ消しローラ1の径寸法差L1(クラウン量)が、0.01mm以上となるように形成されている。このような形状とすることで、スジ消しローラ1の軸方向両端の押し圧のバランスが崩れても、定着ベルト14に掛かる荷重は、両端の狭い部分で荷重を集中させ易く、定着ベルト14の両端に発生するスジに対して、効果的に作用する。
スジ消しローラ1として、図7に示すようなツツミ形状であることが好ましい。しかしながら、本発明のスジ消しローラ1として、図8(A)に示すスジ消しローラ1Aのように、径寸法が軸方向の何れの位置においても一定となるように形成されていてもよい。また、図8(B)に示すスジ消しローラ1Bように、径寸法が、スジ消しローラ1の軸方向の両端部より中央部が大きくなるように形成されていてもよい。
このようにして得られたスジ消しローラ1は、図9(A)(B)に示すように、右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bに囲まれた凸状突起2の高さ寸法Hが、8μm以上15μm以下の範囲内となるように形成されている。この凸状突起2は、平面視が四角形の頂面21と、この頂面21と右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bの底とに連続された4つの側面20と、を有して構成されている。凸状突起2における頂面21の辺は、略等しい寸法Wとなるように形成されているとともに、寸法Wが、20μm以上60μm以下となるように形成されている。また、凸状突起2において、頂面21と各側面20との境界部は、丸みを帯びた曲面から構成されているのが好ましい。より好ましくは、頂面21と各側面20との境界部に位置する曲面は、その曲率が5μm以下となるように形成されている。
ここで、4つの曲面のうち、回転方向下流側の2つの曲面である稜線エッジ22は、図9(A)に示すように、スジ消しローラ1の回転方向下流側の2つの曲面のことである。即ち、この稜線エッジ22は、頂面21が定着ベルト14の表面に面接触する前に、定着ベルト14の表面を削るものである。また、スジ消しローラ1の軸方向における、凹凸ピッチP(スジ消しローラ1の軸方向における右回転螺旋溝間隔及び左回転螺旋溝間隔)が、80μm以上150μm以下の範囲内で略等しくなるように形成されている。また、スジ消しローラ1の軸に対する、右回転螺旋溝2aの螺旋角度及び左回転螺旋溝2bの螺旋角度(以下、螺旋溝ネジレ角θ1と記す)が、30度以上60度以下の範囲内で略等しくなるように形成されている。凸状突起2の側面20と頂面21との成す角が、135度以上150度以下となるように形成されている。換言すると、図9(B)に示すように、左右の転螺旋溝2a、2bの底面を挟んで対向する側面20同士が成す角(以下では、凸傾斜角θ2と記す)は、90度以上120度以下と成るように形成されている。また、凸状突起2の頂面21の算術平均粗さRaが、0.2μm以下となるように形成されている。
次に、定着装置10における定着動作の一例について、図2を参照して説明する。
定着装置10において、定着動作の際に、制御部からの制御信号に基づいて駆動部が定着ローラ11を図中時計回り方向に回転駆動する。定着ベルト14が、適切なテンションが付与された状態でシートPを排出する方向(図中時計回り方向)に回転移動され、加圧ローラ15、加熱ローラ12及びテンションローラ13が連れ回りされる。また、定着ベルト14は、加熱ローラ12内部に配置されたヒータ12hの発熱により所定の温度(例えばトナー定着に適する温度)まで加熱される。
このようにして、定着装置10は、定着ベルト14が回転移動されるとともに加圧ローラ15及び加熱ローラ12が回転され、かつ、定着ベルト14の表面は所定の温度に加熱された状態となる。この状態において、定着ニップ部Nに未定着のトナー像Tが形成されたシートPが通されると(図中右側から左側方向への通紙)、定着ニップ部Nにおける加圧及び加熱により未定着トナー像TをシートP上に熱融着されて、シートPに定着する。
トナー像Tが定着されたシートPは定着ニップ部Nから排出されるが、このときシートPが定着ベルト14あるいは加圧ローラ15に巻き付いたまま出てくることがある。そのため、第1分離爪、第2分離爪の先端をシートPの先頭端部に当接させることにより、該シートPを定着ベルト14あるいは加圧ローラ15から分離させている。定着ニップ部Nから排出されたシートPは、所定の排出経路を通過して定着装置10から送り出される。
ここで、図3に示すように、加圧ローラ15及び加熱ローラ12が回転された状態において、図3(B)に示すように、スジ消しローラ1が、圧縮バネ16を介して定着ベルト14に一定の押し圧で摺擦されている。このように、スジ消しローラ1が、定着ベルト14に摺擦した状態で、定着ベルト14と共に連れ回る。スジ消しローラ1の稜線エッジ22が、定着ベルト14の表面を切削する。さらに連れ回るに伴って、頂面21が定着ベルト14の表面に面接触される。このように、切削することでスジの除去加工をした面に、潰し加工(バニシング作用)が続けて行われる。
このような定着装置10によれば、スジ消しローラ1(摺擦部材)が、砥粒を含まない金属材料から構成されているから、砥粒レスを狙い、且つ砥粒集合体と類似である微小な凹凸を形成して砥粒と同様の作用を定着ベルト14(加熱回転体)に付与する。即ち、凸状突起2が、側面20と、定着ベルト14の表面に面接触される頂面21と、側面20と頂面21との境界に位置して頂面21が接触する前に定着ベルト14の表面を削る稜線エッジ22と、を有して構成されている。これにより、凸状突起2の稜線エッジ22が、切削又は研削作用を定着ベルト14に施すことでスジの除去を行いつつ、頂面21が、定着ベルト14の表面に面接触することで潰し加工(バニシング作用)を施し、定着ベルト14の面粗さを小さくできる。こうして、トナー像Tに生じる光沢劣化を抑制し、トナー像Tに光沢差が生じることの抑制を図ることができる。
また、右回転螺旋溝2a及び左回転螺旋溝2bが形成されていることにより得られる凸状突起2が、スジ消しローラ1の表面上に規則的に整列されているから、凸状突起2間に、切削により生じる研削屑等が溜まり難い。つまり、従来技術において、表層が粒子(砥粒)で構成された砥粒ローラを用いて、耐久性能を含めたスジ除去性能と光沢劣化抑制の両立を砥粒番手の調整で行うことは可能であっても、その性能を長期間維持させる事は困難であった。しかしながら、本発明では、スジ消しローラ1が、砥粒を含まない金属材料から構成されているから、切削により生じる研削屑等による目詰まりが起き難い。従って、切削又は研削作用を定着ベルト14に施すことでスジの除去を行いつつ、定着ベルト14の面粗さを向上させることができ、かつ、スジの除去を短時間で行いつつ、長寿命な定着装置10及び、カラー複写機200(画像形成装置)を提供することができる。
また、図9(A)(B)に示すように、スジ消しローラ1(摺擦部材)の右回転螺旋溝間隔及び左回転螺旋溝間隔(以下、凹凸ピッチPと記す場合もある)が、80μm以上150μm以下の範囲内で略等しくなるように形成されている。このため、スジ消しローラ1の表面には、微小な凹凸が形成されることとなる。この凹凸ピッチPを、80μm以上となるように形成することで、スジ除去能率を確保することができ、150μm以下となるように形成することで、定着ベルト14(加熱回転体)の面粗さを小さくすることができる。
また、スジ消しローラ1(摺擦部材)の軸に対する、右回転螺旋溝2aの螺旋角度及び左回転螺旋溝2bの螺旋角度(以下、螺旋溝ネジレ角θ1と記す)が、30度以上60度以下の範囲内で略等しくなるように形成されている。ここで、左右回転の螺旋溝ネジレ角θ1は、凸状突起2の頂面21を構成する辺の角度を形成する要素であり、この辺のスジ消しローラ1の回転方向に対する傾きが、30度以下である場合には、除去過多になり易く加工痕を消すことができない。一方、60度以上である場合には、除去性能の低下を招いてしまう。つまり、左右回転の螺旋溝ネジレ角θ1を、30度以上60度以下の範囲内とすることで、スジの除去効率を制御し、定着ベルト14(加熱回転体)の面粗さを小さくすることができる。
また、凸状突起2の側面20と頂面21との成す角が、135度以上150度以下となるように形成されている。換言すると、図9(B)に示すように、左右の回転螺旋溝2a、2bの底面を挟んで対向する側面20同士が成す角は、90度以上120度以下と成るように形成されている。以下、本明細書において、凸傾斜角θ2と記す場合には、図9(B)などに示すように、左右の回転螺旋溝2a、2bの底面を挟んで対向する側面20同士が成す角を示す。
この凸傾斜角θ2は、切削又は切削作用で重要な要素として捉えられている。即ち、凸傾斜角θ2に傾斜した面はすくい面として機能しつつ、削り過多の防止、或いは、削る為の食い込み量の制御を行う。この凸傾斜角θ2が、90度以下では、凸状突起2の稜線エッジ22の摩耗の進行が早い。一方、120度以上では、食い込み量が足りずに除去性能の低下を招いてしまう。つまり、凸傾斜角θ2を90度以上120度以下の範囲内にすることで、除去量を制御しつつ、凸状突起2の稜線エッジ22の摩耗の進行を防ぎ、スジ消しローラ1の延命に貢献することができる。
また、凸状突起2の頂面21の平面視が、一辺が20μm以上60μm以下の四角形となるように形成されている。ここで、凸状突起2の頂面21の面積は、定着ベルト14上のスジの除去した後に残る加工痕を潰し加工(バニシング作用)で滑らかな面にするために必要な面積で、その大きさにより面粗さの制御が可能となり且つ潰し加工時間の短縮に貢献することができる。
また、凸状突起2の頂面21の算術平均粗さRaが、0.2μm以下となるように形成されている。凸状突起2の頂面21は、スジの除去をした定着ベルト14(加熱回転体)の表面に対し、潰し加工(バニシング作用)を行う際に、凸状突起2の頂面21の面粗さが、定着ベルト14の表面に転写される為、滑らかな面であることが必要である。つまり、凸状突起2の頂面21の算術平均粗さRaが、0.2μm以下となるように形成されていることで、スジの除去後の定着ベルト14の面粗さを小さくすることができる。
また、稜線エッジ22の曲率半径が、5μm以下となるように形成されている。稜線エッジ22は、スジの除去を行う切削時の切れ刃の役割を果たし、稜線エッジ22はより鋭利なものが理想とされている。稜線エッジ22の曲率Rの大きさに設定することにより、定着ベルト14(加熱回転体)に対する切削の性能を程よいものに調整することができるとともに、スジ消しローラ1の延命に貢献することができる。
また、スジ消しローラ1(摺擦部材)の径寸法が、スジ消しローラ1の軸方向の中央部より両端部が大きくなる、又は、前記両端部より前記中央部が大きくなるように形成され、中央部と両端部の径寸法差が、0.01mm以上となるように形成されている。よって、摺擦部材の事項方向の偏荷重の回避を図ることができ、定着ベルト14の軸方向の両端に発生するスジを、より一層、集中的に除去することができる。
また、スジ消しローラ1(摺擦部材)が、ビッカース硬度が85HV以上である金属(非鉄系金属以上の硬度を有する金属)から構成されているとともに、ニッケルメッキ又は亜鉛メッキの表層を有して構成されている。ここで、スジ消しローラ1の表面の硬さが、定着ベルト14(加熱回転体)の表面の硬さよりも硬い場合には、スジ消しローラ1の延命を図ることができる。このスジ消しローラ1の芯金1aを鉄系金属で構成した場合には、錆の抑制になり、スジ消しローラ1を有する定着装置10の延命を図ることができる。
また、本発明のスジ消しローラ1をカラー複写機200(画像形成装置)に具備することで、定着ベルト14(加熱回転体)の表面のスジの除去を短時間で行うことができる。これにより、スジ消しローラ1の延命を図りつつ、カラー複写機200そのものの延命を図ることができる。
尚、前述した各実施形態は本発明の好ましい形態を示したに過ぎず、本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々改変して実施することができる。かかる改変によってもなお本発明の定着装置、及び画像形成装置の何れかの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
次に、発明者らは、本発明の効果を確認すべく、以下の実験を行った。即ち、本発明のスジ消しローラ1を用いて、定着ベルト14の性能テストを行った。
ここで、図11(A)(B)に示すように、本発明のスジ消しローラ1を用いた定着ベルト14の性能テストは、スジ消しローラ1をサンプルの定着ベルト基材に摺擦させることができる簡易的な設備で行った。図11(B)に示すように、本発明のスジ消しローラ1と定着ベルト基材の一部を切り取ってロール部材(以下、定着ベルト基材14Aと記す)に接着して摺接される構成とした。定着ベルト基材14Aは、速度Fを3.835m/分の速度とする。また、定着ベルト基材14Aは、図11(B)に示すように、紙面方向の右下に向かう矢印が示す方向を往路、左上に向かう矢印が示す方向を復路とする。この定着ベルト基材14Aの表面を、スジ消しローラ1が1往復分だけ摺擦した場合、その回数を1パスとカウントし、スジ消しローラ1により切削される定着ベルト基材14A表面の切削量を、スジの除去性能として捉える。なお、スジ消しローラ1が1往復分だけ摺擦した定着ベルト基材14A上の距離は、実際の定着ベルトの十分の一程度の距離となるように形成されている。スジ消しローラ1には、図11(B)に示すように、その一部を除去した部分(以下、除去部1Wと記す。)と除去しない部分(以下、非除去部と記す。)と、を形成した。
図12は、定着ベルト基材14Aの表面を一定のパス回数だけ摺擦した後、研磨(除去)量(μm)を測定した結果を示すグラフである。図12において縦軸は、研磨(除去)量(μm)を示し、横軸は、定着ベルト14の幅方向の一端から他端に向かう距離(測定幅mm)を示している。この測定は、凹凸のピッチP(右回転螺旋溝間隔及び左回転螺旋溝間隔)が60μm、100μmの本発明のスジ消しローラ1、及び、従来の砥粒ローラにおいて、これらのローラを各々、図11に示された設備にセットして行われた。図12から、スジ消しローラ1において、除去部1Wにより切削されない領域Wが確認でき、その他の部分は、スジ消しローラ1の非除去部により切削除去されたことが確認できる。図12から、従来の砥粒ローラと比較すると、本発明のスジ消しローラ1も十分なスジの除去性能を有していることを確認することができた。
図13は、図12に示された、凹凸のピッチPが60μmのスジ消しローラ1、凹凸のピッチPが100μmのスジ消しローラ1、及び従来の砥粒ローラにおいて、使用前の状態(未使用状態)及び30万枚通紙後の状態を各々示す顕微鏡画像である。凹凸のピッチPが60μm、100μmのスジ消しローラ1は、両者とも切削除去性能を有しつつ、特に、凹凸のピッチPが100μmのスジ消しローラ1にあっては、目詰りも殆ど見られない結果であった。また、凹凸のピッチPが60μmのスジ消しローラ1は、凹凸のピッチPが100μmのスジ消しローラ1よりも、空隙部分が減ることで、切削屑などによる目詰まりが確認された。
図14は、本発明のスジ消しローラ1及び、従来の砥粒ローラにおいて、各々の研磨(除去)量(μm)を測定した結果を示すグラフである。図14において縦軸は、研磨(除去)量(μm)を示し、横軸は、パス回数を示している。図14から、従来の砥粒ローラは、パス回数を増やすと除去量が多くなることがわかる。ここで、本発明のスジ消しローラ1にあっては、短時間で2μmを切削除去することが数値目標であるが、従来の砥粒ローラにあっても、本発明のスジ消しローラ1にあっても、両者とも、数値目標を達成するためには2パス回数が必要である。このことから、従来の砥粒ローラ、及び、本発明のスジ消しローラ1は、同等の性能であると判かる。
図15(A)は、本発明のスジ消しローラ1にて摺擦した部分A及び定着ベルト基材14Aに発生したスジSを光学顕微鏡で撮影したもので、スジ部と非スジ部の差が見分けられないレベルにスジの除去が完了している。図15(B)は、従来の砥粒ローラで定着ベルト14を摺擦した面を光学顕微鏡で撮影したもので、全体的に砥粒による摺擦痕で微小なざらつきが有ることが判る。
続いて、本発明のスジ消しローラ1においては、図16、図17に示すように、定着ベルト基材14Aを切削した定着ベルト14表面のスジ部と非スジ部の両者を含む表面の全体を測定した範囲の面粗さを絶対粗さとして、十点平均粗さRzjisによって評価した。
図16には、本発明のスジ消しローラ1及び従来の砥粒ローラによってスジが除去された定着ベルト基材14Aの面粗さについて、算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rzjis)、最大粗さ(Ry)、を測定した値が示されている。
図17は、本発明のスジ消しローラ1と従来の砥粒ローラを用いてスジが除去された後の、定着ベルト基材14Aの面粗さを示すグラフである。図17において縦軸は、算術平均粗さ曲線(μm)を示し、横軸は、測定長(mm)を示している。図17から、本発明のスジ消しローラ1によってスジが除去された定着ベルト基材14Aの面粗さは、算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rzjis)、最大粗さ(Ry)、のいずれの指標においても、従来の砥粒ローラよりも小さくなることが判った。
続いて、発明者らは、新品の定着ベルト14を定着装置10に組み込み、小サイズの転写紙1万枚の通紙を行って発生したスジ除去を行った。即ち、本発明のスジ消しローラ1を用いて、定着ベルト14の表面を切削しつつ、図1に示されたカラー複写機200により画像出力をした。定着ベルト14は、円周長さ270mm、スジ消しローラ1直径はφ14に形成した。画像印刷時は、図3(A)に示すように、スジ消しローラ1は定着ベルト14から離隔した状態とし、画像印刷してない時は、図3(B)に示すように、スジ消しローラ1を一定の力で定着ベルト14に押し付けた。スジ消しローラ1は、その回転方向が、定着ベルト14の進行方向と同一方向となるように回転させる。また、スジ消しローラ1は、その周速度が、定着ベルト14の周速度よりも早い周速度となるように回転駆動させ、スジの除去を行った。定着ベルト14の周速は160mm/sec、本発明のスジ消しローラ1の周速は960mm/secとし、加圧力はローラの軸方向長さで押しつけ力を除した値で1N/mm、スジを除去するため摺擦する時間は3分間である。加圧力は圧縮バネ16により所定の荷重で押し付ける。
このような条件でスジの除去を行って、定着ベルト14のスジ部と非スジ部の面粗さの差ΔRzjisと、出力画像の光沢劣化を評価した。スジ部における定着ベルト14の面粗さΔRzjisは、0.4μm以上0.6μm以下であった。転写紙としてコート紙を使用し、スジの有無について判定をし易い青ベタ画像にて光沢度を評価した。定着温度は約150度である。光沢度計は日本電色製HANDY GLOSSMETER PG-1を用いた。定着ベルト14の表面粗さは、接触式の表面粗さ計小坂研究所サーフコーダSE-30Hを用い、カットオフ値0.08mmでの絶対粗さRzjisで評価した。前述のように、スジの除去である相対粗さΔRzjisと絶対粗さRzjisの低減と光沢度変化の抑制は相反関係にあることを指摘している。自社複合機においてはスジを除去するための切削時間を3分間に想定しており、画像出力の合格判定値は光沢変化5%以下で、定着ベルト14上の相対粗さΔRzjisは0.2μm、絶対粗さRzjisは0.4mm以下とすることが必要とされている。相対粗さΔRzjisと絶対粗さRzjisの判定値は、画像出力を限度見本と照合し得られた判定基準を、ベルト評価値に置き換えたもので、本発明のスジ消しローラ1においてもこの規格を満足することが判明した。
続いて、1万枚通紙及びスジ除去の動作を1セットとして、これを複数回繰り返すことで、スジ消し性能の耐久維持について評価した。通常での耐久目標は、30万枚が目安とされており、前記動作を30セット繰り返し、その時点のスジ消し能力を評価した。
図18は、本発明のスジ消しローラ1及び従来の砥粒ローラにおいて、1万枚通紙及びスジ除去の動作を1セットとして、これを30回繰り返し、耐久維持の評価を実施した後、このスジ消しローラ1で再度スジの除去性能を比較したグラフである。図18において縦軸は、除去量(μm)を示し、横軸は、パス回数を示している。図18から、従来の砥粒ローラは初期の性能(0K枚通紙)では高い除去性能であったが、300K枚通紙後では要求特性に余裕が無くなり、1200K枚通紙後では要求特性を達成できないことが判った。一般的に知られていることで砥粒を研磨剤として用いる場合は、粒径が微小であるが故に砥粒の摩滅が起こり易く、摩滅した砥粒は研磨力が低減し除去性能が劣化していく。更には摩滅した砥粒は、砥粒で構成された数μmレベルの凹凸の空隙がなくなり、研磨屑などが堆積し易く目詰りの原因になり易い。一方、本発明のスジ消しローラ1においては、初期性能を略維持したまま1200K枚通紙後でも除去能力は低下せず要求特性を満たしていることが判った。
(実施例)
次に、上述した実施形態に相当する定着装置10及びカラー複写機200の実施例について説明する。本発明のスジ消しローラ1の表面の凹凸のピッチP(スジ消しローラ1の軸方向における、右回転螺旋溝間隔及び左回転螺旋溝間隔)、凸傾斜角θ2、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1をそれぞれ変化させ、スジの除去性能の初期特性と耐久特性とを評価した。図19(A)〜(H)に示すように、凹凸のピッチP、凸傾斜角θ2、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1の値を変化させ、前述した転造加工にて、種々のスジ消しローラ1を製造した。なお、以下の実施例では、本発明のスジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチP、凸傾斜角θ2、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1の具体的な数値を述べるが、これらはあくまでも一例であって、本発明は、これらに限定されるものではない。
(第1実施例)
実施例Aでは、図19(A)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが60μm、凸傾斜角θ2が120度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が45度となるように製造した。
(第2実施例)
実施例Bでは、図19(B)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが80μm、凸傾斜角θ2が120度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が45度となるように製造した。
(第3実施例)
実施例Cでは、図19(C)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが100μm、凸傾斜角θ2が120度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が45度となるように製造した。
(第4実施例)
実施例Dでは、図19(D)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが150μm、凸傾斜角θ2が120度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が45度となるように製造した。
(第5実施例)
実施例Eでは、図19(E)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが100μm、凸傾斜角θ2が120度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が65度となるように製造した。
(第6実施例)
実施例Fでは、図19(F)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが100μm、凸傾斜角θ2が120度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が25度となるように製造した。
(第7実施例)
実施例Gでは、図19(G)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが100μm、凸傾斜角θ2が70度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が45度となるように製造した。
(第8実施例)
実施例Hでは、図19(H)に示すように、スジ消しローラ1の表面に形成する凹凸のピッチPが120μm、凸傾斜角θ2が160度、凹凸を形成する螺旋溝ネジレ角θ1が45度となるように製造した。
実施例A〜Hのように製造されたこれらのサンプルを用いて、初期性能と30万枚通紙後の耐久性能評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、ピッチPが60μm以上150μm以下の凹凸では、何れのローラも除去性能があることが確認された。凹凸のピッチPが小さい60μm以下の形態と螺旋溝ネジレ角θ1を30度より緩やかにした25度の形態では、耐久性能で何れも要求値を満足するものではなかった。更に、凸傾斜角θ2も90度より鋭角になる60度の傾斜では、凸状突起2の稜線エッジ22の磨耗が急激に進行するのが確認された。
判定基準は3分間のスジを除去するために摺擦した際に、定着ベルト14の表面の面粗さが、相対粗さΔRzjis≦0.2μm、又は、絶対粗さRzjis≦0.4μmに低減可能なことである。
ここで、図20(A)は、本発明のスジ消しローラの表面を模式的に示したものである。(B)は、従来の砥粒ローラのそれぞれの表面を模式的に示したものである。図21(A)(B)は、それぞれ、図20(A)(B)それぞれの断面を示している。図21(A)に示すように、本発明のスジ消しローラ1は、凹凸が規則的に整列し、袋小路になること無く、切削屑の排出経路を確保していると推察できる。一方、図21(B)に示すように、従来の砥粒ローラは、砥粒の起伏がランダムになり、砥粒の塊で空隙部分が袋小路のように形成されるため、研磨屑などの排出経路が分断され目詰まりになり易いと推察される。これに対し、なお、ここで言うRzjisとRSMは砥粒の塊となった高さとその間隔のことである。
図22は、凹凸ピッチを種々変更したスジ消しローラ1を用いて、定着ベルト14の表面を切削した際の切削除去量を示すグラフである。図22において縦軸は、除去量(μm)を示し、横軸は、パス回数を示している。図22から、凹凸ピッチが小さくなるにつれ、切削除去量が低下しているのが判る。また、本発明のスジ消しローラ1のテスト加工の規格目標である2パス回数で「2μm」以上を除去することができるものは、凹凸ピッチが80μm以上であることが判った。
図23は、凹凸ピッチを種々変更し、凹凸ピッチ毎のスジ消しローラ1をカラー複写機200に組み込んで、画像形成した際のトナー像Tに生じる光沢変化量を示すグラフである。ここでいう光沢変化量とは、本発明のスジ消しローラ1を用いて定着ベルト14を摺擦し、面粗さを小さくした状態で画像出力した際の画像の光沢の変化量のことである。転写紙としてコート紙を使用し、スジの有無について判定をし易い青ベタ画像にて光沢度を評価した。定着温度は約150度である。光沢度計は日本電色製HANDY GLOSSMETER PG-1を用いて評価画像の光沢度を測定した。図23において縦軸は、光沢変化量(%)を示し、横軸は、凹凸ピッチ(μm)を示している。なお、光沢変化量の規格目標は5%以下であるが、この5%以下を達成するには、凹凸ピッチは150μm以下に設定する必要があることが確認できる。また、凹凸ピッチは、80μm以上150μm以下の範囲内が適していることが判った。
図24は、螺旋溝ネジレ角θ1を種々変更したスジ消しローラ1を用いて、定着ベルト14の表面を切削した際の切削除去量を示すグラフである。図24において縦軸は、除去量(μm)を示し、横軸は、螺旋溝ネジレ角θ1を示している。図24から、螺旋溝ネジレ角θ1を60度以下に設定すれば2パス回数で「2μm」以上の除去を確保できることが判る。螺旋溝ネジレ角θ1を60度以上である場合には、除去性能の低下を招いてしまう。ここで、螺旋溝ネジレ角θ1を25度に設定した際には、図25の(A)に示すように、削れ過ぎで波打ち形状となり加工痕が目立つ。図25の(B)に示すように、正常な加工痕と両者を比較するとスジが際立っていることが判る。つまり、螺旋溝ネジレ角θ1が60度以上である場合にはスジの除去性能が低く、30度以下である場合には、バニシング作用で加工痕を消すことができないことが判った。また、螺旋溝ネジレ角θ1を、30度以上60度以下の範囲内とすることで、スジの除去性能を確保しつつ、定着ベルト14(加熱回転体)の面粗さを小さくすることができることが判った。なお、図25(A)は、螺旋溝ネジレ角を45度に形成した本発明のスジ消しローラを用いて摺擦された定着ベルトの表面を示す顕微鏡画像である。図25(B)は、螺旋溝ネジレ角を25度に形成した本発明のスジ消しローラを用いて摺擦された定着ベルトの表面を示す顕微鏡画像である。
図26は、凸状突起2の凸傾斜角θ2を種々変更したスジ消しローラ1を用いて、定着ベルト14の表面を切削した際の切削除去量を示すグラフである。図26において縦軸は、除去量(μm)を示し、横軸は、凸傾斜角θ2を示している。図26から、凸傾斜角θ2が120度近傍である場合に、テスト加工の2パス「2μm」以上条件をクリアしていることが判る。また、凸傾斜角θ2が鋭角になる60度のサンプルでは、図27(A)に示す初期状態に比べ、条件クリア後である(B)は、激しく摩耗し稜線エッジ22が丸まっていることが確認された。
本実施例のサンプルは初期特性では、合格レベルとなったが、凹凸の空隙が小さい形態は目詰まりを生じさせやすく、螺旋溝ネジレ角θ1の緩やかな形態は加工痕を残し易いことが判った。更に凸傾斜角θ2が鋭角な形態は、摩耗が激しく進行し、耐久性能で不合格となることが確認された。不図示の光沢劣化については、凸状突起2の頂面21の面積と表面粗さに関係が深く、今回のサンプルのうち、凹凸ピッチP100μm、高さH12μm、凸傾斜角θ2が120度、螺旋溝ネジレ角θ1が45度である場合が、最も良い結果を得た。
ここで、凸状突起2の頂面21の面粗さは何れのサンプルも算術平均粗さRa:0.05μm以下・十点平均粗さRzjis:0.2μm以下・最大高さRt(Ry):0.3μmであり、いずれも光沢劣化が少なく合格域に収まることを確認した。
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施例の構成に限定されるものではない。
なお、本発明にいう加熱回転体は、上記のような定着ベルト14に限るものではなく、例えば、熱源を内蔵したローラ等であってもよい。また、本発明にいう加圧回転体は、上記のような加圧ローラ15に限るものではなく、例えば、内側から何らかの押圧歩合によって加熱回転体に押圧される無端ベルトであってもよい。
また、上述した実施形態のカラー複写機200では、複数の感光体205C、205K、205M、205Yが一列に並べて配置され他フルカラーのタンデム型の画像形成装置について説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、感光体を一つのみ備えるモノクロの画像形成装置や、リボルバ型の画像形成装置であってもよい、本発明の目的に反しない限り、画像形成部に定着装置と、を少なくとも備えていれば、画像形成装置の構成は任意である。
なお、前述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の定着装置及び画像形成装置の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。