以下、本発明の具体的な構成と作用・効果について説明する。
本発明の請求項1の画像除去装置は、少なくとも、被記録材上に形成されている熱可塑性画像形成物質が塑性を示す温度まで加熱する手段、被記録材上の画像を転写するための剥離部材、前記剥離部材と前記被記録材の画像が記録された面とが当接するように重ね合わせる手段、被記録材上の画像形成物質が加熱され塑性を示す状態で当接された前記被記録材と前記剥離部材とを加圧する手段、重ね合わされた前記被記録材と前記剥離部材とを分離する手段、前記剥離部材上に前記被記録材より転写された画像形成物質を除去するクリーニング手段よりなる被記録材上の画像形成物質を剥離部材に転写して被記録材上の画像形成物質を除去する画像除去装置において、少なくとも、剥離部材及び剥離部材と被記録材とを分離する手段を複数有し、被記録材の搬送経路において最上流の剥離部材はローラ型剥離部材であり、且つ、該ローラ型剥離部材から被記録材より転写された画像形成物質を除去するクリーニングする手段が、該ローラ型剥離部材に転写した画像形成物質がその軟化点以上に加熱された状態で該剥離部材表面に当接し、表面には、剥離部材上の画像形成物質を剥離部材の軸方向端部またはクリーニング部材端部に寄せるパターンが形成されているクリーニング部材、剥離部材の周速度よりも速い周速度で剥離部材と摺動・回転する回転体であって剥離部材上の画像形成物質を転移するクリーニング部材、のいずれかから選択されたクリーニング手段であることを特徴とする画像除去装置である。
本発明の画像除去装置は、後述する図20の画像除去装置実施例に示したような複数の剥離部材、及び剥離部材と被記録材とを分離する手段を設けたものである。図20の装置実施例では、2つの剥離部材、及び2つの剥離部材と被記録材とを分離する手段を設けた例を示している。本発明の画像除去装置において、複数の剥離部材、及び剥離部材と被記録材とを分離する手段を設ける理由は、上述した特許文献4に開示されている思想とほぼ同様である。すなわち、上流側の剥離部材には、画像除去処理する温度範囲で塑性を示すことのない表面の剥離部材を用いるか、熱可塑性組成物層を設けるとしても、その厚みを20μm以下程度の薄いものとすることにより、被記録材と剥離部材との分離性は良好となる。また、熱可塑性組成物層の無い剥離部材を用いることにより、剥離部材に転写された画像形成物質を塑性の無い剥離部材との界面で除去することができるので、クリーニング処理が容易になる。
そして下流側の剥離部材として熱可塑性組成物層を有する剥離部材を用いることにより、被記録材上の画像を完全に除去することが可能となる。
複数の剥離部材と分離手段を設けることにより、画像が完全に除去できる原理を図1に示す。図1の(a)には、例えば電子写真方式の画像形成装置で形成されたべた画像の被記録材に対する定着状態を示す。同図には、被記録材1上にべた画像2を形成する画像形成物質が模式的に示されている。近年、プリンタ、ファクシミリ、複写機を問わず、レーザ露光、LED露光、液晶シャッタ露光などによるデジタル書き込み方式の電子写真装置が一般的になってきているが、図1の(b)には、デジタル、2値書き込みで形成される理想的な中間調画像の画像形成物質の定着状態を示す。同図には、中間調画像3を形成する画像形成物質が示されている。図1の(b)の理想的な画像形成状態では、図1の(a)のべた画像2と図1の(b)の中間調画像3とは同一の高さである。ところが、諸々の要因により、現実に電子写真法で得られる中間調画像は、図1の(b)のように理想的な状態とはならない。従来のアナログ方式の電子写真はもとより、デジタル方式の電子写真法であっても、現実に電子写真法で得られる低濃度中間調画像は図1の(c)のようなものであり、中間調画像の高さはべた画像や線画像に比較して低く、高さにばらつきがあり、特に、低濃度の中間調画像は画像の高さが低く、高さのばらつきが生じる。線画像は太さや線の方向にもよるが、一般的には、現像時のエッジ効果により、べた画像よりも更に高さが高い画像となる。また、地肌かぶりを形成する画像形成物質や、感光体より被記録材に静電転写する際に本来の画像周辺に飛び散る画像形成物質の大半は、図1の(d)のように、単独の画像形成物質粉体が孤立して被記録材に定着する。同図には一つの画像形成物質粉体4が被記録材に定着している様子が示されている。また、従来用いられたアナログ露光方式の電子写真画像形成装置において形成される画像においては、中間調画像の高さは、原理的に、べた画像の高さよりも低くなってしまう。
熱転写法により被記録材上の画像形成物質を除去するためには、剥離部材と被記録材上の画像形成物質とが接触し、画像形成物質が剥離部材に接着することが必須条件であるが、発明者の研究によれば、図1のように、ほぼ完全な平面を形成する被記録材を用いたとしても、被記録材上の画像に段差があるために、熱可塑性の無い剥離部材を用いると、1回の画像形成物質除去処理の操作では、完全には画像形成物質を除去することができない。特に、カラー画像では、べた画像が色重ねされる2次色、3次色画像があり、2次色、3次色のべた画像や文字画像は、モノクロの画像よりも更に高さが高くなる。このため、カラー画像では、中間調画像も含めた画像間の段差は、更に、著しいものになり、剥離部材は画像形成物質と接触し難くなる。例として、2次色べた画像に挟まれた低濃度中間調画像が剥離部材と接触し難くなる様子を図1の(e)に示した。図1の(e)において、5、6は2次色を形成するべた画像であり、7は剥離部材を示している。従って、特に、カラー画像や、べた画像の周辺の中間調画像は熱転写により除去することが困難である。
表面に熱可塑性組成物層を有する剥離部材を用いると、被記録材と剥離部材とが重ねられて加圧される時に、熱可塑性組成物層がある程度流動し、被記録材上の画像形成物質の高さに従って変形することが可能となり、高さの低い画像も除去することができる。
しかしながら、高さの高い画像と低い画像とが接近して隣接する場合などに、画像を完全に除去することが困難であり、1回のみの転写操作で画像を除去しようとすると、剥離部材上の熱可塑性組成物層の厚みを25μm以上に厚くしたり、剥離部材上の熱可塑性組成物層の温度高くして、粘度を低下して流動性を高くしたり、被記録材と剥離部材とを重ねて加圧する圧力を高くして、剥離部材上の熱可塑性組成物層の流動を促進する必要がある。このため、剥離部材表面の熱可塑性組成物層と被記録材の地肌部との接着力も高くなってしまい、被記録材と剥離部材とを分離することが困難となり易い。
図1は、表面が平滑な被記録材の例を示したが、紙をベースとした被記録材を用いる場合のように、比較的表面平滑度の低い被記録材から画像を除去する場合には、被記録材の凹部に付着している画像形成物質も、同様な原理で除去され難い。
本発明の画像除去装置は、複数の剥離部材と分離手段を設けることにより、上流側の剥離部材と分離手段において、高さが高く、被記録材上で大半を占める画像形成物質を被記録材から転写・除去し、下流側の剥離部材と分離手段により、被記録材上に残された画像を除去するものである。最上流の剥離部材の表面には、熱可塑性組成物層があっても良いが、熱可塑性組成物層がある場合でも、その厚みを20μm以下とすることが好ましく、特に、被記録材から転写された画像形成物質などの熱可塑性組成物層が無いことが好ましい。熱可塑性組成物層がないか、薄いことにより、被記録材の地肌部と剥離部材との接着力が比較的弱くなるので、被記録材と剥離部材との分離が容易となる。
下流側では、既に、上流側で高さの高い画像が除去されているため、被記録材上の残画像と下流側の剥離部材とは接触が容易となり、被記録材上の画像を良好に除去することができる。
特に、下流側の剥離部材には、画像除去処理温度で塑性を示す画像形成物質などの熱可塑性組成物層が設けられることが好ましい。下流側剥離部材表面の熱可塑性組成物層は軟化して塑性を示すので、被記録材と剥離部材とを重ね合わせて加圧した時、熱可塑性組成物層は、画像の高さの差や被記録材の凹凸に従って変形することが可能であり、上流側の画像除去処理で残された画像形成物質と良好に接触することができる。このために、被記録材上の画像をほぼ完全に除去することが可能となる。高さが高い画像は、既に上流側の剥離部材により除去されているで、残画像の段差は小さく、表面に熱可塑性組成物層を設けた剥離部材を1つのみ用いて、1段の画像除去処理で画像を除去しようとする場合に比較して、本発明の画像除去装置における下流側の剥離部材上の熱可塑性組成物層は、比較的厚みの小さな熱可塑性組成物層としても画像を完全に除去することができる。また、下流側の熱可塑性組成物層の厚みを厚くしても、より低い加熱温度や低い加圧力で残画像と剥離部材とが良好に密着できる。このために、下流側の剥離部材に熱可塑性組成物層を設けても、熱可塑性組成物層を有する剥離部材を用いて1段のみの加熱・加圧、分離をする場合に比較して、被記録材と剥離部材との分離は容易となる。
本発明の画像除去装置の特徴の一つは、複数の剥離部材を設け、少なくとも最上流の剥離部材として、エンドレスベルト型の剥離部材を使用せずに、ローラ型の剥離部材を用いることである。ローラ型の剥離部材を用いると、画像除去装置を小型にできるとともに、エンドレスベルト型剥離部材を使用する場合に生じる剥離部材の寄りが生じないため、寄り防止や寄り修正のための手段を設ける必要が無く、画像除去装置の構成を簡素にすることができる。また、寄りを修正するために、剥離部材に不均等なテンションを印加することもないので、剥離部材の寿命を長くすることができる。
その一方、ローラ型剥離部材を用いると、従来技術においては、被記録材から剥離部材に転写した画像形成物質を除去することが困難であった。剥離部材上の画像形成物質を除去する手段(以降クリーニング手段と称する)としては、従来、エッジを有するクリーニング部材を用いて剥離部材から画像形成物質を掻き落とす手段が、実用的な手段として用いられてきた。エッジを有するクリーニング部材では、剥離部材上に転写された画像形成物質が少なくとも軟化温度以下で室温近傍にまで冷却され、十分に大きな凝集力が生じないと、掻き落とすことが困難である。ローラ型剥離部材は、エンドレス剥離部材に比較して、肉厚の構成となるため、熱容量が大きくなる。従って、ローラ型剥離部材を用いても、径が極めて大きなローラを用いたり、画像除去処理速度を著しく小さくすれば、熱転写された画像形成物質をクリーニング位置に至るまで冷却できることは可能であるが、直径が20〜80mm程度、処理速度(剥離部材ローラ周速)10〜120mm/sec程度の実用的な範囲の装置構成とした場合、画像形成物質の凝集力が十分に高まるまでに冷却することは困難である。
このクリーニングの課題を解決するため、本発明においては、少なくとも最上流の剥離部材としてローラ型剥離部材とともに、少なくとも最上流の剥離部材から画像形成物質を除去するクリーニング手段として、該ローラ型剥離部材に転写した画像形成物質がその軟化点以上に加熱された状態で該剥離部材の表面に当接し、表面には剥離部材上の画像形成物質を剥離部材の軸方向端部またはクリーニング部材の端部に寄せるパターンが形成されているクリーニング部材、剥離部材の周速度よりも速い周速度で剥離部材と摺動・回転する回転体であって剥離部材上の画像形成物質を転移するクリーニング部材、のいずれかから選択されたクリーニング手段を設ける。
本発明の画像除去装置の最上流に設けられるローラ型剥離部材をクリーニングする手段の一つは、剥離部材の表面に当接し、被記録材から剥離部材に転写された画像形成物質を、画像形成物質がその軟化点以上に加熱されたままの状態で剥離部材またクリーニング部材の端部に搬送されるように、表面に凹凸パターンを形成したクリーニング部材を用いるものである。
より具体的には、図2に例を示したような構造を有するクリーニング部材を挙げることができる。図2の(a)はローラ11に、螺旋状に連続した凸部12が形成されたものであり、例えば、アルミニウムやステンレスなどの金属からなるローラに金属などのワイヤ状のものを巻き付けて接合することにより形成される。図2の(b)は螺旋状に連続した凹部(溝)13が形成されているものであり、例えば、旋盤により、アルミニウムやステンレスなどの金属からなるローラを溝加工することにより凹部が形成される。凹凸の高さ(深さ)は、0.03mm〜0.5mm程度でよく、クリーニング部材の表面素材は必ずしも画像形成物質に対して接着性を示すものを用いる必要は無い。逆に、クリーニング部材の表面にフッ素樹脂を含浸したり、塗布したり、メッキしたりするなどの方法で撥画像形成物質性としても良い。
このようなパターンが形成された回転体を剥離部材に当接せしめ、剥離部材上に転写された画像形成物質が加熱され塑性を示す状態で、剥離部材と摺動させることにより、剥離部材上の画像形成物質は、ローラ型剥離部材またはクリーニング部材の幅方向の端部近傍に搬送される。このクリーニング部材による画像形成物質除去の原理は、剥離部材上の画像形成物質を剥離部材から掻き落とすことではないので、凹部や凸部がエッジを形成している必要が無い。すなわち、凹部の断面形状は、角型溝、V字溝、U字溝等いずれでも良よく、凸形状の場合には、丸い断面を有するワイヤを巻き付けたものであっても良い。
更に、図2の(c)に示すようにクリーニングローラのおよそ中央部分から逆向きとなる螺旋状の凹凸を形成し、画像形成物質が剥離部材またクリーニング部材の両端部へ搬送される構造とすることもできる。また、連続した螺旋ではなく、図2の(d)に示すように螺旋状に断続的なパターンである凸部14のクリーニング部材も用いることができるし、図2の(e)の例のように、クリーニング部材として、螺旋状の溝が左右からの交差するように綾目状に凹凸パターンを設けた場合でも、螺旋状凹凸の幅、条数、深さ、傾き、連続性等のバラメータを変えて、クリーニングローラのどちらかの端に寄る力がより強く働くにようにすることにより、剥離部材上の画像形成物質を剥離部材またクリーニング部材の端部に搬送することができる。
クリーニング部材はバネなどの付勢部材により剥離部材に加圧され、当接位置においてニップを形成するように配置される。また、クリーニング部材の表面が剥離部材の表面と摺動するように搬送されるが、この端寄せクリーニング部材の場合には、クリーニング部材の表面の移動速度が、必ずしも、剥離部材表面の移動速度よりも速い速度で搬送されるように駆動する必要は無い。クリーニング部材の表面が剥離部材と連れ回りをしていなければ、その移動速度が、剥離部材表面の移動速度よりも遅い速度で駆動されても、画像形成物質を剥離部材またはクリーニング部材の端に搬送することは可能である。但し、被記録材からローラ型剥離部材に転写された画像形成物質を速やかに除去するためには、クリーニング部材の移動速度は、剥離部材の移動速度よりも速い方が好ましい。クリーニング部材表面の移動速度と剥離部材表面の移動速度との比が1.5〜30の範囲で設定することが好ましく、特に、2〜20の範囲が好ましい。この比が小さいと、被記録材からローラ型剥離部材に転写された画像形成物質を速やかに剥離部材またはクリーニング部材の端部に寄せることができず、画像形成物質が剥離部材上に蓄積し、被記録材との分離が悪くなったり、剥離部材上の画像形成物質が被記録材に逆転写したりするので、被記録材上の画像形成物質を良好に剥離部材に転写し、除去することが困難となり易い。また、比が大き過ぎると、クリーニング部材と剥離部材との摩擦抵抗力が大きくなり過ぎて、クリーニング部材や剥離部材を駆動することが困難になったり、剥離部材やクリーニング部材の磨耗による劣化を生じ易い。
クリーニング部材の移動方向は、剥離部材と同方向でも逆方向でも、剥離部材上の画像形成物質を端に寄せる効果を有する。
上記のように剥離部材上に転写した画像形成物質を剥離部材ローラまたはクリーニング部材の端部に寄せるためには、クリーニング部材と剥離部材とが形成するニップ内において、剥離部材上の画像形成物質の温度が十分に高く、塑性を示す状態となっている必要がある。被記録材から剥離部材への画像形成物質の転写を良好にするためには、両者を分離する位置において、被記録材上の画像形成物質の温度が低く、凝集力が高くなっているように構成することが好ましい。それ故、剥離部材ローラ内部には加熱源を設けない構成とすることが好ましい。一方、上記のとおり、剥離部材とクリーニング部材とが形成するニップ内においては、画像形成物質は塑性となる温度まで加熱される必要がある。それ故、例えば、クリーニング部材の内部にハロゲンランプなどの加熱手段を設けることにより、被記録材から剥離部材への画像形成物質の転写特性を良好にし、且つ、良好なクリーニング特性を得ることができる。同様な効果は、被記録材と剥離部材との分離部の下流側であって、クリーニング部材とのニップが形成される上流側に剥離部材を局所的に加熱する手段を設けても得られるが、クリーニング部材を加熱する構成とすることにより、消費電力を低減したり、装置構成を簡素にすることができる。
クリーニング部材の加熱温度は、被記録材上の画像形成物質の特性や、画像除去処理の速度等の要素により、適宜、設計されるが、一般的な電子写真画像形成装置で形成された画像形成物質を、10〜60mm/secの搬送速度で除去する場合、クリーニング部材の表面温度が、100〜220℃、特に、120〜170℃になるように加熱することが好ましい。
剥離部材またはクリーニング部材の端面に寄せられた画像形成物質は、ブレードなどの手段により前記のクリーニング部材より除去することが可能である。画像形成物質を端面近傍に寄せるタイプのクリーニング部材を用いる場合、クリーニング部材の全幅にブレードを設ける必要がなく、端部のみにブレードを当接するか、剥離部材の端面に当接するブレード部材を設ければよい。従って、端寄せ型のクリーニング部材を用いると、転移クリーニング部材を用いる場合よりも、クリーニング部材から画像形成物質を除去するための構成が簡素になり、且つ、画像形成物質の回収も容易となる利点を有する。
クリーニング部材により剥離部材またはクリーニング部材の端面に寄せられた画像形成物質を剥離部材やクリーニング部材から除く手段の構成例を、図3〜図5に示す。図3は、クリーニング部材ローラ22の端部に寄せられた画像形成物質を除去するための円盤状ブレード部材23を設けた例である。図3の(a)は正面図、図3の(b)は側面図である。クリーニング部材ローラ22の表面をフッ素樹脂等で撥画像形成物質処理しない限り、クリーニング部材ローラ22の表面の搬送速度を剥離部材の搬送速度より速くすると、大半の画像形成物質はローラ型剥離部材21に付着せず、クリーニング部材ローラ22に付着する。
ローラ型剥離部材21の端部近傍に、フッ素系樹脂化合物やシリコン系化合物、長鎖アルキル化合物を塗布、含浸、メッキするなどの方法により、画像形成物質に対する接着性の低い領域24を設けることにより、画像形成物質は、よりローラ型剥離部材21に付着し難くなり、確実にクリーニング部材ローラ22に付着することができる。
端部に寄せられた画像形成物質26は、円盤状ブレード部材23により、削り取られ、画像形成物質回収容器25に回収される。円盤型ブレードは基本的には回転させることは必要ではないが、ブレードのクリーニングをするためなどにゆっくりと回転させるか、間歇的に回転しても良い。
端部に送られた画像形成物質をローラ型剥離部材剥21に付着させず、クリーニングローラ側に選択的付着させるためには、前述のようなクリーニング部材を加熱する手段と温度制御手段を設け、クリーニング部材ローラ22の温度をローラ型剥離部材21の表面温度よりも高くなるように設定して加熱することも有効である。
図4は、端部に寄せられた画像形成物質をローラ型剥離部材31側に付着させて回収する構成の例である。図3と同様に、図4の(a)は正面図、図4の(b)は側面図である。この構成例では、端部に寄せられた画像形成物質を除去するための円盤状ブレード部材33が、ローラ型剥離部材31側に設けられる。クリーニング部材ローラ32の端部近傍にフッ素樹脂を付与するなどにより、画像形成物質に対する接着性の低い領域34を設ける、端に寄せられた画像形成物質がクリーニング部材ローラ32側に付着しないように構成する。クリーニング部材ローラ32の全面を撥画像形成物質処理しても同様の効果が得られるが、耐久性やコストの点から端部のみに画像形成物質に対する接着性の低い領域を設ける方が有利である。図3と同様に、ローラ型剥離部材31に付着した画像形成物質36は、円盤状ブレード部材33により、削り取られ、画像形成物質回収容器35に回収される。
図5は、クリーニング部材42の端部に送られた画像形成物質を、一時的に溜めるための溝部47を形成し、その溝部47に当接し、溜まった画像形成物質を掻き取るブレード43と、重力等で落下した画像形成物質46を回収する画像形成物質回収容器45から構成される。
上記では、剥離部材上の画像形成物質を端部に寄せるためのクリーニング部材として、ローラ表面に凹凸バターンを形成したものについてのみ説明したが、クリーニング部材をエンドレスベルトとして、その表面に画像形成物質が端部に寄るパターンを設けたものも使用することができる。クリーニング部材をエンドレスベルトにすると、ローラ型剥離部材にその一部が巻き付くように配置することが可能であるため、剥離部材とクリーニング部材の接触幅を広く取ることが可能となる。それ故、剥離部材上の画像形成物質を速く端部に寄せたり、剛体の剥離部材を用いる時にもクリーニング部材との接触幅を確保することができるという利点を有する。その反面、クリーニング部材の寄りを防止するための手段が必要になったり、剥離部材との摺動による摩擦力よりも大きな駆動力で駆動して、クリーニング部材の搬送を安定なものとすることが困難になり易いという課題を有する。
クリーニング処理の際に、クリーニング部材表面は、被記録材から剥離部材に転写された画像形成物質と擦られるが、通常、画像形成物質には、カーボンブラック、フタロシアニンなどの色材として、顔料を含んでいる。また、画像形成物質には流動性付与材としてシリカ、酸化チタンなどの白色顔料も含まれている場合が多い。クリーニング部材の表面は、これらの顔料や、画像形成物質中の樹脂と擦られて磨耗する。それ故、クリーニング部材の表面には、耐磨耗性の高いセラミックスをコートすることが好ましい。特に、熱伝導度の高い、アルミニウム、ステンレス、銅などの金属材料に凹凸パターンを形成し、剥離部材が摺動する面にセラミックスを設けることにより、熱伝導度が高く、高速の画像除去処理を行うことが可能で、且つ、耐磨耗性の高いクリーニング部材を得ることができる。
クリーニング部材にコートするセラミックス素材としては、TiN、TiCN、TiAlN、CrN、ZrN、Al2O3、ダイヤモンドなどを挙げることができる。コートの方法としては、プラズマCVD、熱CVD、スパッタリング、イオンプレーティングなどの蒸着、溶射法等の方法を用いることができる。
上記では、本発明の画像除去装置の最上流に設けられるローラ型剥離部材をクリーニングする手段の一形態として、剥離部材上に転写された画像形成物質を端部に寄せることができるパターンを有する移動型のクリーニング部材について説明した。他のクリーニング部材の例は、クリーニング部材が画像除去装置やクリーニングユニットの側板などに固定され、搬送移動されず、ローラ型剥離部材の移動により、画像形成物質を端部に寄せるものである。そのクリーニング部材の例を図6、図7に示す。
図6、図7のクリーニング部材例においては、図6の(b)のように、クリーニング部材16の剥離部材当接面16−1には、図6の(a)に示したように、ローラ型剥離部材の周面の搬送方向に対して角度αをもって溝が切削加工などにより形成されている。図6の(a)のクリーニング部材16のA−A’線断面を図7に示す。図7のA−A’線断面は、クリーニング部材16の剥離部材当接面16−1だけを示している。
クリーニング部材16の剥離部材当接面16−1は、ローラ型剥離部材の外周面の曲率半径同じか、あるいは、わずかに小さな曲率半径となるように形成され、クリーニング部材16が剥離部材に当接し、ローラ型剥離部材が回転搬送されることにより、ローラ型剥離部材表面に被記録材より転写された画像形成物質は、ローラ型剥離部材の端面近傍に寄せられる。
前述の移動型端寄せクリーニング部材と同様、図8、図9のように、ローラ型剥離部材の両端に画像形成物質が寄せられるように凹凸バターンを形成しても良い。また、図6、図7、図8、図9は、クリーニング部材16の剥離部材当接面16−1が溝加工により凹凸パターンが形成された例を示しているが、移動型端寄せクリーニング部材と同様、図10、図11に示すように、ハーフパイプ状基体部材52にワイヤなどからなる凸部形成部材53を接合して、溝部54を有する凹凸パターンが形成されたクリーニング部材を、本発明の画像除去装置に用いることもできる。図10は、図11のクリーニング部材を紙面と垂直方向に切断した時の断面図を示している。
更に、移動型端寄せクリーニング部材と同様に、図6、図7、図8、図9、図10、図11に例示したような固定型端寄せクリーニング部材においても、クリーニング部材と接する剥離部材上の画像形成物質が軟化した状態でなければ、画像形成物質を端に寄せることができないので、クリーニング部材を加熱する手段とクリーニング部材の加熱温度を制御する制御手段を設けることが好ましい。図11、図12は、それぞれ、ハーフパイプ状基体部材52、クリーニング部材16に面状のヒータ55を接合した例を示す。クリーニング部材が金属などの熱伝導度の高い部材からなる場合、棒状のヒータなど、局部的に加熱するヒータを用いても、実用上差し支えない加熱の均一性が得られる。移動型の端寄せクリーニング部材と同様に、一般的な電子写真画像形成装置で形成された画像形成物質を、10〜60mm/secの搬送速度で除去する場合、クリーニング部材の表面温度が、100〜220℃、特に、120〜170℃になるように加熱することが好ましい。
固定型端寄せクリーニング部材は、剥離部材の搬送力だけで、剥離部材に転写された画像形成物質を端に寄せるので、クリーニング部材と接するローラ型剥離部材の周長(ニップ幅)が小さいと、剥離部材上の画像形成物質を端に寄せる速度が小さく、剥離部材上に被記録材から転写した画像形成物質が蓄積してしまう。それ故、図6、図8、図11に例示したように、ローラ型剥離部材との当接面を、剥離部材の径と適合するような曲率を有する面とし、ローラ型剥離部材の周と長く接するように構成することが好ましい。
固定型端寄せクリーニング部材では、クリーニング部材が移動せず、ローラ型剥離部材が移動することから、クリーニング部材によって寄せられる画像形成物質の大半は、クリーニング部材には付着せず、ローラ型剥離部材の端面近傍に付着するので、ローラ型剥離部材の端面近傍にブレード部材を当接することにより、画像形成物質を回収することができる。画像形成物質がローラ型剥離部材に付着することをより確実にして、クリーニング部材の汚れを防止するためには、クリーニング部材の端面などにフッ素樹脂などを付与して、画像形成物質との接着性を低下する処理をすることができる。
ローラ型剥離部材の端面に寄せられた画像形成物質を除去するためのクリーニング部材の構成例を、図13、図14、図15に示す。すなわち、移動型端寄せクリーニング部材で端部に寄せられた画像形成物質を除去する装置構成と同様に端部のみにブレードを当接することにより、画像形成物質を回収することができるが、固定型端寄せクリーニング部材を用いた場合には、ローラ型剥離部材61の端面、または端面近傍に、ブレード63、67、68に例示されるようなブレードを当接することにより、画像形成物質をローラ型剥離部材61から離脱せしめて回収することができる。
このように凹凸バターンが形成されたクリーニング部材を用いた装置構成例を図22に示す。凹凸バターンが形成されたクリーニング部材16は、少なくとも最上流のローラ型剥離部材80からの画像形成物質の除去に設けられる。クリーニング部材16は、図22に図示していない加圧部材により、ローラ型剥離部材80側に押圧される。クリーニング部材16は、画像除去装置の側板や、ユニットに固定されていて、画像除去処理中に移動しない。画像除去処理中に、ローラ型剥離部材80が回転、駆動され、ローラ型剥離部材80の外周面が、当接するクリーニング部材16と相対的に摺動することにより、被記録材からローラ型剥離部材80に転写された画像形成物質は剥離部材の端面方向に寄せられる。
図6においては、ローラ型剥離部材の外周面が周速度Vで、固定されているクリーニング部材16に対して矢印の方向に搬送されることにより、剥離部材上の画像形成物質がKの方向に寄せられることを示している。
図6の矢印方向にローラ型剥離部材が搬送されるとき、ローラ型剥離部材上の画像形成物質を寄せるのに寄与するのは、図6の(a)における溝部17の下側の面である。図7の断面図において、画像形成物質を寄せるのに寄与する面19は、クリーニング部材外面からの面19の角度βがほぼ90°、溝部開口角度θが約60°になるように溝が形成されている。図7においては、画像形成物質を寄せるのに寄与する面19とその反対面とで、クリーニング部材外面となす角度βが異なる溝部17を有するクリーニング部材例を示したが、図9のように、両溝面の角度をほぼ同一のものとしても良い。
クリーニング部材の剥離部材との摺動面16−1の凹凸パターンは、面全体として均等なものである必要はなく、適正なパラメータについても、画像除去処理する画像形成物質の物性、被記録材の画像形成物質の付着量、画像除去処理の速度、剥離部材表面近傍の弾性などにより、適正値は適宜設計されるものである。しかしながら、一般に使用されている電子写真方式の画像形成装置に用いられる画像形成物質を対象とし、画像除去処理を10〜120mm/secの周速で行う時に好ましい凹凸パターンのバラメータは下記のとおりである。
すなわち、溝部あるいは凹凸バターンのピッチは、クリーニング部材の幅方向について、0.1〜3mmが好ましく。特に、0.2〜1.0mmが好ましい。この範囲より小さいピッチでは、溝深さを寄りに適する深さとすることが困難となったり、クリーニング部材の耐久性に問題が生じる。この範囲よりも大きなピッチでは、寄り速度が遅くなり過ぎ、連続して画像除去処理を実施した時に、剥離部材に画像形成物質が蓄積してしまい、被記録材からの画像形成物質の除去が困難になったり、被記録材を剥離部材から分離することが困難になる等のトラブルを生じる。
剥離部材の搬送方向に対する凹凸バターンの角度αは、10〜60°が好ましく、特に、30〜50°が好ましい。この範囲より小さくても、大きくても、剥離部材上の画像形成物質の寄り速度は遅くなる。また、角度αが大き過ぎると、剥離部材表面が摺動するときの抵抗力が大きくなり過ぎるために、剥離部材の駆動が不安定になったり、出力トルクの大きな電動機を使用することが必要になる。
凹部の深さ、凸部の高さは、0.02〜1.0mmが好ましく、特に、0.05〜0.5mmが好ましい。この範囲よりも小さい時には、画像形成物質の寄り速度が小さくなり過ぎる。大き過ぎると切削等の加工が困難になったり、適当なピッチが得られなかったり、クリーニング部材の強度が弱くなるという問題が生じる。
寄りに寄与する凹凸面とクリーニング部材の面との成す角度βは、30°〜150°が好ましく。溝加工で凹部を形成する場合には、特に、50〜90°が好ましい。この範囲よりも小さい角度では、より速度が遅くなり、大きいと加工が困難になったり、圧力、磨耗に対する耐久性が低くなってしまう。
図7に示した平坦部の長さLは、前記の他のバラメータで制約を受けるために、独立に変えることは通常困難であるが、溝加工する場合は、平坦部の長さは、ピッチの1/2〜1/20が好ましく、特に0.02〜0.5mmとすることが好ましい。平坦部長さLがこの範囲よりも小さいと加圧による圧力が集中するために、変形や磨耗を生じ易く、加工も困難になる場合がある。平坦部長さLがこの範囲よりも大きいと、画像形成物質の寄り速度が小さくなり過ぎる。
クリーニング部材の剥離部材搬送方向の幅(凹凸バターン形成面長さ)としては、1〜70mmが好ましく、特に、10〜50mmが好ましい。この範囲よりも小さい時には、画像形成物質の寄り速度が小さくなり過ぎる。この範囲よりも大きい時には、剥離部材表面が摺動するときの抵抗力が大きくなり過ぎるために、剥離部材の駆動が不安定になったり、出力トルクの大きな電動機を使用することが必要になるという問題が発生したり、クリーニング部材を加熱する時に放熱量が大きくなり過ぎるという問題が発生する。移動型の端寄せクリーニング部材と同様に、固定型の端寄せクリーニング部材の表面にも耐磨耗性を向上するために、耐磨耗性の高いセラミックスをコートすることが好ましい。
本発明の画像除去装置において、少なくとも最上流側剥離部材から画像形成物質を除去するための他のクリーニング部材は、転移クリーニング部材である。転移クリーニング部材の構成、駆動方法、作用は、特許文献5に開示されているものと、ほぼ同様である。すなわち、転移クリーニング部材は、ローラ型剥離部材の表面と当接し、剥離部材の表面の搬送速度よりもその表面が速い速度で搬送されるクリーニング部材である。転移クリーニング部材の表面素材としては、画像形成物質に接着性を示す素材を用いることが好ましいが、原理として転写により剥離部材上の画像形成物質を除くものではないので、必ずしも、剥離部材表面よりも画像形成物質に対する接着性が高いものを用いる必要は無い。
前述の端寄せクリーニング部材では、剥離部材上の画像形成物質がローラ型剥離部材またはクリーニング部材の端面に寄せられ移動したが、転移クリーニング部材では、前述のように、ローラ型剥離部材の表面と当接し、剥離部材の表面の搬送速度よりもその表面が速い速度で搬送されることにより、剥離部材上に被記録材より転写された画像形成物質は、クリーニング部材側に転移する。転移クリーニング部材に転移した画像形成物質はブレードなどの手段で転移クリーニング部材より掻き取られる。
転移クリーニング部材の場合にも、ローラ型剥離部材上の画像形成物質がクリーニング部材に転移するためには、画像形成物質が軟化して塑性となっている必要があり、端寄せクリーニング部材と同様に、クリーニング部材を加熱する手段が設けられていることが好ましい。
図16に、転移クリーニング部材を用いたクリーニング手段の例を示す。図16において、転移クリーニング部材72は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、真鍮、等の金属部材から構成されるローラであり、ローラ型剥離部材71に当接するように配置されている。移動型端寄せクリーニング部材と異なるのは、転移クリーニング部材72には、平滑な面で構成される等、その表面に画像形成物質を端部に寄せる凹凸のパターンが設けられていないことである。
移動型端寄せクリーニング部材の場合と同様に、転移クリーニング部材72はローラ型剥離部材71と接するように配置され、転移クリーニング部材72とローラ型剥離部材71との間は、図示していない加圧手段により加圧され、ニップが形成される。また、転移クリーニング部材72の内部には、例えば、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどの加熱手段78が設けられ、図示していない温度検知手段、温度制御手段により、転移クリーニング部材72は所定の温度に加熱・制御される。一般的な電子写真画像形成装置で形成された画像形成物質を、10〜60mm/secの搬送速度で除去する場合、クリーニング部材の表面温度が、100〜220℃、特に、120〜170℃になるように加熱することが好ましい。転移クリーニング部材72の回転方向は、ローラ型剥離部材71と同方向(連れ回り方向)であっても、逆方向であっても良いが、転移クリーニング部材72の表面がローラ型剥離部材71の表面よりも速い速度、好ましくは1.5〜8倍の速度で搬送・駆動される。
転移クリーニング部材72にローラ型剥離部材より転移した画像形成物質は、例えば、ブレード部材73により画像形成物質回収容器75に回収される。図3、図4、図5で例示した、移動型端寄せクリーニング部材の場合と異なるのは、ブレード部材73をクリーニング部材72の全幅に渡って当接せしめていることである。ブレード部材の材料としては、アルミニウム、ステンレスなどの金属部材、シリコンゴム、フッ素ゴムのようなゴム部材、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール樹脂などの耐熱性のある高分子化合物、セラミックス等を用いることができる。
上記には、転移クリーニング部材72としてローラの例を示したが、エンドレスベルトを用いることも可能である。但し、寄りの問題を回避したり、クリーニング部材の搬送速度を大きくするために大きな駆動力を与えられるなどの点でローラを用いることが好ましい。
最上流の画像除去手段で用いられる剥離部材はローラ型剥離部材である。その形状としては、外径が10〜90mm程度であることが、画像除去装置を小型に形成できて好ましい。そして、少なくとも厚みが0.5mm以上のゴム弾性層を有し、更に、ゴム弾性体層より表面側に有機高分子層を有することが好ましい。
図17は、最上流の画像除去手段で好ましく用いることのできる剥離部材80の例を示している。図17は、ローラ型剥離部材80の断面である。図17において、基体81には、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属、ガラス、セラミックス、フェノール樹脂などの耐熱性高分子化合物等の材料からなるバイプ状部材が用いられる。基体81の上にはゴム弾性体82が設けられ、更にゴム弾性体82上には有機高分子化合物層83が設けられている。ゴム弾性体としては、耐熱性の良いものが好ましく、シリコンゴム、フッ素ゴムが好適である。ゴム弾性体の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、特に、1〜8mmの厚みであることが好ましい。ローラ型剥離部材80は、図20の画像除去装置例のように、加熱・加圧ローラ111と対向し、両者間に圧力が印加されて、ニップが形成されるように用いられる。加熱・加圧ローラ111にゴム弾性体層を設けて、ローラ型剥離部材との間にニップを形成することも可能であるが、加熱・加圧ローラにゴム弾性体層を設けると、ゴム弾性体材料として熱伝導度の高い材料が得られないため、ニップ内に十分な熱量を速く伝えることができず、速い速度で画像除去処理を行うことは困難である。それ故、加熱・加圧部材としては、基材として、熱伝導率の高いアルミニウム、ステンレス、鉄などの金属材料を用い、それに、10〜60μm程度の、極力、厚みの薄いPFA、テフロン(登録商標)などの撥画像形成物質性の材料を被覆したものを用いることが好ましく、ローラ型剥離部材及び加熱・加圧ローラ111をこの構成とすることにより、画像除去処理速度を、10〜120mm/sec程度にまで高くすることが可能になる。
画像除去処理速度を速くするためには、加熱・加圧部材と剥離部材とが形成するニップ幅が大きいことも重要である。前記のような金属材料からなる加熱・加圧部材と対向して大きなニップ幅を形成するには、剥離部材ローラのゴム弾性体層は厚い方が好ましい。すなわち、ゴム弾性体層の厚みが1mmより小さい場合には、高速処理が可能なニップ幅が得られ難い。しかしながら、ゴム弾性体層の厚みを8mmより大きくしても、ニップ幅が大きくなり難くなるばかりでなく、寸法精度の良いゴム弾性体層を形成することが困難になる。
ニップに熱量を供給するという観点からは、熱伝導率の高いアルミニウム、ステンレス、鉄などの金属材料からなるローラを剥離部材とし、ローラ型剥離部材の内部にハロゲンランプなどの加熱源を設け、ゴム弾性体を有する加圧部材との間にニップを形成して、被記録材上の画像形成物質を剥離部材に接着するという構成が考えられる。しかしながら、この構成では、被記録材上の画像は良好に除去することができない。その理由は必ずしも明らかではないが、剥離部材を加熱する構成では、被記録材を剥離部材から分離する際に、剥離部材と接着した画像形成物質が冷却されずに分離してしまうため、画像形成物質が凝集破壊していまい、被記録材から剥離部材への転写が良好に行われないためと推定される。従って、ローラ型剥離部材の内部には加熱源を設けることは好ましくない。
本発明で好ましく用いることのできるローラ型剥離部材80は、ゴム弾性体層82に加え、表面に有機高分子化合物層83が設けられたものである。一般の電子写真画像形成装置においては、装置で使用する画像形成物質として熱可塑性樹脂、顔料などの色材を含有する粉体が用いられるが、これらの材料に加えて、染料、界面活性剤、電荷制御剤、ワックスなどの単分子化合物が加えられことがある。ゴム弾性材料は、単分子化合物と接することにより膨潤し易い。有機高分子化合物層83は、被記録材上の画像形成物質を接着するとともに、それらの画像形成物質に含有される単分子化合物がゴム弾性体層に浸透しないようにバリアとなる。また、有機高分子化合物層は耐熱性があることが好ましい。有機高分子化合物層として好ましく使用することのできる材料として、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等を挙げることができる。
有機高分子化合物層の厚みは、5〜150μm、特に、20〜80μmが最適である。厚みがこの範囲よりも薄いと、ゴム弾性体層の膨潤を防止する効果が小さくなり過ぎたり、製造時の取り扱いが困難になり易い。また、厚すぎるとゴム弾性体層のゴム弾性効果を阻害し、加圧部材との間で適当な幅のニップを形成することが困難になり、画像除去特性が低下したり、画像除去処理速度を速くできなくなってしまう。
上述のように、本発明の画像除去装置の最上流の画像除去手段に用いるローラ型剥離部材として、ゴム弾性体層を有するローラ型剥離部材を用いることは、画像除去特性を良好にする点、画像除去処理速度を高くできる点で好ましいが、前述の好ましい厚みのゴム弾性体層を設けると、径精度の良い剥離部材を製造したり、径精度が高い状態に保つことが困難になる。すなわち、ゴム弾性体は、切削加工、研磨加工しても精度良く加工することが難しく、たとえ加工ができたとしても、圧力をかけた状態で放置すると、長時間圧力を受けた部分が収縮したまま、元の形状に復帰しないなど、形状を精度よく保つことが困難である。それ故、ゴム弾性体層を有するローラ型剥離部材を用いる場合、前記のクリーニング部材と剥離部材との間に一定のギャップを設けて、剥離部材表面に残る画像形成物質(熱可塑性組成物)を一定の厚みに制御することは極めて困難である。本発明の画像除去装置における最上流画像除去手段において、ゴム弾性体層を有するローラ型剥離部材を用いる場合には、前記のクリーニング部材と剥離部材との間に圧を印加し、ギャップ部材を設けずに剥離部材の径の変化に従ってクリーニング部材が剥離部材に、ほぼ一定圧で当接したまま移動できる構造とすることが好ましい。クリーニング手段をこのような構成とすることにより、剥離部材上の画像形成物質はほとんど除去され、剥離部材の表面は、前記の有機高分子化合物層となるか、厚みがおよそ20μm以下の画像形成物質が残るようになる。このため、画像除去処理される被記録材は、その先端部が加熱・加圧により剥離部材上の画像形成物質に埋まってしまうことがなく、被記録材の地肌部分が剥離部材と接着することが避けられるので、連続して画像除去処理を行ったり、多数枚の被記録材の画像除去処理を行っても、剥離部材からの画像形成物質の除去状態や被記録材の分離を安定なものとすることができる。画像形成物質に対する接着力を低下するための組成物が付与されたリユーザブル被記録材を用いる場合においても、シード状リユーザブル被記録材の先端、後端などの端面は、カット面であり、画像形成物質に対する接着力を低下するための組成物が付着していないので、被記録材の先端が剥離部材上の画像形成物質に埋まってしまうと、被記録材と剥離部材先端とが画像形成物質を介して接着してしまい、分離不良を生じ易い。
上記では、最上流の画像除去手段にゴム弾性層を有するローラ型剥離部材を使用する例を示したが、本発明の画像除去装置において、最上流側のローラ型剥離部材としてゴム弾性体層を有する剥離部材を使用することは、必須ではない。但し、ゴム弾性体層の無いローラ型剥離部材を使用する場合、画像除去処理を高速にできない欠点を生じ、また、クリーニング部材として金属材料などの剛体を用いるとクリーニング部材との間にニップを形成することが困難となるので、クリーニング部材を弾性を有する材料で形成しなくてはならないという課題が生じる。
また、基体とゴム弾性層との間やゴム弾性層と有機高分子化合物層との間などに、適宜、それらの接着性を向上するために接着剤層や表面改質層等を設けたローラ型剥離部材を用いることができる。
下流側の剥離部材としては、その表面に熱可塑性組成物層を有することが好ましい。熱可塑性組成物層を有することにより、上流側剥離部材で大半の画像が除去された被記録材から、ほぼ完全に画像を除去することができる。画像がほぼ完全に除去できるのは、被記録材と剥離部材とを重ねて、加熱・加圧する時に、剥離部材上の熱可塑性組成物層が軟化して塑性を示すため、被記録材の凹凸及び画像の凹凸に従って変形して、剥離部材と被記録材上の残画像とが良好に密着、接着するためである。下流側の剥離部材の表面に設ける熱可塑性組成物層の厚みは、5〜300μmが好ましく、特に、20〜110μmであることが好ましい。前記の範囲よりも熱可塑性組成物層が薄いときには、画像を完全に除去することが困難になり、厚い時には、被記録材の端面が加圧により熱可塑性組成物層に埋まって、被記録材と剥離部材との分離が困難になったり、被記録材の端面に剥離部材表面の熱可塑性組成物が付着しやすい。剥離部材表面の熱可塑性組成物層は画像形成物質が転写し着色するので、被記録材の端面に熱可塑性組成物が付着すると被記録材が見苦しいものとなってしまう。また、熱可塑性組成物層が厚過ぎる時には、被記録材の端面ばかりでなく、被記録材の地肌部分に剥離部材表面の熱可塑性組成物が逆転写して、被記録材全体を汚してしまい易くなるという問題も生じる。
この熱可塑性組成物層を形成する材料は、被記録材上の画像形成物質と重ね合わせて加圧する温度において軟化し塑性を示す組成物であればよい。下流側の剥離部材の表面に設ける熱可塑性組成物層の材料としては、被記録材から除去しようとする画像形成物質とほぼ同一温度で軟化して塑性を示すことが好ましいことから、被記録材から除去しようといる画像形成物質そのものか、画像形成物質とほぼ同一の組成物を用いることが好ましい。
下流側の剥離部材としても、寄りを防止するために、エンドレスベルト型剥離部材を用いるよりもローラ型剥離部材を用いることが好ましい。ローラ型剥離部材を用いるとき、最上流側のローラ型剥離部材の場合と同様に、ローラ型剥離部材の内部には、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、IHヒータなどの熱源を持たないことが好ましい。被記録材と剥離部材とを分離する位置において、加熱・加圧部材とのニップ内での温度よりも冷却されていないと、下流側で熱可塑性組成物層を有する剥離部材を用いる場合は、特に、剥離部材上の熱可塑性組成物層が凝集破壊を生じ易くなるため、画像の除去特性が悪くなるばかりでなく、剥離部材上の熱可塑性組成物層が被記録材に逆転写してしまうという問題を生じ易い。
被記録材上の画像形成物質の大半は、上流側の剥離部材、特に、最上流側の剥離部材で除去されるので、熱可塑性組成物層を有する下流側の剥離部材は、被記録材の画像除去処理をするたびに剥離部材上の画像形成物質を除去しなくても、熱可塑性組成物層の厚みは上記の好ましい範囲に保つことができる。従って、下流側の熱可塑性組成物層を有する剥離部材からの画像形成物質の除去は、一定数の被記録材の画像除去処理をするごと、一定時間の画像除去処理をするごとに実行するように制御するか、剥離部材上に転写された画像形成物質の厚みを検知して、一定範囲を越えた時に、実行するように制御することが好ましい。
下流側の剥離部材のより具体的な構成例を示す。図18の(a)は、熱可塑性組成物層を有する下流側で用いるローラ型剥離部材の例である。ローラ型剥離部材86は、最上流側の剥離部材として用いる、図17で示したゴム弾性体層82、有機高分子化合物層83を有するローラ型剥離部材80の上に、更に、熱可塑性組成物層85を設けたものである。この剥離部材例のように、ゴム弾性体層82を設けることにより、前述の上流側剥離部材の場合と同様の理由により、高速で画像除去処理を行うことが可能になる。その一方、ゴム弾性体層を有するローラ型剥離部材は、径精度を確保することが困難であり、前述のとおり、クリーニング部材と剥離部材との間に一定のギャップを設けても、剥離部材上の熱可塑性組成物層の厚みを一定に保つことが困難である。
それ故、下流側の熱可塑性組成物層を有する剥離部材として、図18の(a)のようにゴム弾性層及び熱可塑性組成物層を有する剥離部材用いる場合には、剥離部材上に蓄積した画像形成物質を除去して、剥離部材を再生するには、一旦、剥離部材上の熱可塑性組成物層をほぼ完全に除去してしまい、媒体上に形成した熱可塑性組成物層を剥離部材上に転写して再生する手段を用いることが好ましい。
図21に、一旦、剥離部材上の熱可塑性組成物層をほぼ完全に除去してしまい、その後、媒体上に形成した熱可塑性組成物層を剥離部材上に転写して再生する手段を用いる画像除去装置例を示す。
図21において、下流側のローラ型剥離部材86は、熱可塑性組成物層85を有する。下流側のローラ型剥離部材から熱可塑性組成物層および被記録材から転写した画像形成物質を除去する手段は、最上流側のクリーニング手段と同様の手段が設けられている。すなわち、図21の画像除去装置例においては、最上流側ローラ型剥離部材のクリーニング手段は、図16で例示した転移クリーニング部材72とブレード73とが設けられ、ローラ型剥離部材80上に被記録材より転写された画像形成物質は、ほぼ完全に除去される。下流側のローラ型剥離部材から画像形成物質や熱可塑性組成物層を除くための手段は、最上流か側ローラ型剥離部材に適用するものと同一または類似のものを用いることができ、例えば、図21に示すように下流側ローラ型剥離部材に対するクリーニング部材372やクリーニング部材372から画像形成物質や熱可塑性組成物を除くためのブレード373は、最上流側と同一の部材を用い、最上流側とほぼ同一の条件で処理することにより、下流側の剥離部材上に転写された画像形成物質や熱可塑性組成物層を、ほぼ完全に除去することができる。但し、下流側では、前述のとおり、被記録材の画像除去処理をするたびに再生処理は実行せず、間欠的に剥離部材の再生処理を行うので、通常の画像除去処理時には、クリーニング部材372は、図示していない解除手段により、ローラ型剥離部材86に接触しないようにしておくことが好ましい。また、クリーニング部材372内に設けるハロゲンランプ、赤外線ランプ、IHヒータ(コイル)等の加熱手段378も、電源をオフにしておくことが好ましい。間欠的に動作させる以外は、下流側剥離部材のクリーニング手段は先に説明した最上流のクリーニング手段と、同様な構成とし、同様に機能する。
図21において、媒体容器360内には、熱可塑性組成物が下面に形成されている紙やフィルムなどの媒体361が収納されている。媒体361は、特別な媒体を用意することもできるが、形成した画像を除去し再使用する、本発明の画像除去装置で通常使用する被記録材を用いることが好ましい。通常使用する被記録材を用いると、特別な媒体を用意する必要がなくなる上、再生処理に使用した媒体361を通常の画像を形成する被記録材として再使用することができる。
この媒体上に熱可塑性組成物を設ける方法としては、特別の組成物を準備し特別の製造装置で設けることもできるが、本発明の画像形成除去システムで使用する画像形成装置で、通常の画像を形成する画像形成物質を用いて、べた画像を形成すると、特別の装置を要することなく、また、特別の熱可塑性組成物を準備する必要もなく、簡単に熱可塑性組成物を有する媒体を作成でき好ましい。
予め熱可塑性組成物を付与した媒体361を媒体容器360内に収納しておき、下流側の剥離部材の再生時に、前記のクリーニング部材372を含むクリーニング手段で下流側剥離部材86から、画像形成物質及び熱可塑性組成物層85を完全に除いた後、給紙コロ362及び給紙ローラ363が作動するように、図示していない駆動手段、制御手段を設け、ガイト364、365により、熱可塑性組成物が付与された媒体361を画像除去手段に挿入する。下流側の熱可塑性組成物層を有するローラ型剥離部材86の再生時には、最上流側のローラ型剥離部材80に媒体361上に付与された熱可塑性組成物が転写してしまわないように、加熱手段112の電源がオフされるように制御される。すなわち、図示していない加熱・加圧ローラ71の温度センサが、転写が不能となる所定の温度以下であることを示していることを確認して、給紙コロ362及び給紙ローラ363を作動せしめて、媒体361を画像除去手段に挿入する。加熱・加圧ローラ71の温度を画像除去処理時より低くする他に、媒体361を画像除去手段に挿入する前に加熱・加圧ローラ71とローラ型剥離部材80との加圧を解除する手段を設けてもよい。また、媒体361が上流側の剥離部材と接触せず、直接、再生処理をする下流側の剥離部材とその加圧手段との間に挿入できるような媒体搬送パスを設けてもよい。
媒体361上に形成された熱可塑性組成物は、下流側のローラ型剥離部材86に転写され、熱可塑性組成物層85が再生される。一回の再生処理に熱可塑性組成物を有する媒体361を一枚のみ使用するように媒体上の熱可塑性組成物層の厚みを調整しておくこともできるが、上述のように通常使用する画像形成装置でべた画像を形成する場合、熱可塑性組成物層として適当な厚みよりも小さな厚みのべた画像しか形成できない場合が多いので、複数枚の媒体から熱可塑性組成物を転写することが好ましい。媒体361に付与する熱可塑性組成物の長さは、ローラ型剥離部材86の周長の整数倍としておくと、ローラ型剥離部材に均一な厚みの熱可塑性組成物層を形成することができる。特に、複数枚の媒体から熱可塑性組成物を転写する場合、媒体361熱可塑性組成物の長さを周長の整数倍としないと、ローラ型剥離部材の回転位置を検知して、媒体361の先端位置とをタイミングを合わせて搬送・転写しないと、熱可塑性組成物層の厚みに大きなむらが生じる可能性がでてきてしまうので、制御が非常に複雑となってしまう。
図21の画像除去装置例で、媒体容器360に、収容されている媒体361の量を検知するセンサを設け、媒体容器360内の媒体361の量が所定の量よりも少なくなった場合に、ユーザに対して警告を出すように制御手段、表示手段を設けることが好ましい。更に、画像形成装置と画像除去装置とが合体した画像形成除去システムにおいては、剥離部材の熱可塑性組成物層を形成するためのべた画像を形成した被記録材を媒体容器360内に挿入するための搬送手段と制御手段とを設け、媒体容器360内の媒体361の量が所定の量よりも少なくなった場合、媒体容器360に設けた媒体361の量を検知するセンサが所定値を示すまで、自動的にリユーザブル被記録材にべた画像を形成して、媒体容器360に搬送・挿入するように制御する手段を設けることが好ましい。
画像形成装置と画像除去装置とが合体した画像形成除去システムにおいては、媒体容器360を設けずに、下流側のローラ型剥離部材86の再生処理時に、画像形成装置で形成したべた画像を、直接画像除去手段やローラ型剥離部材86と加熱・加圧ローラ321とが形成するニップに搬送する構成として、一旦除去した下流側剥離部材の熱可塑性組成物層の再生処理をすることも好ましい。
上述の例においては、熱可塑性組成物層を再生するための媒体361としてシート状の媒体の例で説明したが、媒体361をウェブ状の媒体として、媒体を巻物や折り畳みとして、画像除去装置に収納してもよい。また、上述の一旦、熱可塑性組成物層を完全に除去してから、熱可塑性組成物を転写して再生処理をする装置、方法を、ゴム弾性体層を有する剥離部材について説明したが、ゴム弾性体層の無い剥離部材にも同様に適用できる。
ゴム弾性体層を有するローラ型剥離部材など、径精度が良好ではない熱可塑性組成物層を有する下流側のローラ型剥離部材から画像形成物質を除去するために好ましい他のクリーニング手段は、所定の厚みの画像形成物質を残す転移クリーニング部材を用いるものである。
図19に、所定の厚みの画像形成物質を残す転移クリーニング部材を用いたクリーニング手段の例を示す。図19において、下流側のゴム弾性体層82及び熱可塑性組成物層85を有するローラ型剥離部材86から画像形成物質を除去するためのクリーニング部材は転移クリーニング部材92であり、クリーニング部材92から画像形成物質を除去するためにブレード93が設けられる。転移クリーニング部材92の構成は最上流のローラ型剥離部材のクリーニングに用いられる、図16におけるクリーニング部材72やブレード73と同様な材料や形状であり、プロセス条件も同様である。ただし、最上流のローラ型剥離部材71のクリーニングと異なるのは、図19の構成では、転移クリーニング部材92とブレード93との間には、図示していないギャップ部材で、両者が当接しないように構成されているか、ブレード部材93の一部のみが当接し、転移クリーニング部材92の表面に所定の厚みの画像形成物質が残るように構成されていることである。ギャップ部材としては、転移クリーニング部材92の長さをローラ型剥離部材86よりも長くして、ローラ型剥離部材86からはみだす端部の径を中心部より大きくしたものとすることができる。また、ブレード93の端部にギャップ部材を接合してもよい。更に、ブレードの転移クリーニング部材92との当接部全体に波形などの凹凸を設けたり、転移クリーニング部材92の表面に切削加工等により凹凸を設けても良い。
転移クリーニング部材の表面に下流側ローラ型剥離部材86の熱可塑性組成物層の所定の厚みと同程度の厚みの画像形成物質を残すことにより、間接的にローラ型剥離部材86上の熱可塑性組成物層の厚みを所定の範囲にたもつことが可能となる。
図19の下流側の熱可塑性組成物層を有するローラ型剥離部材86のクリーニング手段の例において、ローラ型剥離部材86と転移クリーニングローラ92の間には、ギャップ部材を設ける必要はなく、ほぼ一定圧でニップを形成しておく。これにより、比較的径精度の悪いローラ型剥離部材を用いても、表面の熱可塑性組成物層の厚みを所定の範囲に保ち易くなる。
このクリーニング部材に所定厚みの画像形成物質を残してローラ型剥離部材86上の画像形成物質を除去する手段も、被記録材の画像除去処理するごとに実行する必要はなく、前記のような所定の間隔で間欠的に行うことが好ましい。従って、ローラ型剥離部材86と転移クリーニングローラ92とは通常の画像除去処理時には、当接しないように解除する手段や制御する手段(図示していない)を設けておくことが好ましい。また、通常の画像除去処理時には、転移クリーニング部材92の加熱手段98の電源をオフにしておくことが好ましいことも他の手段を用いる場合と同様である。
下流側の熱可塑性組成物層を有する剥離部材としては、上記のようにゴム弾性体層を有する剥離部材は好ましい例である。下流側の熱可塑性組成物層を有する剥離部材として好ましい他の例は、熱可塑性組成物層の下層の径精度が高いローラ型剥離部材である。径の精度が高く、軸方向の径の差や偏心がなければ、最上流側の剥離部材で用いたクリーニング部材、剥離部材とクリーニング部材との間隔を一定に保つギャップ部材を用いることにより、剥離部材上の熱可塑性組成物層を所定の範囲に保ちながら、被記録材から剥離部材に転写された画像形成物質を除去することが可能となる。
ゴム弾性体を有する場合には、ゴム弾性体層を薄くしないと必要な径精度は得られ難い。必要な径精度を得るためには、熱可塑性組成物層の下層が剛体であるローラ型剥離部材が好ましい。図18の(b)は、剛体ローラ部材88上に熱可塑性組成物層85を設けた剥離部材の例を示している。剛体ローラ部材88の具体例は、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属部材である。但し、金属のように熱伝導度が高い材料からなる基体上に熱可塑性組成物層85を設けた剥離部材を用いると、画像除去特性が悪く、完全に画像を除去仕切れない場合がある。この理由は、最上流側のローラ型剥離部材の説明にも記したように、金属材料の熱伝導率が大き過ぎるために、被記録材と剥離部材とが重ね合わされ加圧される個所(剥離部材と加熱・加圧部材とが形成するニップ部分)と被記録材と剥離部材とを分離する部分とで温度差がほとんどなく、分離時に被記録材上の画像形成物質の温度及び剥離部材上の熱可塑性組成物層の温度が高過ぎて、それらが凝集破壊するために、画像形成物質の一部が被記録材上に残留してしまったり、剥離部材上の熱可塑性組成物層が被記録材に逆転写してしまうためと推定される。従って、熱可塑性組成物層の下層は熱伝導率が0.5W/mK以下の断熱性素材を用いることが好ましい。また、断熱層は0.3mm以上であることが好ましい。
具体的には、下流側のローラ型剥離部材88として、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等耐熱性の高分子材料でできたパイプ材料、無垢材料を切削することにより、または、これらの高分子材料を用い成型することにより、剥離部材基体を製造し、その基体の上に熱可塑性組成物層を設けた構成とすることができる。また、基体材料として、ガラス、セラミックス材料も用いることができる。
図18の(c)の例のように、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属部材でローラ基体81を形成し、その上に前記の断熱性材料を塗布、塗布後硬化、成型等の製造方法で設けて、断熱体層89を形成し、その上に熱可塑性組成物層85を設けてもよい。断熱体層89を形成する材料としては、発泡させたり、マイクロバルーンを混入したりして、より熱伝導度を低下した材料を用いると、表面の熱可塑性組成物層85のみが加熱されたり冷却されたりするので、高速で画像除去処理することが可能になる。
上記のような剛体で熱可塑性組成物層の下層を形成すると、切削加工や成型により、精度の高いローラ型剥離部材を形成することができる。
最上流のローラ型剥離部材の説明で記したように、剥離部材を剛体で形成すると、対向してニップを形成するための加熱・加圧部材に弾性体を使用しなければならなくなる。ゴム弾性体は熱伝導度が低く、伝えられる熱量か小さくなるために、加熱・加圧部材にゴム弾性体を用いると画像除去処理速度を速くし難い。しかしながら、下流側の画像除去手段においては、上流側の画像除去手段において、被記録材や被記録材上の画像形成物質が加熱され、温度が高くなっているので、画像除去処理において、最上流の画像除去手段に比較して、熱の供給量を少なくしても、同一速度で画像除去処理することができる。それ故、下流側の画像除去手段においては、加熱・加圧ローラにゴム弾性体を設ける場合でも、ニップ幅を小さくできるので、その厚みを最上流の剥離部材に使用するほどの厚みにする必要はなく、比較的、厚みの小さいものとすることができる。具体的には、剛体よりなるローラ型剥離部材を下流側の画像除去手段で用いる場合、加熱・加圧ローラのゴム弾性体層の厚みは、0.2〜5mm、好ましくは、0.5〜2mmである。また、ゴム弾性体層のゴム材料には、極力、熱伝導度の高い顔料を添加して、熱伝導度の高い材料を用いることが好ましい。
下流側の剥離部材を径精度の高いローラ型剥離部材で構成すると、最上流側のローラ型剥離部材のクリーニングに用いたクリーニング部材及びクリーニング手段を用い、クリーニング部材と剥離部材との間のギャップを一定間隔に保つことにより、画像除去処理を継続して行っても、剥離部材上に形成した熱可塑性組成物層を所定の厚みに保つことができる。
剥離部材とクリーニング部材との間のギャップを一定に保つことにより、剥離部材上の熱可塑性組成物層の厚みを所定の範囲に保つ場合にも、下流側剥離部材については、間欠的にクリーニング動作を行うように画像除去装置を制御することが好ましい。
次に、本発明に用いることのできる被記録材について説明する。
普通紙の上に設けられた画像を熱転写法で除去するために、熱転写処理に先だち画像が形成された普通紙に界面活性剤、水、有機溶剤等を含む液体組成物を付与する方法が数多く提案されている。しかしながら、かかる方法を用いる画像除去装置は、少なくとも均一に液体組成物を被記録材に付与する手段が必要となり、更に、付与した液を乾燥する手段が必要となるなど、構成が複雑で、液の供給などの保守が必要となる。また、被記録材に均一に液体を付与するために画像除去装置を水平に設置する必要が生じたり、液を乾燥するために大きな消費電力が必要となったり、カラー画像のように被記録材上に画像形成物質の膜が隙間無く形成される場合に液が画像と紙との界面に浸透せず画像形成物質の除去が困難となる等、数々の欠点を有する。
本発明の画像除去装置は、表面近傍に画像形成物質に対する接着力を低下する組成物が付与されたリユーザブル被記録材に形成した画像を、前記の液体組成物を付与することなく除去する方法で画像の除去が良好にできる。従って、本発明の画像除去装置、画像形成除去システムは、リユーザブル被記録材を用いて、液体を付与する手段を設けることなく使用することが好ましい。
液体組成物などの画像除去促進組成物を付与することなく、画像が除去できるリユーザブル被記録材については既に多くの提案がなされている。
画像形成物質に対する接着力を低下するための組成物の例の一つとしては界面活性剤が挙げられる。例えば、特許文献6には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、分子中に炭素数の総数が8個以上の直鎖あるいは分岐しているアルキル基を含有する界面活性剤を付与した被記録材が、剥離液を用いることなく、熱転写法で画像形成物の除去ができることが開示されている。より具体的には、フッ素系界面活性剤として、フロロアルキルカルボン酸塩、フロロアルキルスルホン酸塩等のアニオン系、フロロアルキル基を導入したベタイン等の両性系界面活性剤、シリコン系界面活性剤として、エポキシ変性、アルキル変性、アラルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、ポリエーテル変性のシリコンオイル等、炭素数の総数が8個以上の直鎖あるいは分岐しているアルキル基を含有する界面活性剤として、アルキルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルアミン誘導体、4級アンモニウム塩、イミダゾリン、イミダゾリウム塩、等のカチオン系等を用いることができることが開示されている。
シリコン化合物を表面に付与した被記録材の例は、特許文献7、特許文献8などに開示されている。シリコン系化合物の具体例としては、シリコン樹脂、シランカップリング剤が挙げられている。
更に、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、ワックスなどを被記録材に付与しても画像形成物質の接着力を低下する効果を有する。
また、オレフィン−無水マレイン酸重合体のオレフィン成分として、特に、α位に二重結合を有し、炭素数10〜炭素数20のオレフィン単量体を用いて重合させた高分子化合物を用いることもできる。
リユーザブル被記録材は、上記で例示した画像形成物質に対する定着性を低下せしめることのできる化合物を基体となる紙やフィルムに付与したものである。紙などの凹凸の比較的大きな素材を基体として使用する場合は、単に画像形成物質に対する定着性を低下せしめる化合物のみを付与するだけではなく、リユーザブル被記録材の凹凸を小さくするために、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色顔料やラテックス、スチレン−ブタジエン重合体エマルジョン、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、でんぷん、酢酸ビニル重合体エマルジョン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、アラビアゴム等の高分子化合物を、前記の画像形成物質に対する定着性を低下するための組成物と混合して付与するか、前記の画像形成物質に対する定着性を低下するための組成物を基体に付与する前に付与することができる。
本発明の画像除去装置及び画像形成除去システムで使用できるリユーザブル被記録材で、特に好ましい構成は、画像形成物質の定着性を低下せしめる化合物としてオレフィン−無水マレイン酸重合体を用いたものである。オレフィン−無水マレイン酸重合体のオレフィン成分として、特に、α位に二重結合を有し、炭素数10〜炭素数20のオレフィン単量体を用いて重合させ、ケン化した水溶性の重合体を用いることにより、一般の電子写真装置で画像を形成した場合に、定着性と画像除去特性のバランスの良好なリユーザブル被記録材が得られる。また、画像の除去と再画像形成のサイクルを繰り返して使用しても、安定した画像の定着性と画像の除去特性が得られる。
本発明の画像除去装置を用いると、上記のリユーザブル被記録材に形成された画像は、画像除去促進液を付与することなく、熱転写によりリユーザブル被記録材から除去することができる。
それ故、本発明の画像除去装置では、画像形成物質の被記録材への接着力を低下せしめる液体組成物を被記録材に付与する手段を設けないことが好ましい。本発明の画像除去装置をリユーザブル被記録材上に形成された画像を除去するために用いることにより、カラー画像の除去が可能となるばかりではなく、液体の浸透や乾燥に時間を要することもないので、高速の画像除去処理が可能となり、且つ、消費電力を小さくできる。また、本発明の画像除去装置は、画像除去能力や被記録材と剥離部材との分離能力が高いために、比較的画像形成物質との接着性が高い、すなわち画像形成物質の定着性が高いリユーザブル被記録材を用いても、被記録材を剥離部材から分離し、画像を完全に除去することが可能となる。
次に、本発明に用いることのできる画像形成物質組成について説明する。
本発明の画像除去装置において被記録材から除去できる画像形成物質の特性としては熱可塑性があること、剥離部材に対する接着性を有することが必要条件である。被記録材と剥離部材とを重ね合わせて加熱・加圧することで、画像形成物質は軟化して塑性を示す必要がある。
本発明の画像除去装置及び画像形成除去システムで使用できる画像形成物質の具体例は、一般的な電子写真方式の画像形成装置除去で用いられている粉体トナーである。熱転写プロセス、インクジェットなどの電子写真の他のプロセスで使用される画像形成物質であっても、軟化温度、粘弾性などの熱特性や画像形成時の単位面積当たりの被記録材に対する画像形成物質の付着量が、一般的な電子写真方式の画像形成装置で用いられている粉体トナーと同様なものであれば、原理的に同様に被記録材より除去が可能である。
本発明の画像除去装置及び画像形成除去システムで使用できる画像形成物質に用いられる材料を、より具体的に挙げると、主成分を熱可塑性樹脂とすることが好ましく、熱可塑性樹脂としては、カルボン酸として、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ピロメリット酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘミメリト酸、メロファン酸、トリメシン酸、プレーニト酸、トリメリット酸などの1種または2種以上を用い、多価アルコールとして、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルジオール、ヘキサメチレンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ペンタグリセロール、ペンタエリトリトール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、ピナコール、グリセリン、エーテル化ジフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ベンゼントリオール、フロログルシノール、ベンゼンテトラオールなどの1種または2種以上を用いて縮重合したポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、スチレン−ジエチルアミノエチルメタクリレート共重合体、スチレン−ジエチルアミノプロピルアクリレー共重合体ト、スチレン−エチレングリコールメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は、画像形成物質の組成中50〜98重量%の範囲で用いることが好ましい。
画像形成物質に用いる色材としては、一般の電子写真方式の画像形成装置に画像形成物質に用いられている下記の色材を例示することができる。すなわち、カーボンブラック、酸化鉄などの黒顔料、C.I.ビグメント・イエロー12、C.I.ビグメント・イエロー13、C.I.ビグメント・イエロー14、C.I.ビグメント・イエロー15、C.I.ビグメント・イエロー17、C.I.ビグメント・イエロー93、C.I.ビグメント・イエロー94、C.I.ビグメント・イエロー138、C.I.ビグメント・イエロー155、C.I.ビグメント・イエロー156、C.I.ビグメント・イエロー180、C.I.ビグメント・イエロー185、等のイエロー顔料、C.I.ビグメント・レッド2、C.I.ビグメント・レッド3、C.I.ビグメント・レッド5、C.I.ビグメント・レッド16、C.I.ビグメント・レッド48:1、C.I.ビグメント・レッド53:1、C.I.ビグメント・レッド57:1、C.I.ビグメント・レッド122、C.I.ビグメント・レッド123、C.I.ビグメント・レッド139、C.I.ビグメント・レッド144、C.I.ビグメント・レッド166、C.I.ビグメント・レッド177、C.I.ビグメント・レッド178、C.I.ビグメント・レッド222、等のマゼンタ色材、C.I.ビグメント・ブルー15、C.I.ビグメント・ブルー15:2、C.I.ビグメント・ブルー15:3、C.I.ビグメント・ブルー16、C.I.ビグメント・ブルー60、等のシアン色材等、電子写真用トナーの色材として公知の色材を挙げることができる。これらの色材は、画像形成物質の組成中1〜15重量%の範囲で用いることが好ましい。
本発明の画像除去装置における熱可塑性組成物層及び画像形成除去システムで用いる画像形成物質には、離型剤、特にワックス含むことが好ましい。離型剤、ワックス成分も、熱可塑性樹脂や色材と同様に、電子写真装置などに用いる画像形成物質に添加する離型剤、ワックスをそのまま用いることができる。
離型剤、ワックスは、画像形成物質全体の1〜10重量%程度の範囲で添加することが好ましい。画像形成物質に含有せしめることのできる離型剤、ワックスの具体例としては、フッ素系、シリコン系の高分子化合物、長鎖アルキル基を側鎖に有する有機高分子化合物、カルナバワックス、モンタンワックス、密ロウ、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックス、高級アルキルアルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸のエステル類、高級アルキルアミド類、等の60〜110℃に融点を持つ、高分子化合物、ワックス類を挙げることができる。
(画像除去装置実施例 1)
図20は本発明の第1の実施の形態に係る画像除去装置の構成を示す概略断面図である。同図において、111は加熱・加圧ローラであり、内部にハロゲンランプ、赤外線ランプなどから構成される加熱ヒータ112を有している。加熱・加圧ローラ111は、例えば、直径35mm、厚み0.6mmのアルミニウムやステンレス、鉄等金属からなるローラであり、その表面は、画像形成物質やごみが付着しないようにポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂等のフッ素樹脂などからなる付着防止層が設けられている。図20では、加熱・加圧ローラ111の加熱源として、ハロゲンランプなどの赤外線を発生する光源を用いているが、IH加熱用電磁コイルを用い、ローラに渦電流を発生させて加熱すると、温度の立ち上がりを速くできる点で有利である。
図示していない表面温度検知用センサが加熱・加圧ローラ111の表面に接するように配置され、センサにより加熱・加圧ローラ111の表面の温度が検知され、検知された温度は図示していない制御手段に入力され、該制御手段により加熱ヒータ112への出力を制御して、加熱・加圧ローラ111表面温度は、一定の設定値に保持されるように構成されている。加熱・加圧ローラ111の設定温度は、除去しようとする画像形成物質の軟化温度、画像除去処理速度などに依存するが、一般に電子写真で使用されている画像形成物質を、20〜120mm/secの速度で除去する場合、90〜150℃、特に、100〜130℃に設定するのが好ましい。
図20の画像除去装置例における、最上流のローラ型剥離部材80は、図17の構成のものであり、基体81、ゴム弾性体層82、有機高分子化合物層83を有するものである。その外径は、例えば、直径35mmとし、基体として、例えば厚み2mmのアルミニウムやステンレス、鉄等の金属バイプを用いることができる。ゴム弾性体層として、厚み5mm、ゴム硬度40°の発泡シリコンゴム、有機高分子化合物層83として、例えば、厚み50μmのポリイミドを用いる。基体81とゴム弾性体層82との間、ゴム弾性体層82と有機高分子化合物層83との間には、それぞれ薄層のシリコン系接着剤が用いられて、ゴム弾性体層や有機高分子化合物層は基体に固定されている。
ローラ型剥離部材80は、図示していない駆動手段により、例えば、周速度20〜120mm/sec程度の速度で駆動される。ローラ型剥離部材80とニップを形成する加熱・加圧ローラ111には駆動手段を設けず、加熱・加圧ローラ111がローラ型剥離部材80と連れ回りするように構成する。
ローラ型剥離部材80と加熱・加圧ローラ111との間には、図示していないバネ、水圧、空気圧などの加圧手段が設けられ、画像除去する被記録材101とローラ型剥離部材80とが重ねられた状態で加圧されるように構成されている。適当な加圧力は、処理する紙幅や画像除去処理速度により異なるが、ローラの実効幅を190〜320mmとする場合、ローラ軸の両端に、それぞれ50〜200Nの力を加え、ニップの面圧で1×105〜6×105Pa、ニップ幅が2〜13mm程度になるように設定することが好ましい。
最上流の剥離部材のクリーニング手段は、例えば図5の構成が使用される。クリーニング部材42は、例えば、直径30mmのローラであり、厚み0.7mmのアルミニウムやステンレス、鉄等金属よりなり、その表面には、螺旋の連続溝が設けられている。溝形状は、例えば、溝の深さ 0.2mm、傾き45°であり、ピッチが0.5mmとなるように40条の溝を設けている。クリーニング部材42の内部には、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどから構成される加熱手段48が設けられている。図示していないクリーニング部材42の表面温度検知用センサによりクリーニング部材42の表面の温度が検知され、検知された温度を図示していない制御手段に入力し、該制御手段により加熱手段48への出力を制御して、クリーニング部材42の表面温度は一定の設定値に保持されるように構成されている。但し、クリーニング部材42の駆動速度を剥離部材よりも速く設定すると、剥離部材に被記録材より転写した画像形成物質がクリーニング部材42の端部近傍に転移するので、クリーニング部材42の表面温度検知用センサは、熱電対、白金抵抗、サーミスタなどの接触型センサを用いる場合、クリーニング部材42の端部近傍で、画像形成物質が転移してこない領域に設けることが好ましい。クリーニング部材42の設定温度は、除去しようとする画像形成物質の軟化温度、画像除去処理速度、クリーニング部材42の表面形状などに依存するが、一般に電子写真で使用されている画像形成物質を、20〜120mm/secの速度で除去する場合、前記の、加熱・加圧ローラ111の設定温度と同じか30℃程度高く設定することが好ましい。
クリーニング部材42は、図示していない駆動手段で回転される。クリーニング部材42は、ローラ型剥離部材80に当接しながら、ローラ型剥離部材80の表面を摺動するように駆動される。クリーニング部材42の搬送方向は、ローラ型剥離部材80と正逆いずれの方向に回転してもよいが、図20では、クリーニング部材42をローラ型剥離部材80と逆(カウンター)方向に回転させる例を示している。クリーニング部材42の駆動速度は、ローラ型剥離部材80の回転速度、画像形成物の温度特性、クリーニング部材素材の熱伝導度等の要因で適正な範囲は異なるが、概ね、ローラ型剥離部材80の周速度の2倍〜20倍の周速度で駆動することにより、良好に、被記録材101からローラ型剥離部材80に転写した画像形成物質をクリーニング部材の端部に寄せて除去することができる。
クリーニング部材42の端部近傍に寄せられた画像形成物質は、図5に例示したブレード機構と同様なブレード43でクリーニング部材42から剥ぎ取られ、回収画像形成物質131は画像形成物質回収容器130に回収される。
ローラ型剥離部材80とクリーニング部材42との間には、図示していないバネ、水圧、空気圧などの加圧手段が設けられる。適当な加圧力は、クリーニング部材42の径の表面形状、ローラ型剥離部材80及びとクリーニング部材42の径、ローラ型剥離部材80のゴム弾性体層の硬度及び厚み、剥離部材に転写される画像形成物質の量、クリーニング部材42の設定温度、周速度などにより異なるが、ローラ軸の両端に、それぞれ5〜70Nの力を加え、ニップ幅が0.5〜4mm程度になるように設定することが好ましい。画像形成物質が端に寄る速度は、加圧力を大きくしたり、クリーニング部材42の回転速度を大きくすることにより、速く寄るので好ましいが、圧や速度を高くすると、駆動の負荷が大きくなり過ぎ、大きな容量のモータが必要となったり、ローラ型剥離部材80やクリーニング部材42の寿命が短くなったりするので、それらが高くなり過ぎないように設定することが好ましい。
図20において、下流側画像除去手段において、ローラ型剥離部材86は、図18の(a)で示した構成の剥離部材であり、上流側ローラ型剥離部材80上に熱可塑性組成物層85を設けた構成となっている。
下流側画像除去手段における加熱・加圧ローラ121の構成は、上流側と同様であり、詳細な説明は省略する。但し、下流側の加熱・加圧ローラ121の設定温度、加圧力は、既に被記録材が上流側で加熱されて温度が高くなっていることや、被記録材上の画像がほとんど残っていないことから、上流側に比較して低くすることができる。図20の画像除去装置において、下流側のローラ型剥離部材86のクリーニング手段は、図19を用いて説明したものが用いられている。すなわち、クリーニング部材92とブレード93との間には、ギャップが設けられていて、クリーニング部材92上には、所定厚みの画像形成物質層(熱可塑性組成物層)88が形成される。図19のクリーニング手段については、既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
画像が形成された被記録材101は、図20の画像除去装置において、画像除去しようとする面を下向きにして、給紙カセット100内にセットされる。画像が形成された被記録材101は、ピックアップローラ102により、一枚ずつ分離され、給紙ローラ対103により、上流側の画像除去手段に搬送される。被記録材101上の画像形成物質は、加圧ローラ111とローラ型剥離部材80とが形成するニップ内で加熱・加圧され、軟化し、塑性を示すようになる。塑性となった画像形成物質は、ローラ型剥離部材80の表面に接着する。被記録材101とローラ型剥離部材80とは、分離爪、分離板等から選択されて設けられる分離部材117で分離されて、下流側の画像除去処理部に搬送される。分離のし易さは、用いる被記録材101と画像形成物質との接着力の強さ、被記録材上の画像占有面積比率等に依存するが、上流側のローラ型剥離部材80には、クリーニングローラ42が定圧で押し付けられているため、クリーニング後のローラ型剥離部材80の表面にはほとんど画像形成物質が残っていないこと、ローラ型剥離部材80には、ゴム弾性体層があることから、被記録材の先端がニップを通過した後、剥離部材から自然に離れる方向に搬送され易いため、被記録材の先端は、分離部材117でピックアップされ易く、分離は良好に行われる。但し、被記録材と画像形成物質との接着力が強い場合には、ローラ型剥離部材の有効幅を被記録材の幅よりも狭くして、被記録材の端部からベルトやワイヤを用いて強制的に分離する手段を用いることもできる。また、ノズルやスリットから被記録材の先端部に同期して空気などの気体を吹き付けて分離する手段を用いても良い。
被記録材101をローラ型剥離部材80から分離する際に、被記録材上の画像形成物質はローラ型剥離部材に転写し、被記録材に形成された画像の中で、べた画像、文字画像、中から高濃度の階調画像等、大半の画像は上流側画像除去手段で被記録材から除去される。
上流側の画像形成物質除去手段で大半の画像形成物質が除去された被記録材は、加熱・加圧ローラ121とローラ型剥離部材86とが形成するニップに搬送される。上流側の画像除去処理で取り残された被記録材上の画像形成物質は、再度、加熱・加圧されローラ型剥離部材86の表面に接着する。ローラ型剥離部材86上に設けられた画像形成物質層(熱可塑性組成物層)85も軟化して塑性となっていること、被記録材表面の高さの高い画像が上流側の画像除去処理によりなくなっていることから、被記録材にある程度の凹凸があっても、残画像とローラ型剥離部材86とは良好に密着、接着し、被記録材上の画像は完全に除去される。加熱・加圧ローラ121とローラ型剥離部材86とが形成するニップを通過した被記録材は、分離爪、分離板等から選択される分離部材104で分離される。下流側の加熱・加圧ローラ121の設定温度は上流側よりも低くしても画像を完全に除去することが可能であり、低く設定することにより、被記録材がローラ型剥離部材86表面の画像形成物質層85と強く接着しないので、被記録材とローラ型剥離部材との分離抵抗力は比較的弱くすることができる。
図20の画像除去装置例において、2段目の画像除去手段により画像が除去された被記録材108は、分離部材104で分離された後、被記録材搬送ローラ対105、106を経て、排紙トレー107にストックされる。なお、109は被記録材の光学濃度を検知するためのラインセンサであり、センサの出力は図示していない制御装置に入力され、画像除去処理された被記録材上に所定濃度以上の残像があるか、所定面積比率以上の残像があるか、画像と認識されるバターンが残存しているかなどの判断がなされる。残像が所定設定を越える場合には、例えば、図示していない駆動装置で、排紙トレー107の位置を幅方向にずらして、残画像がある被記録材が、残画像が無いと判定された被記録材とずれた位置にストックされるように排出される。このような構成にすることにより、被記録材の再使用に際して、ユーザは、残画像のある被記録材を容易に識別、分別することが可能となる。
図20の画像除去装置例において、下流側の画像除去処理手段におけるクリーニング手段は、図19について説明したように、間欠的に動作せしめるが、一定の枚数のシート状被記録材の画像除去処理をする毎にクリーニング動作をするのではなく、センサ109で検出される画像残りが、所定値を越えたり、連続して所定枚数を超える被記録材に残画像が検出された場合に、クリーニング動作を行うように設定すると、画像除去処理する被記録材上の画像占有面積や、中間調画像の占有面積などの変化があっても、クリーニングが必要な時のみにクリーニング動作を行うことができる。
また、下流側のローラ型剥離部材に、被記録材上の画像形成物が多量に転写して、画像形成物質層85が厚くなったり、ローラ径の幅方向にむらが生じると、被記録材のジャムや皺が発生しやすくなる。それ故、ジャムや被記録材の皺を検出するための検知手段を設け、ジャムが所定数を越えて発生したり、連続して皺が生じる場合に、下流側ローラ型剥離部材のクリーニング動作を行うように設定することも好ましい。
(画像除去装置実施例 2)
図21は本発明の第2の実施の形態に係る画像除去装置の構成を示す概略断面図である。同図において、上流側の画像除去処理手段における、加熱・加圧ローラ71、ローラ型剥離部材80の構成は、第1の実施の形態の画像除去装置と同様であり、その他の構成も含め、類似する構成については、第1の実施の形態の画像除去装置と同一の参照符号を付している。
図21の第2の実施の形態の画像除去装置においては、クリーニング手段が、図16について説明した、ローラ型剥離部材80(図16においては71)から画像形成物質をクリーニング部材72に転移する構成となっている。図16のクリーニング手段の構成、作用については既に説明したのでここでは省略する。
図21の第2の実施の形態の画像除去装置の下流側画像除去手段においても、表面に画像形成物質層85を有するローラ型剥離部材86が用いられる。この下流側のローラ型剥離部材86の再生処理操作は、剥離部材上の画像形成物質層(熱可塑性組成物層)85を除去した後、熱可塑性組成物層が設けられている媒体361から熱可塑性組成物層をローラ型剥離部材に転写してなされるが、この再生処理を行うための構成や作用についても既に説明したので、ここでは詳細については省略する。
(画像除去装置実施例 3)
図22は本発明の第3の実施の形態に係る画像除去装置の構成を示す概略断面図である。同図の第3の実施の形態の画像除去装置においては、下流側の画像除去手段としてゴム弾性体層の無い剛体からなるローラ型剥離部材127が用いられ、加熱・加圧ローラ221にゴム弾性体層223が設けられている構成となっている。クリーニング部材は、上流側、下流側とも、固定された端寄せクリーニング部材が用いられているが、上流側のローラ型剥離部材に対しては、クリーニング部材16が定圧でローラ型剥離部材80に押圧されるように設けられている。下流側のクリーニング部材216とローラ型剥離部材との間には、ギャップが設けられ、ローラ型剥離部材表面に熱可塑性組成物層を残し、被記録材からローラ型剥離部材に転写された画像形成物質が、ローラ型剥離部材から除去され回収される構成となっている。
図22の第3の実施の形態の画像除去装置についてより詳細に説明する。図22の第3の実施の形態の画像除去装置においては、上流側の画像除去手段の加熱・加圧ローラ111及びローラ型剥離部材80は、第1の実施の形態の画像除去装置、第2の実施の形態の画像除去装置と同様の構成である。上流側のクリーニング手段は、図14で説明したものであり、固定された端寄せクリーニング部材16及びブレード67を用いて、ローラ型剥離部材80(図14においては61)に被記録材より転写された画像形成物質を除去し回収する。
下流側の画像除去手段の加熱・加圧ローラ221は、パイプ状のアルミニウム、ステンレス、銅等の金属等から構成される基体224、シリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム弾性体層223より構成される。加熱・加圧ローラ221の内部には、第1の実施の形態の画像除去装置、第2の実施の形態の画像除去装置と同様に、加熱手段222が設けられている。このように、加熱・加圧ローラ221の内部に加熱手段を設ける場合には、基体224は、画像除去処理を速やかに行うために、基体、ゴム弾性体層の熱伝導性が極力良いことが好ましい。それゆえ、基体224は、金属等の熱伝導度の高い材料を用い、耐久性が保たれる範囲で、厚みが小さいことが好ましい。基体224の厚みは、0.4〜2mm程度とすることが好ましい。ゴム弾性体層はローラ型剥離部材127との間で、被記録材上の画像形成物質をローラ型剥離部材に接着するために必要なニップを形成できる範囲で厚みが小さいことが好ましい。ゴム弾性体層223の厚みは、0.3〜3mm程度とすることが好ましい。また、ゴム弾性体層には、熱伝導度の高い顔料を添加し、熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。
加熱・加圧ローラ221には、ゴム弾性体層の上に、更に、厚み20〜70μm程度のポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂等のフッ素系樹脂等を設けて、画像形成物質などがローラに付着することを防止する構成とすることもできる。
下流側画像除去手段に用いられるローラ型剥離部材127は、下流側のローラ型剥離部材として使用できる構成例として既に説明した図18の(c)の構成である。すなわち、断熱層89及び熱可塑性組成物層85が設けられたゴム弾性体層のない、剛体のローラ型剥離部材である。上流側画像除去手段と同様に、加熱・加圧ローラ221とローラ型剥離部材127との間には、図示していない加圧手段により圧が印加される。
下流側のクリーニング部材216も固定された端寄せクリーニング部材であり、上流側のクリーニング部材16と同一のものが使用できる。上流側の画像除去手段においては、クリーニング部材16がゴム弾性体層を有するローラ型剥離部材80に対して、ほぼ一定圧力で当接するように設けられているため、被記録材からローラ型剥離部材80に転写した画像形成物質は、ほとんど完全にローラ型剥離部材80から除去される。それに対して下流側のクリーニング部材216は、径精度の高い剛体のローラ型剥離部材127と所定のギャップをもって設置されている。径精度は、切削加工により、±10μm以下程度に仕上げることが可能である。このギャップにより、ローラ型剥離部材127上に形成されている熱可塑性組成物層85は、画像形成物質除去処理を続けても、所定の厚みの範囲に保たれる。ローラ型剥離部材127とクリーニング部材216にギャップを設けるためのギャップ部材例を図23に示す。図23の(a)は、ローラ型剥離部材127の軸の両端近傍にリング状ギャップ部材128a、128bを取り付けた例である。断熱層89を有する剛体のローラ型剥離部材127の軸の両端近傍に、分離部材124a、124b及びブレード267をローラ型剥離部材127の側面に当接するために設けた溝部129の外側に、ローラ型剥離部材127の断熱体層89の外径よりも2Dだけ直径が大きいクリーニング部材当接部128a、128bを設け、この部分にクリーニング部材216を当接させることにより、ローラ型剥離部材127とクリーニング部材216との間のギャップをDに保つ。直径が大きいクリーニング部材当接部128a、128bは、ギャップ部材としてリング状の部材を接着などにより取り付けることができる。また、切削加工等により、直径が大きい部分128a、128bよりも2D分だけ、断熱体層の直径が小さくなるように加工してもよい。
図23の(b)は、クリーニング部材16の端部近傍にギャップ部材217a、217bを接着や切削加工等により設けたギャップ部材の別の例で、図23の(a)におけるローラ型剥離部材127のクリーニング部材との当接部128a、128bを断熱体層89と同じ径とした時には、ギャップ部材217a、217bの厚みにより、ローラ型剥離部材127とクリーニング部材216間のギャップが設定される。
下流側のクリーニング部材16は、画像除去処理時、常時クリーニング処理をする必要がないので、間欠的にヒータ255に通電し所定の温度まで温度を上昇せしめ、剥離部材と摺動するように、図示していないクリーニング部材16の移動手段と制御手段により、退避、当接がなされる。
なお、下流側のローラ型剥離部材のように剛体のローラ型剥離部材127を用いた場合には、加熱・加圧ローラ221とのニップから出てくる被記録材は、被記録材とローラ型剥離部材との接着力が弱い場合においても、被記録材の先端がローラ型剥離部材127に巻き付くよう搬送されるので、ローラ型剥離部材127の幅を画像除去処理する被記録材101の幅よりも狭く設定し、被記録材の両端から強制分離する分離部材124a及び124bを設けることが好ましい。この分離方式の概略を図24に示す。
(画像除去装置実施例 4)
図25は本発明の第4の実施の形態に係る画像除去装置の構成を示す概略断面図である。同図の第4の実施の形態の画像除去装置においては、下流側の画像除去手段において、熱可塑性組成物層が設けられたウェッブ状剥離部材320が用いられ、下流側画像除去手段にはクリーニング手段が設けられていない。上流側の画像除去手段は、第2の実施の形態の画像除去装置と同様である。すなわち、ローラ型剥離部材としてゴム弾性体層82と有機高分子化合物層83とを有するローラ型剥離部材80が用いられ、ローラ型剥離部材80から画像形成物質を転移して除去するクリーニング部材72等が設けられている。上流側の画像除去手段の構成や作用は、第2の実施の形態の画像除去装置と同様なので、ここでは詳細な説明を省略する。
図25の第4の実施の形態の画像除去装置においては、下流側の画像形成物質除去処理部にウェッブ状剥離部材320を用いている。ウェッブ状剥離部材320は、セルロース繊維を主体とする紙、プラスチックフィルムなどの基体の上に熱可塑性組成物層が設けられたものである。下流側の剥離部材に転写される画像形成物質の量は、最上流の剥離部材に転写される画像形成物質の量に較べて、極めて少ないため、下流側のウェッブ状剥離部材320を用いて、クリーニング処理なしで、多数枚の被記録材から画像除去処理を実施することが可能である。
ウェッブ状剥離部材320は、巻芯325、326に多数の被記録材が処理できるように巻かれている。加圧ローラ328は直径が20mm程度で、厚み1〜6mm程度の硬度10〜60°程度のシリコンゴムなどからなるゴム弾性体層を有するローラであり、図示していないバネ、水圧、空気圧などの加圧手段により、加熱・加圧ローラ111に対して加圧されて、加熱・加圧ローラ311との間でニップを形成している。加圧ローラ328は、直接駆動されず、加熱・加圧ローラ311の回転に従って、摩擦により連れ回りする。ウェッブ状剥離部材320は、加圧ローラ328と加熱・加圧ローラ311とが形成するニップ内で、両者に挟まれ、摩擦力で搬送される。上流側で画像形成物質処理された被記録材は、加熱・加圧ローラ111と加圧ローラ328とがニップを形成する個所で、ウェッブ状剥離部材320と被記録材上の画像形成面とが重なるように重ね合わされ、加熱・加圧される。上流側画像除去処手段で画像除去処理された後、被記録材に残る画像形成物質はウェッブ状剥離部材320と接着する。
ウェッブ状剥離部材320は、巻芯326から、加熱・加圧ローラ311と加圧ローラ328とが形成するニップ部、直径が10mm程度の小径である分離ローラ329を経るように搬送され、巻芯325に巻き取られるように搬送される。ウェッブ状剥離部材320と圧接せしめられた被記録材は、小径の分離ローラ329による剥離部材の曲率変化と被記録材の剛性とにより、ウェッブ状剥離部材320から分離される。また、分離爪、分離板等より適宜選択される分離部材327は、曲率変化により分離した被記録材の先端を受け取り、被記録材がウェッブ状剥離部材320から安定して分離するように作用する。下流側のウェッブ状剥離部材320から分離された被記録材108は、他の画像除去装置実施例と同様に、被記録材搬送ローラ対105、106を経て、排紙トレー107に排出される。
ウェッブ状剥離部材320の基体の材料としては、紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフチレート、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドなど、画像除去時の加熱・加圧温度で可塑性を示さない高分子化合物のフィルムが好適に用いられる。基体の厚みは、20〜150μm程度が好適であり、特に50〜100μmが適当である。基体が薄過ぎる場合には、その剛性が弱いために、画像除去処理時に、被記録材と重ねられて加圧される際に皺が入り易かったり、寄りを防止することが困難になるという問題を生じ易い。基体が厚過ぎる場合には、ウェッブ状剥離部材320のロール325、326の体積や重量が大きくなってしまったり、画像の除去特性も劣化するという問題を生じる。
ウェッブ状剥離部材320は、基体上に熱可塑性組成物層を設けたものであるが、特に、紙ではなく、前記の高分子化合物のフィルムを基体として用いる場合には、フィルムと画像形成物質などの熱可塑性塑性物とは、熱膨張率に差があるため、画像形成物質除去処理を停止し、休止している間に剥離部材が冷却され、熱可塑性樹脂層が基体から剥離・脱落してしまうことがある。この基体からの熱可塑性組成物層の脱落を防止するには、熱膨張率が基体となるフィルム部材と熱可塑性組成物層との中間にある層を設けたり、基体となるフィルムをコロナ放電処理するなどの処理を加えて、熱可塑性樹脂層との接着性を高めることが有効である。基体として、一般に使用される紙を用い、熱可塑性組成物層として一般に用いられている電子写真画像形成装置用の画像形成物質を使用する場合には、中間層を設けたり、接着性を改善する処理を行わなくとも、画像形成物質除去処理を休止している間に、熱可塑性層が剥離・脱落してしまうことはない。また、紙は比較的安価であり、使用後、必ずしも再使用せず、焼却処理や離解処理して再生紙にする処理を行っても、コストや環境負荷が過度に大きくならないという利点がある。
下流側の剥離部材の表面に設ける熱可塑性組成物層の厚みは、剥離部材がウェッブ状になっても、前述のように5〜300μmが好ましく、特に、35〜110μmであることが好ましい。
ウェッブ状の剥離部材320は、巻芯326に巻かれていて、画像形成物質除去処理操作により、巻芯325に巻き取られる。巻芯325には、図示していない付勢機構が設けられていて、ウェッブ状の剥離部材320には弱い張力がかかるように構成されている。ウェッブ状の剥離部材320のエンド近傍には、エンドマークが付与されていて、エンドマーク検知手段323によりエンドマークが検知されると、図示していない圧解除手段により、加熱・加圧ローラ311と加圧ローラ328との間に印加されている圧力が解除され、ウェッブ状剥離部材320は、巻芯325から巻芯326に巻き戻されるように制御され、ウェッブ状剥離部材320は多数回繰り返し、画像除去処理に使用される。
画像除去装置には、ウェッブ状剥離部材320を所定の回数だけ使用したときに、ウェッブ状剥離部材320の交換を促すような表示をするように制御することができる。また、画像形成物質除去処理した後の被記録材上に残る画像形成物質の残量をセンサ109で検知して、残量が設定値を超えた時に、剥離部材の交換を促すような表示をするように制御するように制御することもできる。また、例えば、巻芯325に巻かれたウェッブ状の剥離部材320の重さを検知する手段、巻かれたウェッブ状の剥離部材320の厚みを検知する手段を設け、それらの値が所定の値を超えた時に、剥離部材の交換を促すような表示をするように制御するように制御することもでき、これらの手段により、ウェッブ状剥離部材320の交換時期をユーザに表示し、メンテナンスされることにより、画像形成物質除去装置は長期間安定した剥離特性が得られる。更に、他の実施の形態の画像除去装置と同様に、被記録材の皺の発生やジャムの発生状況を検知して、ウェッブ状剥離部材320の交換時期を判断することもできる。
使用済のウェッブ状剥離部材320は、廃棄、焼却処理することもできるが、画像除去装置の販売者などにより、回収し、工場にて、ウェッブ状剥離部材320に転写された画像形成物質を除去したり、一旦、ウェッブ状剥離部材320上の熱可塑性組成物層ごと除去した後、熱可塑性組成物層を設ける等により、再生、再使用することが好ましい。
(画像形成除去システム実施例 1)
次に、本発明の画像形成除去システムについて説明する。
図26は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成除去システムの構成を示す概略断面図である。同図に示す画像形成除去システムは、電子写真法により画像を形成する画像形成装置と本発明の画像除去装置とが一つの筐体内に納められている画像形成除去システムの一例である。図26において、画像形成除去システムは、画像形成装置ユニットIMU及び画像除去装置ユニットRUとから構成される。画像除去装置ユニットRUには、本発明の第1の実施の形態の画像除去装置と同様な構成の画像除去手段590が設けられている。
画像形成装置ユニットIMUの画像形成手段はタンデム型デジタルカラー電子写真装置として公知のものである。すなわち、同ユニットにおいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の画像が、それぞれ別の感光体531、532、533、534上に形成され、それらの各ステーションで形成された粉体画像形成物質でなる画像は中間転写体521にバイアス電圧が印加された転写ローラ561、562、563、564によって転写され、中間転写体に転写された画像は、更に、被記録材収納容器501または502から搬送される被記録材503または504に、バイアス電圧が印加された転写ローラ523により転写され、被記録材上に形成された粉体画像は、定着ローラ571と加圧ローラ572よりなる定着手段で加熱定着される。画像が定着された被記録材は、排紙ローラ対574を経て、排紙トレー575上に排出される。
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)、それぞれの画像形成ステーションは、下記のような公知の電子写真装置の要素よりなる。金属等の導電性基体の上に光導電体層やその保護層が設けられたドラムまたはベルト状の感光体531、532、533、534、図示していない、帯電ローラやワイヤ帯電器などから構成される感光体531、532、533、534を均一に帯電する手段、形成したい画像に従って均一に帯電された感光体531、532、533、534を露光する、レーザ、LED、発光体−液晶光バルブなどの図示していない光照射手段、光照射により画像に従って形成された静電潜像を粉体トナーを用いて可視画像にする磁気ローラやトナー搬送ローラを内部に有する現像器541、542、543、544、感光体531、532、533、534上に形成された粉体画像を中間転写体521に転写するための導電性ローラ561、562、563、564、図示していない転写後の感光体に残留する粉体トナーを除去するためのクリーニング手段等から構成される。
現像機に用いる画像形成物質(トナー)には離型剤としてワックスを含むトナーを用い、熱定着用熱ローラ571には、シリコンオイルを付与しない方式ようにすることが好ましい。ワックスを含有する画像形成物質を用いると、特に、下流側の熱可塑性組成物層を有する剥離部材との分離性が向上する。
これらの画像形成構成要素に加えて、必要に応じて適当な公知の要素を加えることができる。例えば、画像を転写した後の感光体531、532、533、534上の電荷を除くために、交流帯電器や光照射器などの除電手段を設けたり、感光体上に形成された粉体画像を被記録材に転写する前に均一に帯電するためのコロナ放電器を設けたり、感光体への帯電電圧を検知する手段と帯電器に印加する電圧をコントロールする手段を設けて、環境変動や繰り返し使用による劣化があっても感光体に帯電する表面電位を一定に保つような制御手段などを設けることができる。逆に、画像転写後の感光体上のトナー除去が必要ない場合には、クリーニング手段を除くことができる。
中間転写ベルト521は、ローラ522、524を内接するように設けられており、図示されていないテンション印加機構により、適当な張力が与えられている。中間転写ベルトには、必要に応じて、ブラシ、ローラ等、その表面に付着した粉体を除去する手段、被記録材に画像を転写した後の中間転写ベルトに残留する電荷を除いたり、均一にするための、除電手段、帯電手段を設けることもできる。
図26の画像形成装置ユニット例では、2つの被記録材収納容器501、502を有し、被記録材収納容器501には、上質紙などの一般の被記録材503が収納され、被記録材収納容器502には、画像形成物質に対する定着性を低下する組成物が付与されたリユーザブル被記録材504が収納される。更に、サイズの異なる被記録材や、使用できる紙種を増やすためや、送り方向(縦送り、横送り)の異なる被記録材を収納するために、被記録材の収納容器の数を増やすことができる。
ユーザは、図26においては図示していない操作パネルや、図26のような画像形成装置と接続されたコンピュータに接続されているディスプレーに表示されるユーザインターフェイスにおいて、第1の印字モードで画像形成をするか、第2の印字モードで画像を形成するかを選択することができるように制御手段、表示手段、制御ソフト、ボタンなどの入力手段等が設けられる。第1の印字モードは、ユーザが予め被記録材を再生することを前提にして印字する時に選択する画像形成モードであり、操作パネルやユーザインターフェイスにおいて、例えば、「リユース」、「ペーパーリユース」、「リユースモード」、「専用紙」、「再使用紙」「省資源」、「短期閲覧」、「短期使用」などと表示されるボタンや選択肢を設けることで選択される。第1の印字モードでは、給紙カセッ502からリユーザブル被記録材504が被記録材搬送路507を経て供給され、リユーザブル被記録材504上に画像が形成される。
センサ508はリユーザブル被記録材に付されたリユーザブル被記録材であることを識別する情報の有無を読み取るセンサである。リユーザブル被記録材には、予め、切り欠き、穴が設けられていたり、バーコードが印刷されていたり、本発明の画像除去装置で除去が可能な、リユーザブル被記録材であることを示す識別情報が付されている。センサ508は、この識別情報の有無を判断するための情報を検知し、図示していない印字制御手段に信号を送信する。印字制御手段は、例え第1の印字モード印字の指令が出されても、前記の識別情報が付されていない被記録材上には、第1の印字モードの印字は実行せず、識別情報が付されていない被記録材を、そのまま排紙トレー575に排出したり、第1の印字モードの印字に不適切な被記録材が供給されたことをユーザに通知するための情報を操作パネルやディスプレーやなどに表示する処理を実行する。このように画像形成装置にリユーザブル被記録材を識別するセンサを設けることにより、第1の印字モードで印字される被記録材に、画像形成物質に対する定着性を低下せしめたリユーザブル被記録材では無い、一般の被記録材が混入することを防止することができる。本実施例の画像除去装置では、被記録材と画像形成物質との間の接着力を低下するための手段、例えば、画像除去促進液を供給する手段等を設けていないので、一般の被記録材が混入すると、剥離部材と被記録材とを分離することは不可能になり、必然的に被記録材の搬送ジャムが発生したり、剥離部材に修復不能の障害が生じたりする。画像形成装置に、上記のようなリユーザブル被記録材を識別するセンサとセンサから入力される情報に基づいて画像形成を制御する手段を設けることにより、前記の問題の発生を未然に防ぐことができる。
第1の印字モード印字時には、図示していない印字制御手段により、ユーザより要求のあった画像を形成するとともに、第1の印字モードで印字したことを識別するための識別情報を、リユーザブル被記録材の隅などに、他の画像と同じプロセスと画像形成物質を用いて記録する。
第1の印字モードにおいては、画像形成装置のオプションとして機能する、ステープラーを使用すること、綴じ穴を開けること、両面印字を行うことなどを禁じるように制御することも、画像除去装置におけるトラブルを未然に防止できる点で好ましい。
また、第1の印字モードを優先モードとして、ユーザは何も操作しないで、自動的に第1の印字モードが選択された状態となるように制御し、ユーザが第2の印字モードで画像を形成する場合にのみに、第2の印字成モードを選択するように設定することもできる。
一方、操作パネルやユーザインターフェイスにおいて、第2の印字モードが選択されると、給紙カセッ501から、上質紙などの一般の被記録材503が供給され、その被記録材上に画像が形成される。第2の印字モードでは、第2の印字モードで画像が形成されたことを示す情報は、被記録材上に記録されない。第2の印字モードは、操作パネルやユーザインターフェイスにおいて、例えば、「定着モード」、「高定着」、「フィクスモード」、「普通紙」、「新紙」、「文書保管」、「外部配布」などと表示されるボタンや選択肢を設けることで選択される。
図26において、画像除去装置ユニットRUは、画像を除去しようとしているリユーザブル被記録材582を収納する容器581、リユーザブル被記録材582を画像除去手段590へと送り出す給紙ローラ対583、第1の印字モードで印字されたことを示す識別情報を検知するためのセンサ584、第1の印字モードで印字されたことを示す識別情報が検出されなかった被記録材586を被記録材トレー585に搬送する搬送手段588、画像除去処理したリユーザブル被記録材を画像形成装置の給紙カセットに搬送するための搬送手段589などより構成される。
この画像形成除去システム例では、画像除去手段590に供給されようとしている被記録材に、第1の印字モードで印字されたことを示す情報が検知されない場合には、図示していない分岐手段と制御手段により、被記録材は搬送手段588により被記録材は被記録材トレー585に搬送され画像除去手段590に搬送されない。
このように画像形成ユニットと画像除去装置ユニットとをシステムで用いることにより、画像除去装置で発生するジャムや剥離部材の破損などの画像除去装置や画像形成装置の障害発生の問題を解決できるとともに、画像除去の品質を確保することができる。すなわち、本発明の剥離部材、画像除去装置は、特定の画像形成物質、すなわち、特定の画像形成装置と組み合わせて使用することにより、安定した画像除去特性、剥離部材と被記録材との分離特性が得られる。また、リユーザブル被記録材も画像形成物質との接着力が一定となるように、リユーザブル被記録材も特定のものをシステムとして用いることにより、安定した画像除去特性や剥離部材と被記録材の分離特性が得られる。上記のようなシステム構成とし、リユーザブル被記録材が確実に用いられるようにしておくこと、剥離部材に転写される画像形成物質も一定の物性や組成のものとすることにより、確実な画像の除去、剥離部材と被記録材との分離を行うことが可能となり、画像形成装置や画像除去装置の信頼性を維持することが可能となる。
なお、この画像形成除去システム例では、画像形成装置と画像除去装置とが一体となった画像形成除去システムの例を示したが、画像形成装置と画像除去装置とが別々の筐体に組み込まれたものとしても、同様な効果があることは、明らかである。また、画像除去装置を脱着可能な構成としたオプションとすることができることも明らかである。
更に、上記の画像形成除去システムでは、画像形成装置にリユーザブル被記録材と一般紙との両方の被記録材を供給するための給紙容器や印字制御モードを設けた例を示したが、画像形成装置をリユーザブル被記録材に印字する専用機とした場合であっても、画像が除去できない被記録材が画像除去処理されたり、画像の除去が出来なかったり、剥離部材上の熱可塑性組成物層の組成を変化してしまう画像形成物質で印字された被記録材が画像除去処理されることを防止するために、リユーザブル被記録材に付与されたリユーザブル被記録材であることを識別する情報を読み取るセンサを設け、識別される特定のリユーザブル被記録材以外には画像を形成しないようにする印字制御モードを設けることが好ましい。
また、画像形成装置をリユーザブル被記録材に印字する専用機とした場合であっても、上記第1の印字モードで印字したことを示すための識別情報を付与したのと同様に、特定の画像形成装置(特定の画像形成物質、印字プロセス)を用いたことを識別するための情報を印字し、その識別情報が検知されない場合には、画像除去処理しないように制御する画像除去装置とのシステムで使用することにより、画像除去装置において、画像の除去ができなかったり、ジャムや剥離部材の破損が生じることを防止でき、画像の除去ができていないリユーザブル被記録材が画像形成装置に混入することを防止できる。
更に、上記のように画像形成装置で画像形成を行う際に、第1印字モードで印字したことを示す識別情報を付与しない画像形成除去システムであっても、画像形成装置で特定のリユーザブル被記録材に設けられた識別情報が検知された場合にのみリユーザブル被記録材に印字するモードを設け、画像除去装置で同一のリユーザブル被記録材であることを示す識別情報を検知して、検知されない場合には、画像除去処理しないように制御する画像形成除去システムとしておくことにより、特定のリユーザブル被記録材以外の被記録材が画像形成除去システムに混入する可能性が低くなり、本発明の画像除去装置をそのような画像形成除去システムで使用することにより、画像除去処理でのジャムの発生、剥離部材の破損、画像形成装置に残画像がある被記録材が混入することにより発生するトラブルを未然に防止することができる。
(画像形成除去システム実施例 2)
図27は本発明の第2の実施の形態に係る画像形成除去システムの構成を示す概略断面図である。同図に示す画像形成除去システムは、第1の実施の形態の画像形成除去システムと同様に、電子写真法により画像を形成する画像形成装置と本発明の画像除去装置とが一つの筐体内に納められている画像形成除去システムの一例である。第1の実施の形態の画像形成除去システムと同じ構成、機能の部分は、同じ参照符号を付している。図27においては、画像除去装置ユニットRUとして、本発明の第2の実施の形態の画像除去装置と同様に、下流側の剥離部材として熱可塑性組成物層を有するローラ型剥離部材を使用し、下流側ローラ型剥離部材の再生時に、熱可塑性組成物層を一旦、ほぼ完全に除去した後、べた画像を形成した媒体から熱可塑性組成物層を転写する構成の画像除去手段591が設けられている。
図27の第2の実施の形態の画像形成除去システムにおいては、熱可塑性組成物形成媒体596を収納する媒体容器595は、画像が形成された被記録材容器581の上に設けられている。熱可塑性組成物形成媒体596は、画像形成装置の被記録材収納容器502の中に収納されている画像形成物質に対する定着性を低下する組成物が付与されたリユーザブル被記録材504上に、画像形成装置でべた画像を形成したものである。すなわち、図27の第2の実施の形態の画像形成除去システムにおいては、画像除去手段591の下流側画像除去手段に使用されるローラ型剥離部材の表面に形成される熱可塑性組成物層は、画像形成装置で用いられる画像形成物質と同一組成物である。画像形成装置でべた画像が形成されたリユーザブル被記録材504は、通常の画像が形成された被記録材の搬送路から分岐された被記録材搬送経路593を介して、媒体容器595に搬送され、収納される。このリユーザブル被記録材504上のべた画像形成と、媒体容器595への搬送は、図示していない媒体容器595に設置された熱可塑性組成物形成媒体の量を検知するセンサにより、熱可塑性組成物形成媒体596の枚数が所定量よりも少なくなったことが検知され、且つ、ユーザから他の画像形成指令がなされていなタイミングで実行されるように制御される。べた画像の形成と媒体容器595への被記録材の搬送・収納は、媒体容器595に設けた媒体量を検知するセンサが所定値を示すまで実行される。
画像除去手段591の下流側ローラ型剥離部材の再生時には、クリーニング手段で下流側ローラ型剥離部材86から、熱可塑性組成物層及び画像形成物質を完全に除いた後、搬送経路597を介して、媒体容器595に収納された熱可塑性組成物形成媒体596が画像除去手段591に供給されるように制御・駆動される。画像除去手段591の下流側ローラ型剥離部材の再生時にべた画像が形成された熱可塑性組成物形成媒体596を搬送するための搬送経路597は、通常の画像が形成されたリユーザブル被記録材582を画像除去手段591に搬送するための搬送経路598から分岐して設けられる。下流側の熱可塑性組成物層を有するローラ型剥離部材の再生時には、上流側のローラ型剥離部材に熱可塑性組成物形成媒体596上に付与された画像形成物質が転写してしまわないように、上流側画像除去手段の加熱手段の電源がオフされるように制御される。
ここでは、べた画像が形成されたリユーザブル被記録材を収納するための媒体容器595を設ける例を示したが、べた画像を形成した熱可塑性組成物形成媒体596を、下流側のローラ型剥離部材の再生時に、画像除去手段591に挿入する構成でも良く、特に、べた画像を形成した熱可塑性組成物形成媒体596が画像除去装置の上流側の剥離部材と接触しないように、直接、下流側のローラ型剥離部材とその加圧手段との間に挿入できるような媒体搬送路を設けて搬送しても良い。
また、第1の実施の形態の画像形成除去システムにおいては、搬送手段589を設け、画像除去処理したリユーザブル被記録材を画像形成装置の給紙カセット502に自動的に戻すように構成していた。第2の実施の形態の画像形成除去システムにおいては、画像除去手段591で画像除去処理されたリユーザブル被記録材594は、トレー593に収納され、手動で画像形成装置に搬送される。画像除去装置のリユーザブル被記録材504を収納するため給紙カセット502とトレー593とを同一の構成とし、給紙カセット502の中の熱可塑性組成物形成媒体596がなくなった時や、トレー593が満杯となった時、トレー593を給紙カセット502と交換して用いるようにすると、トレー593内のリユーザブル被記録材594を給紙カセット502に移し換える必要がない。
本画像形成除去システム実施例のように、下流側の画像除去手段の剥離部材上の熱可塑性組成物層として画像形成装置で使用する画像形成物質を使用し、熱可塑性組成物層の形成に使用した画像形成物質と同じ組成からなる画像形成物質で画像を形成する特定の画像形成装置で形成した画像の除去のみを画像除去処理するように構成した画像形成除去システムにおいては、画像除去処理を繰り返しても、熱可塑性組成物層の組成物に変化を生じないので、安定した画像除去特性、分離特性が得られる。特に、ワックス成分を2重量%以上含む画像形成物質を用いる画像形成装置と画像除去装置とからなる画像形成除去システムとすることにより、ワックスの作用により、ローラ型剥離部材のように比較的曲率半径の大きい剥離部材から被記録材を分離することが可能になる。また、特定の画像形成装置種で形成した画像のみを除去する画像形成除去システムとしておくことにより、剥離部材上の熱可塑性組成物層を再生するための媒体を画像形成装置で容易に準備することができ、且つ、熱可塑性組成物層の組成が再生処理する毎に変化することがないので、画像除去特性や分離特性を安定なものとすることができる。